2013/5/17 静岡支店 静岡市葵区追手町 9-22 TEL: 054-254-8301 特別企画:静岡県内の飲食料品メーカーの倒産動向調査 原料価格の高騰から前年度比3割増 ~ デフレ状況下で、販売価格に転嫁できず ~ はじめに 株高を受けた資産効果や賃金上昇への動きなどにより、一部の小売店では高額商品を中心に息 を吹き返し、消費改善の兆しが見え始めている。こうしたなか、生活必需品として底堅い需要が ある飲食料品業界では、リーマン・ショックに端を発した急激な景気後退に伴い節約志向が浸透 し、低価格化やサービス・製品の多様化などで同業者間競争は熾烈を極め、人口減と少子高齢化 の構造的な問題を抱えている。飲食料品メーカーでは、大手企業のプライベートブランドの台頭 により売り上げの獲得競争が激化しているほか、原材料価格の高騰が続き、デフレ傾向のなかで 販売価格への転嫁は難しく、厳しい収益環境を余儀なくされている。政府は、立場の弱い納入業 者の消費税増税分負担を軽減すべく、消費税転嫁対策の特別措置法案を国会に提出しているが、 消費増税時の小売価格次第では、中小の飲食料品メーカーの経営環境が悪化する可能性がある。 帝国データバンクでは、2008 年度(2008 年 4 月~2009 年 3 月)から 2012 年度(2012 年 4 月~ 2013 年 3 月)に倒産した飲食料品メーカー(負債 1000 万円以上、法的整理)を件数・負債総額推 移、製品別、地域別に集計・分析した。なお、静岡県内の飲食料品メーカーの倒産動向について も、倒産件数・負債総額推移、製品別を調査・分析した。 調査結果(要旨) 1. 飲食料品メーカーの 2012 年度の倒産件数は 208 件と、前年度を 32.5%上回る大幅増となった。 負債総額は、約 861 億円と前年度を 14.5%上回った。 2. 製品別では、「水産加工品」が 47 件となり、高水準で推移。2 番目に多かった「パン、菓子」 (34 件)は前年度比 21.4%増。増加率トップは、 「豆腐、油揚げ」 (16 件、前年度比+220.0%)。 3. 最も件数が多かった地域は、「関東」(44 件)を上回った「中部」(54 件)で、静岡県の水産加 工品メーカーの倒産が件数を押し上げた。 「北海道」 (24 件)は、水産や菓子関係を中心に前年 度の 2 倍に増加した。 4. 静岡県内では、2012 年度の飲食料品メーカー倒産件数は 21 件と前年度を 14 件上回った。また、 製品別では水産加工品が 11 件と前年度を 8 件上回った。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 1 2013/5/17 特別企画: 静岡県内の飲食料品メーカーの倒産動向調査 1.倒産件数・負債総額推移 ~ 倒産件数、増加ペースが加速 ~ 2012 年度の飲食料品メーカーの倒産件数は 208 件と、2011 年度の 157 件を 32.5%上回る大幅 な増加となった。2009 年 12 月に金融円滑化法が施行されたことで、2010 年度は 144 件と前年度 比 25.0%減と大幅に減少したもの の、2011 年度、2012 年度と 2 期連 続で増加。また、2012 年度は、2011 飲食料品メーカーの倒産件数・ 負債総額推移 倒産件数 (件数) 300 年度の増加幅(前年度比+9.0%) 250 を大幅に上回り、増加ペースが加速 200 負債総額 (億円) 2,000 1,500 1,000 500 150 した。 負債総額は、2010 年度の約 1725 億 200 万円から翌 2011 年度には、 0 -500 100 -1,000 50 -1,500 0 2008 約 751 億 9200 万円(前年度比▲ 56.4%)へ落ち込んだが、2012 年度 倒産件数 負債総額(百万円) 2009 2010 2011 2012 -2,000 (年度) 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 前年度比 (%) 208 124,249 192 74,618 144 172,502 157 75,192 208 86,100 32.5 14.5 は約 861 億円と前年度を 14.5%上回 った。 ~ 特に苦しい経営環境を余儀無くされている飲食料品メーカー ~ 飲食料品業界の倒産件数を業態別に比較すると、卸売業では 2011 年度が 303 件(前年度比▲ 1.9%)とほぼ横ばいとなったもの の、2012 年度は前年度を 11.6%上 飲食料品業界の倒産件数推移 (件数) 400 製造業 回る 338 件と 2 ケタの増加となった。 