トマト農家で発生した 葉先枯れ症の原因と対策

トマト農家で発生した
葉先枯れ症の原因と対策
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 野菜生産技術研究領域 上席研究員
中野 明正
岐阜県中山間農業研究所中津川支所
熊崎 晃
あきら
くま ざき
冬 季 の 施 設 生 産 に お い て は 、灰 色 か
びによる収量減少が深刻な問題になっ
す 。そ の た め 葉 先 枯 れ 症 を 起 こ し た 場
ど 腐 生 的 に 増 殖 し 、植 物 体 に 侵 入 し ま
で、散りかけた花弁、壊死した組織な
培 す る 圃 場 で 、葉 先 枯 れ を 発 症 し て い
ま せ ん 。本 研 究 で は 、ト マ ト 農 家 が 栽
農業現場から明らかにした事例はあり
と果実成分などの関連について実際の
し
て い ま す 。換 気 お よ び 暖 房 を 適 切 に 行
合 、そ こ が 灰 色 か び の 増 殖 ・ 侵 入 の 場
る株から原因を明らかにすることを試
え
う こ と に よ り 、加 湿 に な ら な い よ う に
となり、罹病する可能性が高まります
み ま し た 。得 ら れ た 知 見 と 最 近 の 研 究
ほ
施 設 内 の 湿 度 を 適 切 に 保 て れ ば 、そ の
(写真1)
。
〜実験から得られる考察〜
カリウムの働き
カリウムは植物に対して基本的で重
要 な 作 用 を す る 元 素 で 、チ ッ ソ 、リ ン
と と も に 多 量 に 必 要 と さ れ 、吸 収 抑 制
つの機能がありま
に よ り 生 産 低 下 が 生 じ ま す 。カ リ ウ ム
に は 主 に 、以 下 の
4
り
発生も低く抑えることは可能だと考え
事 例 も 含 め て 、ト マ ト 葉 先 枯 れ 症 の 対
葉先枯れ症
発生株の調査
カリウム低下の要因は?
壌を採取し調査しました
(次頁第1表)。
そ の 近 傍 の 果 実 、そ し て そ の 株 元 の 土
もあり)。 それぞれの株について、葉、
定 し ま し た( 障 害 が 認 め ら れ な い 農 家
なる葉先枯れ症状を示すトマト株を選
れ 症 が 生 じ て い る ト マ ト を 中 心 に 、異
愛知県大府市でトマトを栽培する7
件の農家圃場で(次頁写真2)、葉先枯
1
2
す(渡辺2009)。
46 2012 タキイ最前線 秋号
られます 。
( 糸状菌 )
←
障害程度の異なる葉
先枯れを起こしたト
マトの葉。左が障害
程度4の葉、右が障
害程度1の葉。
策について解説しましょう 。
灰色かびは
写真 1
一 般 に 葉 先 枯 れ は 、カ リ ウ ム 欠 乏 に
よ り 生 じ る と い わ れ ま す が 、土 壌 条 件
↑病害なく健康に栽培されたトマト圃場。
あき まさ
なか の
a
e
r
e
n
i
c
s
i
t
y
r
t
o
B
第1表 調査の材料と分析方法
××
安定化させる 。
① 酵 素 へ の 作 用: 酵 素 を 活 性 化 し た り 、
性が高いようです 。
を酵素反応
に安定化する 。
安定化作用:細胞内
~
pH
必要な浸透圧の維持を担う 。
断材料になります(渡辺、2009)。
と仮
耕土深を
2
)
定すると、交換性カリウム(K O
㎏
に 必 要 な 電 位 を 維 持 す る 。例 え ば 、糖
a当たり
う 従 来 の 報 告 を 支 持 し ま し た 。つ ま り 、
リウム欠乏により引き起こされるとい
葉 先 枯 れ 症 の 障 害 程 度 と 、そ の 葉 の
カ リ ウ ム 濃 度 の 関 係 は 、こ の 症 状 が カ
葉先枯れ症の葉と果実、
土壌の
カリウムイオン濃度(第2表)
りもカリウム濃度は低くてよいようで
こ と が で き る の で 、実 際 に は こ の 値 よ
れない粘土粒子のカリウムも吸収する
生 育 し ま す 。作 物 は 土 壌 分 析 値 に 現 わ
相 当 し ま す 。土 壌 に 交 換 性 カ リ ウ ム が
の カ リ ウ ム に 相 当 し ま す 。耕 土 深 が
障害の程度が高くなるほど葉のカリウ
す 。基 本 的 に は 、チ ッ ソ を 基 準 に そ の
㎏のカリウム施肥量に
ム濃度は低下する傾向にありました 。
