天体物理学実習 I 東北大学理学部 宇宙地球物理学科天文学コース 2 回生 A6SB2116 望月 悠紀 図 1 より、 1. tan p = r d (1) ここで、p が十分小さいとき、tan p ≈ p という近似1 が使えるから、(1) は、 p≈ r d r ... d = p (2) となる. また、実際に三角視差を利用して東北大学理学部 A 棟屋上から宮城教育大学ま での距離を求めてみた.使用する道具は分度器、関数電卓、長方形の厚紙、鉛筆 である.まず、厚紙の適当な場所に点を書き、その上に分度器の原点をおき固定 する.次に、屋上の適当な2箇所で次のような方法で宮城教育大学の方向の角度 の差をはかる. 建物が長方形に作られていることを利用し、壁にそって厚紙をおく.すると、壁 を基線として宮城教育大学の方向の角度が求まる. 実際に実行してみると、次のような結果が出た. A から見た宮教の角度 B から見た宮教の角度 角度の差 AB 間の距離 距離 ちなみに、地図上では 700m である.誤差は約 %で誤差の原因はやはり角度の 誤差によるものが大きい.なぜなら、1 °と計るべきところを 2 °と計ってしまう と距離は 2 倍に観測されてしまうからである.したがって、誤差を減らすには角 度をいかに正確に測るかが重要となる. ∞ 1 正確には、Taylor 展開 tan p = 1 2 tan(n) (0)pn = p + p3 … とすべき. n! 3 n=0 1 平均値 図 1: 三角視差を用いた距離の測定 2. fig2 のように、r1 , r2 , d, θ(度)とおく.ただし、θ = 49 秒角, d = 104 (km) とする.また、地球、金星を E, V で表す.fig を見れば分かるように、地球と金星 との距離 r1 + r2 は、 r1 + r2 = d 2 tan θ 2 + d θ tan 2 2 (3) θ 49 49 π と表せる.ところで、(度) = 21 3600 (度)= 21 3600 (rad) であり、さらに、π ≈ 3.14 2 180 θ −4 とすると、 2 ≈ 1.19 × 10 である.ここで、 tan θ ≈ θ (|θ| ≪ 1) という近似を使うと、(4) 式は、 104 104 1 + × 1.19 × 10−4 −4 2 1.19 × 10 2 1 1.19 ≈ × 108 + 2.38 2 7 ≈ 4.20 × 10 + 0.595 r1 + r2 ≈ ≈ 4.20 × 107 [km] 2 (4) (実際は、4.1 × 107 km) また、fig3 のように、地球、金星の公転半径をそれぞれ RE , RV 、金星の実際の直 径を rv とする. fig3 を見れば分かるように、次の式が成り立つ. RE = r 1 + l RV = l (RE + l) tan ϕ21 r1 tan ϕ22 ϕ2 = r1 tan 2 rv = ϕ ... (RE + l) tan 1 2 ところで、 ϕ1 10 1 π = ≈ 2.42 × 10−5 (rad) 2 2 3600 180 ϕ2 64 1 π = ≈ 1.55 × 10−4 (rad) 2 2 3600 180 であることと、(4) 式の近似を用いると、 (r1 + 2l) × 2.42 × 10−5 = r1 × 1.55 × 10−4 ところで、r1 = 4.20 × 107 を代入すると、 l ≈ 1.135 × 107 ... RV ≈ 1.14 × 108 (km) RE = r1 + l ≈ 4.2 × 107 + 11.35 × 107 ≈ 1.56 × 108 (km) (5) (実際は、RV = 1.08 × 108 km, RE = 1.50 × 108 km) 3 fig1,2,3 4 3. 近距離の星が背景の星に対してどのような位置変化が楕円になることを示す. fig4 は天球と恒星の位置を表したものである.天球の中心は太陽で、その周りを地 球が楕円軌道で周回している.地球から近距離の恒星を見ると、一般に、歪んだ 円になっていることが分かる.また、公転面上の方向にある恒星は往復直線運動、 公転面に垂直な方向では円となることが分かる. ところで、先ほどの歪んだ円が楕円であることを証明する. 恒星の年周視差 p、黄緯を B とする.地球の円軌道を極座標で、 x = r cos θ y = r sin θ とかくと、図の軌道 C2 も、 x = r2 cos θ y = r2 sin θ と表せる.ところが、実際に見える軌道 C1 は、C2 の軌道を x 軸方向に sin B 倍し たものだから、その軌道の極座標は、 x = r2 sin B cos θ y = r2 sin θ よってこの 2 式より、 x2 y2 + =1 r22 sin2 B r22 (6) とかけ、恒星の軌道は一般に楕円となる.もちろん、B = 0 のときは直線軌道、 π B = のときは円軌道となる. 2 5 4. fig5 において、地球の公転半径、太陽からのある点の距離、および太陽とある点 と地球の角度をそれぞれ、r, d, θ とおく.すると、ここでは、r = 149598×108 [km] とすると、 r km tan θ r = π tan 180×3600 d = ≈ 1.49598 × 108 180 × 3600 π ≈ 30857 × 108 ≈ 3.09 × 1018 [cm] となり、1pc は、3.09 × 1018 cm であることが分かる. また、年周視差 p 秒角の星までの距離 d は、 d = ≈ = ところで、r × r tan p r pπ 180×3600 1 180 × 3600 ×r× p π 180 × 3600 = 1 [pc] だから、 π d= 1 [pc] p となる.また、表 1 にある星それぞれまでの距離は p8∼12 に掲載した. 6 (7) 軌道の図 7 5. m1 等級と m2 等級の星の明るさ I1 、I2 の間には、次の関係式が成り立つ. 5 I1 m1 − m2 = − log10 2 I2 (8) また、光度 L と単位面積を通過する光の強度 I とすると、 2π L = π dϕ 0 dθId2 sin θ 0 = 4πd2 I (9) m1 等級の星の距離、m2 等級の星の距離をそれぞれ、d1 , d2 とおくと、(8) 式は、 m1 − m2 = L 4πd21 −2.5 log10 L 4πd22 = −2.5 log10 ( = −5 log10 d2 2 ) d1 d2 d1 (10) となる.さらに、m1 = m, m2 = M, d1 = d, d2 = 10 とおけば、(10) 式は、 10 d = 5 log10 d − 1 m − M = −5 log10 となる.また、表 1 にあるそれぞれの絶対等級は p8∼12 に掲載した. 8 (11) 1 9 1 10 1 11 1 12 6. HR 図(ヘルツシュプルング・ラッセル図) 13 7. fig6 のように視線速度 v, 天体の実際の大きさ l, 距離 d, 見かけの大きさ θ と おくと、 l = d tan θ ≈ d・θ (12) 両辺を t で微分すると、 ˙ + dθ˙ = 0 dθ d˙ d=− θ θ˙ ここで、d˙ = v より、 v d=− θ θ˙ (13) また、観測方法は次のとおり. • 光のドップラー効果2 (赤方偏移、red sift)で星団の視線速度 v が求まる. • 望遠鏡による観測で、星団の見かけの大きさ θ, θ˙ が求まる. 星団までの距離測定の誤差を小さくするための注意点は次のとおり. • θ, θ˙ の値が、微小であるが、近似式 tan θ ≈ θ がどの程度成り立つか注意をはらう必要がある. • θ, θ˙ は、地球の大気を通過して観測されるため、大気通過による光の屈折が どの程度影響するのか考慮する必要がある. 2 赤方偏移 z = v である. c−v 14 7-1 fig7 のように、星の視線速度 vR [km/s]、接線速度 vT 、固有運動 µ[秒角/年] および星団までの距離 d[pc] とすると、 1 π 1 tan θ = d tan µ [pc] 13 3.09 × 10 180 3600 31536 π v tan θ ≈ dµ R 3.09 × 1010 648000 vR tan θ d ≈ 0.211 × [pc] µ vR × 365 × 24 × 3600 × (14) また、stars adopted as Hyades members の表より、視線速度、固有運動、収束点 と現在の星のある位置との間の角のそれぞれの平均値 < vR >, < µ >, < θ > は、 < vR >= 37.8944, < µ >= 0.112738, < θ >= 32.8196 で、これを (14) 式に代入 すると、 d = 0.211 × 37.8944 × tan 32.8916 ≈ 45.9 [pc] 0.112738 (実際は、45.7pc) 15 fig6,7 16 8. 表 3-1、表 3-2 より模式的な HR 図を作ると次ページのようになった.また、 この HR 図と球状星団 M5 の HR 図の主系列星の部分が重なるためには、 m − M = 14.5 にすればよい.これと問題 5 で得た関係式 m − M = 5(log d − 1) より、球状星団 M5 までの距離 d を求めると、 14.5 = 5(log d − 1) ∴ d = 103.9 ≈ 7900 pc (実際は、8300pc だと言われている.) また、RR Lyr 型変光星の絶対等級 M は、 m − M = 14.5 ∴ M = m − 14.5 = 14.8 − 14.5 = 0.3(等) となる. (実際は、約 0.6 等) さらに、V バンドの見かけ等級が 14.6 等である RR Lyr 型変光星までの距離 d′ は、 m − M = 5(log d′ − 1) 14.6 − 0.3 = 5(log d′ − 1) ∴ d′ = 103.86 ≈ 7200 pc となる. 17 模式的な HR 図 18 9. M81 にあるセファイド型変光星の1周期での変更曲線と変光周期の対数と平 均等級の関係のプロットの結果は次ページに示す. 変光周期 p の対数 log p と平均等級 m の関係は、 log p = −0.20165mV + 25.699, log p = −2.3291mI + 25.191 となった. また、作成した M81 のグラフと LMC、SMC のグラフより、両者の見かけの等 級差は 8.7 等と読める.よって、M81 までの距離を d、LMC までの距離を d′ とお くと、(10) 式より、 m1 − m2 = −5(log10 d − d′ ) (15) ところで、LMC までの距離 d′ は、(11) 式より、 m − M = 5 log10 d − 1 18.5 = 5 log10 d − 1 ∴ d = 104.7 (≈ 5.0 × 104 [pc]) となるから、(15) 式に代入して、 8.7 = −5(4.7 − log d′ ) ∴ d′ = 106.44 ≈ 2.8 × 106 [pc] (16) となる. (実際は、3.7 × 106 pc) 誤差がやや大きく、24 %である.この原因としては、データのプロットの散らば り具合が大きく、正確な近似直線が得られず、現実の直線と一致しなかったため と考えられる. 19 セファイド型変光星のプロット 20 セファイド型変光星のプロット 2 21 10. 地球からの距離が 14Mpc の銀河内での Ia 型超新星の最も明るいときのみか けの等級が B = 11.23 だったとすると、(11) 式より、 m − M = 5(log10 d − 1) M = m − 5(log10 (d) − 1) = 11.23 − 5 log10 (14 × 106 ) = −13.77 − 5 log10 14 ∴ M ≈ −19.50 次に、その他の Ia 型超新星までの距離を B バンドの光度変化から算出する.Ia 型 超新星は、極大光度がどれもほぼ同じになることが知られているので、絶対等級 m+24.5 M = −19.50 としてよい.さらに、m − M = 5(log10 d − 1) ∴ d = 10 5 を 用い、各銀河までの距離を算出していく. 1. 99fn(0.48) 図から、mmax = 23.7 だから、d99fn ≈ 4.37 × 103 Mpc 2. 99ff(0.46) 図から、mmax = 24.2 だから、d99ff ≈ 5.50 × 103 Mpc 3. 99fj(0.82) 図から、mmax = 25.2 だから、d99fj ≈ 8.71 × 103 Mpc 4. 99fm(0.95) 図から、mmax = 25.3 だから、d99fm ≈ 9.12 × 103 Mpc 5. 99fk(1.06) 図から、mmax = 25.6 だから、d99fk ≈ 1.05 × 104 Mpc 6. 99fw(0.28) 図から、mmax = 22.8 だから、d99fw ≈ 2.88 × 103 Mpc 7. 99fv(1.2) 図から、mmax = 25.2 だから、d99fv ≈ 8.71 × 103 Mpc 8. 99fh(0.37) 図から、mmax = 23.1 だから、d99fh ≈ 3.31 × 103 Mpc 22 11. 問題8で、m − M = 15.0 で、HR 図と図2の主系列星のグラフが一致する とする.さらに、図2中の RR Lyr 型の V バンドの絶対等級 Mv は、表2より、 m = 14.9 とすると、 Mv = m − 15 = 14.9 − 15 = −0.1(等) (実際は、0.3 等) さて、V = 14.6 の RR Lyr 型変光星が含まれる球状星団までの距離を R(pc) とお くと、減光の影響も考慮に入れて、 m′ − M = 5(log10 R − 1) + 0.7R × 10−3 {14.6 − (−0.1)} × 103 = 5000(log10 R − 1) + 0.7R ⇔ 5000 log10 R + 0.7R − 19700 = 0 (17) この R に関する方程式を、厳密に解くことは困難なので、ニュートン法3 を用いて 近似解を求めることにする. まず、f (r) = 5000 log10 r + 0.7r − 19700 とおき、さらに f (r) = 0 の解 R に近い値 を r0 とおく.