福音の教義

福音の教義
教師用手引き
宗教430,431
福音の教義
教師用手引き
宗教430,431
制作:教会教育システム
発行:末日聖徒イエス・キリスト教会
ユタ州ソルトレーク・シティー
© 2002 Intellectual Reserve, Inc.
版権所有
印刷:日本
英語版承認:2000年6月
翻訳承認:2000年6月
原題:Doctrines of the Gospel Teacher Manual: Religion 430 and 431
Japanese
32499 300
目 次
せいさん
はじめに …………………………………………………… v
第20章 聖餐――記念の儀式……………………………… 71
第1章 神の真理…………………………………………… 1
第21章 聖約のイスラエルの予任とその責任…………… 75
第2章 啓示――真理への道……………………………… 3
第22章 背教………………………………………………… 77
第3章 永遠の父なる神…………………………………… 7
第23章 時満ちる神権時代における福音の回復………… 83
第4章 イエス・キリスト――神の御子………………… 9
第24章 イスラエルの散乱と集合………………………… 85
第5章 聖霊………………………………………………… 11
第25章 神権――神権とは何か,どのように機能するか…… 89
第6章 わたしたちの前世………………………………… 15
第26章 神権の誓詞と聖約………………………………… 91
第7章 創造………………………………………………… 19
第27章 安息日の律法……………………………………… 95
第8章 堕落………………………………………………… 25
第28章 日の栄えの結婚…………………………………… 97
しょくざい
第9章 イエス・キリストの贖罪 …………………………29
第29章 家族の重要性………………………………………101
第10章 地上での生活の目的……………………………… 35
第30章 死と死後の霊界……………………………………105
第11章 人の選択の自由…………………………………… 39
第31章 死者の贖い…………………………………………113
第12章 祈りと断食………………………………………… 41
第32章 復活と裁き…………………………………………117
第13章 信仰――キリストを中心とする力……………… 47
第33章 栄えの王国と滅び…………………………………121
第14章 悔い改め…………………………………………… 49
第34章 時のしるし…………………………………………127
第15章 バプテスマの聖約………………………………… 53
第35章 バビロンの滅亡とシオンの設立…………………129
あがな
たまもの
第16章 聖霊の賜物………………………………………… 55
第36章 主の再臨……………………………………………133
第17章 従順――天の律法………………………………… 59
第37章 福千年と地球の栄光化……………………………135
第18章 霊的な再生――真の改宗………………………… 63
参考文献一覧 ………………………………………………137
第19章 永遠の命…………………………………………… 67
iii
はじめに
福音の教義コースでは,標準聖典で明らかにされている
が提案されている。ここで取り上げる概念に割く時間は5
福音の原則と教義を研究する。基本となるテキストは聖文
分から7分程度にする。レッスンの導入部に多くの時間を
である。生徒用手引きは聖文の個人学習用ガイドであり,
割いて,各章の教義を詳しく教える時間が不足するような
クラスにおける話し合いの基礎となる情報を生徒に提供す
ことをしてはならない。
ることを目的としている。
教えるためのアイデア。各章の第2部には「教えるため
のアイデア」が提案されており,最も多くの紙面が割かれ
生徒用手引きの活用
ている。この項は生徒用手引きの対応する章に記されてい
教師はレッスンの準備に当たって,まず生徒用手引きを
る「教義の概要」に対応している。教義を教えるに当たっ
研究する。生徒用手引きの各章は「教義の概要」と「参考
ては,ここで提案されている方法と概念を選び,クラスの
資料」の2部に分かれている。「教義の概要」で取り上げら
状況に合わせて修正を加える。
れているテーマは,それぞれ幾つかの項目に分けられる。
まとめ。 各章の第3部であり最後の項である「まとめ」に
そしてさらに詳しい説明に細分化されている。参照聖句は
は,レッスンを首尾よく終えるための簡単な提案が記され
論理的に,また順を追って列挙されている。各章の第2部
ている。これらの提案には生徒が福音の特定の原則をそれ
である「参考資料」は現在の神権時代の預言者と使徒によ
ぞれの生活で応用する方法についてのアイデアを列挙して
る解説である。
いることが多い。
教師用手引きの活用
が提案されている。それらを参考にして黒板に書き出すと
黒板。幾つかの章の最後に黒板を使って行う説明や図解
この手引きには教師であるあなたがレッスンを準備する
よい。あるいは掲示板を使う方法や,オーバーヘッド・プ
際に活用し,状況に合わせ,またレッスン全体を組み立て
ロジェクター用資料を作成して提示する方法を採用しても
る基礎となる様々なアイデアが記されている。各章にはレ
よい。幾つかの「黒板」の内容には配布資料として生徒に
ッスンの時間内に取り上げることができる以上のアイデア
配るとよいものもある。
が記されているので,このガイドに記されている順にレッ
スンを進めようとしてはならない。クラスで説明し,強調
コースの組み立てを学期に合わせる
したいと思う概念を考えながら,生徒用手引きの各章を最
福音の教義コースは学期制度に合わせやすい構成となっ
初に読むとよい。次に,教師用手引きから,対応する章を
ている。二学期制を採用している場合は資料を以下の方法
読む。あなたと生徒にとって意義のあるレッスンを実施す
で分けるとよい。
るために役立てられる概念と方法だけを選ぶことが大切で
前期:宗教430。1−20章
後期:宗教431。21−37章
三学期制を採用している場合は以下の方法が推奨され
る。
1学期:宗教430。1−12章
2学期:宗教431。13−24章
3学期:宗教233。25−37章
コース資料を上記の方法で分けることによって,試験を
実施するための時間を取ることができ,また幾つかの章に
2時限以上をかけて教えるための幅を持たせることができ
る。
ある。教師用手引きに記されている提案に基づいて,クラ
スの状況に合うほかのアイデアを展開することも可能であ
る。しかしながら,レッスンを状況に合わせて変更する場
合には,生徒用手引きの「教義の概要」から離れて,推論
に基づいた話し合いを展開したり,生徒にとって永遠の価
値があるかどうかが疑わしい主題を取り上げたりすること
のないように注意しなければならない。
はじめに。 教師用手引きの各章の最初に書かれている
「はじめに」の項では,レッスンを始めるに当たって教義
に関するテーマに生徒の関心を向けさせるためのアイデア
v
第1章
神の真理
はじめに
■
「真理は何と言えば」
(
『賛美歌』175番)を全員で歌って
徒の道』1979年7月号,3−4参照)。生徒にそれぞれの例を
挙げてもらう。
■
アルマ7:20を読んで話し合う。絶対的な真理とは神によ
クラスを始める。作詞者のジョン・ジェイクスは「真理」
って明らかにされた永遠であり,揺らぐことのない真理で
というテーマのもとに詩を詠み,それがこの賛美歌の歌詞
あることについて証を述べる。
あかし
となったことを指摘する。この詩は1851年にリバプールで
出版された英国伝道部のパンフレット高価な真珠に収めら
れていた。この詩に曲をつけたのは,ジェイクス長老によ
B.すべての神の真理は神が所有しておられ,神によ
って神の子供たちに分け与えられている。
って改宗したスコットランド人のエレン・ノールズ・メリ
■
ングである。
けでしょうか。生徒用手引き3ページの「参考資料B」から
賛美歌が作られた経緯を紹介してから,詩を読んで,そ
の意味について話し合う。
真理を見いだして,知らせることができるのは預言者だ
ジョセフ・F・スミス大管長とブリガム・ヤング大管長の
言葉を読む。御父と御子と聖霊はあらゆる真理の源である。
イエスはピラトの前に引き出されたとき,このように言
哲学者であれ,科学者,発明家,改革者であれ,だれであ
われた。「わたしは真理についてあかしをするために生れ,
っても,あらゆる真理はその源から見いだされる。多くの
また,そのためにこの世にきたのである。だれでも真理に
人が真理を探し求めて見いだしてきたが,彼らが全員その
つく者は,わたしの声に耳を傾ける。」(ヨハネ18:37)す
真理を教えてきたわけではないことを指摘する。ある教え
るとピラトは有史以来繰り返し投げかけられてきた質問を
が真実であって,あらゆる真理の源から来たものかどうか
した。
「真理とは何か。
」
(ヨハネ18:38)もし生徒がこの質
を判断するには,聖霊に頼らなければならない。この世の
問を受けたとしたら,ピラトに対してどのように答えたと
教えはすべて,標準聖典の教えに照らしてその価値を判断
思うかを尋ねる。真理とは何でしょうか。
すべきである。生徒用手引き2ページに記されている「教
教えるためのアイデア
■
■
義の概要B4」の参照聖句について話し合う。
俗世的な源から知識を得ることに価値があるでしょうか。
生徒用手引き3−4ページの「参考資料B」からキンボール
A.神の真理は確かに実在する。
大管長の言葉を読む。俗世に関する真理は,救いをもたら
ピラトは「真理とは何か」と質問した。次のように言い
すことも日の栄えの王国の門を開くこともないことを強調
換えることができる。「真理とはだれのことか」,そして
する。これらは絶対的な真理を優先させるときに初めて価
「真理はだれから生じるのか。
」イエスは答えられた。
「わた
値のあるものとなる。わたしたちはこの方法によって,絶
しは道であり,真理であり,命である。だれでもわたしに
対的真理と相対的真理を含むあらゆる真理を活用して,自
よらないでは,父のみもとに行くことはできない。」(ヨハ
身と人々に恵みをもたらすことができる。
ネ14:6)イエス・キリストは真理を表し,あらゆる真理を
■
具現しておられる(3ニーファイ15:9参照)
。この世にある
られるこの世の学問の様々な分野を黒板に書き出す。これ
すべての真実は神を起源としており,その源はイエス・キ
には天文学,地理学,幾何学,歴史学,政治学,言語学,
リストである。
国際関係学などが含まれる。これらはなぜわたしたちにと
■
■
聖文は真理をどのように定義しているでしょうか。生徒
教義と聖約88:77−79を話し合う。79節で主が挙げてお
って「理解する必要のある」ことなのでしょうか(78節)。
に教義と聖約93:24とモルモン書ヤコブ4:13を比較しても
80−81節を読んで,この世のテーマについて研究すること
らう。(真理とは,現在あるとおりの,過去にあったとお
は,神の王国でよく働き,地の人々に福音を分かち合うた
りの,また未来にあるとおりの,物事についての知識であ
めの備えとなることを説明する。
る。真理は絶えることがない。)ヤコブ4:13の「ありのま
ウイッツォー長老が述べたように,わたしたちはよりよ
まに」という語は,真理の定義にどのような意味を付け加
く主に仕えるために十分な学問を修める責任がある。「神
えているでしょうか。ありのままであることが重要視され
はこれらのテーマについてすべての僕たちに,博士や教授
る基本的な真理についてニール・A・マックスウェル長老
や傑出した研究者になることを望んでおられるわけではあ
が述べた言葉を生徒用手引き2ページの「参考資料A」から
りません。神が望んでおられるのは,彼らが全世界に遣わ
読んで話し合う。マックスウェル長老が指摘している真理
される主の大使として,その召しを尊んで大いなるものと
がありのままであることは,なぜ大切なのでしょうか。
することができるように,これらのことについて十分な知
■
絶対的な真理と相対的な真理には,どのような違いがあ
るでしょうか。(生徒用手引き3ページの「参考資料A」;
しもべ
識を持つことです。
」
(Priesthood and Church Government,
56)
またはスペンサー・W・キンボール「絶対的な真理」『聖
1
第1章
C.啓示された真理に忠実に従うことは大いなる祝福
をもたらし,最終的には救いをもたらす。
して,命を与える真理と光を追求する努力をやめてしまっ
なぜ苦労して知識と真理を得なければならないのでしょ
得る機会を逃すことになるかもしれない。キンボール大管
■
うか。生徒用手引き2ページの「教義の概要C」に記されてい
ている末日聖徒があまりにも多い。その結果,永遠の命を
長は聖徒たちに対して次のように教えた。
る参照聖句と生徒用手引き4ページの「参考資料C」の引用
「わたしたちは学問を得られるように主に願い求めるだ
文を使って,知識と真理を得ることによってもたらされる
けで手を休めていてはなりません。霊感を受けるには,そ
利点について話し合う。
のための努力をしなければなりません。収穫を得るには働
■
教義と聖約93:26−28を読む。完全な真理を受けるには
何をしなければならないでしょうか。(神の戒めを守る。)
かなければなりません。深く考え,努力し,忍耐し,能力
を養わなければならないのです。……
39−40節を読む。どのような場合に,光と真理はわたした
主はわたしたち末日聖徒に対して,この世の高尚な学問
ちから取り去られるでしょうか。(わたしたちが神の戒め
を得るとともに神の知識をも修めるよう求めておられま
を守らないと,サタンは光と真理を取り去る。)これらの
す。しかし,あまりにも多くの聖徒がテレビを見ることや,
聖句は子供たちを光と真理の中で育てることの大切さを強
自分たちの成長や人々の祝福につながらない習慣や活動に
調していることに注目する。
時間を使いすぎています。わたしたちはこの世でできるこ
とについて,もっと高い理想を持とうではありませんか。
まとめ
末日聖徒ほど真理(啓示された真理とこの世にかかわる真
理の両方)を得ることに高い望みを抱いている民はいない
真理と知識を求める努力を毎日行って,これを生涯続け
るよう生徒にチャレンジする。すでに得ている知識で満足
2
はずです。
」
(
“Seek Learning, Even by Study and Also by
Faith,
”Ensign, 1983年9月号,5−6)
第2章
啓示――真理への道
はじめに
教義と聖約88:67−68と生徒用手引き6ページの「参考資
歴史を通じて,族長,預言者,使徒,そして聖なる神権
み
な
の権能を持っていたそのほかの人々は,主の御名によって
儀式を執行し,主から命じられたことを行ってきました。
料A」から啓示に関するジョセフ・スミスの言葉について
神権者の行動の限界を超えた分野においては,神権を持っ
話し合う。
ていなくとも,思慮と大いなる知恵があり,隣人を向上さ
せたいと考えたほかの善良で偉大な人々が,多くの国民の
教えるためのアイデア
間に全能者によって遣わされました。彼らは完全な福音で
はなかったにしろ,自分たちに授けられて正しく用いるこ
A.神は啓示を通して神の子供たちに真理を与えられる。
とのできる真理の一部を人々に与えたのでした。中国の哲
1コリント2:9−11の聖句を黒板に書き出して,生徒の一
人であった孔子,ペルシャの賢人ゾロアスター,インドの
人に読んでもらう。わたしたちが神の真理に関する知識を
ゴータマすなわちブッダ,ギリシャのソクラテスとプラト
得る方法について,また神の真理を追求する際に論理的思
ンなどです。これらの人々は皆,全世界に放射されている
考の果たす役割について話し合う。オリバー・カウドリが
光の一部を持っていました。そしてわたしたちは今日この
学んだ,研究した後に主に願い求めるという原則(教義と
大会で,その光について聴いてきたのです。彼らは限定さ
聖約8:1−3;9:7−9参照)を紹介することによって,話
れた意味において主の弟子であって,神が許された範囲に
し合いを充実させる。
おいて真理を与えるために異教の国民の間に遣わされまし
■
■
生徒にアルマ29:8を黙読するように言う。ここでは主の
た。
普遍の愛と,真理を明らかにすることに関する主の普遍の
……このような人々は,主の業を助けるために時の初め
思いが説明されている。この聖句の意味を生徒に尋ねる。
から用いられてきました。全能の神の手のうちにあって働
啓示に関してチャールズ・W・ペンローズ兄弟とオーソ
く,力ある助け手でした。彼らは意識して,あるいは無意
ン・F・ホイットニー長老が語った以下の言葉のいずれか
識のうちに神の目的を果たしていたのでした。」(ホイット
一つ,または両方を読む。
ニー,Conference Report,1921年4月,32−33)
「古代において神の霊感を受けていたのはユダヤ人の聖
典を書きつづった人たちだけではありませんでした。……
B.神は様々な方法で真理を明らかにされる。
神は地のあらゆる人に,真理の光であり,真理を明らかに
■
する神の御霊を,多少なりとも授けることをお許しになり
子らに対して真理を明らかにするために用いられる方法を
ました。……時代や人種,国籍を問わず正直な心を持って
生徒に挙げてもらう。神は啓示を与える方法をそれぞれど
熱心に神を祈り求め,真理を望み,神についての教えを受
のように用いられたかを示す例を聖典から紹介する。
けることを願う人々は,神から教え導かれます。真理の言
■
葉や,神に教え導かれた事柄について霊感あふれる言葉を
現を受けたり,天からの声を聞いたりすることによっての
語った吟遊詩人や賢人,詩人たちがいました。そのような
み福音の証がもたらされると考えることがある。真理を明
人たちが記した多くの事柄は記録され,継承されました。
らかにするために主が通常用いられる方法を生徒に尋ね
そうした記録や伝承の断片が,あらゆる国と民族の間で発
る。(霊感。)スペンサー・W・キンボール大管長は,絶え
見されています。……神の御霊はあらゆる時代の人々に対
ず与えられる個人の啓示に聞き従うよう勧告した。それは
して,ある程度まで教えと導きを与えてこられました。人
目を見張るような方法で与えられるのではない。以下の言
の理解に光を投げかける主の霊は,わたしたちが生きてい
葉について話し合いを展開する。
み たま
「黒板1」を使って,啓示の経路または方法を描く。神が
若い人たちは,目を見張るような奇跡を目撃したり,示
あかし
くために必要な霊であって,光の霊であり,命の霊だから
「燃えるしば,煙に包まれた山々,四つ足の生きものが入
です。……この霊は一つの民族や一つの国家,一つの時代
った大きな布,クモラやカートランドでの出来事は事実で
や世代だけに限って与えられるのではありません。それは
した。しかし,これらは例外的な出来事です。モーセやジ
普遍的なものです。わたしたちは神の御霊によって生き,
ョセフ,あるいは今日の預言者に与えられる啓示の多くは,
行動し,存在しているのです。それは世に来るすべての人
これらのように目を見張るような方法で与えられるもので
を照らす,まことの光です。」(ペンローズ, Journal of
はありません。人々の注目を集めるような劇的なものでは
Discourses,23:346)
み わざ
「〔神は〕御業を成し遂げるために聖約の民と同様,ほ
かの人々をも使っておられます。わずかな数の聖徒たちで
成し遂げるには膨大であり,途方もなく,とても手におえ
ない業だからです。……
こんにち
なく,深い感銘を与えることによって伝えられるのです。
そのような劇的な方法で与えられることばかりをいつも期
待しているために,多くの人々は,神と人との間に絶えず
啓示が与えられていることをまったく見落としてしまうの
です。」(Conference Report,Munich Germany Area
3
第2章
Conference 1973,77)
言者ジョセフ・スミスが神に関する事柄を知るプロセスを
聖典に記された出来事から,啓示は心に受ける小さな印
象や御霊のささやきによっても与えられることを説明する
とよい。エリヤがホレブ山で主の声を聞いたとき(列王上
しんちゅう
19:4−12参照),ニーファイが真鍮の版を手に入れるため
説明するために使った言葉,
「時間」
,
「経験」
,
「慎重で重々
しく厳粛な考え」を強調する。
1コリント2:9−16で使徒パウロが述べている事柄を生徒
とともに分析する。以下を指摘する。
に御霊によって導かれたとき(1ニーファイ4:6参照)の出
1. わたしたちは神を愛さなければならない。
来事をすぐれた例として挙げることができる。
2. 神に関する事柄は神の御霊によって知らされる。
真理に関する啓示は聖文を研究し,深く考えることがき
っかけとなって与えられることがしばしばある。
C.わたしたちは啓示を受けるためにふさわしくなけ
ればならない。
■
生徒用手引き5ページの「教義の概要C」から参照聖句を幾
つか選んで,個人の啓示を受けるにふさわしくなるために,
どのようなことができるかを説明する。生徒用手引き7ペ
ージからジョセフ・スミスの言葉を読んで,話し合う。預
4
3. 生まれながらの人は神に関する事柄を受けることが
できない。
まとめ
教義と聖約76:10を読んで,この聖句はすべての教会員
に向けられたものであることを指摘する。生徒が啓示の御
霊である神の御霊を受けることができるように,真理を探
究しながら研究と祈りを継続するようチャレンジする。
第2章
「黒板1」
啓示の経路
文
現
聖
示
耳
に
聞
こ
え
る
声
道
夢
エゼキエル40:2
天
使
御
霊
の
声
具
使徒10:9−17
教義と聖約76:12−14
マタイ3:16−17
2ペテロ1:17−18
エノス1:9−10
ヒラマン5:33
教義と聖約18:34−36
創世28:10−16
ルカ1:11−13
マタイ1:20
使徒10:3−4
1ニーファイ2:2
モーサヤ27:11−17
列王上19:12
1コリント2:9−11
教義と聖約8:2−3
1ニーファイ16:26−29
教義と聖約3,6,11,14,
17章の前書き
アブラハム3:1−4
教義と聖約130:13
5
第3章
永遠の父なる神
はらから
はじめに
■
ヨハネ17:3の聖句を黒板に書いて,その意味を話し合う。
あかし
アルマは,「あなたの同胞であるこのすべての人の証と,
すべての聖なる預言者たちの証」と「聖文」が,神の存在
を示していると述べて,自分の主張を見事にまとめている
永遠の命とは,神と御子イエス・キリストとを知ることで
(アルマ30:44)。預言者たちは神の存在や実在について論
ある点を強調する。この知識には神の持っておられる幾つ
争する必要性をまったく感じていないことを指摘する。そ
かの神聖な性質を理解して説明できる以上のことが含まれ
れどころか彼らは神との間で自分が経験した事柄を大胆に
る。神との関係を発展させることをも含んでいるのである。
証している。
ある人について知ることは,その人との関係にどのような
アルマは地球自体が至高全権の創造主の証であると述べ
影響を与えるでしょうか。神を知ることによって,神との
た(アルマ30:44参照)
。宇宙とこの自然の世界は,どのよ
関係はどのように強められるでしょうか。本章では神の持
うに神の存在を示しているでしょうか(生徒用手引き9ペ
っておられる性質に関する真理を学ぶことを説明する。こ
ージの「参考資料A」参照)。「山の家」(『賛美歌』21番)
れはわたしたちが永遠の命を得るための必須事項の一つで
も自然界に見られる神の御手になる業について力強く表現
ある。
している。一人の生徒に歌詞を読んでもらう。
■
み
て
わたしたちが神について知っている事柄は,神が預言者
を通して語ってこられた範囲に限定されている。1820年に
B.神は全人類の父である。
預言者ジョセフ・スミスが受けた最初の示現と(ジョセ
■
フ・スミス―歴史1:11−20参照),ジョセフが1844年に殉
ばしば用いることを指摘する。生徒用手引き9−10ページの
教する直前に行った有名なキング・フォレットの説教は,
「参考資料B」から,大管長会による声明とブリガム・ヤン
神の性質に関して教義上大切な教えである。預言者ジョセ
グ大管長の言葉を読む。御父のもう一つの称号は聖なる人
フは務めに着手してから終えるときまで,天父に関して次
であることを指摘する(モーセ7:35参照)
。
第に理解していった事柄を人々に紹介した。最初の示現は
■
以下の事柄を明らかにしている。
祈りについて指示を求めたとき,イエスは「天にいますわ
1. 神とイエス・キリストは栄光に満ちた体を持つ御方
である。
わたしたちは父なる神を指してエロヒムという称号をし
イエスは御父が父であることを強調された。弟子たちが
れらの父よ」
(マタイ6:9)と語りかけて祈りを始めるよう
に教えられた。救い主は亡くなって復活された後,マグダ
2. 御父と御子は別個の御方である。
ラのマリヤに対して,「わたしの父またあなたがたの父で
3. 御父は御子を通して,管理し,働かれる。
あって,わたしの神またあなたがたの神」(ヨハネ20:17)
キング・フォレットの説教においてジョセフ・スミス
のもとへ昇って行かなければならないことを説明された。
は,福音の第一の原則には神の属性を知ることが含まれる
わたしたちは天父の霊の子供として生まれた。わたした
と宣言した。神は「かつてわたしたちのような人であられ
ちは紛れもなく御父の子供である。生徒用手引き8ページ
た……,わたしたちすべての者の父であられる神御自身が,
「教義の概要B」に挙げられている聖文と生徒用手引き9−
イエス・キリスト御自身と同じように,ある地球に住まわ
10ページの「参考資料B」に記されている言葉を使って,
れた……。
」
(生徒用手引き10ページの「参考資料B」参照)
この概念を発展させる。神の文字どおりの子供であるとい
24年間にわたったジョセフ・スミスの務めの持つ特徴の一
うことは,わたしたちが神の形にかたどって造られたとい
つは,神の属性について絶えず啓示を受けていたことであ
う聖文の主張が正当であることを証明していることを指摘
る。ジェームズ・E・ファウスト長老は神の性質について
する。生徒用手引き10ページに記されているスペンサー・
さらに説明を加えている。(「パルマイラの近くでの壮大な
W・キンボール大管長の言葉を読む。
示現」
『聖徒の道』1984年,113−118参照)
■
生徒用手引き10ページの「参考資料B」に記されている
預言者ジョセフ・スミスの言葉について話し合う。「神御
教えるためのアイデア
自身,かつては今のわたしたちのようであられた。そして
今は昇栄された人で……あられる。
」
(Teachings,345)キ
A.神の実在は現実の事柄である。
ング・フォレットの説教は神の性質についてどのようなこ
アルマと反キリストのコリホルの間で行われた問答を使
とを教えているでしょうか。神は永遠に進歩し続けると教
って,神が実在する証拠について話し合う(アルマ30:
えているでしょうか。もしそうであれば,神はどのように
37−52参照)
。この対話の中でコリホルは無神論(38節参照)
進歩されるのでしょうか。以下の質問をする。
■
から不可知論(48節参照)へと発展させて,最終的に自分
1. 神は属性や特質において進歩されるでしょうか。
の罪を認め,自分が「神がましますことを前から知ってい
(いいえ。神はこれらの点において完全であられる。
ました」
(52節参照)と告白した。
マタイ5:48;アルマ7:20参照)
7
第3章
2. 神は知識,光,真理において進歩されるでしょうか。
(いいえ。神は完全な知識,光,真理を持っておら
れる。教義と聖約66:12;2ニーファイ2:24参照)
万物を知っておられ,全能である。
4. 神は知識に付随するあらゆる力を持っておられる。
神は全知の御方である。
3. 神は御自身の業を成し遂げる力や能力において進歩
されるでしょうか。(いいえ。神は永遠の律法に逆
らったり,人の選択の自由を奪ったりはなされない
が,すべての力を持っておられる。アルマ26:35;
ルカ1:37;1ニーファイ7:12;モーサヤ4:9参照)
しかし,神は進歩される。神の進歩がどのような性質の
ものかを調べるために,生徒用手引き10ページに記されて
いる預言者ジョセフ・スミスの言葉を読む。
神の特性,属性,完全
1. 神は万物の創造主であり,万物を管理しておられる。
2. 神は情け深く,偉大であり,怒るに遅く,慈しみに
満ちておられる。
3. 神は一貫しておられ,不変である。
4. 神はうそをつくことがなく,真理の神である。
5. 神は人をかたより見られない。
6. 神は愛と知識,力,正義,裁きの神である。
C.神は人格も,性格も,属性も完全である。
■
神の完全がどのような性質のものかを説明するために以
まとめ
下の言葉を黒板に書く。神についてこれらの事柄を知るこ
とにより,わたしたちは神を信頼し,神に対して従順にな
れることを説明する。
わたしたちは神を知るために,神の持っておられるまこ
との特質はどのようなものか,神はどのような存在か,有
史以来,神はどのような特性を子らに示してこられたかを
神の完全さの本質
1. 神は復活して,骨肉の体を持っておられる昇栄した
御方である。
2. 神はあらゆる意味での完全さを持っておられる。神
は完全に,思いやりを持ち,真実であり,正直であ
り,善を行われる。
3. 神は完全な英知,光,真理を持っておられる。神は
8
理解しなければならない。しかし,この知識だけにとらわ
れると,知性に偏りすぎる傾向がある。神を知るためには,
神がわたしたちの父親であることを受け入れ,神の勧告と
愛にこたえることによって神との関係を高めていかなけれ
ばならない。生徒に,天父との間に強い愛を育てていくよ
うチャレンジする。
イエス・キリスト――神の御子
はじめに
第4章
教えるためのアイデア
本章では神の御子イエス・キリストの人物像と,神会に
しょくざい
おけるキリストの役割について検討する。贖罪,創造にお
ばんさん
せいさん
いてキリストが果たされた役割,復活,主の晩餐の聖餐,
再臨については,ほかの章で詳しく扱う。
A.イエス・キリストは文字どおり永遠の父なる神の
御子である。
■
聖書とモルモン書は,ともにイエス・キリストが神の文
字どおりの御子であることを証している(ルカ1:31−35;
黒板に以下の参照聖句の箇所を書き出す。ヨハネ14:6;
1ニーファイ11:14−22参照)
。1ニーファイ14:18,21を強
1ペテロ2:21;3ニーファイ18:16;3ニーファイ27:21。
調しながら,神の御子の誕生についてニーファイが見た示
生徒にそれぞれの聖句を読んで,共通のテーマを見つけさ
現を復習する。わたしたちにそれぞれ父親がいるように,
せる。それはイエス・キリストが示された完全な模範であ
イエスにも父親がおられる。ヨセフはマリヤと結婚したが,
る。救い主は永遠の命に至る道を歩まれたことを指摘する。
イエスの父親ではなかった。イエスは常にエロヒムを自分
わたしたちはキリストを知るようにならなければならな
の父として頼っておられた。生徒用手引き12ページの「参
い。そうすることによって永遠の命に至る道を知ることが
考資料A」に記されているジェームズ・E・タルメージ長
■
できるからである。
■
スペンサー・W・キンボール大管長が語った以下の感動
あかし
的な証を読んで,簡単な話し合いを展開する。
「大きな成功を得たいと思うなら,イエスを手本とすべ
老の言葉(
『キリスト・イエス』78参照)
,ヒーバー・J・グ
ラント大管長の言葉から,キリストが神の御子であられる
ことについての証をさらに読むことができる。
■
ジョセフ・スミス訳ヨハネ1:1,13−14を読む。ヨハネは
きです。成熟,意志力,勇気など,人を高める完全ですば
「御父の独り子としての」
(14節)御子の栄光を見たと語った。
らしい資質をすべてこの一人の人物の中に見ることができ
イエスは父なる神からどのような属性を受け継いでおられ
ます。
たでしょうか(14節参照)。イエスは御父の力と栄光のすべ
驚いた暴徒たちは,ぼそぼそと言いました。『ナザレの
イエスを。
』
ナザレのイエスは誇りと勇気と……そして力を持って答
えられました。『わたしが,それである。』兵士たちは『う
しろに引きさがって地に倒れた。
』
2度目にイエスは言われました。
『だれを捜しているのか。
』
て,そして永遠に生きる能力を受け継いでおられた。しか
し,イエスは死すべき体を持つマリヤを母としていたため,
肉体に関するすべての弱さを受け継いでおられた。イエス
は誘惑,病気,飢え,渇き,疲労を感じる状態であられた
(モーサヤ3:7参照)
。神を父親とし,死すべき人を母とする
この組み合わせは,イエスに死と不死不滅の性質を併せて
彼らがその名を告げたとき,イエスは言われました。『わ
与えることになった。それはイエスが地上における独特の
たしがそれであると,言ったではないか。わたしを捜して
使命を果たされるために必要とされるものであった。
いるのなら,この人たち〔イエスの弟子たち〕を去らせて
もらいたい。
』
(ヨハネ18:4−8)
これまで様々なことを話してきましたが,わたしがイエ
ス・キリストについて語ることのできる最も重要なこと
B.イエス・キリストは栄光と,力と,威厳を備えて
おられる。
■
イエスはあらゆるときに完全な栄光と力と威厳を持って
は,イエス・キリストはその教えを身をもって示されたと
おられたでしょうか。イエスは地上で務めを果たしている
いう点です。聖典の中で求められているすべての徳や特質
間,一歩ずつ成長し,進歩を遂げられた。「彼〔は〕最初
を,実際の行いで見せてくださったのです。そのことが理
から完全は受けず,恵みに恵みを加えられた……。彼は最
解できるようになるなら,わたしたちは人間とこの世界の
初から完全は受けず,恵みに恵みを受け続け,ついに完全
本質も理解できるのです。もしその真理と事実を受け入れ
を受けられた。
」
(教義と聖約93:12−13)
ないなら,幸せに満ちた奉仕の生活を送るためのよりどこ
イエスは12歳のときに神殿の中で当時の博学な人々に道
ろとなる,確かな原則やすばらしい真理を得ることはでき
を説くことができるほどの知識を持っておられた。明らか
ません。別な言い方をすると,完全な指導者イエス・キリ
に,イエスが受けられた学問は通常の方法によるのではな
ストの実在を認め,キリストを光として進むべき道を照ら
かった。「イエスは父親のもとで働いておられたが,その
すのでなければ,優れた指導者となるのはきわめて困難な
語ることは他の人々とは異なり,イエスを教えることので
ことなのです。」(「イエス――完全な指導者」『聖徒の道』
きる人はだれもいなかった。教える人を必要とされなかっ
1983年8月号,11参照)
たからである。
」
(ジョセフ・スミス訳マタイ3:25)
12歳から伝道を開始する時が来るまでの間にイエスが受
けられた訓練について,ルカは簡潔ではあるが正確な記録
を残している。「イエスはますます知恵が加わり,背たけ
9
第4章
あがな
も伸び,そして神と人から愛された。
」
(ルカ2:52)ルカの
てもらい,それらを黒板に書き出す。救い主,贖い主,岩,
説明はイエスがまんべんなくバランスよく完成されたこと
良い羊飼い,創造主,解放者,油注がれた者,教師,主人,
を明らかにしている。すなわち,イエスはますます知恵が
判士,主,仲保者,メシヤ,御父に対する弁護者,アルパ
加わり(知的),背たけも伸び(肉体的),そして神から愛
でありオメガ,王などをリストに含める。これらの称号は
され(霊的),人から愛された(社会的)。黒板に「知恵」,
キリストの様々な役割をどのように表しているかについて
「背たけ」,「神から愛される」,「人から愛される」と書く。
話し合う。これらの役割は,わたしたちが救いを得るため
救い主がこれら4つの分野で成長された具体例を生徒に尋
ねて,それを黒板に書き出す。
主イエス・キリストは務めを終えるまでに,地上に来て
に,なぜ大切なのでしょうか。生徒用手引き12ページの
「教義の概要C」に挙げられている参照聖句を使って,生徒
が救い主の様々な役割を理解できるように助ける。
なすべきすべての事柄を成し遂げられた。そして,地が造
■
られる前に父なる神とともに持っておられた栄光を受ける
る(1テモテ2:5参照)。イエス・キリストが,わたしたち
イエス・キリストは神と神の子らの間に立つ仲保者であ
準備を整えられた(ヨハネ17:5参照)。生徒用手引き13ペ
と御父の間を執り成してくださらないとしたら,わたした
ージの「参考資料B」から,キリストが復活とともに完全
ちは救いを得て,神の前に帰ることができるでしょうか。
を受けられたことについてジョセフ・フィールディング・
人に救いを与え得る名は,キリストの御名のほかに天下に
スミス大管長が述べた言葉を引用する(『救いの教義』第1
与えられていないことを証する(使徒4:12;モーサヤ3:
巻,34参照)
。
17参照)
。救いを得るという望みをかなえてくださる御方は
み
な
進歩することについてキリストが示された模範は,わた
キリスト以外におられないので,わたしたちはキリストに
したちが進歩するための努力をする際にどのように役立つ
ついてよく知り,キリストの生涯と使命を研究し,キリス
でしょうか。イエスの模範は,わたしたちが一日で完全に
トに対する信仰を深めるために時間を使い努力を傾けるべ
なることができないという大切な真理を教えている。イエ
きである。
スが恵みに恵みを受けて完全を得られたように,わたした
■
ちも最終的に完全を受けるまで教訓に教訓,恵みに恵みを
との間で,どのような関係を築くべきかを強調するために,
加え,一度に少しずつ加えていかなければならない。主は
生徒用手引き13ページの「参考資料C」からニール・A・マ
そのように命じられた。「あなたがたは,わたしの戒めを
ックスウェル長老の言葉を読む(「ああ,聖なる贖 い主」
■
イエス・キリストの果たされる役割と,わたしたちが主
あがな
守るならば,父の完全を受け,わたしが父によって受けて
『聖徒の道』1982年4月号,11参照)
。
いるように,あなたがたはわたしによって栄光を受けるか
らである。それゆえ,わたしはあなたがたに言う。あなた
まとめ
がたは恵みに恵みを加えられるであろう,と。」(教義と聖
約93:20)わたしたちが進歩の道を歩むとき,イエスが知
イエス・キリストの特質を知って,理解したとしても,
的,肉体的,霊的,社会的に成長されたというルカの証
わたしたちがキリストのようになり,キリストの持ってお
(ルカ2:52参照)は,バランスのとれた進歩と成長の過程
られる特質を身に付けるために努力しなければ,何の価値
を歩まなければならないことを教えている。
もない。「わたしや天におられるあなたがたの父が完全で
教義と聖約88:5−12を読んで,考える。イエス・キリス
あるように,あなたがたも完全になることを,わたしは望
トが現在,永遠の王位に座して偉大な力を持っておられる
んでいる。」(3ニーファイ12:48)「したがって,あなたが
ことを生徒が理解するように助ける。キリストはすべての
たはどのような人物であるべきか。まことに,あなたがた
光,すべての真理,そして,この地上のすべての創造物に
に言う。わたしのようでなければならない。
」
(3ニーファイ
含まれるすべての力の源であられる。死すべき世にいるわ
