1 (昭和48年11月日本造船学会秋季識演会において鱗演) 1-1 二次元柱体及び軸対称物体のまわりの Oseen流れについて 正 員 木 下 健* Onthetwo-dimensionalandtheaxi-symmetric Oseenflowpastanarbitrarybody byTakeshiKinoshita,Member Summary Thispaperpresentsamethodforcalculatingthetwo-dimensionalortheaxi-symmetricOseen flowpastanarbitrarybodyatafiniteReynoldsnumber.Anintegralequationfortheunknown d e n s i t i e s o f t h e l i f t i n g a n d d r a g g i n g O s e e n l e t s d i s t r i b u t e d o n t h e b o d y s u r f a c e i s t r a n s f o r m e d i n t o asetoflinearsimultaneousequationstoobtainthesolution.Inconsequenceofthepresent numericalcalculations,theseresultsareobtained. (1)"AnextendedOseenapproximation"isbetterthantheusualOseenapproximationsofar asthesurfacepressuredistributionisconcernedathighReynoldsnumber. (2)ApairofstandingvorticesattachingtothebodyoccurathighReynoldsnumberseven intheOseenflow. (3)Thevorticitydistributionaroundabodyisverysimilartothatofthesolutionofthe Navier-Stokesequation. 1 緒 言 肥大船の自航試験等に現われる不安定現象,操縦性試験における異常現象を解明するためには,船尾流場の基 本櫛造を流体力学的に把掴する事が必要であると思われる。剥離を伴うこの種の問題は理論的に取り扱う事が極 めて困薙である。完全流体力学的に取り扱った例として,Riabouchinsky,Roshko等の不連続流の理詮がある が,死水の圧力を理論から決める事が出来ず,それらは半実験的な理誇と言わざるを得ない。それらとは別に, 乱動運動のある後流の時間平均流を近似的に「有効Reynolds数」(以後Reynolds数の班をR数と略す。)に おける層流と見なす立場がある。今井1)は2次元問題の場合「有効R数」=40としてNavier-Stokes方程式(以 後N、s.方程式と略す。)から求めた圧力抵抗を利用する,実用的な抵抗式を提案した。更に姫野2,3)は今井の提 案を吟味し,前部での境界条件はslipを許した方が良く,その時剥離点での粘性の影轡が上流へ及ばないよう にしなければならない事をあげ,物体上の圧力分布,Flowpatternをも説明しうるモデルを示した。そのモデ ルは任意の剥離点を持つOseenの漸近解を第0近似とし,第1近似として「有効R数」でのOseen方程式を 用いたものであるが,剥離点の特異性を複素関数の手法で処理しているため,3次元への拡張は容易でない。し かし,粘性流体力学の立場に立つこの手法は,船尾流場を基本的に解明する上で有用な方法の一つであると思わ れる。 著者は姫野の成果をふまえてOseen流れの利用価値を探るべく,Oseen方程式の基本解であるOseenletの 重畳により,2次元の場合と軸対称の場合のOseen流れを求め,低R数(*≦4)における他の方法の結果と比 較し精度を確かめるとともに,従来の方法では求解の困難な,より高いR数(=40,400)でのOseen流れを求 め,姫野のモデルの拡張の観点からその特徴を調べた。その結果,撹乱速度の2乗の項をすべて無視する従来の *東京大学大学院 日本造船学会論文集第134号 2 Oseen近似よりは,むしろOseen自身が試ぶた「拡張したOseen近似」の方が高R数での圧力分布を説明す るのに好都合なこと,Oseen流れでも明らかな剥離領域が現われ,またその渦度分布はN.S.方程式の解と極 めて類似している事など興味ある結果が得られたのでここに報告しご批判を仰ぐ次第である。 