さらに、数列 rk を次の漸化式で定義する. rk+1 = rk − f (rk ) f ′ (rk ) (f ′ (r) = 5000 + 0.7 (̸= 0)) r loge 10 (18) ここで、f (3100) = 5000 log10 3100+0.7×3100−19700 ≈ −73.2 だから、r0 = 3100 とする.このとき、f ′ (3100) ≈ 1.40 である.したがって、k = 1 とした (18) 式に 代入して、 f (r1 ) f ′ (r1 ) −73.2 = 3100 − 1.40 ≈ 3152 r2 = r1 − (19) 同様に、r2 を求める.f (r1 ) = f (3152) ≈ −0.67, f ′ (r1 ) = f ′ (3152) ≈ 1.39 である から、 f (r1 ) f ′ (r1 ) ≈ 3152.48 r2 = r1 − (20) よって、f (r) = 0 を満たす r は、有効数字3桁の精度では、3.15 × 103 という値に 収束することが分かる.したがって、 R ≈ 3.15 × 103 (pc) 3 p22 を参照 23 ところで、減光の影響はないと仮定した場合、V = 14.6 の RR Lyr 型変光星が 含まれる球状星団までの距離を l(pc) とおくと、 m′ − M = 5(log10 l − 1) {14.6 − (−0.1)} = 5(log10 l − 1) log10 l = 3.94 l = 103.94 ≈ 8.71 × 103 (pc) (21) となるから、R < l となり、減光の影響を考えずに求めた距離の方が長くなってい ることが分かる. 最後に、方程式の近似解を求めるのに有効なニュートン法を紹介する.一般に、 f (x) を連続微分可能関数とし、y = f (x) と y = 0 の交点を近似的に求めることを 考える.なお、ここでは、f (x) = 0 を満たす x を X と表記する. 点 x = xn における、y = f (x) の接線の方程式は、 y − f (xn ) = f ′ (xn )(x − xn ) である.したがって、この接線と y = 0 の交点は、 xn − f (xn ) f ′ (xn ) となる.これを、n → k と置き換えて、xk+1 とおくと、数列 xk は次の漸化式で定 義される. xk+1 = xk − f (xk ) f ′ (xk ) この漸化式で x0 ≈ X なる初期値 x0 を設定し、数列 xk を順次求めていけば、f ′ (x) = 0 でない限り、xk は f (x) = 0 の解 X に収束していくと考えられる. 1 例: 2 3 すなわち、x3 − 2 = 0 の解をニュートン法を用いて計算する. f (x) = x3 − 2 とおくと、f ′ (x) = 3x2 である.ところで、f (1.4) = 1.43 − 2 = 0.744 1 だから、この値は、f (x) = 0 の解 X = 2 3 に近いと考えられる.したがって、こ の値を x0 とおき、数列 xk を (3) 式 xk+1 = xk − f (xk ) f ′ (xk ) のように定義すれば、 f (x0 ) f ′ (x0 ) 0.744 = 1.4 − = 1.273469388 3 × 1.42 x1 = x0 − 24 同様に、x2 を求める. x 2 = x1 − f (x1 ) f ′ (x1 ) = 1.273469388 − 1.2734693883 − 2 = 1.260064678 3 × 1.2734693882 同様に、x3 を求める. x 3 = x2 − f (x2 ) f ′ (x2 ) = 1.260064678 − 1.2600646783 − 2 = 1.259921066 3 × 1.2600646782 同様に、x4 を求める. x4 = x 3 − f (x3 ) f ′ (x3 ) = 1.259921066 − 1.2599210663 − 2 = 1.25992105 3 × 1.2599210662 1 よって、x3 − 2 = 0 つまり、2 3 の値は、1.25992105 と推定できる.ちなみに、関 1 数電卓による 2 3 の値は 1.25992105 であり、有効数字9桁の精度で一致している. 25 12. 太陽 (絶対等級 4.85 等) と地球が銀河系内の典型的な恒星間距離 1.7pc 離れ ているとすれば、太陽は、(11) 式より、 m − 4.85 = 5(log 1.7 − 1) ∴ m ≈ 1.00 等 に見えると推定できる. 次に、アンドロメダ銀河 M31(距離 d[pc]) について考える.まず、M31 のみかけ の等級 m′ を調べる.M31 には太陽と同じ絶対等級の星が恒星間距離 1.7pc を保っ て存在しているとする.また、M31 の直径、厚みをそれぞれ D[pc], 0.003D[pc] と する. 見かけの等級 m′ を調べるために M31 はどのくらいの光を出しているか求めた いので、太陽のような星が M31 に N 個存在しているとする.ここで仮定したいの が、この太陽のような星が面心立方格子で規則的に存在していることである.こ の理由としては、M31 のような比較的大きな銀河では星が十分密であると考えら れるということと、どの恒星も安定した重力ポテンシャルの中に存在し続けるた めには最密構造をとる方が安定しやすいためだと考えられるからである. さて、面心立方格子の単位格子内に恒星は 4 個存在し、単位格子の体積 V は、 V = (1.7 × √ 2)3 ≈ 13.8 [pc3 ] (22) であるから、体積 1[pc3 ] 内に約 0.29 個の恒星が存在していることになる.以上より 0.003πD3 M31 に存在する恒星の数 N は、M31 の体積が であることに注意して、 4 N = 0.29 × 0.003πD3 ≈ 6.83D3 × 10−4 個 4 (23) となる.したがって、M31 全体では太陽の 6.83D3 × 10−4 倍の光を出していること になる.また、太陽が距離 d[pc] にあるときの見かけの等級を m′⊙ とすると、(11) 式より、 m′⊙ − 4.85 = 5(log d − 1) ∴ m′⊙ = 5 log d − 0.15 (24) と表せる.また (10) 式より、 6.83D3 × 10−4 5 m′ − m⊙ = − log 2 1 ′ ∴ m = 5 log d − 2.5 log(6.83D3 × 10−4 ) − 0.15 (25) となり、M31 の見かけの等級 m′ を M31 までの距離 d、厚み D で表せることがで きた.さらに、M31 は視直径 3 度の 5 等級として観測されるから、(25) 式は、 5 log d − 2.5 log(6.83D3 × 10−4 ) − 0.15 = 5 26 (26) となり、また、d と D の関係は、 1D 3 π = tan × 2d 2 180 (27) となる.この 2 式より、 D ≈ 4.7 [kpc], d ≈ 89 [kpc] (28) となる. (実際は D = 39.9[kpc], d = 766[kpc]) 計算結果と実際の観測結果と桁外れの誤差が出てしまったが、この原因は最初の 仮定が場所によって成り立っていなかった、もしくは恒星の絶対等級が太陽のそ れと違うものだった、などが挙げられる. 27 13. 見かけの等級 (apparent magnitude) と、赤方偏移 z の対数 log z のグラフは 次ページのようになった.また、両者の間には、 log z = 0.198m − 4.08 (29) なる関係があることが分かる.また、 『銀河団中の最も明るい銀河の絶対等級が等 しい』と仮定した場合、(11) 式より、 M − m = −5(log d − 1) ∴ d = 10(m−M +5)/5 また、log z と m の関係 (29) 式を変形すると、m = (30) 式に代入すると、 1 d = 10 5 ( log z+4.08 +5−M 0.198 (30) log z + 4.08 となり、これを 0.198 ) となり、d と z の関係が見出せる.さらに、M = −22.5, v = cz (v : 銀河の後退 速度、c : 光速)4 とすると、 d = 10 log v c +4.08 + 22.5 +1 0.99 5 v ≈ 10log c +9.58 log ≈ 10 log d = log log 3 × 105 × d v v +9.58 3.0×105 (∵ c ≈ 3.0 × 105 [km/s]) v + 9.58 3 × 105 = 9.58 d 109.58 = ≈ 12673 V 3 × 105 ∴ d[pc] = 12673[km/s・pc] × v ∴ ∴ V [km] ≈ 79[km/s・Mpc] × d′ [Mpc] (31) これは、ハッブルの法則と言われ、天体が我々から遠ざかる速さとその距離が正比例 することを示している.この事実により、宇宙が膨張していると考えられる.なお、 比例定数(ハッブル定数)は、人工衛星 WMAP の観測によると、71 ± 4km/s/Mpc である.なお、次ページの2つ目のグラフは、(31) 式をグラフにしたものである. 4 この関係は、赤方偏移 z が小さいときに成り立つ. 28 13 のグラフ 29 14. 次ページに、比較的距離の近い銀河と遠方の銀河の、距離と後退速度の関係 をプロットしたものを付す.これを見ると、十分遠方銀河では後退速度が光速を 超えているので相対性理論と矛盾する.考えられる原因は、後退速度 v と赤方偏 移 z の間の関係 v = cz が遠方では成り立たないのではないかということだ.相対 性理論によれば、赤方偏移 z は、 z= v c−v (32) と表される.ちなみに、v ≪ c のとき、ニュートン力学のドップラー効果 v = cz と一致する.相対性理論の効果を考えてプロットし直したグラフがその次のペー ジにある.これを見ると、十分遠方の銀河でも後退速度は光速に到達しておらず、 相対性理論と矛盾しない.よって、後退速度を求めるときには、相対性理論を考 慮しなくてはならないことが分かる. 30 14 のグラフ (1) 31 14 のグラフ (2) 32 15. fig において、中心からの距離が d1 より近い天体の個数を Nm 個、d2 より近 い天体の個数を Nm−1 とすると、(10) 式より、 m − (m − 1) = −5 log10 1 d2 d1 ⇔ = 10 5 d1 d2 (33) よって、Nm と Nm−1 の比は、 Nm = Nm−1 3 d1 d2 3 = 10 5 (34) また、r∼dr にある星の個数 N は、 π N = n・dr 2π dθ 0 = dϕr2 sin θ 0 4 πnr2 dr 3 (35) である. 次に、すべての星が太陽と同じ光度 L⊙ を持つとし、単位面積を通過する光の強 度 I とすれば、 L⊙ = 4πr2 I L⊙ ... I = 4πr2 となるから、地球からの距離が r∼r + dr にある星からの総光量 Iall は、 π Iall = n・dr 2π dθ 0 dϕ 0 = nL⊙ dr (36) r2 sin θ L⊙ 4πr2 (37) となる.さらに、宇宙全体から地球に届く星の全光量 J を次の2つの場合に分け て求める. (i) 手前の星が奥の星に重なって隠すことがないと仮定するとき J1 = ∞ 0 nL⊙ dr = ∞ (38) (ii) 手前の星が奥の星を隠すと仮定するとき この場合、fig のように、結局はある半径 r に同じ光度 I の星が埋め尽くしたもの だと考えればよい. J2 = I・4πr2 L⊙ 4πr2 = 4πr2 = L⊙ (39) しかし、以上 (i),(ii) は実際の現象と矛盾する.なぜなら、太陽がでている昼と同 じような明るさに、夜はならないからである.したがって、最初の仮定『宇宙全 体一様にある天体が分布しているとする』が間違っていたことになる. 33 15 の fig 34 16. fig12 のような楕円を考える.ただし、焦点 F(c, 0), F’(−c, 0)、2定点から の距離の和を 2a とする. 楕円上の点 P(x, y) とおく.楕円の定義より、 2a = |F′ P| + |FP| = (x + c)2 + y 2 + (x − c)2 + y 2 (40) 両辺2乗して、 4a2 = (x + c)2 + (x − c)2 + 2y 2 + 2 {(x + c)2 + y 2 }{(x − c)2 + y 2 } −(x2 + y 2 + c2 − 2a2 ) = {(x + c)2 + y 2 }{(x − c)2 + y 2 } さらに両辺2乗して、 {(x2 + y 2 ) + (c2 − 2a2 )}2 = {(x + c)2 + y 2 }{(x − c)2 + y 2 } (41) (左辺) = (x2 + y 2 )2 + 2(x2 + y 2 )(c2 − 2a2 ) + (c2 − 2a2 )2 = x4 + 2(y 2 − 2a2 + c2 )x2 + y 4 + 2(−2a2 + c2 )y 2 + c4 − 4a2 c2 + 4a4 (右辺) = (x + c)2 (x − c)2 + {(x + c)2 + (x − c)2 }y 2 + y 4 = x4 + (y 2 − 2c2 )x2 + y 4 + 2c2 y 2 + c4 よって、楕円の表現式は、 (a2 − c2 )x2 + a2 y 2 = a2 (a2 − c2 ) x2 y2 ⇔ 2+ 2 = 1 a a − c2 (42) となる.また、(42) 式で y = 0 とすると x = ±a となるから、楕円の長半径は a で あることが分かる. さらに、(42) 式を極座標表示 (r, θ) で表すことを考える.ただし、この極座標は 点Fを原点とする.