第 196 回雑誌会

第 196 回雑誌会
(Jul. 30, 2014)
(1) 木津川上流の小河川におけるふん便汚染指標細菌の現状把握
上野 加寿紀,
和田 桂子,
宗宮 功,
廣谷 博史
環境技術 42(8), 489-495 (2013)
レビュー:稲森 一差
近年,水浴やレジャーなどのレクリエーション利用によって,河川の親水空間としての価値が
再認識されている。その一方で,生活排水や畜産排水による河川水の汚染は広範にわたり,ふん
便性細菌が検出されている。以前の調査において,滋賀県の木津川上流の小河川を対象としてふ
ん便性大腸菌群数を調査したところ,最大で 104 個/100 mL を超える高い値を示した。そこで本研
究では,ふん便汚染源の特定および現状把握を目的とし,理化学的項目(水温,pH,DO,EC,
BOD,T-N,NH4-N,Cl-,NO3-N および PO4-P)と細菌項目(大腸菌群数,ふん便性大腸菌群数,
大腸菌数,および腸球菌数)の測定ならびに F-RNA ファージの群別判定によって,ふん便汚染源
の特定を行った。調査地点は,木津川上流の小河川において,ふん便性大腸菌群数が高濃度で検
出された宇陀川流域の黒木川流末(St.2)と笠間川流末(St.5)
,最も低い値を示した新大東橋(St.1)
の計 3 地点とした。また,調査は,2011 年 8 月 5 日,9 月 27 日,10 月 25 日,11 月 14 日の 4 回
行った。さらに,F-RNA ファージは,Salmonella Typhimurium WG49 を宿主として改変トリプトン
寒天培地に培養し,培養後に生じたプラークによって計数した。その後,平板表面に形成された
プラークから採取した F-RNA ファージは,PCR 法を用いて血清型に分類した。
理化学的項目を測定した結果,EC,BOD,T-N,NH4-N,Cl-については,いずれも St.5,St.2,
St.1 の順に高い濃度を示した。NO3-N は,St.5 において他の地点よりも約 2 倍高い値であった。
また,PO4-P は St.2 と St.5 において高く,St.1 と比較して 4.5 倍程度高い値を示した。これらのこ
とから,St.5 は最も汚濁が進行していたと考えられた。細菌項目を測定した結果,全地点におい
て調査対象とした細菌が検出された。St.1 における大腸菌群数,ふん便性大腸菌群数および大腸
菌数は,他の地点と比較して 1 オーダー小さい値を示した。また,F-RNA ファージは,St.1,St.2
および St.5 において,
それぞれ 54 PFU/100 mL,330 PFU/100 mL および 424 PFU/100 mL であった。
さらに,F-RNA ファージの群別判定を行ったところ,St.1 と St.5 において,ヒト由来群(Ⅱ型)
が 86%を占めており,ヒト由来の汚染を示唆する結果となった。その一方で,St.2 では動物由来
群(Ⅰ型)が 88%を占め,ヒトよりも動物による汚染を受けていることがわかった。しかしなが
ら,St.2 の上流には畜産農家が確認できないことから,野生動物や鳥類によって汚染されている
ことが示唆された。
(2) 沿岸域での土砂堆積・侵食域調査における蛍光 X 線分析の適用に関する検討
加藤 茂,光山 英典,岡辺 拓巳,青木 伸一
土木学会論文集 68(2), 651-655 (2012).