27:27)選択を迫られるときに,次の質問の答えに基づい
たしたちにとって,キリストが備えておられる完全を理解
て判断するよう生徒にチャレンジする。「キリストはわた
することは不可能である。
しに何を行うよう望んでおられるだろうか。どうすればキ
■
リストのようになることができるだろうか。
」
C.イエスは,神の御子として,わたしたちの救いに
欠かせない多くの役割を果たしてくださっている。
■
生徒に考えられる限りのイエス・キリストの称号を挙げ
10
第5章
聖 霊
聖霊は何を行われるのですか。答えを黒板に書き出す。聖
はじめに
たまもの
み たま
聖霊とその使命については本章で,聖霊の賜物と御霊の
賜物については16章で検討する。
霊は霊の御方であり,神会の第三の御方である。教義と聖
約130:22を読んで,聖霊は神会のほかの御二方と,どのよ
うに異なっているかを見つける。聖霊の特別な役割は,生
生徒に,この世で最も大切な目標は何かを尋ねる。神殿
徒用手引き15ページの「教義の概要A3」に挙げられている
でふさわしい人と結婚する,証を得る,永遠の命を得るた
聖句に示されているように,御父と御子を証することであ
めの準備をする,伝道活動を行うなどの答えが考えられる。
る。
これらの義にかなった目標は,主から与えられている目標
■
を補完することを指摘する。
て教える(生徒用手引き15ページの「教義の概要A2」参照)
。
■
あかし
聖霊はあらゆることを御存じであることを,聖句を使っ
「永遠の命とは,唯一の,まことの神でいますあなたと,
また,あなたがつかわされたイエス・キリストとを知るこ
とであります。
」
(ヨハネ17:3)
人は神と御子イエス・キリストの姿を見なくても御二方
B.聖霊はわたしたちに祝福と恵みを与える特別な使
命を果たされる。
■
イエス・キリストについて多くの名称があるように,聖
を知ることができるでしょうか。この知識は聖霊の力と影
霊にまつわる名称も数多くある。生徒にそれらの名称を挙
響力によってもたらされる。最初にジョセフ・F・スミス
げて,簡単に説明するように言う。これらの名称は大切で
大管長の証を読んでから,神会の第三の御方である聖霊に
ある。ブルース・R・マッコンキー長老は,聖霊の「使命
ついて話し合う。
は聖霊が持っておられる各種の名称に関連する働きのすべ
「
『唯一の,まことの神でいます〔御方〕と,また,
〔神〕
てを成し遂げることである」と述べた(Mormon Doctrine,
がつかわされたイエス・キリスト』を知ることは,末日聖
359)
。話し合いの中で「黒板1」を参照する。
徒はもちろん,すべての人の義務である。……では,どう
■
すれば『唯一の,まことの神でいます〔御方〕と,また,
について話し合う。生徒用手引き17ページの「参考資料B」
〔神〕がつかわされたイエス・キリスト』を知ることがで
かぎ
約束の聖なる御霊として聖霊が果たされる役割の大切さ
から,約束の聖なる御霊に関するジョセフ・フィールディ
きるだろうか。この知識を得ることは,永遠の命への鍵,
ング・スミス大管長の定義を読んで,話し合う(『救いの
あるいは奥義を得ることである。それは聖霊によらなけれ
教義』第1巻,45参照)
。
ばならない。御父のことを人に表し,わたしたちの心にキ
リストを,すなわち十字架にかけられ,死からよみがえら
まとめ
れた御方を証するのが聖霊の務めだからである。これ以外
59)
にこの知識を得る方法も手段もない。
」
(Gospel Doctrine,
1コリント12:3を読み,話し合ってからレッスンを終え
る。神が生きておられ,イエスがキリストであることを知
教えるためのアイデア
るようになった人は皆,聖霊の力によってそれを知るよう
になったことを指摘する。
A.聖霊は神会の第三の御方である。
■
以下の質問を黒板に書く。聖霊はどのような御方ですか。
11
第5章
「黒板1」
聖 霊
聖 句
称号または機能
意 味
ヨハネ14:26
慰め主
慰め,平安と喜びをもたらす
教師
教え導く
真理を思い起こさせる
真理を思い起こし,認めるよう助ける
しっせき
ヨハネ16:8
罪を叱責する
罪を悟らせる,または罪があることを宣告する
ヨハネ16:13
真理に導く
コンパスのような働きをする
1コリント12:1−11
賜物を与える
霊的な賜物を与える
2ニーファイ32:3
天使が語る力
キリストの言葉をもたらす
2ニーファイ32:5
個人の導き
決断を導く
思いを見分ける
他人の思いを明らかにする
アルマ10:17
きよ
アルマ13:12
聖める
清く,純粋にする
教義と聖約45:57
欺きから守る
サタンの欺きをあばく
教義と聖約46:30
祈るときに導きを与える
祈るときに考えを思いつかせる
教義と聖約68:4
聖文を与える
主の言葉(聖文)を与える
教義と聖約132:7
結び固める
この世と永遠にわたって有効なものとする
13
第6章
わたしたちの前世
1. 英知は真理の光である。
はじめに
■
2. 英知は創造されたものではない。
レッスンを始めるに当たって,エライザ・R・スノーが
3. 英知はこれまで常に存在してきた。また今後も常に
作詞した有名な賛美歌「高きに栄えて」(『賛美歌』180番)
存在する。
を歌ってから,歌詞について簡単に話し合うとよい。
■
なぜ多くの哲学者や詩人が,人はこの世に来る前に存在
B.わたしたちは神の子供として前世で生活していた。
していたという感覚を抱くのかについて考える。ウィリア
■
ム・ワーズワースの「幼年時代を追想して不死を知る頌」
御方であるかということと,わたしたちと神との関係であ
の第5節を読むか,配布資料として生徒に配る。前世を信
る。わたしたちが神の子であり,地上に来る前に神ととも
じていることを表す語句に注目するように言う。
に住んでいたという教義の持つ意義について話し合う。
しょう
生徒用手引き19ページの「参考資料B」から,大管長会
ぼうきゃく
われらの誕生はただ眠りと前世の忘却とに過ぎず。
われらとともに昇りし魂,生命の星は,
いずこ
かつて何処にか沈みて,
はる
遥かより来れり。
過ぎ去りし昔を忘れしにはあらず,
また赤裸にて来りしにもあらず,
ひ
栄光の雲を曳きつつ,
われらの故郷なる神のもとより来りぬ。
いと
われらの幼けなきとき,天国はわれらのめぐりにありき。
ろうごく
やがて牢獄の影は,
おお
おいたち行く少年の上に蔽いかかる。
されど少年は光明を見つめ,その源を知り,
よろこびもて見まもる。
若人は日々に東方の空より遠く旅すれど,
なお自然の祭司にて,
美しき幻影に
道すがら伴わる。
ついに大人となれば,幻影は消えて,
やがて尋常の日の光の中にとけ込む。
神が明らかにされた最も偉大な真理は,神がどのような
の声明を読む。
■
地上の生活に関する指示と準備は前世,すなわち霊界で
始められたことを示すために教義と聖約138:53−56とアブ
ラハム3:22−25を読む。前世での教えと進歩が現在の機会
にどのような影響を与えているかについて話し合う。生徒
用手引き19−20ページの「参考資料B」から,前世におけ
る進歩について語ったデビッド・O・マッケイ大管長の言
葉を読む。
C.父なる神は救いの計画を備え,それにより神の霊の
子供たちが,ついには神のようになれるようにされた。
■
生徒用手引き20ページの「参考資料C」から,ブルー
ス・R・マッコンキー長老の言葉を読んで,父なる神が救
いの計画を作られたことを生徒が理解するように助ける。
■
「黒板1」を使って,父なる神の計画とルシフェルの計画
を対比する。
■
生徒用手引き20ページの「参考資料C」から,J・ルーベ
ン・クラーク・ジュニア副管長の説明を読み,前世でサタ
ンが計画した事柄について話し合う。
(ウィリアム・ワーズワース,田部重治訳「幼年時代を追
想して不死を知る頌」『ワーズワース詩集』岩波文庫,
まとめ
167−168)
天での戦いは終わったわけではない。戦いの場が,この
教えるためのアイデア
地球に移されただけである。天での場合と同様,戦いの標
A.英知,すなわち真理の光は,永遠であり,常に存
在していた。
を有しているという知識は,どのように悪魔の誘惑に打ち
生徒用手引き18ページの「参考資料A」から,ジョセ
モーセがサタンと相対した様子をモーセ1:12−13から引用
フ・フィールディング・スミス大管長の言葉を読む。アブ
するとよい。12節でサタンはモーセを「人の子」と呼んだ
ラハム3:18と教義と聖約93:29について話し合う。これら
ことに注目する。モーセは13節で,自分を「神の子」と呼
の聖句から英知について学ぶことを挙げるように言う。
んで訂正している。
■
的は人の霊である。わたしたちは神の子として神聖な起源
勝つための力と理解を与えてくれるかについて話し合う。
15
第6章
「黒板1」
神の計画
ルシフェルの反逆の計画
人は選択の自由によって,従うか従わないかを自
ルシフェルはあらゆる人を自分に従うよう強制す
分で選ぶ。
る。
エホバと呼ばれていた長子によって贖罪が行われ
ルシフェルは選ばれた息子となり,全人類を贖う
る。
ことを望んだ。
栄光と誉れは御父に帰する。
御父の栄光と誉れはルシフェルのものとなる。
17
第7章
創 造
はじめに
要B2」参照)
。
■
■
創造という語には,どのような意味があるでしょうか。
前世でミカエルと呼ばれていたアダムは,この地球を創
造するエホバを手助けした。生徒用手引き22−23ページの
聖書の読者は多くが「無から創り出す」という意味だと考
「参考資料B」でジョセフ・フィールディング・スミス大管
“create”参照)
。神
えている(Oxford English Dictionary,
長が述べているように,ほかの人々も創造を手伝ったと思
は無から世界を創造されたのでしょうか。生徒用手引き22
われる(
『救いの教義』第1巻,71−74参照)
。
ページの「参考資料B」から,
「創造」を定義した預言者ジ
■
ョセフ・スミスの言葉について話し合う。
の創造を説明していることを説明する。
■
神が世界をどのようにして創造されたか,あるいは組織
されたか,神はいつそれを行われたか,そのためにどのく
■
「黒板3」を使って,モーセ書と創世記の記述は霊と物質
創造の6つの時期で,それぞれどのようなことが起こった
かを生徒に質問する。生徒の答えを黒板に書き出す。
らいの期間を要したかなどについて憶測することは意味が
創世記,モーセ書,アブラハム書に記された創造に関す
ない。主はこの情報を明らかにしておられないが,福千年
る3つの記述が一致していることを指摘する。聖典に記さ
の間に創造の詳細を明らかにすると約束しておられる(教
れている創造の過程に疑問を投げかけるような科学的発見
義と聖約101:32−34;2ニーファイ27:7,10参照)。わた
は存在しない。
したちは創造がどのように行われたかをまだ理解していな
■
いが,主はなぜ地球を創造されたかについてわたしたちに
の出来栄えを御覧になって,それらを非常に美しいと言わ
啓示しておられる(1ニーファイ17:36;モーセ1:39参照)
。
れた。エホバはその日を聖別された。救い主が,わたした
創造の過程について話し合う際に,本章の最後に記され
ちのために作られた地球について語られた言葉を教義と聖
■
ている「黒板1−4」を使って,わたしたちの天の御父の創
造された地球が美しく変化に富み,驚くべきものであるこ
とを生徒が理解できるように助ける。
創造の第7日目にエホバは働きを休まれた。エホバは創造
約59:16−21から読む。
「目を楽しませ,心を喜ばせるため」
(18節)と「神はこれらのものをすべて人に与えたことを喜
んでいる」
(20節)に注目する。主はわたしたちがすべての
ことに主の手を認め,主の戒めを守ることを望んでおられ
教えるためのアイデア
る(21節参照)
。
A.万物は物理的に創造される前に,霊的に創造された。
C.わたしたちは神の創造物の中で独自の役割を与え
られた。
■
「黒板1」を使って,万物は物理的に創造される前に霊的
に創造されたことを教える。
■
霊の創造について話し合うときに,わたしたちが知って
■
「黒板4」に生徒の注意を向ける。堕落によってすべての
命あるものが死すべきものとなったことについての説明で
いるのは霊の創造が行われたということだけであると指摘
ある。
する。いつ,どのようにして霊の創造が行われたかについ
■
て聖典は明らかにしていない。現時点で,その過程自体を
どって創造されたのは人類だけであった。聖典は,わたし
知ることは,わたしたちにとって大切ではない。大切なの
たちが神の形にかたどって創造されたことを確認してい
は,すでに明らかにされている真理,すなわち,わたした
る。生徒用手引き22ページの「教義の概要C1」に挙げられ
ちは神の子供であり,命あるものは,すべて最初に霊とし
ているこれらの聖句を読んで,話し合う。
神はすべての命あるものを創造されたが,神の形にかた
て存在していたということである。生徒用手引き22ページ
生徒用手引き23ページの「参考資料C」から,1909年に
の「参考資料A」から,霊の創造に関するマッコンキー長
大管長会が発表した「人の起源」と呼ばれる声明を読む。
老の言葉を読む。
わたしたち一人一人が愛にあふれる天父の文字どおりの息
子娘であることを知ることによって,わたしたちは兄弟で
B.物質的な創造は神の計画に従って行われた。
■
「黒板2」について話し合う。創造の計画は神々の評議会
あり,価値ある存在であるという意識を持つことができる。
■
神はエバを造るに先立って,
「人が独りでいるのは良くな
において計画されたことを指摘する(アブラハム4−5章参
い」とエホバに言われた(モーセ3:18)。人が独りでいる
照)
。その評議会を説明する預言者ジョセフ・スミスの言葉
のはなぜ良くないのでしょうか。男と女がともに存在する
が生徒用手引き22ページの「参考資料B」に記されている。
ことは,なぜ大切なのでしょうか。
■
実際にこの地球を創造されたのは,どなたでしょうか。
聖典の中でも特に新約聖書はイエス・キリスト,すなわち
■
黒板に「ふさわしい助け手」と書く。主はエバを説明す
るために,この言葉を使われた。
「彼のためにふさわしい助
エホバが御父の指示の下でこの地球を創造されたことをは
」
(モーセ3:18。強調付加)この聖句で「ふ
け手を造ろう。
っきりと教えている(生徒用手引き22ページの「教義の概
さわしい」という語は,どのような意味で用いられている
19
第7章
でしょうか。
(調和する,等しい,ちょうどよい,適した)
■
モーセ2:28で神が与えた二つの戒めとは何でしょうか。
男と女は増えて,地に満ちるように(子供たちを持つ),
まとめ
霊の創造に関する記述を読んで,考え,創造について理
また地上のほかのすべての創造物を治めるよう命じられ
解できるよう祈ることを生徒にチャレンジする。わたした
た。主がわたしたちに与えられたあらゆる資源を正しく管
ちは神の子供であることを理解しなければならない。また,
理するために,全体として,また個人として受けている責
皆兄弟姉妹であること,愛にあふれる神は,この地球と地
任について話し合う。
上の万物をわたしたちの益と発展のために創造されたこ
と,わたしたちは神の創造物を有益に用いるよう期待され
ていること,さらに,神が行ってこられたすべてに常に感
謝すべきことを理解しなければならない。
20
第7章
「黒板1」
霊の創造
万物は霊的に創造された
「主なる神であるわたしは,わたしが語ったすべてのものを,それら
が地の面に自然に存在するに先立って霊的に創造した。
」
(モーセ3:5)
霊の創造には人だけでなく植物や動物も含まれる。
「黒板2」
創造に関する主の計画
アブラハム4−5章の記述は創造に関する主の計画である。
アブラハム4−5章には天において神々がこの地球と地に住むものにつ
いて立てた計画が記録されている(アブラハム4−5章の前書きも参
照)。
21
第7章
「黒板3」
霊と物質の創造
万物は物質的に創造された
創造に関する記述は霊と物質の創造について記している(創世1−2
章;モーセ2−3章参照)。
創造のこの段階は霊的である。なぜならば,すべての命あるものは,
まだ死すべき状態になく,御霊によって生かされていたからである
(モーセ3:9参照)。
創造のこの段階は物質的でもある。なぜならば,存在したすべての命
あるものは触れることのできる物質的な形で存在したからである。
したがって,これは霊と物質の創造である。
「黒板4」
人とすべての生けるものは死すべき存在となった
「人は生けるもの,地上における最初の肉なるもの,また最初の人と
なった。」(モーセ3:7)
「体とは死すべき状態そのものを指〔す〕……。」(ジョセフ・フィー
ルディング・スミス『救いの教義』第1巻,74)
人類は堕落と同時に死すべき体を持つ最初の者となった。その他すべ
ての命あるものは堕落の後に死すべき存在となった。
23
第8章
堕 落
はじめに
生徒に「堕落」という語を定義してもらう。生徒用手引
B.アダムとエバは自分自身の選びによって堕落を引
き起こした。
■
モーセ3:17を読む。神はアダムとエバに禁じられた実を
き28ページの「参考資料D」から,堕落に関するジョセ
食べてはならないと命じられたとき,なぜ「それでも,あ
フ・フィールディング・スミス大管長の言葉を読む。「ア
なたは自分で選ぶことができる。それはあなたに任されて
ダムがエデンの園を追い出されたとき,主はアダムにある
いるからである」という条件を付け加えられたのでしょう
宣告を下された。人によってはその宣告を恐ろしいことで
か。神はわたしたちの選択の自由を滅ぼそうとするサタン
あると考えている。しかしそれは恐ろしいことではなく,
の意図を退けておられたのでしょうか(モーセ4:4参照)。
祝福であった。
」
(
『救いの教義』第1巻,109)刑罰が定めら
その実は,すべての問題や危険が付随する死すべき状態へ
れている行為をどうして祝福と考えることができるでしょ
の通路であった。そして,死すべき状態へは自由に入るこ
うか。
とができなければならなかった。生徒用手引き27ページの
「参考資料B」から,自由に選択できるこの状態に関するジ
教えるためのアイデア
ョセフ・フィールディング・スミス大管長の説明を読む。
A.エデンの園における状態は死すべき世の状態とは
違っていた。
C.堕落は地上のすべての生き物に重大な変化をもた
らした。
■
生徒用手引き26ページの「教義の概要A」に挙げられて
いる聖句を生徒に読ませる。堕落以前にエデンの園に存在
した状態を見つけて,黒板に書き出す。「黒板1」を活用し
てもよい。そこには堕落以前にエデンの園に存在した状態
■
レッスンの始めに黒板に書き出したリストを使って,堕
落によってこの世にもたらされた変化に注目するように言
う(
「黒板1」参照)
。
■
モーセ6:55を読む。ここで「あなたの子供たちは罪のう
と,堕落によって起きた変化について詳しく説明されてい
ちに宿されるので,まことに彼らが成長し始めると,彼ら
る。
の心の中に罪が宿る」と述べられている。この節はどのよ
リーハイは堕落する以前のアダムとエバが罪のない状態
うなことを教えているでしょうか。末日聖徒は妊娠が罪深
にあったことを指摘した(2ニーファイ2:23参照)
。罪のな
い行為の結果であるとした考えや子供が罪のあるまま誕生
い状態とは,どのような意味でしょうか。罪のない状態と
するとした考えを否定しているので,生徒は,この聖句に
は基本的に,行動,思い,意志において罪悪やとがめられ
よって混乱するかもしれない。この聖句は,そのいずれの
る点のない状態である。アダムは園における生活で不幸や
意味も含んでいるわけではない。この聖句の意味するとこ
罪を経験していなかったので,真の喜びも善も経験してい
ろは,子供は罪の世に生まれるということであり,また,
なかった。罪のない状態は経験していないという意味があ
死すべき肉体を得るとサタンからまったく新しい誘惑を受
るが,かといって罪のない状態は無知と同じ意味ではない。
けるということである。教義と聖約93:38−39は,わたし
アダム(天使長ミカエル)は園において神から教えを受け
たちが元来備えている罪のない状態は誕生によって失われ
た。死すべき状態以前のアダムの生活で幕は引き上げられ
るのでなく,「先祖の言い伝え」と神の律法に「不従順」
ていたからである。生徒用手引き27ページの「参考資料A」
であることによって失われると教えている(生徒用手引き
から,アダムの持っていた知識に関するスミス大管長の説
29ページの「参考資料E」参照)
。
■
明を読む(
『救いの教義』第1巻,103−104参照)
。
■
スミス大管長は堕落する以前のアダムは霊的な体を持っ
ていたと指摘している(生徒用手引き27ページの「参考資
D.堕落は神の救いの計画の中で大切な一段階であった。
あがな
■
1ペテロ1:19−20を読んで,キリストが救い主,贖い主
料A」または『救いの教義』第1巻,73−74参照)。堕落以
として果たす使命に「天地が造られる前から,予任されて
前にアダムが持っていた骨肉の体と堕落後の骨肉の体の違
いた」(欽定訳聖書より和訳)という概念について話し合
いについて話し合う。パウロは1コリント15:44−50で,死
う。もしキリストが確かに予任されていたのであれば,ア
すべき体と復活体をたとえて,肉の体と霊の体と呼んだ。
ダムの堕落は神の永遠の計画の中で予期され,期待されて
50節でパウロは死すべき体を血に置き換えて,
「兄弟たちよ。
いた出来事であったことが明らかである。
わたしはこの事を言っておく。肉と血とは神の国を継ぐこ
■
堕落のもたらした結果の中で,何が地上の試しの時期に
とができないし,朽ちるものは朽ちないものを継ぐことが
おいて大切な要素となっているでしょうか。生徒が以下の
ない」と述べた。したがって,堕落は人から不死の状態を
結論に到達するように導く。
取り去って,死すべき状態をもたらした。
1. わたしたちは死すべき体を得る。その体は最終的に
復活する(教義と聖約88:15−16参照)
。
25
第8章
2. この世における反対のものや誘惑によって,わたし
ることが一つの性質である(生徒用手引き29ページの「参
たちは選択の自由を行使することができる。(選択
考資料E」参照)
。もう一つは,同時に骨肉の体を持ち,肉
の自由は試しの状態においてなくてはならない。)
体に付ける衝動や欲求によって駆り立てられるという性質
(2ニーファイ2:11−16,27;教義と聖約29:39−40
参照)
を持っている(生徒用手引き29ページの「参考資料E」参
照)。使徒パウロは人が霊と肉体の相反する面を持ってい
3. わたしたちは選択の自由を行使して試しと誘惑を克
ることを認めていた(ローマ7:15−25;ガラテヤ5:16−
服することによって義にかなう者となる。言葉を換
17参照)
。肉体の衝動を抑制できないと,ベニヤミン王が語
えれば,わたしたちは罪に真っ向から立ち向かい,
った「生まれながらの人」
(モーサヤ3:19)になってしまう。
罪を退け,克服して初めて義にかなう者となること
■
ができる(2ニーファイ2:13参照)
。
るために「黒板2」を活用する。黒板に図を描いてから,
ベニヤミン王がモーサヤ3:19で述べていることを説明す
アダムとエバは園を追われた後で,堕落が神の計画にお
肉体が支配するときに人はどのような状態になるか(この
いて必要不可欠であったことを知った。そのことを示すた
世的なものや肉体的な満足を求める)と,霊が支配すると
めに,モーセ5:10−11を読む。アダムとエバが以下の事柄
きに人はどのような状態になるか(人の霊に語りかける聖
を確信したことを指摘する。自分たちの背きによって光が
霊の導きに従う)を対比しながら,簡単に話し合う。
■
注がれ,新しい喜びに気づき,子供たちを得る機会を持ち,
キリストの贖罪を通して永遠の命を得る可能性が生まれ
まとめ
た。
近代の啓示はアダムとエバが堕落によって神と神の目的
はんばく
E.堕落の結果として,わたしたちは二重の性質を持つ。
二重の性質という語の意味について話し合う。二重の性
質という語は,わたしたちの持つ相反する性質を指してい
る。わたしたちは神の霊の子供であり,この世に来たとき
に罪のない状態であって,神になる可能性を授けられてい
■
26
を裏切ったとする偽りに反駁している。事実は,堕落は神
の計画の一部であって,それによってアダムと人類家族が
成長に不可欠な経験をすることができるようになったので
ある。肉体と霊のチャレンジを克服するために努力すると
きに,地上の生活に意味と目的が生まれる。
第8章
「黒板1」
堕落の結果,
地球にもたらされた変化
堕落前
堕落後
アダム,エバ,そのほかの命あるものは霊によって生
かされる不死不滅の体を持っていた。
地上の命あるものは死すべきものとなった。つまり血
によって生かされることとなった(アルマ12:23;ジ
ョセフ・フィールディング・スミス『救いの教義』第1
巻,73−74参照)
。
アダムとエバは神の前に住んでいた。
アダムとエバは神の前から追放された(モーセ4:31参
照)
。
地球は楽園の状態だった。
地を従わせなければならなくなった。アダムは顔に汗
してパンを手に入れなければならなかった(創世3:
18−19参照)
。
アダムとエバは「子供を持たなかったであろう。」(2ニ
ーファイ2:23)
アダムとエバは「増えて,地を満たし始めた。」(モー
セ5:2)
アダムとエバは苦痛や悲しみを理解していなかった。
苦痛,悲しみ,病気が地上に出現した(モーセ6:48参
照)
。
アダムとエバは死すべき体の持つ弱点と,罪を犯しや
すい性質があることを知った(アルマ41:11;エテル
3:2参照)
。
アダムとエバは善悪を知り,善を重んじるようになっ
た(2ニーファイ2:11;モーセ5:10−11参照)
。
「黒板2」
選択に関すること
モーサヤ3:19
生まれながらの人
聖 徒
肉 体
霊
肉体が霊よりも優位に立つ
肉 体
霊
霊が肉体よりも優位に立つ
27
しょく ざ い
イエス・キリストの贖罪
第9章
に屈しなかったことを生徒が理解していることを確かめ
はじめに
る。「独り子は数々の誘惑に遭われたが,それらを少しも
もしイエス・キリストが,わたしたちの罪のために苦し
心に留められなかった」と記されている(教義と聖約20:
みを受けられることもなく,死人の中からよみがえられる
22)。イエスは罪からの完全な自由を享受しておられた(1
こともなかったとしたら,わたしたちはどうなっていたで
ヨハネ3:5;教義と聖約45:3−4参照)
。
しょうか。わたしたちは必ず死んで,肉体は墓の中で朽ち,
■
よみがえることはない。自分の罪の汚れが永遠に残るため,
話し合う(イエスの御父は,わたしたちの御父でもある)。
わたしたちの霊はサタンの支配下におかれることになる。
イエスは命と死を支配する力を持っておられた。イエスが
あらゆる人から希望が取り去られる(2ニーファイ9:7−9
御自分の命を捨てることを自らお選びになるのでなけれ
参照)
。
ば,だれもイエスの命を奪うことはできなかった(ヨハネ
■
イエスが御父から受け継がれた不死不滅の性質について
5:26;10:17−18参照)。イエスは神の御子として,死を
教えるためのアイデア
免れるために,いつでも天使たちを呼び寄せることがおで
きになった。
A.神は律法によって宇宙を治めておられる。
■
天父とイエス・キリストは,この世界が創造される前に
定められた宇宙の法則の下で働きを行われる。わたしたち
D.イエスは,御自分の神聖な属性と,御父の力とに
よって,限りない永遠の贖罪を成し遂げられた。
は神の律法に従うことによって祝福を得,律法を破ること
■
によって祝福を失うことを早く悟れば悟るほど,いっそう
かにする。ヨハネ3:16;1ヨハネ4:8−10;教義と聖約
幸福になり良い実を結ぶようになる。この原則を説明する
18:10−11を生徒と分かち合う。これらの聖句は,御自分
ために,教義と聖約130:20−21;132:5;2ニーファイ2:
の子供たちに対する神の永続する愛と,神の目に人の価値
13を読む。
がどれほど大いなるものであるかについて証している。
■
あかし
「黒板1」を使って,永遠の法則に関する話し合いの論拠を
示す。
B.わたしたちは堕落した状態にあるので,贖罪を必
要としている。
あがな
■
救い主が贖いによって使命を果たしておられなければ,
全人類は頼る者のない状態にとどめられていることを生徒
が理解できるように助ける。生徒用手引き30ページの「教
義の概要B1とB2」に挙げられている聖句を参照する。
■
もしキリストが贖いの犠牲を成し遂げておられなかった
としたら,律法を犯しているあらゆる人は,どのようなこ
とになっているかを「黒板2」を使って説明する。この恐
ろしい行く末は,罪のない御方であったイエス・キリスト
を除いて,全人類に及んでいたことを指摘する。
C.イエス・キリストのみが,限りない贖罪を成し遂
げるために必要な資格と特質を持っておられた。
■
御父が贖罪についてどのように考えておられたかを明ら
新約聖書にはサタンがイエスを訪れて3度誘惑したことが
記録されていますが,イエスはこれ以外に誘惑を受けられ
たでしょうか。イエスは「わたしたちと同じように」何度
あかし
も誘惑を受けられたと聖文は証している(ヘブル4:15。ル
カ22:28;ヘブル2:18;モーサヤ3:7;アルマ7:11も参
照)。イエスは誘惑にさらされた経験があったからこそ,
わたしたちが受ける誘惑を完全に理解することがおできに
なる(ヘブル2:18;アルマ7:11−12;教義と聖約62:1参
照)。キリストは厳しい誘惑にさらされたが,決して誘惑
■ 贖罪は,しばしば身代わりの犠牲と呼ばれている。身代
わりという言葉には,どのような意味があり,それは救い
主の犠牲においてどのように表されているでしょうか。
(イエスは正義の要求を満たすために,全人類の身代わり
となられた。
)
■ 贖罪は,しばしば無限の贖いと呼ばれている。どのよう
な意味で贖いが無限なのでしょうか。贖罪の永遠性につい
て生徒が以下の真理を理解するように助ける。
1. 贖罪によってモーセの律法は完全に成就した(アル
マ34:13−14参照)
。
2. 朽ちる性質を持つ肉体は,贖罪の無限の力によらな
ければ,朽ちない体(復活体)になることはできな
い(2ニーファイ9:7参照)
。
3. 全人類の罪を贖うには無限にして永遠の犠牲が必要
であった(アルマ34:10−11参照)
。
4. 救い主はアダムのすべての子孫の苦痛を受けられた
(2ニーファイ9:21参照)
。
5. 救い主は万物の下に身を落として,全人類の罪を御
自分に引き受けられた(教義と聖約88:6;122:8
参照)
。
6. 主が経験された苦しみは,死すべき人ならだれも経
験したり堪えたりできるものではなかった(モーサ
ヤ3:7;教義と聖約19:15−20;生徒用手引き32−
33,34ページの「参考資料D」から,ジョン・テー
ラー大管長とマリオン・G・ロムニー副管長の言葉
を参照)
。
29
第9章
7. 贖いは無数の世界に影響を及ぼしている(教義と聖
約76:22−24参照)
。
■
救い主は実際に,いつ贖いの犠牲をささげられたのでし
か。(死と罪)イエス・キリストの贖いは,これら二つの
障害を克服する手段を与えている。キリストは復活のもた
らす第一の実として,この地球で死すべき状態を経験する
ょうか。プロテスタントの多くは,それが十字架上におい
すべての人に復活を与えられた(ヒラマン14:15−16参照)
。
てのみ行われたと信じている。末日聖徒の多くはゲツセマ
贖罪は,どのような方法によって,わたしたちが罪に打ち
ネの園においてのみ行われたと信じている。生徒用手引き
勝つことができるようにしてくれるのでしょうか。キリス
33−34ページの「参考資料D」でニール・A・マックスウ
トは人類のあらゆる罪の代価を支払われたが,人が贖罪に
ェル長老とブルース・R・マッコンキー長老が教えている
よる罪の赦しを受けるためには,悔い改めなければならな
ように,両者はともに部分的にしか正しくない。
い(教義と聖約19:15−19参照)
。悔い改めない邪悪な者は
罪のうちにとどまり,罪の赦しを受けることができない
E.キリストの贖罪は,正義と憐れみの律法に調和し
ている。
正義と憐れみを定義する。正義とは「正しさ,公平,権
利の擁護」と「神の律法を守ること」を意味する。憐れみ
とは「厳格さが妥当であり求められるときに愛と同情をも
ゆる
って扱うこと」また「赦そうとする性質または憐れみを示
“justice”
,
すこと」を意味する(Oxford English Dictionary,
“mercy”参照)
。
■ アルマ42:13−15,22−25,29−30を読んで,憐れみは
正義を奪うことができないが,贖罪は正義を満足させるこ
とができる。したがって,憐れみは資格のある者(心から
けんそん
悔い改めて謙遜な人々)について権利を主張できることを
説明する。
■ 「黒板3と4」を使って正義と憐れみについて話し合う。
■ 生徒用手引き34−35ページの「参考資料E」のボイド・
K・パッカー長老の言葉から,霊の負債,永遠の律法,憐
れみ ,仲保者 の意味を明確にする(「仲保者」『聖徒の道』
1977年10月号,487−488)
。
■
(アルマ11:37,41参照)
。
■
罪を犯したことのない幼子に対して,贖罪は,どのよう
な効果を及ぼすでしょうか(モロナイ8:8−12参照)
。
G.わたしたちは贖罪の恩恵をことごとく受けるため
に,御父と御子の御心を行わなければならない。
■
贖罪の原則を生活に取り入れなければ,わたしたちにと
って贖罪は,ほとんど意味をなさないことを強調する。
けんそん
謙遜でなく,悔い改めず,忠実でなければ,わたしたちは
贖罪のもたらす完全な恵みにあずかることはできない。
まとめ
イエス・キリストが神であられることについて,またキ
リストが,あなた自身の救い主であられることについて厳
あかし
粛に証 を述べる。ニーファイの言葉を引用するとよい。
「わたしは率直さに誇りを感じ,真理に誇りを感じる。ま
た,イエスがわたしを地獄から贖ってくださったので,わ
たしはイエスを誇りとする。」(2ニーファイ33:6)エライ
F.イエス・キリストの贖罪は,神の子供たちすべて
の救いのために不可欠である。
■
究極的に,人類にとって二つの最大の敵とは何でしょう
30
ザ・R・スノーの賛美歌「高きに満ちたる」
(
『賛美歌』112
番)を歌うか,歌詞を読んでレッスンを締めくくるとよい。
第9章
「黒板1」
律法の目的
律 法
従順によって
教義と聖約
130:20−21
祝 福
罰
人 類
人 類
不従順によって
アルマ42:18,20;
教義と聖約82:4
「黒板2」
正義の要求
破られた律法
現世での罰
人類は囚われの身となる
霊的な罰
人 類
肉体の死
霊の死(地獄)
アダムの堕落のもたらした結果
個人の背き(アダムの堕落を通
を受け継ぐ――苦痛,苦しみ,
して受け継いだ堕落した性質の
病気,死
衝動に屈すること)の結果
31
第9章
「黒板3」
正義と憐れみ
問 題
正義――罪に対する罰を求める
二つの大切
神の裁きを
な神の属性
受ける個人
憐れみ――罰の赦しと罪の聖めを求める
正義と憐れみは相反するものである。
これら二つの神聖な属性は人類に対する神の最
後の裁きにおいて勝利を収めることができるだ
ろうか。
「黒板4」
正義と憐れみ
解決方法
……の要求を支払う
憐れみによる
正義による解
解決は贖いを
決は律法を執
求 め ,悔 い改
めを可能にす
……の要求を満たす
る
行し,罰を与
えることを要
求する
……に取って代わる
33
第10章
地上での生活の目的
はじめに
■
人は霊体だけでできているのでしょうか。肉体だけでし
ょうか。教義と聖約88:15を読んで,人は霊体と肉体から
黒板に以下の質問を書く。わたしたちはどこから来たの
できていることを示す。教義と聖約93:33と138:17を読ん
でしょうか。わたしたちはなぜここにいるのでしょうか。
で,完全な喜びを得るには肉体と霊とが結び合わされる必
■
わたしたちはどこへ行くのでしょうか。
人類にとって最も大切なこれらの質問に答えることがで
要があることを示す。
■
わたしたちの肉体は天の御父からの贈り物であり,神聖
きるのはイエス・キリストの福音をおいてほかにない。最
な宮として扱うべきであることを強調する(生徒用手引き
初の質問(わたしたちはどこから来たのでしょうか)は第
36ページの「教義の概要B1とB2」参照)
。
6章「わたしたちの前世」で答えられていることを生徒に
思い起こさせる。今日,2番目の質問(わたしたちはなぜ
C.死すべき状態はわたしたちの試しの時期である。
ここにいるのでしょうか)の答えを聖典から探すことを説
■
明する。3番目の質問(わたしたちはどこへ行くのでしょ
で,「わたしたちはこれによって彼らを試し」の部分を強
うか)の答えは後のレッスンで徐々に明らかにされていく。
調する。この世は,わたしたちが神の戒めを守り,罪と敵
今日のレッスンで話し合う以下の質問を黒板に書き出すと
対するものを克服するかどうかを確認するテストである。
よい。わたしたちには,なぜ肉体が必要なのでしょうか。
「黒板1」の下の部分を使ってこの真理を説明する。
なぜこの世で試練や苦しみを経験するのでしょうか。神の
ようになるには,この世においてどうすればよいでしょう
か。
■
第二の位について述べているアブラハム3:24−25を読ん
人生は安易なものだと考えられているでしょうか。喜び
(それは,わたしたちが地上に存在する目的である)が得
られるのは,チャレンジを克服するには神を信頼する必要
みこころ
地球は行楽地ではなく,学校である。永遠に続く探求と
があると悟り,日常生活で神の御心を行うときである。こ
は,一部には,学校で段階を追って学んでいくのと同じよ
の原則を説明するために,アルマが息子のシブロンに与え
うに,一つ一つ段階を昇って前進していくことである。永
た忠告を読む(アルマ38:5参照)
。
遠の見地からすれば,地上にいること自体が永遠の学習に
■
おける一つの進歩である(生徒用手引き38−39ページの
惑してきますが,わたしたちを支配する力を持っているで
■
「参考資料DとE」参照)
。
サタンは試しの状態にいるわたしたちに対して激しく誘
しょうか。サタンはわたしたちが逆らえないほどの大きな
力で誘惑することができるでしょうか。1コリント13:10と
教えるためのアイデア
アルマ13:28−30を読む。救い主は御自身も誘惑を経験し
たので,わたしたちが,どのような経験をするかを御存じ
A.わたしたちが存在するのは,喜びを得るためである。
■
神の永遠の計画において,子らにこの地上での生活を経
であり,わたしたちを助けたいと考えておられる(ヘブル
4:14−16参照)。誘惑に打ち勝つことについて救い主は模
験させておられる神は,どのような目的をお持ちなのでし
範を示しておられる。「独り子は数々の誘惑に遭われたが,
ょうか。モーセ1:30のモーセの質問と39節に記されている
それらを少しも心に留められなかった。」(教義と聖約20:
神の深遠な答えを読む。
22)わたしたちも同じように誘惑に遭うが,誘惑を心に留
レッスンでは常に前向きな面を強調する。たとえ弱点が
める必要はない。もし誘惑に従うとしたら,それは,わた
あるとしても死すべき体を持っていることはわたしたちの
したちが,そうすることを選んでいるのである。だれもそ
永遠の進歩にとって大きな恵みであるとともに必要な祝福
の選択を強制できない。誘惑を退けるには神の助けが必要
