海外研修プログラムの実施報告 松本 俊之 国際性教育プログラム推進グループでは、英語コミュニケーション能力の向上と国際交流の 促進という2つの柱でプログラムを実行してきました。前者の『科学技術英語』科目の充実は 前号で詳しく報告したとおり効果をあげつつあります。後者は前年度の準備をへて、本年度は 学生に対するいくつかのプログラムを実施してきました。その中で、海外研修プログラムの実 施に関して報告します。 1)プログラムの目的 英語での研究発表やディスカッションの実践を通じて、国際的な視野を広げ、サイエンスコ ミュニケーション手段としての英語の重要性を再認識するとともに、学生レベルでの相互研究 交流を促進し、本研究科のさらなる国際化に寄与するプログラムです。 2)実施プログラム ①シンガポール国立大学&南洋大学(シンガポール) ・派遣学生:下記の 3 名 基礎科学コース博士課程前期 1 年 東出 機能物質創成コース博士課程前期 1 年 内田直樹 機能物質創成コース博士課程前期 1 年 林 ・引率教員:機能物質創成コース准教授 純 義崇 三井敏之 ・日程:2009 年 9 月 1 日~6 日 ・プログラム 日付 行程および研修内容 9 月 1 日 成田発→シンガポール着 9 月 2 日 シンガポール国立大学にて、キャンパスおよび研究室の見学、数学学 科の紹介、研究発表会およびディスカッション、歓迎会 9 月 3 日 シンガポール国立大学にて、講義の聴講 9 月 4 日 南洋大学にて、キャンパスおよび研究室の見学、講義の聴講 9 月 5 日 南洋大学の bioengineering 研究センターの見学 9 月 6 日 シンガポール発→成田着 ・成果と感想(学生による報告書から抜粋) シンガポールで数日間滞在することで、英語の必要性や、もっと積極的に自分の考えを主張 し、コミュニケーションをとることの必要性を痛感しました。 自分の研究内容を分野の違う人にできるだけわかりやすく説明するためのパワーポイント作 りにはとても苦労しましたが、非常に勉強になりました。 33 今回の目標として、相手の話す内容を理解し、 自分の分からない事を英語で質問をするという目 標を持って行動しました。 今後は研究や語学の勉強等に関して、自らを高 めていく為には様々な努力が必要であるというこ とを気付かせていただきました。 海外の高度な研究内容を知り、そして優秀な 方々と多少の交流を図ることができた経験は非常 に貴重なことであると思います。 海外の学生と仲良くなれたということも、今後の私にとって貴重な財産になると思います。 ②カリフォルニア大学サンタクルーズ校(アメリカ) ・派遣学生:下記の 3 名 電気電子工学コース博士課程前期 2 年 梅澤健人 電気電子工学コース博士課程前期 2 年 東峯匡臣 電気電子工学コース博士課程前期 1 年 井原高廣 ・引率教員:電気電子工学コース准教授 米山 淳 ・日程:2009 年 9 月 1 日~7 日 ・プログラム 日付 行程および研修内容 9 月 1 日 成田発→サンフランシスコ着 9 月 2 日 歓迎会、研究発表会およびディスカッション、NASA Ames 研究 所の施設訪問 9 月 3 日 キャンパスおよび研究室の見学 9 月 4 日 シリコンバレー工場見学(ヒューレットパッカードなど) 9 月 5 日 文化交流会、スタンフォード大学キャンパスの見学 9 月 6 日 サンフランシスコ発 9 月 7 日 成田着 ・成果と感想(学生による報告書から抜粋) 英語でのプレゼンテーション、滞在中のネイティ ブとの対話により、国境を越えた人との関わりに魅 力を感じました。 NASA や HP の見学や滞在中の外国人との対話など、 今まで感じることができなかった文化の違いや人 との関わりに興味をひかれました。 大げさかも知れませんが、人生観が少し変わった 気がしました。 研究発表の準備を通して、 『技術英語Ⅰ』の授業で学んだ、プレゼンテーションの仕方、テク 34 ニックを実践することができました。 ネイティブスピーカーの方々に対して研究発表を実践し、また質問に応対する経験ができた ことで、今後こういう機会に出会った時のノウハウや自信になったと思います。 研究発表や大学、会社見学を通して、英語でのコミュニケーションをとる機会を与えていた だき、このプログラムに参加して良かったと感じています。 アメリカの学生の純粋に学びたいという高い志を見せつけられ、自分ももっと勉強するよう にモチベーションの向上につながったと思います。 ③ペンシルバニア州立大学(アメリカ) ・派遣学生:下記の 3 名 マネジメントテクノロジーコース博士課程前期 1 年 金野敏弘 マネジメントテクノロジーコース博士課程前期 1 年 松原大蔵 マネジメントテクノロジーコース博士課程前期 1 年 三原千明 ・引率教員:マネジメントテクノロジーコース准教授 松本俊之 ・日程:2009 年 9 月 11 日~18 日 ・プログラム 日付 行程および研修内容 9 月 11 日 成田発→ペンシルバニア州ステートカレッジ着 9 月 12 日 アメリカ文化の体験 9 月 13 日 キャンパスツアー、歓迎会 9 月 14 日 工場見学(Harley Davidson と B. Braun) 9 月 15 日 講義の聴講、学科設備の紹介、実験の見学、学生との交流会 9 月 16 日 学生プロジェクトの見学、大学工場の見学、研究発表会、送迎会 9 月 17 日 ステートカレッジ発 9 月 18 日 成田着 ・成果と感想(学生による報告書から抜粋) 現地の学生と一緒に授業に出席したこと、一緒 に食事したことなど、現地の大学生と同じ生活を することができ、私にとって貴重な経験となりま した。 英語でプレゼンテーションをするのは初めての 経験であり、不安がありましたが、何度も練習を 行った結果、納得のいく発表をすることができま した。 Harley Davidson や B. Braun といった世界的に活躍されている企業に訪問させて頂き、自分 にとって意義のある経験になりました。 英語のコミュニケーション能力の向上と価値観の違う人達の考え方を知ることによって自分 の視野を拡大することができ、非常に有意義であったと思います。 35 広大なキャンパスに様々な人種の学生がいて、単一民族で国土の狭い日本とは風土や文化の 点で大きな違いを感じました。 価値観の違う人達の考え方を知ることによって国際人としての素養が身に付き、自分の視野 を拡大することができました。 英語のコミュニケーション能力の向上を図ることができました。 授業参加や工場見学等、普通の旅行では体験できないことができ、非常に貴重な思い出がで きました。 ・報告会の実施 当コースの約 20 名の学生を対象にして、10 月7日 に報告会を実施しました。研修内容の詳細に関して写 真を交えて楽しさと充実した内容が伝わる説明でし た。参加者からの活発な質疑応答もあり、来年度はさ らに多くの学生の本プログラムへの参加が期待でき ます。 3)まとめ 本プログラムにより9名の学生をアジアやアメリカに派遣することができました。学生は研 究発表会で英語による発表など大変だったと思いますが、充実した研修を通じて異文化および 異なる価値観を感じるなど多くのことを学ぶことができたので、成功裡に終えることができた と思います。同じ分野のバックグラウンドとお互いの思いやりの気持ちがあれば、語学の障壁 は乗り越えられると思います。今後も多くの学生が本プログラムに参加し、自身の国際化への 扉を開けるチャンスをつかむことを熱望いたします。 36 台湾・国立成功大学の教員との交流 米山 聡 2009 年 9 月 23 日 (水)から 27 日 (日) までの日程で、 台湾の National Cheng Kung University (国立成功大学)の Chen 教授と Lo 教授を本学に招待し交流した。National Cheng Kung University は台湾南部の台南にある大きな国立大学であり、台湾国内ではその規模や研究レベ ルにおいて 1 位 2 位を争う非常に優秀な大学である。米山は今年の 3 月に National Cheng Kung University を訪問し、短期留学の可能性について議論している。 Chen 教授と Lo 教授には、9 月 23 日に台湾から日本に移動していただき、翌 24 日、本学相 模原キャンパスを訪問していただいた。まず本大学院 GP プログラムの実施メンバーの代表で ある田部勉教授および三井敏之准教授がお二人と会談した。 左から米山、Lo 教授、Chen 教授、田部教授、三井准教授 ここで、Chen 教授と Lo 教授には National Cheng Kung University を紹介していただいた。 また、田部教授および三井准教授から本学や本大学院 GP プログラムについて説明し、今後の 本学との交流の可能性などについて議論した。 24 日午後には実践応用力強化プログラムにおける学生主導の講演会として、杉剛史君(機械 創造コース 2 年)の司会で、Lo 教授には Model on Near-field Optics in Heterodyne Interferometer for Residual Stress Measurements、Chen 教授には One-Shot Surface Profile Measurement Using Polarized Phase-Shifting という題目で講演していただいた。