2013 年度 修了 ヴィパッサナー瞑想会の参加者に生じる、気分・感情変化 立命館大学大学院 応用人間科学研究科 臨床心理学領域 矢口 健太郎 マインドフルネスという言葉、方法が盛んに取り上げられるようになった。元々マイン ドフルネスという言葉、方法は仏教の瞑想法から生まれているが、現在その宗教的な意味 は剥ぎ取られている。マインドフルネスの原型であったものに、ヴィパッサナー瞑想とい う瞑想法がある。本論文は、このヴィパッサナー瞑想に光を当てるものとしたい。ヴィパ ッ サ ナ ー 瞑 想 の 重 要 な 技 法 と し て 、 サ テ ィ (気 づ き )と い う も の が あ り 、 こ れ が マ イ ン ド フ ルネスと呼ばれているものであるが、ヴィパッサナー瞑想とは、これだけを指すのではな い。ヴィパッサナー瞑想とは、五戒を守ることや、その他の何種類かの瞑想を含みこむ、 生 き 方 を 問 い 直 す 方 法 で あ る 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 サ テ ィ (気 づ き )の 実 践 だ け を 行 う の で はない、ヴィパッサナー瞑想の瞑想会に研究協力を依頼し、調査を行った。 瞑想の研究は数多く行われているが、ヴィパッサナー瞑想の効果の実証的な研究に限定 すると、その数は途端に少なくなり、日本では皆無である。ヴィパッサナー瞑想の変形と し て の 、MT を 用 い て の 日 本 人 を 対 象 と し た 研 究 は 、数 少 な い が 本 邦 で も み ら れ る 。こ れ ら を 参 照 し た 結 果 、MT に 関 し て 得 ら れ て い る 異 な る 知 見 と し て 、気 分 に 与 え る 即 時 的 な 変 化 が あ っ た 。そ こ で 本 稿 で は 、一 つ の MT と と ら え る こ と も で き る ヴ ィ パ ッ サ ナ ー 瞑 想 会 に お いて、参加者に生じる気分・感情の即時的な変化に焦点を当てて研究を行った。 研究対象とした瞑想会は 2 種類あり、瞑想時間が約 7 時間ある 1 日の瞑想会では、その 前 後 の 2 回 、瞑 想 時 間 が 約 2 時 間 で あ る 半 日 の 瞑 想 会 で は 、一 回 目 の 瞑 想 の 前 、法 話 の 前 、 法 話 の 後 、二 回 目 の 瞑 想 の 後 の 計 4 回 、TMS(一 時 的 気 分 尺 度 )へ の 回 答 を 求 め た 。TMS は 徳 田 (2007)に よ り 考 案 さ れ た 18 項 目 か ら な る 質 問 紙 で 、 「 現 在 」の 気 分 を 測 定 す る も の で あ る。 「活気」 「疲労」 「怒り」 「抑鬱」 「緊張」 「 混 乱 」の 6 つ の 下 位 尺 度 か ら な る 。被 験 者 は 、 関東地方のヴィパッサナー瞑想会への参加者のうち、研究に協力することに同意いただい た 18 歳 以 上 の 方 、 4 1 名 で あ る 。 41 名 の 内 訳 は 、 一 日 の 瞑 想 会 の 調 査 対 象 者 が 19 名 、 半 日 が 22 名 で あ っ た 。ま た 、全 体 の 被 験 者 の 8 割 近 く が 3 ヵ 月 以 上 の 瞑 想 経 験 者 で あ っ た 。 研 究 の 結 果 と し て 、1 時 間 以 上 の 瞑 想 が「 緊 張 」に 、法 話 と 二 回 目 の 瞑 想 が「 混 乱 」に 、 半 日 の 瞑 想 会 が「 怒 り 」 「緊張」 「抑鬱」 「 混 乱 」に 、1 日 の 瞑 想 会 が「 怒 り 」 「緊張」 「抑鬱」 に、有意なプラスの影響をもたらすことが示された。また、折れ線比較法という、平均値 の検定だけではうかがい知ることのできない、個々人の変化を明らかにすることに適した 方 法 を 用 い て 分 析 し た 結 果 、1 日 の そ し て 半 日 の 瞑 想 会 両 者 と も が 、 「 活 気 」の 得 点 を 中 間 値に引き戻すような働き、 「 疲 労 」の 得 点 が 瞑 想 会 前 に 中 間 値 以 上 だ っ た 被 験 者 の 瞑 想 会 後 の得点を引き下げる働きがあることが示された。 立命館大学
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