熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
日本人の転移性大腸癌患者に対するベバシズマブの有用
性に関する研究
Author(s)
齋藤, 誠哉
Citation
Issue date
2012-03-23
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/28551
Right
学位論文
Doctoral Thesis
日本人の転移性大腸癌患者に対するベバシズマブの有用性
に関する研究
(Chemotherapy with bevacizumab for metastatic colorectal
cancer in Japan)
齋藤 誠哉
Seiya Saito
熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻消化器外科学
指導教員
馬場 秀夫 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻消化器外科学
2012 年 3 月
学位論文
Doctoral Thesis
日本人の転移性大腸癌患者に対するベバシズマブの有用性
に関する研究
(Chemotherapy with bevacizumab for metastatic colorectal
cancer in Japan)
著者名:齋藤 誠哉
Seiya Saito
指導教員名:熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻消化器外科学
馬場 秀夫 教授
審査委員名:
放射線診断学 担当教授
山下 康行
消化器内科学 担当教授
佐々木 裕
神経内科学 担当教授
安東 由喜雄
腫瘍医学 担当准教授
荒木 令江
2012 年 3 月
1
目次
1. 要旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
2. 発表論文リスト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
3. 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
4. 略語一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
5. 研究の背景と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5-1. 大腸癌の疫学・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5-2. ベバシズマブについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5-3. ベバシズマブの治療成績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5-4. 大腸癌肝転移における conversion therapy・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5-5. オキサリプラチンによる肝類洞障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5-6. 本研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11
11
12
12
13
14
16
6. 研究方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
6-1. 患者対象・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
6-2. 評価方法および評価項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
6-3. 統計学的解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
7. 研究結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
7-1. ベバシズマブの効果と安全性について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
7-1-1. 患者背景
7-1-2. ベバシズマブとの併用レジメン
7-1-3. 1 次治療でベバシズマブを使用した患者の 2 次、3 次治療レジメン
7-1-4. ベバシズマブによる腫瘍縮小効果
2
7-1-5. ベバシズマブ投与に関する生存
7-1-6. ベバシズマブ投与継続に関する生存
7-1-7. 有害事象
7-2. ベバシズマブによる肝類洞障害抑制効果について ・・・・・・・・・・・・・・・ 26
7-2-1. 患者背景
7-2-2. 肝切除における術中および術後因子の比較
7-2-3. 化学療法前後の血液生化学所見の比較
7-2-4. 化学療法前後の脾臓体積変化
7-2-5. 化学療法前後の血小板数変化
7-2-6. ベバシズマブによる肝類洞障害の抑制
7-2-7. 肝類洞障害による脾臓体積の変化
8. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
9. 結語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38
10. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39
3
要旨
【目的】ベバシズマブは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対するモノクローナル抗
体であり、大腸癌の新しい治療薬として広く普及してきている。その効果や安全性に
ついては、海外から多数報告がなされている。しかし、日本において転移性大腸癌に
対する臨床的な効果や安全性に対する報告は殆どない。また、大腸癌肝転移におい
て key drug であるオキサリプラチンを使用することで、肝類洞障害が発生することが知
られている。大腸癌肝転移症例では、長期生存を目指し化学療法後に根治的肝切除
を行った際に、この肝類洞障害によって術後合併症が増加することが報告されている。
オキサリプラチンによる肝類洞障害と脾臓体積増加の関連性が報告されているが、ベ
バシズマブの併用による肝類洞障害の軽減作用が明らかになってきた。このため、日
本人の転移性大腸癌患者において、ベバシズマブの効果や安全性について検討を
行うと共に、オキサリプラチンによる肝類洞障害をベバシズマブが改善し、脾臓体積測
定がその抑制効果の指標となるか検討することを目的とした。
【方法】臨床的な効果および安全性については、熊本県の 18 施設においてベバシ
ズマブ併用化学療法を受けた転移性大腸癌患者 181 人を対象とし retrospective
に解析を行った。検討項目は、奏効率、全生存率、有害事象、1 次治療と 2 次治
療でベバシズマブを継続して使用することの生存への寄与について行った。ベ
バシズマブの肝類洞障害抑制効果については、オキサリプラチンを含む化学療
法後に肝切除を施行した大腸癌肝転移患者 41 例を対象とした。術前化学療法で
オキサリプラチンベースの化学療法を単独で使用した群(L-OHP 群)とオキサリ
プラチンベースの化学療法にベバシズマブを併用した群(L-OHP+ B-mab 群)と
を比較検討した。検討項目は、術中・術後の因子、血液生化学検査所見、術前
後での脾臓体積の変化、化学療法と肝類洞障害との関連性、肝類洞障害と脾臓
体積変化との関連性について行った。脾臓体積は、CT 画像より SYNAPSE
VINCENT を用いて測定した。
【結果】効果と安全性については、奏効率が 42 %、生存期間中央値は 1 次治療群で
24.2 カ月、2 次治療以降群で 20.8 カ月であった(P= 0.005)。ベバシズマブを 1 次治療
と 2 次治療で継続して使用することで有意に生存は延長しなかった。Grade 3 以上の
有害事象については、消化管穿孔症例が 4.4 %と過去の報告よりも高い頻度であった。
ベバシズマブの肝類洞障害抑制効果については、L-OHP+ B-mab 群に比べ、L-OHP
群では血小板数が有意に減少しており、術中出血量が有意に多かった。L-OHP 群に
比べ L-OHP+ B-mab 群では、血小板減少や脾臓体積増加が抑制され、病理学的に
肝類洞障害発生も抑制されていた。また、肝類洞障害の存在と脾臓体積増加との相
関を認めた。
4
【考察】ベバシズマブ併用療法の生存期間中央値や奏効率は、海外の報告と比べて
も同等の結果であった。ベバシズマブを 1 次治療と 2 次治療で継続して使用すること
で生存が延長する傾向は認めたが、有意な差ではなかった。有害事象で高い発生率
を認めた消化管穿孔は殆どの症例が、この合併症のリスクを有する症例であった。ま
た、大腸癌肝転移症例で、ベバシズマブ併用によりオキサリプラチン誘導性の肝類洞
障害を抑制し、脾腫による血小板減少を抑制できると考えられた。更に、脾臓体積測
定により肝類洞障害を非侵襲的かつ容易に予測可能であり、化学療法後に根治的肝
切除へ convert する際のリスク評価につながると考えられた。
【結論】日本人の転移性大腸癌患者においてベバシズマブによる生存への寄与は、
海外と比べ同等の効果を認めた。大腸癌肝転移患者においてベバシズマブを併
用することで、オキサリプラチンによる肝類洞障害を抑制し、脾臓体積測定が
その抑制効果の指標になると考えられた。
5
発表論文リスト
1. Seiya Saito ・ Naoko Hayashi ・ Nobutaka Sato ・ Masaaki Iwatuki ・
Yoshifumi Baba ・ Yasuo Sakamoto ・ Yuji Miyamoto ・ Masayuki
Watanabe・Minoru Yoshida・Kenji Sakai・Takashi Katsumori・Shigeru
Katahuchi・ Nobuyuki Shigaki・ Kazutaka Yamada・ Masami Kimura・
Tomio Tanigawa・ Sadamu Takano・ Masafumi Kuramoto・ Hideo Baba
Chemotherapy with bevacizumab for metastatic colorectal cancer: a retrospective
review of 181 Japanese patients. Int. J. Clin. Oncol. (in press).
