N 型糖鎖のHPLCによる高分離に向けた アミド結合型BEH - Waters

N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けた
アミド結合型 BEH HILIC カラム
Matthew A. Lauber, Stephan M. Koza, Jonathan E. Turner, Pamela C. Iraneta, and Kenneth J Fountain
Waters Corporation, Milford, MA, USA
アプリケーションのメリット
■
■
HPLC 粒子径(2.5 µm XP & 3.5 µm)およびカ
糖鎖プロファイルの変化は薬効や免疫原性に影響し、また製造プロセス不安定
ラムサイズ(内径 2.1 mm & 4.6 mm)をライン
性の指標となるため、バイオ医薬品のグリコシル化は十分かつ定期的に特性解
アップした標識糖鎖分離に向け実績のある
析しなければいけないことは広く認められています。1 一般的な特性化アプロー
固定相
チにおいて、糖タンパク質から酵素で切り出した N 型糖鎖は蛍光タグで標識し、
UPLC に比べて分析時間は長くなるが、HPLC
での特筆すべき分離能
■
異なる粒子径カラム間での LC 分析法移管に
際し、一貫した糖鎖プロファイルと GU 値
■
はじめに
BEH Glycan 固定相は一貫したバッチ間カラム
性能を保証するために 2-AB 標識ヒト型 N 型
糖鎖の分離により試験
続いて親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)で分離し、蛍光(FLR)で検出
します。2-9
粒子径 2 µm 以下のパーティクルを充塡した ACQUITY UPLC BEH Glycan カラムは
標識糖鎖の HILIC 分離に向けた UPLC® ソリューションを実現するテクノロジー
として実績があります。最適化したアミド結合エチレン架橋型ハイブリッド
(BEH)HILIC 固定相により、このカラムは他の HPLC ベースのカラムに比べて迅
速で高分離能の分離を提供します。10
しかしながら、多くのラボではまだ完全には UPLC テクノロジーに移行してい
ません。こうしたラボの皆様にアミド結合 BEH テクノロジーをご利用頂けるよ
うに、実績のある BEH Glycan 固定相で HPLC に対応する粒子径(2.5 µm X P & 3.5
ウォーターズのソリューション
µm)のカラムが発売されました。
ACQUITY UPLC® H-Class Bio システム
本アプリケーションノートでは、粒子径 1.7、2.5、3.5 µm の BEH Glycan カラムが、
(1.7 µm)
ACQUITY UPLC BEH Glycan カラム
XBridge® BEH Glycan カラム(2.5 µm XP & 3.5 µm)
Alliance ® HPLC システム
デキストランキャリブレーションラダー
UPLC と HPLC 条件下の糖鎖分離で移管可能であることを実証します。粒子径(dp)
の違いによる標準的な LC 分析法移管の原理を用いて、分析時間は長くなりま
すが、HPLC 背圧下で粒子径が大きめのカラムにより特筆すべき分離能を達成す
ることについても紹介します。最後に、粒子径や使用する LC システムによらず、
非常に相似した糖鎖プロファイルとグルコースユニット(GU)値が得られるこ
とも示します。
(2-AB 標識)
スタンダード
Glycan Performance Test
スタンダード(2-AB 標識)
キーワード
N 型糖鎖、BEH Glycan、Glycan Separation Technology、
Glycan Performance Test スタンダード、HILIC 、
デキストランキャリブレーションラダースタンダード、
HPLC 、ACQUITY UPLC 、Alliance
1
実験方法
分析条件(別途記載の無い限り)
LC 条件
システム:
ACQUITY UPLC H-Class Bio
システム / Alliance 2695 HPLC
検出:
ACQUITY UPLC FLR 検出器 /
2475 FLR 検出器
カラム温度: 60 ℃
サンプル温度: 15 ℃
2.5 µL(Glycan Performance Test
注入量:
励起波長:
330 nm
蛍光波長:
420 nm
スタンダード+ A3 混合物)、
2.0 µL(Glycan Performance Test
スタンダード)、
スキャンレート:10 Hz
カラム:
1.0 µL(デキストランーキャリブ
レーションラダースタンダード)