2Oseenlet 粘性流体についての線型化された基礎方程式であるOseen方程式とその基本解である2種類のOseenletに ついて若干の説明を加える。 速度を砂,圧力を,,密度をβ,動粘性係数を似とすると,定常状態のN.S.方程式は次のように表わされ ‐ ' ( : + 音 " ' ) + X r o t u + v J i = 0 ( 1 ) 物体が一様流Uiの中に瞳かれているとしてv=Ui+D′とおき.'×rotU′を無視すると ‐ ' ( : + ; 。 ' 忽 ) + " 器 十 " ‘ 。 ' = 。 ( 2 ) となる。これを拡張したOseenの方程式と呼ぶ4)。更に速度の二乗の項を無視すると通常のOseenの方程式 一 喝 十 " 筈 十 ' ‘ 妙 ' = 0 ( 3 ) となる。これは特にR数の小さい場合に考慮される式である。R数の小さい時は粘性項が卓越しU'×roti;'は " 4 。 ' に 比 べ て 無 視 で き . 又 ; 砂 ' m 賦 号 に 比 べ て 無 視 で き る の で ( 3 ) 式 臓 粘 性 流 の 微 子 寒 良 く 近 似 す る 。 ( 3 ) 式 の適用範囲は従来行なわれているR数の級数展開の形では,円柱の場合R≦1と言われている。(2)式の中で : = : + ; 。 ' 圏 ( 4 ) とすると形の上で(3)式と同じ方程式となる。wすなわち(2)式と(3)式は圧力の取り方に違いがあるだげで,抵 抗値,flowpatternについては同じである。 連続の方程式は次のようになる。 ( 5 ) 良く知られているように(2)式(5)式は次のように書き改められる。 :三鱒"’?” --* 』 とこでの,xは次の式を満足する関数である。 { ざ 三 二 念 ) … ” 又,直交座標を(鯵,y,z)又は(a>i,*2,*a),直交座標に関する撹乱速度を(籾,',地',脚8')とする。. (6)式の基本解も知られており速度#",圧力項,(j=l,2,3)は次のように醤き表わされるo 室 2 域 器 ) ここで/は次の式を満足する関数である。 ['-<-)>た0 但し,〃は粘性係数,鋤jはKroneckerのデルタである。 3次元の時(8)式を満足する関数として ( 8 ) 二次元柱体及び軸対称物体のまわりのOseen流れについて た A " 『雲 ' ( 1 − ‘ . ) α l ‘ a ( 9 ) z 、ILIJ 虹1斗J1川j −eきざ 、11Jノrr 葬一︵銅認 十11 筈鵠瑞 砦γ麺一誤彫一深 く’ 郡一銀〃|課z一額 一一一 111 一一一一一一 A −A 一A 一 が知られている5)。 3 f 1 2 言 = f 2 1 ‘ " ' 一 零 ' ] ‘ 麹 = A [ 潅 卿 舞 等 + y ) j f e ( 2 r a y a ) ^ ' 園 圏 一 躍 祭 + " )} ‘ 銅 = " 亀 [ 蓋 ≦ 参 一 { 赤 寺 十 γ ≦ ; 霞 } ‘ " 『 雲 ' ] ( 1 0 ) tia=hi f 2 3 = # 銀 晴鴫鴫 AlA A 一一一一一 999 ‘ " 『 蜜 ' ] t ^ A [ ^ Z L 舞 竺 察 + J ) H ( 2 r ' a ) ^ r y * 先 皇 漂 + * )} ’ ( 1 1 ) 置 匿 寵 r ) ) ] ( 1 2 ) : 二 : 毒 ’ ( 1 3 ) i=lの時をdraggingOseenletと呼ぶ。その略図をFig.1に示す。draggingOseenletは渦なしのsource と後流からの渦度のある流入から成り立っている。;=2,3の時をliftingOseenletと呼ぶ。その略図をFig. 2,3に示す。3次元のliftingOseenletはspan無限小の馬蹄渦である。メ〃は原点に匠かれたOseenletの 鯵#方向の誘起速度であり,4Jはその時誘起される圧力項である。 Oseenletの特異性を調べるためにγく1として#〃を展開すると,例えば2次元の時は次のようになる。 Fig.l2-dimensionalor3-dimensionaldraggingOseenlet Fig.22-dimensionallifting Oseenlet Fig、33-dimensionallifting Oseenlet 日本造船学会論文集第134号 4 掛l o−"α“言{二鰯{鵜:鶏 ‘,=γ“γ,={二澱リニ鰯悪蹴) O s e e n l e t に よ り 鰭 起 き れ る 圧 力 項 は ( 1 1 ) 式 , ( 1 3 ) 式 で 与 え ら れ る が , ( 6 ) 式 q = p " 器 と O s e e n l e 鵬 に 含 ま れ 分方程式を得る。