2. Kurashige J, Watanabe M, Iwatsuki M, Kinoshita K, Saito S, Hiyoshi Y, Kamohara
H, Baba Y, Mimori K, Baba H. Overexpression of microRNA-223 regulates the
ubiquitin ligase FBXW7 in oesophageal squamous cell carcinoma. Br J Cancer. 106
(1):182-8, 2012
3. Sato N, Hayshi N, Imamura Y, Tanaka Y, Kinoshita K, Kurashige J, Saito S,
Karashima R, Hirashima K, Nagai Y, Miyamoto Y, Iwatsuki M, Baba Y, Watanabe
M, Baba H: Usefulness of transcription-reverse transcription concerted reaction
method for detecting circulating tumor cells in patients with colorectal cancer. Ann
Surg Oncol. 19(6):2060-5, 2012
4. Imamura Y, Hayashi N, Sato N, Kinoshita K, Kurashige J, Saito S, Hirashima K,
Karashima R, Hiyoshi Y, Nagai Y, Watanabe M, Baba H: Extensive lymphatic
spread of cancer cells in patients with thoracic esophageal squamous cell carcinoma:
Detection of CEA-mRNA in the 3-field lymph nodes. J Surg Oncol. 102:509-15,
2010
6
5. Watanabe M, Nagai Y, Kinoshita K, Saito S, Kurashige J, Karashima R,
Hirashima K, Sato N, Imamura Y, Hiyoshi Y, Baba Y, Iwagami S, Miyamoto Y,
Iwatsuki M, Hayashi N, Baba H: Induction chemotherapy with
docetaxel/cisplatin/5-fluorouracil for patients with node-positive esophageal cancer.
Digestion 83:146-152, 2010
6. Kurashige J, Kamohara H, Watanabe M, Hiyoshi Y, Iwatsuki M, Tanaka Y,
Kinoshita K, Saito S, Baba Y, Baba H: MicroRNA-200b regulates cell proliferation,
invasion, and migration by directly targeting ZEB2 in gastric carcinoma. Ann Surg
Oncol. Suppl 3:S656-64, 2012
7. Kurashige J, Kamohara H, Watanabe M, Tanaka Y, Kinoshita K, Saito S, Hiyoshi Y,
Iwatsuki M, Baba Y, Baba H: Serum microRNA-21 is a novel biomarker in patients
with esophageal squamous cell carcinoma. J Surg Oncol. (in press)
8. 齋藤誠哉、別府 透、林 尚子、佐藤伸隆、辛島龍一、増田稔郎、小森宏之、近
本 亮、石河隆敏、渡邊雅之、高森啓史、馬場秀夫:切除不能肝転移に対するサ
ルベージ手術. 大腸癌 Frontier 3: 52-57, 2010
9. 齋藤誠哉、別府 透、林 尚子、佐藤伸隆、増田稔郎、近本 亮、石河隆敏、渡邊
雅之、高森啓史、馬場秀夫:大腸癌化学療法 up to date 大腸癌肝転移に対する
肝切除への化学療法の効果.大腸疾患 NOW 2010:25-35, 2010 日本メディカ
ルセンター
10. 木下浩一、渡邊雅之、蔵重淳二、齋藤誠哉、辛島龍一、平島浩太郎、長井洋平、
池田 貯、林 尚子、別府 透、馬場秀夫:消化器癌と分子標的治療-分子標的治
療の概念,現状,将来展望-. 消化器外科 33: 95-102, 2010
7
11. 平島浩太郎、渡邊雅之、齋藤誠哉、木下浩一、藏重淳二、佐藤伸隆、辛島龍一、
今村 裕、 長井洋平、岩槻政晃、岩上志朗、宮本祐士、林 尚子、別府 透、馬
場秀夫:術前・術後に要注意 併存疾患の手術リスクと対策Ⅰ.基礎疾患併存例
の手術 5.慢性肝疾患 外科 72: 935-939, 2010
12. 辛島龍一、別府 透、近本 亮、石河隆敏、齋藤誠哉、佐藤伸隆、増田稔郎、林
尚子、
渡邊雅之、馬場秀夫:特集/大腸癌肝転移に対する治療 4.集学
的治療 b)術前化学療法併用肝切除. 外科 72 :148-152, 2010
13. 木下浩一、渡邊雅之、蔵重淳二、齋藤誠哉、辛島龍一、佐藤伸隆、今村 裕、長
井洋平、岩上志朗、池田 貯、林 尚子、馬場秀夫:胃癌手術の流れと手術助手
の心得 幽門側胃切除における助手の役割.特集 エキスパートが伝える消化器
癌手術の流れと手術助手の心得 臨床外科 65:348-352, 2010
8
謝辞
熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学 馬場秀夫 教授のご指導の下、本
研究を行いました。多くのご指導を頂き、深く感謝いたします。
国立病院機構 熊本南病院外科 林 尚子先生、熊本大学大学院生命科学研究
部消化器外科学 今井 克憲先生には研究全般における直接的なご指導を頂きまし
た。
熊本赤十字病院 吉田稔先生、済生会熊本病院 境健爾先生、荒尾市民病院 勝
守高士先生、国立病院機構熊本医療センター 片渕茂先生、熊本市立病院 志垣信
行先生、高野病院 山田一隆先生、人吉総合病院 木村正美先生、水俣市立総合医
療センター 谷川富夫先生、熊本中央病院 高野定先生、八代総合病院 倉本正文
先生には臨床病理学的な詳細な情報収集のご協力を頂きました。
また、消化器外科学教室の皆様には有形無形の多くのご協力とご指導を頂きまし
た。
最後に、熊本大学大学院生命科学研究部消化器癌集学的治療学 別府透教授、
熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学 渡邊雅之准教授には論文の読み
方、研究に対する姿勢など、直接的なご指導・ご鞭撻を頂きました。
心から感謝いたします。
9
略語一覧
bFOL, bolus FU, low- dose leucovorin with oxaliplatin
Cape, capecitabine
CPT-11, irinotecan
CR, complete response
CTCAE v3.0, the Common Terminology Criteria for Adverse Events version
3.0
DCR, disease control rate
ECOG, Eastern Cooperative Oncology Group