ウ ム 施 用 量 と さ れ て い ま す 。土 壌 中 に
実 際 、今 回 調 査 し た 農 家 の 土 壌 で は
も み 殻 が 多 く 含 ま れ て い ま し た 。こ れ
らはカリウムの供給源になっていると
頁第3表)。 こ
考 え ら れ ま す が 、必 ず し も そ の よ う な
けではありません(
のことからも施用量を増やすという一
24
同量から
・
倍くらいが適切なカリ
5
カリウムの吸収抑制が
トマトの生産性に与える
影響のメカニズム
ん減肥可能です 。
1
こ の 程 度 あ れ ば 、ト マ ト は ほ ぼ 正 常 に
㎝であれば 、
ま た 、カ リ ウ ム の 吸 収 抑 制 は 葉 先 枯
れ 症 を 引 き 起 こ し 、果 実 の 糖 度 と ク エ
農家圃場で
の土壌採取
は、生産に
影響を与え
ないように
配慮。
葉先枯れ症と土壌中の
カリウム
土壌の分析
・株元から約15㎝離れた部分の土壌を深さ15㎝まで撹拌して採取。
・生土1に対して5の蒸留水を添加し、30分振とうした後EC(電
気伝導度)をECメーター、pHをpHメーターで測定。
・遠心分離した上澄みのアニオン(陰イオン)およびカチオン(陽
イオン)を分析。
・アニオンはイオンクロマトグラフ(陰イオン分析システム)で、
カチオンはICP発光分析装置で分析。
農家の葉先枯れ症の障害程度が低いわ
カリウムが多量残留していればもちろ
電位差は必須 。
㎎/100gの値は 、
10
類が細胞を出入りする際に細胞の膜の
㎝ 、土 壌 の 仮 比 重 を
④ 膜 電 位 形 成: 物 質 の 細 胞 へ の 出 入 り
析値を施肥量に換算するのも診断の判
で す 。お お ま か な 計 算 で す が 、土 壌 分
し か し 、あ る 程 度 適 切 な 範 囲 に カ リ
ウ ム を 施 用 す る こ と は 、基 本 的 に 必 要
②
に適する
8
③ 浸 透 圧 の 維 持: 細 胞 が 拡 大 す る の に
7
ン酸濃度にも影響を与えています 。
30
10
8
1
8
今回の研究で得られた結果を 頁第
1図にまとめました。原因は明らかで
症 を 発 生 し た 植 物 体 は 、カ リ ウ ム の 吸
は な い で す が 、今 回 の 調 査 で 葉 先 枯 れ
49
5
葉の半分以上に枯れまたはその影響
が認められる。
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×××
×
×
×
×××× ×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
4
先端から約1/2の部分に枯れまた
はその影響が認められる。
pH
・果実はすり下ろした後、ろ紙でろ過。
・ろ液の糖度は糖度計で、酸度は酸度計で測定。
・ろ液に含まれる無機イオン濃度をICP発光分析装置で測定。
義的な対症療法では解決できない可能
3
×××
×
×
×
××
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
××
×
×
×
×
×
3
×
×
×
×
×
×
×
先端から約1/4の部分に枯れまた
はその影響が認められる。
×
×
×
×
×
2
先端から約1/8の部分に枯れまた
はその影響が認められる。
葉の分析
わずかに枯れが認められる。
×
×
×
×
×
×
×
×
×
写真 2
分類判定を
行った1枚
の葉を80℃
で4日間乾
燥させた後、
硝酸分解を
行いICP
発酵分析装
置で測定。
×
××
×
×
1
×
××
×
×
葉先枯れ症が認められない。
↑愛知県大府市のトマトハウス。
果実の分析
49
×
×
×
×
0
備 考
障害例
方 法
葉先枯れ症状の進行程度によって6段階に分類。
段階分類
障害程度
47
2012 タキイ最前線 秋号 トマト農家で発生した
葉先枯れ症の原因と対策
第2表 葉先枯れ症と葉、果実品質、土壌との関係
図
結果
※
葉のカリウム存在量比
︵ K
葉先枯れ症の程
度と葉のカリウ
ム存在比
0.5
0.45
0.4
0.35
0.3
カリウムの存
在比が低下す
ると障害程度
も大きい。
0.25
0.2
0.15
ン
チ
オ
カ
総
0.1
0.05
0
-1
︶
0
1
