6.総合分科会 (1)総合的な学習の時間 ②ふれあう力 ①主体性 ③表現力

6.総合分科会
(1)総合的な学習の時間
①ねらい
総合分科会では、学習指導要領に示されている次の二つをねらいとした。
(1) 自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題
を解決する資質や能力を育てること。
(2) 学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探求活動に主体的・創造
的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにするこ
と。
上記の内容を小・中学校で連携するために、以下の3つの力を「総合的な学
習の時間」を通して育てる能力・資質として設定した。
①主体性
②ふれあう力
③表現力
課題を発見し、その
自然や人と積極的にか
自らの考えをよりよく
解決に主体的に取り組
かわっていこうとする
表現する能力
もうとする態度
姿勢
②研究の経過
14年度は 、「交流分科会」としてスタートし、各教科・領域以外の学習活
動や学校行事・体験学習などを中心に交流を図った。
15年度は、新たなメンバーのもと「総合分科会」としてスタートした。小
・中学校相互の指導計画を基に、9年間で育てたい資質や能力を話し合い、具
体的な交流を行った。その中で、特に、福祉教育に重点を置き、研究を進めて
きた。王子小学校ではJRC(青少年赤十字)に加盟し、助け合い活動を進め
る中で、総合的な学習の時間でも福祉教育に力を入れている。また、王子中学
校も、福祉体験などを行ってきた実績があり、福祉教育を連携させることは、
両者の学びをさらに充実させるものとなった。
日時
場
所
[14 年度] 外務省員の小学校派遣事業で、小4・6の児童と、中1の生徒
11 月 29 日 がカメルーン国について総合で合同学習
1 月 18 日 中2総合「職場体験報告会」に、小6の児童が参加
2 月 18 日 小4・中1の児童・生徒が総合で「茶道、うどんづくり、そば
づくり、コサージュづくり、紙すき体験」(選択)を合同学習
[15 年度]
10 月 23 日 中2総合「職場体験報告会」に、小6の児童が参加
12 月 18 日 小4の児童の福祉体験に、中1の生徒が補助、助言。
2 月 13 日 中1生徒の福祉体験発表会を小4児童が見学し、自分たちのま
とめや発表に生かす。
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③研究の実際
1)カメルーン国の暮らしについて知ろう!
・ねらい
・
講師の話を聞き、カメルーン国への関心をもつ。
・
カメルーン国の生活の様子を知り、自分の国との違いに気付き、相互の
文化を尊重する態度を養う。
・日時
平成14年11月29日(金)
10:45∼12:00
・講師
元在カメルーン日本大使館書記官
・場所
王子中学校体育館
・学年
王子小学校4年生・6年生、王子中学校1年生
・当日の動き
10:30
王子小学校児童が王子中学校体育館へ移動
10:45
はじめのことば、講師の紹介。
増田是人・増田直子 様 夫妻
10:50∼12:00
・日本語、英語、フランス語の3カ国語によるあいさつ。
・カメルーンの生活を紹介したビデオ
・外務省の仕事、カメルーンやフランス滞在時の話。
・カメルーンの楽器、民芸品などの紹介。
・質疑応答
・評価とまとめ
・
講師の話を聞き、カメルーン国への関心をもつことができたか。
・
カメルーン国の生活の様子を知り、自分の国との違いに気付き、相互の
文化を尊重しようとする気持ちをもつことができたか。
・児童・生徒の
・
事後に増田さんへのお礼の手紙を兼ねて感想を書く。
・
カメルーン国の子どもたちは、貧しいけれどもとても楽しそうに暮らし
感想
ていた。それは心が豊かだからなのだと思う。
・
増田さんに外務省での仕事のことを色々と聞くことができてよかった。
将来、自分も人のためになるような仕事をしたいと思った。
・
カメルーン国の民芸品や楽器などを見せてもらった。初めて見る物だっ
たので、興味深かった。
・
自分は学校で当たり前のように勉強しているけれど、勉強ができるとい
うことがカメルーン国の子どもたちにとって、どれほどうれしいのかが分
かった。
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2)合同体験学習 (茶道、うどんづくり、そばづくり、コサージュづくり、紙すき体験)
