今 な す べ き こ と と - 吉川歯科医院

宮川 学会などで発表す
る機会はある程度キャリ
アを積んできたスタッフ
に限定されますよね。け
れどもWTSの場合には、
それこそまだ2年目ぐら
いでも皆、堂々と発表し
ています。うちも「今回
発表したい人」と聞いた
ら、あっという間に4人
も手が挙がって。嬉しい
ですね。
安倍 こちらが与えてい
るつもりでも、実は皆さんから多
くのものを与えてもらっているの
ですよね。
医院の発展のみならず、
人々の幸福に
貢献するため、
今なすべきこととは
歯科界の現状を見つめ可能性を追求し、歯科に携わる皆が患者のため、医院のため、自分のために技術、
精神を高め合うことを目的とする会「WTS」
。人々の幸福を実現させるための取り組みや展望、また九
し売りです(笑)
。医院を一日閉
めてスタッフ全員で幼稚園では虫
歯予防や歯磨きに関する劇をした
り、高校では歯科ってこんな楽し
い職業だからみんな歯科の業界に
来ませんかという講演を行ったり。
地域のためというだけでなく、ス
タッフのモチベーションアップに
もつながっていると思います。
宮川 うちは地域の夏祭りとかイ
ベントに医院として積極的に参加
しバザーなどを開き、そこで得た
売り上げを障害のあるお子さんの
通う施設に、教材やおもちゃを買
うことに役立ててくださいと寄付
しています。障害のあるお子さん
は一般歯科医院では受け入れても
らえない場合もありますので、い
ざ虫歯を作ってしまうとその治療
州地方ならではの特色など、会の代表・なりとみ歯科理事長成富健剛氏を中心に語ってもらった。
WTSの理念に基づく
地域に根づいた貢献
います。どうやってスタッフと一
緒に目標を掴み前に進んでいくか、
患者さんのために今以上なにをな
すべきかなど……。この会に参加
していると日本の歯医者って本当
にこれからだって、明るい気持に
なります。
太田 歯科医師の義務として歯科
医師法にある歯科診療を行ってい
くこと、そのうえ地域における公
衆衛生の向上というのも歯科医師
の義務として果たしていくために
は、やはり自分のところの組織が
キチッとできていて、余力がある
ような体制を作らないと現実的に
は無理でしょう。
吉川 私は地域貢献として中、高
校、幼稚園、小学校に行っていま
す。地域からの要請ではなく押
向けのセミナー企画や高齢者施設
のスタッフに向けての研修を行っ
たりしています。WTSで行って
いるセミナーでは日頃、学会発表
を行っていないスタッフに発表を
させたりしています。
吉川 スタッフにプレゼンをさせ
ると周りがサポートします。そこ
で一体感が生まれる。勉強になる
し、また発表することにより聞い
ている人の立場がわかるようにも
なる。本人の自信にも繋がりま
すが、それ以上に聞いてくださる
方への感謝の気持ちが生まれるの
で、スキルアップはもちろん内面
の充足感も高いようです。発表し
て戻って来ると「先生、私はこれ
から人の発表を聴く時はニコニコ
しながら一生懸命聴きます」って
言うんです。
安倍 今うちはリスク検査とか唾
液検査を歯並びの予防と平行して
行っているんですけど、あまりに
も病体に対しての処置ばかりが
今迄多すぎて、何でそうなってし
まったのかという原因の追及のと
ころにまでいかなかったのが現実
だと思うんです。
成富 まず重要性を知らせるとい
うことですね。小冊子やムービー
をつくって患者さんに渡し、そう
いうものを通して本当に大事なん
だよという情報をできるだけたく
さん提供してあげたい。
予防の時代、個人の予防・
歯科医師の行う予防
太田博見 医療法人仁慈会 太田歯科 院長
成富 あるセミナーを通じ知り合
い、仕事への熱意や価値観が同じ
であることで関係が緊密になり、
「この仲間たちとならきっと何か
やれるっ!」そんな熱い想いから
立ち上げたのがWTS。我々院長
自身もスタッフも患者さんもお互
の関係を築いてい
いに Win-Win
こう、そしてさらに地域貢献を行
い歯科を盛り上げ、しいては医療
全体の底上げになればと、活動を
行っています。
安倍 学術とか最新の技術などを
学べる勉強会はたくさんあると思
うのですが、それとは異なりここ
では大学で習わないことを学んで
が非常に困難になってしまう。で
すからそういったことが少しでも
抑えられるよう、保護者の方たち
にお話をし、さらなる大変さを生
まないようにしていくお手伝いを
させていただいています。
吉川 九州全体は歯科のレベルが
とても高いんじゃないかと思いま