卸業 300 小売業 川下の小売業者の倒産件数は 2009 年度から緩やかに増加していたが、 2012 年度は前年度(360 件)を 1.7% 下回る 354 件でほぼ横ばいになり、 200 100 0 2008 飲食料品業界のなかでも製造業が 特に強い増加傾向を示している。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 製造業 卸業 小売業 2009 2010 2011 2012 (年度) 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 前年度比 (%) 208 393 359 192 334 325 144 309 342 157 303 360 208 338 354 32.5 11.6 ▲ 1.7 2 2013/5/17 特別企画: 静岡県内の飲食料品メーカーの倒産動向調査 ~ 製造業全体でも飲食料品メーカーの増加が顕著 ~ 製造業全体の倒産件数の前年度比推移をみると、2010 年度(1712 件、前年度比▲14.8%)、2011 年度(1550 件、同▲9.5%)、2012 年 製造業全体・飲食料品メーカ ーの倒産件数の前年度比推移 (%) 度(1466 件、同▲5.4%)と 3 期連 飲食料品製造 製造業全体 40.0 続で前年度を下回っていた。 30.0 20.0 一方、飲食料品メーカーでは、2011 10.0 年度、2012 年度は 2 期連続で前年度 を上回り、特に 2012 年度は前年度比 32.5%増と大幅な増加し、製造業全 0.0 ▲ 10.0 ▲ 20.0 ▲ 30.0 体と比較しても特に厳しい経営環境 2008 を強いられている現状が浮き彫りと 飲食料品製造 製造業全体 なった。 2009 2011 2012 (年度) 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 前年度比 (%) 208 1,848 192 2,009 144 1,712 157 1,550 208 1,466 32.5 ▲ 5.4 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 前年度比 (ポイント) ▲ 7.7 8.7 ▲ 25.0 ▲ 14.8 前年比推移 (単位:%) 飲食料品製造 製造業全体 2.製品別 2010 倒産件数推移 8.9 22.3 9.0 ▲ 9.5 32.5 ▲ 5.4 23.5 4.0 ~ 大豆高騰で「豆腐・油揚げ」の増加が目立つ ~ 飲食料品メーカーの倒産件数を製品別に見ると、コスト増を販売価格に転嫁できなかった「水産 加工品」が 2011 年度に前年度を 17 件 主な 製品別飲食料品メーカーの倒産件数推移 上回る 43 件となり、翌 2012 年度も前 (件数) 50 年度比 9.3%増と高水準で推移。2 番 40 目に多かった「パン、菓子」も毎期 30 30 豆腐、油揚げ 件前後で推移し、直近の 2012 年度で 20 めん類 は前年度比 21.4%増の 34 件となった。 10 水産加工品 パン、菓子 惣菜 なかでも原料の大豆価格の高騰によ り収益が圧迫され、燃料費などの製造 冷凍調理食品 0 2008 2009 2010 2008年度 コストが重荷になっている「豆腐、油 揚げ」は、2011 年度(5 件)から 2012 年度(16 件) にかけて前年度比 220.0% の大幅な増加となり、増加率が最も高 かった。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 2011 2012 (年度) 2011年度 2012年度 製品別飲食料品メーカーの倒産件数推移 2009年度 2010年度 前年度比 (%) 水産加工品 37 40 26 43 47 9.3 パン、菓子 34 39 30 28 34 21.4 豆腐、油揚げ 19 11 7 5 16 220.0 5 8 6 4 11 175.0 11 13 10 6 11 83.3 7 3 3 6 10 66.7 95 78 62 65 79 ▲ 2.6 208 192 144 157 208 32.5 めん類 惣菜 冷凍調理食品 その他 合計 3 2013/5/17 特別企画: 静岡県内の飲食料品メーカーの倒産動向調査 3.