岩井秀人(ハイバイ) 『われわれのモロモロ

福島県立いわき総合高校 総合学科第10期生 卒業公演
『われわれのモロモロ
~いわき総合高校編~ 』
「自意識過剰」
「日常」
「あたしの居場所」
「弟の指」
「はじめての手紙」
「今があるのは…」
「元カレ」
「むこうと、
ここ」
東日本大震災余震で、校舎の
半分が全壊と診断され、仮設
校舎での授業を余儀なくされ
た、総合学科 芸術・表現系列
〈演劇〉第10期生の3年生9人
[顔のモロモロ]
東京都・小金井市出身。2003年ハイバイを結成。2007年より
青年団演出部に所属。
東京であり東京でない小金井の持つ「大衆の流行やムーブメ
ントを憧れつつ引いて眺める目線」
を武器に、家族、
引きこもり、
集団と個人、個人の自意識の渦、等々についての描写を続け
ている注目の集団ハイバイの主宰。2012年NHK BSプレミアム
ドラマ
「生むと生まれるとそれからのこと」
で第30回向田邦子賞、
2013年「ある女」で第57回岸田戯曲賞を受賞。代表作「ヒッ
キー・カンクーントルネード」
「おねがい放課後」
「て」
など。
「 自分の身に起きたことを/自分で台本
を 書いて / 自 分が出 て / 自 分 で 演 出 を す
る 」という 演 劇 を 創 作 発 表 する﹃ わ れ わ れ
のモロモロ﹄。 月末から約 个月半の授業
を受け持ったハイバイの岩井秀人さん。生徒
達に正面から対峙された姿はとても本気の
大人でした。
1
徒 達だけで
分 くらいで創 作してるらしいんですけ
た。観てて、
ホント鬱陶しい
︵笑︶
。通常の授業中に、生
うのがずーっとまとわりついてる。﹂
っていう作 品でし
んでても暑くて、
っていう﹁ 汗 ﹂とか
﹁ 気だるさ﹂
ってい
車に乗っても暑くて、学校に着いても暑くて、皆と遊
拶なんですけど、僕が見たのは、﹁とにかく暑くて、電
いうのを見せてくれるんです。それは演劇を使った挨
生徒は、品が良いなぁっていう感じですね。老成した
若い人たちが多いなと思いました。最初に︽ 挨拶 ︾
って
いわき総合高校生徒/
いしい先生の第一印象
6
を適切にやっているんだなって感じでした。あと﹁しゃ
ど、﹁こういうことやって遊んでます!﹂
って見せること
10
﹁自分が感じたことを自分で表現して、誰かと共有
す。
なったなと、
そういう経験の方がいいかな?と思ってま
たら鍛えられた気がするんです。今考えると一番力に
リエイティブをしなくちゃいけない、
っていうことに、
や
思いで必死に作った結果、完全にリミットオーバーのク
ど﹁もう絶対あいつに何か言われたくない!﹂
っていう
先生っていうのがいて、その人はホントに嫌いだったけ
て﹂
って言われ、出来上がったものに文句を言い続ける
先 生に恨みを持ってるんです。
﹁ 自 分たちで作って来
﹁ 生徒達は皆、
あんまり自分を追い込
みちこ先生は
めない﹂
って言っているんです。実は僕 、大 学のときの
悩んでます。
何も言わないとちょっと鬼だなと思いながら⋮そこは
てるんだけど、
どうしても言っちゃうんです。ホントに
演技には具体的な指示はあんまり言わないようにし
とその感覚ってなかなか持てなかったりするんです。
返って来て、得られるものは大きい。俳優だけやってる
逆に伝わらなかった時だって、その責任が全部自分に
ば出さないほど 結局、伝わった時の喜びは大きいし、
僕の役割は、﹁ 初めて見に来た人たちが共感するか
どうか﹂を問い続けるだけです。僕が口を出さなけれ
方が絶対に良くて。
だけをやりたいとしても、書いたことがないよりあった
けないのが俳優だということも知れる方法だし、俳優
いても、
お客さんに近い所で一番責任を持たなくちゃい
書き、自分で出演する﹂。ホントは台本とか演出家が
主旨は﹁ 自分の身に起きたこと を、自分で台本に
岩井さんの授業内容
人だな∼﹂と思って。先生っぽくないし。
演出したいわきの公演の時だったんですけど﹁ 面白い
︵いしい︶
みちこ先生には三年ぐらい前に
︵アトリエ︶
ヘ
リコプターで最初に会ったんです。前田
︵司郎︶
くんが
安心。
べり言葉の演劇 ﹂
には、もう慣れているようで、
そこは
岩井秀人
(ハイバイ)
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映画﹃フラガール﹄や「がんばっぺ!いわき」の震災応援などで有名な、福島県浜通り地方南部に位
置するいわき市に、とんでもなく元気で面白い高校生達がいる。 年前から授業に︽ 演劇 ︾科目を
取り入れ、等身大の自分を演じる生徒達の日常を追い続けるコーナー第三弾♪。総合学科 芸術・
が、
ハイバイの岩井秀人さんの指導の下、自分達で、作・演出・
表現系列︿演劇﹀第 期生︵ 年生︶
出 演 をした 作 品が公 開 さ れ た 。夏 なのに早 く も「 卒 業 公 演 」発 表? やってみっぺ!☀いわ き 。♨
構成・演出◇岩井秀人