それぞれ 40 名程度の教員および学生が出席した。 講演会終了後、Chen 教授および Lo 教授には機械工作室、 機械創造コースの大石進教授および林光一教授の研究室を見学していただいた。また、晩には 林光一教授と米山が参加して歓迎会を開催した。 25 日には、Chen 教授と Lo 教授には青山キャンパスのチャペル、図書館、チャットルームな どを見学していただいた。 37 青山キャンパスでのチャットルームの見学 また、国際交流センター所長の吉波弘教授および副所長の三井敏之准教授と今後の交流につ いて会談していただいた。その後、相模原キャンパスに戻り、理工学部長の辻正重教授と会談 していただいた。その後、機械創造コースの小川武史教授、長秀雄准教授、小林信之教授、米 山の研究室の見学会を行った。晩には小川教授、長准教授、米山と学生達が参加して 2 度目の 歓迎会を開催した。 学生を交えた歓迎会の様子 Chen 教授および Lo 教授としては、本学の学生が National Cheng Kung University に短期 滞在する場合には受け入れ可能であるとのことである。今後、短期留学が可能となると考えら れる。 38 米国・カリフォルニア大学サンタクルーズ校の教員との交流 米山 淳 2009 年 9 月 11 日~9 月 17 日まで、大学院 GP における国際性教育の促進の一環として、 University of California, Santa Cruz(カリフォルニア大学サンタクルーズ校)の Nobuhiko Kobayashi 准教授を招聘し、青山学院大学との国際交流において有意義な活動を行いました。 Kobayashi 先生は青山学院大学理工学部電気電子工学科犬塚研究室の卒業生であり、1992 年 にご夫婦揃って渡米後、University of Southern California(南カリフォルニア大学)より材料 科学においてご夫婦揃って Ph.D.の学位を取得されました。奥様は Xerox の研究所に勤務、 Kobayashi 先生は Hewlett Packard 社の研究所に勤務されました。Hewlett-Packard 社では、 メモリや論理回路のための薄膜材料や半導体の研究を行いました。その後、Agilent 研究所、 Lawrence Livermore 国立研究所、U.S. Department of Energy、Los Alamos 研究所、NASA Amos 研究所などにてダイオードや新材料の研究に取り組みました。そして、2007 年に、准教 授として University of California, Santa Cruz に着任し、現在に至っております。現在もナノ スケールの新材料の研究に着手しており、化合物半導体を中心とした薄膜材料およびデバイス 研究が主なお仕事です。また、これまでに数多くの学術論文・著書を発表し、国際会議でも招 待講演を行っております。Kobayashi 先生は本学理工学部電気電子工学科出身で、海外の著名 な大学で Professor になられた唯一の方であります。 今回の招聘において、Kobayashi 先生には、本学のキャンパスや機器分析センターの見学も していただいきましたが、今回の報告書では、主に次の3つのことを報告いたします。1つ目 は学生主体のセミナーにおいての講演、2つ目は電気電子工学科の研究室訪問と共同研究に関 する話し合い、本学理工学部電気電子工学科との国際交流の促進に関する話し合いです。 学生主体のセミナーにおいては、Kobayashi 先生に主として2つのテーマについて話してい ただきました。1つ目はご自身の現在の研究テーマと、学位を取られた University of Southern California での大学院生としての研究生活です。もう一つは現在、教鞭を取っている University of California, Santa Cruz の大学紹介、そこでの研究環境と指導している大学院・学部生の話 でした。まずは、現在の研究テーマであるナノスケールの新材料とそれに関係するエネルギー・ 環境問題の話をしていただきました。研究中の新材料が、現在、世界的に問題になっている環 境問題にどのように貢献するかという興味深い話でした。また、Kobayashi 先生がアメリカの 大学院で学ぶきっかけとなったことや大学院での研究生活、さらには、現在の大学の紹介をし ていただきました。