「太陽光発電に搭載するFRT機能の経済効果」平成26(2014)

太陽光発電に搭載する FRT 機能の経済効果
~ 全国大で太陽光発電 53GW 普及時に 1 兆 3,000 億円の効果 ~
太陽光発電( PV)への FRT 機能の搭載が系統連系規程( JEAC
9701-2012)で要件化されました。FRT 機能はどれくらいの経済効果が
あるのでしょうか?
※FRT(Fault Ride Through):系統擾乱時の PV 運転継続機能
技術開発研究所
電力品質チーム 谷川 知也さん
FRT 機能の効用
1.4
1.2
普及相当)に 3 相地絡故障(故障継続時間 70ms)
1
を発生させたときの系統電圧のシミュレーション結果
を図 1 に示します。FRT 機能がない場合,電圧低下
系統電圧(p.u.)
7.5GW の PV が連系するある系統(全国大 53GW
で PV が大量に脱落(電圧低下率 20%で脱落と想
く,無効電力消費が大きい状態となり,系統電圧を
不安定化させます。FRT 機能により PV を脱落させ
ないことが誘導機減速の抑制につながり,電圧の不
安定現象を回避します(図 2)。
0
0.6
故障除去後の電気トルク(FRT機能搭載)
0.5
〃 電気トルク(FRT機能なし-PV脱落)
機械トルク
0.4
定常時
(安定点)
0.3
0.2
不安定平衡点
(故障除去直後のモーターの回転数がこの点
より低いと定常時の安定点には戻れない)
0.1
0
0.9
0.95
1
FRT機能なしPVにSVCを追加
1.2
系統電圧(p.u.)
1
SVCなし
SVC 60%
SVC 70%
SVC 80%
0.8
0.6
0.4
(5.47GW)の SVC が必要と試算されます。これは
0.2
1,640 億円の設備投資に相当します(SVC の単価を
0
済効果のある機能なのです。
0.85
1.4
そこで,FRT 機能の効果を SVC の導入回避量から
1 兆 3,000 億円にもなります。FRT 機能は非常に経
5
図 2 誘導機負荷の不安定現象の説明
SVC 量が増加すると電圧回復を速めます(図 3)。
3 万円/kVA として計算)。これを全国大で見積もると
4
誘導機負荷の角速度ω (p.u.)
SVC は電圧回復を助ける電力設備のひとつで,
秒で 0.8 まで回復させるには, PV 導入量の 75%
3
FRT機能を搭載したPVの方が電気トルクが
大きいため誘導機負荷は減速しにくい
0.7
FRT 機能の経済効果
のない PV だけで構成された場合に,系統電圧を 1
2
時間(sec)
0.8
0.8
経済的に評価してみます。前出の系統が FRT 機能
1
図 1 系統故障除去後の系統電圧(SVC なし)
誘導機負荷の電気トルクと機械トルク (p.u.)
去後,誘導機負荷は減速して有効電力消費が小さ
電圧不安定発生
-1
誘導機負荷による電圧不安定現象
50%強を占めていることがわかっています。故障除
0.4
0
搭載した PV は電圧回復しています。
観測データ分析から誘導機負荷(モーター)が負荷の
PVなし
FRT機能搭載PV
FRT機能なしPV
0.6
0.2
定)してしまい,電圧回復できませんが,FRT 機能を
図 1 の理由を説明します。北陸系統における瞬低
電圧不安定回避
0.8
-1
0
1
2
時間(sec)
3
図 3 SVC 量と系統電圧
(※SVC 量は PV 導入比)
4
5