Oseelet近傍の流れがdoublet,doublevortex的であ るので出来る積分方程式は,source分布の時のように第2種ではなく第 1種のFredholm型となる。Hess-Smith."が示したポテンシャル流れ の数値解法の中の,2次元及び軸対称流れの場合の方法に習い,積分方程 Fig.4Devidedelementsofthe式を連立一次方程式に直し,その係数を計算する。以下その方法を詳しく 2 d i m e n s i o n a l b o d y 示 す 。 まず物体をFig.4,5のように要素に切り,その要素内で表面分布のdraggingOseenletの密度αi,lifting Oseenletの密度ぴ2をそれぞれ一定と仮定する。 3.12次元柱体の場合 Ⅳ分割して出来た各要素内のOseenletの密度をぴimitfam(w=l,2,…,Ⅳ)とすると積分方程式は次のよう な連立一次方程式に直る。 宴 : : 麗 霊 量 a i m f t 2 i d s + J j t f a m f t z i d s = 0 f〃は(12)式中の露,",γの所に 菱廷癖而二評}” をそれぞれ代入して得られる。但しOseenletの分布面上の点Qを(b,a)とし,Oseenlet分布によって誘起さ れる速度,圧力項を考える点Pを(露,")としている。(15)式においてPを各要素に一つずつ計Ⅳ個選ぶと2Ⅳ 元連立一次方程式が得られる。(15)式中の各係数を数値積分により求めるが,テ→0となる要素については,文 献6)に習いその要素内に更に小さな副要素を考え,その特異性を差し引いたものを数値積分し,後で差し引ぃ 二次元柱体及び軸対称物体のまわりのOseen流れについて q = p U ノ " * + 。 器 ) " ’ U 露 ( ' 。 ‘ + ' " . ‘ ) 5 ( 2 0 ) 第2項は特異点での不連続から来る項である。但し(j, 郷)は外法線の方向余弦である。第1項の菰分でテ→0 の所は副要素を考える。その時P点を副要素の中点にと ると好都合な事に副要素の特異積分は零となる。 3.2流れに平行に霞かれた軸対称物体の場合 この場合は積分方程式は次のような連立一次方程式に なる。 Fig.5Devidedelementsoftheaxi-symmetric body 日本造船学会蓋文集第134号 6 一一一一一一一一コ 九 九九九 illlIlくlllllし 調 陣餅 α一祁夢 一一一一 XA 但 {(R2-M3)(2R−X)=R8)⑳s〃+(X−2R)MAsin*<pU + 為 { ( 2 R 2 − M 2 − 2 X R ) m s 紗 一 M A s i n ' y } R*(R-X)勺 K*(R−X) S 紗 〃︾ O C α ワニ α 2 2 + 鋤 一以 、ノ一 勺 1γ 秒ダ 2− 鉦幻 〃の.fk一鋤 十酷a−yR搾 氾ノc一︲f、く 韮α一″紗勿ぶ ゆ吟恥距据 一一一一一一一一一一 繰MⅣUv 一一 γ一““ R ‘ , " = フ 志 釜 鎧 嗣 { 寛 年 倦 雨 厩 十 ' } ‘掴=爾諾が{鈴湯-,-F 重 言 熱 ‘ " ‘ 看 万 鈴 両 ァ [ E-(2X,+l+2A*)F −4X8−12AzXd l3A2−12A‘)X2+(1−A2)z5−4A X*+0.-A*) +(4糾(8A^-4)X'-5-5A^+4A*}F ’ 1 ( 2 4 ) 但しF=F(kra)第1稲完全梢円積分 E=E(ルm)第2種完全構円積分 4A ル 恥 X * + ( l + A ) * 6→鈴,α→〃の時は#γtu'rrtは無限大となりそのまま では数値積分が出来ないので2次元の時と同様に副要素 を考える。(<『錨Jrtsには特異性はない。) 大きさ2sの副要紫を考えP点,αをFig.6のよう Fig.6Singularsubelementoftheaxisymmetricbody にとると,副要素の特異積分は次のように展開でき る◎ 二次元柱体及び軸対称物体のまわりのOseen流れについて 7 量室:報嵐鰯溝二二繍撫裟鰯非 但しS=s〃以上により(22)式の各係数は計算できる。 Oi,0zが求まると抗力Dは.Js^(m=1,2,……,Ⅳ)を各要素の表面積とすると次式で与えられる。 D=47rpUY*0< 4s幌 剣(26〉 物体表面での圧力項は次式で与えられる。 . "ん…"…‘…|蝿” ’"=J;"‘‘"'一フ貢而工孟鍔… , 密 = f " ( 鋤 " s 膨 十 " s i " ) ‘ ” 燕 箭 可 , … 鵠 当 詩 皿 旦 榊 … , , | (26)式の第2項は特異点での不連続から来る項である。