_ 水中で動く物体にはたらく抵抗の測定

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129
Journ. Nara Gakugei Univ., Nat. Sci., Vol.10, No.2, Mar., 1962
水中で動く物体にはたらく抵抗の測定
岡 崎 良 書
(理 科 教 育 教 室)
(昭和36年11月9日受理)
A Measurement oF the Drag Against the Moving Body in Water
lもyokichi OKAZAKI
For the usual measurement of the drag against a moving body in water, a long water
pool and a particular balance are used. But it cannot be done with ease because of its
apparatus, the high speed of the body and so forth.
Here is a comparatively easy way of measurement using a cylinder, a stroboscope, and a
camera. That is, the weight supp〇rtedby the pulley draws the material in the cylinder filレ
ed with water, then the photographic record of the motion of the material through the
stroboscope is taken by the camera.
1.は し が き
水中を動く物体が水から受ける抵抗を測るには、ふつう静止水中で物体を引っぼりながら、物
体にはたらく抗力を特殊のBalanceで測る。これには比較的に大きくて長い水槽の設備が必要で
あり、まi=抗力の測定は物体が高速度で動いている関係上、簡易にはできないOここに述べる方
法は、円筒形水槽、滑車、重錘、 Stroboscope、写真機
-putie>
などを使用し、水を充たした円筒内の試料に滑車にかけ
/′TrtiniatLire
lamp
たおもりを吊した糸を結びつけて引き上げ、おもりの一
部である豆電球の運動状態をStroboscopeをとおして写
真に撮る。おもりはその重さをい
camera
「 「
ろいろ変えて試料の水中で動く速
度をそれに応じて変える。したが
って、写真からほ種々の速度での
抗力を計算することができる。
tst「oboscope
---でcyllnder
[コーーsponge
Fig. 1水中抵抗測定装置
2.実験および計算
装置はFig. 1に示すようであ
る cylinderには直径20cm、深
さ180cmのものを使った pulley
岡 崎 艮_ 吉
130
はなるべく軽く、摩擦の少いのがよい。おもりは電池、豆電球、おもりを入れる布袋よりなり、
全重量は試料Mの水中での重量と等しく,しておく。 stroboscopeは円板の周囲に4ヶ所隙間をつ
くり、 phonomoterでおよそ17秒間に30潮転させる程度かよい cameraは鉛直軸のまわりに少
しづつ回転し、一つの乾板上に10回はどの落体のstorobo写真を撮ることができるようにする。
この写真(別貢写真)からそれぞれの速度での試料抑またらく抵抗を計算する。
おもりWがCD (2)の位置を過ぎるときの速度をVl、 Vlh CD (2)の時間間隔をtとすれ
ば、この位置での平均加速度は
Va-Vi
α= t ・------(1)
この加速αをつくる力Fは t
F- (M+W+w) α-- (2)
水中での試料の重さとWとを等し
くしておけば
F=wg-Rf
(v) ・C3)
Rf(v)は水中で物体が受ける抵抗
Rlとpulleyの抵抗R巴とが合さっ
Rf(v)-wg- (M+W+w)
I
v
・誓旦・・・-(4)
V
CD (2) C3)より
I
T 上
る。 ′
=2Kォ= 遇HHHuHは
たもので、何れも速度の曲数であ
写真1はstorobo写真によって
Fig.2 各部に快く力の関係
乾板上に現われた豆電球の斑点で
ある Fig.3は写真1の斑点a、 b、 C∴-の位置を方眼紙上に移し、更にその間の距離を直角方向
に、例えばa′b、 b′C--・と転写するときのし方で
C'
ある。おもりが動く実際の距離eは乾板上にe/と
して現われる。したがって、おもりがstoroboの
**・ 1
l
--
1
(V2J
F
一定間隔t間に動く実際の距離Sは
S-a (乾板上の距離) e/t/-∴(5)
l 1
o
"箭
a; ‥T'
‥‥c一蝣- <r-
削友上の班点 -Wの落下方向
Fig. 3 落体のStrobo写東から転写のし方
この実験では^-25cm、 -」'-!.35cmであるから
S-ax18.5 になる。
Fig.3でbc、 cd問の平均速度Vl、 V空は
v!=b'c-
e/e't
v2三C′a-
tie′t---(6)
storob0円板には4個の細隙があって、 30回転が16.2秒であるから、時間間隔tは0.135秒.にな
る。したがって乾板上の距離aに応ずる速度は(5), (6)式より
Ⅴ-S!t-ax18.5/0.135
=ax137
となる。
131
水中で動く物体をこほたらく抵抗の測定
(1) (6)式からC点の加速度α。は
α =(c'd-b/oewt*
(7)の値はbd問のほぼ平均値であるo d点での加速度αdはC/点で曲線/b'c'に切線を引き、 cb/
との交点をb〟とすれば
αd-(c/a-b〝c)iL ′t2
(4) (8)より
Rf(v)-wg-(M+W+w)(c'd-b′!c)」/」/t2...
