ミュラー管遺残症候群の 2 例

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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ミュラー管遺残症候群の2例
松田, 知己; 山田, 幸隆; 三宅, 弘治
泌尿器科紀要 (1994), 40(10): 893-895
1994-10
http://hdl.handle.net/2433/115374
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
893
泌 尿 紀 要40:893-895,1gg4
ミ ュ ラ ー 管 遺 残 症 候 群 の2例
名古屋大学医学部泌尿器科学教室(主 任:三 宅弘治教授)
松田
知 己,山
PERSISTENT
田
MULLERIAN
REPORT
Tomomi Matsuda,
幸 隆,三
DUCT
OF TWO
Yukitaka
宅
弘治
SYNDROME
:
CASES
Yamada
and Koji Miyake
From the Department of Urology, Nagoya University School of Medicine
Persistent Mullerian duct syndrome is characterized by the retention of mullerian derivatives in
patients otherwise normally virilized.
Clinically, the persistence of uterus and tubes leads either
to cryptorchidism or inguinal hernia. The condition is usually discovered at surgery.
We report two boys with this anomaly.
In each case, hysterectomy and orchidopexy were
carried out. The gonads were testes and the karyotype was 46, XY. Long-term follow up for
these patients is necessary because of an increased risk of testicular tumors and infertility which
will develop in future.
(Acta Urol. Jpn. 40: 893-895, 1994)
Key words:
Persistent
Mullerian
duct syndrome
現症:外 陰部 は正 常 男 性 型.尿 道下 裂 も認 め な い.
緒
男 性 の 場 合,胎
言
染色 体 分析:46XYで
生 期 に ウ オ ル フ 管 は 精 巣 よ り分 泌 さ
れ るテ ス トス テ ロ ンに よ り分 化 し,精
精 嚢,射
精 管 と な る.一
方,ミ
抑 制 因 子 に よ り退 縮 す る.ミ
巣 上 体,精
管,
手 術 時所 見:1992年2月27日
ュ ラ ー 管 は ミュ ラ ー 管
と開腹 術 を 施行 した.
左 ヘル ニア嚢 内 に 左精 巣 と左卵 管 が,左 内 鼠径 輪 の 位
置 に 子宮 が,膀 胱 の後 面 に右 精 巣 が位 置 して いた.精
ーラ ー管遺 残 症候 群
(persistentMullerianductsyndrome)と
異常 を認 め なか った.
逆 行 性 尿道 造 影:男 性 膣 は認 めな か った(Fig.2)・
は,ミ
ュ
巣 の大 き さは 両側 と も正 常 大 で あ った.両 側 の精 管 と
ラ ー 管 抑 制 因 子 の 欠 損 も し く は 作 用 の 障 害 に よ り,ミ
も容 易 に確 認 で きた が,両 側 と も異 常 に 屈 曲 して,末
凸 ラー 管 由 来 組 織 で あ る 卵 管,子
梢 側 は子 宮 壁 に しだ い に接 近 して侵 入 して いた.右 精
宮,膣
上部 が遺 残 す
る と 考 え られ て い る 比 較 的 稀 な 症 候 群 で あ る.
今 回 わ れ わ れ は,ミ
験 し た の で,文
巣 生 検 と可 及 的 な子 宮,卵 管 の 切除 を 行 った後(Fig・
ュ ラ ー 管 遺 残 症 候 群 の2例
を経
献 的 考 察 を 加 え て 報 告 す る.
3),両 側 精 巣 を陰 嚢 内 に 固定 した.固 定 は精 管,精 巣
動 静脈 と も切 断す る こ とな く充 分 な高 さに施 行 しえた.
生 検組 織 像:精 細 管 内 の上 皮細 胞 は ほ とん ど分 化 し
症
例
て い な い。 間質 組 織 にLeydigce11へ
な い.精 巣 組織 で あ り,年 齢 相応 の発 育 を示 して い る
症 例1
患 者=1歳,男
主 訴:右
現 病 歴:近
陰 嚢 内 容 欠 如,左
以上 よ り,ミ ュ ラー管 遺 残症 候 群 と診 断 した.
鼠径 部 膨 隆
記す べ きこ とな し
医 に て 右 停 留 精 巣,左
断 され,1991年ll月22日
した が,左
と思わ れ た.