FOLFIRI, 5-Fluorouracil/ leucovorin plus irinotecan
FOLFOX4, 5-Fluorouracil/ leucovorin plus oxaliplatin
FU/ LV, fluorouracil plus leucovorin
GI perforation, gastrointestinal perforation
IFL, irinotecan plus 5-Fluorouracil/ leucovorin
L-OHP, oxaliplatin
mFOLFOX6, modified FOLFOX6 (5-Fluorouracil/ leucovorin plus
oxaliplatin)
MST, median survival time
OS, overall survival
PD, progressive disease
PFS, progression free survival
PR, partial response
PT, prothrombin time
RECIST v1.0, the response evaluation criteria in solid tumors version 1.0
RR, response rate
SD, stable disease
SOS, sinusoidal obstruction syndrome
VEGF, vascular endothelial growth factor
XELOX, xeloda plus oxaliplatin
5-FU, 5-Fluorouracil
10
5. 研究の背景と目的
5-1. 大腸癌の疫学
大腸癌は日本で 2 番目に多い癌(図 1A)であり、癌の死因としては第 3 位(図
1B)である。更に大腸癌は日本において増加傾向にある 1, 2。日本における大腸
癌の治療成績は、5 年生存率が、Stage0: 94.3%, StageⅠ: 90.6%, StageⅡ: 81.2%,
StageⅢa: 71.4%, StageⅢb: 56.0%, StageⅣ: 13.2 %であり 3、遠隔転移がある
症例では未だに予後不良である。また、初発大腸癌患者の 18.2%で同時性遠隔
転移を認め、肝(10.7%)、腹膜(5.0%)、肺(1.6%)の順で頻度が高い 3。
A.
B.
図 1. 悪性新生物の主な部位別罹患率、死亡数
(国立がん研究センター がん対策情報センター)
A:罹患数、B:死亡数
11
5-2. ベバシズマブについて
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、腫瘍の血管新生の重要なメディエーター
であり、悪性化に関係する制御機構を変化させる。VEGF は血管新生を制御す
ることで、腫瘍増殖や腫瘍進展、転移などに重要な役割を果たしている 4, 5。ベ
バシズマブは遺伝子組み換え型ヒトモノクローナル抗体である。分子量は約
149000Da であり、93%がヒト IgG1 由来で 7%がマウス由来である。アミノ酸
214 個の軽鎖 2 分子とアミノ酸 453 個の重鎖 2 分子からなる糖タンパク質の構
造を取る。ヒト VEGF (VEGF-A)の全アイソフォームに結合し、VEGF の生物
活性を中和する、VEGF の中和抗体である。マウス A4.6.1 抗体と同等の VEGF
親和性を有する。また、種特異性としては、ヒト、霊長類、ウサギの VEGF に
限定されていることが知られている 6。血管内皮細胞の VEGF レセプターへの
VEGF の結合を阻害することで、VEGF レセプター誘導の細胞内シグナルを無
効にし、結果的に生物学的な活性を無効する 7。直接的な抗血管新生効果に加え、
腫瘍の脈管構造を変化させ腫瘍間質の圧を低下させることで、細胞傷害性化学
療法薬のデリバリーを良くしている可能性も指摘されている 8, 9。
5-3. ベバシズマブの治療成績
2000 年より以前は、5-FU と leucovorin が転移性大腸癌における化学療法の
主要なレジメンであった。近年では、オキサリプラチン 10 やイリノテカン 11, 12
をベースとした化学療法が広く用いられるようになり、治療の選択肢も広がっ
た。更にここ数年は、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブといった分
子標的治療薬の導入により転移性大腸癌の治療は劇的に変化し、予後は延長し
ている。転移性大腸癌の薬剤治療の変遷と生存率の変化を図 2 に示す。ベバシ
ズマブは海外での第Ⅲ相試験において転移性結腸直腸癌患者の無再発生存 13, 14
と全生存 13 を有意に延長した。ベバシズマブの導入により平均生存期間(MST)
は 20 ヶ月を超えるようになった 13, 15。日本においては、2007 年に認可され、
その効果の高さから、広く使用されるようになった。しかし、日本では、その
効果を示した臨床試験は1つしかなく 16、日本における効果や安全性に関する
エビデンスは不十分である。
12
図 2. 転移性大腸癌の薬剤治療の変遷と生存率の変化
(文献 10, 11, 12, 13, 15 より)
5-4. 大腸癌肝転移における conversion therapy
転移性大腸癌において、とりわけ肝転移症例においては、表 1 に示すように肝
転移巣を根治切除することで 5 年生存率は 24-58 %と生存期間の延長が報告さ
れている 17-28。切除不能肝転移患者の場合においても集学的治療により長期生
存を目指すため、化学療法により腫瘍が縮小し、切除可能となった場合には
conversion therapy として根治的切除を施行する。このため、術前に化学療法
を施行した大腸癌肝転移患者では、化学療法による肝障害が術後成績に影響す
る。術前化学療法として、オキサリプラチンベースの FOLOFX 療法の方が、イ
リノテカンベースの FOLFIRI よりも肝切除率が高かった 29 ことから、FOLFOX
療法が first choice となることが多い。しかし、オキサリプラチンベースの化学
療法を行ってから肝切除を行うと、術前化学療法を行わなかった肝切除例と比
べて、肝切除術後の合併症の頻度が有意に増加することが報告されている 30。
長期的に化学療法を継続することで、高い腫瘍縮小効果は望めるものの、化学
療法が長期化することによって肝障害による術後合併症の危険性は高くなるた
め、術前化学療法から根治手術へ convert するタイミングについては、一定した
見解は得られていない。このため、術前化学療法による肝障害の程度を評価す
ることは、手術を行うかどうか判断する上で重要な判断材料となる。
13
表 1. 大腸癌肝転移根治切除後の予後
Author
Year
n
5 year survival (%)
19
1988
859
33
17
1995
434
39
1995
219
24
1997
275
26
1997
280
27
1998
238
29
1999
1001
37
1999
168
26
2000
235
38
2001
418
42
2003
585
33
2005
557
58
Hughes
Scheele
Doci
20
Nadig
21
Jamison
22
23
Bakalakos
24
Fong
Ambiru
25
26
Minagawa
27
Moriya
Kato
18
Pawlik
28
5-5. オキサリプラチンによる肝類洞障害
FOLFOX や XELOX など、大腸癌において広く用いられているオキサリプラ
チンベースの化学療法により肝類洞障害を来すことが報告されている 31。肉眼
