「算数の力 UP レッスン」で活用を取り入れた授業を

はじめに
「算数の力 UP レッスン」で活用を取り入れた授業を
(「算数の力をつけよう!」)
兵庫教育大学大学院教授
「学校の教育活動を進めるに当たっては、各学校において、児童に生きる力をは
ぐくむことを目指し、・・・(中略)基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得
させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その
他の能力をはぐくむとともに、・・・」と新しい学習指導要領の総則に示されてい
るように、基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得と、それらを活用する力が、
「生きる力」を育む上で重要な柱に位置づけられています。
このような習得と活用の力の育成については、それらを分離してそれぞれにその
育成を目指すのではなく、相互の行き来を活性化することによって育成を図ること
の大切さが指摘されています。特に活用については、習得に比べてこれまで十分に
扱ってこなかったところでもあり、PISA調査が求めるPISA型学力の中心に位置する
リーディング・リテラシー(読解力)とも目指すところが同じであり、このような
活用の重要さを広くアピールするねらいもあって、全国学力調査におけるB問題の
出題となったところです。
そのようなわけで、活用についてはB問題でその目指すところのイメージはつか
めるものの、6年以外の学年で、いや6年においても、個々の単元の内容に即して、
具体的にどのような問題で、どのように取り組ませばいいのかが分からず、手がか
りもないまま暗中模索をしているのが現状ではないかと思います。
ベネッセコーポレーション発刊の「くりかえし計算ドリル」では、このような現
状に対する解決策として、各学年・各学期ごとに活用の問題を企画・作成しました。
「算数の力UPレッスン」(1・2年は「算数の力をつけよう!」)として、掲載し
ています。
今回、これらの活用の問題による学習をより効果的なものにするために、活用を
取り入れた授業の指導案を作成しました。活用の問題と授業の指導案を参考にして、
「習得をより確かなものにする活用を取り入れた授業」に、取り組んでみてくださ
い。それぞれの学校で実りある学習活動が展開され、活用の力が育まれることを期
待しています。
問題の出題趣旨
【1】問題の出題趣旨
6年② 活用しよう 「算数の力UPレッ
スン」を使って,活用の問題に取り組む
授業の指導例を紹介します。
この問題のねらい
整数に置き換えて導いたことばの式が,
小数や分数の場合でも適用できることを
理解し,整数・小数・分数のどの場合で
も数量の関係を数直線に表し基準量を求
めることができるようにする。
問題内容と評価の観点
①のように整数の場合は問題場面をイメ
ージしやすく立式はたやすい。しかし問
題の構造が同じでも,小数や分数になる
と困難を感じる児童が多いと思われる。
数量の関係を数直線に表して立式し,問
題解決できたかどうかを評価したい。
指導のポイント
数量関係を把握し立式する際の有効な
手立てとして,<整数を用いて簡単な場
合に置き換えて考える>から,<言葉の
式に表して考える>へとすすみ,それを
適用して小数や分数の場合も同様に考え
る。①は容易であるが,②③の小数や分
数の場合は困難を感じる児童が多い。そ
の場合には,全体で上記の手立てを確認
した上で、①において異なる整数を用い
ての類題から,②のプロセスを丁寧にす
すむよう配慮しながら,自力解決の場面
を設定したい。また,数直線に数量を表
すだけでなく,数直線をよむ活動を取り
入れることにより,基準量・比較量・割
合についての理解を深めたい。
授業展開例①
【2】授業展開例
目
標:数直線を活用するとともに,言葉の式に表したり簡単な場合に置き換えて考え
たりすることによって立式し,問題解決する。
準備物:ワークシート
展
開:
学習過程
(時間)
つかむ
(5分)
・学習活動と◎予想される児童の反応
・本時の課題を把握する。
・評価規準と※留意点
※本時の課題を把握
数直線を使って,次の問題を考えまし
するようにする。
ょう。
※児童の実態によ
① 2mの重さが6㎏の棒がありま
り,自力解決で立式
す。この棒1mの重さは何㎏です
が難しいと予想され
か。
る場合には,「つか
② 0.8mの重さが 1.4 ㎏の棒がありま
む」の場面で,①を
す。この棒1mの重さは何㎏です
全体解決し,立式の
か。