児
家 族 歴 ・既 往 歴:特
れ,腹
の分 化 を認 め
症 例2
鼠 径 ヘ ル ニ ア と診
手 術 を うけ た.左
ヘ ル ニ ア 嚢 を 開 け る と,子
側 か ら開 始
宮,卵
管が現
腔 内 よ り右 性 腺 と 考 え られ る も の が 出 て き た
(Fig.D.そ
れ で 内 鼠 径 輪 よ り腹 腔 を 観 察 した だ け で
手 術 は 終 了 さ れ,1992年2月4日
当 科 に 紹 介 さ れ た.
患 者=10ヵ 月,男 児
主 訴:右 鼠 径 部 膨 隆,左 陰嚢 内容 欠 如
家 族 歴 ・既 往 歴=特 記 す べ き こ とな し
現 病 歴:近 医(症 例1と 同一 病 院)に て,右 鼠 径 ヘ
ル ニア,左 停 留 精巣 と診 断 され,1992年5月19日
手術
を うけ た.右 側 か ら開始 した が,右 ヘ ル ニア嚢 を 開け
泌 尿 紀 要40巻10号1994年
894
㌧ 趨 脳
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Findingatoperation=uterus,tubesand
Fig.1・
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F玉g.4.Findingatopera重ion2uterus,tubes
gonadsinIeftinguinalsac・
ろ
願1壷
姦,謹
難
汐伽二
Fig.5.Histologicpictureofasect量onfrom
thegonad=normaltesticularstructure.
現 症:外 陰 部 は正 常 男 性 型.尿 道 下 裂 も認 め な い.
染 色 体分 析:46XYで
異 常 を認 め なか った.
逆 行 性 尿道 造 影 ・男 性 膣 は 認 め なか った.
手 術 時所 見 ・1992年6月25日 開腹 術 を施 行 した.右
ヘ ル ニ ア嚢 内に 右精 巣 と右 卵 管 が ,右 内鼠 径 輪 の 位置
Fig.2.Retrogradeurethrography.
に子 宮 が,膀 胱 の 後面 に左 精 巣 が 位置 して いた.精 巣
の大 き さは両 側 と も正 常大 で あ った.精 管 の屈 曲 は認
め なか った.症 例1に 比べ る と子 宮 は 少 し小 さか った
両側 精 巣 生検 と可 及 的 な 子 宮,卵
管 の 切 除 を 行 った
後,両 側精 巣 を陰 嚢 内 に 固定 した.今 回 も精 管,精 巣
動静 脈 共 温存 し,充 分 な 高 さ に固 定 しえ た.
生 検 組 織 像:症 例1同 様 で,精 巣 組 織 で あ り,年 齢
相応 の発 育 を示 してい た(Fig.5).
以上 よ り,ミ ュラ ー管 遺 残症 候 群 と診 断 した.
考
Fig.3.Grossspecimen
ductstrecture.
男 性 の 場 合,胎
tolicellよ
る と,子
宮,卵
き た(Fig.4).今
6月1日
管 が み られ,腹
腔 内 よ り左 性 腺 が 出 て
回 も 創 を 閉 じ 手 術 を 終 了 し,1992年
当 科 に 紹 介 さ れ た.
察
ofindsed:mullerian
退 縮 す る.ミ
生 期 に ミ ュ ラ ー 管 は,精
巣 のSer-
り分 泌 さ れ る ミ ー ラ ー 管 抑 制 因 子 に よ り
ュ ラ ー 管 遺 残 症 候 群 と は,ミ
ュ ラ ー管 抑
制 因 子 の 欠 損 も し くは 作 用 の 障 害 に よ り,ミ
由 来 組 織 で あ る 卵 管,子
宮,腫
ュ ラ ー管
上 部 が遺 残 す る と考 え
松 田,ほ
られ てい る比 較的 稀 な症 候 群 で あ る.一 方,ア
か:ミ
895
」ラ ー管遺 残 症 候群
ソ ドロ
文
ゲンの作用 は正 常 で あ り,外 性 器 は正 常 男性 型 を示 す.
症状 としては,本 症 例 の よ うに一 側 の停 留精 巣 と反
1)FernandesET,HollabaughRs,YoungJA,
etal.:Persistentmullerianductsyndrome.
