呼吸器外科

呼吸器外科
Division of Thoracic Surgery
■担当医師
■取り扱っている疾患
松隈 治久(まつぐま はるひさ)
宮崎医科大学卒
副主幹兼医長
○原発性肺癌
呼吸器外科年間手術症例の約7割が原発性肺癌です。臨
○外来診療日
火(午前)
木(午前)
床病期ⅠA期からIIIA期の一部まで、手術の対象としてい
ます。全身転移のない局所進行肺癌でも、術前に抗癌剤や
放射線治療を組み合わせることで手術可能となることもあ
呼吸器外科専門医合同委員会呼吸器外科専門医/日本胸部外科学会
呼吸器外科専門医/日本外科学会外科専門医
中原 理恵(なかはら りえ)
浜松医科大学卒
副主幹兼医長
ります。また、患者さんの体力や呼吸機能などに応じて切
除範囲を考慮し、可能な限り根治切除を目指します。術後
ⅠB期以上と診断された方にはガイドラインに準じて補助
抗癌剤治療を行ったり、縦隔リンパ節に多発する転移を認
めた方には術後放射線治療を追加する場合もあります。
○外来診療日
火(午前)
木(午前)
術後にⅠA期(リンパ節転移のない3cm以下の早期癌)
と診断された方でも、2割前後の方は再発されます。手術
後再発症例に対する標準治療のガイドラインは現在ありま
せんが、再発後も呼吸器外科医が呼吸器内科医や放射線治
呼吸器外科専門医合同委員会呼吸器外科専門医/日本外科学会外科
専門医
療医らとカンファレンスを持ちつつ、最善の治療を行って
いきます。
鈴木 晴子
(すずき はるこ)
山口大学卒
医長
○転移性肺腫瘍
○外来診療日
火(午後)
木(午前)
他臓器癌からの肺転移は比較的多く認められます。原発
臓器により肺転移切除の適切性は異なりますが、現在、ど
の臓器の癌がどの程度肺転移した状況で、手術が適切かど
うか、という結論は得られていないのが実情です。その中
で、比較的多く認められる大腸癌からの肺転移は、肺転移
の切除により生存期間が延長するという報告もあるため、
複数の肺転移でも完全切除が可能な場合は手術を施行しま
す。どの臓器からの肺転移であれ、基本的には原発臓器の
癌の再発がなく、肺以外に転移が認められないことが、肺
切除の適応と考えられています。
○その他肺腫瘤
小さな腫瘤で手術以外に診断が困難な場合は、診断目的
に侵襲の少ない胸腔鏡下の肺腫瘤切除を施行することもあ
ります。病理学的検査の結果、悪性腫瘍以外の疾患(炎症
性肉芽腫、結核腫、真菌症など)と診断されることもあり
ます。
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○縦隔腫瘍
縦隔腫瘍の多くは胸腺腫という前縦隔腫瘍です。比較的
緩徐な増大傾向を示す胸腺腫ですが、進行に伴い悪性の性
格を持つため、なるべく早く切除することが推奨されます。
その他の縦隔腫瘍としては、後縦隔に発生しやすい神経鞘
図2 胸腔鏡手術の創
(右肺葉切除後)
腫や、前縦隔に発生しやすい奇形腫なども増大傾向を認め
る場合は基本的に手術治療を行います。しかし、縦隔腫瘍
の多くは診断のための組織採取が困難な場所に存在するた
め、手術前に診断が得られないことが多く、診断目的にも
手術が行われます。
○胸膜腫瘍
3.胸部悪性腫瘍に対する集学的治療
リンパ節転移が認められたり隣接臓器へ浸潤を認めるよ
うな進行肺癌や悪性胸腺腫のような腫瘍に対しては、手術
による切除だけでは治癒が困難です。そのような症例には、
呼吸器内科や放射線治療部と合同で、抗癌剤や放射線治療
を手術と組み合わせた集学的治療を行います。
胸膜腫瘍は稀ですが、良性腫瘍から悪性腫瘍まで様々な
当初切除が困難と判断された症例でも集学的治療により
腫瘍が発生します。近年は、アスベスト暴露による胸膜悪
手術が可能となり、治癒が得られる症例も認められます
(図
性中皮腫が徐々に増加傾向ですが、中皮腫は早期に診断が
3)。
つきにくいため進行例で発見されることが多く、治癒を目
治療前
指した手術は適応とならないことが多いのが現状です。
治療後
■当科の特長
1.治療方針の決定
当センターでは、胸部腫瘍に対し呼吸器内科と呼吸器外
科合同で治療にあたっています。初診時は、曜日によって
呼吸器内科と呼吸器外科が対応し、精査を行いつつ必要に
図3 左肺門リンパ節転移が著明で全摘が必要と思われていた症例でし
たが、術前抗癌剤治療で縮小し、左上葉切除のみで完全切除可能
となりました。
応じてカンファレンスなどで治療方針を決定していきま
す。その後治療の段階で、手術を軸とする治療は呼吸器外