・ねらい
・
普段の授業では学べない体験を通して、児童・生徒の学ぶ意欲を高める
とともに、様々なことに興味・関心をもたせる。
・
児童・生徒が一緒に学び合う場面を設定することで、相互に教え合いな
がら学ぶことの大切さを理解させる。
・日時
平成15年2月18日(火)
・講師・場所
13:30∼15:00
講師
浅川宗雅様
場所
人数
王子小 ランチルーム
20
①茶道体験
榎本宗佳様
②うどんづくり体験
坂場正則様
王子小家庭科室
35
③そばづくり体験
田中信夫様
王子中調理室
35
④コサージュづくり
王子中PTA(5名)
王子中図書室
40
紙の博物館職員
王子紙の博物館
20
体験
⑤紙すき体験
・学年
・当日の動き
王子小学校4年生・王子中学校1年生
<例:茶道>
13:30
活動場所へ移動
本時の活動について確認する。
13:35
講師を紹介する
13:40
茶道のお点前の見学をし、茶道の心などを話していただき、茶
道の雰囲気をつかむ。
13:50
お茶のいただき方の作法を教えてもらい、お菓子とお茶をいた
だく。
・評価とまとめ ・
・
14;10
お茶の点て方の作法を教えていただき、点ててみる。
14:40
感想を書き、発表する。
体験的な活動に興味・関心をもち、取り組むことができたか。
学年や年齢の枠を超えて、互いに学び合ったり、教え合ったりすることが
できたか。
・児童・生徒の ・
感想
初めて、茶道を体験した。静かな雰囲気でとても緊張した。小学生が意外
と上手にお茶を点てていて驚いた。
・
うどんをこねるときに、力が足りなくてなかなかうまくできなくて困った。
そうしたら中学生が手伝ってくれた。とっ
てもおいしくできた。
・
中学校の先生が紙の博物館に連れて行っ
てくれた。紙すきは難しかったけれど、博
物館の人が色々とアドバイスしてくれて、
とってもすてきなはがきができあがりまし
た。
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3)職場体験学習発表会
・ねらい
・職場体験学習を通して学んだことをまとめ、発表する。
・他の人の体験発表を聞き、働くことの意義や苦労を学び、職場に対する見方
や考え方を広めたり深めたりする。
・中学生の体験発表を聞いて、発表の仕方について学ぶ。
・日時
平成15年10月23日(木)10:25∼12:20
・場所
王子中学校体育館、1・2年生教室、特別教室他
・学年
王子中学校1年生・2年生、王子小学校6年生
・当日の動き
〈発表形式はポスターセッション〉
10:25∼会場準備
10:40∼中学校1年生、小学校6年生移動
10:50∼発表1回目
11:05∼中学校1年生、小学校6年生移動
11:15∼発表2回目
11:30∼中学校1年生、小学校6年生移動
11:40∼発表3回目
11:55∼後片づけ
12:10∼反省、まとめ
・評価とまとめ
・職場体験学習の成果が十分にまとめられており、印象的な発表ができたか。
・中学校2年生の発表を聞いて、発表の仕方の工夫が理解できたか。
・児童・生徒の
感想
・すごく緊張しましたが、小学生がとても真剣に聞いてくれていたので嬉しか
った。
・職場体験は本当にいい体験だったという気持ちを伝えられたか少し不安でし
た。
・中学生は怖いと思っていましたが、今日の発表を観てすごいという思いに変
わりました。自分もこんな中学生になりたいと思いました。
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4)福祉・ボランティア体験学習
・設定理由
『すべての人にやさしい地域づくり』 −福祉・ボランティアとの出会い−
王子小学校では、JRCに加盟し、様々な活動を行っている。また 、「総合
的な学習の時間」において、福祉教育も行っている。王子中の場合、通学区域
外からも多くの小学校から生徒が入学してくるが、王子小の教育活動を中学校
でもつなげていきたいと考え、中学校1年生の「総合的な学習の時間」に福祉
・ボランティア体験学習を設定した。
・ねらい
・高齢者や障害のある人々に対する正しい理解や認識をもたせる。
・高齢者・障害のある人やそれを支える人たちの思いにふれ、高齢社会の一員
として自分のできることを見出し、相手の立場を十分に理解・尊重し、思い
やる心を育てる。
・中学生(小学生)ができる福祉・ボランティア活動について学ばせる。