レビュー:奥 尭史
海岸侵食の対策には,漂砂系内における土砂量の分布および変動傾向を把握することが重要で
ある。そこで,汀線測量や航空写真に基づく浜幅調査が実施されているが,労力やコストの点か
ら頻繁な調査は困難である。その一方で,蛍光 X 線(XRF)分析法は,土砂の化学元素組成を比較
的容易かつ短時間で分析できる。そこで本研究では,砂浜の堆積および侵食状況の評価における
XRF 分析法の適用性を検討した。試料は,愛知県の伊良湖岬から静岡県の今切口までの 20 地点
から,表層の海浜砂を採取した。また,海浜砂の化学元素組成は,XRF 分析法のなかでも,効率
的かつ短時間で多元素同時分析が可能であるエネルギー分散型分光(EDX)分析によって測定した。
EDX 分析は装置が小型であり,現地での直接計測ができる。また,周期律表上の K(原子番号 19
番)~Bi(原子番号 83 番)までのうち,気体、揮発性および強磁力性物質を除く 23 元素の定量分析
が可能である。
EDX 分析によって,各地点における海浜砂の化学元素組成を分析した結果,最東部の調査地点
において 8 元素(Sb,Sr,Rb,Fe,Mn,Ti,Ca,K)が検出された。また,各調査地点において検出された
元素数は,西部に向かって増加し,最西部の調査地点では 17 元素(Cd,Pb,Cr,As,Sb,Sn,Ag,Sr,R
b,Zn,Ni,Fe,Mn,V,Ti,Ca,K)となった。この原因として以下の 2 つが考えられる。①調査エリア
では,西向きの土砂輸送が存在することから,土砂の流下に伴って特定の元素成分が輸送され,
元素数が増加する。②海浜砂には,土砂供給源と報告されている天竜川に加えて,陸域の土砂が
供給され,元素数が増加する。全地点において検出された 8 元素(Sb,Sr,Rb,Fe,Mn,Ti,Ca,K)の含
有量と浜幅を比較したところ,Fe 元素の含有量と浜幅の増減は類似する傾向を示した。このこと
から,海浜砂の化学元素含有量によって,浜幅の相対的な変化を簡易に調査できると考えられた。
そこで,全地点において検出された 8 元素の含有量についてクラスター分析を行った結果,浜幅
の面積,侵食傾向の違いによって 3 つのクラスターに分類された。このことから,海浜砂におけ
る化学元素の含有量は,浜幅の大きさや侵食および堆積傾向に対応していることがわかった。以
上の結果から,XRF 分析による化学元素組成の調査は,海浜の侵食および堆積域調査に利用可能
であることが示唆された。
(3) コロニーPCR 法による MRSA および腸球菌の薬剤耐性遺伝子の迅速検出
土崎 尚史,石川 淳,堀田 国元
The Japanese Journal of Antibiotics 53(6), 422-429 (2000).
レビュー:寺西 康太郎
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や腸球菌などのグラム陽性菌の PCR 法による遺伝子
検出では,DNA 調製に多くの労力と時間を要するため,多数のサンプルから遺伝子を検出するこ
とが難しい。その一方で,グラム陰性菌では,熱水抽出上清法やコロニーから菌体を直接 PCR 反
応液に添加するコロニーPCR 法などの簡略かつ迅速な PCR 法が行われている。
そこで本研究では,
薬剤耐性遺伝子の存否が明らかな MRSA と腸球菌の 2 菌種を対象として,熱水抽出上清法とコロ
ニーPCR 法による薬剤耐性遺伝子の検出を検討した。供試菌株は,ABK(Arbekacin)耐性菌とし
て臨床分離された MRSA 33 株と腸球菌 10 株(Enterococcus faecalis 9 株,Enterococcus faecium 1
株)の合計 43 株とした。プライマーは,メチシリン耐性遺伝子(mecA)と ABK 耐性遺伝子
(aac(6’)/aph(2”))を標的遺伝子とするものを用いた。本研究で実施したすべての実験は,
KOD-plus-DNA polymerase を用いた。しかしながら,従来の PCR には Amplitaq DNA polymerase
が一般的に使用されるため,Amplitaq DNA polymerase を用いたコロニーPCR も検討した。
熱水抽出上清法によって mecA 遺伝子の検出を行った結果,抽出原液の 22~28 倍希釈菌液では
mecA 遺伝子の増幅バンドが明瞭に検出された。しかしながら,2 倍希釈菌液の場合には,mecA
遺伝子は検出されなかった。このことから,熱水抽出上清法において,菌量が多い場合,明瞭な
増幅バンドの検出が阻害されることがわかった。次に,mecA と aac(6’)/aph(2”)の存否が明らかと
なっている計 43 株を対象に,マルチプレックスプライマーを用いてコロニーPCR を行った。その
結果,大半の株について mecA および aac(6’)/aph(2”)の有無と増幅バンドの有無が合致した。しか
しながら,いくつかの菌株では合致しなかった。そこで,PCR 反応液に添加する菌量を変えてコ
ロニーPCR を行ったところ,抽出原液の 101 倍および 102 倍希釈菌液(添加菌数:104 cfu および
103 cfu)を用いた場合において最も明瞭な増幅バンドが観察された。このことから,コロニーPCR
においても,PCR 反応液に添加する菌量が多い場合に明瞭な増幅バンドの検出が阻害されること
がわかった。また,Amplitaq DNA polymerase を用いたコロニーPCR では,標的遺伝子の増幅が不
安定であった。以上の結果から,熱水抽出上清法およびコロニーPCR を用いて再現性良く薬剤耐
性遺伝子の有無を迅速に検出するためには,菌体の添加量を適切に希釈し,高性能な
KOD-plus-DNA polymerase を用いることが重要である。