科が、抗癌剤など手術以外の治療を軸とする場合は呼吸器
4.CTで発見されるスリガラス影病変の経
過観察
内科が担当します(図1)。
近年、CT検診の普及などにより、通常のレントゲンで
は発見できない淡いスリガラス影がCTで発見されること
が多くなりました。その中には、数年の経過で増大傾向を
示し肺癌と診断される陰影も多く、慎重な経過観察が必要
です。
当センターでは、最新のヘリカルCTを使用してCT検診
学会のガイドラインをもとにこのような影をもつ患者さん
の経過観察を行っています。増大傾向など、肺癌を疑う所
見が認められた場合は、速やかに生検・手術などで診断と
図1 呼吸器科カンファレンス風景
治療を行います(図4)。
2.胸腔鏡下手術
(VATS)
現在、Ⅰ期の肺癌(リンパ節転移のない症例)に対して胸
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腔鏡下手術を行っています。傷口が小さく体に負担がかか
5.リンパ節転移の組織学的診断(超音波気
管支鏡(EBUS)を用いた経気管支針生検)
らないため、肺癌の標準手術である肺葉切除術を行った場
治療方針の決定にはリンパ節転移の有無は重要な因子で
合でも手術後約1週間で退院が可能です
(図2)。
すが、画像検査のみでは困難なことがあります。
初診時
1年9か月後
図4 初診時のCTで右肺上葉に淡いスリガラス影を認め、CTで
経過観察したところ、1年9か月後のCTでは明らかな増大と
濃度上昇を認めました。
胸腔鏡下右肺上葉切除を施行。陰影はⅠA期の肺腺癌と診
断されました。
当センターでは2012年よりEBUSを導入し肺門、縦隔の
リンパ節転移の組織学的な診断を行っています。EBUSは
縦隔鏡検査とは違い、気管支内腔からエコーでリンパ節を
確認し穿刺するため、患者さんへの負担が少なく、高い精
度で診断が可能です(図5)。
穿刺針
リンパ節
図5
■手術症例数
(表1)
表1
2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
66
83
85
71
89
原発性肺癌手術
37
53
50
73
上記のうち胸腔鏡下手術 29
(44%)
(45%)
(61%)
(70%)
(82%)
(%)
16
19
26
7
11
転移性肺腫瘍手術
15
19
17
22
22
その他手術
■参加している多施設共同臨床試験(2013
年1月時点で参加している試験) (表2)
表2
試験名
対象
JCOG0707 病理病期I期(T1>2cm)非小細胞肺癌完全 完全切除非小細胞肺癌
切除例に対する術後化学療法の臨床第III相
試験(UFTvsTS-1for p-stage I NSCLC)
JCOG0802 肺野末梢小型非小細胞肺癌に対する肺葉切
除と縮小切除(区域切除)の第III相試験
WJOG5108L 進行再発肺腺癌におけるゲフィチニブとエルロ
チニブのランダム化第III相試験切除可能胸
CJLSG 0801 壁 浸 潤 肺 が ん に す る C o n c u r r e n t
Chemoradiotherapyと外科切除による集学
的治療の安全性と有効性の検討
2㎝ 以下のp-Stage I期
2㎝以下の肺野末梢に存
在するc-IA期肺癌(超早
期癌を除く)
c-StageIIIb、IV、もしく
は術後再発肺腺癌
切除可能胸壁浸潤
c-T3N0-1M0症例
■学会発表(2010年4月∼2013年3月)
1.松隈 治久、宇井 了子、大畑 賀央、中原 理恵、横井 香平:
肺微小GGO病変の治療戦略 follow-up or resection GGO
を有する肺小結節に対するCTによる経過観察および手術.第
110回日本外科学会定期学術集会、名古屋、2010.04
2.松隈 治久、宇井 了子、大畑 賀央、中原 理恵、横井 香平:
肺癌に対する右下葉切除+縦隔リンパ節郭清術後の孤立性気
管転移に対する気管管状切除再建術を施行した1例.第27回
日本呼吸器外科学会総会、仙台、2010.05
3.中原 理恵、安樂 真樹、宇井 了子、大畑 賀央、松隈 治久、
横井 香平:肺癌手術症例における術前骨髄内腫瘍細胞の存在
の検討.第27回日本呼吸器外科学会総会、仙台、2010.05
4.Nakahara R, Ohata N, Matsuguma H: Clinical relevance
of the detection of tumor cells in the bone marrow