但し(l,m,0)は外法線の方向余弦である。第1項の積 分でテ→0の所は副要素を考える。その時副要素の大きさを2sとしP点を副要素の中点にとると,副要素の特 異積分は次のように展開できる。 f * q r i d s = s … s α [ 2 s + s , 催 十 も I " ( : ) + も s i n , α } + … … ] か…蝋<<…柵,………詩…恥│・ (27)式,(28)式により物体表面の圧力項が計算できる。 4数値計算例と考察 実験値や計算例の豊富な円柱と球について計算を行ない,結果を比較した。揚力の計算を行なうためと,その 時今井8)の計算値との比較が出来るように迎角を持った梢円柱について計算を行なった。そしてより船に近い形 として直進する長偏球について計算した。その結果を順に示す。 4 . 1 円 柱 数値計算に際して,Fig.21のようにとったβに対して0。から180°まで18等分して,問題を36元連立一 次方程式として解いた。本計算法の精度をチェックするため,R=0.8,4の場合のCd,Cpの分布を,友近,)ら の関数展開によるOseen近似の解と比較したが,Co,Cpの分布とも,両者は一致した(Fig.7,8)o(但し友近ら は(3)式を解いているので,物体表面上での圧力係数は,本計算と1だけずれる。)この事より2次元流れに対 する本計算法は従来の方法に比べて糖度上劣らない事がわかる。従来の方法では求解の困難な#=40の計算も 行なったが,Oseenletの式の性質上,R数が大きくなると緒度に問題があると考えて,分割数を27にふやした 場合の計算も行なった。その結果は分割数が18の場合の計算と変化が見られなかったので,精度上は問題ない 良く知られたように,Oseen近似ではまさつ抵抗を過大評価するのでCoを実験値(Tritton)"と比較する と,Oseen近似の方が大きくなる(Fig.7)。又圧力分布を見ると,Thom"Jの実験値と比較して傾向は似てい るが,後部の圧力が低過ぎ,圧力抵抗もまたOseen近似は過大評価している事がわかる(Fig.8)。 Supercriticalの領域に対する層流モデルとして,jR=40でのN.S.方程式(川口)13)とR=40でのOseen 方程式を考えて染る。肥大物体の場合,まさつ抵抗は圧力抵抗に比べて小さいと考えると,その全抵抗は近似的 に層流モデルの圧力抵抗であると考えられる。そこで二つの層流モデルの圧力分布をFage")らの実験値と比較 する(Fig.9)oN.S.方程式(#=40)の圧力分布で,後端圧は実験値とよく一致しているが,最大幅あたりは 全然似ていない。円柱以外の形状の物体の場合に,いつも後端圧が実験値と一致するとは考え難い。そこで境界 層とその剥離を考慮したモデルが求められる訳であるが,先に姫野3)はOseen近似を利用したモデルを示して いる。本計算では姫野のモデルの3次元任意物体への拡張の準備段階として,Oseenletの重畳によるOseen流 8 日本造船学会論文菜第134号 れの解法を示すにとどまり,境界層とその剥離の取り扱いについては,大きな問題として今後に残されてしまっ た。Fig.9のOseen方程式(R=40)の圧力分布は境界層とその剥離を考慮していないものであり,後端の圧 力は低くなり過ぎている。姫野の計算の例からぶて,境界層とその剥離を考慮した場合,後端の圧力はもっと高 くなるものと染られる。 次にflowpatternについて考察する。今井",姫野2)はsupercriticalの領域での時間平均流のflowpattern が,#=40でのN.S.方程式を解いて得られるflowpatternと類似している事を述べているが,#=40での Oseen近似の渦度分布は,#=40でのN.S.方程式を解いて得られた渦度分布(川口)I3)と極めて類似してい る(Fig.10)。流れ関数に比べて渦度の方が計算が容易であるので,渦度分布を比較したが,流れ関数(流線図) についても両者は似ていると思われる。この事はsupercriticalの領域での時間平均流のflowpatternを知り たい時,N.S.方程式を解かないでも,線型方程式であるOseen方程式より,その概略を知り得る可能性を示 しているo #=40でのOseen流れには,N.S.方程式の場合と同椴,双子渦が出来る。双子渦の長さは直径の約2.5倍 である。N.S.方程式の場合は直径の約1.75倍(川口)ia)であるから,Oseen近似の時の方が,少し長くなる 訳である。その時起きる剥離の様子をFig.11に示す。 最後に高R数でのOseen近似の問題点を述べ,今後の閣流モデルに関する意見を述べる。