的に肝臓は、青銅色の色調を呈し、blue liver と呼ばれる。病理学的には類洞内
皮障害によるうっ血と類洞の拡張を主体とする病態である(図 3)。オキサリプラ
チンベースの化学療法による肝類洞障害の発生頻度は、19- 78 %と報告されて
いる 31, 32。肝類洞障害があると術後肝不全や腹水、術後ビリルビン値、PT 値が
有意に増悪している 33。更に、周術期の合併症だけでなく、肝類洞障害は生存
率や無再発生存率も低下させることが報告された 34。
14
図 3. 肝類洞障害(文献 32 より)
Grade 3 の sinusoidal obstruction syndrome の顕微鏡写真を示す。
その一方で、ベバシズマブの併用によりオキサリプラチンによって誘発され
る肝類洞障害の発生は有意に軽減されることが近年、報告された(図 4)35。
図 4. ベバシズマブによる肝類洞障害の軽減(文献 35 より)
Fluoropyrimidine/ oxaliplatin と Fluoropyrimidine/ oxaliplatin+ Bevacizumab による
肝類洞障害の grade 別発生率を示す。
15
また、オキサリプラチン投与は脾腫を来すことが知られており、肝類洞障害
の程度と脾臓の体積増加は有意に相関し(図 5)、多変量解析にてアバスチンが投
与されていないこと、脾臓体積が増大することが化学療法後の類洞障害を予測
する因子であり、脾臓体積の増大は肝類洞障害を予測するバイオマーカーとし
ての可能性が示されている 32。しかしながら、化学療法による肝障害を評価す
る有効な指標は確立したものが存在しない。有効な指標が確立することで、適
切な手術時期を判断する材料となるだけでなく、術後合併症の減少につながる
可能性が考えられる。
図 5. 肝類洞障害と脾臓増加率(文献 32 より)
5-6. 本研究の目的
日本人の転移性大腸癌患者における効果や安全性を明らかにすることを目的
とした。また、大腸癌肝転移患者に対し、ベバシズマブを加えることによる肝
類洞障害抑制効果について検討し、脾臓体積の変化がベバシズマブによる肝類
洞障害抑制効果のバイオマーカーとなるか検証することを目的とした。
16
6. 研究方法
6-1. 患者対象
本研究において効果や安全性について検討を行った患者対象は、2007 年 7 月
から 2009 年 12 月までに熊本県の 18 施設においてベバシズマブ併用化学療法
を受けた転移性結腸直腸癌患者 181 人を対象とした。このうち、2 人は追跡調
査が不可能であった。平均観察期間は 16.6 カ月であった。適応患者は、病理学
的に転移性大腸癌と診断されており、ECOG での performance status が 0-2 の
患者で、適切な血液学的機能や肝機能、腎機能を有する患者を対象とした。そ
の他の詳細な適応に関しては、主治医の判断に委ねた。調査方法は、アンケー
トによる調査を行った。
肝類洞障害軽減作用について検討を行った患者対象は、2005 年 5 月から 2011
年 12 月までに当院にて肝切除を施行した大腸癌肝転移症例のうち、術前にオキ
サリプラチンを含む化学療法を施行した 41 例を対象とした。ただし、オキサリ
プラチンを含む化学療法の既往がある症例、術前 6 ヶ月以内に他の化学療法の
既往がある症例、慢性肝疾患を有する症例は除外した。オキサリプラチンベー
スの化学療法単独(L-OHP)群とオキサリプラチンベースの化学療法にベバシ
ズマブを併用した(L-OHP+ B-mab)群の 2 群に別け比較検討を行った。
6-2. 評価方法および評価項目
腫瘍の効果判定には RECIST v1.0 に従って各主治医が評価を行った。有害事
象については、CTCAE v3.0 に従って判定を行った。脾臓体積については、造
影 CT から高速 3 次元画像解析システムである SYNAPSE VINCENT v3.0
(Fuji Photo Film Co., Ltd.)を用いて脾臓の体積を算出した。評価項目として
は、以下の項目について評価を行った。効果および安全性に関しての評価項目
は、患者背景、ベバシズマブ併用化学療法レジメン、ベバシズマブの腫瘍縮小
効果判定、ベバシズマブ投与患者の全生存率、1 次治療患者と 2 次治療以降患者
の生存率の比較、1 次治療でベバシズマブ投与した患者で 2 次治療でもベバシズ
マブを継続した群と継続しなかった群での生存比較について評価検討を行った。
安全性に関しては、Grade3 以上の有害事象について評価を行った。また、肝類
洞障害抑制効果については、患者背景、術中・術後の因子について L-OHP 群と
17
L-OHP+B-mab 群の 2 群間での比較検討を行った。また、血液生化学所見につ
いては、術前化学療法の前後の検査値を評価した。術前化学療法前後の血小板
数の変化および術前化学療法前後の脾臓体積の変化について、術前化学療法に
よる背景肝への病理学的な変化について、L-OHP 群と L-OHP+B-mab 群間で
の比較を行った。また、肝類洞障害の有無による脾臓体積の変化についても評
価を行った。
6-3. 統計学的解析
統計学的解析には Stat View J-5.0 を用いた。群間比較には Student’s t 検定
またはχ2 検定を用いた。生存率の算出には Kaplan-Meier 法を用い、単変量解
析には Log-rank 法を用いて統計学的有意差を算出した。p < 0.05 を有意な差と
した。多群の比較には ANOVA (Turkey-Kramer post hoc test) を用いた。
18
7. 研究結果
7-1. ベバシズマブの効果と安全性について
7-1-1. 患者背景
本研究において効果や安全性について検討を行った 181 人の患者背景につい
て表 2 に示した。年齢の中央値は 62.6 歳(24- 83 歳)であった。102 人が男性で、
79 人が女性であった。最も多かった転移巣は肝臓と肺であった。111/ 181 人
(61.3 %)が 1 次治療でベバシズマブを使用されていた。また、90%以上の患者が
1 次もしくは 2 次治療まででベバシズマブを使用されていた。
表 2. 患者背景
Characteristic
Age (years)
Sex
Site of metastasis
Initiated line
Number of patients
Median
(range)
Male
female
Liver
Lung
Lymph node
peritoneum
intrapelvic
bone
Local
recurrence
1st
2nd
3rd
≥4th
(%)
62.6 (24~83)
102
79
101
50
30
24
10
9
6
(56.4)
(42.5)
(55.8)
(27.6)
(16.6)
(13.3)
(5.5)
(5.0)
(1.7)
111
58
9
3
(61.3)
(32.0)
(5.0)
(1.7)
(n=181)
19
7-1-2. ベバシズマブとの併用レジメン
表 3 にベバシズマブと併用したレジメンについて示した。1 次治療において、多
くの患者がオキサリプラチンをベースとしたレジメンと併用されていた。しか
し、2 次治療以降では、イリノテカンをベースとしたレジメンと併用されている
患者が多かった。
表 3. ベバシズマブ併用レジメン
Line of treatment
mFOLFOX6
FOLFOX4
FOLFIRI
FU/ LV
n
(%)
n
(%)
n
(%)
n
(%)
87
(48.1)
16
(8.8)
7
(3.9)
1
(0.6)
2 line
21
(11.6)
