医学フォーラム 医学フォーラム 海外留学だより 大学に留学して (京都府立医科大学泌尿器科学教室) 白 石 匠 はじめに 今回の東日本大地震で被災された 皆様に 心よりお見舞い申し上げます また 被災された皆様の一日も早い復興を心よりお祈 り申し上げます 私は 年 月よりアメリカ メリーラン ド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大 学に留学し 研究生活を送っております ジョンズ・ホプキンス大学は ボルチモアの 実業家ジョンズ・ホプキンスの遺産を基に 年に世界初の研究大学院大学として設立されま した その後 年に病院 年に医学部 が設立された アメリカの中では歴史ある大学 のひとつです 付属病院は全米ランキング 位 を 年連続で維持しており(原稿執筆中にめで たく 年連続となりました) ノーベル賞受賞 者も数多く輩出しています(計 人:医学・生 理学賞 人 経済学賞 人 平和賞 人 化学 賞 人) ちなみに 私が留学してからも 年にノーベル医学生理学賞の受賞者を出してお り 間違いなく世界のトップレベルの研究機関 であると言えます 現在 私は三木教授の紹介により の基礎部門の であ る のラボで研究をしております の研究室では主に臨床に直結す る癌の つまり癌の原因や病態を細 胞あるいは分子レベルで解明し これに基づい た診断および治療法を開発することに焦点を当 てて研究を進めてきています 具体的には癌と 正常組織における細胞核の核内骨格構造の違い と さらにその違いが癌でどのような役割を果 たしているのかについて研究を進めてきており 現在までに数多くの成果を挙げています 私が 研究しているテーマは の泌尿器癌に対するバイオマーカーおよび治療 ターゲットとしての有用性の検討です とは精巣と癌でのみ特異的に発 現している遺伝子群の総称で その性質上 有 望な癌のバイオマーカーや治療のターゲットに なり得るのではないかと期待されています 現 在は泌尿器癌の中でも 主に前立腺癌において その有用性を検討しています 前立腺癌はアメ リカでは罹患率 位 死亡率 位の非常に重要 な癌であり その分研究予算も大きく割り当て られているようです ボルチモアは ワシントン の北西に位置 し アメリカ東海岸のチェサピーク湾の奥部に あります ボルチモアは古くから水路の要地と して繁栄し その面影を残すインナーハーバー は大変美しい港です この町がウオーターフロ ント開発の先駆者となり 多くのの海辺の町が これに追従したと言われています インナー ハーバーにはショッピングセンターや全米屈指 のボルチモア国立水族館(大阪の海遊館はここ をモデルにして設計されたそうです) 海洋博 物館などの観光名所が集中し 季節の良い時期 には大変賑わいます またインナーハーバーの 郊外に少し足を延ばせば アメリカ国歌発祥の 地として知られるマックヘンリー要塞がありま す ここは米英戦争(第二次独立戦争)中 もっ 医学フォーラム ボルチモアのインナーハーバーの風景 とも熾烈な戦いだといわれた 年の「マック ヘンリー要塞の戦い」があった場所で アメリ カ兵がこの要塞に立てこもり 侵入したイギリ ス軍と戦ったことで知られています 熾烈な戦 いの後で平然となびく星条旗を見た メリーラ ンド州生まれの弁護士 氏が詩 を書きとめ これが後に合衆国議会の議決によ り合衆国国歌となったそうです その他にも ボルチモアはアメリカで最初に鉄道が開通した 町 野球の神様ベーブルースの生誕の地 そし て「ジョンズ・ホプキンス病院のある町」とし てアメリカ人の中でもよく知られた町のひとつ だそうです アメリカと日本の違う点を挙げればきりがな いのですが やはりその広さには驚嘆させられ ます ボルチモア都市圏は 人口で全米 位の 規模を誇る大都市なのですが 分ほど郊外に 車を走らせれば 広々とした のどかな風景が 眼前に広がってきます また郊外に向かう高速 道路の標示にも マイル(≒ キロ!) 先の町の名前が普通に表示されていたりして その広さを実感できます さて 私にとって留学して最もよかったこと の一つは 日本という国の素晴らしさを再認識 できたことです 日本に住んでいるときはアメ リカや外国の良いところがよく目についたので すが こちらに住んでからアメリカの良いとこ ろを再認識するとともに 日本の良いところも ジョンズ・ホプキンス大学のシンボル的な建物 医学フォーラム のメンバーと 再発見できるようになりました こちらに住ん でいると「日本人=信頼できる真面目な人」と いう認識は概ね当てはまっているように感じま す このような外国人からみた日本人の印象は 昔からコツコツと先代の日本人が努力してきた 賜物であり 私も含めて海外に出る日本人に とって大きな味方となっていると思います 現 在のラボでも そのような点からとても働きや すい環境にあると感じています これもひとえ に私が来る前に研究をされていた先輩方のおか げだと感謝するとともに 私も頑張らなければ と思っております 現在の日本では 世界中の様々な研究の試薬 や情報が比較的容易に手に入り 研究設備もア メリカに引けをとらない立派なものが多数ある ように思います そのような中で 海外留学し なければできない研究というものは年々少なく なってきているかもしれません また 研究留 学することにより医療行為から遠ざかる不安は 特に多くの経験を積んで技術を習得する必要の ある外科系のドクターにとっては大きいのでは ないかと思います(実際に自分もそうでした) しかしながら 世界中の異なる国から来た 異 なる文化を持つ人たちと一緒に研究や生活を共 にすることは 本当に楽しく有意義なもので す 月並みではありますが これらの経験は今 後の研究や診療 そして人生に必ずプラスにな ると信じています これから留学の機会がある 方は 是非思い切って海外に飛び出してみるこ とが よい経験になると思います 最後になりましたが このような貴重な機会 を与えていただきました三木教授 並びに教室 員の方々に この場をおかりしまして 改めて 厚く感謝申し上げます
© Copyright 2024 ExpyDoc