地域別 ~ 静岡の水産加工品メーカーが大幅増 ~ 飲食料品メーカーの倒産件数を地域別に見ると、「中部」 (54 件、前年度比+125.0%)、「関東」 (44 件、同+25.7%)、 「北海道」(24 件、同+100.0%)、「近畿」(20 件、同+11.1%)、「東北」 (19 件、同+137.5%)、「北陸」(16 件、同+6.7%)の 9 地域中 6 地域が 前年度を上回った。なかでも最も件数 が多かった「中部」は、静岡県の地場 産業である水産加工品メーカーが件 数を押し上げ、前年度の 24 件から倍 以上の増加となった。「北海道」は、 地域別飲食料品メーカーの倒産件数推移 (件数) 70 北海道 60 東北 50 関東 北陸 40 中部 30 近畿 20 中国 10 四国 九州 0 2008 24 件と水産加工や菓子関係のメーカ ーを中心に2倍に増えた。 一方、「中国」(12 件、同▲14.3%)、 「四国」(7 件、同▲30.0%)、「九州」 (12 件、同▲42.9%)の 3 地域は、前 年度を下回る結果となった。 北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州 合計 2009 2010 2011 2012 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 15 12 53 8 30 42 17 1 30 208 13 18 58 12 22 25 16 10 18 192 14 15 33 7 18 23 15 4 15 144 12 8 35 15 24 18 14 10 21 157 (年度) 2012年度 前年度比 (%) 24 100.0 19 137.5 44 25.7 16 6.7 54 125.0 20 11.1 12 ▲ 14.3 7 ▲ 30.0 12 ▲ 42.9 208 32.5 4.主な倒産企業 2010 年度以降の主な倒産企業は下記の通り。負債 100 億円を超えたのは、2011 年 2 月に会社更 生法の適用を申請した「トレハロース」など糖質原料の製造業者・ (株)林原(岡山県、負債 1322 億 7100 万円)の1件にとどまった。上位 15 社のうち、シラスやちりめんなどの水産加工品製造 業者の(有)ユタカ商会(三重県、負債 66 億 6300 万円)やイカなどの水産加工業者の市川管財 (株)(青森県、負債 55 億 2000 万円)など水産加工品関係のメーカー倒産が多く見受けられた。 近年の飲食料品メーカーの主な倒産企業 TDB 企業コード 1 商号 製品 負債 (百万円) 態様 所在地 倒産年月 132,271 会社更生法 岡山県 2011年2月 610037136 ㈱林原 甘味料「トレハロース」など糖質原料 2 220063273 ミヤマブロイラー㈱ ブロイラー、ヒナ・鶏肉 8,211 民事再生法 群馬県 2012年1月 3 982500904 ㈱健康医学社 黒酢健康食品 7,700 破産 東京都 2012年10月 4 470182133 ㈲ユタカ商会 シラス、ちりめんなど水産食料品 6,663 破産 三重県 2011年8月 5 110047891 市川管財㈱ イカの水産物加工品 5,520 特別清算 青森県 2013年1月 6 530164643 エスケー食品㈱ エビフライ・天ぷらなど冷凍食品 5,385 民事再生法 →破産 兵庫県 2012年5月 7 100081496 ㈱尾坪商店 ワカメやめかぶなど海藻類 4,137 民事再生法 岩手県 2010年5月 8 020071707 マル海光洋水産㈱ カニの水産食料品 3,970 破産 北海道 2013年3月 9 340173453 ㈱ニイブロ ブロイラー 3,700 民事再生法 新潟県 2012年1月 10 982273092 ㈱横浜シウマイ シウマイなど中華惣菜 3,500 民事再生法 →破産 神奈川県 2012年6月 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 4 2013/5/17 特別企画: 静岡県内の飲食料品メーカーの倒産動向調査 5.静岡県内の飲食料品メーカーの倒産動向 Ⅰ.倒産件数・負債総額推移 2012 年度の飲食料品メーカーの倒産件数は 21 件と、2011 年度の 7 件を 300.0%上回る大幅な 増加となった。2009 年 12 月に金融円滑化法が施行されたことで、2009 年度以降減少傾向にあっ たが、2011 年度、2012 年度と 2 期連続で増加。また、2012 年度は、中部地区を引き上げるほど、 増加ペースが加速 静岡県内の飲食料品メーカーの倒産件数・負債総額推移 した。 負債総額は 81 億 6100 万円で前年度 の 9 億 8200 万円を 倒産件数 負債総額(百万円) 連続で増加した。 