一酸化窒素関連物質と小児肺高血圧、血管炎症候群の関連性に関する

一酸化窒素関連物質と小児肺高血圧、血管
炎症候群の関連性に関する研究。
埼玉県立小児医療センター循環器科
浦島崇、小野博、菱谷隆、星野健司、小川潔
同
感染免疫科
大石勉
生体内における一酸化窒素の役割
血管内皮障害
ずり応力
血管内皮細胞
NO
PGI2
血管保護
VCAM-1
FGF
血管障害
NOは動脈硬化の発症に関与する
血管内皮障害
NOの産生低下
血管拡張反応の低下
血栓傾向の増強、
内皮・白血球接着能の増強
冠血流の低下
動脈硬化
血管リモデリングによる心筋虚血
一酸化窒素の測定
一酸化窒素は数秒で代謝される不安定な物質なため、その測定は困難。
ESR法等が用いられるが実用的ではない。
化学的に安定なNO代謝産物であるNO3-を測定することで検討。
N2O3
L-アルギニン
NO合成酵素
NO
L-シトルリン
NO2H2O
2NO2
NO2-+NO3H2O
川崎病における血管リモデリング
血管内の血栓増強、血管リモデリングによる冠動脈狭窄
動脈硬化による血管リモデリングと類似しているのは?
①川崎病の急性期から回復期にかけてのNO代謝産物
の変化を検討
②10歳以上で冠動脈瘤が残存している患者における
血管リモデリングの程度を血管内中膜厚(IMT)で評価
川崎病とNO
急性期川崎病患者13名を経時的に検討
急性期(第5病日以内)
1143±482μmol/ml
回復期(解熱48時間以降)
2102±902μmol/ml
*
*
コントロール(有熱期感染症)
2051±920μmol/ml
コントロール(回復期感染症)
2152±867μmol/ml
*:P<0.05
内頚動脈血管内中膜厚
NO3- (μmol/ml)
3500
3000
2500
2000
1500
r = - 0.68
P<0.001
1000
500
0
0
0.5
1
1.5
2
IMT (mm)
肺高血圧とNO
左右短絡(VSD, AVSD)による高度肺高血圧患者(Pp/Ps>0.8)11名を検討
術前
6817±2409μmol/ml
術直後
5681±1352μmol/ml
術後2週間 4148±980μmol/ml
コントロール
(肺高血圧を伴わない先天性心疾患)
3883±1566μmol/ml
* *
*
*
**
P<0.05
P<0.005
考察1
今回の検討では全例で冠動脈病変は発症後半年で改善している
ため一酸化窒素の産生抑制は一時的なものであった。
長期間、冠動脈病変が存在する症例では血管リモデリングが
進行しており一酸化窒素の抑制は長期間に及んでいる可能性
がある。
川崎病の治療薬としてNOの産生を
促すACE阻害薬が有効かもしれない。
考察2
左右短絡による肺高血圧は手術によって改善し、
shear stressの低下に伴い一酸化窒素の低下を認めた。
左右短絡のよる高度の肺高血圧では、肺血管床が正常の2倍以上に増加する。
血管床の増加が血管内皮型NOを増加させる。
一酸化窒素は血管床の指標となる可能性がある。
NO3-の臨床応用
肺血管床が推測できれば・・・・・
原発性肺高血圧等の閉塞性肺疾患に対する病状の評価
Eisenmenger症候群の診断
NO吸入療法の適応決定、効果判定
などに有用である。
今後の課題
NO3-が内因性NOを完全に反映する訳ではない。
(食餌性窒素の影響等)
動脈硬化と川崎病では血管リモデリングの病理所見が
異なる。
内因性NOは血管からだけではなく血小板、
単球などからも産生されている。
量としては微量であるがBIASとなりうる。