ACQUITY UPLC BEH Glycan 、
1.7 µm、130 Å、2.1 × 150 mm
0.5 mL/min(グラジエントの
流速:
(製品番号 186004742)
XBridge BEH Glycan、2.5 µm XP 、
130 Å、2.1 × 150mm
高水比率洗浄工程は 0.25 mL/min)
移動相 A:
pH 4.4
(製品番号 186007265)
XBridge BEH Glycan、3.5 µm
130 Å , 2.1 × 150 mm
移動相 B:
アセトニトリル(ACN)
グラジエント:リニア
1.7 µm、2.1 × 150 mm
(製品番号 186007504)
100% シリカベース、
時間
HILIC アミド結合型、3 µm、80 Å、
(min)
0
2.0 × 150 mm(他社製品)
100 mM ギ酸アンモニウム水溶液、
38.5
39.5
44.5
46.5
50
流速
%A
22.0
44.1
80.0
80.0
22.0
22.0
%B
78.0
55.9
20.0
20.0
78.0
78.0
(mL/min)
0.5
0.5
0.25
0.25
0.5
0.5
*NIBRT GlycoBase6 による同定を目的としている
場合にはこのグラジエントは用いないでください。
実験およびデータベース GU 値の最大の一致には、
NIBRT が GU 値を求めるために使用した分析法を
ご使用ください。
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
2
サンプル詳細
2.5 µm、2.1 × 150 mm X P
時間
(min)
0
56.62
58.09
65.44
68.38
73.53
流速
%A
22.0
44.1
80.0
80.0
22.0
22.0
%B
78.0
55.9
20.0
20.0
78.0
78.0
(mL/min)
0.34
0.34
0.17
0.17
0.34
0.34
(min)
0
79.26
81.32
91.62
95.74
102.94
データ管理:
%B
78.0
55.9
20.0
20.0
78.0
78.0
3 pmol/µL の溶液にしました。この混合溶液の一定量(10 µL)をアセトニトリル
15 µL で希釈して分析に供しました。
UPLC から HPLC への分析法移管を評価するため、Glycan Performance Test スタン
ダード(製品番号 186006349)は 50:50 移動相 A / 移動相 B 200 µL に溶解
して 1.14 pmol/µL としました。
は超純水 100 µL に溶解しました。一定量を等量のアセトニトリルと混合して
流速
%A
22.0
44.1
80.0
80.0
22.0
22.0
ノベンズアミド)標識トリシアリル化 A3 糖鎖(ProZyme®)と混合して水に溶かし
デキストランキャリブレーションラダースタンダード(製品番号 186006841)
3.5 µm、2.1 × 150 mm
時間
Glycan Performance Test スタンダード(製品番号 186006349)は 2-AB(2- アミ
(mL/min)
0.24
0.24
0.12
0.12
0.24
0.24
UNIFI ® (v1.6)
Waters Empower® 2 ソフトウェア
分析に供しました。
計算
各分離のピークキャパシティは 1 から 16 の分析種についてピーク幅を測定
して計算しました。分析種 8 および 9 は分離によって共溶出しているものが
あったため、計算からは除外しました。クロマトグラムから各ピークの半値幅
(Whalf-height)を測定してその平均値を計算し、以下の式に従ってピークキャパシ
ティに換算しました。厳密な比較を行うため、この計算におけるグラジエント
時間は、分析した糖鎖混合物の最初と最後に溶出する成分の保持時間の差とし
て規定しました。UPLC から HPLC システムへの分析法移管の評価には、1-14 の
分析種について同様にピークキャパシティを計算しました。
P*c,half- height =1+
ΔRT1,16
W half-height,avg
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
3
結果および考察
粒子径の異なるHILIC Glycanカラムの同じ線速度における性能
粒子径の異なる BEH 基材のアミド結合型 HILIC 固定相を充塡したカラムの性能は、遊離して蛍光標識した N 型糖鎖の分離で評価しました。
この目的に用いた試験混合物には、Glycan Performance Test スタンダードの 2-AB(アミノベンズアミド)標識 N 型糖鎖(ハイマンノース