ここで、c = ae なる離心率 e を導入すると、x = c+r cos θ, y = r sin θ だから、(42) 式は、 r2 sin2 θ (ae + r cos θ)2 + = 1 a2 a2 (1 − e2 ) (r2 cos2 θ + 2aer cos θ + a2 e2 )(1 − e2 ) + r2 sin2 θ = a2 (1 − e2 ) r2 − e2 r2 cos2 θ + (2aer cos θ + a2 e2 )(1 − e2 ) = a2 (1 − e2 ) (1 − e2 cos2 θ)r2 + 2ae cos θ(1 − e2 )r = a2 (1 − e2 ) ae(1 − e2 ) cos θ 2 a2 e2 (1 − e2 ) cos θ (1 − e2 cos2 θ)(r + ) − = a2 (1 − e2 ) 1 − e2 cos2 θ 1 − e2 cos2 θ ae(1 − e2 ) cos θ 2 a2 (1 − e2 )2 (1 − e2 cos2 θ)(r + ) = 1 − e2 cos2 θ 1 − e2 cos2 θ 35 ae(1 − e2 ) cos θ 2 a2 (1 − e2 )2 ) = 1 − e2 cos2 θ (1 − e2 cos2 θ)2 ae(1 − e2 ) cos θ a(1 − e2 ) r+ = ± 2 2 1 − e2 cos2 θ 1 − e cos θ (r + ... r = a(1−e2 ) 1+e cos θ a(1−e2 ) − 1−e cos θ (43) ところで、r ≧ 0 だから、 r= a(1 − e2 ) 1 + e cos θ が、(42) 式の極座標表示ということになる. 36 (44) 15, 16 の fig 37 17. 楕円の中心を原点とすると長半径が a で、原点から太陽までの距離は ae だ から近日点距離 q 、遠日点距離 Q は、fig13 より、 q = a − ae = a(1 − e), Q = a + ae = a(1 + e) (45) また、面積速度一定の法則(ケプラーの第 2 法則)より、 1 2 dθ r =A 2 dt (A = Const) (46) だから、 ⃗ = ⃗r × p⃗ L = ⃗r × (v⃗r + v⃗θ ) = ⃗r × mv⃗θ (∵ v⃗r = ⃗0) = mrvθ e⃗z dθ = mr2 e⃗z dt ⃗ ⃗ : 定ベクトル) = B (B ⃗ が保存されていることが示された.また、L ⃗ = ⃗r × p⃗ であるか よって、角運動量 L ⃗ ⊥⃗r, L ⃗ ⊥p⃗ である.よって惑星は角運動量ベクトル L ⃗ に垂直な平面内を運動 ら、L しているといえる. また、角運動量保存則より、 ⃗ dL = ⃗0 dt d⃗r d⃗p × p⃗ + ⃗r = 0 dt dt ⃗ = ⃗0 ∴ ⃗r × F (∵ d⃗r //⃗p) dt (47) ⃗ と位置ベクトル ⃗r は平行であり、力は太陽の方向にしか働かないの よって、力 F でこの力は中心力であるといえる. a3 最後にケプラーの第 3 法則 2 = k (k : 定数、P : 周期) がどの程度正しいのか P 検証する. データによると、k の値は次の表のようになった. Mercury 0.9995 Venus Earth Mars Jupiter 0.9998 1.0000 0.9999 1.0008 Saturn Uranus Neptune 1.0052 1.0055 1.0055 Pluto 1.0068 よって、小数第 2 位まで正しいといえる.k が定数からずれる理由は問題 21 の解 答で述べることにする. 38 18. 質点 P1 、P2 の運動方程式は、 m1 d2 r⃗1 m1 m2 r⃗1 − r⃗2 = −G 2 , 2 dt r r m2 d2 r⃗2 m1 m2 r⃗2 − r⃗1 = −G 2 2 dt r r (48) である.一方、両者の重心ベクトル r⃗c は、 r⃗c = m1 r⃗1 + m2 r⃗2 m1 + m2 (49) と表される.さらに、重心がどのような運動をするのか考える.(48) 式より、 d2 r⃗2 ⃗ d2 r⃗1 m1 2 + m2 2 = 0 dt dt 2 2 m1 ddtr⃗21 + m2 ddtr⃗22 d2 r⃗c ⃗ ∴ = 2 =0 m1 + m2 dt (50) したがって、重心は等速度運動をする. さて、⃗r = r⃗2 − r⃗1 , M = m1 + m2 とすると、相対ベクトル ⃗r についての運動方 程式は、(48) 式より、 d2 r⃗1 Gm2 = 3 ⃗r, 2 dt r d2 r⃗2 Gm1 = − 3 ⃗r 2 dt r (51) 辺々引き算して、 d2 r⃗2 d2 r⃗1 m1 + m2 ⃗r − 2 = −G 2 dt dt r2 r 2 d ⃗r M ⃗r = −G 2 dt2 r r (52) よって、P1 から P2 をみた相対運動は、質量 M (= m1 + m2 ) の天体の重力による ケプラー運動と同じ運動になる. 39 17,18 の fig 40 19. まず、天体に働く力が中心力であることと、角運動量が保存されることを示 す. 問題 18 の (52) 式の両辺に対し、⃗r の外積をとると、 ⃗r × d2⃗r M ⃗r = −G 2 × ⃗r = 0 2 dt r r ∴ よって、天体に働く力は中心力である.また、⃗r × d2⃗r //⃗r dt2 d⃗ r dt (53) = ⃗h とすると、 d d⃗r d⃗r ⃗r d⃗r ⃗r (⃗r × ) = × + × =0 dt dt dt dt dt dt ∴ ⃗h = 定ベクトル (54) よって、角運動量は保存することが示された. 次に、エネルギー保存則を導く.問題 18 の (52) 式の両辺に対し、速度ベクトル d⃗ r の内積をとると、 dt d⃗r d2⃗r M d⃗r ・ 2 = −G 3 ⃗r・ dt dt r dt (55) また、中心力(保存力)が働いているので、ポテンシャル U (⃗r) を考えることがで きて、 U (⃗r) = − r ∞ d2⃗l ⃗ ・dl = dt2 r ∞ GM GM ⃗ ⃗ l・dl = − 3 l l r ∞ =− GM r (56) ただし、ポテンシャルの基準を無限遠にとった.さらに、U (⃗r) を時間 t で微分す ると、 dU dt d 1 dt |⃗r| dr d 1 −GM dt dr r 1 d ⃗r・⃗r GM 2 r dt r + d⃗r・⃗r GM 1 ⃗r・d⃗ dt√ dt r2 2 ⃗r・⃗r GM d⃗r ⃗r・ r3 dt = −GM = = = = (57) (58) となり、単位質量のエネルギー E は、 E= 1 d⃗r 2 dt 2 + U (⃗r) 41 (59) とかけるから、エネルギー E を時間 t で微分したものは、 dE d2⃗r d⃗r dU = ・ + dt dt2 dt dt GM d⃗r GM d⃗r = − 3 ⃗r・ + 3 ⃗r・ = 0 r dt r dt (60) したがって、天体のエネルギーは保存することが示された. 最後に、極座標 (r, θ) を用いて角運動量保存則とエネルギー保存則を表すこと を考える. ⃗r = (r cos θ, r sin θ, 0) (61) d⃗r = (r˙ cos θ − rθ˙ sin θ, r˙ sin θ − rθ˙ cos θ, 0) dt (62) とおくと、 とかけるから、角運動量 ⃗h は、 ˙ ⃗h = ⃗r × d⃗r = (0, 0, r2 θ) dt (63) よって、角運動量保存則は、 h = r2 θ˙ = Const (64) と表せる.また、単位質量あたりのエネルギー保存則は、 2 1 d⃗r GM E = − 2 dt r 1 2 GM = (r˙ + r2 θ˙2 ) − 2 r 1 2 h2 GM = r˙ + 2 − = Const 2 r r (65) と表すことができる.ちなみに、第 2 項、第 3 項はそれぞれ、遠心力によるポテン シャル、中心力によるポテンシャルを表し、両者の和は有効ポテンシャルと呼ば れる. 42 20. r, θ の関係式がどのようになるか考える. まず角運動量ベクトル ⃗h の大きさ |⃗h| は、 dθ |⃗h| = r2 dt ... dθ h = 2 dt r (66) ところで、 dr dθ dr h dr = = 2 dt dt dθ r dθ であるが、ここで、y = (67) 1 と変数変換すると、 r dy = − 1 dr r2 (68) となり、これと (66) 式より、 dy = − 1 dθ dr h dt ... dr dy = −h dt dθ (69) さらに、問題 19 より、エネルギー E は、 E= 1 2 dr dt で表せ、エネルギー保存則より、 dE = dt dr dt 2 + 1 h2 GM − 2 r2 r (70) dE = 0 だから、 dt d2 r 1 2 −2r dr GM dr + h 4 + 2 =0 dt2 2 r dt r dt d2 r h2 GM ... − 3 + 2 =0 dt2 r r (71) となる.ところで、 d2 r d dr d dy = = −h 2 dt dt dt dt dθ dy dθ d −h = dt dθ dθ 2 h d d2 y = 2 (−h) 2 = −h2 y 2 2 r dθ dθ (72) であるから、(71) 式は次の y の微分方程式で表される. 2 2d −h y 2 y − y 3 h2 + y 2 GM = 0 2 dθ d2 y GM +y− 2 =0 2 dθ h 43 (73) この微分方程式を y について解くと、A, θ0 を積分定数として、 y = A cos(θ + θ0 ) + ここで、θ0 = 0 とし、さらに y = GM h2 (74) 1 を用いると、 r r= 1+ h2 GM h2 A cos θ GM (75) となり、r を θ の関係式が導けた. また、問題 16 で r は、 a(1 − e2 ) 1 + e cos θ r= と表せたので、これを (75) 式と比較すると、 h2 a(1 − e ) = GM h2 A = e GM 2 (76) したがって、角運動量の大きさ h は、G, M, a, e を用いて、次のように表せる. GM a(1 − e2 ) h= (77) ところで、エネルギー E は、 1 E= 2 と表せたが、fig19 のようなとき dr dt + 1 h2 GM − 2 r2 r (78) dr = 0 だから、 dt E= ところで、rP = 2 1 h2 GM − 2 rP2 rP (79) 1 h2 a(1 − e2 ) = (∵ (44), (77) 式より) だから、 1+e 1 + e GM 1 2 G2 M 2 GM・GM h (1 + e2 ) − (1 + e) 4 2 h h2 G2 M 2 (1 + e)(e − 1) = 2h2 GM (1 + e)(1 − e) = − 2a(1 + e)(1 − e) GM = − 2a E = となり、エネルギー E を G, M, a で表せた. 44 (80) 21. fig20 のように、面積速度 S˙ は、 dS 1 dθ h = r2 = (h : 角運動量の大きさ) (81) dt 2 dt 2 とかける.また、面積速度 S˙ を周期 P にわたって積分した面積 S は楕円の面積 πab に等しいから、 P S= 0 P 0 dS dt = dt P 0 h = πab 2 1 GM a(1 − e2 )dt = πab 2 ∴ P = 2πab GM a(1 − e2 ) ここで、b2 = a2 − a2 e2 ∴ 1 − e2 = b2 /a2 だから、 3 2πa 2 P = √ GM ∴ G a3 = 2 = const 2 P M 4π (82) となる.これがケプラーの第 3 法則の補正で、質量 M は太陽の質量と惑星の質量 の和であることに注意する. これを受けて、太陽系の各惑星のケプラーの第 3 法則の補正を行う.つまり、太 陽の質量と惑星自身の質量の和も考慮するということである.ただし周期 P 、質 量 M 、長半径 a の単位はそれぞれ、year,M⊙ ,AU である.また、M ′ = 太陽、木星 、ある惑星の質量, M ′′ = 太陽、木星、土星、ある惑星の質量 である.その補正 後の表が次である. Mercury Venus Earth Mars Jupiter Saturn Uranus Neptune Pluto 質量 0.166 × 10−6 2.448 × 10−6 30.404 × 10−7 3.227 × 10−7 95.479 × 10−5 2.859 × 10−4 4.366 × 10−5 5.151 × 10−5 0.74 × 10−5 周期 0.2409 0.6152 1.0000 1.8809 11.862 29.458 84.022 164.774 247.796 長半径 0.3871 0.7233 1.0000 1.5237 5.2026 9.5549 19.2184 30.1104 39.5401 a3 /P 2 a3 /P 2 M 0.9995 0.9995 0.9998 0.9998 1.0000 1.0000 0.9999 0.9999 1.0008 0.9998 1.0052 1.0050 1.0055 1.0054 1.0055 1.0054 1.0068 1.0058 a3 /P 2 M ′ a3 /P 2 M ′′ 1.0040 1.0045 1.0045 1.0058 1.0042 1.0042 1.0055 表の右 2 つは木星補正、土星補正である.木星補正とは、土星以遠の惑星は太陽 だけでなく木星からの重力も受けているために太陽と木星の質量の和に相当する 質点の周りを運動していると仮定したときの補正である.土星補正は、さらに土 星以遠の惑星に土星の重力の影響を考慮した補正である. 補正を繰り返すと、確かに、値は定数 1 に近づいていくのが分かるが、完全に 定数になるわけではない.その理由は、やはり、太陽や木星など質量の大きい天 45 体からの重力だけでなく、小天体や衛星など他にもさまざまな重力の影響がある からだと考えられる. 46 20,21 の fig 47 22. 惑星軌道の長半径 a と惑星の周期 P 、太陽とある惑星の質量の合計 M の関 係は、(82) 式より、 a3 GM = 2 P 4π 2 4π 2 a3 ... M⊙ + M⊕ = GP 2 (83) ここで地球について考えると、地球の軌道長半径 a = 1.5×1013 [cm]、P = 365.2422× 24 × 3600[s]、G = 6.67 × 10−8 [dyn cm2 g−1 ] を代入する.また、M⊕ ≪ M⊙ と仮定 する( )と、 M⊙ + M⊕ = (4π 2 × 1.5 × 1013 )3 ≈ 2.00 × 1034 [g] 6.67 × 10−8 × 365.2422 × 24 × 3600 ... M⊙ ≈ 2.00 × 1030 [kg] (84) 実際は、M⊙ ≈ 1.99 × 1030 [kg] 次に地球の質量を求める.