果樹カメムシ類の樹園地への飛来に注意!! 記 - 佐賀県

病害虫対策資料第8号
佐農技防第510号
平成25年9月20日
各関係機関長
様
佐賀県農業技術防除センター所長
果樹カメムシ類の樹園地への飛来に注意!!
果樹カメムシ類(チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ等)の果樹園内への
飛来が県内各地で認められています。
さらに、主要な餌であるヒノキ毬果からの離脱が本格的に始まっており、今後、
果樹園への飛来が増加すると思われます。
園内外をこまめに見回り、カメムシ類が確認された場合は、下記事項を参考に飛
来初期の防除を徹底してください。
記
1.発生概況
1)フェロモントラップによる誘殺数は平年より少なく推移している(平成25年8月28
日付予報第6号)が、予察灯において8月中下旬以降、誘殺数が増加しており、現在、
150頭/半旬 程度の個体が誘殺されている(図1、表1)。
2)本虫の主要な餌であるヒノキ毬果上における寄生数は、8月下旬から9月上旬にかけ
て増加したが、9月下旬の調査では減少しており、ヒノキ毬果からの離脱が始まって
いる(表2、写真1)。
3)ヒノキ毬果における平均口針鞘数は9月下旬に急増している。平均口針鞘数が25本/
毬果を超えると、ヒノキ毬果から離脱し、果樹園へ本格的に飛来する。調査地点15
地点中3地点で既に25本/毬果を超えており、県全体では20.0本/毬果に達している
(表2、写真2)。
4)ヒノキ毬果上における寄生数の減少と、口針鞘数の増加を考慮すると、果樹園内へ
の飛来は今後も続くものと思われる。
写真1
ヒノキ毬果に寄生した
チャバネアオカメムシ
写真2
ヒノキ毬果における
カメムシの口針鞘
2.防除対策
1)飛来状況は地域や園地により大きく異なるため、園内外をこまめに見回り、早期発
見に努める。
2)果樹園へ侵入した果樹カメムシ類は、集合フェロモンで同種を園内に大量に誘引し
て被害を及ぼす。このため、果樹カメムシ類の果樹園への飛来を認めたら、次に掲
げる事項を参考にして、殺虫効果・吸汁阻止効果が高い合成ピレスロイド剤、ネオ
ニコチノイド剤による初期防除を徹底する(表3)。
3)薬剤散布の際には、周辺作物への飛散防止に努めるとともに、収穫前使用日数及び
使用回数等の農薬使用基準を遵守する。
4)ナシでは有袋栽培を行っていたとしても、袋の上から加害するので注意する。
5)飛来および加害が広範囲にわたってみられる場合は、一斉防除を行うと高い効果が
得られる。
6)台風襲来・強風雨後は、風であおられたカメムシが果樹園に飛来する恐れがあるの
で十分に注意する。
7)防風樹として植えられているスギ、ヒノキ、サンゴジュなどが結実していれば、結
実部を刈り込む。
8)果樹カメムシ類は樹高の高い樹木に一度飛来して、その後果樹園に飛来する傾向が
あるので、防風樹等は必要以上に高くならないように剪除する。
9)今後の発生状況については、農業技術防除センターホームページ
(http://www.pref.saga.lg.jp/web/boujo)における情報を参照する。
300
予察灯 県平均
誘
殺
虫 200
数
前年
︵ ︶
平年
本年
頭
100
0
5.1
5.4
6.1
6.4
7.1
7.4
8.1
8.4
9.1
9.4
10.1
図1 予察灯による果樹カメムシの誘殺状況の推移( 県平均)
10.4
表1 予察灯による果樹カメムシ類の誘殺状況の推移(県内各調査地点の値)
月・半旬
7.1
7.2
7.3
7.4
7.5
7.6
8.1
8.2
8.3
8.4
8.5
8.6
9.1
9.2
9.3
9.4
9.5
9.6
佐賀市 大和町
本年
0
0
0
0
1
4
35
45
88
141
117
133
108
109
167
平年
202
169
134
279
207
613
601
375
426
239
268
536
379
156
188
230
209
97
小城市 小城町
前年
本年
8
30
24
19
38
34
33
5
- 1
- 0
238
22
671
37
501
12
612
40
- 147
- 245
310
52
290
114
122
146
94
- - 平年
238
381
405
554
452
725
527
350
383
263
237
294
256
156
140
121
87
78
藤津郡 太良町
前年
369
421
709
602
989
1183
656
613
920
533
111
98
199
129
209
32
11
14
本年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
故障
平年
12
13
10
27
19
20
17
17
10
10
7
6
12
16
15
22
29
6
前年
0
0
0
2
2
4
7
7
5
2
0
3
2
1
0
0
0
0
表2 ヒノキ毬果における果樹カメムシ類寄生虫数及び口針鞘数(H25年9月下旬現在)
ヒノキ毬果における寄生状況
No.