糖鎖(Man5 および Man6)をスパイクしたヒト血清 IgG 由来の 2-AB 標識 N 型糖鎖 )に 2-AB 標識トリシアリル化 A3 糖鎖を混合して用い
ました。この混合物は、一般的にヒトまたはヒト型 IgG に見られる程度を超えた複雑性を有し、十分に分離するのは非常に困難であり、
カラム性能を測る優れた試験サンプルとなります。
上記したカラムについてカラム性能を公平に評価するために、まず、UPLC および HPLC 背圧下どちらでも操作可能な低拡散の ACQUIY
UPLC H-Class Bio システムで性能を評価しました。このサンプルに対し ACQUITY UPLC BEH Glycan 1.7 µm カラムで高分離のために最適化
された分析法を用いて得られた典型的なクロマトグラムを図 1 の一番上に示しました。この UPLC 分離の例において、カラム背圧は洗
浄ステップで最大 8700 psi を示しました。HPLC や多くの UHPLC システムでは使用耐圧がそれぞれ 5000-6000 psi、8000-9000 psi 位に
制限されていること考えると、結果としてこの分析法はそれらシステムでは実施することができません。
ACQUITY UPLC BEH Glycan 1.7 µm
2.1 x 150 mm
0.50 mL/min
11
4
12
Pc*half-height = 158
6
3
5
7
8 9
10
12 13
XBridge BEH Glycan 2.5 µm XP
2.1 x 150 mm
0.50 mL/min
Peak
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
∆RT1,16 = 20.2 min
14
8700 psi (Column, Max)
15
16
Pc*half-height = 135
∆RT1,16 = 20.4 min
4600 psi (Column, Max)
XBridge BEH Glycan 3.5 µm
2.1 x 150 mm
0.50 mL/min
Pc
*
half-height
= 105
∆RT1,16 = 20.4 min
1800 psi (Column, Max)
他社製品 3 µm
2.0 x 150 mm
0.45 mL/min
Pc*half-height = 93
∆RT1,16 = 18.9 min
1
9
2
10
3
11
4
12
5
13
6,7
14
8
15,16
2000 psi (Column, Max)
Manose
Galactose
5.0
2-AB Labeled
Glycan
G0-GN
G0
G0F
Man5
G0FN
G1F
G1F
G1FN
Man6
G2
G2F
G2FN
G1FS1
G2FS1
A3
A3
Sialic Acid
Fucose
N-Acetylglucosamine
40.0 min
図 1. BEH 基材アミド結合 1.7 µm、2.5 µm、3.5 µm と他社 100% シリカ基材アミド結合 3 µm 充塡カラムを用いた 2-AB 標識 Glycan Performance Test スタンダードおよび
トリシアリル化 A3 糖鎖の HILIC-FLR 分析の比較。ACQUITY UPLC H-Class Bio で同じ線速度を用いて 2.5 µL(サンプル 3 pmol )注入により分離を実施。各分離について
測定したピークキャパシティとカラム洗浄ステップでの最大カラム背圧を記す。
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
4
カラム背圧は粒子径の二乗に反比例します。11 そのため、大きめの粒子径、例えば 2.5 µm や 3.5 µm のパー
ティクルを充塡したカラムを用いることで HPLC 対応の分析法が可能になります。これらのカラムで得られ
た分離も図 1 に示しました。どちらのカラムも顕著に低い背圧、具体的には 4600 psi および 1800 psi を示
しており、最新の HPLC システムで使用できます。同じ線速度では、2 µm 以下粒子径において起こる速度
論的効率の向上の結果として、粒子径 1.7 µm カラムで卓越したピークキャパシティが得られました。異な
る BEH Glycan カラムのピークキャパシティは 158-105 の範囲で、予想通り、粒子径が大きくなると減少し
ました。しかしながら、一般的に使用される 100% シリカ基材の HPLC 用アミド 3 µm カラム(他社製品)の
結果に比べて、3 種類全ての BEH Glyan カラムで優れたピークキャパシティが得られたのは特筆すべき点です。