Fig.10において, 前部に渦度が大きく更に撹乱速度の大きい場所があるが,この点に砂'×rotD'を無視しているOseen近似の矛 盾が表われている。この部分には境界層方程式が考えられるぺきであると考える。しかし前部の境界闇を除くす べての領域(伴流部分を含む。)では,Oseen近似はほぼ成立していると見られる。そこでsupercriticalの領 域に対する閣流モデルとして,境界層には境界闇方程式,それ以外の領域にはOseen方程式を用い両者の matchingによって流れを決定する事が良いように思われる。matchingする事により,matchingを考慮しな い時のOseenletの密度分布に少し変形を加えられた密度分布がfarfiealdの解となり,新しい圧力分布が得ら れる事になる。その際,剥離点の取り扱いが股も問題となるであろう。 4.2流れに斜めに置かれた楕円柱 流れに斜めに置かれた楠円柱の問題では,抗力j揚力を今井8)の方法の結果と比較し,揚力の発生する問題に ついても本計算法が従来の方法に比べて精度が劣るものでない事を示す。更に従来の方法では求解の困難な#= UL/u=40(Lは栴円の長軸である。)の時の計算を行ない,その時の流れを考察し,supercriticalの領域に対す る闇流モデルについて言及する。 Fig.21のようにとった0に対して0°から360.まで36等分して補円を36分割し,問題を72元連立一 次方程式として解いた。流れに斜めに瞳かれた柄円柱の問題については,やはりOseen近似で今井が抗力,揚 力の解析的計算法について蹄じているが,その結果と本計算法による結果を比較した。#=0.1の時は両計算法 による抗力,揚力は全く一致した。#=1の時,今井の方法では第1近似と第2近似で大きな差異が生じている ので,本計算の値がどうなるか興味が持たれたが,結果は今井の方法の第2近似とほとんど一致した(Fig.12)。 円柱の計算結果から考えて#=1では本計算法はほぼ厳密解を与えると考えられるので,この事は,今井の方法 の場合#1の時は第2近似まで考えれば十分で,第3近似以降は考える必要のない事を示していると思われ るo #=40の時は非対称な双子渦が出来る。双子渦の流速は一様流に比べて小さく,ほぼ死水と見なせる程であ る(Fig.15)。その死水のためにBack側の圧力分布に平らな部分が出来る(Fig.14)。圧力分布よりClp(圧 力揚力係数)の籍力点を計算すると,a(angleofincidence)=45。付近で着力点は股も後退し,その位置は, L/B=4(Bは梢円の短軸である。)の時は前縁から25%の所,L/5=2の時は14%の所である。なお薄翼 理論ではαにかかわりなく前縁から25%の所である。Coについて#=1の時と異なる点は,a:=90°の時LIB =4の方がLIB=2よりCoが大きい事である(Fig.12)・以上が#=40の時の計算結果である。実験値との 比較がないので詳しい事は言えないが,定性的には我々の常識に反さない結果となっている。しかし定遥的に ば,特に死水の圧力等は,円柱の場合と同様,#=40の実験値ともsupercriticalの領域での実験値とも,かな り異なっていると思われる。supercriticalの領域に対する掴流モデルを考える時,円柱の場合と同様,境界層 とのmatchingを行ない,合理的に死水の圧力を実験値と良く合うように決める事が出来るかどうかが,今後 の残された課題である。 二次元柱体及び軸対称物体のまわりのOseen流れについて 9 CdiClの無次元化の仕方は次の通りである。 尾 凡 c ・ = 合 , ”, C i = 音 , " * L 但し,尾は抗力,島は揚力である。C/)p,CipはCd,Ciの圧力による成分を示している。R数はR=ULI〃と している。 4.3球 軸対称流れについての本計算法の,精度のチェックのため,別法による計算例のある球の問題を解いた。Fig. 21のようにとった6に対して0。から180。まで18等分して,球を18分割し問題を36元連立一次方程式と して解いた。結果,CoについてはR≦20の時Goldstein">によるOseen近似の解と一致し.c.の分布につ いてはR=l,2の時友近ら9)の計算と一致した(Fig.16.17)o(但し友近らは(3)式を解いているので物体表面 上での圧力係数は本計算と1だけずれるo)以上の事より,軸対称流れについての本計算法も従来の方法に比べ て,精度上劣らない事がわかる。従来の方法では求解の困難な#=40,400の計算も行なったoR数が大きくな るにつれ,先端の圧力係数が1に近づく(Fig.17)。