レーダーの観測結果から、地球と月の距離 r は、 2r = 3.00 × 1010 × 2.56 [cm] r = 3.84 × 1010 [cm] (85) さらに月は、地球の周りを等速円運動していると仮定すると、r = a = 3.84 × a3 GM 10 10 , P = 27.3 × 3600 [s] を = に代入することができる.また、Mmoon ≪ P 4π 2 M⊕ と仮定する ( ) と、 4π 2 a3 M = GP 2 (3.84 × 1010 )3 × 4 × π 2 M⊕ ≈ [g] (27.3 × 24 × 3600)2 × 6.67 × 10−8 ≈ 6.02 × 1024 [kg] (86) (実際は、5.97 × 1024 kg) また、この計算結果より、 の仮定 M⊕ ≪ M⊙ は妥当であるといえる. 最後に、月の質量 Mmoon を求める.fig において、地球と月の重心 xG は、火星 と地球の最接近距離が 5.6 × 1012 cm であることと、1/2 周期で 34 秒角ゆらぐとい うことを用いると、fig より、 1 π 34 × 5.6 × 1012 × tan 2 180 3600 8 = 4.62 × 10 cm (= 4.62 × 103 km xG = 48 (87) また、月と地球の距離 r = 3.84 × 1010 cm とすると、重心5 ) の周りの力のモーメ ントのつりあいより、 M⊕ × xG = Mmoon (r − xG ) 4.62 × 108 = M⊕ 3.84 × 1010 − 4.62 × 106 4.62 × 108 ≈ × 6.02 × 1024 3.84 × 1010 ≈ 7.24 × 1022 kg (88) (実際の月の質量は、7.35 × 1022 kg) また、この計算結果より、 5 の仮定 Mmoon ≪ M⊕ は妥当であるといえる. 地球の半径は約 6600km なので、月著地球の重心は地球内部にあることが分かる. 49 23. fig のように、太陽と木星の重心を原点にとる.太陽、木星を重心系から眺 める.太陽、木星の位置ベクトルをそれぞれ r⃗⊙ , r⃗j 、両者の角速度 ω とおくと、 r⃗⊙ = r⊙ (cos ωt, sin ωt) π π r⃗j = rȷ (cos(ωt + ), sin(ωt + ) = rj (sin ωt, − cos ωt) 2 2 (89) (90) 上の 2 式を時間 t で微分して、 dr⃗⊙ = r⊙ ω(− sin ωt, cos ωt) dt d⃗ rj = rj ω(cos ωt, sin ωt) dt (91) (92) さらに、重心の位置は原点にあるという条件から、r⊙ と rj の関係は、 M⊙ r⊙ + Mj rj M⊙ + Mj ∴ r⊙ = Mj rj ≪ rj M⊙ (93) となる.そして、周期 T として太陽の速さ v⊙ を求めると、 v⊙ = r ⊙ ω = Mj 2π rj M⊙ T (94) さらに、問題 21 で求めた周期 T 、長半径 a、質量 M = M⊙ + M惑星 (単位 : 1M⊙ ) の関係 T = 4π 2 a3 GM (95) を用いると、 v⊙ = ≈ G(M⊙ + Mj ) (r⊙ + rj )3 Mj rj M⊙ Mj M⊙ GM⊙ rj (96) ここで、Mj ≈ 9.5479×10−4 M⊙ , G = 6.67×10−8 dyn cm2 /s, rj = 5.026 [AU], 1AU = 1.49× 108 [km] として代入すると、 v⊙ ≈ 12.5 [m/s] (97) となる.さらに、木星が水星くらいの公転半径 (rv = 5.76779 × 107 [km]) にあった 場合、rv の値を代入すると、 ′ ≈ 458 [m/s] v⊙ 50 (98) となり、実際より 36 倍の速さで円運動することになる.つまり、これから言える ことは 2 つの天体の距離が近いほど、角速度が大きくなる、つまり、お互いが振 り回されやすくなるということである. また、HD179949 という星の 1 周期に対する視線速度の変化のグラフを次々ペー ジに載せた.この視線速度の変化は周囲を公転する惑星の運動によって生じてい ると考えられるが、HD179949 の質量を太陽質量の 1.24 倍とし、HD179949 と惑星 の距離を a、HD179949 と重心の距離を b、さらに惑星の質量より HD179949 の質 量の方が十分大きいものとすると、惑星の質量 M惑星 は (82) 式より、 M = 1.24M⊙ + M惑星 ≈ 1.24M⊙ 4π 2 a3 1.24M⊙ ≈ GT 2 4π 2 a3 6.67 × 10−8 × (3.093 × 3600 × 24)2 a ≈ 6.69 × 1011 [cm] = 6.69 × 109 [m] 1.24 × 2.0 × 1033 [g] ≈ (99) また、HD179949 の回転速度はグラフより 134 − 31 = 103 [m/s] とすると、b を求 めることができて、 2πb = 103 × 3.093 × 3600 × 24 ∴ b = 4.38 × 106 [m] (100) となる.また、 M惑星 (a − b) = 1.24M⊙ b 4.38 × 106 M惑星 ≈ 1.24M⊙ 6.69 × 109 ≈ 8.12 × 10−4・M⊙ ≈ 0.85Mj (101) よって、惑星の質量は木星の質量の約 0.85 倍.また、公転半径は、 a − b ≈ 6.69 × 109 [m] ≈ 0.045 [AU] (102) (実際は、質量は木星の 0.95 倍、公転半径は 0.045AU) さて、この方法から算出される惑星の質量は下限値でしかない.なぜなら、惑星 の公転面と視線方向が必ずしも平行とは限らないからである.仮に、公転軌道面 の垂線と視線方向のなす角度を i として、算出される質量 m と実際の質量 m′ は次 の関係にある. m = m′ sin i (0 < i < π ) 2 (103) なぜなら、この傾斜角 i によって、観測された恒星の回転速度が sin i となって現れ てくるため、(101) 式で、実際の質量よりも sin i 倍されて算出されてしまうのだ. 51 それでは、この傾斜角 i は求めることができないのか.この i が求められない と、惑星の質量には大きな不確定性がともなう.ところが、1999 年にアメリカの Charbonneau たちのグループが HD209458 という恒星について、我々から見て惑 星が恒星の前面を通過するときに恒星の一部が隠されるために、減光する現象を 観測することに成功した.このような減光時間の観測により、傾斜角 i を求めるこ とができ、惑星の質量を正確に求めることができる. 52 22,23fig 53 23 グラフ 54 24. fig19 のように設定する.太陽と、その近傍の星が銀河の重心を中心とする 円運動をしていると仮定すると、それらの角速度 ω0 , ω は、次のように書ける. Θ0 Θ ω0 = , ω= (104) R0 R 星の視線速度 vR は、 vR = Θ cos α − Θ0 sin l Rm = Rω − ω0 R0 sin l R = ωR0 sin l − ω0 R0 sin l = (ω − ω0 )R0 sin l (105) となる.星の接線速度 vT は、 vT = Θ sin α − Θ0 cos l = ωR 2 R 2 − Rm R − ω0 R0 cos l = ω R2 − R02 sin2 l − ω0 R0 cos l = ω R2 − R02 + R02 cos2 l − ω0 R0 cos l = ω d2 − 2R0 d cos l + R02 cos2 l − ω0 R0 cos l = ω (R0 cos l − d)2 − ω0 R0 cos l = (ω − ω0 )R0 cos l − ωd (106) となる. さらに、太陽近傍の星の視線速度 vR と接線速度 vT は、どのように表されるの かを考える.星が太陽近傍にあるので、(ω − ω0 ) は R = R0 の周りで Taylor 展開 できる.すなわち、 Θ Θ0 ω − ω0 = − R R0 ∞ 1 Θ (n) Θ0 = (R − R0 )n − R=R0 R0 n=0 n! R R−Θ 1 Θ0 1 dΘ Θ0 dR + (R − R0 ) + O(R − R0 )2 − R=R0 2 0! R0 1! R R0 dΘ Θ0 1 = − 2 (R − R0 ) + O(R − R0 )2 (107) dR R0 R0 R0 = となり、これの (R − R0 ) の2次以降の項を無視したものを vR の式に代入すると、 vR = = = dΘ dR dΘ dR R0 − R0 Θ0 1 − 2 (R − R0 )R0 sin l R0 R0 Θ0 (R − R0 ) sin l R0 55 (108) となることがわかる.ところで、fig19 より、d cos l = R0 − R cos ϕ だが、d ≪ R0 より、cos ϕ ≈ 1 だから、 d cos l ≈ R0 − R (109) となるが、この近似をさらに適用すると、 dΘ dR vR = = d× − R0 Θ0 1 (−d) sin 2l R0 2 1 Θ0 dΘ − 2 R0 dR sin 2l (110) R0 したがって、オールトの定数 A は、 A= dΘ 1 Θ0 − 2 R0 dR (111) R0 とかける. 一方、vT についても、(106) 式と、ω − ω0 を Taylor 展開した (107) 式と、ω を R = R0 の周りで Taylor 展開した式より、 dΘ (R − R0 )R0 cos l − d ω0 + dR vT = = dΘ dR dΘ dR R0 1 Θ0 − 2 R0 R0 R0 Θ0 dΘ − d cos l · cos l − ω0 d − R0 dR = Ad(1 + cos 2l) − ω0 d − dΘ dR − R R0 R0 1 Θ0 − 2 (R − R0 ) R0 R0 1 Θ0 − 2 d2 cos l R0 R0 1 Θ0 − 2 d2 R0 R0 0 dΘ 1 dΘ Θ0 = dA cos 2l + d × − − 2ω0 − 2d cos l dR 2 dR R R0 0 d dΘ Θ0 2d = dA cos 2l + − 1− cos 2l − 2ω0 2 dR R0 R0 R0 1 Θ0 − 2 R0 R0 R0 2d = dA cos 2l + d A 1 − cos 2l − ω0 R0 となるが、d ≪ R0 だから、 d → 0 なので、 R0 vT = d(A cos 2l + A − ω0 ) (112) よって、オールトの定数 B は、 B = A − ω0 = − 1 Θ0 dΘ + 2 R0 dR となる.また、オールトの定数の単位は km s 56 −1 kpc (113) R0 −1 で表されることが多い. 25. 固有運動の銀河面方向の成分を µl [秒角/年] とする.fig からも分かるように、 接線速度 vT [km/s] を距離 d[kpc] で除すれば観測される星の角度の変化量が求まる. あとは、dimension に注意して計算すればよい.1年を 365.2422 日、1kpc=3.086×1016 、 180 ◦ とすると、 1rad= π µl = = vT × (365.2422 × 24 × 60 × 60) × = (A cos 2l + B) × 2.1103 × 10−4 1 = (A cos 2l + B) 0.474 × 104 A cos 2l + B = 4740 1 1 180 × × × 60 × 60 16 3.086 × 10 d π (114) と書ける. また、観測量からオールトの定数を求める方法は、太陽近傍の星の固有運動を できるだけ多く観測して、横軸 l 縦軸 µl の座標平面にデータを書き込んでいけば よい.(114) 式より、そのグラフは正弦曲線を描くと予想される.また、誤差が発 生すると考えられるため、曲線の描き方は最小二乗法を用いるのがよい. ところで、問題 24 でオールトの定数 A, B を求めたときに仮定していることは、 太陽及びその近傍の星が銀河の重心に対して円運動を行っているということであ Θ る.もし、近くの天体の影響を受けて、円運動していないとすれば、ω = とは R 置けないからである. 最後に、太陽系が銀河の重心をどのぐらいの速さで回転しているか考える.(113) 式より、 A−B = Θ0 R0 (115) で、オールトの定数 A, B を、それぞれ、A = 15[km s−1 kpc−1 ], B = −12.5[km s−1 kpc−1 ] とおくと、 Θ0 = 8.5(15 + 12.5) = 233.75 km/s (116) となり、太陽系は 233.75km/s で銀河重心を回転していることになる. さらに、太陽系が誕生してからどのくらい銀河重心の周りを周回したかを見積 もる.まず、1周するのに要する時間 P [億年] は、 2π × 8.5 × 3.086 × 1016 233.75 × 60 × 60 × 24 × 365.2422 × 108 ≈ 2.23 [億年] P = 57 (117) である.また、太陽は誕生してから 50 億年経過しているとする6 と、太陽系がこれ まで銀河重心を周回した回数 n は、 n= 50 ≈ 22 回 2.23 (118) と見積もれる. 6 太陽の年齢を測る方法は、太陽の内部での核融合反応の進行具合を計算して割り出すというも のである.核融合反応の一つに、水素原子同士が結合してヘリウム原子を作る反応がある.このヘ リウムの生成割合、すなわち、核融合反応の進行の程度をスペクトル分析で求めることができ、太 陽年齢が算出できる. 58 26. 最も視線速度の絶対値が大きくなる水素塊について、その銀河中心からの距 離を Rm とすれば、太陽と銀河中心の間の距離 R0 、水素塊の銀経 l を用いると、 Rm = R0 sin l (119) と表すことができ、視線速度の最大値 vmax は vmax = Θ cos α(α = 0) − Θ0 sin l = Θ − Θ0 sin l (120) となる. これと H I DATA をもとに回転曲線をプロットしたのが次ページである.グラ フの特徴は、銀河中心からかなり離れた位置でも回転速度が低下しないことであ る.銀河の密度分布を考慮すると、中心から離れていくにしたがって回転速度は 減少していくはずである.