2
3
4
5
葉先枯れ症の程度
6
6
果実のカリウム濃度
︵
葉先枯れ症の程
度と果実のカリ
ウム濃度
5
4
障害の程度が
大きい葉に近
い果実のカリ
ウム濃度は低
くなる傾向。
3
2
g
㎎
-1
FW︶
1
0
0
1
2
3
4
5
葉先枯れ症の程度
6
9
糖度
︵ Brix
︶
8
障害程度が大
きいほど、果
実糖度が低下。
カリウム欠乏は光合成の活性を低下
させるとともに、葉先枯れ症を発生
させ、それによる葉の褐変は、炭水
化物の生産に有効な葉面積を減少さ
せ、個体の同化速度を低下させる。
これにより果実への糖の蓄積も低下
した可能性がある。
障害程度が大
きいほど、ク
エン酸濃度が
低下。
細胞中の電気的バランスをとるため
にもカリウムは重要だが、果実への
カリウムの流入量が減少すると、糖
合成関連の酵素活性が低下する。さ
らに、電気的中性を維持するためマ
イナスの荷電をもつクエン酸を合成
する活性も低下し、濃度の低い果実
になったと考えられる。
果実や葉で認
められたほど
明確ではない
が、土壌中の
カリウム濃度
の割合が低い
と葉先枯れ症
が誘発される。
土壌のカリウム濃度が葉先枯れ症と
直接高い相関でないのは、根の分布
や土壌水分量、着果の程度などほか
の要因による影響が大きいためと考
えられる。
7
6
5
4
3
2
1
0
0
1
2
3
4
5
葉先枯れ症の程度
6
70
-1
クエン酸濃度
︵ mmol L
︶
60
50
40
30
20
10
0
土壌抽出液の存在モル比
︵ K
葉先枯れ症の程
度と土壌溶液中
の総カオチンに
対するカリウム
の存在モル比
0
1
2
3
4
5
葉先枯れ症の程度
6
0.2
0.18
0.16
0.14
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
ン
チ
オ
カ
総
0.02
-1
︶
0
0
1
2
3
4
5
葉先枯れ症の程度
※図の葉先枯れ症の程度は、値が大きいほど障害が大きい。
48 2012 タキイ最前線 秋号
葉と果実は同様の傾向。葉先枯れ症
が生じても果実には影響がない可能
性も考えられるが、葉および果実双
方のカリウム濃度は低下し、高い相
関値だった(R²=0.5)
。葉と果実の
両方にカリウム欠乏が生じていると
いうことは、今回対象とした圃場の
場合、果実へ流入・転流するカリウ
ムの葉との競合というより、根から
の吸収量が不足していたことを示す。
10
葉先枯れ症の程
度と糖度
葉先枯れ症の程
度と果実のクエ
ン酸濃度
考察
6
根の活性を高める必要があるでしょう 。
抑 制 さ せ る 場 合 は 、さ ら に 別 の 手 法 で
度 も 低 い 傾 向 に あ り ま し た 。こ の よ う
③施肥の適正化
が 双 方 低 下 し て 、土 壌 中 の カ リ ウ ム 濃
肥 に よ り そ の 症 状 は 改 善 さ れ ま す 。し
な 場 合 、植 物 体 自 体 に カ リ ウ ム を 供 給
薄 く な る よ う な 欠 乏 症 状 の 場 合 は 、追
す 。壊 死 し た 葉 お よ び そ の 周 辺 の 細 胞
か し カ リ ウ ム 欠 乏 は 、一 般 に 葉 の 先 端
収が抑制されていたことが考えられま
で は 、上 記 の 基 本 的 な 生 理 機 能 が 維 持
し や す く さ せ る 必 要 が あ り ま す 。葉 先
ま す 。基 本 的 に は 土 壌 中 の カ リ ウ ム を
の 壊 死 と し て 観 察 さ れ る た め 、た と え
透明ポリマルチ被覆により地温を高め 、
有 効 に 吸 収 さ せ る こ と で す 。カ リ ウ ム
さ れ ず 、そ れ に よ り 光 合 成 速 度 が 低 下
の障害が治癒することはありません 。
カリウムの吸収を促進させることを述
欠 乏 の 回 避 に は 、カ リ ウ ム が 多 く 含 ま
さ ら に 岡 が 指 摘 す る よ う に 、硫 酸 カ
リウムによる追肥が有効な場合があり
少 し 、果 実 品 質 は 低 下 し た 可 能 性 が あ
カ リ ウ ム を 追 肥 す る 場 合 、ま ず は 発 症
べ て い ま す 。特 に 低 温 期 が 果 実 肥 大 期
れ る 堆 肥 の 施 用 も 推 奨 で き ま す が 、カ