of patients before lung cancer surgery. 46th Annual
Meeting of the American Society of Clinical Oncology Chicago 2010.06
5.松隈 治久、宇井 了子、大畑 賀央、中原 理恵、平賀 忠男:
胸腔鏡手術の標準化にむけて 自由回転式モニターを使用した
Eye hand coordinationを考慮したVATS肺葉切除術.第23
回日本内視鏡外科学会総会、横浜、2010.10
6.松隈 治久、宇井 了子、大畑 賀央、中原 理恵、笠井 尚、神
山 由香理、森 清志、児玉 哲郎:術前補助療法 Clinical N1
非小細胞肺癌に対する術前化学療法の検討.第51回日本肺癌
学会総会、広島、2010.11
7.中原 理恵、宇井 了子、大畑 賀央、笠井 尚、神山 由香理、
森 清志、松隈 治久、児玉 哲郎:小細胞肺癌切除症例の臨床
病理学的検討.第51回日本肺癌学会総会、広島、2010.11
8.Matsuguma H, Suzuki H, Nakahara R, Kasai T,
Kamiyama Y, Igarashi S, Mori K, Kodama T, Yokoi
K: Characteristics of ground-glass opacity nodules of
the lung which show growth during follow-up with
computed tomography. 47th Annual Meeting of the
American Society of Clinical Oncology Chicago 2011.06
9.Nakahara R, Suzuki H, Matsuguma H: Follow-up
examination for detecting brain merastases after lung
cancer surgery. 14th International Association for the
Study of Lung Cancer Amsterdam 2011.07
10.松隈 治久、鈴木 晴子、中原 理恵、笠井 尚、神山 由香理、森
清志、児玉 哲郎、横井 香平:発見されたGGO結節に対する
診断・治療戦略 CTによる経過観察の至適CT間隔と期間に
ついて.第52回日本肺癌学会総会、大阪、2011.11
11.中原 理恵、鈴木 晴子、五十嵐 誠治、松隈 治久:病理病期IB
期非小細胞肺癌の検討 胸膜浸潤の評価は適切か? 第52回
日本肺癌学会総会、大阪、2011.11
12.松隈 治久、鈴木 晴子、中原 理恵:肺癌手術例での低浸潤癌
および再発の予測における画像上の腫瘍径、充実部分の径、
GGOの割合の比較.第112回日本外科学会定期学術集会、千
葉、2012.04
13.中原理恵、鈴木晴子、松隈治久:肺腺扁平上皮癌切除例の
臨床病理学的検討.第29回日本呼吸器外科学会総会、秋田、
2012.05
14.鈴木晴子、中原理恵、松隈治久:病理病気I期の肺腺癌におけ
る腫瘍内の壊死組織と予後の検討.第29回日本呼吸器外科学
会総会、秋田、2012.05
15.Matsuguma H, Nakahara R, Suzuki H, Kasai T,
Kamiyama Y, Igarashi S, Mori K, Kodama T, Yokoi K:
Comparison between diameters of the whole nodule
and solid area and the proportion of GGO in the tumor
shadow on HRCT in predicting less-invasive lung cancer
and recurrence after complete resection in patients
with clinical N0 NSCLC . 48th Annual Meeting of the
American Society of Clinical Oncology, Chicago,
2012.06
16. 松 隈 治 久、 鈴 木 晴 子、 中 原 理 恵: 中 枢 結 紮 を 置 か な い
LigaSure Blunt-Tipのみを用いた肺動脈処理の経験.第65回
日本胸部外科学会定期学術集会、福岡、2012.10
17.鈴木 晴子、中原 理恵、松隈 治久、五十嵐 誠治:原発性肺癌