University of California, Santa Cruz は University of California の中でも 新しい大学の一つで電気工学科は最近 10 周年を迎えたとのことでした。University of California, Santa Cruz のメインキャンパスは Santa Cruz 市にありますが、最近はシリコンバ レーに近い Silicon Valley キャンパスも新たに完成し、テレビ授業により2つのキャンパスのど ちらでも授業を聴講できるとのことです。また、学生はシリコンバレーにある企業とも密接に 共同研究をしており、Silicon Valley キャンパスは、学生の工学への向上心をそそるキャンパス になっているようです。 電気電子工学科のいくつかの研究室への訪問していただき、担当の先生や学生との交流を行 いました。ここでは、犬塚研究室の同窓生で、Kobayashi 先生の先輩にあたる澤邊先生の研究 39 室と、米山研究室の訪問記を載せます。澤邊研究室には 9 月 15 日に訪問され、同研究室の大学 院学生とのセミナー形式の討論会に参加されました。博士前期課程学生全員が現在研究してい る内容を紹介しました。各研究活動に対して、Kobayashi 先生は非常に活発に質問をして下さ り、数多くのコメント頂戴する事が出来ました。澤邊研究室では、今までにも海外からの研究 者が研究室を訪れる事がありましたが、博士前期課程の学生にとって、英語での討論は難しい 場合が多かったです。しかし今回は、同じ学科の先輩であり、アメリカの大学教授になられた 方との日本語による討論であったため、学生にとっても非常に大きな刺激になった事は言うま でもありません。セミナーが終わった後も研究室の戻り、Kobayashi 先生を中心とする学生の 輪が自然と生まれた事は非常に嬉しい事でありました。学生は、機会があれば是非 Kobayashi 先生の研究室を見学してみたいと話していました。また、米山研究室においては、同研究室で 使用されている研究設備や実験装置を見学され、現在の研究テーマに関する説明を受けました。 最後に、本学理工学部電気電子工学科との国際交流の促進に関する話し合いを行いました。 現在は、Kobayashi 先生ご自身のご厚意で短期研修を行っておりますが、今後は、University of California, Santa Cruz 電気工学科と本学電気電子工学科との間でメモランダムを交わす方向 で進めることになりました。また、大学院 GP の代表者である田部教授と国際交流センター副 所長の三井准教授にも面会していただき、学科間のみならず大学同士の交流への発展させるこ との話し合いも行いました。 今後、今回の大学院 GP のプログラムを一つの契機として、青山学院大学理工学研究科が国 際化することと、海外に活躍の場を求める学生が現れる事を切に望みます。 40 英語 e-Learning について Reedy, D.W. 現在の日本の英語教育の課題の一つとして、授業以外でもいかに学生たちに英語に接する機 会を与えるかがあげられる。その中で、理工学部及び理工学研究科で英語の授業と同様に効果 的に活用しているのが e-Learning である。授業でのフェイス・トゥー・フェイスの英語インプ ットを犠牲にせずに学生たちの自由時間に行える e-Learning は8種類のプログラムが導入さ れている。その中で大学院生用に導入しているのが下記の2つのプログラムである。 英語でのプレゼンテーション法を学習する必須科目の科学技術英語Iを受講する博士前期課 程の1年生にはALC NetAcademy の「技術英語パワーアップコース」を必須コースとして指 定。 サイエンス系の英語をあらゆる方面から学習することができ、実験や発表の準備に役立つ教 材である。 「技術英語パワーアップコース」のサンプル画面 科学技術英語Ⅱでは上級者向けの英語でのプレゼンテーション法を指導する。ここで導入さ れているのが青山学院の理工学部大学院生のためにオーダーメイドの Science Now である。学 習内容は科学技術英語Iで行ったプレゼンテーションに必要なノウハウを復習したり、多方面 のサイエンスの題材を扱ったユニットが15種類用意されている。 以上の2コースの他にもALC NetAcademy の6コースが自由に受講できる状態であり、 e-Learning の観点からとても恵まれた環境を作 ることができた。授業と組み合わせた e-Learning は英語力アップに必ず役立つであろ う。 Science NOW Lab のログイン後の画面 41
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