であることを生徒が理解するように助ける。サタンに関し
である。3ニーファイ18:18を読む。
■
て長々と話し合うのを避ける。サタンは人類に敵対して,
わたしたちの永遠の進歩を妨害し,神の業を破壊しようと
していることを単純に指摘するにとどめる。
D.死すべき状態の試しはわたしたちのためである。
■
つらいことや悲しみを経験したことがなかったとしたら,
幸福であることを実感できるでしょうか。生徒用手引き36
B.神は死すべき状態で肉体を得る機会をわたしたち
に与えてくださった。
■
「黒板1」の「死すべき世での状態」をレッスンの残りの
ページの「教義の概要D1」に挙げられている聖句を読んで,
考える。
■
人類が陥りやすい様々な試練を生徒に挙げさせ,それら
時間ずっと使うとよい。レッスンの進行に合わせて必要な
を黒板に書き出す。戦争,病気,重大事故,飢え,知的お
部分だけを見せる。
よび肉体的障害,貧困,残酷な行為,不平等,経済の破綻,
■
アブラハム3:24−26を読む。「付け加えられる」とは,
どのような意味かを生徒に尋ねる。
は たん
家族の中で経験する落胆などが考えられる。試しに遭うと
きにキリストのような霊と態度を持ち続けるには,どうす
35
第10章
ればよいでしょうか。神は思いやりと愛があり,情け深く,
しいステンドグラスの窓。そして白い衣に身を包んで部屋
全能であり,公平な御方であるにもかかわらず,人類がこ
に集う人々。そこには,平安と調和と心からの期待があり
れらの悲劇に遭うという事実をどのように説明したらよい
ました。きちんとした身なりの青年と,この上なく美しく
でしょうか(生徒用手引き38ページの「参考資料D」参照)
。
装った女性,何と表現していいか分からないほど美しい二
信仰によって大きな障害や試しを乗り越えた人の例を生徒
人が,祭壇を挟んでひざまずきました。わたしは,わたし
に挙げさせる。
の持つ権能により,この天国の儀式を執り行い,二人をこ
■
ミズーリ州リバティーの監獄でジョセフ・スミスと兄弟
たちが経験した例を使う(教義と聖約121:1−10;122:
の地上にあっても,また永遠にも結び固めました。心の清
い人々が,そこにはいました。そこは天国でした。
1−9参照)
。主は,かつてシオンを建設していた聖徒たちに
永遠の結婚の儀式が無事に済み,穏やかに祝福の言葉が
教えたことが成就するという強い確信を預言者に与えられ
交わされているとき,幸福そうな父親は,満身に喜びをた
た。「あなたがたは,この後に起こることに関するあなた
たえて,わたしに手を差し出して,こう言いました。「キ
がたの神の計画と,多くの艱難の後に来る栄光を,今は肉
ンボール兄弟,わたしたち夫婦は,ごく平凡な人間で,特
体の目で見ることができない。多くの艱難の後に祝福は来
別成功を収めたわけではありませんが,自分の家庭にはほ
る。
」
(教義と聖約58:3−4)
んとうに大きな誇りを持っています。神殿結婚のためにこ
かんなん
の神聖な宮に入るのは,8人目のこの子で最後です。ほか
はんりょ
E.死すべき状態は神の属性を伸ばす機会をわたした
ちに与える。
■
わたしたちは完全になることができるでしょうか。わた
の子供たちも皆,今日伴侶を連れて,この末っ子の結婚式
に参加してくれています。今日は最高に幸福な日です。8
人の子供たちが皆,正しく結婚してくれたんですから。皆,
したちは,この世で完全になることが可能でしょうか。神
教会活動も一生懸命しています。上の子供たちは,もう立
やキリストのように完全になるということは復活すること
派に子供まで育てていますよ。
」
を意味していることを教えるために,マタイ5:48と3ニー
わたしは彼の節くれだった手と,丈夫そうな体つきを見
ファイ12:48を比較する。しかし,ブルース・R・マッコ
て,こう思いました。「これこそ,自分の使命を立派に果
ンキー長老が生徒用手引き39ページの「参考資料E」で教
たした,ほんとうの神の息子だ。
」
えているように,わたしたちは死すべき世において,ある
程度の完成に到達することができる。
■ スペンサー・W・キンボール大管長が述べた以下の物語
を分かち合う。
「『キンボール兄弟,あなたは天国へ行ったことがあり
ますか。
』
わたしの答えは,同じくらい強い驚きを彼に与えたよう
である。わたしは,ためらわずにこう言ったのである。
『ありますよ,リチャーズ兄弟,もちろんですとも。この
アトリエへ来る少し前にも,天国を見てきたところです。』
……
『ちょうど1時間前のことです。向かいの神聖な神殿の
中で見たんですよ。結び固めの部屋は,厚い白壁で,外界
の物音を遮断していました。明るく暖かい感じのカーテン,
質素な,しかし風格のある調度品,向かい合って同じ像を
無限に映し出す鏡,わたしの正面で平安な輝きを見せる美
36
「成功ですって?」と言いながらわたしは彼の手を握り
締めました。「わたしは今まで,これほどの成功談を聞い
たことがないですよ。」』」(「天国の光景」『聖徒の道』1972
年4月号,147−148)
■
モーサヤ3:19を読んで,霊的な事柄を優先させることに
よって肉体的な欲望を抑えることがどれほど大切かを強調
み たま
する。わたしたちは御霊の導きに従うことによって,肉体
を支配することができる。
まとめ
あなたを含めてあらゆる人が賢明で高貴な目的のために
あかし
この地球に送られて来たということについて証を述べる。
神に忠実であり,神を信頼することによって,この世にか
かわる弱点を克服し,永遠の命に通じる狭くて細い道を歩
み続けることができることを証する。
第10章
「黒板1」
死すべき世での状態
2ニーファイ2:13−27
神である両親から
死すべき両親から
霊
ほんとう
の人
肉 体
ほんとう
の人が住
む幕屋
人は,それぞれ前世で
培った徳と個性をこの
人は皆,この世におい
ヘブル12:9
世に携えて来ている。
て,欲望を持つ肉体を
持っている。その欲望
を支配しなければなら
ない。
死すべき状態の人
二重の存在
教義と聖約88:15
死すべき状態におかれた人が
受ける試し
アルマ34:32−35
「人が地上に存在するのは,肉体の本能と
情熱を慰め,満足させる物事に努力と思
いと心を集中させるか,霊的な資質を獲
得することを人生の目的とするかの試験
を受けるためである。」(デビッド・O・マ
ッ ケ イ ,“ Today's Need―― Spiritual
Awakening,”Relief Society Magazine,
1941年6月号,364)
37
第11章
人の選択の自由
はじめに
■
主は,わたしたちに律法を与えられた。わたしたちが選
択の自由を行使し,主の戒めを守ることによって律法に従
たまもの
クラスに将棋のセットを持参する。ほかの生徒たちの前
うことを主は望んでおられる。神の律法に従うという賜物
で二人の生徒に将棋を始める準備をさせる。将棋のこまを
と祝福について預言者ジョセフ・スミスが述べた言葉を幾
ボードに並べたら,なぜ決められたように並べなければな
つか読んで,検討する(生徒用手引き41ページの「参考資
らないのかを二人の競技者に質問する。そして,こまの名
料B」参照)
。
称を言って,それぞれの動き方を説明させる。
■
■
ヒラマン14:30−31を読む。この聖句によれば,自由に
ゲームを始めて,何度かこまを動かさせる。そして,な
は少なくとも二つの要素が含まれる。それらは何でしょう
ぜそのように動かしたかを質問する。なぜ,勝手な所にこ
か。(自分のために行動する権利と行動に関して報告する
まを動かさなかったのですか。将棋では,なぜ一つ一つの
責任。選択に応じた善または悪が本人に回復される。
)
こまの動きが大切なのでしょうか。こまを動かすためには
■
ゲーム全般の知識を持っていることが,なぜ大切なのでし
たときも選択の自由を持っていたこと,この選択の自由は
ょうか。
現在と同様,前世においても成長の鍵となっていたことを
教義と聖約29:36を読む。わたしたちは霊の状態であっ
かぎ
この世は,どのように将棋と似ているかを全員に質問す
指摘する。
る。以下の類似点が考えられる。
1. 一定の規則が,すでに決められている。
B.サタンはわたしたちの選択の自由を損なおうとし
ている。
2. 様々な動き(選択)が可能である。
3. 一つ一つの動き(決断)は結果をもたらし,将来の
動き(選択)を決める助けとなる。
4. 特定の原則と条件に関する知識が優れた選択をする
能力に影響を与える。
黙示12:7−8とモーセ4:1−4を読む。これらの聖句によ
天における前世の会議には,だれが招集されたでしょうか。
どのようなことが重大な問題だったのでしょうか。預言者
5. 現在の決断が将来どのような結果をもたらすかを考
えなければならない。
■
■
れば,天における前世の会議で何が起きたのでしょうか。
ジョセフ・スミスの以下の言葉が持つ大切な意味について
話し合う。
以下の言葉を書いた紙を配って,レッスンのテーマが選
択の自由であることを紹介するとよい。
「天で論争がありました。イエスは,救われない人々も
いると言われました。他方,悪魔は,自分がすべての人を
「前方にあなたが知ることになる老人が立っています。
救うと言いました。そして,彼の計画は大会議に提出され
……彼が惨めか,幸せかは,あなたにかかっています。な
ましたが,大会議は,イエス・キリストを支持しました。
ぜならば,あなたが彼を作るからです。彼は年老いたあな
そこで悪魔は神に対して謀反を起こし,彼に従う者たち全
たの姿です。
」
(作者不詳)
員とともに投げ落とされました。
」
■
教えるためのアイデア
1コリント10:13について話し合う。生徒用手引き41ペー
ジの「参考資料B」から,預言者ジョセフ・スミスの言葉
を読む。
A.選択の自由は自主的な選択をする永遠の権利である。
■
黒板に選択の自由と書いて,生徒にこの言葉を定義して
もらう。生徒が幅の広い定義を導き出すことができるよう
C.わたしたちは選択の自由の行使に関して神に責任
を負っている。
に以下の要点を紹介する。
■
1. 律法は選択肢を創出する。
2. わたしたちは律法とそれが創出する選択肢を理解し
なければならない。
みこころ
3. どの選択肢が,わたしたちに対する神の御心かを理
解しなければならない。
4. 選択の自由は,選択肢の中から選ぶことについて,
絶対的で無制限の自由を与える。
「わたしには望むことを何でも行う権利がある」と言う
人々がいる。選択の自由の行使について社会は,どのよう
な制限を設けているでしょうか。神は,どのような制限を
設けておられるでしょうか。
黒板の「選択の自由」の横に報告する責任と書く。生徒
に,これら二つの語句の関連性を尋ねる。
報告する責任の原則を生徒が理解できるように,以下の
質問を黒板に書き出すとよい。参照聖句を開いて,読んだ
後に,クラス全体で話し合う。
1. すべての人は,どの範囲まで報告する責任があるの
ですか(2ニーファイ9:25−26;モロナイ8:22参
照)
。
2. この責任は,どのようにして評価されるのですか
(ローマ2:5−8;アルマ4:3−4参照)
。
人は自分の罪の責任をほかの人に転嫁できるでしょう
か。なぜ,できるでしょうか。なぜ,できないでしょうか
39
第11章
(信仰箇条1:2;ガラテヤ6:4−5参照)
。
動に対して正当に報いたり,裁いたりすることができない
のは,なぜでしょうか(モーサヤ4:30参照)
。
D.わたしたちの永遠の行く末は自分の選択の自由の
使い方によって,あるいは選択の自由の誤用によって
決まる。
■
生徒用手引き42ページの「参考資料D」から,ジョン・
テーラー大管長の言葉を生徒とともに検討する。わたした
ちは現在地上で何を行うかによって,来世での自分の幸福
または不幸を決める特権を与えられていることを強調す
る。
■
教義と聖約58:26−29を読んでから,この聖句とわたし
たちの永遠の行く末との関連について話し合う。生活環境
のせいで善を行えないというようなことが実際にあるでし
ょうか。
■
選択の自由がなかったら,わたしたちの思いや言葉,行
40
まとめ
以下の文章が正しいかどうかについて話し合う。
1. わたしたちの現在おかれている状況は,自分の選択
の自由を行使した結果である。
2. わたしたちの現在の状態は自分が望んできたことそ
のままである。
3. わたしたちは選択肢の中から自分が望んでいる事柄
(自分の好む事柄)を選んでいる。
4. わたしたちは結局,自分が選ぶ王国に住むことにな
る。
第12章
祈りと断食
B.神は,なぜわたしたちが神に祈るべきかを明らか
にされた。
はじめに
■
生徒とともにアルマ17:3を検討する。ここでは,モーサ
■
わたしたちは,どれほどの頻度で祈るべきでしょうか。
ヤの息子たちの成功は祈りと断食が必須の要素となってい
主は,どれほどの頻度で祈るべきかを告げておられるでし
たことが明らかにされている。4人はしばしば祈り,しばし
ょうか。以下の参照聖句の箇所を黒板に書き出して,それ
ば断食したため,大きな成果をあげた。それらの成果とは
何でしたか。わたしたちも同じ成果をあげることができる
でしょうか。彼らの手にした成果には以下の事項が含まれ
る。
1. 預言の霊を受けた。
2. 啓示の霊を受けた。
3. 神の力と権能をもって教えた。
■ ブリガム・ヤング大管長が語った以下の言葉を読む。
「も
し,わたしが祈りたいという気持ちにならず,また天の御
父に向かって,わたしに朝の祝福をお与えくださいと願い
求める気にならず,今日一日わたしとわたしの家族と地上
の善良な人々をお守りくださいと願う気にならないとすれ
ば,自分に向かってこう言わなければなりません。『ブリ
ガム,ここにひざまずきなさい。天にあって支配しておら
れる御父の玉座の前に体をかがめて,罪人のために建てら
れた慈しみの玉座に向かって嘆願することができるように
なるまで頭を垂れていなさい。』」(Discourses of Brigham
Young,46)
ヤング大管長の言葉は生徒にとってどのようなことを意
味しているかを尋ねる。この言葉は特に,コミュニケーシ
ョンについて大切な教訓を与えている。二人以上の関係
(家族関係を含む)において,意思を通わせる道を開いて
おくことほど大切なものはない。愛する人々に対して,自
分が話したいと思うときだけに,話すとしたら,どのよう
なことになるでしょうか。わたしたちと天の御父との間の
垣根を取り払うことも,それと同様に大切である。
ぞれのメッセージを検討し,要約するように言う。聖句を
教えるためのアイデア
検討するために,生徒を小グループに分けてもよい。
教義と聖約46:7。祈りをもってすべてのことを行う。
詩篇55:17。夕べに,あしたに,真昼に祈りなさい。
ルカ18:1−7。失望せずに常に祈りなさい。
1テサロニケ5:17−18。絶えず祈り,すべての事につ
いて,感謝しなさい。
アルマ13:28。目を覚ましていて絶えず祈りなさい。
アルマ37:37。あなたのすべての行いについて主と相
談しなさい。
あらゆることについて決断する度に祈るとしたら,わた
したちの生活は変わるでしょうか。
■ 「黒板1」を生徒とともに検討して,真の成熟を示すしる
しの一つは,決断を下すに当たって賢明な勧告や指示を受
あかし
け入れることであると証する。そのような勧告は選択の自
由を減じるのではなく,増すものとなる。
かぎ
■ 祈りは啓示を受けるための鍵である。神が子らの持つ無
数の必要にこたえることがおできになるように,その鍵を
使って門を(あたかもダムの水門を開くように)開くので
ある。わたしたちは願い求め,実際に受ける。生徒用手引
き44ページの「参考資料B」から,ブルース・R・マッコン
キー長老の言葉を読む。祈りは「人が救われるために不可
欠であり,祈りなくして救いはない。」(『モルモンの教義』
ビーハイブ出版,57)この言葉が真実である理由を尋ねる。
C.わたしたちは何について祈るべきか聖典で告げら
れている。
■
生徒用手引き43ページの「教義の概要C」には,わたし
たちが何について祈ったらよいかを示す教義的な根拠が記
A.祈りは,時の初めから福音の計画の一部であった。
されている。「黒板2」に挙げられている項目から特定の事
アダムとエバにとって,エデンの園を追放されるという
項について答えるよう生徒に求める。自分のリストを作る
ことは霊の死を意味していた(教義と聖約29:41参照)
。な
ように言う(黒板に列挙された事項を含んでもよい)。生
ぜなら,二人は主の前から絶たれてしまったからである。
徒用手引き44ページの「参考資料C」とアルマ34:19−27
二人は主の名を呼び求めることによって霊的な回復の道を
も参照する。
■
み
な
歩み始めた。主は彼らに答えて,「いつまでも御子の御名
■
祈りに関してレッスンを行ううえで最も効果的な方法は,
によって神に呼び求めなさい」と言われた(モーセ5:8)。
モルモン書のエノスの物語を使うことである。エノスの物
祈りはアダムにとって神との関係を築くための第一歩であ
語で鮮やかに描かれている概念の一つは,祈りの中で自分
ったこと,以来今日まで,福音に従って生きていくための
の必要だけでなく,ほかの人々の必要についても注意を向
きわめて重要な要素であり続けていることを指摘する(モ
けることが可能なことである。エノスが,まず自分の心配
ーセ5:12;6:4−5,51参照)
。
事について祈り(エノス1:2参照)
,その関心が同胞にまで
こんにち
はらから
広がり(9節参照),最後に先祖代々の敵であるレーマン人
にまで及んだ(11節参照)様子を示す絵を黒板に描く。祈
41
第12章
りによって内省へと導かれ,他人に対する自分の姿勢を見
に答えられることに注意する。
詰める機会になることが,しばしばある。
E.時々断食をして祈るべきである。
D.主はわたしたちの祈りをもっと意義深く,効果の
あるものとする方法をわたしたちに告げてくださって
いる。
を指摘する。また,断食をする人は「人はパンだけで生き
わたしたちは,イエス・キリストの御名によって御父に
るものではな〔い〕」(マタイ4:4)と言われたイエスの宣
■
■
断食は祈りの効果を高めるために,どのような役割を果
けんそん
たすでしょうか。断食は自制と謙遜を表す行為であること
祈るよう命じられている。生徒用手引き43ページの「教義
言を受け入れていることを証しているのである。さらに,
の概要D1」に挙げられている聖句を読む。
断食は生きるために必要な物心両面の栄養を得るために,
■
祈りの効果を高めるには,わたしたちと神の間に立ちは
わたしたちが神に依存していることを気づかせてくれる。
だかっている障害を見つけることが必要である。祈るとき
生徒用手引き46ページの「参考資料E」には,断食のもた
に出現する障害には,どのようなものがあるかを生徒に尋
らす利点の幾つかを指摘したマッコンキー長老(『モルモ
ねる。生徒と神の間の壁となっているものを視覚に訴える
ンの教義』ビーハイブ出版,347)とスペンサー・W・キン
ために,「黒板3」のような簡単な絵を描くとよい。どうす
ボール大管長の言葉(
『赦しの奇跡』101)が記されている。
れば障害を取り除けるかについて話し合う。生徒用手引き
44−46ページの「参考資料D」には望ましい祈りの妨げと
まとめ
なる障害を取り除く方法が提案されている。
■
真の交わりには話すことと耳を傾けることが含まれる。
祈りの間と祈りの後に耳を傾けることの大切さについて話
し合う(生徒用手引き46ページの「参考資料D」参照)
。耳
を傾けることには以下の事項が含まれる。
1. 神が意志を伝えられる方法に神経を研ぎ澄ませる。
(感じること,ひらめき,印象など)
2. 祈りの間と祈りの後に答えを受ける時間を取る。
3. 神は御自身の方法で,御自身の流儀で,御自身の時
42
祈りは意思の交流を図る最も純粋な方法である。祈りは,
わたしたちと神とを隔てる空間に心と言葉の掛け橋を築い
てくれる。あらゆる通信手段に言えることだが,信号をは
っきり認識し,よりよく受信するために,周波数を正確に
合わせなければならない。本章で話し合った祈りの様々な
側面は,わたしたちが祈りを改善しようとするときに必要
な助けを与えてくれるだろう。
第12章
「黒板1」
身体と情緒の発達
依存から
独立へ
子供は着実に進歩して成熟し,自分で考
え行動するようになる
対比
霊的発達
依存から
独立へ
人は子供のようになり,わがままな性質
を克服し,自信過剰な傾向を改めて初め
て,自分に神が必要であることに気づき,
神の祝福に完全に頼ることができるよう
になる。このように霊的な理解の深まり
は,常に祈りの中に反映される。
「黒板2」
物的必要
霊的必要
その他の必要
健康
聖霊との交わり
伝道活動
慰め
罪の赦し
教会役員
平安
福音の知識と理解
国家指導者
生活必需品
証
社会的問題
ゆる
誘惑を退ける強さ
主の「敵」
主の兄弟
自分自身
43
第12章
「黒板3」
時間の不足
偽善――他人から見られるために祈る
真剣さの不足
罪
物理的な妨害
答えに耳を傾けない
信仰の不足
45
第13章
信仰――キリストを中心とする力
下で,事態が好転する見込みはなかった。
はじめに
■
わたしは『暗い毎日で,何があなたの支えでしたか』と
単純でありながら,真心からの信仰に関してゴードン・
尋ねた。
B・ヒンクレー長老が語った以下の話を伝えるとよい。
「わたしはこれまで世界の各地で数多くのすばらしい
彼はこう答えた。
『信仰です。主イエス・キリストを信ず
る信仰です。重荷を主にゆだねると,とても心が軽くなっ
人々とお会いする機会に恵まれてきました。そのような
たように感じました。
』
」
(Conference Report,1978年4月,
人々の中には,忘れがたい印象を残してくれた人もいます。
91)
その一人に,アジアからやって来た海軍将校がいました。
彼は聡明な青年で,高度な訓練を受けるために合衆国へ派
教えるためのアイデア
遣されていました。彼は合衆国海軍の何人かの同僚の行い
を見て心を引かれ,彼らの宗教について話してもらうこと
A.イエス・キリストを信じる信仰は福音の基である。
にしました。青年はキリスト教徒ではありませんでしたが,
■
その話に非常に興味をそそられました。ベツレヘムでお生
る答えは「信仰」であるが,もっと正確な回答は,「主イエ
まれになり,全人類のために命をささげられた,世の救い
ス・キリストを信じる信仰」である。キリストを信じる信
主イエス・キリストについて,同僚たちは話してくれまし
仰は悔い改めと,純粋で神聖な行いへと導く。真の奇跡を
た。さらに,永遠の父なる神と復活した主が少年ジョセ
生み出すことができる。生徒用手引き48ページの「参考資
フ・スミスの前に御姿を現されたことや現代の預言者につ
料A」から,ブルース・R・マッコンキー長老の言葉を用
み たま
福音の第一の原則とは何でしょうか。反射的に返ってく
いても語り,主の福音を教えてくれました。御霊が心を動
いて,キリストを信じる信仰の原則を要約する。
かし,彼はバプテスマを受けました。
■
たまもの
信仰は神から与えられる賜物であって,だれもが持って
わたしが彼を知ったのは,彼が祖国に帰る直前のことで
いるものではないことを強調する。生徒用手引き48ページ
す。一連の改宗の話を聞いたわたしはこう言いました。
の「参考資料A」から,信仰が賜物であることについてヒ
あかし
『故国の人々はキリスト教徒ではありませんね。キリスト
ーバー・J・グラント大管長が述べた証を読む。信仰の賜物
教徒として,特にモルモン教徒として帰国されることで何
を求めるには,どうすればよいでしょうか。どうすると,
か支障はありませんか。
』
この賜物を失うでしょうか。
彼は顔を曇らせ,こう語りました。『家族はがっかりす
■
信仰は積極的な原則でしょうか,受け身の原則でしょう
るでしょう。わたしを勘当し,のけ者扱いにするかもしれ
か。信仰を積極的にするには,どうすればよいでしょうか。
ません。仕事のうえでも将来的にあらゆる機会から見放さ
信仰の実をもたらさないままに,ほんとうの意味で信仰を
れると思います。
』
行使することができるでしょうか。生徒用手引き48ページ
わたしはこう尋ねました。『福音のためにそれほど大き
な代価を,喜んで払うおつもりですか。
』
すると,黒いひとみに涙を浮かべたこの青年は,整った
の「参考資料A」に記されているジェームズ・E・タルメ
ージ長老の言葉を活用するとよい。
■
イエス・キリストを信じる信仰は,どのように力の原則
褐色の顔をさっと輝かせ,こう言いました。『福音は真実
となるかについて話し合う。キリストを信じる信仰と神権
です,違いますか。
』
の力は,ともに関連する。双方を用いるならば,偉大にし
わたしはこのような質問をしたことを心に恥じながら答
えました。
『そのとおり。確かに真実です。
』
て力ある業を成し遂げる。ブルース・R・マッコンキー長
老は総大会の神権部会で次のように語った。「〔神権の教義
『それなら,ほかのことを気にする必要はないわけです
とは〕わたしたちが信仰により力を得て,霊的にも物質的
ね。
』
」
(
「福音は真実です,違いますか」
『聖徒の道』1993年
にもすべてのものを支配し統御し,奇跡を行い,自らの生
10月号,3−4参照)
活を完全なものとし,やがて神の信仰と,神の完全さと,
そのような逆境におかれても自分の見いだした理想に忠
神の権威すなわち神の完全な神権を得ることにより,神の
実であろうとするこの人を動かしているのは何の力でしょ
」
(
「神権の
御前に帰って神と似た者になるということです。
うか。
教義」
『聖徒の道』1982年7月号,61)
■
み まえ
ゴードン・B・ヒンクレー長老が語ったもう一つの話は,
主イエス・キリストを信じる信仰を強調するものである。
「わたしは,ある日,故国から亡命して来た一人の友人
B.信仰は神と神の教えを知ることから生じる。
■
ローマ10:17「したがって,信仰は聞くことによるので
に会った。彼は国が滅びて抑留されていた。妻子は逃れる
あり,聞くことはキリストの言葉から来るのである」を引
ことができたが,彼は妻子との音信が途絶えたまま3年以
用する。神の言葉を聞く最良の方法について話し合う。一
上も捕虜になっていた。食物も乏しい陰うつな生活環境の
つの方法は毎日聖文を読むことによって聖文に浸ることで
47
第13章
ある。ハワード・W・ハンター長老は次のように勧告して
■
いる。
見てから,信仰を行使したいと考えている人が大勢いる。
「聖文には神が自ら啓示された言葉の記録が収められ,
信仰には偉大な奇跡を起こす力もある。しるしや奇跡を
生徒用手引き49ページの「参考資料C」から,マッコンキ
神はこれを通して人々に語られます。そうだとすれば,聖
ー長老の言葉を使って,奇跡やしるし,御霊の賜物は信仰
典を通して神を知り,神と人との関係を理解することを教
に先駆けて現されるのでなく,信仰の結果として生じるも
えている書を読む以上に効果的な時間の使い方がどこにあ
のであることを示す。教義と聖約63:7−12は「信じる者に
るでしょうか。多忙な人々にとって時間は貴重です。軽薄
はしるしが伴う」,「しるしは信仰によって生じる」と教え
なもの,価値のないものを見たり,読んだりして時間を浪
ている(マルコ16:17−18も参照)
。信仰によって奇跡や偉
費することは,時間を盗んでいることです。……
大な働きを行った英雄的な人物を聖典から何人か取り上げ
〔聖文の〕理解には速読や通読以上に集中した精読が必
て話し合う(ヘブル11:1−40;エテル12:12−22,30参照)
。
要です。毎日聖典を勉強する人の方が,長時間勉強したか
皮肉なことに,レーマンやレムエルなど一部の人々は偉大
と思うとぱったり休むという人よりも,はるかにはかどる
な奇跡と示現を見たが,それが彼らの信仰を強めることに
ことは確かです。
」
(
「聖典を読む」
『聖徒の道』1980年3月号,
はならなかった。奇跡や示現は,それ自体で信仰を築くも
87参照)
神の言葉を聞き,それによって信仰を築き,強めるため
のではないことを生徒に確認する。
いや
■
信仰は奇跡や癒しと結びつく場合がある。しかし,ほか
に使うことのできるもう一つの優れた方法は,毎年4月と10
にどのような理由からわたしたちには信仰が必要なのでし
月に開かれる総大会に耳を傾けることである。ハワード・
ょうか。わたしたちの日常生活で遭遇する問題やチャレン
W・ハンター長老は次のように勧告した。
ジに立ち向かうためには,信仰がどうしても必要である。
「総大会は再び霊を奮い立たせる時機です。神が生きて
生徒用手引き47ページの「教義の概要C4」に挙げられてい
おられて信仰深い人々を祝福してくださるという知識と証
る聖句と,生徒用手引き49−50ページの「参考資料C」か
がより深く,また確かなものとなるからです。この季節は
ら,スペンサー・W・キンボール大管長が語った,信仰に
また,イエスが救い主であり生ける神の御子であるという
関するすばらしい説教を読む。
理解が,主に仕え,主に従おうと決意する人々の心に燃え
上がる時でもあります。また指導者から人生に必要な霊的
まとめ
な指針を授かる時です。さらに,良き夫,良き妻,良き父
親や母親,従順な息子や娘,良き友人や隣人になるために
奮起し,新たな決意をする時でもあります。
」
(
「総大会に寄
せて」
『聖徒の道』1982年4月号,19)
■
聖文は,わたしたちの信仰をどのように確立し,強める
かを証明するものとして,ヒラマン3:29と15:7−8を読む。
イエス・キリストを信じる信仰は自動的に培われるもの
ではない。御父と御子の慈しみに対して心を開く人だけに
与えられる賜物である。信仰の賜物を受けるには,「キリ
ストを確固として信じ……て力強く進まなければならな
い。そして,キリストの言葉をよく味わ〔う〕」ことが必
要である(2ニーファイ31:20)。祈りと断食,聖文から見
C.イエス・キリストを信じる信仰はいつも良い実を
結ぶ。
■
信仰と行いの間には,どのような関係があるでしょうか。
信仰に伴う義にかなった行いがなかったとしたら,信仰を
持っていると主張できるでしょうか。アブラハムの子孫で
あるという血統を理由にして,自分たちが善良な人物だと
主張しながら,義にかなった実を結ばなかった一部のユダ
ヤ人に対して,悔い改めを叫んだバプテスマのヨハネの物
語を読む(ルカ3:7−11参照)。それから,ヤコブの手紙
2:14,17−26でしばしば言及されている「行いのない信仰」
について話し合う。
48
いだすことのできる神の言葉を毎日読むことによって信仰
を養い育てるよう生徒にチャレンジする。信仰を築くこと
を,種を植え,大きな木に生長するまで養い育てることに
たとえたアルマの言葉を思い起こさせるとよい(アルマ
32:28−43参照)
。もしわたしたちが「その木に構わず,養
い育てることに心を配らなければ,見よ,それが根付くこ
とはないであろう。そして,太陽の暑さが及んでその木を
熱すると,その木はまったく根がないので枯れてしまうで
あろう。」(38節)これに対して,信仰の木を養い育てるな
らば,「それは生長して永遠の命をもたらす木になるであ
ろう。
」
(41節)
第14章
悔い改め
はじめに
■
悔い改めの過程における姿勢の大切さについて話し合う
ときに,より良い状態を目指して努力することに関して述
■
以下のような仮の状況を想像するように言う。主は生徒
と個別に面接を行いたいと考えておられる。生徒は面接を
べたヒーバー・J・グラント大管長の話を紹介するとよい
(生徒用手引き53ページの「参考資料B」参照)
。
受ける時期を今から1時間後か,あるいは1か月後かのいず
れかを選ぶことができる。生徒はどちらを選ぶだろうか。
恐らくほとんどの生徒は1か月後の面接を選ぶであろう。
C.悔い改めには,ある事柄を行うことと,キリスト
のような特質を伸ばすように努めることが含まれる。
準備する時間が多く取れるからである。準備したいと思う
■
生徒の考えを使って,悔い改めの概念を教える。それは神
ができる。その一部を以下に列挙する。それぞれの模範を
のもとへ帰るために準備する一つの方法である。
基に,現代の模範と応用を話し合う。
■
非常に多くの末日聖徒が悔い改めを恐れているのは,な
ぜでしょうか。悔い改めは積極的な福音の原則であるが,
人々が悔い改めを行わず,進歩を永遠に遅らせるように,
サタンは,この原則をゆがめて,否定的な事柄のように見
せかけている。罪に対する主とサタンの姿勢は明確に異な
っていることを示す。主は常に積極的であり,サタンは常
に否定的である。違いを指摘する(
「黒板1」参照)
。
モーサヤ4:3を読む。悔い改めは喜び,心の平安,清ら
かな良心へとつながることを強調する。罪に対する苦しみ
が生じるのは,悔い改めないときである(教義と聖約19:
15−20参照)
。
■
『聖句ガイド』から,悔い改めの定義を読んで,話し合う。
教えるためのアイデア
A.悔い改めは永遠の進歩の原則である。
■
モーセ5:14−15を読む。わたしたちが救いを得るために
行うよう神の律法によって求められている二つの事柄とは
何でしょうか。(救い主を信じること,悔い改めること)
救い主を信じないで,自分の罪を悔い改めない人は罰の定
めを受ける。罰の定めを受けるとは,永遠の進歩と特権に
制限を受けるという意味である(『聖句ガイド』参照)。生
徒用手引き51ページの「参考資料A」から,預言者ジョセ
フ・スミスによって詳しく説明された「罰の定め」の定義を
検討する。
■
罪から遠ざかることについて,生徒用手引き51−52ペー
ジの「参考資料A」から,デビッド・O・マッケイ大管長
とヒュー・B・ブラウン副管長が語った,優れた話を読ん
で,話し合う。
み まえ
B.神の御前に帰るために,人は悔い改めなければな
らない。
■
3ニーファイ11:32−38を読む。この聖句で繰り返し強調
されているのは,どのような教義でしょうか。(悔い改め
る,バプテスマを受ける,幼子のようになる。)悔い改め
て,バプテスマを受けること,幼子のようになることには,
どのような関連があるでしょうか。
(罪からの自由を得る。
)
モルモン書には悔い改めの優れた模範を随所に見ること
ヤコブの息子エノス。エノス1:1−8参照。
ラモーナイの父。アルマ22:15−18参照。
息子アルマ。アルマ36:6−22参照。
アルマの息子コリアントン。生徒用手引き54−55ページ
の「参考資料C」から,アルマ42:27−31に記されている
アルマと息子のコリアントンの間で交わされた会話につい
てマリオン・D・ハンクス長老が述べた言葉を読む。
■ 生徒は悔い改めの正しい段階について自然に興味を持つ
はずである。生徒は,それらを理解する必要がある。以下
の概要を指針として,悔い改めの過程について話し合う。
これらの段階を順に追う必要はない。悔い改めの経験は個
人的なものである。しかし,以下の5つの段階すべてを踏
まなければならない。
罪に対して「神のみこころに添う悲しみ」を抱く。2コリ
ント7:10参照。
変わりたいと心から願い,どれほどの代償を払うことに
なっても問題を解決することを決意する。
罪を完全に捨てる。教義と聖約82:7参照。この段階は友
達を変える,誘惑のある場所に近づかないなどを意味する
ことがある。
可能なかぎり元の状態に戻す。
適切な権能を持つ人に告白する 。教義と聖約58:42−
43;モーサヤ26:29参照。告白する際の姿勢について現代
の預言者が与えた勧告を伝えるとよい。スペンサー・W・
キンボール大管長は次のように警告した。「自発的な告白
けんそん
は,強制されての自白,謙遜さに欠ける告白,罪が明白に
なって詰問されたあげくの告白よりもはるかに主の目にか
なうものである。
」
(
『赦しの奇跡』191)
■ 罪を犯したら,悔い改めを始めるのは早ければ早いほど
よいことを生徒に理解させる。悔い改めを引き延ばすこと
は罪と罪の重荷を増し加えるだけであり,悔い改めをいっ
そう難しくする(アルマ34:32−34;『赦しの奇跡』177−
178, 367−368参照)
。
■ ボーン・J・フェザーストーン監督は,表面的で,自分な
りに行動を変えることと対比して,悔い改めの過程で必ず
起きなければならない心の大きな変化について説明するた
めに,一つの物語を紹介した。
49
第14章
「わたしが管理監督会に召されてから間もなく,アリゾ
けました。その間わたしは一言も話しませんでした。(と
ナのステーク会長から,若い宣教師候補者とふさわしさに
ころで,面接中に何も言わないほうがよいときがあります。
ついての面接をしてほしいと言われました。……
待って,耳を傾け,相手を見詰めて,内省して,深く考え
その若者を事務所に招き入れると,……わたしはこう言
いました。『あなたは大きな罪を犯しましたね。わたしが
面接を行うのは,そのためです。率直に,心を開いて,ど
のような罪を犯したのかを話してくれませんか。
』
る時間を相手に与えるのです。)わたしは青年が泣いてい
る間,じっと座って待っていました。
ついに青年は顔を上げて,言いました。
『5歳のとき以来,
これほど泣いたことはないと思います。
』
彼は頭をうなだれることもなく,横柄な態度でこう言い
わたしは彼に言いました。『道徳の律法を破る誘惑を初
ました。
『していないことはないほど,あらゆることをして
めて受けたときに今のように泣いていたら,今日あなたは
きました。
』
伝道に出ているかも知れません。けれども残念ながら,あ
わたしは,こう言いました。『では,具体的に話してく
ださい。性的な罪を犯したのですか。
』
あざけりをあらわにして彼は言いました。
『あらゆること
をしたと言ったはずです。
』
そこでこう尋ねました。『それは一度だけでしたか。そ
れとも複数の女性と,何度も罪を犯したのですか。
』
再び,あざけるようにして言いました。『多くの女性と
です。回数など多くて数えられませんよ。
』
わたしは言いました。『あなたの罪が重大でなかったこ
とを願っています。
』
なたの目標を達成させるわけにはいきません。友達のもと
へ帰って,伝道に行かないことを話すのはつらいことでし
ょう。
あなたはゲツセマネへ行った後に,大きな罪を犯した人
ゆる
はゲツセマネへ行って,戻ってからでないと赦しを得られ
ないとわたしが言った意味を理解するでしょう。
』
青年は事務所を出ていきました。彼は大いに不満だった
ろうと思います。彼の行く手に立ちはだかって,伝道に行
かせなかったからです。
それからおよそ6か月後に,わたしはテンペのインステ
『いや,重大な罪ですよ』と答えました。
ィテュートで話をする依頼を受けて,アリゾナ州を訪れま
『ドラッグを経験しましたか。
』
した。話を終えるとインスティテュートの生徒が握手を求
』
『あらゆることをした,と言いましたよ。
めにたくさんやって来ました。ふと見ると,あの青年が,
そこでわたしは,こう言いました。『あなたはどうして,
こちらに向かってやって来ました。背きを犯して悔い改め
伝道に行こうと考えているのですか。
』
『わたしは悔い改めました。この1年間何もしていませ
んから』と彼は答えました。『わたしが伝道に出るのは祝
福師の祝福でそう言われているからです。わたしは長老に
なかった青年です。その瞬間,面接でのやり取りがまざま
ざと心に浮かんできました。自慢げで皮肉なものの言い方,
ふ そん
不遜な態度を思い出しました。
わたしは握手するために手を差し出しました。そして見
聖任され,またこの1年間正しい生活を送ってきました。
上げる彼の顔を見たときに,何かすばらしいことが彼の生
ですから,伝道に行くべきだと思っています。
』
活に起きたことを感じました。涙がとめどなく頬を伝って
ほお