手立てとして,<言
③
mの重さが
㎏の棒があり
ます。この棒1mの重さは何㎏で
葉の式で考える・簡
単な場合に置き換え
る>とよいことを確
すか。
認するとよい。
(ドリル本誌誌面中では,
児童が家庭学習でも取り
組みやすくするため,①と
②の問題をもとにして③
で作問をするように出題
しています。)
ためす
(10分)
自分で考えてみましょう。
・数量の関係を数直線に表し,自力解決
※自分の考えた過程
する。
が分かるように,立
・ワークシートに,数直線とともに立式
式の根拠も記述する
の根拠を記述するよううながす。
よううながす。
①
0
6 (kg)
0
2 (m)
6÷2=3
3㎏
※①の理解が困難な
児童に対しては,他
の整数値も用意し,
いくつかの例から帰
授業展開例②
②
0
(kg)
0
③
0.8
1
(m)
1.4÷0.8=1.75
1.75 ㎏
0
(kg)
0
(m)
納的に立式の根拠を
考えさせる。
・数量の関係を数直
線に表し,問題解決
している。
深める
(20分)
発表しましょう。
・①から③について,式と数直線ととも
※まず結論を述べ,
に,立式の根拠を述べるようにする。
理由を述べるように
<①について>
し(児童の反応例の
◎ 式は6÷2です。なぜなら1mは2
様に),演繹的な考え
mの半分だから2でわればいいからで
方を培うようにす
す。
る。
◎ 式は6÷2です。なぜなら,言葉の
※言葉や式を使っ
式を考えると,(棒の重さ)÷(棒の長さ)
て,理由を分かりや
=(1mの重さ)だからです。
すく説明するように
<②について>
する。
◎ 式は 1.4÷0.8 です。なぜなら,言葉
・数量の関係を数直
の式を考えると,(棒の重さ)÷(棒の長
線に表し,それに基
さ)=(1mの重さ)だからです。
づいて立式をして答
◎ 式は 1.4÷0.8 です。なぜなら,簡単
な場合に置き換えて,2mの重さが6
㎏ の棒だと考 えると6÷ 2だからで
す。
<③について>
◎ 式は
÷
です。なぜなら,言葉
の式を考えると,(棒の重さ)÷(棒の長
さ)=(1mの重さ)だからです。
◎ 式は
÷
です。なぜなら,簡単
な場合に置き換えて,2mの重さが6
㎏ の棒だと考 えると6÷ 2だからで
す。
え,その理由を説明
できている。
授業展開例③
①から③の問題で,どの場合にもいえる
※どの場合にでも言
ことはありませんか。
えることを見いだす
・帰納的な考え方で共通点を考え,基準
(帰納的な考え方を
量を求める時は常にわり算であること
培う)場を意図的に
を見いだすようにする。
設定するようにす
◎ どの問題もわり算です。
る。
◎ どの問題も,1に当たる量を求めて
※数直線から共通す
います。
るところを見いだす
◎ 整数でも小数でも分数でも,1に当
活動を通し,基準
たる量を求める時はわり算をしていま
量・比較量・割合に
す。
ついての理解を深め
るようにする。
活用する
(10分)
下の数直線の□に(
※児童の実態に応じ
)の中から選んだ
数を記入し,数直線にあう問題を作り,
たり,自由に数値を
その問題に答えましょう。
(0.6
0.75
て,□の場所を変え
入れるようにしても
)
よい。
0
0
□?
□
(kg)
(m)
1
<板書例>
数直線を使って考えよう。 式を立てる時…<言葉の式で考える・簡単な場合に置きかえる>
m の重さが
kg の棒が
2m の重さが 6kg の棒が
0.8m の重さが 1.4kg の棒
あります。この棒 1m の
があります。この棒 1m
あります。この棒 1m の重
重さは何 kg ですか。
の重さは何 kg ですか。
さは何 kg ですか。
子どもの考えた式
子どもの考えた式
子どもの考えた式
数直線
数直線
数直線
どの場合にもいえること
( 0.6
0.75
)
ワークシート①
6年
組
番 名前
★数直線をかいて,考えましょう。
①
0
6 (kg)
0
2 (m)
考えた式の理由を説明しよう。
式
答え
②
0
0
(kg)
0.8
1
考えた式の理由を説明しよう。
(m)
式
答え
③
0
(kg)
考えた式の理由を説明しよう。
0
(m)
式
答え
このプリントは、
2010 年 3 月 31 日まで使用できます。
ワークシート②
6年
組
番 名前
★下の数直線の□に( )の中から選んだ数を記入し,数直線に
あう問題をつくり,その問題に答えましょう。
( 0.6
0
0
0.75
)
□?
□
(kg)
(m)
1
<問題>
[式]
答え
このプリントは、
2010 年 3 月 31 日まで使用できます。