めっき剥がれが発生したが、原因と対策は?

A-7-11
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
制定
めっき剥がれ
2012年9月1日
改訂
Q. めっき剥がれが発生したが、原因と対策は?
A. 溶融亜鉛めっきの不具合としては、
「やけ」、「スパングル」、「浮き」、「剥離」等
がありますが、なかでも「剥離」および「浮き」は、溶融亜鉛めっきとしては致命的な欠陥といえます。
最近、角形鋼管などで「剥離」や「浮き」の現象が発生した事例が報告されています。これらに共通
していることは、強度区分490N/mm2で、実質的に影響しているのは、化学成分のケイ素(Si)の含有
量と考えられるとされています。
ケイ素は、鋼材の製造過程において、脱酸剤として用いられています。490N/mm2級の鋼材では、
400N/mm2級鋼材と比較すると、約2倍含まれています。ケイ素は鋼材の降伏点・引張強さ・延性・衝
撃特性を若干高める働きをしますが、溶融亜鉛めっきの付着性に関して最も影響を与える元素と
いえます。
一般に、亜鉛浴が長時間になるほど、付着量が大きくなりますが、同じ時間亜鉛浴をさせても鋼材
の種類が違うと亜鉛の付着量が変わります。特に鋼材のケイ素含有量が多いと合金反応が活性化
し、成長すると「剥離」や「浮き」の原因になります。
対策として、原因が化学成分の問題であるので、鋼材の化学成分の調整しかありません。すなわ
ち、鋼材が鉄骨加工工場に搬入されてからでは手の打ちようがないので、溶融亜鉛めっき仕様の
鋼材で対応するしかありません。
また、板厚の大きい鋼材は、めっき槽に浸漬する時間が長くなり亜鉛の付着量が大きくなる傾向は
一層強いので、十分な注意が必要です。
鋼材メーカーと事前に打合わせて、溶融亜鉛めっき仕様の鋼材をロール発注するのがベストですが、
鋼材の成分調整ができないものであれば、溶融亜鉛めっき仕様を常温亜鉛めっきや溶射に変更
するように設計と相談する必要があります。
冷間成形角形鋼管(STKR)においても、溶融亜鉛めっきで、角部が割れた事例が報告されており、
この場合も事前に鋼管メーカーに溶融亜鉛めっき仕様であることを伝えておけば「割れにくい冷間コラ
ム」を納入してくれるようです。
※スパングル:めっき後に鋼板表面に現れる花紋をスパングルと呼ぶ
高力ボルト接合部でのめっき剥がれの例
Si(シリコン含有量)と付着量の関係
出典:鉛亜鉛需要開発センター 技術資料 「溶融亜鉛メッキに対する鋼材の化学成分の影響」
日建連/鉄骨専門部会