-(9)
となる。これよりd点における抵抗が算出できる。
もしおもりの力wgと抵抗力Rf(v)とが等しくなれば、以後はそのときの終端速度Vtで等速
度運動をすることになる。この終端速度Vtでの抵抗力は
Rf(v) =mg
円筒を充分深くしておけば、この状態に持ってくることができるから計算はずっと簡易になる。
ー
景終退避巨J) Wのそれぞれの値に対する速
度変化を示す線が、終りでは
_
r◆一一r●一一㌦ 2.
2
0
_
_
・.・-◆---w *
l・95
ほぼ時間軸に平行になってい
るから、 (10)式の関係が成立
っと考えてよい。故にそれぞ
﹂
叢山地用無 go o
Fig.4はFig.3の方法によって、写真1のstrobo写真から転写したものである。これで見ると
リ
1.73
BO」
I.50
ーr一一一一一一.-一一
石O」
SO」
wa
Q-・・一-I
■.ド-
●-一一一^ a ^ m サー●- 一
°・_ -・一・--14 一°
1.40
I.21
1.00
30」
0.72
20」
れのWの値はその速度での抵
抗になるC この実験に使用し
・・一・--一一1- ・「-「-一一一°J‥
time
Fig. 4 Fig. 2のStrobo写真から転写した図
表1. Fig.4か ら計算した値
た試料は直径2.1cmの鉄球
で、抵抗の値は表1の終りの
項にkg/m2で示す。
132
岡 崎 良 書
またFig.5は速度一抵抗の
関係を示す。
tym *
300
然しこれにはpulleyによる 悪
抵抗が含まれているoそこで 空
前と同様にして、空中で
pulleyにおもりをかけstorobo
写真を撮ったものが写真2で
200
ある。これについてもFig.3
に従って作図すると、 Fig.6
のようになる。これをもとに
して, pulleyの抵抗を算出す
ると表2のようになる。この
loo
表で末尾の(9)式から算出し
た抵抗は実測値をもとにした
もので、これから Fig.7に示
すような速度一抵抗曲線をつ
くり、この曲線から得た値を
1 2
その時々の実験に使用した試
料の断面積で割り単位面積当
速 度
3 ''?e二
Fig.5 速度一抵抗曲線(その1 )
りの抵抗kg/m空を出す。従って試料
・ "
/ ', 2253
・
. /
の抵抗の影響は少くなる。
Fig.8には≠2. 1cm鉄球の抵抗に対
・'
_____---i
L 二二二●
20」
15」
の断面積が大きい場合には、 pulley
し、更に同じ方法で測定した少3.87
cm大理石球の抵抗を附記した。両
者の抵抗は完全に一致している。
●-・-●-●-●一
_ _一- ●一一一一●-●-1一一
10」 ・一・一・・一●一●
7.・- _・一・一・一・
きこ ・一・一・
time
Fig. 6 写真2のstrobo写真から転写した図
表2.写真2から計算したPulleyの抵抗
Kg
t O
悪K﹂2
ォ C & D
B
K*/W
120
u ^ ^ " < r ) c N J * - ' -
100
80
60
40
?0
0
3
速度 /sec
Fig. 7 Pulleyのみによる抵抗(表275、ら)
-I--- 戸 2.1CJTl 錬成
-x-,- a 3.87レm 大王翌石蛾
Fig.8 速度一抵抗曲線(その2)
3.実 験 の 検 討・
(1) storobo写真で終端速度に達しないと、計算が面倒であり、写真上の0.01cm orderが結
果に著しく影響し、その信頼度も少いから、円筒をなるべく深くし、終端速度が得られるように
する必要がある。できれば前記試料に対し、 3m以上の深さが望ましい。
(2) storobo板には上記の実験では4個所に細隙をあけたが、 8個所に増す方が良い。また
3m/sec以上では更に倍増する,J
(3)実験上の注意としては、電池の消耗に注意し、豆電球の明かるさが減退しないようにす
ること、乾板は感度の良いものを使う。
(4)この方法は実験中直ちに抵抗値を読むことができない欠点がある。目下回転水槽による
方法を実験中で、これによって前記の欠点が除かれそうである。