さらに、 3.5 µm BEH Glycan カラムでは、他社製品に比べて低い背圧で、(より優れているとは言わない
までも、)同等の性能が得られました。
全体として、図 1 に示したピークキャパシティと分離は粒子径 2 µm 以下のパーティクルを充塡したカラム
の性能を十分に活用する利点をはっきりと示しています。より短い分析時間でより高いピークキャパシティ
を達成できます。粒子径が大きくなるに従ってカラム効率は低減し、最適線速度域も低流速側へ移動します。
このため、粒子径の大きいパーティクルを充塡したカラムで同様のピークキャパシティを得るには、移動
相の線速度を低減する必要があり、それに伴って分析時間が長くなることは広く理解されています。
分析法移管性と HPLC で対応可能な分離
UPLC カラム(1.7 µm)のために開発された高分離分析法は ACQUITY UPLC カラムカリキュレーター 12 を用いて
HPLC カラム(2.5 µm XP & 3.5 µm)に適した分析法に移管しました。計算した粒子径の違い(カラムサイズは
全く同じ)の割合により線速度は低減し、グラジエント時間は長くなります。例えば 1.7 µm から 2.5 µm XP
カラムに移管する場合、流速は 1/1.5 に低減し、一方のグラジエント時間は、カラム容量あたりのアセト
ニトリル濃度変化を一定にするために 1.5 倍にします。図 2 には、これらの移管した分析法で得られたクロ
マトグラムを示しました。HPLC 粒子径の分離では、図 1 で報告したデータと比べて、適切に移管し低減し
た流速で計算したピークキャパシティは顕著に 20%まで向上しました。さらに、カラム背圧が大きく低減
しており、2.5 µm XP および 3.5 µm カラムを HPLC システムでご使用頂ける更なる裏付けとなります。
分析法移管において 2.5 µm XP カラムで UPLC 分析法のピークキャパシティに近づけることができたのは
注目すべき点です(Pc 155 vs. 158)。UPLC 分析法と同様に、2.5 µm XP カラムを用いた HPLC 対応分析法では、
親水性が非常に近いためほとんどの HILIC 分離で課題となる分析種 8(G1FN)と 9(Man6)についても十分
な分離度(Rs>1)が得られました。そのため、適切な分析法移管において、2.5 µm XP カラムは、粒子径 2
µm 以下のカラムを用いた真の UPLC 分離と比べて分析時間が長くなるという点は犠牲になりますが、特筆
すべき分離能力を有しています。図 1 と 2 の比較で分かるように、適切な分析法移管により 3.5 µm カラム
もピークキャパシティが向上します。このカラムのピークキャパシティは(予想通り)1.7 µm および 2.5 µm
XP カラムより低くなりましたが、若干粒子径の小さい(3 µm)他社製品のシリカ基材アミドカラムで得られ
たピークキャパシティよりも有意に高い値を示していました(図 2)。
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
5
ACQUITY UPLC BEH Glycan 1.7 µm
2.1 x 150 mm
0.50 mL/min
Pc*half-height = 158
6
3
∆RT1,16 = 20.2 min
11
4
12
5
7
8 9
10
8700 psi (Column, Max)
12 13
14
15
16
5.0
40.0 min
XBridge BEH Glycan 2.5 µm XP
Pc
2.1 x 150 mm
0.34 mL/min
*
half-height
= 155
∆RT1,16 = 30.2 min
3300 psi (Column, Max)
7.4
58.8 min
XBridge BEH Glycan 3.5 µm
Pc
2.1 x 150 mm
0.24 mL/min
*
half-height
= 128
∆RT1,16 = 42.1 min
900 psi (Column, Max)
10.3
他社製品 3 µm
Pc*half-height = 106
2.0 x 150 mm
0.26 mL/min
82.4 min
∆RT1,16 = 33.4 min
1200 psi (Column, Max)
70.6 min
8.8
図 2. ACQUITY UPLC H-Class Bio システムと粒子径 1.7 µm、2.5 µm、3µm、3.5 µm 充塡カラムを用いた 2-AB 標識 Glycan Performance