・体験・まとめ・発表を通し、協力しながら一つのことを成し遂げる力を養う。
また、自他との学び合いの中で、自己の生き方を考える姿勢をつくる一助と
する。
・日
時
平成15年10月下旬∼平成16年2月の「総合的な学習の時間」
・学
年
王子中学校
・内
容
・経
過
1年生
[発表会]12月 王子小学校4年生を招いた体験発表会
2月 学級での各コース別発表会
① 福祉・ボランティアの意味を学ぶ。(講師の講義を含む)〈2時間〉
② 各学級、6つの体験活動コースに分かれる。各コース毎に外部講師を招き、
講話、疑似体験、技術の習得等を行う。これらを通して、相手の心情や立場
を理解するとともに、自分たちのできることを見出し、これからの生活の中
でいかにかかわっていくかを学ばせる。〈14時間〉
[6つの体験活動コース]
・視覚障害を理解しよう
・聴覚障害を理解しよう
・車いす利用者を理解しよう
・高齢者を理解しよう
・募金活動を理解しよう
・中学生ができる災害援助を理解しよう
③ ①②のまとめとして、小4の児童を招き、体験を交えた発表会を開く。
〈2時間〉1 2月実施
④ 自分たちの学級で、各コースの報告会を行う。
〈2時間〉1 2月実施
本校の生徒にとって、本格的に福祉・ボランティア体験学習を行うことは今
回が初めてである。疑似体験、外部講師の方からご自身の体験に基いた話を伺
い、現状を知ること、技術指導を受けたことなどは、生徒にとって新鮮なもの
であった。また、自分たちの学んだことを小学生に体験させて発表するという
機会を得たことは、活動全般に活気をもたせることができた。いかに伝えてい
くか、真剣に検討し合う生徒の姿が印象的であった。さらに、コース別に集ま
ったメンバーが各学級に戻って発表し合うことは、他のコースのことを学び、
視野を広げる機会となった。いずれにしても、発表することは、学んだことを
理解し、深めるための大切な手段である。
この活動を通して、相手の立場や心情を理解し、自分たちがかかわっていく
ことができる福祉・ボランティア活動の基本的な姿勢が育成されたと考える。
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④成果と課題
・成果
総合分科会では、国際理解教育に関する小学校の実践への中学生の参加、地
域の人材を活用した体験学習、中学校の職場体験学習の報告会への小学生の参
加など、福祉教育を中心とした連携の活動を行ってきた。例年ならば小学校と
中学校が個々に取り組んでいたであろう実践に、小・中学校の両校が連携して
参加したことは、意義あることであった。
総合分科会における交流型授業は、全体的に好ましい緊張感の中で行われた。
また、授業のなかでは積極的な交流の場面が多く、小学生と中学生が相互にふ
れあおうとする積極的な姿を見ることができた。小学生は、常に、中学生のよ
り高い意識を学び、中学生の助言や援助を受け、積極的に授業に取り組むこと
ができた。また、中学生は、小学生のよきアドバイザーとして、自分が上手に
できた部分をアドバイスしたりするなかで、すでに身に付けている知識を教え
ることの大変さや、他者の目線に立って物事を考えようとする優しさなどを学
ぶことができた。
本年度は、小・中学校の総合的な学習の時間における指導計画をさらに系統
的なものにするために、両校の指導計画を見直し、共通テーマを「福祉教育」
に設定した。福祉教育を通じての交流の授業を企画するなかで、発達段階に応
じた課題意識のもたせ方について考え、それを実践することができた。
・課題
地域の特性や、児童・生徒の育てたい力を検討したうえで、小・中学校の「総
合的な学習の時間」における指導計画を、さらに系統的なものにしていくこと
が今後の課題である。小学校での学習を、興味・関心を高める導入として、中
学校では、さらに深化させ、レベルの高い問題意識や綿密な調査などに結び付
けていきたい。しかし 、「総合的な学習の時間」における指導計画は、各教科
等との関連を考えながらも固定化されたものではなく、児童・生徒の興味や関
心の変化などに応じることのできる弾力的なものでなければならないと考える。
小・中学校の相互のねらいを話し合い、より学びを深められる指導計画を、今
後も検討していきたい。また、成長を見取る評価においても、小・中学校の連
携を生かしたものとしてどのようなものが考えられるか一層の検討が必要であ
る。
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