わたしは机を挟んで向こう側に座っている青年に目を向
いました。聖なる輝きのようなものが彼の顔から放射され
けました。21歳の,笑い,あざけり,横柄な,真心から悔
ていました。わたしは彼に言いました。『行ってきたので
い改めているとはとても思えない態度の青年でした。わた
すね。
』
しは青年に言いました。『残念ですが,あなたは伝道に行
きません。過去の生活について大言壮語し,自分の罪を自
慢しているあなたを,わたしたちは送り出すことができる
と思いますか。道徳の律法を破ったことのない純粋で清い
青年たちの中にあなたを送り出すことができると思います
か。彼らは伝道に行くために清く,ふさわしい生活を送っ
てきたのです。
』
繰り返して言いました。『あなたは伝道に行きません。
実際のところ,あなたは長老に聖任されるべきではありま
せんでした。教会の会員としての資格があるかどうかにつ
いて裁きを受けていなければなりませんでした。
あなたは途方もなく大きな罪を幾つも犯してきました。
あなたは悔い改めていません。中断しているだけです。い
つか,ゲツセマネへ行って,戻ってきたときに,まことの
悔い改めがどのようなものかを理解するでしょう。
』
このとき,青年は泣き始めました。彼は5分ほど泣き続
50
彼は涙ながらに言いました。『はい,フェザーストーン
監督。ゲツセマネへ行って,戻って来ました。
』
『分かりますよ。顔に書いてあります。今,主はきっと,
あなたを赦しておられることでしょう。
』
彼は,こう言いました。『わたしを伝道に行かせてくだ
さらなかったことをほんとうに感謝しています。もし行っ
ていたら,わたしのためにならなかったことがよく分かり
ます。助けてくださって,ありがとうございます。』」( A
Generation of Excellence,156−159)
まとめ
しょくざい
悔い改めの原則は,わたしたちに贖罪の完全な力をもた
らすために,愛にあふれる御父が与えてくださったもので
あかし
あることを証する。毎日内省して,生活の中の大切な部分
について悔い改めを行うよう生徒にチャレンジする。
第14章
「黒板1」
サタン
救い主
1. なぜ試すのか。
1. 罪を捨てる人には憐れみがもたらされる(箴
2. 罪を犯してしまったので,神は,わたしを愛
しておられない。
3. 赦しを受けることは,とても無理だ。
4. わたしは再び神とともに住むことができない。
言28:13参照)
。
2. 人が悔い改めるときに,天に喜びがある(ル
カ15:7;教義と聖約18:13参照)
。
3. 主は悔い改める者を赦してくださる(イザヤ
1:18;教義と聖約58:42参照)
。
4. 救い主の贖罪により,悔い改める人は皆,神
のもとへ帰ることができる(教義と聖約18:
11−12参照)
。
51
第15章
バプテスマの聖約
はじめに
引き57ページの「教義の概要D5」参照)
。
9. 正(生徒用手引き57ページの「教義の概要E1」参照)
。
バプテスマに関する以下の正誤問題を行う。レッスンの
中で,正解を発表して,すべての答えについて話し合って
教えるためのアイデア
もよいし,試験の問題を基にしてレッスンを組み立てても
よい。
正誤問題
1. バプテスマで交わす聖約の性質は個人的なものであ
って,人により異なる。
2. 聖典に記されている歴史の中で,バプテスマのヨハ
ネはバプテスマを施した最初の人である。
3. バプテスマは義にかなったニーファイ人とレーマン
人の間で教えられ,実施されていた。
4. 人はバプテスマを受けなければ神の王国に入ること
ができない。
5. バプテスマを受けていなければ,人は自分の罪につ
いて責任を問われることはない。
6. 聖典には,人にバプテスマを施す権能がなければな
らないかどうかについて明らかにされていない。
7. 主はバプテスマの儀式で用いる言葉を明らかにして
おられる。
8. バプテスマに関して,聖書には「水に沈める」とい
う具体的な語句が用いられていない。
9. バプテスマはイエス・キリストの死,埋葬,復活を
象徴している。
A.バプテスマを通じて,わたしたちは主と聖約を交わ
す。
■
黒板に「聖約」と書いて,生徒に定義してもらう。
『聖句
ガイド』の定義を参照する。すべての儀式は聖約によって
受けることに注目する。
■
バプテスマは,どのような意味で,神と人との間で交わ
される聖約となるのかを生徒に尋ねる。人はバプテスマを
受けるときに,どのようなことについて神と合意するので
しょうか。生徒用手引き56ページの「教義の概要A1」と生
徒用手引き57ページの「参考資料A」には聖約する事項に
関して説明が記されている。聖約に関連して合意する事項
を黒板に書き出すとよい。バプテスマを受けて,聖約を守
る人に対して神は,どのようなことを約束として聖約して
おられるでしょうか(生徒用手引き56ページの「教義の概
要A2」参照)
。
■
ばんさん
せいさん
わたしたちは毎週,主の晩餐の聖餐を受ける機会がある。
これはバプテスマの聖約を更新することである。聖餐の祈
み
な
りの中でわたしたちは御子の御名を受け,いつも御子を覚
え,御子の戒めを守ると聖約することに注目する(教義と
み たま
聖約20:77,79参照)
。これに対して主は,主の御霊が常に
わたしたちとともにいるようにすることができると約束さ
れる。主はなぜ,バプテスマの聖約を毎週新たにする機会
正 解
1. 誤。正しい方法でバプテスマを受ける人は皆,まった
く同じ聖約を交わす。主は忠実な人全員に同じ祝福を
約束しておられる。
2. 誤。バプテスマはアダムに始まるすべての神権時代で
実施されてきた永遠の聖約である。
3. 正(生徒用手引き56ページの「教義の概要B5」参照)
。
4. 正(生徒用手引き56ページの「教義の概要C1」参照)
。
5. 誤。善悪をわきまえることのできる年齢に達しており,
少なくとも通常の知的能力を持つ人は皆,自分の罪に
ついて責任を問われる。しかし,バプテスマを受けた
人は聖約の下におかれるため,いっそう大きな責任を
引き受けることになり,悔い改めない罪は重大さの度
合いが大きくなる。
6. 誤(生徒用手引き57ページの「教義の概要D3」参照)
。
7. 正(生徒用手引き57ページの「教義の概要D4」参照)
。
8. 正。聖書にはバプテスマが水に沈められるとは明記さ
れていない。しかし,幾つかの記述は,それをほのめ
かしている。水に沈めることについての具体的な教え
はモルモン書と教義と聖約に記されている(生徒用手
をわたしたちに与えておられるのでしょうか。生徒用手引
き56ページの「教義の概要A3」に挙げられている聖句を使
って,バプテスマの聖約がわたしたちの生活の中で効力を
持つようにするには戒めを守らなければならないことを強
調する。
B.バプテスマは,あらゆる福音の神権時代に執行さ
れてきた永遠の儀式である。
■
アダムはバプテスマを受けた最初の人だった(生徒用手
引き56ページの「教義の概要B1」参照)。アダムは,どの
ようにしてバプテスマを受けたのでしょうか。アダムは,
なぜバプテスマを受ける必要があったのでしょうか。バプ
テスマは永遠の儀式であること,人類の歴史上,あらゆる
福音の神権時代において福音の第一の原則と儀式が実施さ
れてきたことを生徒が理解できるように助ける(信仰箇条
1:4参照)
。生徒用手引き56ページの「教義の概要B2−B5」
も参照するとよい。
■
イエスは罪がなかったにもかかわらず,なぜバプテスマ
を受けられたのでしょうか。バプテスマは,すべての人が
従わなければならない永遠の律法である。また,キリスト
53
第15章
は,わたしたちに道を示してくださる偉大な模範者である。
これらの順序と要件の一部が失われたと思われることを指
キリストに倣って,キリストがへりくだってバプテスマを
摘する(1ニーファイ13:26。27−28節も参照)。しかし主
けんそん
受けられたように,わたしたちも謙遜になることを望んで
は分かりやすくて貴い部分を回復することを約束された
おられる(2ニーファイ31:7,12参照)
。聖なる御方である
(1ニーファイ13:35−39参照)
。バプテスマに関するこれら
キリストがバプテスマを受けられたのであれば,「聖くな
の大切な指示のほとんどはモルモン書,教義と聖約,高価
いわたしたちがバプテスマを,すなわち水でバプテスマを
な真珠を通じて与えられていることに注目する。
受けることは,なおさら必要ではないだろうか。
」
(2ニーフ
■
ァイ31:5)
と,イエス・キリストまで行き着くことが分かる。これに
教会員はバプテスマを執行した人の神権の系譜をたどる
現在の末日聖徒が正しい方法と権能によってバプテスマ
よって自分のバプテスマが正当な権能によって執行された
を実施していることをどのようにして知ることができるで
ことを確認することができる。あなた自身またはあなたに
しょうか。バプテスマを施す権能は1829年5月15日,バプテ
バプテスマを施した人の神権の系譜を見せて,この要点を
スマのヨハネによって預言者ジョセフ・スミスとオリバ
説明する。
■
ー・カウドリに回復された。バプテスマの様式とバプテス
マの祈りの言葉に関する指示は,教会が組織された1830年4
E.バプテスマは永遠の実在を象徴する。
月6日以前に預言者に啓示されている(教義と聖約20:37,
■
72−74参照)
。
は,どのような象徴的な意味があるでしょうか。バプテス
人が水に入り,水に沈んで,水の中から出て来ることに
マは清く新しい命を象徴している。また,イエス・キリス
C.バプテスマは必須の儀式である。
トの誕生,死,復活をも表している。生徒用手引き57ペー
ユダヤ人の指導者であったパリサイ人のニコデモは,夜
ジの「教義の概要E」に挙げられている聖句と,58ページ
イエスを探し出して,人が天の王国に入るには水と御霊に
のジョセフ・フィールディング・スミス大管長の言葉を参
よって生まれなければならないことを知った物語を紹介す
照する(
『救いの教義』第2巻,299−300参照)
。バプテスマ
る(ヨハネ3:1−7参照)。バプテスマは新しく生まれるこ
は福音のほかのすべての儀式や多くの原則と同じように奥
とをどのように象徴しているでしょうか(モーセ6:59参
深い象徴的な意味を持つ。聖文を綿密に調べて聖なる御霊
照)
。
の助けを受けながら研究するならば,象徴から多くのこと
■
■
黒板に以下の質問を書き出す。わたしたちが救われるた
めに,バプテスマは,なぜ必要不可欠なのでしょうか。生
徒が挙げる大切な理由をすべて黒板に書く。続いて,生徒
を学ぶことができる。バプテスマは「地に属するものが天
に属するものに一致する」ことを示すすばらしい例である
(教義と聖約128:13)
。
バプテスマの儀式で使用される衣服の色が持つ象徴につ
用手引き56ページの「教義の概要C」に挙げられている聖
■
句から,幾つかを選んで検討する。
いて話し合う。白は清潔,無垢,純粋を表す。バプテスマ
む
く
はバプテスマ自体が持つ神聖な象徴と相まって,わたした
D.バプテスマの儀式は,主の定められたとおりに執
行されるときにのみ,主によって受け入れられる。
バプテスマという語には,どのような意味があるでしょ
うか。生徒用手引き58ページから,この語が持っていた元
来の意味について預言者ジョセフ・スミスが説明した言葉
を読む。
■ 有効なバプテスマの正しい順序と要件を復習する。生徒
用手引き56−57ページの「教義の概要D1からD5」に挙げら
れている聖句から,幾つかを選んで参照する。聖書の原典
から「分かりやすくて大変貴い」部分が取り去られたとき,
ちにとって,現世で最もすばらしく,忘れられない経験の
一つとなる。
■
54
まとめ
あなたの人生においてバプテスマがどれほど大切な意味
あかし
を持っているかについて証を述べる。教会員でない人々に
福音の原則を熱心に研究し,それぞれの人生においてバプ
テスマがどれほど大切な意味を持つかについて深く考える
ようチャレンジする。
た ま も の
第16章
聖霊の賜物
教えるためのアイデア
はじめに
キリストを信じる信仰を行使し,悔い改めてバプテスマ
すべて行ったと言えるでしょうか。永遠の進歩を続けるに
A.人は聖霊の賜物を受ける前に,まず御霊,すなわ
ちキリストの光を受ける。キリストの光はこの世に生
まれるすべての人に与えられるものである。
は次に何を行ったらよいのでしょうか。バプテスマの後に
■
受ける按手の儀式は,教会員として「確認」を受けること
う。キリストの光は,この世に生まれるあらゆる人々の生
以上の意味はないと考えている人が非常に多いが,この儀
活を照らすことを生徒は理解する必要がある。生徒用手引
式の大切な部分は聖霊の賜物を受けることである。
き59ページの「参考資料A」のブルース・R・マッコンキー
■
を受けたら,わたしたちが地上に送られてなすべきことを
たまもの
黒板に「キリストの光」と書いて,生徒に定義してもら
按手を受けることによって直ちに,また完全に聖霊を受
長老の言葉は,キリストの光についてわたしたちが理解し
けるのでしょうか。「聖霊を受ける」ようにと命じる神権
ている事柄を明確にしている。キリストの光は聖霊の賜物
者の言葉は,どのようなことを意味しているのでしょうか。
と同じものではない。聖霊の賜物は,それを受けるための
この儀式は始まりにすぎない。神権の力によって儀式を受
必要条件を満たしている人々だけに与えられる(生徒用手
けた後に,わたしたちは,ふさわしく生活して,聖霊を常
引き59ページの「教義の概要A」参照)
。
に伴侶とするように願い求めなければならない。そして,
■
聖霊を中心にした生活を送るようになると,主は,わたし
れるが,これは正しい。あらゆる人は生まれたときから良
たちにさらに大きな期待を寄せられる(2ニーファイ31:
心を持っている(ローマ2:14−15参照)。スペンサー・
17−20参照)
。
W・キンボール大管長は良心をわたしたち一人一人が心の
はんりょ
キリストの光は,しばしばわたしたちの良心にたとえら
信仰を行使し,悔い改めてバプテスマを受け,聖霊の賜
中に持つリアホナであると表現している。「皆さんは,き
物を受けた人に大きな変化が訪れる場合がしばしばある。
っと自分自身の内に,羅針盤のような,リアホナのような
あらゆる奇跡の中で最大の奇跡は,赦しの奇跡である。大
何かがあることを認識していることでしょう。すべての子
きな変化が起きる可能性があることを説明するために,ジ
供には,それが与えられています。両親から十分に教えを
ョン・A・ウイッツォー長老が語った以下の話を用いると
受けてきた子供は,8歳になると善悪の判断ができます。
よい。
したがって,自らの内にあるリアホナを無視するならば,
■
ゆる
「わたしはバプテスマを受けて教会員となったある男性
ついには,そのささやきを得られなくなることでしょう。
のことを思い浮かべていました。以前は,ごく普通の人で
しかし,わたしたち一人一人は正しく導いてくれるものを
した。1日に3食のほかに,ジョッキに2,3杯のビールを飲
持っているということを心に留めるならば,すなわち自分
み,しばらくしてグラス1杯のウィスキーを楽しみ,ほと
のリアホナ,良心とも言われるリアホナの指示に聞き従う
んど1日中かみたばこを口に含んで,むなしく,目的のな
ならば,船は誤った航路に迷い込むことは……ないでしょ
い生活を送り,この世的な欲望を満足させていました。彼
『聖徒の道』1977年2月号,
う。」(「わたしたちのリアホナ」
は福音を聞いて,受け入れました。それは,すばらしいこ
111参照)
とでした。彼がずっと待ち望んでいたことでした。やがて
罪の中にとどまっている人は次第にキリストの光の影響
教会で力を付け,立派な人に成長しました。わたしの記憶
を受けなくなることを指摘する。
では,彼は5回か6回伝道に出たほかに,伝道部長として管
■
理する召しも受けました。彼は以前と同じ人であり,同じ
の内には善悪を判断する助けをしてくれる「光」があるこ
腕を持ち,同じ足を持ち,同じ体を持ち,同じ心を持って
とを指摘する。光に逆らっていると,その行動は自分を罪
いました。けれども,永遠の真理を受け入れることによっ
に定める。
ヨハネ1:6−9とモロナイ7:16−19を読む。わたしたち
てもたらされた御霊によって変わりました。」(Conference
Report,1952年4月,34)
御霊のバプテスマによって肉体的に大きな変化を受ける
B.聖霊の賜物はバプテスマにおいてイエス・キリス
トと聖約を交わしたすべての人に授けられる。
人は,ほとんどいない。彼らの全体的な外見は以前と変わ
■
りなく,同じ名前であり,受けた教育も同じであり,同じ
してもらう(生徒用手引き59−60ページの「参考資料B」
黒板に「聖霊の賜物」と書いて,生徒にその意味を定義
場所に住み,同じ仕事をしている。しかし彼らの生活には
参照)
。
著しい変化が起きているのである。この変化は,どのよう
■
な性質のものでしょうか。
ができるでしょうか。バプテスマを受ける前に聖霊を受け
人は聖霊の賜物を受けずに,聖霊の影響力を受けること
たローマ人の百卒長コルネリオの経験を説明する(使徒
10:1−33参照)。生徒用手引き59−60ページの「参考資料
55
第16章
B」に記されている,コルネリオのおかれていた状況につ
いて預言者ジョセフ・スミスが語った言葉を参照する。
何年も前に,わたしは〔モロナイ10:7−10,17〕を読ん
で,この聖句について深く考えました。主の役に立つ者と
誠実に真理を求めている人は皆,聖霊の影響力を受ける
なるために持つことのできる賜物の中で,御霊によって教
権利を持っている(モロナイ10:4−5;生徒用手引き60ペ
える賜物以上の賜物はないと考えました。知恵の言葉を教
ージの「参考資料B」参照)
。しかし,聖霊の賜物を受けて,
え,御霊によって知識の言葉を教える賜物は,だれもが望
常に聖霊の導きを受けるにはバプテスマと確認を受けなけ
むものです。わたしたちは,この賜物を望んでも,与えら
ればならない。確認の儀式は,聖約によって聖霊の賜物を
れないということがあるでしょうか。教師として成功した
受けることを意味している。
いと思い,その力を得たいと熱心に望んでいるにもかかわ
■
わたしたちは聖霊の賜物を失うことがあるでしょうか。
どのようにして失うのでしょうか。(罪を犯すことにより,
また聖霊を拒むことにより。)聖霊を常に受けるには,聖
文を研究し,祈り,深く考え,神の戒めに従うことによっ
らず,与えられないことがあるでしょうか。熱心に願い求
めて祈り,それを得るだけの信仰を持って信じていても,
わたしたちに与えられないということがあるでしょうか。」
(Teach Ye Diligently,16)
最もよく話題に上る御霊の賜物は異言の賜物であること
て自分を備える努力を毎日積み重ねなければならない。聖
■
霊の賜物を受けている人は受けたことのない人よりも,自
を指摘する。残念なことに,この賜物は最も誤解されてい
分の罪に対して多くの責任を問われるのは,なぜでしょう
る賜物でもある。多くのキリスト教徒は使徒行伝2章から
か。
五旬節の日に現れた異言の賜物について読むときに,真の
「黒板1」を参照して,福音の儀式において約束された力
改宗をするためには,異言の賜物を用いなければならない
を受けることについて話し合う。黒板を使って,水による
と信じている。しかし,この考え方は誤りである。御霊の
バプテスマと御霊によるバプテスマがどのように互いに関
賜物は改宗の後に授けられるものであって,改宗の前に受
連し合っているか,これらが協力してどのように人を清め
けるものではない。
■
多くの人はまた,異言の賜物の目的を誤解している。異
るかについて説明する。
言の賜物は霊的に優れていることの証明ではない。この賜
C.聖霊の賜物を持っている人は御霊の賜物を享受で
きる。
物は基本的に,様々な言語を話す地の諸国に福音のメッセ
様々な賜物について触れる前に,生徒に「御霊の賜物」を
は,異言を解く賜物が必ず現れなければならない(1コリ
■
ージを伝えるために存在する。異言の賜物が使われるとき
定義してもらう。生徒用手引き60ページの「参考資料C」
ント14:2−5参照)
。神の家は混乱の家ではない。
にブルース・R・マッコンキー長老の定義が記されている。
■
■
生徒に御霊の賜物をできるだけたくさん挙げてもらう。
特定の「現れ」が御霊の賜物か,それともサタンの仕業
によるものかということに関して議論が展開されることが
それらを黒板に書き出す。新約聖書,モルモン書,教義と
しばしばある。サタンは人を欺いて,道を誤らせるために
聖約に記されている御霊の賜物を参考にして,生徒が挙げ
偽物を作り出す。教義と聖約46:27−29と107:91−92を読
た賜物のリストを完成させる(1コリント12章;モロナイ
んで,霊的な賜物を見分けるに当たって教会の神権指導者
10:8−18;教義と聖約46:10−33参照)
。
が果たす役割を説明する。生徒用手引き61ページの「参考
■
教義と聖約46:11−12を読む。ふさわしい教会員は皆,
御霊の賜物を少なくとも一つ受ける権利があることを指摘
資料C」から,エイブラハム・O・ウッドラフ長老の言葉も
引用するとよい。
する。すべての会員が同じ賜物を持つわけではなく,すべ
ての会員が御霊の賜物をすべて持つわけでもない。慈しみ
まとめ
にあふれる主は,わたしたち一人一人に様々な賜物を与え
てくださるので,わたしたちは互いに協力して神の王国を
建設することができる。
■
モロナイ10:17を読む。人が特定の賜物を願い求めた答
えとして,御霊の賜物を受けることがある。ボイド・K・
パッカー長老は,どのようにして,そうした賜物を受ける
かについて説明している。「もし人が賜物を受けるべきだ
と感じて,それを願い求めるなら,与えられるでしょう。
56
聖霊が常に伴侶となるように毎日祈るよう,生徒に強く
勧める。自分の生活をよく吟味して,主がすでに与えてお
られる霊的な賜物を見つけるようチャレンジする。主は,
あなたの生活で霊的な賜物の力を現しておられること,あ
ま
なたが主の業においてこれらの賜物の現れを目の当たりに
する特権を与えられてきたことについて証する。
第16章
「黒板1」
約束された力を得る
外形的な儀式を受ける
バプテスマ
水に沈める
儀式の持つ霊的な力を受ける
心からの信仰を持ち,悔い改
めた結果として,主と聖約を
交わす
二つの出来事は
因果関係におい
て,互いに関連
聖霊の賜物
按 手
火のバプテスマを受け,新し
している
く生まれ,清められて,再新
される
57
第17章
従順――天の律法
ラエルが,預言者から買っておくように言われた鞭を思わ
はじめに
ず振り上げて,馬に目がけて当てました。馬が前方へ跳ね
以下の二つの物語を使って,従順の律法を紹介し,説明
するとよい。いずれか一つを選んで,現在の生ける預言者
たため,荷台は石切り場の端で止まりました。止まらなけ
れば,逆さまになって落ちるところでした。
の勧告に従うことを中心にして話し合いを展開する。
祖父はよくこの話をして従順の意味を説明してくれまし
「〔エフライム・〕ハンクスは預言者ブリガム・ヤング
た。祖父は預言者ジョセフ・スミスが語ることは何でも受
に従ったことによって幾度となくその報いを受けてきまし
け入れ,『どうしてなのか』と疑うことは決してありませ
た。ある春の日の朝,彼は日干しレンガを使って市内に家
んでした。ある人たちは,これを『盲従』と言うかもしれ
を建てていました。基礎部分がほとんど完成して,日干し
ませんが,そうではありません。イスラエル・バーローは
レンガを積み上げ始めたところへ馬車に乗ったブリガムが
預言者が神から召されていたことを完全に知っていまし
通りかかりました。そしてこう言いました。『エフライム,
た。そしてこの世を去るまで,そのことを証 しました。」
この石壁の厚みは,どれほどあるんだい。
』
あかし
(オラ・H・バーロー, The Israel Barlow Story and
エフライムは20センチだと答えました。
Mormon Mores,195−196)
するとブリガムは,『エフライム,それを壊して厚みを2
倍にしなさい』と言って,論争を避けるかのように向きを
教えるためのアイデア
変えると,馬車に乗って行ってしまいました。
エフライムは何日もかけてエンサイン・ピークから石を
A.従順は天の第一の律法である。
従順の大切さを説明するために,アブラハム3:24−25を
運び,石を積み重ねてセメントで固めてきました。そのた
■
めにかなりの賃金をレンガ工に支払っていました。これを
読む。この大切な聖句を話し合う際に,従順は天の第一の
一からやり直すには余分の作業とお金が必要でした。
律法であることを指摘する。
レンガ工も怒りを表しながら言いました。『ブリガム・
主は,どのようにしてわたしたちの信仰を試されるでし
ヤングは聖徒かもしれないが,石壁を作ることについては
ょうか。福音の原則や教会指導者の勧告に従順であるかど
預言者ではあるまい。
』
うかによって,信仰が試されることがしばしばある。この
しかしエフライムは壁の厚みを倍にすることでレンガ工
点を説明するために教師の個人的な体験を紹介するか,生
徒用手引き63ページの「参考資料A」から,マリオン・G・
と再契約し,翌朝,石を運びに行きました。
1か月後に,彼らは日干しレンガと泥で40センチの厚みを
はり
ロムニー副管長についての話を活用する(ハロルド・B・
持つ壁を完成させました。梁を上げているときに,大きな
リー,
“Marion G. Romney,”Improvement Era,1962年10
嵐 がやって来ました。シートに降り注いだ雨は縦横無尽の
月号,742参照)
。
水路を作って流れ出しました。数分間で新しい家の基礎部
■
分は水につかり,さらに水かさが増してきました。しかし,
ーセ4:7−11を読んで,サタンがエバに「園のどの木から
がっしりした厚い壁はびくともせず,家を支えました。数
も取って食べてはならないと,ほんとうに神が言われたの
あらし
日後,水がひいてから,梁を上げたエフライムは『感謝を
ささ
くぎ
従順の原則を最初に否定したのは,だれでしょうか。モ
ですか」と言った言葉の意味について話し合う(強調付加)
。
神に捧げん,預言者の導き』を口ずさみながら釘を打って
「神は知っておられるのです」とは,どのような意味でし
いました。」(シドニー・アルバラス・ハンクスとエフライ
ょうか。(サタンは,エバが一つの木の実を食べてはなら
ム・K・ハンクス,Scouting for the Mormons on the Great
ないという命令に従わなければならないので,完全に自由
Frontier,78−80)
「わたしの祖父はノーブーの神殿建築に力を尽くした人
でした。祖父は美しい馬を2頭持っていました。気性の激
しい雌馬でした。ある日,川岸にそそり立つようにして築
かれていた石切り場で荷車を後退させていたときに,預言
者がやって来て,祖父に言いました。『イスラエル,次に
むち
町へ出かけるときに,馬車用の鞭を買ってきなさい。』祖
父は言われたとおりにすると言いました。祖父は町へ行っ
たときに馬車用の鞭を買ってきました。そして,それまで
のように石を運んでいました。後退していた馬を停止させ
るため,いつものように『どうどう』と掛け声をかけまし
たが,馬たちは無視して,後退し続けました。驚いたイス
ではないと言おうとした。
)
■
従順であるためにしてはならないことの意味を生徒が理
解できるように,以下の質問をする。
1. 神は,わたしたちが一連の戒めに従うことを望んで
おられるだけなのでしょうか。それとも従順によっ
てわたしたたちが一定の特質を築くよう望んでおら
れるのでしょうか。
2. 悪い姿勢に基づいて正しい行いをすることによって,
昇栄を得るために必要とされる特質を身に付けるこ
とができるでしょうか。(レーマンとレムエルの経
験は,この質問の答えを導き出すうえで参考になる
でしょうか。彼らは従ったでしょうか。どのような
59
第17章
姿勢で従ったでしょうか。
)
エノクは,主がノアの時代の子らに対して悲しみを表さ
3. 幸福と喜びに通じる道は,幾つあるでしょうか。そ
れたのを見て,大きな驚きを覚えた。モーセ7:32−33を読
の道を言い表す言葉として,次のどちらが適してい
んで,エノクに対して主が説明された事柄の意味について
るでしょうか。「正しいことを行う」または「正し
話し合う。
い人になる」。この二つの言葉は,どのような関連
があるでしょうか。
4. 従順は,その姿勢とどのような関連を持っているで
しょうか。行いとの関連は,どうでしょうか。
D.イエス・キリストは従順の模範を示された。
■
従順に対して義にかなった姿勢を身に付けることについ
て,キリストは,どのように模範を示されたかを話し合う。
救い主は,なぜ御父に従順であられたのでしょうか。イエ
B.主は御自分の戒めに従う人々に大いなる祝福を約
束しておられる。
スは御父を恐れるあまり,従順であられたと考えることが
宇宙を支配している永遠の物理的法則というものは存在
情からでしょうか。しきたりだったからでしょうか。独善
するでしょうか。人は物理的法則を理解してそれに従うと
的な思いからでしょうか。従順の正しい姿勢について,以
きに,それらの法則は人の自由を制限するでしょうか,そ
下の聖句はどのようなことを教えているでしょうか。
れとも自由を増すでしょうか。物理的法則に関して言えば,
ヨハネ8:28−29。「わたしは自分からは何もせず,た
だ父が教えて下さったままを〔,〕……わたしは,いつも
神のみこころにかなうことをしている。
」
ヨハネ5:19−20。「子は父のなさることを見てする以
外に,自分からは何事もすることができない。……なぜな
ら,父は子を愛して〔おられるからである〕
。
」
ヨハネ7:16−18。この教えは神の教えであることを
知り,御父の栄光を求める。
ヨハネ10:15。
「それはちょうど,父がわたしを知って
おられ,わたしが父を知っているのと同じである。
」
ヨハネ10:30。
「わたしと父とは一つである。
」
ヨハネ14:10。
「わたしが父におり,父がわたしにおら
れる。……父がわたしのうちにおられて,みわざをなさっ
ているのである。
」
ヨハネ14:15,21,23。
「もしあなたがたがわたしを
愛するならば,わたしのいましめを守るべきである。
」
愛,信頼,喜び,模範,神を知ること,一致などの語は,
従順に対する義にかなった姿勢を理解するうえで,どのよ
うに助けとなるでしょうか。
■
従順であることは真の原則と一致している。つまり,自由
を増す。この関係は霊的法則にも当てはまるでしょうか。
生徒用手引き62ページから,セシル・B・デミルが語った
以下の言葉を黒板に書き出す。「〔神は〕人を自由な者とさ
れました。そしてその後,人が自由を保てるように戒めを
与 え ら れ た の で す 。」(“ Commencement Address”,
Commencement Exercises,Brigham Young University
Speeches of the Year〔プロボ,1957年5月31日〕
,4−5)こ
の言葉は,どのような意味で真実でしょうか。
従順は,生活と神聖な真理とを一致させることによって,
いっそう大きな自由を得るという意味を含んだ真理である
ことについて話し合う(教義と聖約93:26−28参照)
。
■ 従順は特定の祝福と結びついているでしょうか。従順に
よって一定の祝福が約束されている戒めを聖典の中から見
つける。「黒板1」を使いながら,それらの戒めについて話
し合う。以下の例を挙げることができる。
断食。イザヤ58:3−12参照。
安息日。教義と聖約59:9−19参照。
知恵の言葉。教義と聖約89:4−21参照。
教義と聖約130:20−21を読む。ここでは,「それが基づ
く律法に従うことによ」って,「神から祝福」を受けると
教えられている。
できるでしょうか。報いが欲しかったからでしょうか。同
まとめ
聖典の中から,従順の正しい姿勢が力強く示されている
模範を幾つか紹介する。モーセ5:6からアダムの示した従
C.不従順は主の目に重大な罪である。
■
神は,なぜ反抗することを嫌われるのでしょうか。反抗
は不幸な状態をもたらす。神は,すべての子らが幸福にな
ることを願っておられる。人が誤った道を選ぶとき,神は
悲しまれる。
60
順について,あるいは1ニーファイ3:6−7からニーファイ
しんちゅう
と真鍮の版について話し合うとよい。生徒に自分がどの程
度従順であるかを吟味して,必要に応じて変わるようチャ
レンジする。
第17章
「黒板1」
什分の一の律法
マラキ3:8−12
知恵の言葉
教義と聖約89章
天の窓が
従 順
開かれる
従 順
知恵,知識,
走る,
疲れない
預言者の律法
永遠の結婚の律法
教義と聖約21:4−6
教義と聖約131:1−4
闇の力を
従 順
追い払う
永遠に増し
従 順
加えられる
61
第18章
霊的な再生――真の改宗
ょうか。」ニコデモは,だれでも新しく生まれなければ,
はじめに
神の国を見ることはできないと言われたイエスの言葉に答
3ニーファイ27:19−20を読む。黒板に19節の最初の文を
えて質問したのである。ニコデモの質問は純粋な気持ちか
書き出す。「清くない者は,決して父の王国に入ることが
ら出たのでしょうか,それともあざけりの気持ちを込めて
できない。」この聖句は,わたしたちに求められている事
言ったのでしょうか。その後の彼の行動から,皮肉で言っ
柄を簡潔に指摘していますが,この要件は現実的でしょう
たのではないことが分かる。ニコデモは多くの人々が心の
か。死すべき存在であり,肉の誘惑を受ける者が,霊的に
奥底で感じている質問を声に出して言ったのである。成熟
汚れることなく人生を歩むことは果たして可能でしょう
した大人がどのようにして,生まれたばかりの子供のよう
か。イエス・キリスト以外にこの偉業を成し遂げた人がい
な罪のない状態を取り戻せるでしょうか。人を肉欲や官能
るでしょうか。汚れのない者となるには,信仰,悔い改め,
におぼれ,悪魔に従う者にしようと待ち構えている落とし
不屈の努力,バプテスマ,聖霊の賜物,贖いに頼ることが
穴を避けて,新しい生活を始めるには,どうすればよいで
必要であるとキリストは指摘しておられる。
しょうか。イエスは,わたしたちが神の王国に入るための
たまもの
あがな
誕生が二つあると答えられた(生徒用手引き67ページの
教えるためのアイデア
「参考資料A」参照)
。
黒板に「水から生まれる」と「霊から生まれる」と書く。
み たま
A.責任能力のある人はすべて,水と御霊とによって
再び生まれなければならない。
それぞれの意味を生徒に定義してもらう。
人が水によって生まれるには,信仰と悔い改めに基づい
しもべ
末日聖徒イエス・キリスト教会は,ほかの多くのキリス
て,イエス・キリストの正式な僕によって水に沈めるバプ
ト教会と異なり,子供は罪のない状態で生まれて来ると教
テスマを受けることが必要である(アルマ9:27;3ニーフ
えている(教義と聖約93:38参照)
。罪がないとは,罪悪や
ァイ7:25;モロナイ6:2−4参照)
。水から生まれることは
罪からの自由,非難やとがめからの自由,染みのない清い
直接的で,一度だけ経験する出来事である。
■
状態をいう。幼児期と,責任を負うことができる年齢に達
霊から生まれるには,按手によって聖霊の賜物を受ける
する前の子供たちに対して,サタンは直接誘惑する力が与
儀式から始める必要がある。人が聖霊の導きに従うならば,
えられていない(教義と聖約29:47参照)。8歳に達する前
御霊は,その人の奥深くで「大きな変化」を起こしてくだ
に亡くなった子供たちは日の栄えの王国に救われる(教義
さる。これによって,人は絶えず善を行う望みを持つよう
と聖約137:10参照)。イエスが多少なりとも立腹して「心
になる(モーサヤ5:2。モーサヤ27:25;アルマ19:33も
をいれかえて幼な子のようにならなければ,天国にはいる
参照)
。霊から生まれる過程は段階を追って進められる。
ことはできないであろう」と言われたのは,子供の罪がな
い状態について言及されたのである(マタイ18:3)
。
■
レッスンを始める前に,生まれながらの人が持つ特徴を
一覧表にして黒板に書いておくか,オーバーヘッド・プロ
ジェクター用資料を準備しておく。この表は後に,霊的な
使徒パウロは,聖なる御霊の勧めに従う,霊的な人が持
つ特徴を挙げて,肉によって支配されている人が持つ特徴
と対比している。これらの霊的な特徴を黒板に書き出して,
生まれながらの人が持つ特徴と比較できるようにする
(
「黒板1」参照)
。
人がもたらす実の一覧表と比較する(
「黒板1」参照)
。わた
したちが生まれたときに携えていた罪のない状態は何が原
ゆる
因で失われたかを生徒に尋ねる。教義と聖約93:39は,そ
B.義認とは,主による赦しを受け,義の道を歩み始
めることである。
のような状態が先祖の言い伝えによって,また戒めを破る
■
ことによって失われると指摘している。罪のない状態を失
る。すなわち,わたしたちの主であり救い主であるイエ
った人々を聖典は,霊的な死を受け(教義と聖約29:41参
ス・キリストの恵みによる義認は,正しく,かつ真実であ
照),肉欲や官能におぼれ,悪魔に従う者(モーセ5:13;
る。
」義認という語は赦しと密接な関係を持っている。生徒
教義と聖約20:30を読む。
「また,わたしたちは知ってい
ゆる
6:49参照)と呼んでいる。ベニヤミンは,そのような人を
用手引き67−68ページの「参考資料B」から,説明を読む。
「生まれながらの人」と呼んだ(モーサヤ3:19参照)。パウ
新会員が正しい権能を持つ者によりバプテスマを受けて,
ロは,そのような人々は肉の働きと呼ばれるものを作り出
教会の会員となるとき,どのような約束が与えられるかを
すと述べて,ガラテヤ5:16−21とコロサイ3:2−9でそれ
質問する。信仰を行使し,心から悔い改め,正しいバプテ
らを列挙している。
スマを受けることによって,人は過去の罪を赦されて,子
ヨハネ3:1−5を注意深く読む。ニコデモはイエスに尋ね
供のように罪のない状態で教会生活を始める。バプテスマ
た。「人は年をとってから生れることが,どうしてできま
を受けたときに,過去を捨て去って,文字どおり別人にな
すか。もう一度,母の胎にはいって生れることができまし
ることができた求道者を知っていれば,その人の経験を分
■
63
第18章
かち合うよう生徒に言う。
悔い改め,バプテスマを受けることによって,わたしたち
教義と聖約20:30で述べられているように,義認はイエ
しょくざい
は過去の背きに対して罪のない状態になる。
ス・キリストの贖罪によって可能となる。パウロは,それ
第二, わたしたちは神を愛し,勢力と思いと力を尽くし
をこのように述べた。「彼らは,価なしに,神の恵みによ
て神に仕えるときに,聖められた生活を送ることができる。
り,キリスト・イエスによるあがないによって義とされる
それは,聖霊を受けて養われ,霊的に成長することによっ
のである。
」
(ローマ3:24−25。モーサヤ3:19;モーセ6:
てもたらされる結果である。ヒラマンは,断食して祈り,
59も参照)
ますます謙遜になり,ますますキリストを信じる信仰を確
あたい
■
義認は特定の行動を承認する,または特定の行動の動機,
けんそん
固としたものにすることによって,清められ,心の聖めを
もしくは結果を認めることと定義することもできる。生徒
受けると語った(ヒラマン3:35参照)。生徒用手引き68ペ
用手引き67ページの「参考資料B」に記されたブルース・