(ハイバイ)
第10期生
作・演出・出演◇総合学科 芸術・表現系列〈演劇〉
8/15・16日◎いわき芸術文化交流館アリオス 小劇場
10
3
10
0 4 8
第
題字/【魔王】
&
【あおき】
[福島県立いわき総合高校・演劇生徒 2013☀夏☂]
昨年夏の『 Final Fantasy for XI.III.MMXI 』に続き、美しい
町・豊岡で
『北校舎、はっぴーっせっと』
を上演。地域文化の創造
に努める「高校アートプロジュクト」の関連企画により、いわきと
但馬地域の高校生同士の交流会でいっそう強い絆が結ばれた。
的なことだと思ってるんです。それはコミュニケーショ
する﹂
っていうことが、演劇として一番シンプルで本質
うんです。その方法として、作品としてある程度成立
ン教育の視点からから見ても、
すごくデカい話だと思
させなきゃいけないし、
それを僕のせいに出来ない、
みた
いな。彼らを初めて見た大人の人たちも、同年代の人
経験あった!﹂
っていうものになるのが理想です。あと
たちも同じように面 白がってくれて、﹁ 私にもそんな
は僕の中でどんぐらい手を下さないでやったり、
ちょい
計ってる感じです。
ちょいは言おうか?という、
とにかくそこのバランスを
岩井さんと「いわき」
の時って、︵青山︶
円形︵劇場︶
の
﹃そ
3.11
って聞いた時に、当たり前ですけど
最初に﹁いわき﹂
原発のことが出てきて、そのテーマをどうしようか?
と。ちょうど
やるかどうかっていう話で迷いました。授業中の生徒
の族の名は﹁ 家 族 ﹂﹄
の稽 古をしてる時 期で、本 番を
ならやろうと思ってたけど、最初は出てこなかった。あ
たちが原 発の話を取り上 げてきたら、興 味 深いもの
る日、警戒区域の、今は誰も人が住んでいないところ
まで
︵福島県富岡町︶
みちこ先 生に連れてってもらっ
除染作業って袋に入れるっていうことなの?みたいな
たんです。その時、何も終わってなさ加減のすごさと、
感じとか、人が住んでいたところに誰もいなくなって
る感覚がすごくて、それからは生徒に
﹁あの時なにし
てたの?﹂
って聞いて。みんなやっぱり、それぞれ大 変
発や震 災 関 連のことを作 品に することについて、皆
な体験はしていて⋮すごく悩みましたね。そして、原
で話合った時に、
一人が言ったんですね。
忘れるな〟
って言うけど、私は忘れようとしたって絶
﹁そういうのを作品にして、観る側の人に
〝忘れるな、
対忘れられないし、
そういうものを経験した者だから
全員の生徒がそう思ってるんじゃないにしても、東京
やれというのは、
すごく無責任だと思う﹂
って。
の人達に一番聞かせたいことのような感じがしました。
卒業公演完成に向けて
言う大人ってすごく少ない、
そういう大人に今出会っ
﹁突き放してる方が自分のものになるでしょ? って
先生も言ってらっしゃいますので、今回は僕が作った作
て⋮成長するんじゃないですか?たぶん。﹂と、
みちこ
品って言うよりも、僕はいつもより横 着をして﹁ 自 分
h t t p : / / w w w. e n b u . c o . j p / k i c k /
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演劇キック
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たちの人生で一番面白かったところを見せてくれ。﹂
っ
構成・文◇釣巻敏康 撮影◇大倉英揮 協力◇園田喬し
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て言って、あんまりヒントも無しに、相 当 必 死に本 人
と思うんです。
web magazine『日刊☆えんぶ』
小説・エッセイ・写真・対談など、
いまをときめ
く選りすぐりのラインナップが正々♨堂々!
?
と日刊アップされるウェブマガジンにいわき
の高校生も参加。授業と部活でそんなヒマ
はない。
んだけども~やってみっぺ。
たちで捻り出したものになると、
それはそれで面白い
[ ウ ェ 部 ]
『青い鱗と砂の街』
1巻発売中!
マーガレットコミックス
(新書判)
定価440円
(税込)
集英社
原案◇演劇部
出演◇長谷川洋子 吉田桃子 桜井智恵理 佐藤摩結子 飛知和寿輝 高橋なつみ
青木愛 鈴木莉奈 吉田睦 松澤和彦 大蔵郁弥
構成・脚本・演出◇いしいみちこ
8/24・25日◎豊岡市民プラザほっとステージ
主催◇豊岡市民プラザ 共催◇兵庫県高校演劇研究会但馬支部
協力◇㈲アゴラ企画・青年団 助成◇㈶地域創造
いわきの海が舞台( ではないか?)の
『青い鱗と砂の街』の小森羊仔さん
は福島県出身の漫画家。
公演後、感想のモロモロの直筆イラ
ストとコメントが届いた。
いわきから遠く離れて
のモロモロ
『北校舎、はっぴーせっと』
福島県立いわき総合高校 演劇部 豊岡公演