7
(3.9)
30
(1.7)
0
(0)
3rd line
2
(1.1)
1
(0.6)
6
(3.3)
0
(0)
th
≥4 line
1
(0.6)
0
(0)
1
(0.6)
1
(0.6)
Overall
111
(61.3)
24
(13.3)
44
(24.3)
2
(1.1)
1st line
nd
n=181
n=181
n=181
n=181
7-1-3. 1 次治療でベバシズマブを使用した患者の 2 次、3 次治療レジメン
表 4 には 1 次治療においてベバシズマブを使用された患者の 2 次治療および 3
次治療における化学療法のレジメンについて示した。この結果から、60%以上
の患者において 2 次治療でも継続してベバシズマブを使用されていることが明
らかとなった。新しい分子標的治療薬であるセツキシマブは、3 次治療で用いら
れることが殆どであった。
20
表 4. 1 次治療においてベバシズマブを使用した患者における 2 次および 3 次治
療のレジメン
Line of treatment
Regimen
Number of patients
2nd line
Rate (%)
n=71
43
24
4
n=22
6
5
11
Combination with Bevacizumab
Chemotherapy only
Combination with Cetuximab
3rd line
Combination with Bevacizumab
Chemotherapy only
Combination with Cetuximab
(61)
(34)
(6)
(27)
(23)
(50)
7-1-4. ベバシズマブによる腫瘍縮小効果
腫瘍に対する効果判定については、表 5 に示した。1 次治療における奏効率は
51%であり、全体では 42%であった。また、病勢コントロール率は全体で 88%
であった。3 次治療と 4 次治療では奏効率は 0%であったが、12 人中 10 人は、
stable disease であった。
表 5. 効果判定
Clinical response
Line of
treatment
RR
DCR
CR
PR
SD
PD
n
(%)
n
(%)
1 line
2nd line
3rd line
≥4th line
1
45
37
7
46
51
83
92
3
16
23
10
19
37
42
81
0
0
7
2
0
0
7
75
0
0
3
0
0
0
3
100
Overall
4
61
70
19
65
42
135
88
st
n=154
21
n=154
7-1-5. ベバシズマブ投与に関する生存
図 6 に生存率を示した。生存期間の中央値は、23 ヶ月であった。また、1 次
治療と 2 次治療以降の治療群とで、生存率の比較を行った。MST は、1 次治療
群で 24.2 カ月、2 次治療以降群で 20.8 カ月と 1 次治療群が有意に生存期間は長
かった( P= 0.005)。
図 6. 全症例、1 次治療群と 2 次治療以降群における生存曲線
平均観察期間は 16.6 カ月であった。1st line: 1 次治療群、≥2: 2 次治療以降群
22
7-1-6. ベバシズマブ投与継続に関する生存
1 次治療においてベバシズマブを投与されている患者が、病状の進行によりレ
ジメンの変更を行う際に 2 次治療以降もベバシズマブを継続して使用すること
が、生存を延長させるか検討を行った。これは、1 次治療においてベバシズマブ
を使用された患者のみで検討を行った。MST は、ベバシズマブを継続した群で
25.5 カ月、ベバシズマブを継続しなかった群で 18.6 カ月であった(図 7)。両
群間に有意な差は認めなかった(P= 0.13)が、ベバシズマブを継続した群の方が、
ベバシズマブを継続しなかった群に比べ生存期間が延長する傾向を認めた。
図 7. ベバシズマブ継続に関する生存曲線
1 次治療で投与した症例(71 例)で検討を行った。Bev: 2 次治療でもベバシズマブ併用を
継続した患者群、No-Bev: 2 次治療ではベバシズマブを継続しなかった患者群を示す。平均
観察期間は、18 ヶ月であった。
23
7-1-7. 有害事象
表 6 と 7 には、grade 3 以上の血液毒性および非血液毒性を示した。全体で頻
度の多かった Grade 3 以上の有害事象は、順に、末梢神経障害 33 例 (18.2 %)、
好中球減少症 31 例 (17.1 %)、食欲不振 28 例 (15.5 %)、嘔気/嘔吐 26 例
(14.4 %)、高血圧および下痢/便秘 22 例 (12.2 %)、全身倦怠感 18 例 (9.9 %)、
血小板減少症 10 例 (5.5 %)、凝固異常症 2 例 (1.1 %)、虚血性心疾患 1 例
(0.6 %)であった。高血圧、出血、タンパク尿、静脈/動脈血栓症、消化管穿孔、
創傷治癒遅延、アレルギー反応は、しばしばベバシズマブに関連性の強い副作
用として報告されている 36-39。本研究では、末梢神経障害や好中球減少症など
の細胞障害性の化学療法に関係するものが全有害事象の大半を占めていた。ベ
バシズマブに関連する有害事象で最も多かったものは、高血圧であった。
表 6. Grade 3 以上の血液毒性
Adverse event
1st line
overall
Number of patients
(%)
Number of patients
(%)
Neutropenia
18
9.9
31
17.1
Thrombocytopenia
4
2.2
10
5.5
Leukopenia
2
1.1
5
2.8
0
0
2
1.1
Coagulation
abnormality
表 7. Grade 3 以上の非血液毒性
Adverse event
1st line
overall
Number of patients
(%)
Number of patients
(%)
Neuropathy
20
11.0
33
18.2
Anorexia
17
9.4
28
15.5
Nausea/ vomiting
13
7.2
26
14.4
Diarrhea/ constipation
10
5.5
22
12.2
Fatigue
12
6.6
18
9.9
Oral ulcer
11
6.1
15
8.3
Alopecia
8
4.4
11
6.1
Dysgeusia
5
2.8
6
3.3
Rash
3
1.7
5
2.8
Liver dysfunction
0
0
2
1.1
Fever elevation
0
0
2
1.1
24
Ischemic heart disease
1
0.6
1
0.6
Hypertension
12
6.6
22
12.2
GI perforation
5
2.8
8
4.4
Hemorrhage
4
2.2
8
4.4
Allergic reaction
0
0
4
2.2
Thrombosis
2
1.1
2
1.1
1
0.6
1
0.6
Proteinuria
1
0.6
1
0.6
Other
1
0.6
4
2.2
Wound-healing
complication
注目すべきは、消化管穿孔が 181 人中 8 人(4.4 %)と比較的高い頻度であった。
表 8 に消化管穿孔を来した症例について詳細な情報を示した。ベバシズマブ投
与を開始してから、消化管穿孔が発症するまでの平均期間は 25.3 日であった。
消化管穿孔を来した症例は、原発巣の穿孔が 2 例、原発巣切除後の大腸穿孔が 2
例、小腸穿孔が 4 例であった。更に、8 例中 2 例は、腹部/骨盤の放射線治療後
で、1 例はメッケル憩室の切除後、3 例は癌性腹膜炎の症例であった。