7月 8月
下旬 上旬
合計 合計
調査地
1
上
峰
町
2
神
埼
3
小
城
4
多
久
8月
下旬
合計
9月下旬
9月
上旬
1)
幼虫 合計
合計 成虫
0
16
口針鞘数
7月
下旬
8月
上旬
8月
下旬
9月
上旬
9月
下旬
0
0.2
0.9
1.1
6.9
ヒノキ毬果
着果状況
2)
0
0
0
1
16
市
0
0
4
2
8
0
8
0.6
1.6
2.5
10.2
9.7
やや少
市
11
0
4
0
1
0
1
5.7
2.5
4.1
5.9
20.2
やや少
市
少
5
3
3
5
8
0
8
1.2
6.1
7.0
10.6
37.6
やや少
5
唐
津
市
1
0
1
10
61
2
0
2
0
4.0
5.1
10.3
21.3
やや少
6
唐
津
市
2
0
2
17
11
6
0
6
0
0
6.6
6.4
24.8
中
7
伊 万 里 市 1
0
0
0
0
2
0
2
0
0
1.4
3.3
18.6
やや少
8
伊 万 里 市 2
0
0
5
6
3
0
3
0
0
2.3
0.7
10.7
やや少
9
伊 万 里 市 3
5
1
6
29
13
0
13
0
0
7.0
9.4
20.3
やや少
9
4
0
0
0
0
0
0.8
12.1
7.2
3.8
16.4
やや少
10
白
石
町
11
鹿
島
市
1
3
0
0
5
3
0
3
3.5
5.8
12.8
12.2
21.4
やや少
12
鹿
島
市
2
1
0
11
0
10
1
11
0.2
1.6
18.7
16.3
30.3
やや少
13
鹿
島
市
3
1
0
12
8
4
3
7
0
0.0
3.5
6.6
30.2
中
14
太
良
町
1
27
2
1
1
0
0
0
1.7
7.3
12.5
15.9
19.9
やや少
15
太
良
町
2
6
4
34
34
2
0
2
2.0
2.0
2.0
2.0
12.2
やや少
平 均
4.5
1.1
7.1
10 .9
5.2
0.3
5 .5
1 .0
2.9
6 .2
7 .6
2 0 .0
やや少
平年
14.0
13.0
1 3.4
11 .6
9 .8
3 .4
8.1
1 1.3
16 .2
2 1 .0
前年(H24年)
9.1
19.7
6.5
2 .1
1 .7
1 .2
1 2.2
2 1.1
23 .5
-
1)チャバネアオカメムシの寄生が主体で、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシ等のその他のカメムシの寄生はわずかであった
2)ヒノキ毬果着果指数:福岡総農試の達観調査法(一部改変)に基づいて調査
・極少:ほとんど結実が見あたらない
・少:梢頭部にわずかに結実
・やや少:梢頭部から中央部周辺にかけて結実した樹と梢頭部にわずかに結実した樹が混在
・中:梢頭部から中央部付近にかけて結実
・やや多:梢頭部から最下部にかけて全面的に結実した樹と全面的に結実しない樹が混在
・多:梢頭部から最下部にかけて全面的に結実 ・極多:梢頭部から最下部にかけて全面的にブドウ状に結実
・極多:梢頭部から最下部にかけて全面的にブドウ状に結実
中
表3 果樹カメムシ類に登録のある主要薬剤
【カンキツ】
系統名
農薬名
テルスター水和剤
使用倍数
1000倍
使用
使用
時期
回数
収穫前日まで
3回以内
2000倍
合成ピレ
かんきつ
同時防除
できる害虫
チャノキイロアザミウマ
かんきつ
収穫45日前まで
マブリック水和剤20
備考
2回以内
収穫21日前まで
(みかんを除く)
チャノキイロアザミウマ
みかん
スロイド
MR.ジョーカー水和剤
2000倍
収穫14日前まで
2回以内
かんきつ
チャノキイロアザミウマ
ロディー乳剤
2000倍
収穫7日前まで
4回以内
かんきつ
チャノキイロアザミウマ
アクタラ顆粒水溶剤
2000倍
収穫14日前まで
3回以内
アドマイヤーフロアブル
4000倍
収穫14日前まで
3回以内
2000倍
収穫前日まで
3回以内
使用倍数
使用時期
使用回数
1000倍
収穫前日まで
3回以内
合 成 ヒ ゚ レ スカウトフロアブル
1500倍
収穫前日まで
5回以内
スロイド
テルスター水和剤
1000倍
収穫前日まで
2回以内
MR.ジョーカー水和剤
2000倍
収穫14日前まで
2回以内
2000倍
収穫前日まで
3回以内
使用倍数
使用時期
使用回数
アグロスリン水和剤
1000倍
収穫前日まで
3回以内
テルスター水和剤
1000倍
収穫14日前まで
2回以内
MR.ジョーカー水和剤
2000倍
収穫14日前まで
2回以内
2000倍
収穫前日まで
3回以内
使用倍数
使用時期
使用回数
2000倍
収穫7日前まで
5回以内
1000倍
収穫前日まで
3回以内
2000倍
収穫前日まで
2回以内
ネオニコチ
ノイド
アルバリン顆粒水溶剤
スタークル顆粒水溶剤
アザミウマ類
コナカイガラムシ類
チャノキイロアザミウマ
かんきつ
コナカイガラムシ類
チャノキイロアザミウマ
コナカイガラムシ類
【ナシ】
系統名
農薬名
アグロスリン水和剤
ネオニコチ
アルバリン顆粒水溶剤
ノイド
スタークル顆粒水溶剤
【カキ】
系統名
合成ピレ
スロイド
農薬名
ネオニコチノ アルバリン顆粒水溶剤
スタークル顆粒水溶剤
イド
【キウイフルーツ】
系統名
合成ピレ
スロイド
ネオニコ
チノイド
農薬名
アディオン乳剤
アルバリン顆粒水溶剤
スタークル顆粒水溶剤
アドマイヤーフロアブル
※ 農薬を使用する際は、必ずラベルを読んで、使用できる作物であるか、使用濃度、使用
量、使用時期は適切か、使用回数は定められた回数を超えていないか等を確認する。