対 側の鼠 径 ヘル ニアを示 した り,両 側 の停 留精 巣 と鼠
径 ヘル ニア を認 め る ことが 多 く,手 術 時 に ヘ ル ニ ア嚢
献
Urology36=516-518,1990
2)MahfouzES,IssaMA,FaragTI,etaLl
内よ り子 宮 を発 見 し診断 され る こ とが 多 い1-4)。 この
Persistentmullerianductsyndrome=report
た め鼠 径子 宮 ヘ ル ニア(Herniauteriinguinale)と
oftwoboyswithassociatedcrossedtesticular
ectopia.JPediatrSurg25:692-693,1990
も呼 ばれ ていた.
家族 発生 例 も報告 され て お り,劣 性遺 伝 と考 え られ
3)PappisC,ConstantinidesC,ChiotisD,et
a1..Persistentmullerianductstructuresin
てい る5).
cryptorchidmaleinfants:surgicaldilemmas.
治療 は,本 症例 の よ うに 幼 少児 に 発見 され た場 合,
精 巣固 定 とヘ ル ニア根 治術 が 必要 とな る.こ の際,精
Jpediatrsurg14:128-131,1979
4)CarvajalBusslingerMI,KuhlmannB,KaiserG,eta1.;Persistentmullerianductsyn-
管 は末梢 に な るにつ れ子 宮 に近 づ き,膣 壁 に侵 入 して
drome:acasereportEurJPediatr152:
い くの で,子 宮 との剥離 の 際 損傷 しない よ う注 意 を要
す る.遺 残す る ミュ ラー管組 織 を 切除 す るか 否 か につ
79,1993
5)Gr冊nJEandWilsonJD:Disordcrsofsex-
い ては意見 が 別れ て い る.ミ ュ ラー管 組織 を切除 す る
ualdifferentiation,Campbell'sUrology.
EditedbyWaIshPC,RetikAB,StamyTA,
際,精 管 を損傷 す る危 険 が あ る こ と,遺 残 ミュ ラー管
etaL6thed.,vo12,pl530,WBSaunders,
よ りの腫 瘍 の発 生 は報 告 され て いな い こ と よ り切 除 を
勧め ない報 告 もあ る5).切 除 して い る報告 で も ミュ ラ
ー管 の切除範 囲は精 管 が侵 入 す る手 前 まで の 可及 的 切
Philadelphia,1992
6)MartinEL,BennettAHandCromieWJ:
Persistentmullerianductsyndromewith
transversetcsticularectopiaandspermato-
除 としてい る場合 が 多 い1・2・s).
今後 の経過 観察 に お け る問題 点 と して妊 孕性 と精 巣
genesis.JUroll47=1615-1617,1992
7)辻
井 俊 彦,田
利 清 信,米
腫瘍 の発 生 が挙 げ られ る.妊 孕 性 に つ いて は,挙 児 を
Seminomaを
えた 報告 も あ る が7),精 液 検査 で 無精 子症 を示 した
ductsyndromeの1例.泌
尿 紀 要351905-910,
infertilemales.Urology28:138-141,1986
9)川
田
望,新
村 武 明,川
管 遺 残 症 の1例.臨
10)西
語
岡
候 群 の2例 を報 告 した.
伯,門
Seminomaを
1例.泌
鼠 径ヘ ル ニ アと停 留精 巣 を伴 った ミュ ラー管 遺残 症
大 な
D,etaL;Persistentmullerianstructuresin
過観 察 が必要 と思わ れ る.
結
か:巨
8)HerschlagA,SpitzIM,HochnerCelnikier
の交通 性に つ いて 疑問 が持 た れ た.精 巣腫 瘍 の 発生 に
つ い.(は 多 くの報告 が され て い る7・tO・11).注
意 深 い経
瀬 淳 二,ほ
し たPersistentmullerian
1989
り8),精巣 生検 で造 精 能 の低下 を認 めた 報 告 も あ る9).
症 例1で は,精 管 が両 側 とも異 常 に屈 曲 してお り,そ
合 併
添 和 久,ほ
か:ミ
ーLラ ー
泌39:157-159,1985
脇 照 雄,三
木 恒 治,ほ
合 併
ミュ ラ ー管 遺 残 症 候 群 の
し た
か:巨
大 な
尿 紀 要38:89-92,1992
11)EasthamJA,McEvoyK,sullivanR,etaL:
Acaseofsimultaneousbilateralnonseminomatoustesticulartumorsinpersistentmu11e-
本論文の要 旨は第1回小児泌尿器科学会にて発表 した.
rianductsyndrorne.IUro1148:407-408、
1992
(是
灘:窪:£
盗hll器)