水生昆虫を用いた河川の水質調査 - 理科教育センター

第2分野
実習
水生昆虫を用いた河川の水質調査
目
的
水生昆虫を用いた水質調査により,自然環境を保全することの重要性を理解させる。
準
備
野外活動に適した服装と履物,調査地点の地図,ルーペ,筆,ピンセット,白いバットまたは
バケツ,採集用網,移植ごて,温度計,ひも(3m),浮き,筆記用具,ポリ瓶,ペトリ皿,時
計皿,柄付き針,スポイト,双眼実体顕微鏡,指標動物の資料,水生昆虫図鑑,動物図鑑,各調
査地点のサンプル標本,70%エタノール,記録用紙
方
法
A
簡易水質調査
1
水深が30㎝ぐらいで,こぶしや頭くらいの大き
さの石のある場所を探し,調査地点とする。調査
地点が決まったら,川の状況や周囲の環境を温度
計やひもなどを用いて調査し,記録用紙に記入す
る。
2
3∼5人のグループをつくって川に入り,いく
つかの石を取り上げバットに入れる。このとき,
取り上げる石の下流側に網を置き,流れた動物は
網で受け取り採集する(図1)。
3
石を取り上げた後の川底を移植ごてでかき混ぜ,
図1
石の採取
流れてくる動物を網で受け取り採集する。
4
バットに入れた石を川岸に運び,石の表面に付
いている動物を筆やピンセットを用いて採集する
(図2)。
5
方法1∼4を30分程度行う。
6
採集した動物を全て別のバットに入れ,表3を
参考にして指標動物を探し,記録用紙に○印を記
入する。出現した指標種のうち数が多かった2種
類(最大3種類まで)には,特に●印を記入する。
7
記録用紙を集計し,水質階級の判定を行う。
8
調査が終わったら,採集した動物や石は川に戻
図2
水生動物の採集
す。
B
ベッグ ―津田β法による水質調査
1
方法Aの簡易水質調査の2∼5を行う。
2
採集した動物を70%エタノールの入ったポリ瓶に入れ,固定・保存する。
3
採集した動物を双眼実体顕微鏡で観察し,図鑑やサンプル標本などをもとに同定し,貧腐水
性の階級に属し汚濁に耐えない種(A)と,中腐水性と強腐水性の階級に属し汚濁に耐える種
(B)の2群に分け,各群の種数を調べ,記録用紙に記入する。
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北海道立理科教育センター
4
汚濁に耐えない種の種数をX,汚濁に耐える種の種数をYとしたとき,2X+Yにより指数
を算出し,表1から水質階級の
判定を行う。
表1
ベッグ―津田β法の指数による水質階級表
指数(2X+Y)
>30
水
質
階
級
きれいな水(貧腐水性)Os
15∼29
少し汚れた水(β―中腐水性)βm
6∼14
汚れた水(α―中腐水性)αm
0∼5
大変汚れた水(強腐水性)Ps
観察,実験を深める方法
1
水生生物による水質判定と河川を取り巻く地域の環境の関係を調べる方法について検討する。
2
生態系の中における河川の役割を調べる方法を検討する。
3
学校や生徒が主体となり,河川や河川を取り巻く環境を保全するための望ましい活動の在り
方について検討する。
留意事項
1
川には危険な箇所が多いので,事前調査を行い,生徒に対して安全面の十分な指導を行う。
2
川に入るときは素足にならず,必ず長靴などを着用するようにする。また,大変汚いと思わ
れる場所で調査するときは,ビニル手袋やゴム手袋を着用して調査する。
参
考
1
ヨーロッパ都市部では,産業革命後に河川の汚濁が進行した。この汚濁した河川の生物の体
系化を最初に試みたのが1908年のコルクビッツとマーソンの研究である。彼らは河川のきれい
な水域からひどく汚濁された水域まで,そこにすむ生物を調べ,生物を用いて汚濁の階級を分
けることに成功した。彼らの研究の後,様々な生物において汚濁との関係がより詳しく調べら
れるようになったが,中でも水中の底生動物とケイ藻は最もさかんに研究が行われてきた。
2
川の中にすむ動物の種類は,溶存酸素量(水中に溶けている酸素の量)と深い関係にある。
溶存酸素量は,水温と水の汚れの程度によって変化し,水温が高くなる程少なく,また,汚れ
ているほど,水中に溶けている酸素が細菌に使われるため少ない。溶存酸素量が少なくなると,
きれいな水にすむ動物はすめなくなり,汚れた水にすむ動物が多く見られるようになる。この
ように,溶存酸素量とそこにすむ動物の関係から,水質などの川の環境を知ることができる。
表2に,きれいな水から大変汚れた水までの,指標となる水生動物をあげる。
3
川の状況(流速)を調査する方法
3m程度のひもの先に浮き(ペットボトルでもよい)を取り付け,川に投げ込む。川の中央
部や川岸付近などの数カ所で調べ,水流の特徴をとらえる。
4
水生昆虫は蛹化後,または羽化後に水中を離れるため,多くが羽化する夏には極端に種数,
個体数とも少なくなる。また,他の動物も時期によっては成長段階が低く,採集が困難な場合
もある。このように,採集できる水生動物の種数,個体数は1年を通してみると大きく変動す
るため,一時期の調査をもって結論を出すことは危険である。少なくとも調査は春夏秋(でき