なぜなら、銀河中心から半径 r で円運動している物体 は、次の運動方程式 v2 GM = 2 r r ... v = GM r √ となり、銀河中心に質量が集中しているとすると、v は r で減少していくことに なる.しかし、回転曲線はこれと矛盾するため、質量は銀河系の外まで分布してい なければならない.ところが、恒星や恒星ガスは、銀河中心から離れるほど減少 していることが知られているため、それら以外で、相当の重力を及ぼす物質が必 要だと考えられる.したがって、銀河には電波などで観測できないダークマター が存在するのではないかと考えられている. また、この回転曲線を求める方法の特徴を挙げた. 1. 天体までの距離について:天体までの距離の範囲 d は d = R0 cos l だから 0 ≦ d ≦ R0 である. 2. 回転曲線を作成できる半径について:(119) 式より、0 ≦ Rm ≦ R0 だから、太 陽より外側の天体に関してはこの方法では回転曲線を作成できない.問題 27 で挙げる別の方法を用いて回転曲線を求めることになる. 59 26 のグラフ 60 27. 表 10 の、さまざまな星形成領域について銀経、太陽からの距離、視線速度 から回転曲線のグラフを求めたのが次ページである.太陽より外側の天体に関し ては、問題 26 の方法では回転曲線が求まらない.しかし、次のような方法を用い ることによって太陽より外側の天体でも回転曲線が求められる. fig19 より、視線速度 vR は、 vR = Θ cos β − Θ0 cos(l − π ) 2 = Θ sin α + Θ0 sin l であるが、これを天体の回転速度 Θ について解くと、 vR − Θ0 sin l sin α Rm vR − Θ0 sin l = R0 sin l Θ = = R02 + d2 − 2R0 d cos l vR − Θ0 sin l R0 sin l となり、太陽と銀河中心間の距離 R0 = 8.5 [pc] と太陽の回転速度 Θ0 = 220 [km/s] を代入すると、 √ 72.25 + d2 − 17d cos l vR − 220 sin l (121) Θ= 8.5 sin l となるから、銀経 l にある天体の回転速度 Θ は銀経、太陽からの距離、視線速度 l, d, vR が分かれば求められる.これと表 10 から作成した回転曲線が次ページで ある. また、回転曲線の最も外側での回転速度を用いて銀河系の質量 M を求める.ま ず、運動方程式より、 Θ2 M =G 2 rmax rmax ∴ M= Θ2 rmax G ここに、グラフより rmax = 17 [kpc]、Θ = 230 [km/s] を代入して dimention に注 意して計算すると、 M ≈ 4.16 × 1041 kg となる.これは、太陽の約 1000 億倍もの質量である. 61 27 グラフ 62 28. 円盤銀河の構造を一様で十分薄いディスク構造であると仮定する.中心から 半径 r 以内に含まれる質量 M (r) が中心に質点として存在すると仮定した場合、半 径 r での回転速度 v(r) と M (r) の関係は、運動方程式より、 m v2 M (r)m =G r r2 ∴ v(r) = G M (r) r (122) となる. また、銀河内の質量 M はほとんど中心に存在すると仮定すると、 v(r) = G M r (123) √ となり、 r に反比例する.ただし、我々の銀河は問題 26 のグラフで見たとおり、 半径 r が大きくなっても回転速度は減少しない.よって、我々の銀河においては、 銀河の厚みが十分薄い、または銀河内の質量は中心に集まっているという仮説は 棄却される. 銀河円盤の密度を一定値 ρ0 、円盤の厚みを z とした場合、半径 r 以内の質量 M (r) は M (r) = ρ0 πr2 z (124) と表されるから、M (r) を r の関数で表すと、 v(r) = πGρ0 rz (125) √ となり、 r に比例する. 以上の結果と、問題 26、27 で得られた銀河系の回転曲線より考えられる銀河の 質量分布を述べる.回転曲線のグラフより、 v(r) = 1.24r + 210.8 (126) また、半径 r 以内の質量 M (r) は、 r 2πzrρ(r)dr M (r) = (127) 0 だから、 dM (r) = 2πzrρ(r) dr で、これに (122) 式を代入すると、 d 2 v (r)r = 2Gπzrρ(r) dr dv(r) 2v(r)r + v 2 (r) = 2Gπzrρ(r) dr 63 (128) となるが、v(r) はほとんど一定なので dv(r) ≈ 0 とすると、 dr v 2 (r) 2Gπzr (1.24r + 210.8)2 ρ(r) = 2Gπzr ρ(r) = (129) (130) したがって、密度 ρ(r) は増加関数といえる.しかし、電波望遠鏡などの観測結果 はこの事実と矛盾しておりやはり、電波を発しない物質ダークマターが銀河から 遠く離れたところにまで大量に存在していると考えられる. 64 29. 表 11 から 4 つの銀河における、中心からの角距離と長軸の表面輝度をプロッ トしたグラフを次ページに得た.どの銀河も表面輝度 µ は中心からの角距離 r の 一次関数で表すことができる. NGC 670 NGC 697 NGC 1087 NGC 1589 µ(r) = 0.0994r + 18.501 µ(r) = 0.0427r + 19.36 µ(r) = 0.0468r + 19.254 µ(r) = 0.0606r + 18. . 30. 問題 29 について表面輝度 µ を等級ではなく明るさ I で表すことを考える.中 心での明るさ、角距離 r 出の明るさをそれぞれ I(0), I(r) と表したとき、 µr − µ0 = −2.5 log10 I(r) I(0) I(r) loge I(0) 2 {µ(r) − µ0 } = 5 loge 10 (∵ µ(r) = µ0 + ar : 問題 29) I(r) = I(0)e− 5 ar loge 10 5 ∴ h = (h : スケールレングス) (131) 2a loge 10 2 また、表 11 の銀河までの距離からスケールレングスを kpc で求めると、 Galaxy Distance[Mpc] a h(秒角) Scale[kpc] NGC 670 NGC 697 NGC 1087 NGC 1589 39.28 32.33 15.19 37.41 0.0994 0.0427 0.0468 0.0606 10.92 25.43 23.20 17.92 2.080 3.986 1.709 3.250 となる.表中の a は、問題 29 で µ(r) = µ0 + ar と表したときの a である.スケー ルレングスというパラメータを導入すると、銀河の表面輝度を観測することで銀 河のスケールが求められる.なお、スケールを求める式は次のように表される. S = D × 103 × πh 3600 × 180 65 (132) 30 グラフ (1) 66 30 グラフ (2) 67 30 グラフ (3) 68 30 グラフ (4) 69 31. 回転曲線から得られた銀河の質量分布と表面輝度の測定から得られる質量分 布の違いを考察する.まず、問題 28 でみたように、銀河系内の質量分布は中心付 近を除き、中心から離れれば離れるほど大きな密度となっている.ところが、表 面輝度を観察すると、銀河中心から離れれば離れるほど明るさが小さくなってい る.すなわち、存在する天体が量的に小さいのではないかと考えられる. とすれば、この 2 つの観測結果は矛盾するものになってしまう.しかし、明るさ をともなわない天体、例えば惑星、ガス、ダークマターが存在すると仮定すれば 上の両者の観測の矛盾点は解決できる.もちろん、この『見えない質量』の正体 は不明だが、惑星、ガスの質量は銀河中心から遠ざかるほど小さくなっていると 言われているので、未知の物質ダークマターであると考えられている. 70 32. 次ページ以降のグラフより、表面輝度 µ(r) は中心からの角距離の 1/4 乗の 一次関数と近似できそうなので、 1 µr = ar 4 + µ0 (133) と表せる.ここで、a は比例定数である.問題 30 と同様にして I(r) を求めると、 1 I(r) = I(0)e− 5 ar 4 loge 10 2 (134) となる. 1 また、de Vaucouleurs r 4 則 1 4 r I(r) = Ie exp{−7.67[ re − 1]} (135) が正しいとすれば、r = 0 として、 I(0) = I(re )e7.67 (136) また、(134) 式で r = re とすると、 1 4 I(re ) = I(0)e− 5 are 2 loge 10 (137) となるので、これら 2 式より、 re = 38.35 2a loge 10 4 (138) となる.これをもとに表 12 の 4 つの銀河までの距離を求めてみると次のように なった. 銀河 NGC661 NGC680 NGC3415 NGC3894 a 3.403 3.1674 3.2515 2.8426 71 re 35.86′′ 47.78′′ 43.03′′ 73.66′′ re [kpc] 6.93 7.14 6.93 11.9 グラフ 1 72 グラフ 2 73 グラフ 3 74 グラフ 4 75 グラフ 5 76 グラフ 6 77 グラフ 7 78 グラフ 8 79 33. 問題 30 の円盤銀河も I(r) = Ie exp{−k r −1 } re (139) と表せるが、定数 k を求める. まず、全光度を求める. ∞ ∞ 2πrI(r)dr = 2πI(0) re− h dr r (∵ (131) 式) 0 0 ∞ = 2πI(0) [−hre− h ]∞ 0 +h r = 2πI(0)[−rhe r −h − e− h dr r 0 r 2 −h ∞ h e ]0 2 = 2πI(0)h (140) また、有効半径の定義により、 re πI(0)h2 = 2πrI(r)dr (141) 0 − rhe = 2πI(0)(−re he re − rhe − h2 e + h2 ) re h = −2re e− h − 2he− h + 2h 2re −2 = 0 h ek − 2k − 2 = 0 (∗) ek − 2 ∴ k = 2 ∴ k ≈ 1.68 re eh − (142) (143) 最後の (142) 式はニュートン法を用いて近似解 k を求めた.また (*) の変形は、(139) 式を用いて、 I(r) = I(0)e− h r r − 1) re kr = I(re )exp[k]exp re = I(re )exp −k ∴ I(re ) = I(0)exp[−k], re = hk (144) という関係があることを用いて計算した. さらに、re , Ie は、h, I(0) を用いて、 re = hk ≈ 1.68h, Ie = I(0)exp[−1.68] ≈ 0.186I(0) と表せる. 80 (145) 34. 多数の質点の重力のみの多体系において、それぞれの質点の質量、位置、運 動量をそれぞれ mj , r⃗j , p⃗j とおくとき、 d dt dp⃗j d⃗ rj ・r⃗j + p⃗j・ dt dt p⃗j・r⃗j = j j (F⃗j・r⃗j + p⃗j・r⃗j ) = j F⃗j・r⃗j = 2T + (146) j となる.ただし、T は系全体の運動エネルギー、F⃗j は mj の受ける力とした. さらにこの多体系が常に保たれ続けるときを考える.(146) 式の両辺の時間平均 をとると、 1 τ 1 τ τ 0 d dt F⃗j・r⃗j > p⃗j・r⃗j dt = < 2T > + < j j (p⃗j・r⃗j |t=τ − p⃗j・r⃗j |t=0 ) = < 2T > + < j F⃗j・r⃗j > (147) j p⃗j・r⃗j |τ は有限値だから τ を大きくすると両辺 多体系が保たれ続けるとすると、 j は 0 に近づくことが分かる. F⃗j・r⃗j >= 0 < 2T > + < (148) j 最後にビリアル定理 < T >= n <V > 2 (149) を導出する.まず、系全体のポテンシャルエネルギー は、 V = 1 2 U (|⃗ rj − r⃗i |)) ( j (150) i̸=j と表せるが、ポテンシャル U は、U (|⃗ rj − r⃗i |) ∝ |⃗ rj − r⃗i |n のとき、 U (α|⃗ rj − r⃗i |) = αn U (|⃗ rj − r⃗i |) (151) だから、 V (α|⃗ rj − r⃗i |) = = 1 2 U (α|⃗ rj − r⃗i |) j 1 n α 2 = αn V 81 i̸=j U (|⃗ rj − r⃗i |) j i̸=j (152) 両辺を α で微分すると、 k ∂(αr⃗k ) ∂V (α|⃗ rj − r⃗i |) = nαn−1 V (|⃗ rj − r⃗i |) ∂α ∂(αr⃗k ) (153) となるが、この式に α = 1 を代入すると、 nV = r⃗k k ∂V ∂ r⃗k (154) となることと、V を r⃗k で微分したものは、 ∂V 1 ∂ = ( ∂ r⃗k 2 ∂ r⃗k = ∂ ∂ r⃗k U (|⃗ rj − r⃗i |)) j i̸=j U (|⃗ rj − r⃗l |) l̸=k = − F⃗kl = −F⃗k (155) l̸=k となることを用いると、 nV = r⃗k k ∂V =− ∂ r⃗k r⃗k・F⃗k = − k r⃗j・F⃗j (156) j ところで、(151) 式より、 < 2T >= − < F⃗j・r⃗j >= n < V > (157) n <V > 2 (158) j だから、 < T >= となり、ビリアル定理が示せた. 最後に、n < −2 の場合、系は安定に存在し続けられるかどうか調べる.全エネ ルギー < E > は、 <E> = <T >+<V > n+2 <T > = n (159) とかけるが、n < −2 のとき < E >> 0 となるので無限遠 < V >= 0 でも運動エネ ルギーを持ってしまうため、系は安定し続けられないと考えられる.したがって、 ビリアル定理は n ≧ − 2 の場合のみ成り立つことが分かる.また、ポテンシャル エネルギーが重力のみから影響を受けるときは n = −1 である.