Test スタンダードおよびトリシアリル化 A3 糖鎖の HILIC-FLR 分析。ACQUITY UPLC カラムカリキュレーターにより dp の変化に従っ
て線速度とグラジエント時間を計算。
異なる粒子径間での分析法移管を成功させるには、同様の分離能力をもつだけではなく類似のクロマトグ
ラフィー選択性を維持することも重要です。溶出順序やクロマトグラフィープロファイルの変化によりデータ
間での対応は何も出来なくなるため、選択性の維持は最も重要です。このため、図 2 で示した異なる BEH
Glycan カラムの分離は、クロマトグラフィー選択性の同等性の観点からさらに評価しました。この糖鎖試
験用混合物のプロファイルに渡るピークのうち 3 種類の組み合わせについて分離係数を求め、異なる分析
法および粒子径間で同等であることが分かりました(表 1)。
1.7 µm,
0.50 mL/min
2.5 µm X P
0.34 mL/min
3.5 µm
0.24 mL/min
α3,6
1.22
1.20
1.20
α6,11
1.20
1.18
1.18
α11,15
1.59
1.54
1.53
表 1. 適切に移管した流速およびグラジエント時間により得られた図 2 に示す分離の分離係数。
注:ピークの帰属は図 1 に示す通り。
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
6
糖鎖プロファイルおよびGU 値
異なる粒子径の BEH Glycan カラムの分離により得られたデータの一貫性はバイオ医薬品のラボにおいて
重要です。最も重要なのは、これらカラムとその分析法により糖鎖プロファイルの判定を一貫して出来る
ようになる点です。図 3 には、図 2 に示す分離から測定した相対存在量を示しています。使用したカラム
によらず、分離した糖鎖種について非常に類似した存在量が測定されました。糖鎖の存在量について最も
相違が大きかったのは 8、9 の糖鎖種で、1.7 µm、2.5 µm に対して 3.5 µm カラムの分離から計算された結
果では約 20%の違いが見られました。絶対的には、∼ 4.1% に対して 4.8%(ピーク 8)、∼ 4.5% に対して
3.6%(ピーク 9)という違いがありました。図 2 の分離を精査してみると、この相違についての明確な理由
が分かります。糖鎖種 8 と 9 は 3.5 µm カラムでは著しく分離が悪く、2 つの糖鎖種の相対量を正しく決め
る精度が損なわれています。一方、それ以外の相対存在量については差異が 10% の範囲内で、新しい一連
の BEH Glycan カラムが 2-AB 標識糖鎖について非常に一貫した分析を行える能力を実際に有していることを
示しています。
1
5
2
25
% Abundance
20
6,7
3
9
13
10
14
11
8
4
1.7 um,
µm,0.50
0.50mL/min)
mL/min
1.7
15,16
12
2.5
mL/min
2.5 um
µmXP,
XP,0.34
0.34
mL/min
3.5 um,
µm,0.24
0.24mL/min
mL/min
3.5
15
10
5
0
Peak 1
G0-GN
Peak 2
G0
Peak 3
G0F
Peak 4
Man5
Peak 5
G0FN
Peak 6
G1F
Peak 7
G1F
Peak 8
G1FN
Peak 9
Man6
Peak 10
G2
Peak 11
G2F
Peak 12
G2FN
Peak 13
G1FS1
Peak 14
G2FS1
Peak 15
A3
Peak 16
A3
図 3. 1.7 µm、2.5 µm XP、3.5 µm カラムを用いて dp に応じて移管した分析条件で決定した糖鎖試験用混合物中 2-AB 標識糖鎖の相
対存在量。3 回繰り返し分析に基づいて値は決定。3.5 µm カラムではピーク 8 と 9 の分離が十分でなく、存在量に若干差異がある
点に留意。
BEH Glycan カラムでの分離はグルコースユニット(GU)値と組み合わせて使用することもできます。GU 値の
コンセプトは HILIC ベースの糖鎖分離を校正する方法として開発されました。実質的には、標準化した GU
値を単位として結果を示すことで、分析間での分離した糖鎖の微妙な保持時間の変動を最小限にします。13
GU 値を決定するために、デキストランラダー(順に長さが増加するグルコースの多量体群から成る)を外
部校正用標準として使用しました。分離した糖鎖の保持時間は、ソフトウェアで計算した GU ラダー校正表
を用いて GU 値に変換しました。図 4 に表示したこのプロセスは、異なる装置や異なるラボで分析法を用い
ることでの保持時間の変動に対処するのに役立ちます。また、異なる粒子径間の BEH Glycan で分離を移管