枯 れ 症 の 対 策 と し て 岡( 2 0 0 3 )は
り ま す 。場 合 に よ っ て は 、葉 先 枯 れ 症
し た 葉 を 適 切 に 除 去 し 、発 症 葉 か ら の
に当たるような作型の場合はこのよう
直後にカリウムを施用してもその部分
は 灰 色 か び 病 を 誘 発 す る た め 、さ ら に
病原菌侵入を回避する必要があります 。
し ま し た 。さ ら に は シ ョ 糖 の 転 流 が 減
収量の低下を引き起こすでしょう 。
0.50
7.2
0.41
1
7.2
0.49
1
6.9
0.37
7.2
0.62
6.7
0.33
1
6.8
0.41
0
6.8
0.68
6.4
0.86
6.3
1.11
5.9
1.29
6.7
0.59
6.5
1.05
2
7.0
0.92
3
6.8
0.57
6.6
1.45
7.0
0.65
6.9
0.52
2
0
1
0
2
0
1
0
2
1
1
2
3
2
4
2
5
3
もみ殻を多く含む
1
G
4
赤黄色、有機物に富む
1
F
3
赤黄色、やや土壌が団結
0
E
2
やや灰色、有機物残さあり
1
D
4
赤黄色、やや土壌が団結
4
発生のメカニズム
ルシウムなどほかの塩基も多いため 、
6.7
2
3
やや砂質、有機物残さ
(敷きわらの断片)あり
2
C
対策
土壌中からのKの吸収阻害
な 管 理 が 重 要 で す 。調 査 し た 大 府 市 の
1.19
B
②マルチなどによる
根圏環境の改善
②マルチによる根圏環境の改善
0.45
6.3
5
葉へのKの供給減少
③適切なK資材・肥料の
供給(堆肥、くん炭、
硫酸カリウム、ケイ酸
カリウムなど)
図)
光合成速度の低下
葉先枯れ症への対策(第
④葉面散布
カリウムを相対的に多く施用する方が
果実へのKの供給減少
農家では多くの農家がこのような対策
⑤適切なタイミングで
の供給(栄養診断)
①葉先枯れ葉の除去
6.0
1
1
葉先枯れ症
よ い で し ょ う 。例 え ば も み 殻 く ん 炭 を
0.60
2
× ×× ①葉先枯れ
××
×
×
葉の除去
を 行 っ て い る の で 、こ の 地 域 で 発 生 を
灰色かび病の誘発
今回の研究で障害葉が生じた植物体
は 、葉 そ の も の と 果 実 の カ リ ウ ム 濃 度
6.3
0
やや灰色、もみ殻あり
1
A
収量の低下
糖度・酸度の低下
EC
(dS/m)
チ ッ ソ 欠 乏 や 硫 黄 欠 乏 な ど 、葉 色 が
第1図 トマトの葉先枯れ症が生じるメカニズムとその対策
1
pH
葉先枯れの
障害程度
作土の特徴
同一農家内
サンプルNo
農家名
第3表 個別農家における採取したトマトの葉先枯れ症の発生状況と
作土の状態
49
2012 タキイ最前線 秋号 トマト農家で発生した
葉先枯れ症の原因と対策
第2図 カリウムの施用法が葉先枯れ発生数におよぼす影響(熊崎)
バ ラ ン ス を と り 、土 壌 中 の カ リ ウ ム 濃
施 用 す る こ と で 、ほ か の カ チ オ ン と の
(渡辺、2002)。
どが低下するためと考えられています
施 用 頻 度 、施 用 濃 度 を 検 討 し た と こ ろ 、
が 認 め ら れ ま し た 。さ ら に 葉 面 散 布 の
可 能 で す 。紹 介 し た 知 見 な ど を 参 考 に 、
を 低 下 さ せ 、生 産 性 を 維 持 す る こ と は
ませんでした(第2図)。 500倍の
面散布の効果については否定的な結果
す(渡辺、2009)。 施肥は施用基
のカリウム施用はやはり注意が必要で
ト マ ト の カ リ ウ ム 要 求 量 は 、着 果 に
と も な っ て 急 増 加 し ま す 。そ の た め 、
⑤追肥のタイミング
ります 。
準 に し た が っ て 、欠 乏 し な い よ う 適 切
布 を す る 必 要 が あ り ま す 。当 然 カ リ ウ
その時を外さないように追肥や葉面散
④葉面散布
自体を低下させ病害を誘発するので 、
に管理することが基本です 。
葉先枯れ症の発生しやすい環境で栽
エイト
培したトマト(「桃太郎8」)を用いて、
植物の状態を見ながら栄養診断をしつ
た 。そ の 結 果 、液 肥 や 元 肥( 緩 効 性 肥