表 8. 消化管穿孔症例
Case
Treatment line
The period from the initiation of
bevacizumab to GI perforation (day)
Case 1
1
40
Case 2
3
13
Case 3
1
27
Case 4
1
6
Case 5
2
8
Case 6
1
55
Case 7
1
28
Case 8
1
unknown
25
Perforation site and details
Tumor site,
peritoneal carcinomatosis
Tumor site
Small intestine,
peritoneal carcinomatosis
Colon (primary resection),
peritoneal carcinomatosis
Colon (primary resection),
abdominal/pelvic radiotherapy
Small intestine,
abdominal/pelvic radiotherapy
Small intestine
Small intestine,
Meckel diverticulum resection
7-2. ベバシズマブによる肝類洞障害抑制効果について
7-2-1. 患者背景
本研究において肝類洞障害軽減作用について検討を行った 41 人の患者背景に
ついて表 9 に示した。背景因子では、術前 CEA が L-OHP 群に比べ L-OHP+
B-mab 群の方が有意に高い結果であったが、その他は両群間で差を認めなかっ
た。術前化学療法の平均投与サイクル数は、L-OHP 群で 7.1 サイクル、L-OHP+
B-mab 群で 7.5 日であった。
表 9. 患者背景
L-OHP
L-OHP+ B-mab
(n= 28)
(n= 13)
67.0±9.6
65.1±9.2
0.56
Male
20
7
0.56
Female
8
6
Partial
11
6
Subsegmental
2
3
Segmental
7
1
Lobectomy
8
3
Colon
18
7
Rectum
10
6
Synchronous
20
7
Metachronous
8
6
Pre-tumor size(mm)
50.7±59.2
56.5±38.9
0.75
Post-tumor size(mm)
31.1±30.7
38.3±22.6
0.46
Pre-tumor number
4.9±6.9
2.9±4.6
0.36
Post-tumor number
4.0±4.0
2.3±2.9
0.19
Preoperative ICG-R15(%)
13.1±6.6
11.1±4.5
0.33
Preoperative LHL 15
0.93±0.03
0.93±0.02
0.85
4.8±4.0
12.5±19.2
0.046
A
27
11
0.18
B
1
2
7.1±2.3
7.5±4.0
0.66
39.4±20.3
42.7±23.1
0.65
Age (years)
Sex
Operative procedure
Location of primary
Timing of metastasis
Preoperative CEA (ng/ml)
Liver damage
Preoperative chemotherapy
cycle
Non-dosing period(days)
26
P value
0.33
0.52
0.27
7-2-2. 肝切除における術中および術後因子の比較
肝切除における術中・術後因子の比較を表 10 に示した。術中出血量が L-OHP+
B-mab 群で有意に少ない(P= 0.044)という結果であった。その他の因子につい
ては、両群間に有意な差を認めなかった。特に術後合併症についても両群間に
有意な差を認めず(P= 0.84)、ベバシズマブを加えることによる、術後合併症へ
の影響は認められなかった。
表 10. 術中・術後因子の比較
L-OHP
L-OHP+ B-mab
(n= 28)
(n= 13)
Hemorrhage volume
406.4±226.3
232.2±294.5
0.044
Operation time
434.1±131.8
383.0±118.1
0.24
Transfusion
1 (3.6%)
0 (0%)
0.49
Complication
5 (17.9%)
2 (15.4%)
0.84
Postoperative T-bil peak
1.33±0.53
1.24±0.52
0.57
Hospital days
16.4±8.5
11.5±2.8
0.054
P value
7-2-3. 化学療法前後の血液生化学所見の比較
術前化学療法前後における血液生化学検査所見を比較した(表 11)。L-OHP 群
で、化学療法後の血小板数が有意に低いという結果であった。その他の血液検
査所見は、両群間に差を認めなかった。このことから、L-OHP 群において化学
療法後の血小板数が有意に少なかったため、術中出血量が多かった可能性が考
えられた。
27
表 11. 化学療法前後の血液性化学所見
L-OHP
L-OHP+ B-mab
(n= 28)
(n= 13)
pre-Alb
3.84±0.59
4.04±0.46
0.32
post-Alb
3.92±0.33
3.92±0.47
0.97
pre-T-bil
0.66±0.26
0.62±0.20
0.84
post-T-bil
0.65±0.20
0.66±0.22
0.83
pre-Plt
28.0±12.1
22.0±5.8
0.1
post-Plt
16.7±5.3
21.1±7.2
0.033
pre-AST
29.0±23.0
27.2±10.6
0.79
post-AST
30.2±16.0
25.9±10.6
0.38
pre-ALT
26.8±17.2
26.8±16.0
0.99
post-ALT
30.0±27.0
22.1±16.7
0.34
pre-PT
96.7±15.9
100.3±10.1
0.54
post-PT
108.2±10.9
107.6±12.2
0.88
pre-ALP
375.7±263.0
345.0±181.1
0.71
post-ALP
317.1±103.2
259.1±108.3
0.11
pre-WBC
6363.2±1871.0
5596.2±1557.7
0.21
post-WBC
4928.6±1620.7
4130.8±1071.9
0.11
pre-Hgb
12.0±2.2
12.9±1.6
0.18
post-Hgb
12.1±1.3
12.8±1.4
0.13
P value
pre-: 術前化学療法前、post-: 術前化学療法後を示す。
7-2-4. 化学療法前後の脾臓体積変化
化学療法後に L-OHP 群において血小板数が有意に減少している理由として、
オキサリプラチンによる肝類洞障害のため脾腫を来していることが考えられた。
このため、術前化学療法の前後における脾臓体積の変化について検討を行った。
化学療法前後に撮影した CT 画像から SYNAPS VINCENT v3.1 を用いて脾臓の
体積を測定した(図 8A)。化学療法前後で、L-OHP 群では平均で約 40ml 増加
しており、有意な体積増加を認めた。しかし、L-OHP+ B-mab 群では、脾臓の
体積増加はほとんど認めなかった(図 8B)。個々の症例での脾臓体積の増減量
およびその比率を比較した。体積増加の絶対値、その比率ともに L-OHP+ B-mab
群では、有意にその増加が抑制されていた(図 8C)。
28
A.