ージの「参考資料C」に記されているブリガム・ヤング大
R・マッコンキー長老による義認の定義は,これを理解し
管長の言葉を読む。ヤング大管長は,ここで「神と神の求
たうえで読むべきである。マッコンキー長老によれば,義
認された行為は約束の聖なる御霊によって結び固められ
めに完全に従う」人が聖めを受けた人であると述べている
。
(Journal of Discourses,第2巻,123)
る。すなわち聖霊によって認可され,承認される
。
(Mormon Doctrine,50参照)
きよ
C.聖めとは,聖徒にふさわしい汚れのない状態であ
る。
■
教義と聖約20:31を読む。
「わたしたちはまた知っている。
すなわち,わたしたちの主であり救い主であるイエス・キ
リストの恵みによる聖めは,神を愛し,勢力と思いと力を
尽くして神に仕えるすべての人にとって,正しく,かつ真
実である。
」聖めとは聖なる状態,もしくは人が聖められる
過程(罪から清められる)を意味する言葉である。この聖
句は,聖めは過程であって,少なくとも二つの面を持って
いることを述べている。
第一, 聖めは贖罪によって可能となる。信仰を行使し,
64
まとめ
の
アルマはニーファイ人の間で教えを宣べ伝えた目的を要
約して,以下の鋭いチャレンジを投げかけている。
はらから
「さて見よ,教会の同胞よ,わたしはあなたがたに尋ね
る。あなたがたは霊的に神から生まれているか。あなたが
たの顔に神の面影を受けているか。あなたがたは心の中に,
この大きな変化を経験したか。」(アルマ5:14)
アルマの投げかけた質問は時代を超えて,現在の時代と
状況にまで及んでいる。深く考えてこの問いかけに答える
価値がある。この問いかけは,再び生まれて,キリストの
ような生活を目指す末日聖徒一人一人にとって指針となる
ものでなければならない。
第18章
「黒板1」
生まれながらの人
霊的な人
ガラテヤ5:16−21
コロサイ3:2−9
ガラテヤ5:22−25
コロサイ3:10−15
不品行
不品行
愛
憐れみの心
汚れ
汚れ
喜び
慈愛
好色
情欲
平和
謙遜
偶像礼拝
悪欲
寛容
柔和
まじない
貪欲
慈愛
寛容
敵意
憤り
善意
堪え忍ぶ
争い
悪意
忠実
赦し
そねみ
そしり
柔和
愛
怒り
恥ずべき言葉
自制
平和
党派心
うそを言う
御霊によって進む
感謝
分裂
分派
ねたみ
泥酔
宴楽
65
第19章
永遠の命
はじめに
注意:「召しと選びとを確かなものにする」という教義に
ついて話し合う際には注意が必要である。推論に基づいた
話し合いを避ける。本書と生徒用手引きに記されている資
教えるためのアイデア
A.わたしたちが永遠の命を求める努力は,前世にい
るときから始まった。
■
モーセ1:39を読む。神は広大な創造の業についての啓示
料だけを使う。「第二の油注ぎ」に関しては,どのような形
を与えるに当たって,神の業と栄光は「人の不死不滅と永
であれ,話し合ったり,質問に答えたりしようとしてはな
遠の命をもたらすこと」であるとモーセに教えられた。黒
らない。
■ 永遠の命に関する話し合いを始めるに当たって,リグラ
ンド・リチャーズ長老と妻のアイナ・リチャーズ姉妹の逸
話を読む。
「二人にとって35回目の結婚記念日に(1944年)リグラ
ンドはアイナに言いました。『母さん,今日から3,500万年
後にわたしたちは何をしていると思う。』いつものように
彼女は機知に富んだ返事をしました。『どうしてそんなこ
とを考えるの。そんなことを考えていたら,疲れるだけで
しょ。
』
『ところでわたしたちは,永遠の命を信じているよね。
時というのは人間だけのためにあって,神には時などとい
うものがないと教えられているよね。それは一つの永遠の
わ
環であって,始めもなく終わりもないんだ。ところで,母
さん,この教えによれば,3,500万年後のわたしたちは,お
互いをほんとうによく知り合っているだろうね。』」(ルシ
ル・C・テイト, LeGrand Richards: Beloved Apostle ,
228−229)
生徒はリチャーズ長老の意見をどう考えるだろうか。こ
の考えは思い上がっているだろうか。そのようなことは,
まったくない。なぜだろうか。忠実であって,聖文を研究
している人は,永遠の祝福に対する希望が確固としたもの
になるからである。
■ 2テモテ4:7−8を読む。ここでパウロは力を込めて次の
ように述べている。「わたしは戦いをりっぱに戦いぬき,
走るべき行程を走りつくし,信仰を守りとおした。今や,
義の冠がわたしを待っているばかりである。かの日には,
公平な審判者である主が,それを授けて下さるであろう。
わたしばかりではなく,主の出現を心から待ち望んでいた
すべての人にも授けて下さるであろう。
」
このパウロの言葉は教義と聖約76:56とどのような関連
を持っているかについて話し合う。「彼らは祭司であり,
王であり,御父の完全と御父の栄光を受けた者であ〔る。
〕
」
「戦いをりっぱに戦いぬき」,走るべき行程を走り尽く
し,信仰を守りとおすならば,冠を手に入れられることを
指摘する。冠とは報いとして神の完全な栄光を受けること
である。本章では永遠の命がどのような性質を持った約束
であって,どうすればそれを実現できるかについて検討す
る。
板に「不死不滅」と「永遠の命」と書く。これらは同じ意
味の言葉でしょうか。この二つの間には,どのような違い
があるでしょうか。不死不滅とは,復活によって肉体と霊
が分離することのない状態に結び合わされることを意味す
る。ところが,わたしたちがどのような性質の復活を遂げ
るかは,わたしたちがこの世でどのような生活をし,何を
しょくざい
成し遂げたかに大きく影響される。贖罪が行われたため,
地上に生きた人は皆,復活する(1コリント15:22参照)。
これに対して永遠の命とは,イエス・キリストの福音とい
う枠内でしか得ることができない性質の命のことである。
ブルース・R・マッコンキー長老は次のように述べた。
「完全な福音に従う者だけが永遠の命を受け継ぐ。……す
なわち永遠の命を得る者は昇栄を受ける。彼らは神の子で
あり,キリストと共同の相続人であり,長子の教会の会員
である。彼らはあらゆる者に打ち勝ち,あらゆる力を持ち,
御父の完全を受けるのである。彼らは神である。
」
(
『モルモ
ンの教義』ビーハイブ出版,75)
テトス1:2−3を読んで,永遠の命については前世で論じ
られ,約束されていたことを明らかにする。
■
パウロはローマ11:1−2でアブラハムの子孫と神との関
係について述べている。パウロは,どのような意味で,神
は御自分の民を「あらかじめ知っておられた」と述べたの
でしょうか。パウロはまた,一部の人々が「天地の造られ
る前から」キリストにあって選ばれていたことを指摘した
(エペソ1:4)。この言葉は,前世で多くの者たちが召され
て,忠実であることを条件に特別な祝福を受けるよう選ば
れたことを表している。これらの特別な祝福は少なくとも
二つの面を持っている。
第一の側面として,マッコンキー長老は次のように記し
ている。「選ばれた血統というこの選びは前世におけるふ
さわしさに基づいて行われた。すなわち,『神の予知され
たところによって』
(1ペテロ1:2)行われたのである。
」マ
ッコンキー長老は次のように説明している。「可能なかぎ
り多くの主の霊の子供たちに救いをもたらすために,主は
一般的にアブラハムとヤコブの血統を通じて最も義にかな
ったふさわしい霊を地上に送られる。この方法は,主の恵
あわ
みの現れ,言い換えれば,子供たちに対する主の愛,憐れ
みであり,身を低くされることの現れである。
」
(
『モルモン
の教義』ビーハイブ出版,75,一部改訂)このようにアブ
ラハム,イサク,ヤコブの血統に生まれる人々は何世紀に
67
第19章
あかし
もわたって,預言者の証を聞き,神聖な聖文と儀式にあず
指摘する。生徒用手引き70−71ページの「参考資料C」を
かることができ,地上における神の業の最前部におかれて
読んで,召しと選びとを確かなものにするための要件を探
きた(ハロルド・B・リー,Conference Report,1973年10
すように言う。一人の生徒にそれらの要件を黒板に書き出
。
月,7−8;Ensign,1974年1月号,5参照)
してもらう(
「黒板1」はその一例である)
。次に,完全に従
第二の側面として,「この選びの一環として,アブラハ
順であることによって,どのような報いがもたらされるか
ムやほかの高潔で偉大な霊は,生まれる前に,この世で彼
について生徒に尋ねる(
「黒板2」参照)
。召しと選びとを確
らに割り当てられた特別な使命のために選ばれていた。」
かなものにするために求められる従順は,中途半端な気持
(マッコンキー『モルモンの教義』ビーハイブ出版,75,一
部改訂)教義と聖約138:56は,高潔で偉大な者たちは「霊
ちからではなく,イエス・キリストの福音にすべてをささ
げることを意味することを強調する。
の世界において最初の教えを受け,主の定められたときに
出て行って人々の霊の救いのために……準備をした」こと
を指摘している(アブラハム3:22−23;エレミヤ1:4−5
も参照)
。
D.自分の召しと選びとを確かなものにする人々は永
遠の命を受け継ぐ。
■
ローマ8:17を読む。相続人になるとは,どのような意味
でしょうか。共同の相続人になるとは,どのような意味で
B.死すべき世に来る者たちは現世において与えられ
る祝福を受けるように召され,選ばれている。
しょうか。これらの語はともに,御父とともに住み,御父
のような生活を送る特権を意味していることを指摘する。
選ばれるとは単に選抜されるという意味である。前世に
わたしたちは相続人として,この特権を賜物として受ける
おける忠実さと従順さのゆえに,生徒たちは以下に関して
(生徒用手引き71ページの「参考資料D」;モーサヤ5:15
■
選ばれたことを指摘し,話し合う。
参照)
。
1. 骨肉の体を受ける。この肉体は最終的に神のようにな
■
「いっそう確実な預言の言葉」は召しと選びとを確かな
り,神が得ておられる完全な命を受けるためになくて
ものにすることと,どのような関係があるでしょうか。教
はならないものである(生徒用手引き70ページの「参
義と聖約131:5を読む。わたしたちは,神の求めておられ
考資料B」参照)
。
ることを果たしていること,神の御前で永遠の命を受ける
み たま
2. 救いの儀式を受け,この世においてキリストの家族の
資格があることについて,聖なる御霊の証をこの世におい
一員になる。すなわちイエス・キリストの教会の会員
て受けられることを指摘する(生徒用手引き70ページの
となる。
「参考資料C」参照)
。
C.自分の召しと選びとを確かなものにすることは,
死すべき世で求めるべき大切な事柄である。
■
まとめ
イエス・キリストの教会の会員であることにより,従順
子らが完全な喜びを受けることを望んでおられる愛にあ
たまもの
であるならば,御父の最大の賜物である永遠の命を受ける
ふれる天父は,この世にいるわたしたちに対して永遠の命
立場におかれている。召しと選びとを確かなものにするた
に関する原則を啓示してこられた。「この世において平和
めに,わたしたちは何をしなければならないでしょうか。
を,また来るべき世において永遠の命を」受けるよう,こ
「確かなものにする」という語は,「失敗しない,信頼でき
る,存在や実現をあてにできる」という意味を持つことを
68
の約束は義を求めるすべての人に与えられている(教義と
聖約59:23)
。
第19章
「黒板1」
召しと選びとを確かなものにするための要件
義に飢え渇く
神の一つ一つの言葉によって生きる
主によって十分な証明を受ける
万難を排して神に仕えることを決意する
義に対して完全に献身する
「黒板2」
従順のもたらす報い
召しと選びとを確かなものにする
来世で福音のもたらす完全な報いを受け継ぐ(昇栄)
69
せ い さ ん
第20章
聖餐――記念の儀式
はじめに
■
マタイ26:26−29を読む。ここには,救い主が最後の晩
餐の席で十二使徒に聖餐を教えられたことが記されてい
「聖餐」という語の意味を生徒に尋ねる。この語は元来
る。ルカ22:15−21と1コリント11:24−25を読んで,話し
「聖別がもたらす結果」,あるいは「宗教上の承認によって
合う。聖餐の象徴は主の体と血を記念するために用いられ
■
聖別,奉献,保証する手段」という意味を持っていた
“sacrament”の項)
。最終的
(Oxford English Dictionary,
に聖餐という語は,神聖な宗教行事を指すようになった。
ばんさん
■
多くの末日聖徒が主の晩餐の聖餐に完全には参加してい
ていることを指摘する。
■
生徒用手引き72ページの「教義の概要A2」に挙げられて
いる聖句から幾つかを選んで,聖餐はキリストの贖いの犠
牲を記念するために定められたことを説明する。
ない理由について話し合う。わたしたちは毎週聖餐を受け
ることができるため,儀式を特別視しなくなり,毎回よく
準備しないままに参加している人が数多く見られる。外的
B.わたしたちは聖餐にあずかるとき,神と聖約を交
わす。
な要因による妨害によって,聖餐の間,霊的な事柄に精神
■
を集中できないこともある。聖餐の真の意味を理解してい
るものとするために,一人一人の会員に対して聖餐の意味
ない人もいる。
を教えなければならないことを強調する。宣教師はバプテ
ほとんどの末日聖徒は自身を清めて永遠の命に備えるた
教義と聖約20:68を読んで,話し合う。聖餐を意味のあ
スマを受ける予定の求道者に対して,両親は子供に対して,
めに,聖餐の儀式を活用することができるはずである。デ
バプテスマを受ける前に聖餐について教えるべきである。
ビッド・O・マッケイ大管長は次のように語った。「イエ
■
ス・キリストの教会において最も神聖な儀式の一つは主の
神聖な合意,または約束)わたしたちは聖餐を受けるとき
晩餐の聖餐を受けることです。この儀式を取り巻いている
に何の聖約を新たにするのでしょうか。(バプテスマ)バ
諸原則は,人が人格を築くために必要な原則であり,神の
プテスマの聖約と聖餐の聖約は同じでしょうか。共通する
王国で進歩して昇栄を受けるために,なくてはならないも
事項には,どのようなものがあるでしょうか。一人の生徒
のです。この簡素でありながらも崇高な儀式の持つ重要性
に教義と聖約20章77節と79節を読んでもらい,別の生徒に
と意義を理解して聖餐を受けている教会員は,ほとんどい
それぞれの祈りの要素を黒板に書き出してもらう。わたし
ません。残念なことに,礼拝の外形的な面ばかりに気をと
たちは象徴を受けるときに何を行うと約束するのでしょう
られて,その深い霊的な意義を心の奥底で感じることのな
か。御父は,どのようなことを約束されるでしょうか。生
い例が往々にして見られるのです。
」
(Gospel Ideals,71)
徒用手引き73ページの「参考資料B」から,ジョセフ・フ
教えるためのアイデア
福音の聖約の定義を復習する。
(神と人の間で交わされる
ィールディング・スミス大管長とブルース・R・マッコン
キー長老の見解を分かち合うとよい(スミス『救いの教義』
第2巻,318−319;マッコンキー,The Promised Messiah,
A.イエス・キリストは記念の儀式として聖餐を定め
られた。
386参照)
。
■
わたしたちは聖餐をどれほどの頻度で受けるべきでしょ
有史以来,主は選民に対して大切な福音の原則を教えた
うか。主は次のように啓示しておられる。「教会員は,主
り,思い起こさせたりするために象徴的な儀式を用いてこ
イエスの記念としてパンとぶどう酒を受けるために,しば
られた。聖餐の儀式では福音のどの原則が強調されている
しば集まることが必要である。」(教義と聖約20:75)モル
でしょうか。(キリストの贖罪)キリストが降誕される以
モン書に登場する義にかなった聖徒たちは断食し,祈り,
前に,やがて実施される贖いの犠牲をイスラエルに思い起
聖餐を受け,人の幸いについて互いに語り合うためにしば
こさせるために行われた儀式や神聖な行事は存在したでし
しば集まった(モロナイ6:5−6参照)
。
■
しょくざい
あがな
ょうか。「犠牲の儀式(聖徒の注意を神の御子の来るべき
教会の初期の時代にも聖餐会は開かれていたが(教義と
犠牲に向けるもの)に代わって,主は地上での働きの間に
聖約46:4−5参照)
,必ずしも日曜日に開かれていたわけで
聖餐の儀式(主がこの世を去られた後,聖徒の注意を主が
行われた偉大な贖いの犠牲に向けるもの)を制定された。」
(ブルース・R・マッコンキー『モルモンの教義』ビーハイ
ブ出版,306,一部改訂)
「黒板1」を使って,キリストが地
上で務めを果たされる以前と以後に,大切な儀式を通して
こんにち
どのように贖罪が教えられたかを説明する。今日,主の晩
餐の聖餐は神の御子の犠牲を記念するために行われる聖な
る記念の儀式となっている。
はなかった。主は教義と聖約59:9−10で次のような啓示を
与えられた。「また,あなたは,世の汚れに染まらずに自
らをさらに十分に清く保つために,わたしの聖日に祈りの
家に行って,聖式をささげなければならない。まことに,
この日は,あなたがたの労苦を解かれて休み,いと高き方
に礼拝をささげるように定められた日だからである。」「聖
式」には,わたしたちが聖餐会で受ける主の晩餐の聖餐が
含まれる。教会員は聖餐会に出席して,聖餐を受けるよう
71
第20章
命じられている。
L・トム・ペリー長老は聖餐会に定期的に出席すること
D.聖餐にあずかろうとする人々に関して,基準と保
護手段が与えられている。
の大切さについて次のように述べた。「わたしたちは一人
■
一人が毎週救い主である主との個人的な親しい交わりを求
けてはならない。」この言葉は,なぜ正しいかを尋ねる。1
めるべきです。こうして毎週主を思い起こしていくならば,
コリント11:27と3ニーファイ18:29を読む。ふさわしい状
わたしたちは,さらに神に似た者となることでしょう。…
態で聖餐を受ける人は養いを受ける。ふさわしくないまま
…
に聖餐を受ける人は,霊的な成長が止まるため,罰の定め
黒板に以下の文を書く。
「ふさわしくないままで聖餐を受
わたしたちは毎週聖餐会に出席することで,絶えず新た
を受ける。聖典では,ふさわしくないまま聖餐を受けるこ
な力と献身の念が沸き上がるのを覚えます。
」
(
「わたしを主
とは救い主を再び十字架につけることにたとえられている
よ,主よ,と呼びながら,なぜわたしの言うことを行わな
(1コリント11:27参照)
。ふさわしくないままで聖餐を受け
いのか」
『聖徒の道』1985年1月号,20)
ることがもたらす霊的な結果に注目する(1コリント11:30
参照)
。
C.パンと水は重要な象徴である。
■
■
いん ゆ
救い主は教えやたとえの中で,しばしば隠喩を使われた
聖餐を受けるにふさわしいかどうかを判断することにつ
いて,個人には,それぞれどのような責任があるでしょう
ことを指摘する。イエスは「わたしが命のパンである。わ
か。1コリント11:28を読む。生徒用手引き74−75ページの
たしに来る者は決して飢えることが〔ない〕」と言われた
「参考資料D」から,ふさわしさに関するジョージ・アルバ
とき,どのようなことを伝えようとされたのでしょうか
ート・スミス大管長の基準を分かち合う。
(ヨハネ6:35)
。また,イエスは御自身を「生ける水」の源
注意:聖餐を受けることについて不必要に禁じることの
であると言われたとき,どのようなことを伝えようとされ
ないようにする。もし,生徒が聖餐を受けるべきかどうか
たのでしょうか(ヨハネ4:10。11−13節も参照)。救い主
について疑問を持っていれば,監督に尋ねるべきである。
は,これらの隠喩によって,御自分の命,使命,贖罪,教
打ち砕かれた心と悔いる霊を持ち,自分の弱点を心から克
義が永遠の命の源となっていることを教えられた。パンと
服しようとする思いを持って聖餐会に出席する人は,監督
水を文字どおりの意味で使われたことはなかった。聖餐で
に告白する必要のある罪を犯していないかぎり,聖餐を受
用いられるパンと水は,わたしたちに贖罪を教え,思い起
けるにふさわしい人である。メルビン・J・バラード長老は
こさせるための象徴である。これらの象徴の意味を明確に
次のように提案した。「わたしたちは,すべての末日聖徒
するためにジョセフ・スミス訳マルコ14:20−25を読む。
にこの聖餐の席に着いてもらいたいと思っている。そこは
パンと水は恐らくほかのどのような食物や飲み物よりも
自己を吟味する場であり,自己を診断する場であり,進路
人の体に必要なものを表しているであろう。しかし,聖餐
を修正し,生活を正して教会の教えやほかの兄弟姉妹と調
■
のパンと水を取ることには,体のために摂取するという意
味合いはない。聖餐には体を維持する目的がないとすれば,
和させていくことを学ぶ場だからである。」(「聖餐の聖約」
『聖徒の道』1976年6月号,252)
何を維持するのでしょうか。3ニーファイ20:8−9を読む。
聖餐の象徴は体ではなく霊を対象としていることを強調す
まとめ
る。救い主は真心と清い思いを持って聖餐を受けるならば,
「決して飢えることも渇くこともなく,満たされる」と約
束された(3ニーファイ20:8)
。
聖餐を自分の礼拝活動の中でいっそう意味のあるものと
するよう生徒にチャレンジする。聖餐が執行されている間,
わたしたちは現在,聖餐のためにぶどう酒ではなく水を
全神経を集中させることは一つの方法である。わたしたち
用いている理由について話し合う。この問題は教義と聖約
は聖餐を通して,神との交わりをいっそう身近なものとし
27章の前書きと,教義と聖約27:2で明確にされている。
て感じ,自分の生活を神の御心と一致させることができる。
■
72
みこころ
第20章
「黒板1」
キリストの贖罪:
古代の儀式と近代の儀式の主眼
救い主
やがて実施される救い主の
犠牲の記念
動物の犠牲
未来に期待を寄せる
贖 罪
救い主の犠牲の記念
聖餐の象徴を受ける
過去を振り返る
73
聖約のイスラエルの予任と
その責任
2. 聖文
はじめに
■
第21章
3. 聖霊の賜物
『聖句ガイド』を使って,
「ユダヤ人」
,
「異邦人」
,
「イス
ラエル」を定義する。
■ 心臓外科医,化学技術者,弁護士,国家の諮問委員など
の資格を持っている人々を採用する場面のロールプレイン
グを行う。彼らは必要な知識を得て,さらに技術を身に付
けた後にそれぞれの資格を手にする。特定の職業には一定
の知識と技術が要求されることを指摘する。その知識や技
術がないと仕事を果たせない。これらの俗世特有の準備を,
全人類に福音をもたらすという召しを受けたイスラエルの
家に属する人々が前世で行った準備にたとえる。
4. 神権と神権の儀式
これらの祝福とそれに伴う責任はアブラハムの聖約によ
ってイスラエルに与えられたことを説明する(アブラハム
2:6−11参照)
。神権,聖約,福音はアブラハムの子孫に約
束された祝福であり,さらに聖約の民イスラエルに与えら
れた祝福でもあった。生徒用手引き77ページの「参考資料
B」から,アブラハムの聖約がいつまで有効なのかについ
て述べたジョセフ・フィールディング・スミス大管長の言
。
葉を読む(The Way to Perfection,96参照)
■
アブラハムの聖約はイサクとヤコブに更新された。生徒
用手引き76ページの「教義の概要B3」に挙げられている参
教えるためのアイデア
照聖句を読むとよい。イスラエル以降の選民はイスラエル
の家と呼ばれた。イスラエルとはヤコブが晩年に与えられ
A.イスラエルの民は,前世で特別な,高貴な者たち
であった。
た名前である。アルマ7:25を読んで,アブラハム,イサク,
ヤコブが果たした,卓越した役割を説明する。イスラエル
生徒用手引き77ページの「参考資料A」から,前世にお
の家に約束された祝福はアブラハム,イサク,ヤコブの祝
いてイスラエルの得ていた名声について語ったハロルド・
福と呼ばれることが多い。神殿において結び固めを受ける
B・リー大管長の話を読む。生徒用手引き76ページの「教
男女に約束される祝福を表す際に,現在,この語が用いら
義の概要A1」に挙げられている参照聖句から,幾つかを選
れている。
■
んで読む。
こんにち
B.神は現世で再び,イスラエルと聖約を交わされた。
■
アブラハムは,この世が創造される以前に,死すべき世
C.今日 ,聖約のイスラエルとは,福音を受け入れ,
それに従って生活するという聖約を交わしている人々
を指す。
にいる間指導者となるよう召されていた(アブラハム3:
■
22−23参照)
。アブラハムはイサクの父であり,イサクはイ
イスラエル家の人々,すなわちアブラハム,イサク,ヤコ
スラエルと名前を変えられたヤコブの父だった。アブラハ
ブの文字どおりの子孫に宣べ伝えられた(マタイ15:24参
ムは多くの国民の父だったが(多くの息子がいた),主は
照)。救い主が復活された後,使徒ペテロは異邦人に福音
イスラエルの血統を通じてすべての国民に祝福を与えるこ
を携えて行く時が来たことを示現で知らされた(使徒10章
とにされた。神がアブラハムと交わされた聖約はイスラエ
参照)。このときから,イスラエルの血統に属さない人々
ルの全家に及ぶもので,アブラハムの聖約と呼ばれている。
のうち,悔い改めとバプテスマによって福音を受け入れた
創世17:3−9を読む。神がアブラハムの聖約の中で与えら
者たちは養子縁組によってイスラエルの家に迎えられ,ア
れた約束を黒板に書き出す。生徒用手引き77ページの「参
ブラハムの聖約に基づくすべての祝福を相続する者となっ
考資料B」から,アブラハムの子孫を通じて地上の全国民
た(生徒用手引き76ページの「教義の概要C3」と78ページ
が祝福を受ける方法について説明したジョセフ・フィール
の「参考資料C」参照)
。
キリストがこの世で務めを果たしておられた間,福音は
の
ディング・スミス大管長の言葉を読む(『救いの教義』第3
巻,221参照)。アブラハムの子孫もまた,この世で忠実で
あるならば,永遠に増し加えられる祝福を受けることを主
D.神の聖約の民として,イスラエルには特別な責任
と務めが与えられてきた。
は預言者ジョセフ・スミスを通じて明らかにされた(教義
■
と聖約132:28−31参照)
。
つ責任を明らかにする。(地のすべての国民に,この務め
アブラハム2:6−11を読んで,聖約の民イスラエルの持
地上で生活する目的が昇栄に備えることであるとするな
と神権を携えて行くこと。)生徒用手引き78−79ページの
らば,選民にとって最も偉大な賜物は何でしょうか。聖約
「参考資料D」から,神の聖約の民であるわたしたちが持つ
の民であるイスラエルは前世における義によって,どのよ
責任について述べたジョン・A・ウイッツォー長老の言葉
うな祝福を受けたでしょうか。以下の祝福を黒板に書き出
を深く考える。
してから,話し合いを展開する。
■
■
たまもの
1. 預言者
もしすべての国民に福音を携えて行く務めを果たしてい
ないとしたら,わたしたちは,それでも選ばれた聖約の民
75
第21章
であり続けることができるでしょうか。スペンサー・W・
5. 国々の民を突き倒す=イスラエルを集める
キンボール大管長は,福音を宣べ伝えること,聖徒を完成
この聖句は最後の神権時代である現在,成就されつつあ
させること,死者を贖うことという3つの責任をわたした
る。ヨセフは長子として,神権の責任を含む生得権を主張
ちに与えた(「わたしの管理の職の報告」『聖徒の道』1981
している。イスラエルが集められ,ヨセフの部族(エフラ
年9月号,4−7参照)。このチャレンジは,聖約の民イスラ
イムとマナセ)の指揮下で救いの儀式が執行されるのは神
エルとしてわたしたちが地上の家族に祝福をもたらす責任
権の力による。働き,強さ,力,忍耐の象徴である牛は,
を果たすために,どのように助けとなっているでしょうか。
世界に福音を携えて行くという重荷と大きな責任を負わな
あがな
■
創世49章と申命33章にはヤコブ(イスラエル)の12人の
ければならない末日のエフライムに似つかわしい。
息子(部族)に与えられた族長(祝福師)の祝福が記され
ていることを指摘する。申命33:17から,ヨセフに与えら
まとめ
れた祝福の一部を読んで,話し合う。以下の象徴を黒板に
書いて,説明する。
1. ういご=長子
2. 牛=飼いならされた牛
3. 野牛=野生の牛
4. 角=力
76
教会の青少年,特に若い男性に対して,世界の国々で伝
道するために準備するよう預言者が絶えず励ましの声をか
けているのは,どのような理由からでしょうか。生徒は末
日聖徒として,天父の子らに福音を携えて行くために個人
的にどのようなことを実行しているかを尋ねる。
第22章
背 教
はじめに
っているのは,神権のどの職でしょうか。(使徒)なぜこ
背教とは,どのような意味でしょうか。生徒が答える定
,
義を黒板に書き出す。ギリシャ語のapostasiaは「反抗する」
この場合は「教会から脱会する」という意味を持つ。背教
とは教会の権威と主の正式な代表者を否定すること,教会
が受け入れ,教会員に義務づけている教義と儀式を否定す
ることのいずれか,または両方を指す。いずれの場合も,
背教者は教会に反対し,教会と対決する。
■ 「黒板1」を参照する。ここには,イエスが組織された教
会の継続性に関して,カトリック,プロテスタント,末日
聖徒それぞれの見解が記されている。
織は聖徒たちを完成させるため,教え導く業のため,教会
■
の職は,ほかの職と同様に大切なのでしょうか。教会の組
に一致をもたらすために存在するとパウロは教えた(エペ
ソ4:12−13参照)
。
B.救い主の教会からの大背教が預言された。
■
イザヤ24:5とアモス8:11−12を研究する。旧約聖書の
これら二つの聖句は背教についてどのようなことを教えて
いるでしょうか。これらは,いにしえの時代に語られた背
教の定義であることを説明する。彼らは儀式が変えられ,
き きん
聖約が破られること,人々が主の言葉を聞くことの飢饉を
経験すると預言した(生徒用手引き80ページの「参考資料
教えるためのアイデア
B」参照)
。
■
A.救い主はこの地上で教導の業を行われたとき,御
自身の教会を組織し,救いの原則と儀式について教え
られた。
■
イエスがこの世におられた間に教会を組織したという証
拠があるでしょうか。教会とは,いずれかの形態による管
理権を持つ宗教上の組織をいうと定義されていることを指
摘する。教会はさらに,同じ信条,教え,教義,儀式を持
つ信者の集まりとも定義されている( Webster's Third
“church”の項参照)
。これ
New International Dictionary,
らの定義を踏まえて,イエスが教会を組織された証拠を調
べる。時の中間の神権時代にイエスは使徒(マタイ10:1−
10参照)と七十人(欽定訳ルカ10:1,17参照)を選ばれた
ことを二人の使徒が記録した。末日の使徒たちもイエスが
地上におられたときに御自身の教会を組織されたことを記
録している(生徒用手引き80ページの「参考資料A」参照)
。
イエスは教会の基本的な組織のほかに,御自身の教会に
おいて主の弟子であることを明確にする特定の教えと儀式
を強調された。ペテロは五旬節の日に,救い主の教会に加
わって,約束されている祝福を受けるにはキリストを信じ
たまもの
る信仰,悔い改め,バプテスマ,聖霊の賜物が必要である
と宣言した(使徒2:37−38参照)。救い主は地上で務めを
果たしておられた間に,主の弟子となるには一定の倫理と
道徳上の要件も満たさなければならないことを教えられた
(ルカ14:26;ヨハネ8:31;ヨハネ13:35参照)
。
■ 教会の着実な成長は,やがて急速な組織の拡大へと発展
していった。しかし,その結果をもたらした要因は成長だ
けではなかった。教会の組織的な拡大には啓示が寄与して
いたことは間違いない。
教会の組織を完全な形態を持つ建物に表した「黒板2」を参
照する。それぞれの教会の職は聖典に記されていることを
指摘する。1コリント12:28;エペソ2:19−21;4:11−14
を生徒に読んでもらう。これらの参照聖句の中で中心とな
の
あかし
使徒たちは引き続き教えを宣べ伝え,イエスを証してい
たが,大背教が起きることを知っていたことを示す証拠が
たくさんある。以下の聖句の参照箇所を黒板に書いて,生
徒に黙読するように言う。
使徒20:29−30。「凶暴なおおかみ」が教会に入って
くる。人々は「いろいろ曲がったこと」を言う。
2テサロニケ2:1−4。キリストの再臨に先立って,
「背
教」が起きる。
おしえ
2テモテ4:3−4。「人々が健全な教に耐えられなくな
り」
,
「真理からは耳をそむけて,作り話の方にそれていく。
」
2ペテロ2:1−3。
「にせ預言者」や「にせ教師が……滅
びに至らせる異端をひそかに持ち込み」,「大ぜいの人が彼
らの放縦を見習〔う〕
。
」
パウロが語った,来るべき背教への警告について話し合
う。
C.イエス・キリストがこの地上での教導の業を終え
られた後,全世界的な背教が起こった。
■
使徒たちは教えと導きを施していながらも大背教がやっ
て来ることを知っていたので,それが大きな重荷となって
いたことを指摘する。パウロは福音を宣べ伝えながら町か
ら町へと旅する間,時々以前に教えた人々と連絡を取って
いた。パウロは,その手紙の中で,真理から離れ去った
人々や教えを守っていない人々をたしなめている。かつて
は一致していた地に,分派と争いが起きていた。パウロは
使徒としての自分の召しや教えと勧告の正当性を否定する
偽指導者に絶えず悩まされていた。ガラテヤ1:6−8;1コ
リント1:10−12;11:18−19;2テモテ1:15を読む。
使徒パウロは教会の安定が次第に揺るがされて,それが
全世界に及び,完全に崩壊するのを見た。背教が全世界に
及んだことに関して,生徒用手引き80−82ページの「参考
資料C」から,さらに証拠を見つけることができる。
77
第22章
まとめ
くらやみ
世界を暗闇に包み込んだ,預言された背教は,1820年の
春,御父と御子がジョセフ・スミスを訪れられたことをも
78
って終わりを告げた。こうして現在,使徒たちは再び地上
で,すべての国民に福音をもたらす神聖な使命を果たして
いる。
第22章
「黒板1」
見解1:権能の系統,教義,真理は損なわれていない
見解2:部分的な背教――改革により修正された
見解3:完全な背教――組織,権能,教義,儀式の回復
79
大
祭
司
伝道者…………………エペソ4:11
信仰……………………ヘブル11:6
祭司…………………ルカ1:5
長老…………………使徒14:25
バプテスマ
聖霊の賜物……………使徒2:37−38
七十人………………ルカ10:1
大祭司………………ヘブル3:1−5
悔い改め
牧師……………………エペソ4:11
教師…………………エペソ4:11
ヤコブの手紙5:14−15
監督……………………テトス1:1−7
使徒と預言者の土台
督
監
執事…………………使徒6:1−8
隅のかしら石
キリスト――
老
司
師
事
七
十
人
アロン神権とメルキゼデク神権
長
祭
教
エペソ4:12
「聖徒たちをととのえ〔るためである〕
」
聖 霊
イエス・キリスト
父なる神
執
1コリント12:28
第一に使徒,第二に預言者……をおかれた」
「そして,神は教会の中で,人々を立てて,
伝
道
者
エペソ5:23−24
使徒4:10−12
コロサイ1:15−19
エペソ2:19
「聖徒たちと同じ国籍の者」
会員たちは聖徒と呼ばれた。
信 仰
悔い改め
バプテスマ
啓 示
の教会
イエス・キリスト
預 言
第22章
「黒板2」
81
時満ちる神権時代における
福音の回復
第23章
代の後に起きたため,福音が回復される新しい神権時代が
はじめに
必要となった。
)
回復という語を定義してもらう。回復するとは,以前に
取り去られたものや失われたものを元に戻すことである。
教会用語としての回復は福音,神権,儀式,主の教会その
ものがすべて取り去られた後に地上に戻されることを意味
する。
■ 神権時代という語を定義してもらう。
「主が救いの計画を
新たに啓示されて,人がそれ以前に天より授けられていた
栄光と驚嘆すべき御業だけに頼る必要がなくなったとき,
それを福音の神権時代と呼ぶ。この神権時代には,もろも
かぎ
ろの鍵と権能と神権の回復が伴うこともあれば,伴わない
こともある。」(ブルース・R・マッコンキー「輝かしき福
音」
『聖徒の道』1980年4月号,84)
わたしたちはキリストの再臨を前にした地上の最後の神
権時代に生きている。預言者ジョセフ・スミスは,このよ
うに宣言した。「今や訪れようとしている時満ちる神権時
代の到来に当たって,アダムの時代から現在に至るまでの,
神権時代と鍵と力と栄光のすべての,ことごとくの,完全
な和合と結合が起こり,示されることが必要だからです。」
(教義と聖約128:18)預言者ジョセフ・スミスは教義と聖
約128:20−21で,現在の神権時代に神権の力と鍵を回復す
るために地上に戻った天使を列挙している。
■
■
生徒用手引き83ページの「教義の概要A」に挙げられて
いる参照聖句を読んで,話し合う。イザヤはジョセフ・ス
ミスの時代と,それ以前の地上の状態を見たことを指摘す
る。預言者ジョセフ・スミスが語った当時の時代の状態と,
イザヤの預言とがどれほど符合しているかを示す(イザヤ
24:5;29:13参照)
。
B.古代の預言者たちは時満ちる神権時代における福
音の回復を預言した。
あかし
■
五旬節の日に使徒ペテロは万物の回復について証した。
使徒3:21からペテロの預言を読む。ペテロは回復が将来行
われること,アダムから始まるすべての預言者は末日の回
復を知っており,預言したこと,末日の回復は主の再臨に
先立って行われることを証したことを強調する。あらゆる
預言者の目が現在の神権時代に注がれていたことについて
述べたウィルフォード・ウッドラフ大管長の言葉を分かち
合う(生徒用手引き84ページの「参考資料B」参照)
。預言
者ジョセフ・スミスは,この概念について次のように教え
た。「シオンを築くということは,あらゆる時代の神の民
が関心を示してきた大義である。預言者,祭司,王たちは,
特にこのテーマについて語るのを喜びとした。彼らは,わ
たしたちが生きている時代を楽しみに待ち望んでいた。」
教えるためのアイデア
(Teachings of the Prophet Joseph Smith, 430)
A.時の中間の神権時代後に大背教が起こったため,
末日に福音の回復が必要になった。
■
時の中間の神権時代と時満ちる神権時代の間には,どの
C.時満ちる神権時代は,ジョセフ・スミスへの御父
と御子の現れで始まった。
■
黒板に「神の顕現」と書いて,生徒に定義してもらう。
ような大切な違いがあるでしょうか。時の中間の神権時代
神の顕現とは神が人に姿を現されることである。ジョセ
について,ブルース・R・マッコンキー長老は次のように
フ・スミスが経験した顕現と,聖典に記されているほかの
記している。「主のこの世における教導の働きは,『時の中
顕現を比較するように言う。
間』において行われた。……『中間』とは一日の中間点あ
るいは絶頂点を意味し,太陽は正午にその点を通過する。
あがな
■
ビデオカセット『教会ビデオ基礎編』(53779 300)から
「最初の示現」を見せるとよい。
……キリストは時の中間において生き,働き,贖いの業を
■
完成されたので,その時期は真に歴史の絶頂点であった。」
ょうか。
(『モルモンの教義』ビーハイブ出版,396) 時満ちる神権
