電 力 輸 送 電力中央研究所報告 報告書番号:H 0 7 0 0 4 電力系統瞬時値解析プログラムの開発 (その 2) −定常解計算基礎アルゴリズムの開発− 背 景 当所ではパワーエレクトロニクス機器が導入された電力系統に対しても解析性能 が高く,また拡張性にも優れた電力系統瞬時値解析プログラム XTAP (eXpandable Transient Analysis Program) の開発を進めている (1)。電力系統の瞬時値解析(過 渡現象解析)では初期値として定常解が必要となるが,パワーエレクトロニクス機 器等が発生する高調波成分や回路の不平衡を考慮できる実用的な定常解計算手法は 存在しない。一方,電子回路解析の分野で開発されたシューティング法 (2) は高調波 成分や回路不平衡が取り扱えるが,電力系統解析で必須となる潮流条件の指定がで きない。 目 的 高調波成分や回路不平衡を考慮でき,かつ,潮流条件の指定が可能な電力系統定 常解計算手法を開発する。 主な成果 1. 手法の開発 シューティング法の求解過程に潮流条件の式を付加することで,高調波成分と回 路不平衡を考慮でき,かつ,潮流条件の指定が可能な電力系統定常解計算手法を開 発した(図 1)。開発手法では計算の核となる部分に瞬時値解析を用いるため,瞬 時値解析用の各種電力機器モデルをそのまま利用できる(定常解析用にモデル開発 を行う必要がない)という利点がある。 2. 開発手法の検証 (1) 高調波成分が存在しない三相平衡した系統において,開発手法による定常解は, 従来の正相分潮流計算による定常解と一致する。 (2) 図 2 (a) は自励式 SVC(フィルタなし)が大きな高調波を発生し,1 相欠相に より不平衡となった配電系統の例である。図 2 (b) は,開発手法と従来の三相 潮流計算による母線各相の基本波有効電力および無効電力であり,高調波成分 の考慮が必要なことが明らかである。また,図 2 (c) は配電線 1 の b 相に流れ る電流の定常波形計算結果であり,定常解に高調波が多く含まれる。 今後の展開 XTAP の定常初期化機能として分布定数線路や動特性を考慮した発電機,制御系等 の取り扱い手法を確立する。 (1) 研究報告 H06002, 「電力系統瞬時値解析プログラムの開発(その1) ―基本設計―」,平成 19 年 3 月. (2) 電圧・電流波形一周期の出発値と終点値が一致すれば定常解であるという条件を利用し,解を 求める手法。終点値を狙い撃ち(シューティング)するように出発値を調節することからこの 名が付いた。 開発手法 高調波 成分の考慮 回路不平衡 の考慮 シューティング法 電力潮流 条件の指定 従来の三相潮流計算 従来の正相分潮流計算 図1 開発手法 3 基準母線 (60 Hz) 配電線1 (TL1) 配電線2 (TL2) 2 p.u. 1.05 ∠ 0° ■ 開発手法 □ 従来手法 2.5 G1a 1.5 2a 1a 1 TX 1.05 ∠ −120° 0.5 G1b 2b 1b 欠相 1.05 ∠ −240° 0 TX P1a P1b P1c Q1a Q1b Q1c 基本波有効電力,無効電力(1 MVA ベース) G1c (b) 有効,無効電力計算結果 2c 1c TX TL1 = 0.1 + 0.015j TL2 = 0.1 + 0.015j TX = 0.01 + 0.003j 6.6 kV / 1 MVA ベース 自励式SVC (ma = 0.9, γ = −3°) PQ 指定 P2a = P2b = P2c = 1 p.u. Q2a = Q2b = Q2c = 0.83 p.u. 4 2 0 −2 (a) 系統図 −4 0 1/60 Time (Secs) (c) 配電線 1, b 相の定常電流波形計算結果 (b) において,基本波成分の有効電力 P, 無効電力 Q の添え字が母線番号と対応 する相を示す。(c) は開発手法により得られた配電線 1, b 相の定常電流波形であ る。なお,この計算結果の妥当性を検証するために,計算結果をセットして瞬 時値計算を行った結果,指定した潮流条件が得られた。 図2 自励式 SVC(フィルタなし)を含む配電系統における計算結果 研究報告 H07004 キーワード:電力系統,瞬時値解析,定常解析,潮流解析,高調波 担当者 連 國龍 (電力技術研究所・高電圧・電磁環境領域) 連 絡 先 (財)電力中央研究所 電力技術研究所 Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected] [非売品・不許複製] C 財団法人電力中央研究所 平成20年5月 ○ 07−014
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