B.
29
C.
図 8. 化学療法前後における脾臓体積の推移
A: SYNAPS VINCENT によって算出した脾臓体積を示す。左は FOLFOX 7 コース施行症
例、右は mFOLFOX6+ B-mab 8 コース施行症例を示す。B: 化学療法前後における脾臓体
積の変化を示す。Pre-: 術前化学療法前、post-: 術前化学療法後を示す。C: 個々の症例に
おける化学療法前後における脾臓体積の増減比を示す。
*, **は、統計学的に有意差があることを示す。(*: P< 0.0001, **: P< 0.0001)
30
7-2-5. 化学療法前後の血小板数変化
それぞれの群における化学療法前後における血小板数の推移について検討を
行った。2 群間での化学療法前後の血小板値の変化を図 9 に示した。L-OHP 群
では化学療法により血小板数が有意に低下している(P< 0.0001)。一方で、
L-OHP+ B-mab 群では、血小板数の減少が抑制されていた。このことから、
L-OHP 群では、オキサリプラチンによる肝類洞障害により脾腫を来し、血小板
数が有意に減少していると考えられた。更に、ベバシズマブによりその血小板
減少が抑制されていると考えられた。
図 9. 化学療法前後の血小板値の推移
Pre-: 術前化学療法前、post-: 術前化学療法後を示す。
*は、統計学的に有意差があることを示す。(P< 0.0001)
31
7-2-6. ベバシズマブによる肝類洞障害の抑制
化学療法による背景肝への影響を病理学的に検討した(図 10)。肝類洞障害は
L-OHP 群で 46.4%であったが、ベバシズマブの併用により 15.4%へ減少してお
り(P= 0.05)、有意に病理学的な肝障害の発生が抑制されていた。
図 10. 術前化学療法の背景肝への影響
Rubbia- Brandt Grade≧2 の sinusoidal obstruction syndrome の割合を示す。
※非化療群は、術前 6 ヶ月以内に化学療法を施行していない 42 例を示す。
*は、統計学的に有意差があることを示す。(P= 0.05)
32
7-2-7. 肝類洞障害による脾臓体積の変化
肝類洞障害の有無で、脾臓体積の推移を検討した(図 11)。肝類洞障害のある
群では、脾臓体積の増減量および増減比ともに有意な増加を認めた。このこと
から、肝類洞障害の存在と脾臓体積の増加との相関性が認められた。
図 11. 肝類洞障害による脾臓体積の増加
A. 脾臓体積の増減、B. 脾臓体積の増減比を示す。SOS: sinusoidal obstruction syndrome,
*, **は、統計学的に有意差があることを示す。(P= 0.0048, P= 0.0017)
33
8. 考察
これまでに化学療法単独に比べ、化学療法にベバシズマブを併用することで
治療効果が増強することが示されてきた 13, 14, 40。海外においては、BEAT study38
で、転移性結腸直腸癌患者に対する様々な化学療法レジメンとベバシズマブ併
用療法の安全性とその効果が報告された。
第Ⅲ相無作為試験では、1 次治療におけるベバシズマブ併用化学療法での進行
結腸直腸癌患者の生存期間中央値は 18.7- 28 か月と報告されている 13, 14, 41-46(表
12)。日本の臨床試験では、XELOX とベバシズマブの併用療法で生存期間中央
値が 27.4 カ月と報告されている 16。本研究では、ベバシズマブと様々なレジメ
ンとが併用されていたが、1 次治療群と 2 次治療以降群のいずれも過去の報告と
遜色のない生存を示した。しかしながら、1 次治療群は 2 次治療以降群に比べ、
有意に生存が良好であった。このことから、ベバシズマブを 1 次治療より導入
することで、より生存の延長を期待できることが示唆された。
表 12. 大規模臨床試験におけるベバシズマブ併用化学療法の結果
Study
Phase
n
regimen
RR
PFS
OS
(%)
(months)
(months)
13
Ⅲ
IFL
402
44.8
10.6
20.3
47
Ⅱ
IFL
104
26.0
9.2
16.6
41, 42
Ⅲ
FOLFIRI
57
57.9
11.2
28.0
modified IFL
60
53.3
8.3
19.2
Ⅲ
modified IFL
139
35.3
8.3
18.7
Ⅲ
FOLFOX4
699
47.0
9.4
21.3
mFOLFOX6
71
52.0
9.9
26.1
bFOL
70
49.0
8.3
20.4
XELOX
72
36.0
10.3
24.6
Ⅲ
Cape
157
56.0
8.5
Ⅲ
Cape+ L-OHP
368
50.0
10.7
20.3
Ⅲ
L-OHP based
410
48.0
11.4
24.5
CPT-11 based
115
40.0
11.7
20.5
181
42.0
AVF2107g
AVF2192g
BICC- C
ARTIST
Chemotherapy
44
14
NO16966
XELOX
TREE-2
MAX
48
43
CAIRO-2
PACCE
46
45
Ⅱ
mFOLFOX,
This study
FOLFOX4,
FOLFIRI, FU/LV
34
24.2
これまでに観察研究である BRiTE study において、1 次治療でベバシズマブ
を使用した患者では、病状が進行した後の 2 次治療でもベバシズマブの使用を
継続することによって生存が延長すると報告されていた 49。本研究では、1 次治
療でベバシズマブを使用した患者に 2 次治療以降もベバシズマブを継続するこ
との有用性は認められなかった。しかしながら、ベバシズマブを継続した群の
方が、生存が良い傾向にあったのは、継続群では、stable disease の患者が多か
ったためと考えられた。このベバシズマブを継続して使用することの有用性に
ついては、観察研究のみでの報告であり、一定の見解が得られていなかったが、
最近になり前向き無作為試験の結果が明らかとなった。ML18147 study におい
て、1 次治療でベバシズマブ併用化学療法を施行した患者において、2 次治療で