圧力を(3)式のようにとると,先端の圧力係数が2に近づ き,R数が大きい時は不都合が生じる。すなわち高R数での圧力分布を説明するのには,従来のOseen近似よ りはむしろ「拡張したOseen近似」の方が好都合である。この事は,球に限らず円柱その他の場合も同じであ る。比較する実験値がないので確かな事は言えないが,R数が大きくなる程,後部の圧力分布については実験と 一致しないであろうと考らえれるoCdについては, R数が大きくなる程,Oseen近似は実験値15)に比べて 過大評価である事がわかる(Fig.16)。 』 c ・ = 毎 歳 扇 −−−0…”PROX. 8 ● ON) 00 屍煮這翫 5 I 1 0 1 0 0 " Fig、7TotaldragcoefficientCqofacircular cylindercomparedwithTritton'sex- Fig.9Pressuredistributiononacircularcylinder ofOseen'seq・atR=4Q,comparedwiththat ofN.S、eq・atR=40byKawagutiand perimentalvalues Page'sexperimentalvalue. −0.25 ■ ■ ■ 五 m ● 0.25 Fig.10EquivorticitylinesoftheflowpastacirFig.8Pressuredistributionsonacircularcylinder comparedwithThorn'sexperimentalvalues cularcylinderofOseen'seq・atR=40 comparedwiththoseofN.S・eq.atR=40 byKawaguti 日本遭船学会議文集第134号 10 −−.−C.Ci 0.1U 一 或 言 c T c ^ B Y I M A ! も F I R S T APPROX.《LノB2) 一一一 へ一一一一 I Fig.11Vortexattachingtoacircularcylinderat R=40 3 O α 、 4 5 9 0 0 4 5 9 0 ’ Fig.12 C o,Cl,Cdd,Clpofanellipticcylinder plottedagainstangleofincidencea,for 2 L/fl=2and4,R=ULIv=lCo,C^oiImai's secondapproximationforL/B=2isagree withauthor's 0 .O・ α ◎ ・ 4 5 、 9 0 0 4 5 9 0 o , C l , C d p , C i p o f a n e l l i p t i c c y l i n d e r p l o t t e d Fig.13 C againstangleofincidencea,forL/B=2 and4,R=ULルー40 Fig.14PressuredistributionsonaneUiptic-→ cylinder,forL/B=2,R=UL,ル=40,with angleofincidencear=0,45and90。 U 髪 R I I O I O o ・ ・ Fig.15FlowaroundanellipticcylinderforL/5=Fig.16 TotaldragcoefficientCcofasphere. 2,R=UL/t>=40 comparedwithexperimentalvalues 二次元柱体及び軸対称物体のまわりのOseen流れについて 11 、 ● 。 I Fig.17Pressuredistributionsonasphere Fig.18Pressuredistributionsonasphereof Oseeneq.atR=40and400,compared withPage'sexperimentalvaluesforR= 1.57×105(subcritical)andR=4.24×10* ( s u p e r c r i t i c a l ) flo 8 。 弓 Fig.20Pressuredistributionsonaprolatespheroidplacedparalleltoauniformstream Fig.19Pressuredistributionsonaprolatespheroid atR=UB/u=40 placedparalleltoauniformstreamatR= UB/u=l e Supercriticalの領域に対する層流モデルについて多 少考察する。