このとき、(159) 式は、 2 < T > + < V >= 0 82 (160) となり、< E >=< T > + < V > とあわせると、 < E >= − < T >= <V > 2 (161) という関係が出てくる.これは、定常状態にある自己重力恒星系では、必ず全エ ネルギーはポテンシャルエネルギーのちょうど半分であり、絶対値が運動エネル ギーに等しいということを示している. 83 35. 重力によるポテンシャルでは (149) 式において n = −1 だから、ビリアル定 理は、 1 < T >= − < V > 2 (162) となる.ここで、質点の速度の 2 乗の質量平均、系全体の質量、系の質量平均し た半径を v¯2 , M, R としたとき、 v¯2 = i mi vi2 j mj mi v¯2 = M v¯2 mi vi2 = <T > = i i Gmi mj GM 2 ≈− ⃗ r⃗j | R 2|ri − <V > = − i j̸=i となる.ただし、 2|⃗ ri − r⃗j | R= i j M2 mi mj とした.(162) 式に < T >, < V > を代入すると、 1 GM 2 M v¯2 ≈ 2 R GM ∴ v¯2 ≈ 2R (163) となる.次に、銀河団に属する銀河の後退速度の速度分散 v¯r2 から銀河団の質量を 見積もることを考える.まず、速度分散について、 v¯2 = v¯x2 + v¯y2 + v¯z2 = 3v¯r2 (164) が成り立つ.また、実際の大きさ R と天球投影した見かけの大きさ Rproj が、 π R = Rproj 2 (165) という関係を一般的に持つとき、(164), (165) 式を (163) 式に代入して、 3v¯r2 ≈ GM πRproj ∴ を得る. 84 GM ≈ 3π v¯r2 Rproj (166) 36, 37. (166) 式と表 13 を用いて、かみのけ座銀河団 (Coma cluster) 全体の質量 を求める.まず、みかけの角直径、距離がそれぞれ 3 度、90Mpc だから、見かけ の大きさ Rproj は、 Rproj = 90 × 106 × tan( 2 π ) × 3.086 × 1016 ≈ 7.25 × 1022 m 3 180 (167) また、速度分散 v¯r2 は銀河団の重心の視線速度 vG とすると、 1 v¯r2 = N N (vi − vG )2 = i=1 1 68 (vi − 6911.65) ≈ 678663.5 × 106 [(m/s)2 ] (168) 68 i=1 だから、(166) 式より、 3π v¯r2 Rproj G 3π × 678663.5 × 106 × 7.25 × 1022 = 6.67 × 10−11 ≈ 6.95 × 1045 [kg] M = (169) これは、天の川銀河の約 104 倍の質量である. 同様に、ヘラクレス座銀河団の質量 Mh を求める.表 14 より、速度分散 v¯r 2 = 1.451022 × 1012 [(m/s)2 ], みかけの大きさ Rproj = 1.35 × 1023 [m] だから、 3π v¯r2 Rproj G ≈ 2.77 × 1046 [kg] M = これは、天の川銀河の約 65000 倍もの質量である. また、表 14 から得られる銀河団の銀河分布を次ページに示した. 85 (170) 銀河分布図 86 38. 宇宙膨張による後退速度 v は、時刻 t が経過した後に距離が r0 から (1 + α)r0 になったとすると、 d((1 + α(t))r0 − r0 ) dt dα(t) = r0 dt v = (171) したがって、宇宙膨張による後退速度は距離に比例することがわかる.また、 dα dt を t の関数とし、ここで、ハッブルの法則 v(r) = H(t)r (172) において、H(t) をハッブル定数 H0 とする.また、微小時間 dt の間に dr だけ膨張 するので、 v(r)dt = dr ∴ H0 rdt = dr ∴ H0 dt = dr r (173) という式が成り立つ.さて、問題文より、t = 0 から t の間に r = r0 から (1 + α)r0 に膨張するので、 t 0 (1+α)r0 dr r r0 H0 t = log(1 + α) H0 dt = ∴ α = eH0 t − 1 したがって、宇宙の膨張率は時間発展に対して指数関数的に増加する. 87 (174) 39. 歪んだ 2 次平面である球面を考える.半径 r の球面上の 2 点間の微小距離 dl は、極座標を用いると、fig20 より、 dl2 = r2 dθ2 + sin2 θdφ2 r2 = r2 (dθ2 + sin2 θdφ2 ) (175) となる.また、球面上の半径 rθ の円の周の長さ L は、 δL = dl(dθ = 0) = r sin θdφ 2π ... L = r sin θdφ = 2πr sin θ (176) 0 と表せる.ところで、半径に対する円周の比 R(θ) は、 R(θ) = 2πr sin θ sin θ = 2π rθ θ (177) となり、R(0) = 2π のとき歪みがなく、R(θ) は (0 ≦θ≦π) の範囲で単調減少関数 なので、θ が大きくなるにつれて歪みが大きくなっていくことが分かる. 88 40. 4 次元での半径 a の球上の 2 点間距離を考える.このとき、4 次元のデカル ト座標 (x1 , x2 , x3 , x4 ) は、 x21 + x22 + x23 + x24 = a2 (178) が成り立ち、この超球の表面内の 2 点間の微小距離 dl は、 dl2 = dx21 + dx22 + dx23 + dx24 (179) と表せる.さらに、(x1 , x2 , x3 ) を極座標で表すと、r2 = x21 + x22 + x23 とかけるか ら、x24 = a2 − r2 となる.また、 x1 = r sin θ cos ϕ (180) x2 = r sin θ sin ϕ (181) x3 = r cos θ (182) と表せるから、 dx1 = sin θ cos ϕdr + r cos θ cos ϕdθ − r sin θ sin ϕdϕ (183) dx2 = sin θ sin ϕdr + r cos θ sin ϕdθ − r sin θ cos ϕdϕ (184) dx3 = cos θdr − r sin θdθ r dx4 = − √ 2 dr a − r2 (185) (186) だから、(181) 式に代入して計算すると、 dx21 + dx22 + dx23 + dx24 = r2 dθ2 + r2 sin2 θdϕ2 + dr2 1 − r2 /a2 (187) となる.また、r = a sin χ とおくと、dr = a cos χdχ だから、これを (189) 式に代 入すると、 dx21 + dx22 + dx23 + dx24 = a2 sin2 χdθ2 + sin2 χ sin2 θdϕ2 + cos2 χdχ2 (188) 1 − sin2 χ = a2 sin2 χdθ2 + sin2 χ sin2 θdϕ2 + dχ2 (189) と 3 つの角度 (χ, ϕ, θ) で表せる.また、χ の範囲は r ≧ 0 より、0 ≦χ≦π である. ところで、問題 39 ではゆがんだ 2 次元平面では、2 点間距離は dl2 = r2 (dθ2 + sin2 dϕ2 ) (190) dr2 であったがゆがんだ 3 次元空間の 2 点間距離は、これに 2 の項が付け加えら 1 − ar 2 れている.これは、次元の拡張による影響を受けたものだと考えられる. 89 41. 超球面上にある 3 次元空間内に描かれた χ = 0 を中心とする円の円周率 R を 考える.この円の円周 L は、dθ = 0, dχ = 0 に注意して、 L = dl 2π = a sin χ sin θdϕ 0 = 2πa sin χ sin θ (191) となるから、円周率 R は、 2πa sin χ sin θ aχ sin χ = 2π sin θ < 2π χ R = sin χ < 1, | sin θ| < 1 χ ∵ (192) よって、円周率 R は 2π より小さくなることが分かる. 次に χ = 0 を中心とする半径 aχ の球の表面積 S を考える.球面上の微小面積 ∆S は、 ∆S = a sin χdθa sin χ sin θdϕ = a2 sin2 χ sin θdθdϕ ∴ S = dS 2π π = 0 a2 sin χ sin θdθdϕ 0 π = 2πa2 sin2 χ sin θdθ 0 = 4πa2 sin2 χ (193) となる. 最後に超球表面全体の体積 V を求める.球面の表面積が 4πa2 sin2 χ なので、超 球の表面全体の体積は、 π V = 4πa2 sin2 χ・adχ 0 π = 4πa3 0 2 3 = 2π a 1 − cos 2χ dχ 2 (194) となる.ただし、積分区間が 0 ≦χ≦π となっているが、この理由は問題 40 の解答 で述べている. 90 42. ユークリッド空間からの歪みの程度について考える.前問までの超球表面に ついての議論で円周率 R は、 sin χ (195) R = 2π sin θ χ と表せたが、一定の半径 aχ の円については a が小さくなるほど χ が大きくなるこ sin χ とが分かる.したがって、減少関数7 の の値は小さくなっていき円周率 R の χ 値は 2π から離れていくということになる.したがって、超球の半径 a の値が小さ くなるほど、ユークリッド空間からの歪みは大きくなる. 次に、λ = k/a2 (k = −1, 0, 1) というパラメータを導入したときに、超球上の 2 点間距離がどのように表されるか考える. x21 + x22 + x23 + x24 = a2 , k x24 = r2 − a2 k (r ≡ x21 + x22 + x23 ) (196) で、問題 40 の dx1 = sin θ cos ϕdr + r cos θ cos ϕdθ − r sin θ sin ϕdϕ dx2 = sin θ sin ϕdr + r cos θ sin ϕdθ − r sin θ cos ϕdϕ dx3 = cos θdr − r sin θdθ r dx4 = − 2 dr a 2 − r k だから、 dl2 = dx21 + dx22 + dx23 + dx24 = r2 dθ2 + r2 sin2 θdϕ2 + dr2 1 − kr2 /a2 (197) となる.また、 1. k = 0 のとき r = aχ とおくと、 dl2 = a2 (dθ2 + sin2 θdϕ2 + dχ2 ) (198) となる. ex + e−x とおくと、 2. k = −1 のとき r = a sin hχ = a・ 2 a2 cos2 hχdχ2 dl2 = a2 sin2 hχ(dθ2 + sin2 dϕ2 ) + 1 + sin2 hχ = a2 {sin2 hχ(dθ2 + sin2 θdϕ2 ) + dχ2 } (199) となる. 7 sin θ/θ が減少関数である理由:分母 θ の値の増加率の方が、分子 sin θ の増加率より大きい ( ∵ | sin θ| < |θ|) からである. 91 さらに、関数 sin χ (k = 1) σ(χ) = χ (k = 0) sin hχ (k = −1) (200) を導入すると、 dl2 = a2 σ 2 (χ)(dθ2 + sin2 θdϕ2 ) + dχ2 } と表すことができる. 92 (201) 43. k = −1 のとき、円周率 R、球の表面積 S 、空間全体の体積 V を求める. まず、k = −1 のとき、(199) 式より、 dl2 = a2 {sin2 hχ(dθ2 + sin2 θdϕ2 ) + a2 dχ2 } (202) となるので円周 L は、dθ = 0, dχ = 0 であることに注意して、 2π a sin hχ sin θdϕ L = 0 = 2πa sin χ sin θ (203) となるから、円周率 R は、 2πa sin χ sin θ aχ sin χ = 2π sin θ χ R = (204) となり、k = 1 のときと同じ結果が得られる.また、面積 S については、 ∆S = a sin hχdθa sin hχ sin θdϕ = a2 sin2 hχ sin θdϕ 2π π ∴ S = 0 a2 sin2 hχ sin θdθdϕ 0 = 4πa2 sin2 hχ (205) となる.また、空間全体の体積については、 dV = a sin hχdθ・a sin hχ sin θdϕ・adχ = a3 sin2 hχ sin θdχdθdϕ 2π ∴ V ∞ π = 0 0 a3 sin2 hχ sin θdχdθdϕ 0 = 2πa3 [− cos θ]π0 = πa3 = ∞ ∞ 0 e2χ + e−2χ − 2 dχ 4 1 2χ 1 −2χ e − e − 2χ 2 2 ∞ 0 となる.この結果は、負の曲率の場合宇宙の体積は無限大であることを意味する. このような宇宙を『開いた宇宙』という. 93 44. ロバートソン・ウォーカー計量 ds2 = c2 dt2 − dl2 dl 2 2 (207) 2 2 2 2 2 = a (t){dχ + σ (χ)[dθ + sin θdϕ ]} (208) を用いて、以下の考察を行う. まず、(χ, θ, ϕ) = (χ1 , θ1 , ϕ1 ) にある天体が t = t1 に発した光を、(χ, θ, ϕ) = (0, 0, 0) にいる観測者が t = t0 に受け取ったとすると、観測者に届く光は一定の 方位角 (θ1 , ϕ1 ) に進むから、dθ1 = 0, dϕ1 = 0 となり、(208) 式は、 dl = a(t)dχ (209) また、光速は常に一定だから ds = 0 より、(207) 式は、 cdt = dl = a(t)dχ (210) となるので、 t0 t1 χ1 cdt = a(t) χ0 χ0 = dl dl/dχ (211) dχ (212) χ1 という関係が成り立つことが分かる. また、天体が発した光の振動数を ν1 、観測者が受け取った光の振動数を ν0 とす ると、赤方偏移 z は、 z ≡ = = λ0 − λ1 λ1 c − νc1 ν0 c ν1 ν1 − ν0 ν0 (213) ここで、dt1 , dt0 の間に含まれる波の山の数が保存されるので、 ν1 dt1 = ν0 dt0 (214) だから、 dt0 −1 dt1 dl0 = −1 dl1 a(t0 ) = −1 a(t1 ) z = 94 (215) (216) となり、赤方偏移 z はスケールファクター a(t) を用いて表すことができる. 