す。私が昔からとてもお世話に
なっている先生方も学術的にも人
間的にも非常に優れた先生方が多
いです。スタディーグループの数
が日本で一番多いのが福岡とも言
われていますしね。
安倍 私は大学が神奈川だった
ので、帰ってくる時結構プレッ
シャーでした。もちろん関東でも
優秀な先生はいっぱいいる、でも
優秀じゃない先生もいっぱいいる
ので、ソコソコやればソコソコい
けるかな? と甘い考えもあり
(笑)
。こっちに帰ってくることが
決まった時、著名な先生方が多く
いらっしゃる九州は勉強会も盛ん
なので、これはちょっとふんどし
締めてかかっていかないという気
持ちがありました。
成富 そんな九州でも残念ながら
佐賀は虫歯が一番多い地方だった
んです。うちにくる患者さんも新
しく越してきた家のお子さんには
虫歯は少ないですが、おじいちゃ
ん、おばあちゃんにみてもらっ
ているようなご家庭では圧倒的に
虫歯が多い。県をあげワースト返
上を行っていこうということで、
フッ化物洗口の導入時にはちょう
ど歯科医師会の役員だったので、
一生懸命取り組み
ました。
太田 私は訪問歯
科診療を行って
いる関係で、市民
向けの講座を開い
たるすることがあ
ります。やはり虫
歯・歯周病など高
齢者のお口の中の
健康というのもま
だまだ知られてい
ない部分も多いの
で、地域住民の方
成富健剛 医療法人なりとみ歯科 理事長
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「W in−W in の楽しい歯科医院を普及する会」WTS
志を共にするスタディグループ 特別座談会 ❷
宮川 小児歯科っていうのはもと
もと虫歯の治療とかいうイメージ
があると思いますが、ホントは予
防なのです。なぜかというと歯科
疾患って子どもの時にきちんと予
防してしまえば大人になってから
そんなひどくならないのです。歯
が生えてから5年以内に虫歯にし
なければもうその後は虫歯になる
ということはほとんどないと言わ
れています。歯周病も思春期に歯
茎が腫れやすい時期があって、そ
の時期にきちんとコントロールす
れば歯周病になることも少ない。
小児期にしっかり元を断ってしま
えば、今後、今ほど多く苦しま
子どもたちのために
日本の将来のために
宮 川 私 の 医 院 の 診 療 理 念 に
「ウェルビーイングの価値を伝え
ていく」というのがあります。た
だ病気ではないのではなくて、体
のメンテナンスをきちんと行い、
鍛えてそしてどんどん健康になっ
ていくように、本当に自分が求め
ているようなより良い生き方、美
味しいものを健康に食べていくと
いうことを、自分で考えていける
子どもたちを育てていくというの
がうちの医院で一番大切にしてい
ることです。
安倍 より安心、安全な治療と予
防。今、私どもで力を入れている
顕微鏡を使った歯周内科治療。鮮
明な顕微鏡画像によってご自分の
口の中の歯周病菌やカビ菌を実際
に見てもらう。そういったところ
から予防に対する意識を変えてい
ただくこともできます。意識を高
めてお口の健康を守っていく、そ
してその人のQOLが高いまま長
く健康寿命を過ごされ、そんな人
が多い幸せな日本になるよう貢献
できればと思っています。
成富 「通いたくなる医院・働き
たくなる医院」が合言葉。患者さ
んが予防に通いたい、ここで働き
たいと思ってくださるような医院
を目指しています。そのため私自
身の知識の向上や技術の研鑽、活
気溢れる医院作りなどやることは
たくさんあります。インプラント
も予防の一つのオプションである
とし、定期的なメンテナンス、患
者さんに自身によるホームケアを
促すことなど、そういった全てを
含めた上での予防をこれからも大
事にしてきたいと思っています。
太田 医院を「高齢者の機能低下
を早期に発見する場にする」と
いう取り組みに力を入れていま
す。飲み込む力が弱くなってくる
のは、実は寝たきりになる前の段
階ですでに始まっているので、そ
れを何とか医院に通えている段階
で発見し、ご本人、家族に伝えご
自分なりにリハビリをしてもらっ
れる人はいなくなるで
しょう。
吉川 小学校の子ども
たちは意外と清掃でき
てるんですね、でも高
校生になるといきなり
汚いです。ほとんど8
割9割歯肉炎って感じ
です。最近の子は顎が
小さいから歯並びもだ
め で す ね。 で す か ら
ホームケアしやすいお
口の環境を作って、プ
ロフェッショナルケア
でフォローするという
両輪ですよね。親御さ