する場合にも役立ちます。様々なカラムと分析法から得られた GU 値を比較して(図 5)、非常に類似した結
果が得られました。それでもなお、1.7 µm カラムから 2.5 µm XP 、3.5 µm に移行すると、それぞれ平均して 0.03
および 0.05 の GU 値の増加が見られました。ただし、これら増加の大きさはデータベース GU 値における
実験誤差と同等の値です。13
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
7
ACQUITY UPLC BEH Glycan 1.7 µm
2-AB 標識デキストランキャリブレーションラダー
ソフトウェアにより作成されたキャリブレーションカーブ
GU 値割り当て
7
6.78
5
6.29
8
6.95
9
7.02
10
7.14
13
8.17
図 4. 2-AB 標識デキストランキャリブレーションラダースタンダードの適用と図 2 からの GU 値決定のワークフロー
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
8
16
15
14
13
BEH Glycan
12
11
3.5
3.5 µm, 0.24 mL/min
10
2.5
2.5 µm, 0.34 mL/min
9
Series2
1.7 µm, 0.50 mL/min
8
7
6
5
4
3
2
1
0
2
4
6
8
10
12
14
GU 値
図 5. UPLC BEH Glycan 1.7 µm カラムと 2 種類の HPLC BEH Glycan(2.5 µm XP & 3.5 µm)カラムを
用いて適切に移管した分析法(全ての分離は ACQUITY UPLC H-Class Bio システムで実施)で分離した
2-AB 標識 Glycan Performance Test スタンダードとトリシアリル化 A3 糖鎖の成分に対して決定した
GU 値。値は 3 回繰り返し分析の結果から決定し、分離のキャリブレーションはデキストランキャ
リブレーションラダースタンダードを用いた前後挟みこみ分析により行いました。注:NIBRT
GlycoBase で検索可能な GU 値を出すためには、異なる分析条件をご使用下さい(分析条件参照)。
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
9
HPLCシステム
前述の結果のように、BEH Glycan カラムは異なる UPLC および HPLC 粒子径間に渡って糖鎖分離の卓越した分析法移管性を有しています。
しかしながら、より困難な命題は、UPLC および HPLC 粒子径間かつ UPLC/HPLC システムで望ましい分析法移管性を有していることです。
この目的のため、UPLC システムにおける 1.7 µm カラムから HPLC における 2.5 µm XP カラムへの糖鎖分離の分析法移管性を評価しました。
この条件下で 2-AB 標識 Glycan Performance Test スタンダード(シアリル化 A3 糖鎖は含まず)について得られたクロマトグラムを図 6 に
示しました。14 本の同定したピークにおけるピークキャパシティを計算した結果、UPLC 分離で 110、HPLC 分離で 78 となりました。これは、
HPLC ベースの分離では性能が 29% 低減していることに相当します。相対性能に対するこの計量をこの分離と他の分離について行った
結果を表 2 に示しました。このデータから明らかになるのは、 2.5 µm XP カラムは適切に移管して UPLC システムで用いた場合 UPLC
に近い分離能力を有します(図 2)が、HPLC システムで用いた場合には、さらなるシステム拡散(Alliance HPLC のバンド拡散測定値は
30 µL に対し、ACQUITY UPLC H-Class Bio では 6 µL)により同様の分離は簡単には達成することができないということです。とはいえ、他社
の 3 µm アミド HILIC カラムで低拡散の UPLC システムを使用した場合に到達できる結果と比べても、2.5 µm XP カラムと Alliance HPLC で
達成できる分離能力が優れている点は注目に値します。
BEH Glycan
Pc* half-height
1.7 μm
2.5 μm XP
3.5 μm
Amide-bonded
Silica 3 μm
ACQUITY UPLC H-Class Bioでの値
110 (0%)
100 (-9%)
82 (-25%)
70 (-36%)
Alliance HPLC での値
not possible
