近畿中部防衛局について(その2) 坂口社長: 今回も引き続き近畿中部防衛局について教えて下さい。前回は、 近畿中部防衛局の沿革、組織、そして、総務部、企画部の順に説明し ていただきましたが、今回は調達部からですね。 田渕局長: はい。今回は、調達部の紹介から始めさせていただきます。 調達部には調達計画課、建築課、土木課、設備課、装備課の5課が あります。 調達部では、前回説明した主要業務のうち2つの業務を所掌してい ます。一つ目が防衛施設の建設に関する業務です。 坂口社長: どのような施設を建設するのですか。 田渕局長: 自衛隊や在日米軍が使用する飛行場、港湾施設、通信施設、射撃 場、庁舎、病院など幅広い施設を建設しています。 具体的には、これらの工事の設計・積算・監督・検査業務を調達計 画課、建築課、土木課、設備課が担当しています。 坂口社長: これは分かりやすいですね。ただ、対象施設の多さに驚きました。 また、とても多くの課が担当されているのですね。 田渕局長: 課が多いというのは、色々な建設工事を実施するため、各課毎に 建築、土木、設備、電気、通信といった専門的な分野が分かれている ということなんです。 坂口社長: 自衛隊ならではの建築物というのもあるのでしょうね。 田渕局長: 特色がある建築物としては、弾薬庫、燃料庫、滑走路、航空機の 格納庫、管制塔、桟橋などがあげられます。 坂口社長: 大規模な工事が多そうですね。 田渕局長: 規模が大きいため、工期が2年あるいは3年に及ぶ工事がほとん どです。 坂口社長: わかりました。それでは調達部の二つ目の業務についてお願いし ます。 田渕局長: 二つ目は、装備品等の検査等に関する業務についてです。装備品 等には、自衛隊が使用する護衛艦、潜水艦、戦闘機、輸送機、戦車、 大砲、小銃、レーダーからヘルメット、制服、缶詰等まで大小様々な ものがあります。これらに関する業態調査、価格調査、監督検査その 他契約の履行に関する業務を実施しています。この業務は元々装備本 部大阪支部が担当していたものですが、前回お話しした平成19年の 近畿中部防衛局の発足に伴い、当局の業務の一つとなりました。現在 は調達部の装備課が担当しています。 この装備課は、とても大きな課で、平成22年度末で定員81名、 近畿中部防衛局本局定員の約1/3を占めています。また、特に専門 的な知識を要しますので自衛官が多く、課全体の8割程度を占めてい ます。 坂口社長: 色々な装備品等に関する調査や検査を行うのですね。業態調査と いうのはあまり耳慣れない言葉なのですが具体的にはどのような調 査なのですか。 田渕局長: 業態調査とは、装備品等を取り扱う会社の経営状況や品質管理状 況などを調査することをいいます。 契約内容を契約相手方が十分履行可能であるかどうかを確認する ために経営状況の調査を行ったり、自衛隊が取り扱う装備品等に性能 のバラツキが生じれば、いざという時に大問題ですから、そのような ことが起こらないように品質管理状況の調査を行ったりします。 以上で調達部の紹介を終わります。 坂口社長: よく分かりました。それでは管理部についてお願いします。 田渕局長: それでは、管理部について紹介します。 管理部には、業務課、施設管理課、施設取得補償課の3課がありま す。管理部では、前回説明した主要業務のうち防衛施設の用地取得業 務や管理業務等を所掌しています。 坂口社長: それはどのような業務なんですか。 田渕局長: 防衛施設の用地取得業務とは、自衛隊や在日米軍が演習場、飛行 場、港湾などとして使用するための土地の買い入れや借り上げを実施 しています。これは施設取得補償課が担当しています。 また、管理業務とは、その土地や先程説明した調達部が建設した建 物等の財産の管理を実施しています。これは施設管理課が担当してい ます。 坂口社長: 今、在日米軍という言葉がでましたが、管轄区域内には在日米軍 の施設もあるのですか。 田渕局長: 在日米軍が専用で使用する施設はありませんが、前回説明しまし た米軍の移転訓練等に際して、米軍が石川県の航空自衛隊小松飛行場 や滋賀県の陸上自衛隊饗庭野演習場において自衛隊の施設を一時的 に共同で使用する場合があります。 