73-8 RON-11.qxd - 富士電機

富士時報
Vol.73 No.8 2000
電源 IC 用パッケージ
河田 尚文(こうだ たかふみ)
(1)
まえがき
ジを独自開発し,1988年から製品化している。現在は,透
明樹脂のモールドパッケージ上に光学レンズ系を高精度に
近年,電子機器の小型化・軽量化・高機能化を実現する
位置決め接着したオートフォーカスモジュールが主流であ
高密度実装に伴い,パッケージング技術を含む IC 実装技
る。 図 2 に 透明樹脂 パッケージと,オートフォーカスモ
術が次々と開発されている。
ジュール製品を示す。
そのなかで,富士電機の IC パッケージ技術の概要と電
源 IC 用パッケージについて述べる。
そのほか富士電機では,実装技術として COB(Chip on
Board)実装でドライバモジュールを製品化しているほか,
(2)
金 バンプ,はんだバンプのプロセス も 持 っており, CCB
富士電機の IC パッケージ技術の概要
( Controlled Collapse Bonding) 実 装 , COF( Chip on
Film)実装,COG(Chip on Glass)実装に対応可能であ
富士電機 の IC パッケージは, 1981年 に DIP( Dual In-
る。
line Package) 製品 を 市場 に 出 し,その 後 SOP( Small
Out-line Package), QFP( Quad Flat Package), SSOP
電源 IC 用パッケージ
(Shrink Small Out-line Package),TSSOP(Thin Shrink
Small Out-line Package)の狭リードピッチ化,薄型化に
対応している。さらには SON(Small Out-line Non-lead)
,
富士電機の電源 IC 製品は,1∼3チャネルの少出力端
子製品と,4チャネル以上の多出力端子製品に大別され,
QFN( Quad Flat Non-lead)を 系列化中 であり, 顧客 の
現在量産中の電源 IC 用パッケージは,すべてプラスチッ
要求に応じて BGA(Ball Grid Alley)
,LGA(Land Grid
クモールドパッケージである。
Alley)パッケージも可能である。図1に QFN48 ピンパッ
ケージを示す。
少出力端子製品 では,その 用途 に 応 じて DIP, SOP,
SSOP,TSSOP で,6 ピンから20ピンの各種小ピン用パッ
また,オートフォーカス IC 用透明樹脂モールドパッケー
図2 透明樹脂パッケージとオートフォーカスモジュール製品
図1 QFN48 ピンパッケージ
河田 尚文
IC 組立品 の 開発 に 従事 。 現在 ,
松本工場半導体開発 センター IC
開発部。
460(40)
富士時報
電源 IC 用パッケージ
Vol.73 No.8 2000
表1 富士電機の主な電源 IC 用パッケージ
端子数
リードピッチ
(mm)
代表的な取付け高さ
(mm)
6
8
16
20
DIP
2.54
4.30
●
●
●
●
SOP
1.27
2.20
●
●
SSOP
0.65
2.00
TSSOP
0.65
1.10
●
●
SON
0.50
0.85
▽
▽
QFP
0.50
(64ピンは0.4ピッチ可)
1.55
QFN
0.50
1.00
LGA
0.50
1.30
外 形
●
28
32
48
●
●
56
64
80
●
●
●
○
●
▽
○
●:量産供給中 ○:開発中 ▽:検討中
ケージを用意している。一方,多出力端子製品では,顧客
の課題がある。
要求に応じたパッケージサイズ,端子ピッチ,端子形状で
(1) 実装はんだ融点上昇によるパッケージ耐熱の確保
対応しており,現在各種 QFP を中心に量産中で,QFN,
(2 ) リード端子はんだめっきの鉛フリー化
LGA も 系列化 を 推進 している。 表1 に 富士電機 の 主 な 電
源 IC 用パッケージの一覧を示す。
現在量産している富士電機の電源 IC に関しては,一部
の QFP パッケージを除きリフロー260 ℃ピーク/255 ℃ 10
最近,CSP(Chip Size Package)と呼ばれるチップサ
秒の実装条件での耐熱の確保はできていることを確認して
イズに近いいろいろなパッケージング方法が実現しており,
おり,その一部の QFP パッケージについても2000年9月
小型携帯機器の 使用 を 前提 とした 顧客 から CSP 化 の 要求
までに対策を完了する。量産準備中のパッケージに関して
が強まっているなかで,電源 IC 用チップの高集積化,高
は,開発時から耐熱性を確保するよう設計を進めている。
効率化,高速化に伴う発熱などの矛盾した問題を解決しな
リード 端子 はんだめっきに 関 しては, Ti/Pd/Au, Sn-
ければならない。富士電機では電源 IC 用のパッケージと
Ag,Sn-Bi,Sn-Cu のめっき材について検討をしているが,
してどのような CSP の形態が採用可能であるか,さらに
鉛フリー化対応製品の量産供給を 2001 年 4 月から対応で
はもっと別の実装形態があるのか,という視点で主に以下
きるよう,鋭意推進中である。
の観点から検討を進めている。
(1) 低オン抵抗製品に対する低電気抵抗端子の実現
あとがき
(2 ) パッケージ,実装形態による放熱問題の解決
(3) 少ピン電源 IC 製品におけるコストメリットの創出
パッケージ自体の開発とは別に,新規に開発した実装面
以上述べたように,今まで富士電機の電源 IC は標準的
なパッケージを中心に製品を提供してきたが,今後の携帯
積が小さく電極間ピッチが小さいパッケージにおいては,
機器の伸張や新しい電子機器の出現に伴い,電源 IC 分野
一般部品として発売されている測定治具が存在していない
にもさまざまなパッケージ,実装形態を提案しなければな
場合が多い。特にパッケージ電極と電気的測定試験装置を
らない。
接続する測定ソケットが問題となる。そのような状況から
このような市場動向,顧客要求に迅速にこたえられるよ
新規パッケージを開発する際には,製品の電気的特性試験
う,電源 IC としてどのような供給形態が適切なのか,実
測定用ソケットおよび測定方法の開発も併せて行っており,
装まで考慮した技術の開発を推進していく所存である。
パッケージ技術者,テスト技術者および機種担当者が一体
となって,安定した製品仕様の実現に努めている。
参考文献
(1) 西部隆: オートフォーカス IC, 富士時報 , Vol.64, No.2,
電源 IC 用パッケージ製品の鉛フリー化対応
p.145- 148(1991)
(2 ) 広橋修ほか:パッケージ技術,富士時報,Vol.67,No.2,
IC パッケージの 鉛 フリー 化 には, 大 きくは 以下 の 二 つ
p.138- 141(1994)
461(41)
*本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する
商標または登録商標である場合があります。