時代について,マッコンキー長老は次のように説明した。
最初の示現で明らかにされたのは,どのような真理でし
この質問に対するジェームズ・E・ファウスト長老の解
答について話し合う。
「わたしたちは時満ちる神権時代に生を受けている。すな
「1.父なる神が一人の御方として存在しておられるこ
わち,現在は数々の神権時代のすべてが集約された神権時
と。そのことを通して,人が神の姿にかたどって造られた
代である。……
ことが分かる。
過去という大河が,ことごとく現在という海に流れ込む
のである。すでに鍵と権能は,すべてわたしたちに与えら
れている。そして結局,すべての教義と真理が明らかにさ
れるはずである。
」
(
「輝かしき福音」84−85)わたしたちは,
なぜ一つの神権時代だけでなく,二つの異なった神権時代
を取り上げるのでしょうか。(大背教は時の中間の神権時
2.イエスが天父とは別の御方であること。
3.イエス・キリストは天父から神の御子であると宣言
されていること。
4.聖書に教えられているようにイエスが啓示を伝える
御方であること。
5.神に知恵を求めよというヤコブの約束が成就された
83
第23章
こと。
6.ジョセフ・スミスを滅ぼそうとした,目に見えない
世界から来た生き者が実在すること。
まり,その中に現在の神権時代の指導者たちがいるのを見
た。これらの指導者は前世において高潔で偉大な者たちの
中にいたことを指摘する(教義と聖約138:53−56参照)。
7.イエス・キリストによって建てられた教会から背教
生徒たちもこの時期に地上に来るよう予任されていたこ
が起こり,どの教派も人の教えを教えていたので,ジョセ
と,一人一人が主から大切な任務を与えられていることを
フは,いずれの教派にも加わってはならないと命じられた
強調する。
こと。
8.ジョセフ・スミスが神と御子イエス・キリストの証
まとめ
し人になったこと。」(「パルマイラの近くでの壮大な示現」
『聖徒の道』1984年7月号,116)
賛美歌の多くは回復の賛歌である。わたしたちもそれら
の曲を好んで歌う。生徒にそれらの賛美歌を挙げてもらう。
D.福音の回復はこの神権時代,すなわち時満ちる神
権時代に始まった。
■
黙示14:6−7を読む。永遠の福音の回復に関与した天使
は一人だけだったでしょうか。教義と聖約27:5−12;
110:11−16;128:18−21を読んで,預言者ジョセフ・ス
ミスを訪れた何人かの天の御使いの名前を黒板に書き出
す。可能であれば,それぞれの御使いが回復した真理,ま
たは鍵を書き添える。
■
ジョセフ・F・スミス大管長は1918年に死者の贖いに関
する示現を受けた(教義と聖約138章参照)。スミス大管長
は示現の中で,非常に多くの義人の死者が群れをなして集
84
最も人気のある賛美歌は預言者ジョセフ・スミスを早くか
ら知っていたウィリアム・W・フェルプスが書いた曲であ
る。それは「主のみたまは火のごと燃え」
(
『賛美歌』3番)
,
「いざ救いの日を楽しまん」
(5番)
,
「たたえよ,主の召した
まいし」(16番)である。ほかに回復の賛美歌としては,
「夜明けだ,朝明けだ」
(1番)がある。これらの賛美歌から,
幾つかの歌詞を検討し,閉会する際にその一つを歌うとよ
い。生徒に次の聖句を思い起こさせる。「義人の歌は〔主〕
こうべ
への祈りである。それに対する答えとして,彼らの頭に祝
福が注がれるであろう。
」
(教義と聖約25:12)
第24章
イスラエルの散乱と集合
24:10−16;25:1,7,11;1ニーファイ10:3を読んでも
はじめに
らう。エルサレムはエホヤキン王の治世の時代にバビロン
1841年10月24日,日曜日の早朝,オーソン・ハイドはオ
人の手に落ちた(紀元前600年ごろ)。神殿は略奪され,捕
リブ山に登り,頂上で適当な場所を見つけた。辺りは「厳
虜はバビロンへ連れ去られた。そしてエホヤキン王に代わ
粛な静けさが漂っていた。」彼は「ペンとインクと紙を手
って,バビロン人の臣下としてゼデキヤが王位に就いた。
に取り,聖地を将来ユダヤ人が帰還し,神殿を建設する地
それから2年でユダは壊滅し,エルサレムの城壁は倒され,
として奉献する祈りを書き記し,そしてささげた。」(ハワ
神殿が破壊されて,多くの人々がバビロンへ連れ去られた。
ード・H・バロン,Orson Hyde,128)ハイド長老が奉献
■
する前に,歴史的にどのような出来事が起きたでしょうか。
かかわっていたでしょうか。イスラエルは侵略と捕囚の結
預言者ジョセフ・スミスは,なぜハイド長老をパレスチナ
果として散らされることが多かったが,義人たちが主によ
へ派遣したのでしょうか。福音を完全に理解するためにイ
って邪悪な環境から引き離されたこともあった。ニーファ
スラエルの散乱と集合を理解することが大切なのはなぜで
イ人は自分たちの移民をイスラエルの元木から折り取られ
しょうか。
た1本の枝であると考えていたことを指摘する(1ニーファ
リーハイの家族はバビロン人による散乱にどの程度まで
イ15:12;19:24;生徒用手引き88ページの「参考資料A」
教えるためのアイデア
参照)
。
■
A.民が神の聖約を破ったため,古代のイスラエルは
地上に散らされた。
こんにち
救い主は時の中間の神権時代に,エルサレムが崩壊し,
ユダヤ人が散らされることを預言された。預言の細部に注
意を払いながら,ルカ21:20−24を読む。
今日,すべてのイスラエル人はモーセをほめたたえてい
1. エルサレムが軍隊に包囲される。
る。モーセの指揮によってイスラエル人は数百年にわたる
2. 大きな苦難と怒りのときとなる。
奴隷の状態から解放され,イスラエルの部族は結束してエ
3. エルサレムの人々は剣に倒れ,捕らえられて引きゆ
■
ジプトを脱出し,自分たちの国家を興した。主はモーセを
かれる。
通してイスラエルに約束された。「あなたがたはわたしに
4. エルサレムは異邦人に踏みにじられる。
対して祭司〔と王〕の国となり,また聖なる民となるであ
ユダヤ人が「キリストに対して心をかたくなにして,キ
ろう。
」
(出エジプト19:6)
生徒に申命28:9−10,13とレビ26:13−16を読んでもら
う。主はイスラエルが国家として,また民として存続する
リストを十字架につける」ために,エルサレムにこれらの
あかし
災いが降り掛かるとヤコブは証した(2ニーファイ10:5。
3−4,6節も参照)
。
ことを保証するために,どのような条件を課されたでしょ
イエスの言葉は完全に成就した。
うか。(神に対して忠実であり,従順であり,進んで神の
以下の情報は当時の歴史上の事実である。必要に応じて
言葉に耳を傾けること。)生徒に申命4:23−27;28:25,
活用するとよい。
37,63−65;1ニーファイ10:12−13を読んでもらう。国家
この破壊は紀元64年に起きたローマに対する反抗が引き
を興すために神が与えられた条件を満たさなければ滅びる
金となった。テトスが率いたローマの軍団は紀元70年9月に
とイスラエルに警告された結果と,イスラエルが散乱した
エルサレムを最終的に征服した。ゼロテ派の改革者は紀元
理由は一致しているでしょうか。
73年までマサダの要塞に立てこもっていたが,ローマ軍に
ようさい
主が語られたイスラエルの家の4大散乱を説明している
よって最終的に要塞は破壊された。そのとき,ローマ軍が
「黒板1」を参照する。
(主は述べておられないが,ほかにも
目にしたのは捕虜になるよりも自ら命を絶った1,000人近く
散乱と,
グループとして捕らえられた例があると思われる。
)
「黒板1」を参照しながら,それぞれの散乱に関する話し合
いを充実させる。
の人々だった。
はいきょ
ハドリアヌス皇帝がエルサレムの廃墟にローマ人の都市
アエリア・カピトリナを築こうとしたために,ユダヤ人は
紀元前721年,北王国はアッスリヤによって捕囚された。
ほう き
紀元132年に再び蜂起した。シモン・バー・コシバと名乗る
列王下15:29と17:6−18,23を読む。北王国の崩壊につい
カリスマ的指導者に率いられた反逆者はユダの大部分とエ
て聖典にはどのような理由が挙げられているでしょうか。
ルサレムの町をローマ人の支配から一時的に解放すること
イスラエルは異教の掟に従い,あらゆる高き所で香をたき,
ができた。しかし,兵力を整えて戻って来たローマ人はエ
偶像に仕えた。イスラエルは神を信じず,神の聖約と戒め
ルサレムの周囲の小さな地域を除いてすべてを奪還した。
を破った(1ニーファイ22:3−5;生徒用手引き87−88ペー
紀元135年にバー・コシバとその一味は全員殺害された。ロ
ジの「参考資料A」参照)
。
ーマ軍の移民がエルサレムに住み,地名もパレスチナと改
おきて
■
バビロン人による捕囚は長年に及んだ。生徒に列王下
められた。このようにして,イエスの預言は,ことごとく
85
第24章
み たま
成就した(ハリー・トーマス・フランク,Discovering the
は神の聖なる御霊が悔いる霊を持つ人々の心に働きかける
。
Biblical World,268−275参照)
ことの結果として行われる。『イスラエルの人々よ,……
あなたがたは,ひとりびとり集められる』とイザヤは賛美
B.神は預言者たちを通して,散乱したイスラエルを
再び集めることを約束された。
■
イスラエルは長年にわたって,あらゆる国民の間に散ら
した(イザヤ27:12)
。改宗者は一人ずつ入ってくる。人々
は個人としてバプテスマを受ける。すべての人は自ら判断
を下さなければならないのである。」(Millennial Messiah,
された。このため,集合は地の至る所から行われる(エレ
201)
ミヤ31:8;32:37;申命28:64−65;2ニーファイ10:8−
■
9参照)
。
でしょうか。3ニーファイ21:26−29を読む。イスラエルの
集合に関して教会は現在どのような役割を果たしている
の
旧約聖書によれば,集合が始まるときに,散乱している
家の集合が開始されるに当たって福音が宣べ伝えられる。
イスラエルは霊的にどのような状態になっているでしょう
回復された教会は旗となって,その周りに散らされたイス
か。イスラエルの家の間で霊的な蘇生が行われる。以下の
ラエルが集まる。生徒用手引き89ページの「参考資料B」
聖句は,この霊的覚せいについて詳しく述べている。
からブルース・R・マッコンキー長老とスペンサー・W・
申命4:29−31。彼らは主を求め,主に心を向ける。
けんそん
エレミヤ50:4−5。彼らは謙遜になって神とシオンを
求め,聖約の民となるよう努める。
エゼキエル11:17−20。もろもろのいとうべきものが
取り除かれる。彼らは掟に従って歩み,戒めを守る。
■ 生徒に以下の聖句を黙読して,イスラエルが集合すると
きに彼らはキリストと福音をどの程度まで受け入れるかを
見つけるように言う。
2ニーファイ10:7−8。ユダヤ人はキリストを信じ始
める。
2ニーファイ9:2。ユダヤ人はまことの教会に回復され
る。
2ニーファイ25:15−16。ユダヤ人はキリストを信じ
ざるを得なくなる。
2ニーファイ30:5−7。レーマン人とユダヤ人は,と
もにキリストを信じ始める。
1ニーファイ10:12−14。イスラエルは,まことのメ
シヤを知るようになる。
ブルース・R・マッコンキー長老が記しているように,
イスラエルの民がキリストと福音を受け入れたときに完全
な意味での集合が行われる。「イスラエルの集合において,
……第一の要件は回復された福音を受け入れ,末日聖徒イ
エス・キリスト教会に加わることである。次の要件は,指
定されるいずれかの場所に集まって主を礼拝し,主の完全
な祝福を受けることである。」(The Millennial Messiah,
198)
■ ニーファイ人の預言者たちは,自分たちが散らされた残
りの者の一部であり,聖典で預言された集合は自分たちの
ことを言っていると人々に教えた(アルマ46:23,27;2ニ
ーファイ20:20−23参照)
。
以下の参照箇所を黒板に書き出す。イザヤ10:20−22;
11:11;エレミヤ23:1−4。これらの聖句を全員で読む。
神はイスラエルのすべての子孫が集められると約束してこ
られたでしょうか。そのような集合は選択の自由や個人の
責任の概念と矛盾しないでしょうか。残りの者たちが戻る
とは,どのような意味でしょうか。イスラエルの多くの
人々が集合することを拒否すると考えられるでしょうか。
マッコンキー長老の言葉を紹介する。「イスラエルの集合
キンボール大管長の言葉を読む。マッコンキー長老はまた,
そ せい
86
ユダヤ人の集合において宣教師が果たす役割について次の
ように記している。「イスラエルは神の力と神権の権能に
よって,福音を宣べ伝えることによって,二人ずつ組んで
しもべ
地のあらゆる国民のもとを訪れる主の僕たちによって集め
られる。主の羊は主の声を聞き,主に従う。ほかの人には
従わない。
イスラエルは王国の宣教師によって集められる。
」
(Millennial Messiah,201)
■
異邦人は集合に含まれるのでしょうか。異邦人はバプテ
スマの水を通して養子縁組されることによって主の約束の
相続人となる。彼らは教会に入ると,「聖徒たちと同じ国
籍の者であり,神の家族」となる(エペソ2:19)。彼らは
現代のイスラエルがいるワードやステークに集合する。生
徒用手引き89ページの「参考資料B」から,この点に関し
て述べたキンボール大管長の言葉を読む( Teachings of
Spencer W. Kimball,438−439参照。1ニーファイ14:2;3
ニーファイ21:6,22も参照)
。
■
末日聖徒イエス・キリスト教会の成長に示されているよ
うに,現在進行中の集合は教会に霊的に集合することであ
る。集合には地理上の集合もある。ヨセフの部族は彼らの
受け継ぎの地を得るためにアメリカに集合し,ユダの部族
と失われた部族の一部は中東に集合する(エテル13:3−11
参照)
。
まとめ
散乱と集合の教義には少なくとも3つの大切な要素があ
る。第一は,聖約を破った結果としてイスラエルの家が散
乱へと追いやられた歴史に見られる神の対応である。第二
は,今日,大勢のユダヤ人がパレスチナに帰還して,イス
ラエル国家を興したことに見られる現在進行中の集合であ
る。これよりも大切なのは霊的な集合である。数百万の
人々が回復された教会に加わっており,彼らはイスラエル
の家に属する者であることが確認されている。第三は,集
合におけるわたしたち個人の役割として,全世界に福音の
メッセージを携えて行き,現在のイスラエルが集合するこ
とができるように旗を掲げる責任があることである。
第24章
「黒板1」
イスラエルの散乱
レビ26:33;申命28:25,37,64
ダ
は
れ ネブ
た
カデ
ネザ
ルに
よって
十
,
連
れ
去
部
族は
られ
た
人
ヤ
ダ
人
,ユ
邦
紀元70 年
,異
死後
去
ら
リ
,
年
86
前5
紀元
ユ
,
6年 れ
8
前5
連
紀元
へ
ロン
ビ
バ
の
間
年
21
前7
へ
ヤ
紀元
リ
ス
ッ
ア
ー
ハ
イ
と
は
キ
に
散
リ
スト
の
らさ
れた
子孫
87
神権――神権とは何か,
どのように機能するか
第25章
知ったらどのように感じますか,と生徒に尋ねる。また,
はじめに
みこころ
何を願ってもすべて神の御心にかなうことを知ったらどの
本章の内容は第26章「神権の誓詞と聖約」と密接な関係
ように感じますか,と尋ねる。この祝福は最終的に神権に
がある。これら二つの章を一緒に検討することによって,
よって得られることを指摘する。その条件は,わたしたち
レッスンを提示するためのアイデアを見つけることができ
が完全に従順であることと,天父の御心だけを行おうとす
る。
■
ることである。
神権を持つことの大切さを説明したポール・H・ダン長
老の以下の話を紹介する。
「つい先日,もう一人の父親がすばらしい経験を話してく
■
生徒に,神権の権能によって地上でつなげば永遠に天で
もつながれる事柄をすべて挙げさせる。(すべての神権の
儀式)教義と聖約132:7について話し合うとよい。
れました。彼が言うには,日曜日の午後遅く,家族ととも
に居間に集まり,いすに座っておしゃべりをしていました。
B.神権の権能は,按手によってのみ授けられる。
すると,8歳のかわいい息子がこのように尋ねました。『お
■
父さん,今晩,聖餐会へ行くの。』父親が『うん,行くよ』
に正しく使いたいとしたら,どのようなことが必要とされ
と答えると,息子は次にこう尋ねました。
『どうして。
』
るかを尋ねる。まず,その生徒に小切手帳を使ってもよい
せいさん
小切手帳を見せ,もし生徒があなたの小切手帳を法律的
何と言ったら意味の深い答えができるだろうかと考えて
と許可しなければならない。また二人とも小切手台帳に署
いると,同じように父親のひざの上に座っていた7歳のか
名することによって,その生徒があなたの小切手に署名で
わいい妹がとっさに,無邪気に言いました。『お父さんは
きるようにする必要がある。正式な承認を受けずにその生
神権の人だからよ。そうでしょ。』父親は,これ以上誇ら
徒があなたの小切手帳に署名して使ったとしたら,最終的
しく感じることはできなかったでしょう。
にどのような事態を招くことになるかについて話し合う。
今晩,兄弟の皆さんに申し上げたいと思います。プリン
小切手を法律的に正しく使うためには一定の手続きに従
ストン大学の人やエール大学の人,ハーバード大学の人,
わなければならないのと同じように,神権を正しく行使す
その他どのようなたぐいの人であるよりも,もっと大切な
るには一定の手続きを踏まなければならない。神権は義に
のは『神権の人』であるという誉れなのです。わたしは今
かなった男性会員に按手によってのみ授けられるが,その
晩,マッケイ大管長の証に耳を傾けているときに,再び,
按手は,儀式を執行することを認められたふさわしい神権
この偉大な教訓を学ぶことができました。大管長は,まさ
者によらなければならない。
あかし
し く こ れ ら の 原 則 を 行 動 に 表 し て い る か ら で す 。」
(Conference Report,1967年4月,92−93)
以下に挙げた神権の授与に関する聖句を使って,議論を
展開する。
生徒にとって,「神権の人」であることは,どのような
意味があるか。エール大学の人やハーバード大学の人より
ヘブル5:4。人はアロンの場合のように,神によって召
されなければならない。
も「神権の人」であることのほうがもっと大切なのは,な
出エジプト28:1。アロンは預言者を通して啓示によっ
ぜか。本章は神権に対する理解を深める助けとなることを
て召された。
生徒に説明する。
アルマ6:1。聖任は神の位に従って按手により行われる。
信仰箇条1:5。神権者は皆,預言と按手によって,神か
ら召されなければならない。
教義と聖約20:73。神権を持つ人は神から召され,イ
エス・キリストから権能を授けられている。
教えるためのアイデア
A.神権とは神聖な力および権能である。
■
ブレーンストーミングによって,生徒が神権について知
っていることをすべて挙げさせる。生徒の意見を黒板に書
C.神権には二つの位がある。
き出す。その中に神権の正式な呼称である「神の御子の位
■
に従う聖なる神権」
(教義と聖約107:3)が含まれるように
する。
ここで神権という言葉を定義させる。簡単に話し合った
あとで,生徒用手引き91ページの「参考資料A」から,ジ
教義と聖約107:6を読み,生徒とともに話し合う。
教義と聖約107:18−20を読み,それぞれの神権の位が持
かぎ
つ鍵について話し合う。生徒用手引き92ページの「参考資
料C」を参照し,アロン神権とメルキゼデク神権が異なる
鍵を持つことを説明するとよい。
ョセフ・F・スミス大管長による定義を読む。
■
マタイ16:19とヒラマン10:6−7を読む。神権の結び固
D.神の業は神権の力によって行われる。
めの力とは何を意味するかについて話し合う。主がニーフ
■
ァイを信頼されたように皆さんを信頼しておられることを
主の御名によって行動する全権を与えられていることを説
教義と聖約64:29を読み,神権者は主の代理人であり,
み
な
89
第25章
明する。神の主な業とは,どのようなことかについて質問
に立っていました。大理石で作られたペテロの手には重い
する。モーセ1:39を参照する。生徒用手引き91ページの
鍵束がありました。キンボール大管長は鍵を指し,それが
「教義の概要D」を使い,神権者が天の御父の業を助ける4
象徴するものを説明しました。次いで,わたしは決して忘
つの大きな分野を挙げる。以下の聖句を活用するとよい。
れることのできない光景を目撃しました。キンボール大管
教義と聖約107:8。神にかかわる事柄を地上で管理し,
長はベンティーネステーク会長の方に向き直り,いつにな
指示する。
い断固とした調子で指先を向け,しっかりした,印象的な
アルマ17:3。神の力と権能によって人々を教え,導く。
教義と聖約42:11。教会を築き上げ,強め,祝福する。
教義と聖約107:18−20。福音の儀式と霊的な祝福を
つかさどる。
■ 生徒用手引き92ページの「参考資料D」から,デビッ
ド・O・マッケイ大管長の言葉を生徒に読ませる。
「あなた
は任じられた分野で神を代表するのです」という文を生徒
に説明させる。
言葉を発したのです。『デンマークのルーテル教会の全会
員に伝えてください。鍵を持っているのは,あなたがたで
はありません。持っているのは,わたしです。わたしたち
は,ほんとうの鍵を持っており,毎日使っています,と。
』
」
(The Holy Temple,83)
■
生徒用手引き91ページの「教義の概要E4とE5」に挙げら
れている参照聖句を使って,会長会の鍵,すなわち管理の
鍵がペテロ,ヤコブ,ヨハネに授けられ,それからジョセ
フ・スミスに,そして現在の預言者に伝えられた過程を調
E.神は神権の鍵を通して,御業を指示し,調整を図
っておられる。
■
地上における業を指示するために神が用いておられる鍵
べる。生徒用手引き92−93ページの「参考資料E」から,
神権の鍵がジョセフ・スミスに回復されたことに関するウ
ィルフォード・ウッドラフ大管長の言葉を読むとよい。
は,王国の業を管理し,指示する鍵である。教義と聖約
81:2を読んでから,ボイド・K・パッカー長老の以下の話
まとめ
を分かち合う。これは王国の鍵が教会の大管長に属してい
ることを説明している。
「1976年,デンマークのコペンハーゲンで地域総大会が
開かれました。キンボール大管長は最後の部会を終えると,
ボー・フルー教会を訪れたいと言いました。トルバルセン
作のクリスタスと十二使徒の彫像が置かれている所です。
力をよく理解できるように,スペンサー・W・キンボール
大管長の洞察に富む言葉を紹介してレッスンを締めくくる
とよい。これは1974年のストックホルム地域大会で語った
言葉である。
……
教会堂の正面に位置して,祭壇の奥に有名なクリスタス
の彫像は立っていました。両腕をやや開いて前に差し伸べ,
くぎ
手には釘を打たれた跡が残っており,わき腹の傷は,はっ
きりと見えました。使徒の像は両側に並んでいました。教
会堂右側の前面にペテロが立ち,ほかの使徒たちが順番に
続いていました。大きな建物ではないのですが,これらの
美しい彫像が実に印象的な光景を醸し出していました。……
わたしはキンボール大管長,レックス・ピネガー長老,
ステーク会長のベンティーネ会長とともにペテロの像の前
90
神権および生徒の生活にもたらされるその祝福について
もっとよく学ぶよう生徒にチャレンジする。生徒が神権の
「これは,もてあそぶものではありません。神の神権は
世の中で最も重大なものです。神権によって世界が創造さ
れました。あなたは神権によって自分の世界を創造するの
です。もしあなたが妻や家族を伴って自分自身の世界の神
になるとしたら,それは,あなたが持っているこの神権を
尊んで大いなるものとすることによって実現されるので
す。」(Conference Report, Stockholm Sweden Area
Conference,1974年8月,100)
第26章
神権の誓詞と聖約
はじめに
れた神の約束を説明する際に役立つ。
■
教義と聖約82:10を読んで,主が神権の誓詞と聖約を破
わたしたちの物質的生活に大きな影響を及ぼす一つの力
られることは決してないことを生徒に確認する。神権の聖
が電気である。電気は石油,ガス,石炭,ウラニウムなど
約を破ることの重大さについては教義と聖約84:40−42で
多くの資源から作られる。もし電気が使えなかったらどの
説明されている。さらに,生徒用手引き95ページの「参考
ような生活になるかを生徒に尋ねる。生徒の意見を黒板に
資料A」から,神権の聖約がどのようにして破られるかを
書く。電気は一定の法則または原則に基づいて働くこと,
説明したスペンサー・W・キンボール大管長の言葉を読む
それらの法則に従わないと電力を失ったり,体に危害を受
とよい。
けたりする場合があることを指摘する。
■
神権の誓詞と聖約の約束は女性にも適用されることを若
神権の力は電気に似ていることを指摘する。神権がなけ
い姉妹たちが理解するように助ける。主は神権者に約束さ
れば偉大な祝福を受けることができない。神権がなかった
れている事柄に匹敵するすばらしい祝福を女性に対して約
としたら失う祝福を挙げてもらうとよい。神権も法則や原
束しておられる。ジョセフ・フィールディング・スミス大
則によって支配されており,それらに従わなければ神権の
管長は女性に与えられた祝福について明らかにしている。
力を失う場合があることを指摘する。神権の力を誤用する
「わたしたちは皆,神権の祝福が男性だけのものでない
ことによっても霊的に重大な結果を招く場合がある。(神
ことを知っていると思います。これらの祝福は妻や娘たち,
権の力の概念を説明するために,
ほかの例を用いてもよい。
)
教会のすべての忠実な女性たちにも注がれます。これらの
善良な姉妹たちは戒めを守り,教会で奉仕することによっ
教えるためのアイデア
て主の家の祝福を受けるにふさわしく自分自身を整えるこ
とができます。主は主の息子たちが受けられるすべての霊
A.メルキゼデク神権は誓詞と聖約によって授けられ
る。
誓詞と聖約という言葉を生徒に定義させる。マリオン・
G・ロムニー長老が誓詞について定義した以下の言葉を使
うとよい。「誓詞とは合意した約束を決して破らないこと
を誓って宣言することである。
」
(Conference Report,1962
年4月,17)聖約の優れた定義については,生徒用手引き94
ページの「参考資料A」から,エルレー・L・クリスチャン
セン長老の定義を参照する(Conference Report,1972年10
。
月,44;またはEnsign,1973年1月号,50参照)
■ 生徒用手引き95ページの「参考資料A」から,聖約によ
って神権を受けることについて語ったジョセフ・フィール
ディング・スミス大管長とスペンサー・W・キンボール大
管長の言葉を読む。また生徒用手引き95ページの「参考資
料A」から,キンボール大管長の説明を生徒に読ませる
(Stockholm Sweden Area Council Report, 1974年,100)
。
これは神権の誓詞と聖約を受けるときに,個人が主に対し
て引き受ける責任について語ったものである。それから,
生徒に教義と聖約84:33−44を読ませ,神権を受けるとき
に約束する事柄を少なくとも3つ探させる。これらの約束
について話し合うために「黒板1」を準備しておく。
生徒用手引き95ページの「参考資料A」に記されている
マリオン・G・ロムニー副管長の言葉は,召しを尊んで大
いなるものとすることの意味についての優れた定義であ
り,話し合いの中で使うことができる(「神権につける誓
詞と聖約」
『聖徒の道』1981年4月号,82−83参照)
。生徒用
手引き95ページの「参考資料A」に記されているキンボー
ル大管長による引用文の最後の二つは,「黒板1」に挙げら
■
たまもの
的な賜物と祝福を主の娘たちにも与えられます。なぜなら,
主にあっては,男なしには女はないし,女なしには男はな
いからです。
」
(Conference Report,1970年4月,59)
かぎ
B.義は,神権の力と永遠の命を得る鍵である。
■
生徒に力と権能の違いについて説明させる。音楽の能力
がない生徒にピアノを演奏したり,独唱したりする権限を
与えるという例によって,その重大な違いを説明する。あ
なたがしたことと神権において力と権能が用いられる方法
との関係を説明する。そのために,生徒用手引き95−96ペ
ージの「参考資料B」から,ボイド・K・パッカー長老の話
を読む。
■
生徒に教義と聖約121:34−39を黙読させる。この聖句か
らどのような原則が学べるかを尋ねる。「黒板2」を使って,
義の原則に従順であればあるほど,神権を行使するわたし
たちの力が増し加えられることを説明する。
■
ボーン・J・フェザーストーン長老は,ある経験について
述べたが,これは義にかなった神権者がどのように天の力
を引き寄せられるかを教えてくれる。
「主の足跡をたどっていって,わたしは最近,一人の男
の子とその父親に出会いました。その男の子が友達と一緒
に,ワイオミング州のコディーに近い,とある山すその小
高い丘に登ったときのことです。1本の垂れ下がった高圧
線がありました。友達はうまくそれを跳び越えましたが,
その子は電線に足をとられ,感電死してしまいました。友
達は長い道のりを取って返し,父親がいるところまでずっ
と走りました。そして男の子が感電して死んだことを伝え
ました。父親は若くはありませんでしたが,15分ほど走り
91
第26章
に走って丘を登りました。父親は電線に覆いかぶさってい
る息子に近づくと,板や大きな木の枝を使って,何とかそ
の体を電線から離しました。それから息子を両腕で抱き上
げ,しっかり抱えてこう言いました。『イエス・キリスト
み
な
の御名と聖なるメルキゼデク神権の力と権能によって,わ
たしはあなたに命じます。生きなさい。』少年は父親の腕
の中で死の眠りから覚めました。そしてユタ大学医療セン
ターに運ばれ,無事快復したのです。
」
(
「主の足跡に導かれ
て」
『聖徒の道』1981年7月号,19参照)
別の折にフェザーストーン監督は,この同じ父親のこと
神権者が導き,または治めるとき,どのような資質あるい
は特質が不可欠になるだろうか。
1. 説得と寛容
2. 温厚と柔和
3. 偽りのない愛
4. 優しさ
しっせき
5. 適切な叱責 ――聖霊に感じたときは,そのときに
(すぐに)責める。その後,いっそうの愛を示す。
6. すべての人への慈愛
7. 絶えず思いを飾る(美を添える)徳
に触れ,次のように簡潔に述べている。
「この偉大な兄弟は,もし数日来,いかがわしい本を読
んでいたとしたら,あるいは何かそのようなたぐいの罪に
いや
かかわっていたとしたら,とうていそれ〔息子を癒したこ
と〕はできなかったでしょう。神権を働かせるには純粋な
器が必要なのです。」(Conference Report,1975年4月,
100;またはEnsign,1975年5月号,66)
この物語は,ほとんどの人が経験することのないような
劇的な出来事を含んでいる。しかし,生徒は,それが現実
離れした話でないこと,すなわち神権者は皆,ほかの人々
を祝福するときに霊感を受けられることを理解すべきであ
神権に基づいた指導を行うために不可欠な特質を伸ばして
いる神権者には,どのようなことが約束されているだろう
か。
1. 神の前において自信が増す。
2. 神権の教義が心に滴る。
はんりょ
3. 聖霊が常に伴侶となる。
4. 永遠の主権すなわち永遠の王国を得る。
■ 生徒用手引き94ページの「教義の概要B4」に挙げられて
いる参照聖句を使って,偽善売教と神権の違いを明確にす
る。
る。神権者は皆,神権の割り当てを果たすに当たって霊感
を受けることができる。また父親として,もし忠実である
まとめ
ならば,家庭を治めるための知恵を与えられる。
■
教義と聖約121:35−46を使って,生徒に以下の各質問に
対する答えをできるだけ多く見つけさせる。
生徒に教義と聖約82:3を読ませる。主は,わたしたちを
末日聖徒として祝福し,神権を授けられたので,わたした
ちにさらに大きな期待を寄せておられる。わたしたちがす
人は,どのようなことが原因で神権の力を失うだろうか。
むち
み たま
1.とげのある鞭をける(御霊の勧めに逆らう,
無視する)
。
2. 人の誉れを得ようとする。
3. 罪を覆い隠す。
4. 高慢を満たす。
5. 不義な支配をする。
92
でに持っている力を使えるようになると,主は,さらに大
きな力を与えてくださる。ちょうど電気を統御し,利用す
ることを少しずつ学んできたように,わたしたちは聖約を
守ることによって教えに教えを加えて成長し,やがて神権
の力をすべて支配できるようになる。真の意味で神権を持
つには,この世のものを捨て去らなければならない。この
世のものを捨て去る方法を生徒に提案させてレッスンを終
える。
第26章
「黒板1」
神の約束
人の約束
1. わたしたちは御霊により聖められてその体が
1. 神権の召しを尊んで大いなるものとする(教
更新されるであろう(教義と聖約84:33参
照)。
義と聖約84:33参照)。
2. 永遠の命の言葉を熱心に心に留める(43節参
2. わたしたちは選ばれた子孫となり,神の選民
となるであろう(34節参照)。
照)。
3. 神の口から出る一つ一つの言葉に従って生き
3. 御父の持っておられるすべてが,わたしたち
る(44節参照)。
に与えられるであろう(38節参照)。
「黒板2」
天の力
神権が持つ力
義の原則に従う程度
神権の権利
神権の権能
93
第27章
安息日の律法
はじめに
■
生徒に『聖句ガイド』から「安息日」を調べて,新約聖
書の時代の聖徒たちが週の最初の日に集会を持ち始めた証
主は,なぜ安息日という聖日をわたしたちに与えられた
拠を聖典から見つけるように言う。生徒用手引き99ページ
のでしょうか。様々な国民や文化の間で,どのような理由
の「参考資料B」から,安息日が変更されたことを説明し
から休日が生まれたのでしょうか。休日と聖日の目的には,
ているジェームズ・E・タルメージ長老の言葉を読む。
どのような違いがあるでしょうか。あなたは,どの祝日が
好きですか。休日に対して抱いているような期待と熱意が
安息日に向けられるとしたら,その人は,どのように変わ
C.主は安息日をふさわしく守れるように全般的な指
示を幾つか与えてくださった。
るでしょうか。さらに,社会は,どう変わるでしょうか。
■
教義と聖約59:8−14を深く考える。安息日にふさわしい
活動を提案しているこの啓示は1831年8月7日の日曜日に与
教えるためのアイデア
えられた。幾つかの語句を選んで,その意味と応用方法に
A.安息日の遵守は神の律法である。
まらず」,「喜びが満たされる」などの鍵となる語句を黒板
ついて生徒の意見を求める。
「打ち砕かれた心」
,
「汚れに染
■
生徒用手引き98ページの「教義の概要A1からA3」に挙
かぎ
に書き出して,話し合いの際に参照する。
げられている参照聖句を使って,安息日を守るのは神の永
遠の律法であることを明確にする。
■
生徒用手引き98−99ページの「参考資料A」から,神が
安息日には,どのような活動がふさわしいかについて質
問する。安息日を正しく守ることになるかどうかを判断す
る場合に,以下の4つの質問を役立てるよう提案する。
安息日を重んじておられることについて語ったマーク・
1. この活動によってもっと神に近づけるだろうか。
E・ピーターセン長老の話を読む。安息日の目的を考える
2. それは利己的ではないだろうか。
ならば,ピーターセン長老がなぜ安息日の律法を「神の
みこころ
3. それによって世の汚れに染まることはないだろうか。
御心を最も反映している律法」であると語ったのかをよく
4. それによって,ほかの人たちが安息日を聖く過ごせ
きよ
理解できることを指摘する。
■
ルカ4:16を読む。救い主がいつも安息日を守っておられ
なくなることはないだろうか。
■
安息日にふさわしい心構えと活動に関する話し合いを充
たことは,どの部分から分かるでしょうか。(「いつものよ
実させるために,生徒用手引き99−100ページの「参考資料
うに」
)
C」から,霊感あふれる勧告を選んで読む。
■
現在の神権時代に,安息日を守らなければならないこと
を告げている聖句を探すように言う。『聖句ガイド』から
「安息日」の項を開いて,現代の人々に対して告げられて
いる聖句を読むように言う(教義と聖約59:9;68:29)
。
D.安息日を守る人々には祝福が与えられる。
■
再び教義と聖約59章を参照する。特に,15−19節に注目
する。安息日を忠実に守ることによってもたらされる祝福
について話し合う。「地に満ちているもの……は,あなた
B.時の中間の神権時代に安息日が変更された。
■
いにしえの時代に安息日は7日目に守られていたことにつ
いて話し合う。
出エジプト20:10。旧約聖書の時代に安息日は何日目
に守られていたでしょうか。
(7日目)
出エジプト20:11。7日目を聖別する前に,どのような
ことが行われたでしょうか。(地球の創造と,それに関連
する様々な事柄)
申命5:15。安息日を守ることによって,ほかにどのよ
うなことを記念していたでしょうか。(子らのために主が
行われた業を思い起こすためでもあった。古代の安息日に
は,これらの祝福に対する賛美と感謝を表すことも含まれ
ていた。12−14節を参照する。ここでは安息日を守るよう
にとの戒めが再び述べられている。
)
がたのものとなる」という偉大な約束について深く調べる。
地に満ちているものがどのようにしてわたしたちのものに
なるのでしょうか。この約束は霊的なものか物質的なもの
か,いずれを指しているのでしょうか。両方でしょうか。
■
生徒に喜びと成長をもたらした安息日の礼拝と奉仕の経
験を分かち合うように言う。
まとめ
各自の安息日の礼拝について,評価してみるようチャレ
ンジする。実施している活動や心構えの中で疑問を感じて
いるものがあるでしょうか。主の日を聖くすることについ
て決意を固め,約束されている霊的な力の回復と進歩を実
現させるよう奨励する。
95
第28章
日の栄えの結婚
栄えの王国の最高の階級を受け継ぐことは,昇栄すること
はじめに
であり,日の栄えの王国で昇栄を受けることを意味する。
日の栄えの結婚に関する話し合いを始めるために以下の
文章を黒板に書く。
日の栄えの王国の最高の階級に入るための大切な要件は啓
示によって明らかにされている。昇栄するための第一の要
あわ
1. 天の御父は,その知恵と憐れみによって,男女が互
件は何でしょうか。(結婚の新しくかつ永遠の聖約に入る
いに頼り合ってこそ,持てる力を最大限に発揮でき
こと。
)教義と聖約131:2−4を読む。4節の「その人は増し
るようにされた。
加えることができない」とは,どういう意味でしょうか。
2. 男女が神殿の聖壇の前にひざまずくとき,神の王国
(永遠に親であり続ける特権にあずかることができない。)
において一つの大切な家族の単位が誕生する。
日の栄えの王国に入る要件については第33章「栄えの王国
と滅び」で詳しく取り上げる。
教えるためのアイデア
■
教義と聖約132:19−21を読んで,神が計画しておられる,
男女の神聖で遠大な行く末について話し合う。「永遠の命」
A.結婚は神によって定められたものである。
■
天の御父は,なぜ結婚を定められたかを生徒に尋ねる。
