水システム工学実験 流速計測 2006.4.26 担当:石塚正秀 実験テーマ:流速計測・流速分布,粗度係数 実験内容: 1. 電磁流速計・プロペラ流速計・浮子を使って,流速を測定する. 2. 電磁流速計を使って流速の鉛直分布を測定する. 3. 浮子とデジカメを使って,水表面の流速の水平分布を測定する(単純な画像解析) . 実験目的: 1. 各種流速計の原理・測定方法を理解する. 2. 矩形水路の流速分布(水平,鉛直)を理解する. 3. マニング(Manning)の粗度,シェジー(Chézy)の粗度を理解する. 4. 実際のデータを用いて,データの平均化の方法について学ぶ. 注意事項: ① 水路で実験を行うため,滑ったり,落ちたりするので,ふざけない. ② ケーブルに足を引っかけない. ③ レポートの提出期限は,実験翌週水曜日 9:00.3階学科事務レポート BOX まで. ④ 実験データの一部は CD で配布する(各班 1 枚) .翌日に3階学科事務まで取りに来ること. 流速計測に関する基礎知識: y軸 1)流速の表記 平面図 速度 u は時間 t と場所(y,z)で変化するた め,以下のように表記できる.ここでは, 流れの方向 直線水路を用いており,等流を仮定する(x 方向には変化しないとする) . x軸 z軸 u(y,z,t)= u (y,z)+u’ (y,z,t) z軸 u はある場所(y,z)におけるある時間 t の流 速, u は u の時間平均流速,u’は流速 u の 時間変動(乱れ)成分である.これ以降,以 立面図 下のように簡単に表記する. y軸 流れの方向 x軸 側面図 図1:水路の座標軸 u= u +u’ (水路勾配 i は 1/800) 2)断面平均流速 um um = 1 1 u( z )dz = ∫ H H n ∑ Si = i =1 1 H n ∑ umi ∆hi = i =1 1 H ui + ui −1 ∆hi 2 i =1 n ∑ n:区分総数,i:区分番号,Si:区分 i における流れによる面積,umi:区分 i における断面 平均流速,hi:区分 i における深さ,ui:区分 i における上辺の流速,H:全水深 3)電磁流速計 磁界を導電体が横切って運動する時,その電導体には電圧が発生し電流が流れる(ファラデーの 電磁誘導の法則) .電磁流速計は電磁誘導の法則により,電導体である水が磁界を横切って流れる時 1 水システム工学実験 に発生する起電力を測定することにより,流速を計測する.本実験では,パソコンにデータを取り 込み,時間平均操作を行う. 4)プロペラ流速計 プロペラの回転数から時間平均流速 u を推定する.回転数は測器に応じて異なるため,各測器に 対応した検定表を用いる.今回使用する測器の式を以下に示す.ただし,実際には換算表を用いる. u =0.133N+0.001 u :時間平均流速(m/s),N:回転数(回転/s) 5)浮子法 最も単純な流速測定方法であり,距離Lと時間Tの関係から,水表面の時間平均流速 u を算定する. u =L/T L:距離(m),T:時間(s) 本実験では,デジカメの動画をコマ割りして,流速ベクトルを描いて流速を算定する. 6)流速分布 壁面に沿う流れは,層流の場合に放物線,乱流の場合に対数分布を描くことが知られている. 放物線形: u = u0 z H z 2 − H 対数分布(滑面): u = u* 5.5 + 5.75 log 10 zu* ν ,ρ:水の密度, u0:水路底より H(または境界層δ)での流速(ここでは,u0=ρgH2i/2μ) i:水路勾配,μ:水の粘性係数,z:水底からの鉛直距離,u*:摩擦速度(=√(τ0/ρ)=√(gHi), τ0:水路底面におけるせん断力,g:重力加速度,ν:水の動粘性係数 7)平均流速公式を用いた粗度係数の算定 シェジー式: u = C Ri 2 マニング式: u = 1 3 R i n ここで,C:シェジーの係数,n:マニングの粗度係数,R:径深(=A/S),A:断面積,S:潤辺 表1 マニングの粗度係数 n (出典:建設省,1998 年) 河川や水路の状況 マニングの粗度係数 n 人工水路・改修河川 自然河川 コンクリート人工水路 スパイラル半管水路 両岸石張小水路(泥土床) 岩盤掘放し 岩盤整正 粘土性河床,洗堀のない程度の流速 砂質ローム,粘土質ローム ドラグライン掘しゅんせつ,雑草少 平野の小流路,雑草なし 平野の小流路,雑草,灌木有 平野の小流路,雑草多,礫河床 山地流路,砂利,玉石 0.014∼0.020 0.021∼0.030 0.025(平均値) 0.035∼0.050 0.025∼0.040 0.016∼0.022 0.020(平均値) 0.025∼0.033 0.025∼0.033 0.030∼0.040 0.040∼0.055 0.030∼0.050 2 水システム工学実験 山地流路,玉石,大玉石 0.040 以上 大流路,粘土,砂質床,蛇行少 大流路,礫河床 0.018∼0.035 0.025∼0.040 実験手順: 1 電磁流速計による流速測定 1−1実験器具類 ・ 電磁流速計(KENEK 社製,VP2000) 誤差:±0.010 m/s(0.4991 m/s 以下の場合) 測定範囲:0.