ベバシズマブ併用を継続した群と化学療法のみを行った群を比較すると、生存
期間の中央値は 11.2 カ月と 9.8 カ月とベバシズマブを継続して使用した群で有
意に生存が延長した 15。
ベバシズマブと関係のある Grade 3 以上の有害事象の発生率は、文献的に以
下の通りである 13, 14, 38, 40, 49-55。高血圧は 3.7- 22.0 %、タンパク尿は 0.6- 0.8 %、
出血は 1.9- 3.2 %、創傷治癒遅延は 0.8- 4.4 %、静脈血栓症は 3.4- 7.8 %、動脈
血栓症は 1.1- 2.1 %、消化管穿孔は 0.7- 1.9 %。表 13 に過去の大規模臨床試験
におけるベバシズマブ関連の有害事象の発生率を示す。本研究では、消化管穿
孔以外は過去の報告と比べて差は認めなかった。消化管穿孔については、本研
究の結果は、過去のものと比較すると高い発生率であった。
表 13. 大規模臨床試験におけるベバシズマブ関連の有害事象(Grade3 以上)
Adverse event
First
NO1696614
BRiTE56
393
694
1953
1914
1041
181
Hemorrhage
3.1
2.0
2.2
3.2
2.9
4.4
hypertension
11.0
4.0
22
5.0
9.2
12.2
GI perforation
1.5
<1
1.9
1.9
0.3
4.4
2.0
2.0
1.5
2.1
1.1
<1
4.4
4.0
(%)
n
Arterial
thromboembolism
Wound-healing
complication
2.1
BEAT
38
ARIES57
This
AVF2107g13
study
0.6
結腸直腸癌患者において、ベバシズマブに関連した消化管穿孔については、
いくつかの危険因子が報告されている。単変量解析では、原発巣が残存してい
35
ること、ベバシズマブ開始前 1 ヶ月以内に大腸内視鏡検査を施行されているこ
と、放射線治療後であることが消化管穿孔の危険性を高めると報告されている
58。卵巣癌では、同様の危険因子が報告されており、癌性腹膜炎があること、複
数回の手術既往があること、放射線治療が行われていること、腫瘍による消化
管への浸潤があることがリスクを高めている 59。本研究において認められた消
化管穿孔症例の多くは、ベバシズマブ導入を行ってから比較的早い時期に発症
しており、消化管穿孔のリスク因子を有していた。
オキサリプラチンベースの化学療法による血小板減少の機序としては、薬剤
による骨髄抑制、オキサリプラチンへの免疫反応によるもの 60, 61、そして脾腫
による血小板減少 32 が挙げられる。この脾腫による血小板減少は、中等度の減
少が遷延する特徴がある。オキサリプラチンベースの化学療法では、びまん性
に肝類洞障害が進行することで、門脈圧亢進が起こり 62, 63、脾臓体積が増大す
る。これにより、中等度の血小板減少が遷延した状態となる。このような脾腫
による血小板減少を来した化学療法患者に対する部分的脾塞栓術の有用性も報
告されている 64。しかし、本研究によりベバシズマブを併用することで、この
ような脾腫からの血小板減少の遷延が抑制できることが示唆された。
本研究結果より、オキサリプラチンベースの化学療法により肝の類洞障害を
来すが、ベバシズマブを併用することにより肝類洞障害が軽減された。このた
め、脾臓体積増加も有意に抑制され、血小板減少も抑えられるという結果であ
った。その一方でオキサリプラチンベースの術前化学療法にベバシズマブを加
えても術後合併症の頻度に差は認めず、術中出血量は有意に減少した。このこ
とから、大腸癌肝転移の conversion therapy では、術前化学療法において、オ
キサリプラチンにアバスチンを併用することで、肝類洞障害を改善し、術後の
短期成績の向上につながる可能性があると考えられた。
オキサリプラチン誘導性の肝類洞障害について肝切除後の術後合併症リスク
増加 33、生存率や無再発生存率の低下 34 などが報告されている。また、非手術
症例でも門脈圧が亢進することで腹水、黄疸、食道静脈瘤の発症 62, 63, 65, 66 が報
告されている。このような点から、オキサリプラチン誘導性の肝類洞障害が注
意されるようになってきたにもかかわらず、現時点ではバイオマーカーは無く、
肝生検を行う以外に正確にこの有害事象を評価する事は難しい。
Superparamagnetic iron oxide を利用した造影 MRI によって、この肝類洞障害
を感度 87%、特異度 89%で検出可能 67 とした報告がなされたが、その後の報告
では、感度 14%、特異度 100%68 と安定した結果は得られていない。脾臓体積
36
を測定することで、最も非侵襲的かつ容易にこの肝類洞障害を予測することが
できると言える。術前化学療法を長く行う程、より腫瘍縮小を望むことができ
肝切除の可能性も高くなる。しかし、術前化学療法が長期化することで、この
肝類洞障害のリスクも増加するため、実臨床において肝切除の時期について判
断が難しいことも多い。したがって、この肝障害のリスクを評価可能となるこ
とは、より適切な手術時期を判断する材料となり得る。
本研究には、いくつかの問題がある。本研究は、後ろ向き研究であり、多施
設共同研究である。このため、詳細な情報を収集することが困難であった。し
かし、本研究により転移性大腸癌治療に対する日本の現状を伺い知ることがで
きた。今後、日本における前向き多施設共同研究が必要と考える。
37
9. 結語
日本人においてベバシズマブによる生存への寄与は、海外と比べ同等の効果
であったが、有害事象として、消化管穿孔の高い発症率を認めた。また、大腸
癌肝転移の conversion therapy では、術前化学療法においてオキサリプラチン
にベバシズマブを併用することで、オキサリプラチン誘導性の肝類洞障害を抑
制し、脾臓体積測定は、その効果を予測する指標となることが示唆された。
38
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