(御父は,わたしたちが家族の生活を通してもたらされる
祝福,永遠の結婚と永遠に親であり続ける祝福を得るよう
の意味と,また教会がなぜ結婚前の完全な純潔と結婚後の
完全な貞節を強調しているかについて話し合うとよい。生
徒用手引き 104−105ページの「参考資料C」から,ジェー
ムズ・E・タルメージ長老の言葉も読む。
望んでおられる。)スペンサー・W・キンボール大管長は
結婚が永遠の計画の一部であることを指摘している。
まとめ
「ふさわしい時が来たら,主自ら作られた成熟したこれ
らの霊たちは,この地上に来て,つつましくても清い肉体
キンボール大管長は日の栄えの結婚がどれほど望ましい
を受け,汚れない心を持った両親のいる愛にあふれた家庭
ものかを説明するために,以下の二つの経験を紹介した。
で教えと訓練を受け,数知れない様々な成長の機会を通し
以下の一つ,または両方の話を読むか,教師が自分の言葉
て成熟する。それから今度は彼らが結婚して,次世代の
で話して話し合いを締めくくる。
人々に肉体を与え,同じ過程を経て,この永遠の計画を実
「1955年にヨーロッパから帰ったときにお話しした短い
現していく。主は,そう定められた。」(“Marriage Is
話を紹介して終わりにしたいと思います。わたしは神殿の
Honorable,
”Speeches of the Year, 1973年,258)
奉献に出席するためにヨーロッパを訪れました。わたしの
教義と聖約49:15−17を読む。神がなぜ地上で男女が結
知っていた一人のドイツ人女性は戦争で夫を亡くしていま
婚するよう定められたかを説明している17節に特に注目す
した。ベルンでの奉献のために神殿内にいたときに,この
る。
『聖句ガイド』から「結婚」に関する参考資料を読む。
すばらしいドイツ人女性は自分の経験を話してくれまし
■
た。彼女の夫はそれより10年前に行方が分からなくなりま
B.結婚はこの世を去った後も有効であるように,神権
の結び固めの力によって執行されなければならない。
した。それは戦争が終わった1945年のことでした。夫から
生徒用手引き103ページの「参考資料B」から,アダムと
した。彼は戦死したと考えられました。奉献が終わってか
エバの結婚が主によって執行されたことに関するハロル
ら,マッケイ大管長にそのことを話して,許可を受け,こ
ド・B・リー大管長の言葉を読む。この言葉について全員
の女性はエンダウメントのために神殿に入りました。わた
で話し合う。
しは神殿衣を受け取るためにカウンターに向かう彼女の姿
■
何の便りもなく,夫の消息を知っている人も現れませんで
生徒用手引き103−104ページの「参考資料B」で,ボイ
を目にしました。セッションでの彼女は満足と安らぎを顔
ド・K・パッカー長老は「結び固め」と「鍵」の意味を説
に浮かべていました。神殿の儀式が終わってから,また彼
明している。パッカー長老の説明を基にして,生徒がこれ
女に出会いました。たいそう満足した様子で,彼女は,こ
らの語の意味をよく理解できるよう,ほかのたとえを用い
う言いました。『キンボール兄弟,夫との結び固めを受け
て説明するとよい。
ました。これで,戦争が来ても大丈夫です。どれほどの迫
かぎ
害を受けても,爆弾が投下されても大丈夫です。戦争で,
C.日の栄えの結婚は昇栄に欠かせない。
■
「黒板1」を使って,福音の原則と儀式が永遠の命とどの
ようにかかわっているかについて話し合いを展開する。
どのような事態が起きても平気です。すべてが整っていま
す。わたしは夫と結び固められたので,安心して生活でき
ます。
』
」
(
“Marriage Is Honorable,”281−282)
教義と聖約131:1を読む。ここでは日の栄えの王国に3つ
「地元の新聞から一つの記事を読んだときのことが思い
の異なった栄光の階級があることが指摘されている。日の
出されます。若い男女がソルトレークで,民事上の権能し
■
97
第28章
か持っていない人によって,墓を超えると効力を失う結婚
に,終わりが電光石火のごとくやって来たのでした。悲し
をしたことを知らせていました。二人は午前中に華々しい
いことに,二人の3時間の結婚は,結び固めの権能を持つ
結婚式を行ってから,夕方に別の町で開かれる披露宴に出
人が二人を苦い杯から救うことができたはずの聖なる神殿
席するため車に乗って出発しました。その町では何百人も
から, 2キロも離れていない場所で行われたのでした。
しんせき
の友人や親戚が二人を祝うために出席することになってい
二人は今,来世にいます。彼らが今,何を考え,何をし
ました。しかし,二人は目的地に到着しませんでした。披
ているか,わたしは知りません。しかし,二人は永遠のた
露宴は開かれませんでした。自動車事故で二人は命を失っ
めの準備ができていないことは確かです。」(“Marriage Is
たのでした。二人のこの世の生活は終わりました。永遠の
Honorable,”271)
生活の準備は行われていませんでした。結婚して3時間後
98
第28章
「黒板1」
永遠の命
復 活
神殿結婚
聖霊の賜物
バプテスマ
悔い改め
イエス・キリストを信じる信仰
誕 生
99
第29章
家族の重要性
5. 結婚において神が合わせられたものを軽々しく「離
はじめに
しては」ならない(6節。7−10節も参照)
。
本章の導入として,また話し合いの基盤を作るために,
もし入手できればビデオカセット『福音のメッセージ』
(53196 300)から「永遠の家族」を見せる。
夫が妻と「結ばれ」るとは,どのような意味だと思うか
生徒に尋ねる。最も大切な意味は,夫は愛する妻の幸せ,
成長,永遠の進歩を実現するために全力を尽くすべきであ
る,ということである。夫の生活において妻は最も大切な
教えるためのアイデア
存在でなければならない。教会の責任,職業,社交活動,
スポーツ,ほかの家族さえも,夫の優先順位の中では妻よ
A.家族は神によって定められたものである。
■
りも低い順位に置かなければならない。
家庭と家族という制度を定められたのは,どなたでしょ
夫と妻が「一体」となるという意味について話し合う。
うか。スペンサー・W・キンボール大管長は,家族を定め
夫婦間の一致と調和は多くの努力が必要とされること,そ
られたのは天の御父であると語った(生徒用手引き107ペー
れは様々な手段を通してもたらされることを強調する。結
ジの「参考資料A」参照)
。わたしたちは前世において家族
婚した男女は身体的,情緒的,霊的,社交的,知的な面で
という関係の中で生活していた。神の計画によって,わた
の一致と調和を得るよう努力すべきである。
したちは,この第二の位で家族として生活し,学び,成長
■
するよう命じられている。ジョセフ・F・スミス大管長は
に置くことを強調するために,生徒用手引き107−108ペー
家族の起源に触れて,このように記した。「家庭に代用で
ジの「参考資料A」から,キンボール大管長,デビッド・
きるものはありません。その成り立ちは天地が創造された
O・マッケイ大管長,ハロルド・B・リー大管長の言葉の内,
末日聖徒として,家庭と家族との生活を適切な優先順位
時までさかのぼり,その使命は時の初めより神によって定
適切なものを選んで引用するとよい。
められています。
」
(
“Home life,” Juvenile Instructor, 1903
■
年3月1日付,144)
どのような戒めを与えられたでしょうか。神は二人に言わ
神はアダムとエバを地上に置かれてから,子供について,
生徒の中で,死すべき世にいる間,結婚する機会のない
れた。「生めよ,増えよ,地に満ちよ。」(モーセ2:28)こ
人がいるかもしれない。このため,レッスンの初めの段階
の責任は神殿で永遠の結婚をするすべての男女に与えられ
で,すべての信仰篤い末日聖徒がこの世で家族を養う特権
ている。生徒用手引き107ページの「参考資料A」から,子
に浴すわけではないことを話しておく必要がある。自分に
供を産んで育てることは結婚に関連する最も大切な責任で
過ちがあるわけではないのにこの世で結婚する機会がなか
あって,わたしたちは家庭に子供たちを迎えるために最大
った人々は永遠において完全な祝福を受けると述べた,キ
の努力を払うべきであることについて教えたスペンサー・
ンボール大管長の約束について話し合うとよい(生徒用手
W・キンボール大管長の言葉を読む。
■
あつ
引き108ページの「参考資料A」参照)
。
■
アダムが地上に置かれた後に,神は「人が独りでいるの
B.夫婦は互いに愛し合い,支え合わなければならない。
は良くない」と言われた(モーセ3:18)。男や女が独りで
■
いるのは良くないのは,なぜでしょうか。神がアダムに
使徒パウロは妻に対する夫の責任を教会に対するキリスト
「ふさわしい助け手」(18節)を与えられた理由として考え
の責任にたとえた(エペソ5:22−33;コロサイ3:18−19
られることを挙げる。アダムとエバは全人類のひながたで
参照)。救い主は教会をばかにしたり,傷つけたりするよ
あり,結婚と家族に関して主がアダムとエバに与えられた
うなことがあるでしょうか。では,夫は,どのような形で
指示は全人類に当てはまることを指摘する。義にかなった
あれ妻をばかにしたり,傷つけたりしてよいでしょうか。
男性と義にかなった女性の間に永遠の協力関係が築かれな
義にかなった夫は「キリストが教会を愛してそのためにご
ければ,永遠の進歩は実現しないことを強調する。使徒パ
自身をささげられたように」妻を愛するものである(エペ
ウロは「主にあっては,男なしには女はないし,女なしに
ソ5:25)。生徒用手引き108ページの「参考資料B」から,
は男はない」
(1コリント11:11)と教えた。
エペソ5:25に関するスペンサー・W・キンボール大管長の
■
マタイ19:4−6を読んで,話し合う。この聖句を使って,
永遠の結婚に関する以下の大切な原則を強調する。
主は夫婦の関係について,あるべき状態を明確にされた。
解説について話し合うとよい。
■
夫は妻に対して,どのような義務や責任を持っているで
1. 神は大切な目的のために男と女を創造された。
しょうか。生徒の答えを黒板に書き出す。もし生徒から以
2. 子供たちは最終的に親のもとを離れて,それぞれの
はんりょ
下の答えが出なければ,以下の幾つか,または全部を付け
伴侶とともに新しい家族を築き始める。
加えるとよい。
3. 夫は妻と「結ばれ」るべきである(5節)
。
1. 心を尽くして妻を愛する(教義と聖約42:22参照)
。
4. 夫婦は「一体」となるべきである(6節)
。
2. 妻と結び合い,その他のものと結び合ってはならな
101
第29章
い(教義と聖約42:22参照)
。
4. 互いに愛し合うよう教え,言い争いを避けるよう教
3. 妻の物質的な必要を満たす(教義と聖約83:2参照)
。
える(モーサヤ4:14−15参照)
。
4. 妻をあざけったり,当惑させたりしてはならない。
5. 罪がもたらす結果について教える(モーサヤ4:14;
5. 義にかなった方法で神権を行使することによって,
2ニーファイ9:48;アルマ42:29−30参照)
。
妻と家族を導く(教義と聖約121:36参照)
。
6. 真理の道をまじめに歩むよう教える(モーサヤ4:
6. 結婚生活において説得,寛容,温厚,柔和,優しさ,
15;アルマ38:15参照)
。
けんそん
7. 謙遜であること,高慢を克服することを教える(ア
偽りのない愛を示す(教義と聖約121:41−42参照)
。
ルマ38:11,14;42:30参照)
。
7. 絶えず徳であなたの思いを飾るようにする(教義と
8. 激情を制するよう教える(アルマ38:12参照)
。
聖約121:45参照)
。
9. どのようにして働いたらよいかを教える(アルマ
8. 教会の召しを果たすことを含む,妻の義にかなった
38:12;教義と聖約42:42;68:30−31参照)
。
あらゆる努力を支援する。
10.祈る方法を教え,定期的に家族の祈りをささげる
9. 育児について全面的に妻に協力する。
■
妻は夫に対して,どのような義務や責任を持っているで
(教義と聖約68:28;3ニーファイ18:21;アルマ
しょうか。生徒の答えを黒板に書き出す。もし生徒から以
34:21参照)
。
下の答えが出なければ,以下の幾つか,または全部を付け
11.愛によってしつけをする(箴言19:18;23:13;教
加えるとよい。
義と聖約121:41−44参照)
。
1. 主に仕えるように,義にかなった夫に仕える(エペ
12.問題がある場合に家庭を整える(教義と聖約93:
ソ5:22;生徒用手引き108ページの「参考資料B」
43−44,50参照)
。
参照)
。
親が子供たちのこの世的な事柄について,いかに一生懸
2. 夫をあざけったり,当惑させたりしてはならない。
命であるか述べた後で,キンボール大管長はこのように質
3. 神権の召しを果たす夫を支援する。
問した。「しかし〔そのような親たちは子供〕の心のため
4. 慰めの言葉をもって柔和な心で夫に接する(教義と
聖約25:5参照)
。
5. 育児の務めを夫と分かち合う。
■
預言者ジョセフ・スミスは扶助協会を組織して間もなく,
女性が夫にとってより良い妻となる方法について次のよう
な助言を与えた。
「この協会では,夫に対して,どのように振る舞い,ど
のように柔和と愛を持って夫に接したらよいかを女性に教
えてください。夫が問題に直面して苦しんでいるとき,心
配事や難題を抱えて悩んでいるときに,もし口論やつぶや
きでなく笑顔で迎えられるとしたら,もし穏やかに迎えら
れるとしたら,彼は心を和ませ,気持ちを静めることがで
いや
には何をしているでしょう。」(Teachings of Spencer W.
Kimball,332。生徒用手引き109ページの「参考資料C」)
子供の物質的な必要も大切であるが,霊的な必要はもっと
大切であることを強調する。子供に対する親の責任に関す
る話し合いを充実させるために,生徒用手引き109−111ペ
ージの「参考資料C」から,引用文を活用する。
■ すべての親は失敗を経験するが,努力し続けることの大
切さについて話し合うとよい。ハワード・W・ハンター長
老は,両親は自分たちが失敗したと考える必要はなく,自
分たちの子供について,あきらめてはならないと勧告した
(生徒用手引き110−111ページの「参考資料C」または『聖
徒の道』1984年1月号,113−114参照)
。
きるでしょう。絶望感にさいなまれる心を癒すには愛情と
優しさによる慰めが必要なのです。」( History of the
Church,4:606−607)
■ “On the Duty of Husband and Wife”
(生徒用手引き109
ページの「参考資料B」
)を基に,夫と妻の義務について話
し合いを展開するとよい。
D.子供たちは両親を敬い,両親に従順でなければな
らない。
■
子供は両親に対して,どのような責任を持っているでし
ょうか。生徒の答えを黒板に書き出す。もし生徒から以下
の答えが出なければ,以下から幾つか,または全部を付け
加えるとよい。
C.両親には,子供たちを教え,しつけ,養い,世話
をする責任がある。
1. あなたの両親を尊敬し,敬う(生徒用手引き106ペー
両親は子供に対して,どのような責任を持っているでし
2. 両親に従う(生徒用手引き106ページの「教義の概要
■
ジの「教義の概要D1」参照)
。
ょうか。生徒の答えを黒板に書き出す。もし生徒から以下
D2」参照)
。
の答えが出なければ,以下から幾つか,または全部を付け
3. 両親に反抗してはならない。
加えるとよい。
4. 両親に正義を行うよう勧める。
1. 物質的な必要を満たす(教義と聖約83:4;1テモテ
5. 両親に愛を示す。
5:8;モーサヤ4:14参照)
。
6. 子供はできるだけ自立する。
2. 良い模範を示す(箴言20:7;モルモン書ヤコブ3:
7. 年老いた両親の世話をする。
10参照)
。
3. 聖典に記されている福音の原則を教える(教義と聖
約68:25−28参照)
。
102
8. 兄弟姉妹を助け,良い模範を示す。
■
「父と母を敬う」とは,どのような意味でしょうか。子
供は親から頼まれたら,悪事であっても行うべきでしょう
第29章
か。敬うとは「(外に表す行動によって)ふさわしい敬意
族一人一人の平安と幸福,進歩に貢献するようチャレンジ
を示すこと」を意味する( Oxford English Dictionary ,
する。結婚するときや親になるときに課せられる責任を引
“honour”の項)
。たとえ両親に弱点があるとしても,両親
き受けるために,あらゆる面で準備するようチャレンジす
を敬う最善の方法は,愛を示し,神の戒めを守ることであ
る。親もとを離れて生活している未婚の生徒に,手紙や電
る。
話を通して,また訪問して家族に愛を示すようチャレンジ
する。結婚している生徒には,家族生活を成功に導くため
まとめ
に,結婚生活の早い時期から義にかなった習慣を築くよう
チャレンジする。悪い習慣を改めるよりも,良い習慣を強
生徒に,家族生活に関する現在の自分の状況を評価する
めていく方がはるかに容易である。
ように言う。家族とともに生活している未婚の生徒に,家
103
第30章
死と死後の霊界
はじめに
たことを指摘する。堕落した後,アダムとエバは堕落した
状態の地上で働いて生活し,それから「ちりに」帰る,と
一人の生徒に「死」という語の定義を辞書から読んでも
告げられた(創世3:19)。ヤコブは,堕落がなかったなら
らう。例えば,「すべての生体機能が永久に停止すること。
ば地上には変化も死もなかったこと,物事は「とこしえに
命の終わり」という定義がある( Webster's Ninth New
存続し,終わりがなかった」であろうと教えた(2ニーフ
Collegiate Dictionary,“death”の項)。この定義と,末日
聖徒が理解している死との間で一致しないのは,どのよう
なことでしょうか。(最も明らかな違いは「すべての命が
永久に終わること」
)
死に関して,回復された福音の光を持たない人々の見解
と末日聖徒の見解は,どのように異なっているでしょうか。
死後の生活,復活,神とともに永遠に生活することに関す
るあなたの見解,すなわち神によって明らかにされた概念
を分かち合う。
■ 開拓者のウィリアム・クレイトンがウィンタークォータ
ーズに向かうためノーブーを出発してから43日が過ぎてい
た。妻のダイアンサは出産予定日が近づいていたため,ノ
ーブーに残っていた。1846年4月15日の水曜日,クレイトン
兄弟はクレイトン姉妹が男の子を出産したとの知らせを受
け取った。抱き続けていた心配から解放されたクレイトン
兄弟は,ソルトレーク盆地に向かう聖徒たちを大きく奮い
立たせることになる一つの賛美歌を作詞した。「恐れず来
たれ,聖徒」の4節を読むか,全員で歌う。
ァイ2:22)
。
■
旅を終わらず死すも すべては善し
悩みを離れ行きて 正義と住まん
もし生きて休む 聖徒らを見れば
歌声広がらん すべては善し
(
『賛美歌』1989年,17番)
この賛美歌では死に対して,どのような姿勢が表現され
1コリント15:21−22の聖句を黒板に書き写す。21節と22
節には,対応する概念が記されていることを指摘する。
1コリント15:21。「それは,死がひとりの人によって
きたのだから,死人の復活もまた,ひとりの人によってこ
なければならない。
」
1コリント15:22。「アダムにあってすべての人が死ん
でいるのと同じように,キリストにあってすべての人が生
かされるのである。
」
21節の「ひとりの人によって」はアダムを指している。
アダムの堕落によって地上に死と呼ばれる変化が始まっ
た。両方の節が指摘しているように,この死は,あらゆる
人にやって来る(ローマ5:14,17;生徒用手引き112−113
ページの「参考資料A」も参照)
。
■
たとえ聖典がなくても,わたしたちは,すべての人が死
ぬことを知っている。墓地を散策すれば,この世の試しが
終わるときに死がわたしたち全員を待ち受けていることは
明白である。感動的な文字が刻まれた墓碑の下に葬られた
世の偉大な人々も,雑草が生い茂る無名墓地に葬られてい
るつつましい人々と同じように確実に死を迎えた。死の普
遍性を再確認するために2ニーファイ9:16;アルマ12:
24;ローマ5:12を読むとよい。生徒用手引き112ページの
「参考資料A」から,ジョセフ・F・スミス大管長の言葉も
読む。
■
ボイド・K・パッカー長老が1983年4月の総大会で語った
ているでしょうか。初期の末日聖徒にとって,死は究極の
説教のコピーを生徒に配る。パッカー長老は,この説教の
災いではなかったことを指摘する。この賛美歌は真の意味
中で肉体を手袋に,霊を手にたとえている。手が手袋の中
で「わたしにとっては,生きることはキリストであり,死
にある間,手袋には動きと能力がある。手から外されてし
ぬことは益である」と語った使徒パウロの気持ちを表して
まうと,手袋は何の動きもできなくなるが,なおも手は動
いる(ピリピ1:21)
。
き続ける。パッカー長老はジョセフ・F・スミス,アンソ
堕落とその結果である死については第8章の「堕落」で
ン・H・ランド,チャールズ・W・ペンローズによって構
学んだことを思い起こす。本章を教えるに当たって,堕落
成されていた大管長会が発表した次の声明を引用した。
の様々な面について取り上げる必要はない。本章で大切な
「神から生まれた霊は不死の存在です。肉体が死んでも,
のは生徒が死の起源を理解することだけである。
霊は死にません。肉体は復活すると,霊と同様に,不死不
滅の存在となります。」(「汝らの子供たちを見よ」『聖徒の
教えるためのアイデア
道』1974年2月号,88)
■
なぜ死は恐れられることがあるのでしょうか。生徒がそ
A.肉体の死はすべての人々に及ぶもので,救いの計
画の一部である。
れぞれに抱いている気持ちを述べる機会を与える。死を迎
創世2:17と3:19を読む。善悪を知る木は地上で受ける
配,残される人々が愛する人を失うことによって味わう喪
■
えるまで長期間続く病気や痛みや身体的障害に対する心
死と,どのような関係があるでしょうか。もしアダムかエ
失感,徐々に近づく死に実際に向き合う難しさなどがある。
バが実を食べたら,罰として死が科されることになってい
生徒は未知のものに対する恐怖を口にすることだろう。だ
105
第30章
れかが息を引き取る場面を目にしても,死について未知の
ときにしばしば用いている言葉は,すべて「霊界」を指し
要素が明らかになるわけではない。死は一人一人にとって
ていると教えた(Teachings of the Prophet Joseph Smith,
独特の経験として訪れる。しかしながら,死に関する多く
310)
。
ブルース・R・マッコンキー長老は次のように述べた。
の事柄は福音を通して明らかにされている。福音以外に,
これらの知識を与えてくれるものはない。スミス大管長は
「肉体を離れた霊たちは復活するまで満ち満ちる喜びを得
イエス・キリストの贖罪について証を持ち,死によって何
ることができないので(教義と聖約93:33−34)
,霊界にお
が起きるかを知っていれば,わたしたちは「死に際しても
ける彼らの住まいを監禁の状態であると見なす。この意味
喜びを見いだしている」と記した(生徒用手引き113ページ
で,
(パラダイスと地獄の両方を含む)霊界全体が霊の獄で
の「参考資料A」参照)。アルマ27:28;教義と聖約42:
ある。」(『モルモンの教義』ビーハイブ出版,549,一部改
しょくざい
あかし
46;101:35−36を読む。これらの聖句に共通していること
訂)
は何でしょうか。これら3つの聖句の共通するテーマは,
■
キリストにおいては,死はのまれており,死は甘く,来る
らの霊がパラダイスへ行くのでしょうか。黒板の左側に
べき世に喜びがあるということである(生徒用手引き112−
「パラダイス」という見出しと,「だれが」,「どのような生
113ページの「参考資料A」のブリガム・ヤング大管長の言
活か」という言葉を書いてから(
「黒板2」参照)
,生徒に答
葉も参照)
。
えてもらう。
アルマ40:12,14と教義と聖約138:12−13を読む。どち
福音と贖罪に関する知識を得ることによって,死の未知
教義と聖約138:19は,どのような意味でしょうか。パラ
の部分が減少しても,それでも死が恐ろしいのは,なぜで
ダイスは成長と学習の場でしょうか。イエスはパラダイス
しょうか。自分の生涯について責任を負わなければならな
にいた霊たちに永遠の福音を宣べ伝えられた(4ニーファ
いことの恐ろしさに比べれば,死ぬこと自体は,それほど
イ1:14;モロナイ10:34;2ニーファイ9:13;生徒用手引
恐ろしい経験ではないことを指摘する。邪悪な人にとって
き113ページ「参考資料B」のブルース・R・マッコンキー
の
は,霊界で神の裁きを待つことになるため,死は恐ろしい
長老の言葉を参照)
。
ものとなるであろう。「黒板1」の参照聖句の箇所を黒板に
■
書き出す。
29を読む。黒板の右側に見出しとして「霊の獄(地獄)
」と
アルマ40:13−14と教義と聖約76:103−106;138:20,
書く(「黒板2」参照)。教義と聖約138:29−35を調べる。
B.死によってわたしたちの霊は霊界に入り,復活を
待つ。
これらの節には神が子らに対して抱いておられる偉大な愛
アルマ40:11;24:16;2ニーファイ9:38を読む。これ
る霊たちに教え,証し,状況を改善するための努力をする
らの節によれば,死ぬときに霊体には何が起きるでしょう
以上に,神の愛を示す例があるでしょうか(生徒用手引き
か。それぞれの節は少しずつ違う語を使っているが,霊は
113ページの「参考資料B」,またはマッコンキー『モルモ
■
「彼らに命を与えられた神のみもとへ連れ戻される」と告
がどのように表されているでしょうか。霊界で苦しんでい
あかし
ンの教義』ビーハイブ出版,223参照)
。
キリストが訪れる以前の霊界の状態を黒板に描く(
「黒板
げていることを指摘する(アルマ40:11)。「神のみもとへ
■
連れ戻される」とは,どういう意味でしょうか。すべての
3」参照)。キリストが訪れる以前に,義人と悪人は淵によ
霊が神のみもとへ行って,神が住んでおられる場所で神に
って隔てられていた。この淵を説明するために1ニーファ
お会いするというのはほんとうでしょうか。この質問の答
イ15:27−29とルカ16:19−31を読む。キリストが霊界を
えを見つけるために,以下の言葉を読む。
訪れられたことによって,義人の僕たちは今や,霊の獄に
ふち
しもべ
「『神のみもとへ連れ戻される』とは単に,死すべき存
いる霊たちに福音を教える務めを与えられている。「今で
在としての状態が終了して,霊界に戻り,行いに応じて正
はパラダイスにいる義人の霊が救いのメッセージを地獄に
しい者あるいは正しくない者に用意された場所へ行って,
いる悪人の霊に伝えるように任命されているので,善い霊
復活を待つという意味です。」(ジョセフ・フィールディン
と悪い霊との間には多少の交わりがある。悔い改めによっ
グ・スミス,Answers to Gospel Questions,2:85)
て,……地獄の鎖につながれている者たちは,自らを暗黒,
「『すべての人の霊は,この死すべき体を離れるやいな
不信,無知,罪から解放することができるのである。これ
や,……彼らに命を与えられた神のみもとへ連れ戻される』
らの障害物を克服する速度に応じて,すなわち,光を得,
とアルマが述べたとき,神御自身は遍在なさらないが,代
真理を信じ,知性を取得し,罪を捨て,地獄の鎖を砕く速
理者である聖なる御霊を通して遍在する御方であるとアル
度に応じて,彼らは自分たちを監禁する地獄を去り,パラ
マが理解していたことは,間違いありません。
ダイスの平安の中で義人たちと住むことができる。」(ブル
み たま
彼らが直ちに,神御自身のみもとに導かれると言うつも
り は あ り ま せ ん で し た 。」( ジ ョ ー ジ ・ Q ・ キ ャ ノ ン ,
Gospel Truth,1:73。生徒用手引き113ページ「参考資料
B」のジョセフ・F・スミス大管長の言葉,またはGospel
Doctrine,448も参照)
■ 預言者ジョセフ・スミスは,よみの国,シェオル,パラ
ダイス,霊の獄など,わたしたちが死後の世界を説明する
106
ース・R・マッコンキー『モルモンの教義』ビーハイブ出
版,550)
まとめ
死によって生活が終わるわけではない。死は単に生活が
変わるだけである。死後,肉体は一時的に地のちりに戻っ
第30章
て復活を待つ。肉体は死んだがほんとうの意味での人であ
世で目を開くときに目にする栄光と感動を,もしたった一
る霊は霊界へ行って,神の憐れみと裁きによって決められ
瞬であってもかいま見ることを許されるならば,もしこれ
た状態に入る。パラダイスや地獄は霊界で生活する人々の
を一瞬でも見ることができるとするならば,悲しみのとき
生活の状態を表す言葉である。
にももっと深い理解があり,悲嘆の中にあっても喜びがあ
あわ
末日聖徒は救いの計画を知っているので,死を恐れるべ
きではない。「亡くなる人が,この世で目を閉じ,永遠の
ることでしょう。」(ポール・H・ダン,リチャード・M・
エア共著,The Birth That We Call Death,53)
107
第30章
「黒板1」
モーサヤ16:8
死のとげ
教義と聖約42:47
死は苦い
アルマ5:7
死の縄目
3ニーファイ28:38
死の味
2ニーファイ9:10
怪物,死と地獄
「黒板2」
パラダイス
霊の獄(地獄)
だれが
1. 義人の霊
2. 正しい者の霊
3. 自分の証に忠実であった人々
4. 主の御名のために艱難に遭う人々
だれが
1. 悪人の霊
2. 少しも御霊を受けない人々
3. 悪い行いを好む人々
4. 悪魔の霊に支配された人々
5. 神を敬わない者
6. 悔い改めなかった者
7. 証と真理を拒んだ人々
どのような生活か
1. 幸福な状態
2. 安息の状態
3. 平安な状態
4. 災難と不安と憂いを離れて休む場所
5. 喜びと楽しみに満たされた場所
どのような生活か
1. 暗い闇の場所
2. 涙を流し,泣きわめき,歯ぎしりを
する
3. 神の激しい怒りを,ひどく恐れなが
ら待つ
4. そこは「恐ろしい地獄」である
5. 霊が全能の神の激しい怒りを受ける
場所
109
第30章
「黒板3」
ふち
パラダイス(義人)
「恐ろしい淵」
地獄,もしくは霊の獄(悪人)
111
あがな
第31章
死者の贖い
おいて聖徒たちは,この啓示を公式に承認された聖典とし
はじめに
て受け入れ,それは同じ年に『高価な真珠』の一部として
死者の身代わりの儀式を執行するために神殿の建築が急
発行された。1978年にこの啓示は『高価な真珠』から除か
速に進められている。1986年10月に奉献されたデンバー神
れ,
『教義と聖約』に加えられた。
殿によって,当時儀式を執行できる神殿は40となった。神
■
殿の数は,その後も増加し,やがて数千の神殿において数
いる参照聖句を全員で読む。死者の贖いに関してスミス大
十億の儀式が執行されることになるであろう。ブリガム・
管長に啓示された原則を記録している教義と聖約138章から
ヤング大管長は,その日のことをこう預言した。「この業
の聖句を強調する。「教義の概要」に挙げられている参照
を成し遂げるには,たった一つの神殿だけではなく,何千
聖句だけでなく,138章から,さらに多くの節を引用しても
という神殿が必要になります。そして何千,何万という
よい。56節と57節を使って,地上と霊界における大いなる
人々が,主から示されたところまでさかのぼり,かつて生
業について生徒一人一人が受けている務めと責任を理解す
きていた人々のために神殿に参入し,儀式を受けるように
るよう助ける。
生徒用手引き115ページの「教義の概要B」に挙げられて
なります。
」
(Journal of Discourses,3:372)
教えるためのアイデア
C.代理で儀式が執行されることにより,死者のため
に完全な救いを受ける機会が備えられている。
A.救いの計画に従い,人は皆いつか福音を聞く。
ているラジャー・クローソン会長の言葉(Conference
■
■
■
生徒用手引き115−116ページの「参考資料C」に記され
教義と聖約1:2;90:11について話し合う。
Report, 1933年4月,77−78参照)と,
「黒板1」の図を使っ
ジョセフ・フィールディング・スミス大管長は福音のメ
て,地上の教会と霊界における霊の組織は,ともに御父の
ッセージの普遍性について教えた。その一つは生徒用手引
子らの昇栄という偉大な業に携わっていることを示す。
き115ページの「参考資料A」に記されている(『救いの教
義』第2巻,123参照)
。
D.末日聖徒は死者のために神殿の儀式を執行する権
能と責任を持っている。
B.福音なしに死ぬ者のために,福音を受け入れる道
が用意されている。
し,聖徒を完全にし,死者を贖う。」(スペンサー・W・キ
死者の贖いに関する大切な啓示の一つがジョセフ・F・
ンボール『聖徒の道』1981年9月号,4参照)わたしたちは
スミス大管長に与えられ,それは教義と聖約138章に収めら
個人として,家族として,教会として,なぜ死者のための
れている。息子であるジョセフ・フィールディング・スミ
業を行う責任があるのでしょうか。生徒の意見を黒板に書
ス長老が記した伝記から,この啓示を受けた背景を知るこ
き出す。特に,生徒たちに当てはまる項目を取り上げて,
とができる。「1918年10月の総大会において,ジョセフ・
話し合う。
F・スミス大管長は,それまでの5か月間主の御霊と交わっ
■
ていたと明言した。その期間のほとんどは病気だったため,
K・パッカー長老は次のようなたとえを用いた。
あがな
■
み たま
■
スミス大管長は自室に引きこもっていた。大会を開会する
説教で,大管長は次のように述べた。
教会の3つの使命は何かを生徒に質問する。「福音を宣言
死者のために努力することを説明するためにボイド・
「わたしたちの努力がもたらす結果を完全に知ることは
できません。わたしたちは生きている人々に福音を伝え,
『今朝は心に去来することの多くをあえて語ろうとは思
亡くなった人々のために儀式を執行する準備をするよう命
いません。それは,もう少し先に延ばしたいと思います。
じられています。彼らのうち,どれほどの人々が日の栄え
そのときになれば主は,わたしが考え,心に感じているこ
の王国に贖われるか知りません。わたしたちにできるのは
とを皆さんに告げる試みを喜んで受け入れてくださるでし
資格を備えることができた人が進歩するのを可能にするこ
ょう。この5か月の間,わたしは独りではありませんでし
とだけです。
た。祈りと嘆願と信仰と決意の霊の内にあり,絶えず主の
それは先祖という第三者の名義で銀行口座に霊的な資源
御霊と交わっていたのです。兄弟姉妹の皆さん,わたしは
を預けることにたとえることができるかもしれません。そ
喜びの気持ちをもってお話しします。教会の第89回半期総
の人がいつ,どれだけ引き出す資格を得るかを,わたした
大会を始めるに当たって,今朝皆さんと一緒に参加できる
ちは知らないのです。わたしたちが知っているのは,ふさ
ことを喜んでいます。
』
」
(The Life of Joseph F. Smith,466)
わしい人が使えるように口座を準備していることだけで
1918年10月31日,スミス大管長は副管長,十二使徒定員
す。
」
(The Holy Temple,213)
会,大祝福師に自分が受けた啓示を提示し,意見を求めた。
■
彼らは全員一致でそれを受け入れた。1976年4月の総大会に
いがいなくては完全な者とされないのはなぜかを質問す
教義と聖約128:15を読んで,わたしたちと死者は,お互
113
第31章
る。死者のための贖いの業にわたしたちが個人として関心
わたしたちがあらゆる死者のためにできることがあると悟
を寄せることは,自分の救いと密接な関係があるのでしょ
りました。
うか。それは,なぜでしょうか。生徒用手引き116ページの
わたしたちは,だれもが自分の力で,あらゆる死者に関
「参考資料D」から,わたしたちの救いの要件と,死者を贖
心を向け,愛することができることに気づいたのです。そ
う個人の責任について述べたエズラ・タフト・ベンソン大
れは大いなる霊感でした。なぜなら,そこを出発点とすれ
管長の話を読む。
ばよいことを知ったからです。
まとめ
して,彼らの贖いを望むことができます。彼ら全員を含め
たとえどれほどの数に上ろうと,わたしたちは彼らを愛
るために,関心の幅を広げることは,だれにでもできます。
わたしたちの前途に待ち受けている務めは途方もなく大
きく見えるかもしれないが,このチャレンジを引き受けな
ければならない。ボイド・K・パッカー長老は,愛をもっ
てこの務めを成し遂げる必要があると述べた。
「恐らくこの神権時代において初めて,その時が到来し
ました。わたしたちは業の全体像をよくよく考えなければ
なりません。
もし,決心がぐらついているとすれば,自分を正して,
この務めに正面から向き合う必要があります。
この業の規模を考えると,その大きさに仰天します。仰
天を通り過ぎて圧倒されます。
しかし,落胆させるようなものではありません。
ある日,わたしは,このことについて深く考えていると,
114
さらに10億人が加えられるとしても,彼らに対しても関心
を向けることができます。
たとえ圧倒されるような数であっても,わたしたちは前
進します。その道がうんざりするほど長くても,わたした
ちは前に進みます。記録が失われていても,たとえ圧倒さ
れるほどの障害や反対に出会うとしても,とにかく前進す
るのです。
しかし,わたしたちは今,心を改め,別の方法や技術を
採り入れなければなりません。亡くなったすべての人を贖
わなければなりません。そのように命じられているからで
す。
」
(That They May Be Redeemed〔地区代表セミナー
での説教,1977年4月〕
,2−3)
第31章
「黒板1」
日の栄えの王国
における昇栄
霊界
教会
にお
ける
ける
にお
教会
地上
神 殿
115
第32章
復活と裁き
はじめに
26の「すなわちすべての者」が強調されていることを確認
する。)死すべき世のいかなる力も復活を成し遂げること
復活と裁きに関する以下の正誤問題を実施する。レッス
ができないとすれば,復活は何の力によって成し遂げられ
ンの中で正解を発表して,話し合ってもよいし,生徒の答
るのでしょうか。聖典は,「イスラエルの聖者」すなわち
えに基づいてレッスンの内容を決めるために活用してもよ
イエス・キリストの力によって成し遂げられると述べてい
い。
る(2ニーファイ9:12参照。生徒用手引き118−119ページ
の「参考資料A」
,またはスミス『救いの教義』第1巻,124
正誤問題
1. すべての死すべき存在は復活する。
2. 復活において肉体のあらゆる部分は回復される。
3. イエス・キリストが復活する以前に復活した人はい
ない。
4. 復活には二つの種別がある。
5. あらゆる人は偉大な判士,キリストであるイエスの
前に引き出される。
6. 神は,わたしたちの心の思いと志でさえ御存じであ
る。
も参照)
。
■
復活は,どれほど完全に行われるでしょうか。アルマ
11:43−44;40:23;41:2から,アミュレクとアルマの
あかし
証,生徒用手引き119ページの「参考資料A」から,ジョ
。
セフ・F・スミス大管長の証を読む(Gospel Doctrine,23)
■