な る で し ょ う 。つ ま り 、一 つ の 手 法 で 、
ト マ ト の 葉 先 枯 れ 症 に つ い て は 、圃
場 、作 型 、品 種 に よ っ て も 対 処 法 が 異
管理技術を組み合わせた防除
重要です 。
ム の や り す ぎ は 、葉 や 根 を 傷 め て 生 育
硫酸カリウムの葉面散布効果を検証し
つ 、少 量 ず つ 小 ま め に 対 処 す る こ と が
%減肥料と
ました(熊崎、2010)。 通常の肥
料 に 比 べ 、カ リ ウ ム の み
して養液土耕でカリウムを与えた区を
料 )で は 多 く の カ リ ウ ム を 施 用 し て い
葉先枯れ症をピタッと抑えることは今
対照としてさまざまな処理を行いまし
ても効果的な葉先枯れ症の抑制に寄与
のところできないというのが結論です 。
・岸國平、我孫子和雄著「トマト灰色かび病」
『野菜病害の見分け方』全国農村教育協会
・岡修一著「トマトの半促成栽培における葉先枯
れ症対策」園芸新知識2003年₉月号
・山口和彦、前野利幸著「桃太郎トマトの葉先枯
れ症軽減対策」園芸新知識2003年₄月号
・熊崎晃、川上暢喜、浅野雄二、鈴木隆志著「施
肥方法の違いがトマト葉先枯れ症抑制におよぼ
す効果」園芸学研究 巻別冊1
・渡辺和彦著「カリの欠乏と過剰症」『野菜の要
素欠乏・過剰症』農文協
・渡辺和彦著「カリウム」『わかりやすい園芸作
物の栄養診断の手引き』誠文堂新光社
・渡辺和彦著「カリウムの欠乏と過剰」『農業技
術大系 土壌施肥編(第₄巻 土壌診断・生育
診断)』農文協
参考文献
ばと思います 。
現場ごとの技術を確立していただけれ
週に
す が 、そ の 効 果 は 作 物 生 育 に 効 果 が 認
硫酸カリウムであれば全面に散布しな
㎝の部位に限って散布し
度では十分な効果が認められ
ま た 、カ リ ウ ム 自 体 に も 、病 害 抵 抗
性を高める効果があるといわれていま
め ら れ る 標 準 施 用 量 ま で で す( 渡 辺 ら 、
く て も 、夏 秋 栽 培 で 葉 先 枯 れ が 発 生 し
8月7日
7月31日
7月24日
7月17日
日に
す 。カ リ ウ ム を あ る 程 度 増 肥 す る こ と
2003)。 すべての病原菌に対して
回では効果が認められましたが 、
度を高く維持することも考えられます 。
カリウム施用によって作物が罹病し
にくくなることを示す研究は多いので
で 、① リ グ ニ ン な ど の 繊 維 質 が 増 加 し 、
やすい上部
葉面
(2000倍)回/7日
2
倍量以上
抑制的に作用するわけではないようで 、
葉面
(1000倍)回/7日
4
が 助 長 さ れ ま す 。チ ッ ソ の
物 理 的 に 構 造 が 強 化 さ れ る こ と と 、②
葉面
(500倍)回/7日
6
50
せ ず 、カ リ ウ ム の 経 根 吸 収 に よ る 改 善
50 2012 タキイ最前線 秋号
た だ け で も 効 果 が 認 め ら れ ま し た 。葉
葉面
(500倍)
1回/7日
8
1
し か し 、い く つ か の 基 本 的 な 管 理 を 適
タキイ最前線2008年秋号~2010年秋号まで、中野先生が連載されていた「現
代有機農業論」をベースにした単行本です。有機農業をさまざまな視点か
ら解説されています。
(タキイでの本書の取り扱いはございません)
カリウム多量施用で発生が助長される
葉面
(500倍)
1回/10日
10
10
著 :中野 明正
出版:誠文堂新光社
定価:1890円(税込)
病原菌に利用される葉中のアミノ酸な
対照
(80%カリウム養液土耕)
12
2
は即効性が認められませんでした 。
~未来の循環型農業~
も あ り 、適 切 な 濃 度 を 高 頻 度 で 、部 位
14
10
切 に 組 み 合 わ せ る こ と に よ り 、発 症 率
「インテグレーテッド有機農業論」
ら、200
場合もあります( Datnoff
7)。 例えば、ブロッコリーやキャベ
葉面上部
(500倍)回/7日
0
7月10日
80
これに対して葉面散布で顕著な効果
中野明正先生の新刊書籍
を絞って散布することがポイントにな
16
葉先枯れ発生数
︵枚/株︶
新 刊 紹 介
2
ツのべと病はカリウム多量施用で発病
18