最後に、t1 を変数として t1 = t0 の周りで z を Taylor 展開すると、 dz a0 da a˙0 |t0 = − 2 |t0 = − dt a (t) dt a0 2 2 a0 a ¨a − a0 a2a ˙ a˙ dz |t0 = 2 2 dt a a˙0 2 a¨0 = 2 − |t0 a0 a0 a˙0 a˙0 (t0 − t1 ) + ∴ z = a0 a0 と表せる. 95 (217) (218) 2 − 1 a¨0 (t0 − t1 )2 + …… 2 a0 (219) 45. cosmic distance dcos を次で定める. dcos = r = a0 σ(χ1 ) (220) また、angular diameter distance を dang と表記する. まず、(201) 式より、 dl2 = a2 {σ(χ1 )(dθ2 + sin2 θdϕ2 ) + dχ21 } (221) であるが、これを用いて天体の位置 (χ1 , θ1 , ϕ1 ) を通る大円の円周を求める.超球 π 上の円について考えるから、dθ = 0, dχ = 0 である.また、θ = とすると、 2 dl2 = a21 σ 2 (χ1 ) sin2 θdϕ2 ∴ dl = a1 σ(χ1 )dϕ (222) となるから、求める円周 L は、 2π L = a1 σ(χ1 )dϕ 0 = 2πa1 σ(χ1 ) (223) となる. また、この天体の直径が D であるときの視直径 ∆ϕ は、fig21 を見れば分かるよ うに、 ∆ϕ = 2π D L D 2πa1 σ(χ1 ) D = a1 σ(χ1 ) = 2π (224) と表される.さらに、これを赤方偏移 z とスケールファクター a0 で表すと、(216) 式より、 a1 = a0 1+z だから、(224) 式は、 ∆ϕ = D 1+z σ(χ1 ) a0 (225) となる.さらに、視直径 dang は、 D ∆ϕ a0 σ(χ1 ) = 1+z dang = 96 (226) となり、Cosmic distance dcos との関係は、(220), (226) 式より、 dang = 1 dcos 1+z となっていることが分かる. 97 (227) 45 の fig 98 46. 天体の全光度と観測されるフラックスの関係から求まる距離 luminosity distance を dlum と表記する.天体の全光度を L1 とすると、観測される全フラック ス F は、 F = L1 1 2 4π{a0 σ(χ1 )} (1 + z)2 (228) と表されることが分かっている.さて、天体で時間 dt1 の間に発せられた光子は観 測者が dt0 の間に受け取るとするとき、両者の時間の関係は、(215) 式より、 dt0 =z+1 dt1 (229) である.次に、単位時間に天体から発せられる光子数、単位時間に観測者が観測 する光子数をそれぞれ N1 , N0 としたとき、両者にはどのような関係があるかをみ る.天体から発せられる光子数を観測される光子数は保存することから、 N1 dt1 = N0 dt0 dt1 1 N0 = = <1 ∴ N1 dt0 1+z (230) したがって、天体から単位時間に発せられる光子数の方が観測される光子数より 多いことが分かる.上式での最後の不等号は、観測事実より天体はすべて赤方偏 移となるから z > 0 が成り立つことを根拠にしている. 最後に、光度とフラックスの関係式 (228) 式を満たすために dlum を定義する.(9) 式は、 I= L 4πd2 (231) であったが、光の強度 I とフラックス F は同じものなので、I = F になるように dlum を決めればよい.(9), (228) 式より、 1 L1 L1 = 2 4πdlum 4π{a0 σ(χ1 )}2 (1 + z)2 ∴ dlum = a0 σ(χ1 )(1 + z) (232) と、dlum を定義できる.dlum は、(1 + z) がかかっていることから、相対論的効果 が加わっていることが分かる.ちなみに、dcos , dang との関係は、 dlum = dcos (1 + z) = dang (1 + z)2 となる. 99 (233) 47. Friedmann 宇宙、Friedmann 方程式について考える. 宇宙全体の重力のつりあいを考える.半径 a 内にある総質量を M (a) とすると、 運動方程式は、 a ¨=− GM (a) a2 (234) である.この関係式が成立する宇宙を Friedmann 宇宙と呼ぶが、この式の両辺に a˙ をかけさらに両辺を時間 t で積分すると、 aGM ˙ (a) 2 a aGM ˙ (a) a¨ ˙ adt = − dt a 1 2 GM (a) a˙ = + C0 (C0 : 積分定数) 2 a 2GM (a) ∴ a˙ − = 2C0 ≡ − kc2 a a¨ ˙a = − (235) という関係式が導かれる.この関係式の両辺を a2 で割り、(234) 式を用いると、 a˙ 2 2GM (a) kc2 − = − a2 a3 a2 2 a˙ 2¨ a kc2 + = − a2 a a2 (236) という Friedmann 方程式という関係式が導かれる. さらに、パラメータ a˙ H≡ , a q≡− a ¨ aH 2 (237) を導入すると、(236) 式は、 H2 2 a¨ a kc2 ) = − a˙ 2 a2 2 kc2 ¨ a a +1 = − 2 2 a˙ a a 2¨ a kc2 H2 + 1 = − aH 2 a2 2 kc ∴ H 2 (2q − 1) = a2 a˙ a (1 + 2 となる. 100 (238) 48. k = +1 のときの Friedmann 方程式 a˙ 2 2¨ a c2 + = − a2 a a2 ∴ a˙2 + 2¨ aa = −c2 (239) の解が、x をパラメータとして、 a = b(1 − cos x) b t = (x − sin x) c であることを確かめる. da da dx = dt dx dt d da d = a ¨ = dt dt dt d da dx = dt dx dt dx d da = dt dx dx a˙ = d2 a = dx2 dx dt = b sin x (240) da dx dx dt da d dx + dx dt dt dx da d2 x + dt dx dt2 2 dx = b cos x dt dx dt + da d2 x dx dt2 2 + b sin x d2 x dt2 (241) また、 dt = d2 x = dt2 = = = = b dx c 1 c (1 − cos x)dx ∴ = = c dt b 1 − cos x a d dx dt dt dx d dx dt dx dt c2 d 1 ab dx 1 − cos x c2 sin x − ab (1 − cos x)2 bc2 − 3 sin x a (242) (243) であるから、 a˙ = bc sin x a (244) 101 c2 bc2 + b sin x − sin x a2 a3 bc2 b2 c2 = cos x − 3 sin2 x 2 a a a ¨ = b cos x (245) と a, ˙ a ¨ が求まる.これらを k = +1 の Friedmann 方程式の左辺に代入すると、 b2 c2 2bc2 2b2 c2 2 a˙2 + 2¨ aa = sin x + cos x − sin2 x a2 a a2 b2 c2 2a = − sin2 x + cos x 2 a b b2 c2 = − sin2 x + 2(1 − cos x) cos x 2 a b2 c2 = (− sin2 x − 2 cos2 x + 2 cos x) a2 b2 c2 = − 2 (cos2 x − 2 cos x + 1) a b2 c2 = − 2 (cos x − 1)2 a b2 c2 a2 = − 2 2 = −c2 a b (246) よって、題意は示された. また、a を t の関数として図示すると、これはサイクロイドを表している.この グラフを 100 ページに図示する. 102 49. k = −1 のときの Friedmann 方程式 a˙ 2 2¨ a c2 = + a2 a a2 ∴ a˙2 + 2¨ aa = c2 (247) の解が、y をパラメータとして、 a = b(cos hy − 1) b t = (sin hy − y) c であることを確かめる. a˙ = = a ¨ = = = da da dy = dt dy dt dy b sin hy dt d da dt dt dy d dy b sin hy dt dy dt dy dy d2 y b cos hy + sin hy 2 dt dt dt (248) (249) また、 dt = d2 y = dt2 = = = 1 dy c b (cos hy − 1)dy ∴ = c dt b cos hy − 1 d dy dt dt dy d c 1 dt dy b cos hy − 1 − sin hy c2 1 2 b cos hy − 1 (cos hy − 1)2 sin hy c2 − 2 b (cos hy − 1)3 (250) (251) であるから、 c 1 b cos hy − 1 sin hy = c cos hy − 1 c c c2 sin hy 1 1 a ¨ = b cos hy − sin hy 2 b cos hy − 1 b cos hy − 1 b (cos hy − 1)3 a˙ = b sin hy 103 (252) (253) と a, ˙ a ¨ が求まる.これらを k = −1 の Friedmann 方程式の左辺に代入すると、 c cos hy c2 sin2 hy c2 sin2 hy + 2bc − (cos hy − 1)2 b cos hy − 1 b2 (cos hy − 1)3 c2 sin2 hy 2c2 (cos hy − 1)2 cos hy + sin2 hy = − (cos hy − 1)2 b (cos hy − 1)3 c2 sin2 hy 2c2 1 = − 2 2 (cos hy − 1) b (cos hy − 1)3 a˙2 + 2¨ aa = 2 c2 sin2 hy + 2cb = (cos hy − 1)2 bc2 sin2 hy + 2c2 = b(cos hy − 1)2 = (254) 104 48,49 のグラフ 105 50. k = 0 のときの Friedmann 方程式 a˙ 2 2¨ a + =0 2 a a ∴ a˙ 2¨ a + =0 a a˙ (255) これを t について積分すると、 2¨ a a˙ dt = − dt a˙ a 2 log a˙ = − log a + C eC = log a C e C0 ∴ a˙ 2 = ≡ a a (C : 積分定数) (256) この微分方程式の解を a = btλ (257) と仮定して代入すると、 C0 btλ = C0 (bλtλ−1 )2 = b3 λ2 t3λ−2 C0 は定数だから λ = (258) 2 である.また、t = t0 で a = a0 だから、(257) 式より 3 2 a0 ∴ b= 2 (259) a0 = bt03 t03 となるから、微分方程式の解は、 2 3 t t0 a = a0 (260) となる.a, t の関係は 103 ページに図示した. また、H0 , q0 を求めると、 H0 ≡ a˙0 a0 (261) に、 a˙ = 2 − 23 − 1 a0 t t 3 3 0 ∴ a˙0 = 2 −1 a0 t 3 0 を代入すると、 2 H0 = t−1 3 0 106 (262) となる.また、q0 については、 q ≡ − a¨0 a0 H02 1 a˙2 a2 = − − 0 0 a0 2a0 a˙20 = 1 2 (263) と求められる. さらに、dcos = a0 σ(χ1 ) を求める.(212) 式より、 t0 t1 に、a(t) = a0 t t0 2 3 χ0 =0 cdt = a(t) dχ (264) χ1 を代入すると、 t0 t1 c 23 − 2 t t 3 dt = −χ1 a0 0 3c 23 1 t0 t t3 = −χ1 t1 a0 0 1 3c 23 13 t0 (t0 − t13 ) = −χ1 a0 となる.ところで、k = 0 のとき σ(χ1 ) = χ1 だから、 (265) dcos = a0 σ(χ1 ) = a 0 χ1 2 1 1 = 3ct03 (t13 − t03 ) (266) と、c, t0 , t1 のみで表せる.また、(216) 式より、 z ≡ = a(t0 ) − a(t1 ) a0 = −1 a(t1 ) a1 a0 2 − 1 t1 3 a0 t0 2 3 t0 t1 ∴ z+1 = であるから、 2 3 dcos = 3ct0 (267) 2 3 t0 − t0 1+z 1 −1 1+z 1 √ −1 1+z 1 3 = 3ct0 √ = 2c H0 となり、c, H0 , z で表すことができた. 107 (268) 50 のグラフ 108 51. (212) 式を用いて、dcos を H0 , q0 , z を用いて表すことを考える. k = 1 のときの Friedmann 方程式の解は、 b t = (x − sin x) c a = b(1 − cos x), (269) これと、(244)、(245) 式より、 a˙ = a sin x , 1 − cos x a ¨=− c2 b(1 − cos x)2 (270) となる.これより、H0 , q0 , z をパラメータ x で表すと、 a˙0 c sin x0 = a0 b(1 − cos x0 ) a0 a¨0 a¨0 1 q0 ≡ − = − = a0 H02 a˙ 2 1 + cos x0 a0 1 − cos x0 z ≡ −1= −1 a1 1 − cos x1 H0 ≡ (271) (272) (273) とかける.