坂口社長: 分かりました。広い管轄区域内の自衛隊の施設を管理するのは大 変なのでしょうね。 田渕局長: 自衛隊施設の管理については、各部隊が実質的な管理を行ってい ますが、前回説明しました飛行場周辺の騒音の特に著しい地域におい て建物の移転補償により取得した土地については、近畿中部防衛局が 緑地整備を行い、緩衝緑地帯として管理しています。一方でこのよう な土地、一般的には周辺財産といいますが、当局では当該財産を地元 の皆様に使用していただくために積極的に働きかけを行っています。 現在、航空自衛隊小松飛行場の周辺財産においては、野球場、ソフ トボール場、ラグビー場、サッカー場、パークゴルフ場、グランドゴ ルフ場を併せ持つ大規模な多目的広場を地元要望を踏まえて整備中 でありまして、完成後は小松市民に使用していただく計画です。 坂口社長: 国有地が住民のために使われるということは、私達国民にとって もうれしいことですね。 田渕局長: 防衛施設と周辺地域との共存の一つの在り方として評価していた だければ、我々もありがたいと思いますし、やりがいがあります。 また、あまり知られていないのですが、国が買い入れた土地や国が 建設した建物等は国有財産といい、国有財産は国有財産台帳により管 理されています。 和歌山県の例でいえば、日高郡美浜町に陸上自衛隊の和歌山駐屯地 があるのですが、土地約17,000㎡、建物16棟、工作物や樹木 70本の国有財産をその1本1本まで管理することになります。この 和歌山駐屯地は比較的小規模なものですから、大きな駐屯地、基地に なると更に管理する国有財産は多くなります。 また、昨年度は5年に一度の国有財産の価格を見直す価格改定の 年でした。管轄区域内約200の施設の価格を見直すことは、電算機 処理が進んでいる現在でも一苦労です。これらの業務も施設管理課が 担当しています。 坂口社長: 聞いただけで大変そうですね。その他の業務についての説明をお 願いします。 田渕局長: はい。次はあってはならない事ですが、仮に在日米軍の軍人等が 車両や航空機等による事故を起こし、日本国内において他人の身体や 財産に被害を与えた場合、被害を受けた方々に対し、損害賠償を実施 していますが、これは業務課が担当しています。 坂口社長: これも大変なお仕事ですね。事故が起こらないことをお祈りしてい ます。 田渕局長: 管轄区域内での在日米軍の事故については、業務課が担当するん ですが、業務課長は事故連絡専用の携帯電話を常時携帯しています。 先程お話ししたように当局管内には在日米軍が継続的には存在して いないこともあり、滅多に着信はないんですが、気が休まることがな いと話しています。 坂口社長: 分かる気がします。 田渕局長: 最後は、自衛隊や在日米軍が海上で訓練を行う場合、一定区域に ついて期間を定めて漁船の操業を制限し、あるいは禁止することがあ りますが、このことにより、漁業を営んでいた方に損失が生じた場合 に補償を実施していますが、これは施設取得補償課が担当しています。 坂口社長: 和歌山県も漁業が盛んですが、あまり和歌山県の海上で自衛隊の 訓練が行われたと聞いたことがありません。和歌山県では漁業補償 は関係ないんでしょうか。 田渕局長: そんなことはないんです。実際、和歌山県の漁師さんが、沖縄方 面や高知沖で漁業を行っていらっしゃるので、その漁場で操業が制限 されたことなどにより損失が発生した場合には、漁業補償を実施して います。 坂口社長: 近畿中部防衛局の主な業務についてご説明いただきましたが、伺 っているとどの仕事も多岐にわたり大変そうに感じました。 その中でも、前回伺った防音工事及び民生安定施設への助成や、今 回冒頭でお聞きした自衛隊施設等の建設工事、また装備品の検査とい った業務に携わる方々は専門的な知識を有する必要があると思うん ですが、その辺りはどうですか。 田渕局長: 先ほど装備品の検査等については、専門的な知識が必要なことか ら主として陸・海・空の自衛官が担当しているとお話ししました。 