15
におけるFDG-PETの集積と病理学的悪性度との関連.第53
回日本肺癌学会総会、岡山、2012.11
18.中原 理恵、鈴木 晴子、笠井 尚、神山 由香理、松隈 治久、森
清志、五十嵐 誠治、児玉 哲郎:肺原発多形癌切除例の臨床
病理学的検討.第53回日本肺癌学会総会、岡山、2012.11
■論文(2008年4月∼2013年3月)
1.Matsuguma H, Suzuki H, Ishikawa Y, Nakahara R, Izumi
T, Igarashi S, Miyazawa N: Localized mediastinal lymph
node amyloidosis showing an unusual unsynchronized
pattern of enlargement and calcification on serial CT. Br
J Radiol. 2008 Sep;81(969).
2.中原 理恵、森 清志:【CTで発見される限局性すりガラス陰
影GGA/GGO 最近10年間の臨床動向】 胸部CT画像で発見
される限局性GGO病変の経過観察.日本胸部臨床68(2)
:
110-119, 2009.
3.Matsuguma H, Nakahara R, Ishikawa Y, Suzuki H, Ui
A, Yokoi K: Transmanubrial osteomuscular sparing
approach for lung cancer invading the anterior part of
the thoracic inlet. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2010
;58(3):149-154.
4.松隈 治久、中原 理恵、大畑 賀央、宇井 了子、横井 香平:
【Pancoast型肺癌の手術】 選択術式 肺尖部前方へ浸潤する
肺尖部胸壁浸潤肺癌に対するtransmanubrial osteomuscular
sparing approachの利点とコツ.胸部外科63(1)
:23-27,
2010.
5.Matsuguma H, Yoshino I, Ito H, Goya T, Matsui Y,
Nakajima J, Ikeda N, Okumura S, Shiono S, Nomori H;
Metastatic Lung Tumor Study Group of Japan. Is there
a role for pulmonary metastasectomy with a curative
intent in patients with metastatic urinary transitional cell
carcinoma? Ann Thorac Surg. 2011;92(2):449-453.
6.Matsuguma H, Oki I, Nakahara R, Ohata N, Igarashi
S, Mori K, Endo S, Yokoi K: Proposal of new nodal
classifications for non-small-cell lung cancer based on
the number and ratio of metastatic lymph nodes. Eur J
Cardiothorac Surg. 2012 41(1):19-24.
7.松隈 治久、森 清志:【肺癌 実地医家に不可欠の最新の臨床
知識とその活用】 セミナー/実地診療に必要な最新の診断・
治療・管理の実際 管理法の進歩とその実際 CT検診などで
発見されるスリガラス結節(GGO結節)をいかにフォローする
か.Medical Practice 29(6): 969-971, 2012.
8.Matsuguma H, Mori K, Nakahara R, Suzuki H, Kasai
T, Kamiyama Y, Igarashi S, Kodama T, Yokoi K:
Characteristics of subsolid pulmonary nodules showing
growth during follow-up with CT scanning. Chest. 2013,
143(2):436-443.
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