んが熱心なので、小学
校までは親御さんが防いでくれる。
中学校以降は自分でやる習慣がな
いから悪くなっちゃうのです。
宮川 一番は歯科医院に足を運ん
でいただいて、お母さん、本人と
しっかり話をする。正しい知識は
求めている時にこそきちんと入る
という意味で、やはり我々のとこ
ろに定期検診に来てもらうという
のが一番効果的に情報が伝わる。
安倍 予防に軸足を置いた医院に
かかってもらいたいです。削って
詰めてはいおしまいという医院は
いくらでもありますから。
太田 インプラントもある意味予
防の治療です。1本の欠損からフ
て予防をしていく、医院がそうい
う場になっていく必要があると考
え、実践しています。主治医がい
て看護士がいて、介護の人がいて、
そこに歯科医師・歯科衛生士がい
る。医療連携を行って治療してい
くチーム医療がこれからは必然的
に求められていきます。口の中も
高齢者の治療の一部としてきちん
と診る医療が日本に普及していく
よう、その足がかりとして嚥下内
視鏡による嚥下診断など科学的機
能を備えた歯科医院として医療連
携を進めています。
吉川 高校3年生の長男が、先日、
三者面談で「歯医者さんになりた
いです」って先生に言ったらしい
んです。
「突然どうした?」
「いや、
やっぱり歯医者もいいかなと思っ
て」って照れなが
ら……(笑)
。歯科
医師って海外では
尊敬する職業1位
になっている国も
あるんですが、日
本ではとてもとて
も……。そういっ
た中で歯科医師の
地位の向上のため
に貢献できればと
思います。その一
歩として自分自身
でもセミナーを開
ルデンチャーが始まってしまうわ
けですから。トラブルはもちろん
世の中にはありますが、成功率
パーセント以上という、その恩恵
を受けている人は山のようにいる。
ただ切れる包丁を下手な人が下手
な状態で使うと危険だと。
吉川 私も自分の母親にインプラ
ント治療を行いました。 年以上
前になりますが。今は目的として
インプラント治療を行う先生が多
いんですね。そうではなくインプ
ラントは一つの手段ですよね。そ
こをしっかり理解しているという
ことと、メーカー主導ではなくて、
ちゃんとした診断の下にやるって
いうのが基本で、そうすれば今は
これに勝る治療は世の中にはない
と思います。
安倍 この先生だか
らこそ診てもらいた
い。私もこの人だか
ら、一生診るつもり
で付き合っています
と。インプラントも
そういった信頼のう
えに成り立つ治療で
はないでしょうか。
成富 例えば患者さ
んの健康意識が上が
らないままインプラ
ント埋入してしまっ
たら、悲惨な結果が
安倍憲一 あべ歯科クリニック 院長
待ってるいる場合もあるので、そ
こを受け入れられる方でないとイ
ンプラント埋入はためらいますね。
インプラント単体の問題ではな
くて受け入れる側の人間であった
りとか、相手の患者さんの特性で
あったりとか、それはすごく大き
いと思います。
宮川 例えが悪いかもしれません
が、義手とか義足とか着けて「あ、
治った」という人は誰もいないで
すよね。そこから使用するための
徹底した訓練があるわけで。義歯
にしても入れてから訓練する必要
がある。インプラントも歯科治療
すべて、治療終了時がスタートな
んだという発想が患者さんの側に
も必要だと思います。
いたり、勉強会を行いみんなで診
断を考えたり……。いろいろな医
院に通われて、悩みあぐね苦労さ
れていらっしゃる方をたくさん見
ているので、その方たちを迎えら
れるようなスキルとホスピタリ
ティを持った「ラストトリートメ
ントの歯科医院」になろうと努力
しています。
成富 院長は研鑽を重ねどんどん
成長していくけれども、スタッフ
は新人で入って来てその差がどん
どん開いていくという医院がまだ
まだ多いですが、ここにいるWT
Sの医院はそうでない! 医院単
位でのレベルアップが実現できてい
ます。そういった医院が今後ます
ます増えていって、業界全体の底
上げになり、人々の幸せにつながっ
ていけばいいなと願っています。
宮川尚之 医療法人まほうつ会 みやかわ小児矯正歯科 院長
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「W in−W in の楽しい歯科医院を普及する会」WTS
志を共にするスタディグループ 特別座談会 ❷
吉川和則 医療法人友和会 吉川歯科医院 理事長
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