平成 25 年度創成シミュレーション工学専攻修士論文梗概集 計算応用科学分野 0-1 マトリックスからの階層構造の再構築 学籍番号 1 序論 人間関係は,近年の SNS の発達により,複雑で多様 化している.このように,複雑で多様な構造をもつも のや関係は実世界に多く存在する.例えば,工業製品 の部品構成,生物の細胞構造,生態系などである.本 論では,このような繋がり関係からは一目では見えな い隠れている階層構造を再構築することを目的として いる. 2 最下層節点と他の節点との関係が 0-1 マトリックス で与えられた時のアルゴリズム 階層構造の最下層節点と,その他の節点の間の繋が り関係が分かる場合のアルゴリズム (本論ではアルゴリ ズム-1 と呼ぶ) を独自のアイディアとして学士卒業論文 で提案したが,本論でも再度掲載し,その応用例につ いて述べた.応用例として,(1) 人間関係 (2) ある製 品をの不良原因と不良現象の相関表の 2 つについて階 層構造を立ち上げた. 3 連結無向グラフとしての 0-1 マトリックスから再構 築するためのアルゴリズム V 3 v0 v1 v2 V2 v5 v6 列番号はそれぞれ vi の i に対応する 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 3 4 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 6 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 8 9 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 1 0 0 1 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 11 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 1 12 13 14 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 15 16 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 アルゴリズム-2 は次のようである.V を節点集合, di (j) を節点 i から節点 j までの最短距離 (i,j ∈ V ), Vi (k) を節点 i から最短距離 k で繋がる節点数とすると, 各節点について,ki∗ = maxj∈V di (j) として ∗ v3 ki∗ v7 ki ∑ ∗ v8 v9 v10 ∗ ki ki ∑ ∑ jVi (j) − j Vi (j) j=1 j=1 ki∗ j=1 ∗ ki (∑ )2 ∑ ki∗ j2 − j j=1 V1 中根 雅斗 大鑄 史男 表 1: 図 1 から生成される 0 − 1 マトリックス C . 行, ai = v4 氏名 指導教員 24413558 j=1 から,頂点節点集合を W = {i|ai = max0≦j≦n−1 aj } v11 と定める.dstar(j),j ∈ V を i ∈ W ,dstar(i) = 0 V 0 v12 v13 v14 v15 v16 図 1: 階層構造の例 V を節点集合,E を節点対の集合,V の要素を行, 列要素とする隣接行列 C を { 1, (vi , vj ) ∈ E cvi ,vj = 0, その他 j ∈ V \W ,dstar(j) = min di (j) i∈W とし,dstar(j) から l = max (dstar(j)) j∈V \W W0 = W W k = {j | dstar(j) = k } , k = 0, · · · , l を定め,行列 C から W 0 ,W 1 ,· · · ,W l を各層とする できる.図 1 から作成された行列 C が表 1 である.こ 階層構造 G を、辺集合を次のように定めて定義する. E 0 = {(α, β) |cαβ = 1 かつ dstar(β) − dstar(α) = 1} の逆問題を考え,一目では階層構造グラフの隣接行列 アルゴリズム-2 を表 1 に適用すると,図 2 になる. と定義すると,行列 C は背景階層構造から容易に作成 であるとは容易に想像することが困難であるような 0-1 アルゴリズム-2 は,いくつかの階層構造の例から,階 マトリックスから,背景に存在するであろう階層構造 層構造は一般的に頂点節点から階層が下がるにつれ節 を再現することを目的としている. 点数が増加していくことに気づき,頂点節点は,距離 平成 25 年度創成シミュレーション工学専攻修士論文梗概集 計算応用科学分野 とその距離に存在する節点の個数で回帰直線を引いた 際に他の節点よりも傾きが大きくなるのではないかと いう考えから思いついた次第である. 本章では,木の高さ 5 の完全 2 分木,左右非対称の 木,頂点から深さ k まで1分木でそれ以下が n 分木の 木に対してアルゴリズム-2 を適用した際の理論解析も 行い,その頑健性が強いことも示した. v12 図 4: 図 3 からの再現階層構造.頂点節点は v21 v9 し,それらの例での特徴をつかむ必要がある.一般に, 再現階層構造は肩書きや組織図などの階層構造と違い, v5 真に及ぼしあっている影響の関係性による階層構造で v7 あると言える. v6 v8 v10 v3 v11 v2 v4 v6 v13 v14 v15 v16 5 アルゴリズム-2 の改良 アルゴリズム-2 では,頂点節点からすべて 1 ステッ プで繋がるような場合は,階層数 2 の再現階層構造と なり,頂点以下の節点同士の関係を見出すことが出来 ない.以上の事から,アルゴリズム-2 の改良では,階 層毎に節点を決め,頂点以下の節点同士の関係を見出 v1 図 2: 表 1 からの再現階層構造 すことにした.アルバイト先の人間関係に適用したと ころ,アルゴリズム-2 では階層数 2 の再現階層構造だっ たのに対し,アルゴリズム-2 の改良では,アルバイト 先に大きな影響を及ぼしている人は,人間関係にも大 4 アルゴリズム-2 のシミュレーションによる検証 アルゴリズム-2 の特徴を調べるために,6 種類の場 きな影響力を持っていて,そのような人は,人と人を 合に対してシミュレーションを行った. は,スペース上詳細に書けなので,詳しくは本論を参 完全 n 分木,左右非対称の木,上下非対称の木,横 連結している木については完全に背景階層構造を再現 できた.横連結とは,階層構造の同層内に存在する節 点同士を枝で繋げることである. つなぐパイプ役になっていることも分かった.ここで 照していただきたい. 6 まとめ アルゴリズム-1 では,最下層を特定することが難し いが,節点間同士の順序関係から階層構造を立ち上げ ることが出来た.アルゴリズム-2 では,背景階層構造 を完全に再現できる場合が分かり,できなくても再現 階層構造は実際の影響力の強さによる階層構造を立ち 上げることが出来た.アルゴリズム-2 の改良では,ア ルゴリズム-2 ではできない頂点以外の節点の関係性を 示す階層構造を立ち上げることが出来た.今後,多様 な木にアルゴリズム-2,アルゴリズム-2 の改良を適用 し,アルゴリズム-2,アルゴリズム-2 の改良が持つ特 図 3: 背景階層構造が隠れて見えない例.頂点 v0 ,第 4 層左から v1 ,v2 ,第 3 層左から v3 ,v4 ,· · · ,v6 ,第 2 層 左から v7 ,· · · ,v14 ,第 1 層左から v15 ,· · · ,v30 ,第 0 層左から v31 ,· · · ,v62 背景階層構造が大分隠れていて見えない場合 (図 3 参 照) は,背景階層構造を完全に再現できない.しかし, 一概に悪いこととは言い切れず,実際の応用例に適用 徴を掴む必要がある. 今後の課題として,アルゴリズム-1 の具体的応用例 の模索,アルゴリズム-2 を適用する階層構造を広げ,同 時にアルゴリズム-2 の改良も適用し,その特徴を掴む, などである. 参考文献 [1] 中根雅斗,” 階層構造の再構築”,学士卒業論文,2012. [2] 茨木俊秀,”C によるアルゴリズムとデータ構造”,昭晃 堂,初版 1999 第 16 刷. [3] 松坂和夫,” 集合・位相”,岩波書店,初版 1968 第 8 刷.
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