今井')は2次元の時,物体の形状にかかわ らず「有効R数」=40と提案したが,3次元の時は「有 効R数」をいくらにとれば良いのであろうか。R=40の 時の本計算のflowpatternを見て承ると,極く小さな B に呈催。 Fig.21NotationofL,B,6 双子渦しか出来ておらず「有効R数」はもっと大きな値と考えた方が良いように思える。R=40&4”の時の 圧力分布を,=4.24×10*(supercritical)のPage")の実験値と比較すると,R=40,400ともに実験値に似て いると言い難いが,比較的R=400の方が実験値に近い(Fig.18)。境界層とのmatchingにより,合理的に圧 力分布を実験値に合わせ得るか否かは,円柱の時うまく圧力分布を説明できた姫野のモデルが,軸対称の場合に 拡張できるか否かという問題として,大変興味深い。 日本造船学会鐘文集第134号 12 4.4流れに平行に置かれた長偏球 球に比べてより船に近い軸対称の問題として,流れに平行に腫かれた長偏球の場合を考える。Fig.21のよう にとった6に対して0°から180。まで18等分し,問題を36元連立一次方程式として解いた。この時,中央 部に疎で,前後部に密な分割となっている。 圧力分布をFig.19CR=1),Fig.20(R=40)に示す。R=UBI〃とし,横軸はFig.21のようにとった0 である。LIBが大きくなると,前端部で圧力勾配が急になり,中央部では圧力分布が平坦になっているが,この 事は定性的に我女の常識と一致している。更に興味深いのは後端部の圧力分布である。後端部の圧力分布は,R =1とR=40とではすっかり様子が異なり.LIBによる差異も顕著である。R=lでLIBが大きい時,後端 の圧力が大変下がり,後端付近の圧力勾配が大きくなっている事が目につく。この事はR数が極く小さい時の話 であり,船尾の流れとは関係ないと思われるが,粘性流体の場合,物体後部付近での流れが,R数や物体の局部 的な曲率によって,敏感に変化する事がある一例として興味深い。 5 結 ‘ 諭 Hess-Smithのポテンシャル流れの数値解法を応用し.2次元及び軸対称のOseen流れに対するOseenlet の重畳による解法を示し,その数値計算の結果次の結論が得られた。 (1)高R数での圧力分布を説明するのには,撹乱速度の2乗の項をすべて無視する従来のOseen近似より は,むしろ「拡張したOseen近似」の方が好都合である。 (2)Oseen流れでも明らかな双子渦が現われ,その渦度分布はN.S.方程式の解と極めて類似している。 (3)二次元の場合R=40のOseen近似は,圧力分布.Cj,pの着力点の位圃,flowpattern等,定性的に は,R=40の実験値,あるいはsupercriticalの領域での実験値と似ているが,死水域の圧力等,定量的には 一致しない。 (4)粘性流体の場合,物体後部付近での流れは,R数や物体の局部的な曲率によって敏感に変化する事があ るが,R数が極く小さい時,LIBの大きい畏偏球の後端の圧力は大変下がり,後端付近の圧力勾配は大きくな る◎ 今回は2次元と軸対称のOseen流れの場合であるが,原理的には同様の方法で一般の3次元の問題を解く事 が可能である。その場合には,ここで取り扱わなかった縦渦が出現するので,本計算法の,一般の3次元問題へ の拡張は,残された函要な課題の一つである。又supercriticalの領域に対する層流モデルとしてOseen近似 を考える時,境界厨とのmatchingが必要であると思われるが,その事も残された重要な課題である。 終わりに,ご指導頂いた東京大学元良誠三教授,藤野正隆助教授に厚くお礼申し上げます。又本研究が大阪府 立大学姫野洋司先生に契機を与えられ,その後終始変らぬご指導の下になされた事を付記し,同先生に心から感 鮒致します。ご教示,ご援助頂いた東大宇宙航空研究所橋本英典先生,大阪府立大学宮城敏夫先生に深く謝意を 表します。計算には東京大学大型計算機センターHITAC5020,8800/8700を使用した事を付記し,関係各位に お礼申し上げます。 参考文献 j lj 2J 3j 4j 5j 6 Imai,I.:TheoryofBluffBodies,Univ.Maryland,Tech.Note.BN-104(1957). 姫野洋司,高木又男:肥大物体のまわりの粘性流について,日本造船学会駒文集第127号(1970). 姫野洋可:高レイノルズ数における肥大物体のまわりの流れ,日本造船学会駒文集第128号(1970). 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