総合東京病院通信 Vol.23

Southern TOHOKU Healthcare Group.
Tokyo General Hospital
南東北グループ 医療法人財団 健貢会
総合東京病院通信
〒165-0022 東京都中野区江古田3-15-2
TEL. 03-3387-5421
( 代)
2014.9
Vol.
23
南東北グループ 医療法人財団 健貢会
総合東京病院通信 Vol.23
●平成26年9月発行
●編集・発行/総合東京病院
特 集
∼脳
経卒
頭中
蓋後
磁の
気麻
刺痺
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治改
療善
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総合東京病院
リハビリテーション科
木村 郁夫
◎麻痺と付き合う
平成 24 年 6 月に厚生労働省が発表した
日本人の死亡原因に関する統計報告では、
「〔脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などに
代表される〕脳血管疾患は、昭和 26 年に
結核にかわって第 1 位となったが、昭和
45 年 を ピ ー ク に 低 下 し は じ め、 昭 和 56
年には悪性新生物〔がん〕にかわり第 2
位となった。昭和 60 年には〔心筋梗塞や
心不全などの〕心疾患にかわって第 3 位
となり、その後も死亡数・死亡率ともに
低下傾向であったが、平成 23 年には、肺
炎にかわり第 4 位となり」(〔 〕内は筆者
が補足)と記されており、近年の脳血管
疾患による死亡率の低下が示されました
( 図 1 参 照 )。 ま た、 平 成 24 年 の 簡 易 生
命表をながめると、日本人の平均寿命が
男 性 で は 79.94 歳、 女 性 で は 86.41 歳 に
達し、過去 20 年間で男女ともに平均寿命
が 4 年以上も延長していることがわかり
ます。これらの事実は、こんにち、脳卒
中(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)に
罹患してすぐに死を迎える場合が激的に
減少し、残りの長い人生を麻痺や失語症
など脳卒中の後遺症と付き合って生活し
なければならない時代になったことを物
語っています。
図 1 死因別にみた死亡率の年次推移
(厚生労働省
「平成 23 年人口動態統計月報年計(概数)
の概況」より)
こういった状況のなか、総合東京病院で
は経頭蓋磁気刺激治療(TMS 治療)、ある
いは、ボツリヌス治療(BoNT-A 治療)と
リハビリテーション(リハ)を組み合わせ
て実施し、脳卒中後の麻痺を効率的に改善
させる戦略的な治療を行っています。
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※この冊子は左開きが「総合東京病院通信」、右開きが「江古田の森だより」です。
特 集
脳卒中後の麻痺を改善する戦略的アプローチ ∼経頭蓋磁気刺激治療とボツリヌス治療∼
◎経頭蓋磁気刺激治療:TMS 治療
TMS 治療は、図 2 に示すように、頭の上に
固定したコイルから磁場を発生させ、皮膚や骨
を傷つけず、大脳の表面を直接的に刺激する治
療法で、右側の大脳の活動性と左側の大脳の活
動性とのバランスを整えることが TMS 治療の
重要な目的です。
TMS 治療単独での臨床的な応用に関しては、
海外を中心に 2005 年頃から報告されるように
なりましたが、麻痺に対する十分に大きな改善
効果が得られることはありませんでした。しか
し、2008 年より東京慈恵会医科大学リハビリ
テーション医学講座のグループが、TMS 治療
と集中的リハ訓練を組み合わせた独自の併用療
法を開始し、麻痺に対する有効な改善効果が示
されるようになりました。当院でも慈恵医大リ
ハ医学講座グループが開発した方法に従って、
15 日間の入院期間で併用療法を実施し、これ
までに多くの患者様で麻痺の改善効果が認めら
れています。
図 2 TMS 治療
2
図 3 痙縮に特徴的な肢位
BoNT-A 治療では、ボツリヌス菌が作りだ
すボツリヌス毒素を、硬く緊張した筋肉に注
射し、筋肉の緊張を軽減させることができま
す。この効果は、個人によって差があるもの
の、平均的に注射の 2 ∼ 3 日後から出現し、
2 ∼ 4 カ月にわたって継続します。一般的に、
BoNT-A 治療は外来診療で行われるのが多い
ため、麻痺の改善に対しては日常的な自主ト
レーニングが重要となりますが、当院では
TMS 治療+集中リハのプログラムと組み合わ
せた、より効果的な治療プログラムも実施し
ています。
◎ボツリヌス治療:BoNT-A 治療
◎最後に
脳卒中で麻痺を生じた方の約半数に、筋肉の
つっぱり、いわゆる痙縮(けいしゅく)の合併
があるといわれています。痙縮は筋肉が硬く緊
張した状態が長くつづくもので、図 3 に示す
ような特徴的な変化が手や足にみられるように
なります。痙縮が問題になるのは、関節の運動
が制限されるために日常生活の動作や活動を大
きく障害する、さらには、リハを行う際に麻痺
の改善を著しく妨げる点にあります。
残念ながら、TMS 治療と BoNT-A 治療は脳
卒中後の麻痺が残る全ての方々に行える治療
ではありません。それぞれの治療法にはいく
つかの適応基準があるため、リハ科医師の診
察を受けることが必須です。TMS 治療あるい
は BoNT-A 治療を希望される際には、当院の
ホームページをご参照いただくか、専用ダイ
ヤル 03 − 3387 − 8071
(午前 9 時∼午後 5 時 )
に直接お問い合わせいただければと思います。