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 前年度比 (%) 11 5 4 7 21 300.0% 3,167 1,032 261 982 8,161 831.1% 静岡県内の業態別飲食料品メーカーの倒産件数推移 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 前年度比 (%) 製造業 11 5 4 7 21 300.0% 卸業 12 7 5 14 11 78.6% 9 8 12 7 17 242.9% 831.1%上回る大幅 な増加となり、2 年 2008年度 小売業 Ⅱ.製品別 2012 年度の飲食料品メーカーの倒産件数を製品別に見ると、コスト増を販売価格に転嫁できな かった「水産加工品」が 11 件で前年度を 8 件上回り、全国水準を引き上げるほど増加した。 静岡県内の製品別飲食料品メーカーの倒産件数推移 水産加工品 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 前年度比 (%) 3 1 3 3 11 366 .7% パン、菓子 1 0 1 1 1 100 .0% 豆腐、油揚げ 0 0 0 0 1 - めん類 0 0 0 0 1 - 惣菜 0 1 0 0 1 - 冷凍調理食品 1 0 0 1 1 100 .0% 製茶 6 2 0 0 2 - その他 0 1 0 2 3 150 .0% 11 5 4 7 21 300 .0% 合計 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 5 2013/5/17 特別企画: 静岡県内の飲食料品メーカーの倒産動向調査 Ⅲ.主な倒産 2010 年度以降の主な倒産企業は下記の通り。負債 10 億円を超えたのは、2012 年 5 月に破産を申 請した「鰹のたたきやマグロなど水産加工品」を手掛けていた土佐鰹水産㈱1 社だが、上位 10 社 のうち、水産加工品が 5 社と半数を占め、高水準となった。 近年の飲食料品メーカーの主な倒産企業 TDB 企業コード 商号 負債 (百万円) 製品 鰹やマグロなど水産加工品 態様 所在地 倒産年月 3,300 破産 藤枝市 2012年5月 1 420251072 土佐鰹水産㈱ 2 420216743 ㈱桜井佐兵衛商店 日本茶など飲料 970 破産 静岡市葵区 2008年5月 3 410103915 ㈱杉安水産 あじの干物など水産加工品 930 破産 沼津市 2008年5月 4 410156196 ㈱サンオーネスト アイスクリームなど冷凍食品 863 民事再生法 沼津市(倒産時) 2009年11月 5 410201433 エムディーエフ㈱ ダイエット食品など健康食品 850 破産 富士市 2008年3月 6 410072087 ㈲直久 中華麺、うどんなどめん類 793 破産 三島市 2013年2月 7 410123168 石田フード㈱ きんぴら、ポテトサラダなど和洋惣菜 700 民事再生法 賀茂郡 2012年9月 8 410149807 ㈱サ印水産 あじの干物など水産加工品 640 破産 沼津市 2012年6月 9 420336044 明神食品㈱ マグロ、鰹など刺身など水産加工品 619 破産 藤枝市 2012年5月 10 420087969 ㈱やま八 鰹節や鳴門巻など水産加工品 590 破産 焼津市 2012年11月 Ⅳ.まとめ 2013 年に入って、鰹節などの原料となる冷凍鰹の国際相場が急騰したため、ツナ缶業者が値上 を行っている。また、近年苦戦している鰻も稚魚であるシラスウナギが不漁であったことから高 値相場で推移し、養鰻場や鰻加工業者などは厳しい状況が当面続くものとみられる。2012 年度の 静岡県水産加工品業者の倒産が全国の 23.4%を占め、高水準であったが、今年度も引き続き懸念 材料が多いことから、倒産動向には留意しておく必要があろう。 【 内容に関する問い合わせ先 】 株式会社帝国データバンク TEL 054-254-8301 静岡支店 竹岸 隆浩 FAX 054-254-6602 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法の範囲内でご利用い ただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 6
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