一方で、自衛隊施設等の建設工事等においては建築や土木などの専 門的な知識も必要なことから、防衛省には事務官以外に技官という職 種があります。 坂口社長: 自衛官の方が装備品の検査を担当していらっしゃるのは納得です が、技官という職種があることは知りませんでした。 そういえば、以前阪神大震災のお話を伺った時に専門的な建築の 話や応急危険度判定士の話をしていただいたことを思い出しました。 近畿中部防衛局の事務官と技官の割合はどれくらいなのですか。 田渕局長: 当局での事務官と技官の比率は大体55:45でほぼ半々となっ ています。 坂口社長: 予想以上に技官の方がたくさんいらっしゃるのですね。 田渕局長: それだけ地方防衛局においては技術系の職員が必要な仕事が多い ということなのです。 坂口社長: そうなのですか。それならリスナーの中には技術系の学生の方や そのご家族もいらっしゃると思います。局長さんから防衛省技官の魅 力についてお話しされてはどうですか。 田渕局長: 先ほどから申していますが、防衛省においては自衛隊等のための さまざまな施設の整備、その中には防衛関係ならではの飛行場施設や 弾薬庫など特殊な施設から、学校、養護老人ホーム、消防、公園など の様々な助成対象施設まで非常に範囲の広い業務を行っており、建築、 土木の知識・技術を大いに活かせていけるものと思います。 私も30数年前、当時防衛庁の技官の試験を受けて入庁しました が、我が国の防衛を施設面や関係自治体との各種の調整業務という後 方支援面で支えていく重要な仕事であり、やりがいのある仕事である と思っております。国土交通省や地方整備局に技官がいることは当然 のこととして知られていますが、防衛省、地方防衛局に技官がいるこ とはあまり知られておらず、それがある意味悩みの種なのです。 防衛省の採用試験のⅡ種試験では建築、土木、設備、電気・電子、 機械の各職種の技術系職員を現在募集しています。 現在、この放送を聞いている技術系の学生さん、進路決定を控え ている技術系学生のご父兄の皆さん、是非、ご自身のあるいはご家族 の将来の選択肢の一つに地方防衛局を加えて検討してみて下さい。そ して防衛省技術系の採用試験を受験してみてはどうですか。 また、技術系の高校生の方なら、勤務しながら夜間大学に進む道も ありますので、是非、思い切ってチャレンジしてみて下さい。もちろ ん事務系の職員についても募集しておりますので、奮ってチャレンジ してみてください。 坂口社長: リスナーの皆さんにも、局長さんの熱意が伝わったと思います。 前回も平成23年度の防衛省職員の採用試験についてご説明いただ きましたが、今回も是非お願いします。 田渕局長: はい。前回も申しましたように防衛省の職員採用試験は、Ⅰ種試 験、Ⅱ種試験、Ⅲ種試験の3種類があり、Ⅰ種、Ⅱ種試験が大学卒業 程度、Ⅲ種が高校卒業程度という区別になっています。 現在は、Ⅰ種試験とⅡ種試験の受付期間中です。4月1日(金)から 4月11日(月)までで、4月11日の消印有効です。 第1次試験日は、Ⅰ種試験が5月8日(日)、Ⅱ種試験が6月12日 (日)です。 詳しくは、防衛省のHPの採用情報をご覧下さい。もちろん近畿中 部防衛局HPからもリンクしていますので宜しくお願いします。 坂口社長: 技術系の学生さんにとっては、自分の得意分野の試験区分でチャ レンジできる訳ですからありがたいですね。 このFMラジオを聞いているリスナーの皆さん、是非チャレンジし てみてはどうでしょうか。 今日は、前回に引き続き、近畿中部防衛局の話から防衛省の職員採 用試験の話までありがとうございました。私も楽しかったですが、進 路の決定を控えた学生さんには、とても役に立ったんじゃないでしょ うか。1年のスタートを切る4月に相応しいテーマだったと思います。 本当にありがとうございました。 田渕局長: こちらこそありがとうございました。
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