この 3 式より、 c H0 q02 (1 + z) {q0 z + (q0 − 1) −1 + 1 + 2q0 z } = a0 sin x0 cos x1 − a0 cos x0 cos x1 = a0 sin(x0 − x1 ) となる.k = 1 のとき、σ(χ) = sin χ であるから、 χ≡χ0 − χ1 = χ0 t0 dχ = χ1 t1 cdt a(t) で、さらに、 b a dt = (1 − cos χ)dχ = dχ c c であるから、 t0 t1 cdt = a(t) χ0 χ1 dχ = χ0 − χ1 よって、 dcos = a0 σ(χ) = a0 sin(χ) = a0 sin(χ0 − χ1 ) よって dcos = c H0 q02 (1 + z) {q0 z + (q0 − 1) −1 + が成り立つ. 109 1 + 2q0 z } 52. 問題 51 より、 dcos = c H0 q02 (1 + z) {q0 z + (q0 − 1) −1 + 1 + 2q0 z } (274) である. 1. k = 1 のとき、 q0 = − = a¨0 a20 a¨0 a¨0 a0 = − =− 2 a0 H0 a0 a˙20 a˙20 − bc2 a20 cos χ0 − b2 c2 a20 b2 c2 a30 2 sin2 χ0 a0 sin χ0 (a0 cos χ0 − b sin2 χ0 ) b sin2 χ0 − ab0 cos χ0 + sin2 χ0 = sin2 χ0 −(1 − cos χ0 ) cos χ0 + sin2 χ0 = sin2 χ0 1 − cosχ0 = sin2 χ0 = − (275) となり、 a˙0 H0 = = a0 bc a0 sin χ0 = a0 b a0 2 c c sin χ0 sin χ0 = b b 1 − cos χ0 (276) となるから、q0 , H0 > 0 であり、 lim dcos = z→∞ c H0 q02 (1/z + 1) {q0 + (q0 − 1) −1/z + 1/z 2 + 2q0 /z } = C (277) H 0 q0 2. k = 0 のとき、 2C 2 1 lim = である. q0 = , H0 = t−1 0 , z→∞ 2 3 H0 3. k = −1 のとき、 q0 = − a¨0 a¨0 a20 = − a0 H02 a0 a˙20 c2 b2 (cosh y − 1)2 b(cosh y − 1) cosh y(cosh y − 1) − sinh y 2 b(cosh y) (cosh y − 1)2 b2 sinh yc2 cosh y − 1 (278) = sinh2 y = 110 となり、 H0 = b sinh y c c sinh y a˙0 = = a0 b(cosh y − 1) b(cosh y − 1) b (cos hy − 1)2 となるから、q0 , H0 > 0, lim = z→∞ (279) C . H 0 q0 dcos , dlum , dang と z の関係を図示したものは次ページである.またこれらを問 題 14 のグラフ (p32) との比較をすると、距離として、dcos をとればよいことが分 かる. 111 52 の図示 112 53. Friedmann 方程式 2GM (a) a˙2 − = −kc2 a (280) を密度 ρ を用いて表すことを考える. 4 (281) 式に M (a) = πa3 ρ を代入すると、 3 8Gπa3 ρ a˙2 − = −kc2 3a a˙2 8πGρ kc2 − = − a2 3 a2 a˙ ここで、H ≡ だから、 a H2 = 8πGρ kc2 − 2 3 a (281) となり、密度 ρ を用いて Friedmann 方程式を表すことができた.また曲率がなく なるとき (k = 0 のとき) の臨界密度 ρc は、k = 0 を(282)式に代入して ρc = 3H 2 8πG (282) となる.この臨界密度 ρc より実際の密度が大きいと宇宙は自身の重力により収縮 し、逆に小さいと宇宙は膨張していくと考えられる. また、宇宙膨張によって小さくなっていく密度 ρm は、質量保存則より、 4 3 4 πa ρm = πa30 ρm, 3 3 ρm = 0 とかける. 113 a0 a 3 ρm,0 (283) 54. アインシュタインの一般相対性理論から Friedmann 方程式を導くと次のよ うに書ける. H2 = 8πG kc2 (ρm + ρΛ ) − 2 3 a (ρΛ = Const) (284) 密度を臨界密度で規格化したもの Ωm ≡ ρm , ρc ΩΛ ≡ ρΛ ρc (285) を導入すると、(284) 式は、 H2 = 8πG kc2 ρc (Ωm + ΩΛ ) − 2 3 a (286) とかけるから、 1 kc2 +1 2 a2 H 2 1 1 = (kc2 + a2 H 2 ) 2 2 2a H 1 8πG = ρc (Ωm + ΩΛ )a2 2 2a H 2 3 4 πG = ρc (Ωm + ΩΛ ) 3 H2 q = ところで、(282) 式より、H 2 = (287) 8 πGρc だから、 3 1 q = (Ωm + ΩΛ ) 2 (288) となり、q を Ωm , ΩΛ で表すことができた. さらに、曲率の項についてもパラメータ ΩK ≡ kc2 H 2 a2 (289) を導入すると、次の関係式が導かれる. 1 + ΩK kc2 = 1 + 2 2 = 2q = Ωm + ΩΛ H a (290) 最後に Ωm , ΩΛ , ΩK の現在の値を Ωm,0 , ΩΛ,0 , ΩK,0 とすると、Friedmann 方程 式が、 H 2 = H02 {(1 + z)3 Ωm,0 + ΩΛ,0 − (1 + z)2 ΩK,0 } とかけることを示す. 114 (291) (216) 式より z = a0 − 1 であるから、 a a0 a (1 + z)3 Ωm,0 + ΩΛ,0 − (1 + z)2 ΩK,0 = 3 Ωm,0 + ΩΛ,0 − a0 a 2 ΩK,0(292) となるが、ここで、 ρm = a0 a 3 ρm,0 , Ωm = ρm , ρc Ωm,0 = ρm,0 , ρc,0 kc2 ρΛ Ω = , Λ H 2 a2 ρc ρΛ,0 = , ρΛ = ρΛ,0 ρc,0 ΩK = ΩΛ,0 であるから、(292) 式は、 a0 a 3 ρm,0 ρΛ,0 a0 + − ρc,0 ρc,0 a 2 kc2 = H 2 a2 = = a0 a H H0 H H0 よって、(291) 式が成り立つことが示せた. 115 3 a a0 3 H H0 2 ρm H + ρc H0 2 ρΛ H − ρc H0 2 kc2 H 2 a2 2 (Ωm + ΩΛ − ΩK ) 2 ∵ 1 + ΩK = Ωm + ΩΛ (293) 55. スケールファクター a の t に対する振る舞いはどうなっているか.今、ΩΛ ≫ Ωm の場合を考える. パラメーター H は、(291) 式より、 H 2 = H02 {ΩΛ,0 − (1 + z)2 ΩK,0 } a˙2 a20 kc2 2 ρΛ,0 = H − 0 a2 ρc,0 a2 H02 a20 Λc2 8πG kc2 2 = H0 − 2 2 8πG 3H02 a H0 2 2 Λc kc = − 2 3 a (294) となる.ここからスケールファクター a が k の値によってどうなるか調べる. 1. k = 1 のとき (295) 式は、 Λ 2 a˙2 = c2 a −1 3 (295) となるから、スケールファクター a は、 • a= 3 ならば、a˙ = 0 より宇宙の大きさは一定である. Λ • a< 3 ならば、a˙ は複素数になるので解は物理的意味を持たない. Λ • a> 3 ならば、a˙2 > 0 より宇宙は収縮、または膨張する. Λ 2. k = −1 のとき (294) 式は、 Λ 2 a˙2 = c2 a +1 (296) 3 よって、a が実数のとき、a˙2 > 0 となり、宇宙は収縮、または膨張する.a が複素数のときは物理的意味は持たない. 3. k = 0 のとき (294) 式は、 a˙ = ± Λ ca 3 Λc2 a˙2 = a2 3 √Λ ∴ a = Ae± 3 ct (297) となる.ただし、A は積分定数である.このとき、宇宙は指数関数的に収縮、 または膨張する. 116 56. dcos = a0 σ(χ1 ) を求める.(212) 式 t0 t1 χ0 =0 cdt = a(t) dχ (298) χ1 より、 t0 t1 cdt = a c dt da = a da c da = aa˙ c a da = a˙ a2 z1 0 c da H a2 (299) という関係が成り立つ.さらに、1 + z = t0 t1 cdt =− a 0 z1 a0 a0 , dz = − 2 da を用いると、 a a c dz = H a0 z1 0 cdz Ha0 (300) という関係が見出せる.ここから dcos を求めたい.k = 0 のとき、(294) 式より、 H 2 = H02 {(1 + z)3 Ωm,0 + ΩΛ,0 } (301) となるが、ここで H0 = 71km s−1 Mpc−1 、Ωm,0 = 0.27, ΩΛ,0 = 0.73 とし、(301) 式に代入すると、 dcos = a0 σ(χ1 ) = a0 χ1 = − z1 0 cdz 71 (1 + z)3 × 0.27 + 0.73 (302) これを計算すると、次の表のようになった. z 1 2 3 4 dcos [Mpc] 3.32 × 103 5.25 × 103 6.47 × 103 7.32 × 103 dlum [Mpc] 6.64 × 103 1.58 × 104 2.59 × 104 3.66 × 104 dang [Mpc] 1.66 × 103 1.75 × 103 1.62 × 103 1.46 × 103 dlum , dang に関しては、 dlum = (1 + z)dcos , dang = dcos 1+z (303) を用いた. また表を見ると、dcos は増加の割合が減少していくことが分かるから、問題 13、14 に一致しているといえる.さらに dlum , dang は、問題 52 で図示したものと一致し ていることが分かる. 117 57. 宇宙の年齢を求める.t = t1 から現在までの経過時間 LBT とすると、 t0 dt 1 da LBT = t0 − t1 = dt = da = da = da a˙ aH t1 a0 a0 ここで、1 + z = , dz = − 2 da を用いると、 a a z0 1 a 2 z0 a z1 dz LBT = − dz = − dz = (304) (1 + z)H z1 aH a0 z1 Ha0 0 とかける. 1. Ωm,0 = 0 かつΩΛ,0 = 0 の場合、 (294) 式より、 H 2 = H02 {−(1 + z)2 ΩK,0 } (305) だから、 z1 LBT = dz H0 (1 + z)2 i ΩK,0 0 1 = iH0 ΩK,0 1 = iH0 ΩK,0 − 1 1+z 1− z1 0 1 1 + z1 (306) LBT が物理的意味を持つためには ΩK,0 が純虚数でなければならない.よっ て ΩK,0 は負.(289) 式より、k = −1 でなければならない. 1 1 LBT = 1− c H 0 H0 a 0 1 + z1 a0 1 = 1− (307) c 1 + z1 2. Ωm,0 = 1 かつΩΛ,0 = 0 の場合、 (294) 式より、 H 2 = H02 {(1 + z)3 − (1 + z)2 ΩK,0 } z1 dz ∴ LBT = 0 (1 + z)2 H0 (1 + z) − Ωk,0 (308) 簡単のため k = 0 のときを考えると、 z1 LBT = dz 5 (1 + z) 2 H0 3 z1 1 2 = − (1 + z)− 2 0 H0 3 2 1 = 1− 3 3H0 (1 + z) 2 0 118 (309) となる. さらに上の 1,2 それぞれにおいて z1 → ∞ とすると、 1. Ωm,0 = 0 かつΩΛ,0 = 0 の場合、 LBT = a0 1 = c H0 (310) 2 1 3 H0 (311) 2. Ωm,0 = 1 かつΩΛ,0 = 0 の場合、 LBT = となる. 最後に Λ > 0 の場合についても LBT を求める.ただし、簡単のため k = 0 とす る.また、H0 = 71km s−1 Mpc−1 、Ωm,0 = 0.27, ΩΛ,0 = 0.73 とすると、LBT は、 z1 LBT = 0 dz (312) (1 + z)H0 (1 + z)3 × 0.27 + 0.73 これの数値計算を行うと、次の表のようになった. z 1 2 3 4 … 10 LBT × 10 [year] 0.767 1.02 1.14 1.20 … 100 1.356 したがって、 lim LBT = 136 億年 n→∞ と推定できる. 119 (313) 58. Friedmann 方程式から、我々の宇宙の将来の姿を考察する. 問題 53 の私の解答によると、宇宙の密度が臨界密度 ρc より大きければ宇宙は収 縮に転じ、小さければ膨張するとある.しかし、これは一般相対性理論用いずに Friedmann 方程式を解いたため、実際にはこうはならないと考えられる.一方、一 般相対性理論を考慮した問題 55 の解答は、k が −1, 0, 1 いずれの値を持っても、 膨張か収縮かどちらかしかないということを予言している.すなわち、先の問題 53 の解答のような、ビッグバン後、宇宙が膨張していても収縮に転じる可能性が あるなどという可能性はないことを、問題 55 の解答は示唆している. さらに、現在の観測結果によると、宇宙は時間に対して指数関数的に膨張して いる8 .ということは、将来にわたっても膨張を続けるということである.しかも、 時間に対して指数関数的に膨張しているということは、k の値が 0 であるというこ とを意味する.つまり、我々の宇宙は閉じているわけでもなく、開いているわけで もない、平坦な宇宙だという結論が得られる. 8 私が高校生のときに見た NHK スペシャルではこのようにいっていた気がする.ただ、記憶が さだかでない…. 120 関連図書 [1] 天文の位置計算<増補版> 長沢工 著 (地人書館) [2] 銀河系 宮本昌典 著 (恒星社厚生閣) [3] 2006 年東京大学大学院入試問題 121
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