∼2 .000 m/s ・ 電磁流速計表示部 ・ パソコン ・ シリアルケーブル 1−2 準備 ① 流速計の zero 点補正を行う(今回は不要) ② 流速計と表示部および表示部とパソコンをケーブルで接続する. ③ パソコンにインストールされているデータ表示ソフト(VP2000WN)を起動する. ④ ソフト上でサンプリングタイムをにセットする(例えば, 80Hz).モニターボタンを押し,データ 信号がパソコンに入力されているか確認する.縦軸の幅を矢印ボタンで調整する. ⑤ 流速計が正しく測定されているかデータをパソコンの画面で見ながら確認する(流速計がしっか り固定されているかどうか.y方向流速がほぼゼロ になっているかどうか. ) z軸 1−3 測定 ① 流速計の高さを変更し,底面からの高さを測る. ② 値が安定してから「オンラインデータ読み込み」 測点④ 区分4 ボタンを押し,データを記録する. 流れの方向 →グラフが右端まで来ると保存するダイアログ が自動表示されるので,ファイル名として班名と測点 を間違えずに入力して保存する(班番号−測点.xls). 1−4 データ整理 ① 各地点において,計測された流速データ u,v の うち,有効なデータを取り出す. 測点③ 区分3 測点② 測点① 区分2 区分1 x軸 縦断面図 図2:流速の鉛直分布および測定地点 (記録されたデータの始めや終わりに明らかに異常 データがある場合はそのデータを削除する. ) ② ,v’(=v− v )の時間変化を図化する. 流速 u,v および誤差データ u’(=u− u ) ③ ,v’(=v− v )の時間平均値 u′ , v′ を求める. 誤差データ u’(=u− u ) ④ (実験時に記録した暫定的な値と大体合ってい 各測点における時間平均流速 u , v を求める. るか要確認) ⑤ 同様に,流速 u,v の標準偏差σx,σy を求める. 3 水システム工学実験 ⑥ 平均流速 u をもとに,横軸を流速 u ,縦軸を水路底からの距離zを取り,各水深の流速の水と 鉛直分布を図示する. 2 プロペラ流速計による流速測定 2−1実験器具類 ・ プロペラ流速計(三映測量器(株),広井電気式) 測定誤差:−1.40∼+1.33 % 測定範囲:0.16∼1.64 m/s ・ プロペラ流速計支持棒 ・ 流速計試験成績書 ・ ものさし(L 字形が使いやすい) 2−2 準備 ① プロペラ流速計を支持棒に接続する. ② 発信器に電池をセットし,ケーブルを接続する. ③ 回転音の表を理解する. 2−3 測定 ④ 水表面から1cmの深さに流速計の上縁がくるように沈めて測定を行う.その際,流速計の位置 がずれないように必ず確認しながら測定すること. ⑤ 同じ測定を計3回繰り返す. 2−4 データ整理 ⑥ 3 回の流速データを平均(時間平均)して、時間平均流速を求める. (データシートに記入) 3 浮子による流速測定 3−1実験器具類 ・ 浮子(幅 4cm×長さ 4cm×高さ 3cm,発泡スチロール製) ・ ストップウォッチ ・ デジタルカメラ 3−3−1 準備1 ① 各自が浮子を持ち,水路に並ぶ. ② デジカメを動画モードにして,水路水面に対して水平に構える. 3−3−2 測定2 ③ 浮子が空間的に均等にばらつくように,また,数字が見えるようにして,同じタイミングで素早 く浮子を流す.ただし,複数の浮子がくっついたり,全体的にばらつきがない場合はやり直す. ④ デジカメで動画撮影を開始する. ⑤ 浮子を回収する. 3−4 データ整理 ⑥ デジカメで撮影した動画を画像解析用ソフトに取り込み,各コマを保存する(今回は不要) . ⑦ 各浮子の位置を半透明紙にトレースし,流速ベクトルの空間分布を図示する. ⑧ 各浮子の流速を求める(データシートに記入) . 4 水システム工学実験 レポート内容 レポート作成に際して次の点を考察せよ. 1.電磁流速計・プロペラ流速計・浮子により測定された流速を比較し,それらの違いについて,測 定方法の相違,精度,流速分布などの観点から考察せよ. 2.電磁流速計により測定された流速の鉛直分布を図化し,対数則にしたがうのか,放物線分布にな るのかを調べて,その理由を説明せよ. 3.浮子の画像解析により求めたベクトル図を図化して,流速分布について考察せよ. 4.電磁流速計で得られた流速分布から,断面平均流速を求めよ. 5.4で求めた断面平均流速を用いて,マニングの粗度係数およびシェジーの粗度係数を算定せよ. また,表1を参考にして,本実験で得られたマニングの粗度係数と一般的なマニングの粗度係数 との類似・相違点を検討せよ. 6.その他,難しかった点,反省点,気付いた点や本実験に対する希望を述べよ. 5
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