れば冬も)の各時期に行う必要がある。
5
水生動物を用いた水質判定(生物学的水質判定)の利点は,1回の調査で,過去に長時間流
れた水質の平均値を知ることができるという点である。しかし,生物学的水質判定では汚濁物
質の特定や濃度の測定ができないため,パックテストなど化学的調査も同時に行い,データを
補足するとよい。
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第2分野
表2
琴似発寒川の指標となる水生動物
水 質 階 級
Ⅰ きれいな水
(貧腐水性)
Ⅱ 少し汚れた水
(β−中腐水性)
Ⅲ 汚れた水
(α−中腐水性)
Ⅳ 大変汚れた水
(強腐水性)
指 標 動 物(A,Bはベッグ―津田β法の指数記号)
エルモンヒラタカゲロウ(A),アカマダラカゲロウ(A),ミツトゲマ
ダラカゲロウ(B),フタマタマダラカゲロウ(A),
フサオナシカワゲラ(A),ヤマトアミメカワゲラモドキ(A),モンカ
ワゲラ(A),
ヒゲナガカワトビケラ(A),ウルマーシマトビケラ(A),ヤマトビケ
ラ(A),
ヘビトンボ(A),アミカ(A)
ヒメカゲロウ(B),モンカゲロウ(B),フタバコカゲロウ(B),
エグリトビケラ(B),コガタシマトビケラ(B),
ガガンボ(B),カワニナ (B),ヨコエビ(A)
ミズムシ(B),シマイシビル(B),ヌマエビ(B)
セスジユスリカ(B),イトミミズ(B)
図3 エルモンヒラタカゲロウ
図4
カワゲラの仲間
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図5 ヒゲナガカワトビケラ
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全国水生生物調査結果 集計用紙
調査団体名
市町村名
連絡先住所
調査担当者名
担当者連絡先
TEL
複数団体が合同で実施している場合は、代表的な団体名をひと
つ記入し、他の団体名は代表的な団体の後ろに ( )をつけて
記入して下さい。
人
調査参加人数
〒
E-mail
FAX
指標生物 (見つかった指標生物に○印、数が多かった上位から2
調査地点の概要
種類(最大3種類)に●印をつけて下さい)
(生物を採取した場所の状況について記入して下さい)
1 アミカ
調査河川名
2 ウズムシ
水 3 カワゲラ
調査地点名
質 4 サワガニ
階 5 ナガレトビケラ
今年の調査地点は昨年度と同じですか?
昨年度の調査状況
級 6 ヒラタカゲロウ
□ 同じ場所で調査した
(昨年度調査に参加した方
Ⅰ 7 ブユ
昨年度の水質階級は □ Ⅰ □ Ⅱ □ Ⅲ □
Ⅳ
のみチェックして下さい)
8 ヘビトンボ
□ ちがう場所で調査した
時
9 ヤマトビケラ
年
月
日
調査日時
開始時刻を24時間で記入して下さい。(午後2時は14時)
10 イシマキガイ
11 オオシマトビケラ
□ はれ
□ くもり
□ 雨
天 気
調査時の天気をチェックして下さい
水 12 カワニナ
水 温
℃(小数点1桁まで記入して下さい)
質 13 ゲンジボタル
階 14 コオニヤンマ
m
約
川 幅
級 15 コガタシマトビケラ
水の流れの幅を記入して下さい(小数点1桁まで記入できます)
Ⅱ 16 スジエビ
□ 川の中心 17 ヒラタドロムシ
□ 上流から見て右岸
生物採取場所
18 ヤマトシジミ
□ 上流から見て左岸
採取した場所をチェックして下さい
19 イソコツブムシ
cm
約
水 20 タイコウチ
水 深
採取した場所の平均的な水深を記入して下さい
質 21 タニシ
以下は、生物を採取した場所にあてはまるものをチェックして下さい
階 22 ニホンドロソコエビ
級 23 ヒル
□ 速い(毎秒60cm以上)
Ⅲ 24 ミズカマキリ
流れのはやさ
□ 普通(毎秒30∼60cm)
25 ミズムシ
□ 遅い(毎秒30cm以下)
□ 頭大の石が多い □ こぶし大の石が多い
水 26 アメリカザリガニ
質 27 エラミミズ
□ 小石と砂
□ コンクリート
川底の状態
階 28 サカマキガイ
□ 砂と泥
□ 泥
級 29 セスジユスリカ
□ コケ
□ その他
Ⅳ 30 チョウバエ
□ においは感じられない
水のにおい
水質階級
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
□ においが感じられる
水質
(ドブ、石油、薬のような不快感のあるにおい)
階級 1.○印と●印の個数
の
2.●印の個数
□ 透明またはきれい
判定 3.合計(1欄+2欄)
水のにごり
□ 少しにごっている
この地点の水質階級は
です
□ 大変にごっている
その他の生物(水生昆虫、貝、エビ・カニ類)
水草類
魚 類
鳥 類
出展)環境省こどものページ(http://www.env.go.jp/kids/)
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その他、気づいたこと
水生生物による簡易水質調査