78 (-29%)
55 (-50%)
ΔRT1,14
表 2. ピークキャパシティ(半値幅、Δ RT1,14)および ACQUITY UPLC BEH Glycan 1.7 µm カラムを用いた UPLC 分離に対するピークキャ
パシティの低減率。粒子径の大きいアミドカラムを適切に移管した分析法および UPLC または HPLC システムとの組み合わせで使用。
注:ピークの帰属は図 1 を参照。
ACQUITY UPLC H-Class Bio
ACQUITY UPLC BEH Glycan 1.7 µm
2.1 x 150 mm
0.50 mL/min
3
Pc*half-height = 110
6
∆RT1,14 = 12.5 min
11
7
4
5
1
2
8 9
10
14
12
13
10.0
Alliance HPLC
XBridge BEH Glycan 2.5 µm XP
2.1 x 150 mm
0.34 mL/min
14.7
30.0 min
Pc*half-height = 78
∆RT1,14 = 19.9 min
44.1 min
図 6. ACQUITY UPLC H-Class Bio での ACQUITY UPLC BEH Glycan 1.7 µm カラムの使用と、Alliance HPLC での XBridge BEH Glycan 2.5 µm
XP カラムの使用による 2-AB 標識 Glycan Performance Test スタンダードの HILIC-FLR クロマトグラム比較。注入量 2 µL で約 2.3 pmol
のサンプルにより分離を実施。
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
10
6
5
4
3
2
1
0
2
4
6
8
10
12
14
BEH Glycan 分離の UPLC から HPLC への移管について GU 値の観点からも比較を行いました。図 7 には、UPLC
GU Value
分析法と HPLC 分析法を用いて得られた GU 値を示しました。どちらの分析法を用いても GU 値は非常に類
似していました。最も大きく異なる GU 値でも 0.02 で、繰り返しになりますが、これはデータベース GU
値における実験誤差と同等の値です。
14
13
12
11
10
Alliance HPLC
2.5 µm, 0.34 mL/min
9
8
ACQUITY UPLC
H-Class Bio
1.7 µm, 0.50 mL/min
7
6
5
4
3
2
1
0
2
4
GU Value
6
8
10
図 7. 2-AB 標識 Glycan Performance Test スタンダードの各成分について得られた GU 値の比較:
ACQUITY UPLC H-Class Bio に お け る ACQUITY UPLC BEH Glycan 1.7 µm カ ラ ム の 使 用 vs. Alliance
HPLC における適切に移管した分析法を用いた XBridge BEH Glycan 2.5 µm XP カラムの使用。
N 型糖鎖の HPLC による高分離に向けたアミド結合型 BEH HILIC カラム
11
結論
参考文献
本アプリケーションノートでは、粒子径 1.7 µm、2.5 µm、3.5 µm
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の各パーティクルを充塡した BEH Glycan カラムが、UPLC と HPLC
対応条件下で 2-AB 標識糖鎖分離について、実際に移管可能であ
ることを実証しました。粒子径(dp)の違いによる分析法移管に
際しては、BEH Glycan 1.7 µm カラムを用いた UPLC ベースの分離
に比べて分析時間は長くなりますが、HPLC 対応背圧下で少し大
きめの粒子径を充塡したカラムにより達成した特筆すべき分離に
ついても紹介しました。最後に、本研究は、分離に使用する粒
子径や LC システム(ACQUITY UPLC または Alliance HPLC)によらず、
非常に類似した糖鎖プロファイルと GU 値が得られることを示し
ました。これら様々な BEH Glycan カラムが使用できることは、分
析法開発における柔軟性や UPLC・HPLC システム間での糖鎖分析法
移管の容易な手段を探しているラボにとって関心事項となります。
2. Kaneshiro, K.; Watanabe, M.; Terasawa, K.; Uchimura, H.; Fukuyama, Y.;
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