ジョセフ・F・スミス大管長は1918年に,この世を去っ
た霊たちの世界の示現を見る特権に浴した(教義と聖約138
章の前書き参照)。霊界にいる霊たちは自分たちの肉体に
対して,どのような思いを抱いているでしょうか。教義と
聖約138:50;45:17;93:33−34;138:51−52を読む。
これらの聖句は,すべて,義人の復活に伴う喜びについて
正 解
1. 正。生徒用手引き118ページの「教義の概要A1」と「参
考資料A」参照。
2. 正。生徒用手引き118ページの「教義の概要A5」と「参
考資料A」参照。
3. 正。生徒用手引き118ページの「教義の概要B1」と「参
考資料B」参照(ジョセフ・フィールディング・スミス
『救いの教義』第2巻,238−239も参照)
。
4. 正。生徒用手引き118ページの「教義の概要B2」と「参
考資料B」参照。
5. 正。生徒用手引き118ページの「教義の概要C1」と「参
考資料C」参照。
6. 正。生徒用手引き118ページの「教義の概要C2」と「参
考資料C」参照。
述べている。主は復活の本質について,なぜできるかぎり
多くのことを明らかにしておられるのかを生徒に尋ねる。
主は確かに,肉体と霊が再結合すること,愛する人々と再
会することへの希望をわたしたちに与えようとしておられ
る。
B.復活には順序がある。
■
使徒パウロは,どのような意味で「キリストは眠ってい
る者の初穂として,死人の中からよみがえったのである」
と述べたのでしょうか(1コリント15:20)。キリストは復
活した最初の御方であった。キリストは自ら復活する力を
持ってこの世に来られた唯一の御方であった(2ニーファ
イ2:8参照)
。全人類に復活する機会をお与えになったのは
キリストであった(アルマ40:2−3;1コリント15:21−23
参照)
。
教えるためのアイデア
救い主がわたしたちのためにしてくださった多くの事
たまもの
柄,中でも復活の賜物に対してわたしたちは,いつまでも
A.神は永遠の計画の一部として,すべての者のため
に復活を備えられた。
感謝すべきである。復活について考えるときに,使徒パウ
生徒に「復活」という語を定義してもらう(生徒用手引
にのまれてしまった。死よ,おまえの勝利は,どこにある
き118ページの「教義の概要A2」参照)。簡単に言えば,
のか。死よ,おまえのとげは,どこにあるのか。……しか
■
ロのように叫びたい気持ちになるはずである。「死は勝利
「復活」とは死んだ後に,霊と体が再び結合することを意
し感謝すべきことには,神はわたしたちの主イエス・キリ
味する。実際に復活するとき,それは,どれほど奇跡的な
ストによって,わたしたちに勝利を賜わったのである。
」
(1
ことかを深く考えるように言う。死すべき世のいかなる力
コリント15:55,57)
も,たとえわずかな時間であっても死んだ後に埋葬された
■
体に命を回復し,ちりと化してしまった体の部分を自力で
と教えられた。すなわち,正しい者の復活と正しくない者
再結合させることはできない。しかし,復活では,このこ
の復活である。正しい者の復活とは,どのような復活でし
とが起きる。死すべきものすべてが復活するのである。(1
ょうか。いつから始まったのでしょうか。正しい者の復活
コリント15:22の「すべて」という語と,教義と聖約29:
は,いつ終わるのでしょうか。主は教義と聖約88:96−102
ヨハネ5:28−29を読む。キリストは二つのの復活がある
117
第32章
で,二つの復活の順序について多くのことを啓示しておら
の裁きについて記されている。裁きの法廷に立つときに,
れる。マッコンキー長老は生徒用手引き119−120ページの
わたしたちの記憶は,どうなるのでしょうか。(あらゆる
「参考資料B」の中で,この啓示を要約し,説明している
罪悪をはっきりと記憶している。)罪のない状態で裁きの
(ビーハイブ出版『モルモンの教義』462参照)
。この概要に
法廷に立つために,生涯を通じて悔い改めるよう努力する
ついて話し合う際に,
「黒板1」を活用する。
■
「第一の復活の朝」とは,どのような意味でしょうか。
ためには,どのようなことが動機づけとなるでしょうか。
■
アルマ11:44によれば,最後の裁きにおいて大いなる判
かぎ
神殿において,この世と永遠にわたって結び固められる
士を務めるのは,どなたでしょうか。御父は裁きの鍵を御
人々に宣言される祝福の一つは「第一の復活の朝に」よみ
子にゆだねられたことを生徒が理解できるよう助ける(生
がえる力を受けることである。マッコンキー長老は次のよ
徒用手引き118ページの「教義の概要C」参照)。一人の生
うに説明した。「日の栄えの体をもって復活し,日の栄え
徒に2ニーファイ9:41を読んでもらう。救い主は「両腕を広
の王国を受け継ぐよう定められている者は,第一の復活の
げて」わたしたちを受け入れたいと思っておられる(モル
朝に出てくる。彼らの墓は開かれ,彼らは再臨の際に主と
会うよう引き上げられる。彼らはキリストのもの,初穂で
あり,福千年の間,キリストとともに王として,祭司とし
て統治するように降りてくる。」(ビーハイブ出版『モルモ
ンの教義』462)
後に別のラッパが鳴らされる(教義と聖約88:99参照)
。
「これは第一の復活の昼 である。それは,主が福千年を導
き入れられた後に起こる。このときに来る者は月の栄えの
体を受け,永遠にわたって,月の栄えの栄光を受け継ぐよ
うに定められている。」(マッコンキー,ビーハイブ出版
『モルモンの教義』462)
■ 復活において受ける体には質的な違いがあるのでしょう
か。日の栄えの栄光に復活する人々は月の栄えや星の栄え
の栄光に復活する人々よりもさらなる栄光を持つ体を受け
るのでしょうか。1コリント15:40−42;教義と聖約76:
96−98:88:22−31について話し合う。
■ この世の生活で蓄えたものの中から,何かを復活した世
界に持って行くことができるでしょうか。金銭や財産を持
って行くことができるでしょうか。土地やお金は復活した
状態のわたしたちにとって何か価値があるでしょうか。教
義と聖約130:18−19を読む。復活において価値のあるもの
として,どのようなものをこの世で得ることに重きをおく
べきでしょうか。
モン6:17)。もし正しく準備し,悔い改めるという代価を
支払っているならば,裁きは恐怖ではなく,わたしたちの
全生涯を通じて最も偉大な出来事となるはずである。
■
アルマ11:44によれば,わたしたちは何を基準として裁
かれるのでしょうか。「行い」とは実際の行動以上のもの
が含まれる。わたしたちは言葉と思いによっても裁かれる
(アルマ12:14参照)。わたしたちの裁きを最もよく説明し
ていると思われる言葉を教義と聖約137:9に見ることがで
きる。「主なるわたしは,すべての人をその行いに応じて,
またその心の望みに応じて裁くからである。」わたしたち
は今,邪悪なことや物質的な事柄に思いと志をおくのでは
みこころ
なく,心を主に向けて,常に主の御心を行うようにすべき
である。
「あなたの宝のある所には,心もあるからである。
」
(マタイ6:21)
■
わたしたちの受ける大いなる裁きが公正に行われること
を,どのようにして確認できるでしょうか。主は,わたし
たち全員を愛しておられる。完全な御方である主は単に仕
返しをするために裁きを行うようなことはなさらない。わ
たしたちは回復の律法に従って,受けるべきものを受ける
ことになる(アルマ41:10−13参照)
。わたしたちは皆,裁
きにおいて次のように叫ぶことであろう。「おお,全能の
神なる主よ,神聖です。あなたの裁きは神聖です。
」
(2ニー
ファイ9:46;2ニーファイ9:47−48も参照)ヤコブは裁き
が現実に行われることを知っていたために,罪のもたらす
C.すべての人は裁きを受けるために主の前に出る。
■
結果について警告し,悔い改めるよう勧めたのだった。
黒板に「裁き」と書く。わたしたちが最後の裁きを迎え
るまでに,生涯で経験する裁きを幾つか生徒に挙げてもら
まとめ
う。大切な決断や選択を求められる重大な局面や転機,学
校の成績,バプテスマ,神権の昇進,神殿推薦状,伝道,
神殿結婚のために神権指導者から受ける面接などが挙げら
れるであろう。
■
アルマ11:43−44には,復活後に行われる大いなる最後
生徒用手引き120−121ページの「参考資料C」から,テ
ーラー大管長が与えた警告について話し合う。神の前にへ
ゆる
りくだって祈り,罪の赦しを求め,弱点を克服できるよう
に助けを求めることを生徒に勧める。復活と裁きに備える
のは今であることを強調する。
118
全
人
類
辱めた人々
キリストを公に
証を受けた後に
あかし
し,キリストの
キリストを否定
この世にいる間,
罪を犯し邪悪な
生活を送った
人々
キリストのすべ
ての律法に従っ
てはいないが,
善良な人々
戒めを守ったイ
エス・キリスト
の教会の会員
きた人々の一
部は復活した
キリストの
後の時代に生
第一の復活の朝はキ
リストと義にかなっ
た聖徒たちの復活に
よって始まった
最初のラッパ
者が復活する
第二のラッパ
属する者
月の栄えに
第一の復活の昼が始
まる
日の栄えに属する
第一の復活(正しい者)
再臨。福千年,第一
の復活の朝は続く
復 活
教義と聖約88:96−102
復活が終わる。地球
のこの世の存在が終
わる
第三のラッパ
属する者
星の栄えに
第四のラッパ
第二の復活(正しくない者)
福千年が終わる
滅びの子
第32章
「黒板1」
119
第33章
栄えの王国と滅び
そこでパウロは,人に語ってはならないとされた事柄を見
はじめに
栄えの王国に関する話し合いを展開するために以下のス
ターリング・W・シル長老の話を活用するとよい。
「かなり前にハリー・エマソン・フォスディック博士が
語った『バスを乗り違えて』という物語には,わたしたち
にとって大切な幾つもの教訓が込められていると思いま
す。これは,ミシガン州のデトロイトヘ行くつもりでバス
に乗った男の話です。長い旅路の果てに終点に着くと,そ
こはカンザス州のカンザス・シティーでした。彼は初めそ
れを信じませんでした。ウッドウォード・アベニューへ行
聞きしました。」(ジョセフ・スミス, Teachings of the
Prophet Joseph Smith, 304−305)
イエス・キリスト(ヨハネ14:1−2参照)
。預言者ジョ
セフ・スミスはヨハネ14:2を「わたしの父の王国には,王
国がたくさんある」と変更した。
パウロ(1コリント15:40−42;2コリント12:1−
4参照)。栄えの階級について記されている情報が聖書に少
ないのは,なぜでしょうか。人の行く末について主は再び
だれに啓示されたでしょうか(ジョセフ・スミス;教義と
聖約76章参照)
。
く道を尋ねて,そんな通りはないと聞かされると腹を立て
ました。ないはずはないと分かっていたからです。しかし,
しばらくすると,自分でいくらそのつもりでも,今いるの
B.主は日の栄えの王国で永遠の命を受けるための条
件を定められた。
はデトロイトならぬカンザス・シティーであるという事実
■
に,彼は目を開かされたのでした。万事はうまくいってい
ストの憐 れみと贖罪 にすがっていることを明確にする。
ました。ただ,乗ったバスを間違えたというほんの小さな
一事を除いて。
わたしたちは日の栄えの王国に入るためにイエス・キリ
あわ
しょくざい
「それは,わたしたちが最善を尽くした後,神の恵みによ
って救われることを知っているからである。
」
(2ニーファイ
人生の途上で,大勢の人間が行くつもりでなかった場所
25:23)
に着いてしまいます。名誉,幸福,成功という目標を掲げ
■
ながら,バスを乗り違えて,不名誉,失敗,不遇の終点に
義の概要B」に挙げられている参照聖句を読むように言う。
運ばれてしまうのです。わたしたちがこの世に生きる一つ
昇栄に到達するには常に努力しなければならない理由を生
の主たる目的は,次の世に対して備えることです。わたし
徒が理解できるように,生徒用手引き123−124ページの「参
たちの終点は大きく分けて3つあり,パウロはそれぞれの
考資料B」から,ブルース・R・マッコンキー長老とジョー
すばらしさを日と月と星の輝きに比べています。……
ジ・Q・キャノン副管長の言葉を活用する。
生徒に教義と聖約131:1と生徒用手引き122ページの「教
心に高い目標を掲げても,行き先の違うバスに乗ったと
きに,『自分には気高い目標がある』と一人ごちただけで
は状態は何も変わりません。大事なのは実感です。わたし
C.日の栄えの王国を受け継ぐ者には,偉大な機会と
報いが約束されている。
たちは『つもり』ではない,自分の言葉によって裁かれる
■
のです。そのときに,『地獄の道は「……つもり」という
徒に尋ねる。教義と聖約137:1−4を読む。ここで,預言者
言葉で敷きつめられている』という古来の決まり文句が空
ジョセフ・スミスは日の栄えの王国に関して受けた示現に
虚に響いてくることでしょう。……
では,世の中で最も大切な原則の一つに戻りましょう。
日の栄えの王国は,どのような所だと考えているかを生
ついて述べている。
■
「黒板1」を使って,日の栄えの王国を受け継ぐ人々の状
それは,まず自分がどこへ行きたいかを知ること。次に,
態と受ける報いについて話し合う。「黒板1」に挙げられて
そこへ連れて行ってくれるバスに乗り込むことです。
」
(
「バ
いる参照聖句を生徒とともに読む。
スを乗り違えて」
『聖徒の道』1984年4月号,40−43)
■
生徒用手引き124ページの「参考資料C」から,天父が一人
一人の子らに望んでおられること,わたしたちがそれを得
教えるためのアイデア
るために行わなければならないことについて述べたロレン
ゾ・スノー大管長の言葉を読んで,話し合う。
A.日と月と星にたとえられる3つの栄えの王国,すな
わち栄光の階級がある。
あかし
■
栄えの階級を見た人,または証した人を聖書から3人挙げ
るように言う。
ヤコブ(創世28:12−16参照)
。
「パウロは第三の天ま
で昇り,ヤコブのはしごの3つの主要な段階を理解するこ
とができました。すなわち,星の栄えの栄光と月の栄えの
栄光,それに日の栄えの栄光,すなわち王国です。そして,
D.主は月の栄えの王国を受け継ぐ者について述べら
れた。
■
「黒板2」を参照して,どのような人が月の栄えの王国を
受け継ぐかを説明する。
■
生徒用手引き125ページの「参考資料D」から,「律法なし
に死ぬ」の意味を定義したジョセフ・フィールディング・
スミス大管長の言葉を読む。預言者ジョセフ・スミスは次
121
第33章
のように教義と聖約76章を詩的に表現している。
見よ,これらが律法なしに死んだ者たちである。
異教の民には代々希望がなかった。……
彼らは地の誉れある人々だった。
こうかつ
彼らは人の狡猾さに目隠しをされ,だまされていた。
彼らは最初に救い主の真理を受け入れなかった。
しかし,彼らは獄でそれを再び聞いたとき,受け入れ
た。
(
“The Answer,
”Times and Seasons,1843年2月1日,84)
各王国について知っているべきと思うことをすべては知
け継ぐのは,どのような人々かを見つけるように言う。生
徒が見つけた事柄と「黒板3」に挙げられている事項とを
比較する。
G.主は星の栄えの王国の状態と限界の概略を述べら
れた。
■
「黒板3」を参考にしながら,星の栄えの王国について明
らかにされている事柄について話し合う。
H.聖典には,滅びの子とはどのような者で,滅びの
子の行く末はどうなるかが説明されている。
らないことに気づいたとしても心配することはない。しか
■
し,わたしたちは,この世では福音を受けなかったが,そ
き126ページの「参考資料H」を使って,滅びの子についてわ
の機会が与えられていたならば受け入れていたであろう
たしたちが知っている事柄を説明する。滅びの子の行く末
人々は,日の栄えの王国を受け継ぐということについては
については,ほとんど語られておらず,また知らされてい
確信している(教義と聖約137:7−8参照)
。
ないため,生徒用手引きで述べられている限度を超えては
■
教義と聖約76:79を読む。証に雄々しくあるとは,どの
ような意味かを尋ねる。簡単に話し合った後に,生徒用手
生徒用手引き122ページの「教義の概要H」と生徒用手引
ならない。本章で強調されているのは日の栄えの王国であ
ることを忘れてはならない。
引き125ページの「参考資料D」から,ブルース・R・マッコ
ンキー長老の示唆に富んだ説明を読む(「信仰の戦いに
まとめ
雄々しくあれ」
『聖徒の道』1975年月号,181−83参照)
。
わたしたちが地上に来た大切な目的は,わたしたちが永
E.主は月の栄えの王国における状態を幾つかわたした
ちに告げられた。
■
「黒板2」と,そこに挙げられている参照聖句を使って,
月の栄えの王国について明らかにされていることを生徒が
理解するよう助ける。
遠において,どのレベルの律法と栄えに堪えられるかを確
かめることである。スターリング・W・シル長老は昇栄に
向けて努力する個人の責任を強調する言葉を残している。
「わたしたちと日の栄えの王国を引き離すものは,世界に
ただ一人,自分だけである。」(「成功例」『聖徒の道』1976
年2月号,56−57)
F.主は星の栄えの王国を受け継ぐ者について述べら
れた。
■
生徒に,教義と聖約76:99−103を調べて,星の栄えを受
122
第33章
「黒板1」
日の栄えの王国
昇栄に向かわせる姿勢と行い
イエスの証を受け入れた者(教義と聖約76:51参照)
バプテスマを受けた者(51節参照)
聖霊を受けた者(52節参照)
戒めを守った者(52節参照)
すべてのものに打ち勝った者(60節参照)
約束の聖なる御霊によって結び固められた者(53節参照)
結婚の新しくかつ永遠の聖約に従った者(教義と聖約131:1−3参照)
昇栄の状態と報い
再臨のときにキリストとともに降って来る(教義と聖約76:63参照)
第一の復活の朝に出て来る(64−65節;88:28−29参照)
長子の教会の会員になる(54節参照)
神の王となり祭司となり,御父の完全と栄光と恵みを受ける(56−57,94節参照)
御父からすべてのものを受ける(55,59節参照)
とこしえに神とキリストの前に住む(62節参照)
神々となる(58節;132:19−20参照)
「黒板2」
月の栄えの王国
姿勢と行い
律法なしに死んだ者(教義と聖約76:72参照)
地上においてはイエスの証を受け入れなかったために獄にとどめられたが,後に
それを受け入れた者(73−74節参照)
世の高潔な人々でありながら,人間の悪巧みによって目をくらまされた者(75節
参照)
イエスの証を受け入れたが,その証に雄々しくなかった者(79節参照)
状態,報い,限界
御子の臨在は受けるが,御父の完全は受けない(77節参照)
日の栄えの者が復活した後,第一の復活に出て来る(78節;88:99参照)
星の栄えの王国の者を教え導く(教義と聖約76:86参照)
栄光,力,支配において星の栄えの王国に勝る王国に住む(91節参照)
日の栄えの者の働きによって聖霊を受ける(87節参照)
123
第33章
「黒板3」
星の栄えの王国
姿勢と行い
福音も,イエスの証も,預言者たちも,永遠の聖約も意識的に拒む者(教義と聖
約76:99−101参照)
かつて殺人を犯した者,偽りを言った者,魔術を使った者,姦淫を行った者,み
だらな行いをした者(103節;黙示22:15参照)
聖なる御霊を否定しない者(83節参照)
状態,報い,限界
第二の,すなわち最後の復活まで復活しない(85節参照)
最後の復活まで地獄に落とされる(84,104−106節参照)
神とキリストの住む所には,来ることができない(112節参照)
月の栄えの者の働きによって聖なる御霊を受ける(86節参照)
いと高き方の僕となる(112節参照)
125
第34章
時のしるし
はじめに
バビロンの滅亡とシオンの設立については35章で扱ってい
る。生徒が「全体像」を理解できるよう助ける。本章の目
大きな峡谷の開口部に一つの村があった。住民は長年に
的は時のしるしの概要を知り,これらのしるしがどのよう
わたって幸せな生活を送っていた。しかし,村の一部の長
にして過去に与えられ,現在与えられ,そして成就される
老たちは山の中腹に貯水池が築かれているために洪水の危
かを知ることである。
険があると言い続けていた。その大きなダムは村が築かれ
る前から存在していたが,村人は別に懸念を抱く様子もな
教えるためのアイデア
かった。しかし,これらの村の長老たちは毎年春を迎えて
雪が解け始めると貯水池からあふれる水量が多くなってい
ることを心配していた。彼らは村を高地に移すべきだとず
っと言い続けていたが,大多数の村人は,その警告に耳を
A.わたしたちの時代における時のしるしとは,キリ
ストの再臨前の末日に起こると預言されている出来事
のことである。
生徒に「時のしるし」を定義してもらう(教義と聖約
傾けようとせず,またダムが決壊する危険をはらんでいる
■
とは考えなかった。しかし,警戒のために一つの対策を講
68:11参照)
。生徒用手引き127−128ページの「参考資料A」
じることについては全員が賛成した。それはダムの上の山
から,
「しるし」
,
「時」
,
「時のしるし」に関するブルース・
腹に見張り人を常駐させることだった。水量が警戒水位に
R・マッコンキー長老の定義を読む。主が時のしるしを与
達したら,その見張り人が村人に避難するよう警告するこ
えておられるのは,わたしたちが再臨に備えるためである。
とになった。
これらのしるしを見分けるために聖典の預言や生ける預言
長い年月にわたって見張り人はダムの状況を監視して,
者の教えが役立つ。わたしたちは再臨を前にした終わりの
危険度が高まっていることを定期的に警告するようになっ
時に生きているので,これらのしるしと,その意味につい
た。一部の村人は見張り人の言葉に従って高地に住居を移
て理解しておく必要がある。それらのしるしを見極めて,
した。しかし,ほとんどの人は,長年無事に暮らしてきた
しるしが伝えているメッセージに聞き従うならば,再臨を
のだからこれからも安全だろうと盲目的に信じて,村を離
堪え忍び,地上から悪を一掃される神の裁きを逃れること
れようとしなかった。
ついにダムが決壊し始めるのを見張り人は目撃した。大
ができる。
■
時のしるしについて広く見られる誤解は,そのすべてが
急ぎで村人に警告したが,村人は彼の警告に耳を貸そうと
人々を恐怖に陥れる災いと考えられている点である。実際
しなかった。そして決定的な最後を迎えることになった。
には多くのしるしは非常に好ましいものであって,かつて
その小さな村に残っていた人々は全員命を落とした。
地上で実現したことのないすばらしい出来事である。まこ
み たま
ほかのすべての価値あるたとえ話と同様,このたとえ話
とに輝かしい時のしるしには,地のあらゆる生き物に御霊
は,わたしたちにとって意味がある。福音の意味から考え
が注がれること,アメリカ大陸の発見と移民,モルモン書
ると,見張り人は何を象徴しているでしょうか。(預言者)
の出現,イスラエルの集合,十部族の帰還,末日の神殿の
村人は,だれを表しているでしょうか。(地上に住んでい
建設,ユダのエルサレムへの帰還,レーマン人の繁栄など
る人々)このたとえ話にあったように,ある人々は終わり
が含まれる。マッコンキー長老は51の時のしるしを挙げた。
の時に起きる災いに関する預言者の警告に聞き従うが,ほ
この中で,30が好ましい事柄である。残る21は好ましくな
かの人々は注意を向けようとしない。
い,災いをはらんだ出来事であるが,これらにしても救い
教義と聖約は終わりの時の「すべての民に」対する「警
主の再臨に地球を備えるという意味では好ましい出来事で
告の声」として啓示された(教義と聖約1:4)
。教義と聖約
ある。
第1章は偉大な啓示集のはしがきとして主から啓示された。
■
2−4,11−14,17,34−36節を読む。警告のテーマは教義
に記されている。この聖句は時のしるしが持つ性質を明確
と聖約全体を通して繰り返し取り上げられている。すなわ
にして,わたしたちが「主の大いなる恐るべき日」(31節),
ち世に下される裁きと,神の子らがそれらを逃れる手段で
すなわち主の再臨にどのように備えたらよいかを明らかに
ある。わたしたちは一つの民として,時のしるしに聞き従
している。主が来られる大いなる恐るべき日に安全である
うことによって,神が邪悪な者たちに下される裁きを逃れ,
のはシオンだけである。忠実であって,主を呼び求めてい
救い主イエス・キリストの栄えある再臨に備えることがで
るならば,わたしたちは終わりの時に救われることができ
きる。
る(32節参照)
。
時のしるしとなる多くの出来事は,ほかの章で詳しく説
■
時のしるしに関する預言の言葉の一つがヨエル2:28−32
モルモン書の最後の預言者モロナイは終わりの時に関す
明されている。背教については22章で,福音の回復につい
る示現を見た。モルモン8:35を読む。モロナイはここで,
ては23章で,イスラエルの散乱と集合については24章で,
わたしたちを見たとはっきり述べている。次にモルモン
127
第34章
8:27−41を読む。モロナイは終わりの時の邪悪な行いを明
きるかについて,わたしたちは何も知らないことを生徒が
確に描写している。これらは災いとしての時のしるしとな
理解するよう助ける。時のしるしはジグソーパズルを組み
るものである。
合わせることにたとえられる。一つ一つの断片がいつ使わ
■
聖典の特定の章には時のしるしが数多く挙げられている
れるのかは分からないが,使った断片が多くなるにつれて,
(教義と聖約29:14−28;43:17−35;45:15−59;88:
完成する絵がどのようなものになるかが明らかになり,完
86−98参照)。これらの章を読んで,時のしるしを以下の3
成に近づいていく。同様に,一つ一つのしるしが起きる度
つの範ちゅう,すなわち「すでに起きた」,「現在起きてい
に,主の再臨が近づくのである。
る」,「まだ起きていない」に分類するとよい。様々なしる
主の再臨については36章で詳しく学ぶが,救い主がいつ
しを詳細にわたって研究することは避ける。聖典中に預言
再び来られるのかを知っている人は天使を含めてだれもい
されたしるしの多くがすでに起こり,また現在起きている
ないことをここで強調するとよい。現在生きているわたし
ことを生徒に理解させる。この理解は,最終的にすべての
たちは,その栄えある時まで生きているかどうか分からな
しるしが起きることへの確信につながる。
い。その時がいつかを知ることや,その時に生きているか
■
生徒用手引き128ページの「参考資料A」から,時のしるし
について預言者ジョセフ・スミスが語った言葉を読んで,
話し合う。
どうかよりもはるかに大切なのは,救い主の再臨に備えて,
わたしたちがどのような生活を送るかということである。
「賢く,また徳高い生活を送ることが必要です。王国の教
義によって,あなたの持つ性質を管理しなければなりませ
B.時のしるしを知ることは,主に立ち返り,主の再
臨のために自らを備えるのに役立つ。
■
時のしるしについて話し合うことに潜んでいる危険には,
ん。主の戒めをすべて守ることによって,キリストの証に
雄々しくなければなりません。」(ベンソン,“Prepare
Yourselves for the Great Day of the Lord,”68)
しるしによって引き起こされる事柄を扇情的に表現した
■
り,厳密な意味を憶測したり,特定の出来事が正確にいつ
かれるというものがある。一部の末日聖徒でさえも現在,
起きるかなどを予告したりすることが含まれる。エズラ・
欺かれているし,将来も欺かれることであろう。しかし,
タフト・ベンソン大管長はブリガム・ヤング大学の学生た
これは欺かれずに済むことである。生ける預言者に従い,
ちに向かって,時のしるしについて話し合うときに,聖典
聖典に記されているキリストの言葉をよく味わうならば,
の記述に従うことの大切さを力説した。「最近,聖徒たち
わたしたちは欺きを避けることができる(2ニーファイ31:
の間に流布されたうわさや文書,録音テープが一部の教会
20参照)
。生徒用手引き127ページの「教義の概要B3」と生
員の心を騒がせているからです。」(“Prepare Yourselves
徒用手引き128−130ページの「参考資料B」を読む。
る
ふ
時のしるしの一つに,多くの人々が主の再臨に関して欺
for the Great Day of the Lord,” Brigham Young
University 1981-82 Fireside and Devotional Speeches,64)
生徒用手引き129−130ページの「参考資料B」から,しる
しを研究することについて勧告したハロルド・B・リー大
管長の言葉を読む(「神権者に与える勧告」『聖徒の道』
1973年9月号,416−417参照)。生徒に,人類が直面しよう
あかし
としている危機について証し,警告する義務を持つ大管長
会と十二使徒定員会に従うようチャレンジする。彼らは,
わたしたちが時のしるしを理解し,救い主の再臨に備える
よう導いてくれる。
■ しるしが正確にどのような順序で起きるか,またいつ起
128
まとめ
「教会の青少年とすべての会員は,その出来事が起きる
前にキリストが主権と力を持って現実に戻って来られるこ
とを受け入れる必要があります。なぜならば,C・S・ルイ
スが述べたように,立ち上がることができないときにひざ
まずいても何の価値もないからであり,『劇の作者が舞台
に上るとき,劇は,すでに幕を閉じている』からです。」
(ニール・A・マックスウェル,New Era,1971年1月号,9)
バビロンの滅亡とシオンの設立
第35章
生徒の答えを黒板に書き出す。神は最初に悔い改めるよう
はじめに
警告してからでなければ,これらの人々を滅ぼされなかっ
「イスラエルの長老たちよ」(『賛美歌』1989年,196番)
たことに注目する。さらに,人々の「罪悪が熟した」とき,
を歌うか,歌詞を読む。「バビロン,バビロン,いざさら
すなわち罪に完全に浸り切ったときまで,滅ぼされなかっ
ば」と「シオンを知らせ,励まさん」とは,どういう意味
た(エテル9:20)
。
かを尋ねる。霊的な物差しによると正反対を表している
罪に浸り切ったために滅ぼされた以下の7つの民につい
「バビロン」と「シオン」の持つ象徴的な意味をレッスン
て分析するとよい。神がこれらの邪悪で俗世的な人々の例
で詳しく検討することを伝える。黒板に水平の線を書いて,
を知らせておられるのは,わたしたちが彼らのような行い
その両対極にこれらの語を書き,話し合いの間,参照する
を避け,彼らの受けた罰から逃れるようにするためである
とよい。
ことを指摘する。これらの人々について検討するときに,
今日同じ罪悪が見られること,そして多くの場合に,現在
教えるためのアイデア
それらの罪悪は熟しつつあることに注目する。
A.バビロンは悪の象徴である。
ノアの時代の人々
ノアは人々に,悔い改めるようにと呼びかけた(モーセ
8:20参照)
。
人々は自分たちの力を自慢した(モーセ8:21参照)
。
すべての人が悪いことばかりを考えていた(モーセ8:22
参照)
。
暴虐が地に満ちた(モーセ8:28参照)
。
■
『聖句ガイド』「地図1」から,バビロンの位置を示す。
バビロンはバビロニア帝国の首都であり,主要な都市であ
ったことを指摘する。ブルース・R・マッコンキー長老は
古代都市バビロンが「再建されることのない」「邪悪の中
心地」であったことを明らかにした(生徒用手引き132ペー
ジの「参考資料A」参照)
。
古代バビロンは豊かで強大だったが,道徳的には腐敗し,
邪悪な都市だった。この腐敗のゆえに,主は何人かの預言
者を遣わして,破滅が待ち受けていることを預言させられ
た。生徒の協力を得て,イザヤ13:19−22からバビロンに
関するイザヤの預言を要約する。イザヤの預言は文字どお
こんにち
り成就したことを指摘する。今日,かつての強大な国バビ
ロンをしのばせるものは,積み重なった石しか残っていな
い。遺跡には野生の砂漠動物以外に住んでいるものはいな
い。ローマ,エルサレム,ダマスカス,アテネなど,ほか
ヤレド人の文明
エテルを含む多くの預言者は人々に警告するために遣わ
されたが,拒まれた(エテル7:23−24;9:28−29;11:
1−2;12:1−3参照)
。
秘密結社が人々の没落に拍車をかけた(エテル8:16−
25; 11:15;14:10参照)
。
人々は流血と恐ろしい戦争を繰り広げた(エテル14:
18−22;15:2,16−19参照)
。
の強大な国家は様々な破壊を経験したにもかかわらず,な
お現存していることに注目する。
■
イザヤの預言には二重の意味があることがしばしばある。
すなわち,預言が二つの方法で成就する。多くの預言はイ
ザヤの時代周辺で成就し,さらに末の日にも成就している。
バビロンに関する預言はこれに該当する。
教義と聖約1:16と133:14を読む。「大いなるバビロン」
と「霊のバビロン」は終わりの時にわたしたちを取り囲む
邪悪と罪の「世界」を象徴している。黒板に書かれている
語に注目させて,バビロンの下に,
「邪悪」
,
「俗世的」
,
「罪」
などと書く。教義と聖約1章と133章は主が教義と聖約の前
ソドムとゴモラ
聖典は,これら低地の町々の民に警告を与えたのは,だ
しもべ
れかを明確にしていない。しかし,主の僕たち(恐らく,
メルキゼデクとその民,さらにアブラハム)が主によって
あかし
遣わされて,民に警告し,彼らの罪について証したと思わ
れる。彼らの罪は「非常に重」かった(創世18:20)
。
町には10人の義人すらも住んでいなかった(創世18:32
参照)
。
い おう
神は天から火と硫黄を降らせて町々を滅ぼされた(創世
19:24参照)
。
書きと付録として啓示されたことを指摘する。したがって,
バビロンから,すなわち「悪の中から」逃れるという概念
は,イエス・キリストの回復された福音の主要な概念の一
つである。
B.霊のバビロンは倒れて完全に滅びる。
■
神によって滅ぼされた文明や都市の例を挙げてもらう。
カナン人
彼らは「神のすべての御言葉を拒んで罪悪が熟しました」
(1ニーファイ17:32−35)
。
彼らは,あらゆる種類の不道徳を行った(レビ18章;20
章参照)
。
主はイスラエル人を使って彼らを滅ぼし,地の面から追
129
第35章
放された(1ニーファイ17:33,35参照)
。
■
バビロンから逃れようとしない教会員には,どのような
ことが起きるでしょうか。(彼らはキリストの再臨に先立
イスラエルの邪悪な国
モーセはイスラエルに対して,背教に陥り,その結果滅
亡する可能性があることについて,前もって警告した(申
命8:19−20参照)
。
多くの預言者がイスラエルに悔い改めるよう警告した。
イスラエルは邪悪な行いと偽りの神を拝む罪を犯した
(申命8:19;列王下17:7−18参照)
。
って起きる破壊において,悪人とともに滅ぼされる。教義
と聖約64:24参照)多くの教会員は,それと気づかずにバ
ビロンにとどまったままである。過去数十年の間,非常に
多くのバビロンの側面(7つの邪悪な文明と都市で述べら
れているのと同様の事柄)がテレビ,映画,音楽,文学に
登場してきた。これらのメディアを通してバビロンとのか
かわりを持ち続けていながら,バビロンから完全に逃れる
ことができるでしょうか。多くの教会員はシオンの建設を
アモナイハの町
アルマとアミュレクは人々に警告したが,拒まれた(ア
ルマ8−14章参照)
。
アモナイハの人々は法律を悪用する罪を犯していた(ア
ルマ10:13−15参照)
。
法律家とさばきつかさは神を愛するよりも金銭を愛した
(アルマ11:24参照)
。
彼らは義人を迫害し,殺した(アルマ14:8−9,14−19
参照)
。
人々は自分たちの町が滅ぼされるはずはないと豪語して
いたが,レーマン人によって滅ぼされた(アルマ16:2−3,
9参照)
。
支援することよりも,バビロンの楽しみのために多くの時
間と金銭を使っている。信仰箇条第13条に述べられている
末日聖徒の目指す健全な目標を復習する。テレビ,映画,
音楽,文学を選別して採り入れることによって,バビロン
から完全に逃れるよう生徒にチャレンジする。
C.シオンとは,主が義にかなった聖徒たちに授けら
れた名である。
■
黒板に書かれたバビロンとシオンにもう一度注目しても
らう。聖典における象徴として,シオンはバビロンの反意
語であることを指摘する。わたしたちは命じられているよ
うに,バビロンから逃れると,シオンへ行くことになる。
シオンとは何でしょうか。それは場所を指すのでしょうか。
ニーファイ人の国家
モルモンとモロナイは人々に警告した(モルモン3:2−
3;モロナイ9:4,6参照)
。
そのようにひどい悪事はイスラエルの家にかつてなかっ
た(モルモン4:12参照)
。
ニーファイ人とレーマン人の間に「流血と虐殺」の「す
さまじい有様」が展開された(モルモン4:11)
。
秘密結社がニーファイ人の滅亡を招いた(エテル8:19−
21参照)
。
彼らは,いつも血を渇望していた(モロナイ9:5参照)
。
あるいは状態を指すのでしょうか。シオンという名称には,
幾つかの定義があり,多くの場所を指すこともある。しか
し,シオンという語の持つ完全な意味によれば,これらす
べての場所は義について同じ状態でなければならない。生
徒用手引き132−133ページの「参考資料C」から,ハロル
ド・B・リー大管長とスペンサー・W・キンボール大管長
によるシオンの定義について話し合う(キンボール「心の
清い者となる」
『聖徒の道』1978年10月号,129参照)
。
■
古代において,族長エノクは一つの町を築いて,そこに
地の義人が集められた。モーセ7:12−21から,霊感あふれ
る物語を読むとよい。ここには人々が霊のバビロンから逃
神は過去の時代に邪悪な人々を滅ぼされたと同様に,終
れて,シオンと呼ばれる義にかなった社会を築いたことが
わりの時においても悪人を滅ぼされる。このため,かつて
記されている。モーセ7:18によれば,そのシオンには,ど
の時代と同じように,主は,わたしたちに警告を与えるた
のような特徴があったでしょうか。このシオンの定義と,
めに預言者を召してこられた。世の罪は象徴的に大いなる
教義と聖約97:21に記されている定義とを比較する。黒板
バビロンと呼ばれる。生徒用手引き131ページの「教義の概
のシオンの下に,鍵となる語を書き出す。終わりの時にシ
要B1とB2」に挙げられている参照聖句を使って,神は霊の
オンを完全に確立するには,同じ特質が存在しなければな
バビロンの堕落を預言してこられたこと,聖徒はバビロン
らない。
のうちから逃れることを説明する。
■
■
かぎ
ブリガム・ヤング大管長の指示の下でロッキー山脈に教
バビロンから逃れるとは,現在住んでいる社会を離れて
会が確立されると,全世界の聖徒たちはシオンに集合する
別の社会へ移るという意味ではない。ある社会は,ほかの
ように命じられた。初期の集合の賛美歌「悩めるイスラエ
■
社会よりも正しい人々が多く,邪悪な人々が少ないかもし
ル」
(
『賛美歌』6番)の歌詞を読む。現在,全世界の教会員
れないが,わたしたちは,いずれにしてもバビロンに取り
は自分の住んでいる地にシオンを建設するよう命じられて
囲まれている。実際のところ,バビロンは,わたしたち個
いる。聖徒たちはシオンを見つけるためにユタへ行くので
人の心の状態とのかかわりの方が大きい。では,バビロン
はなく,シオンのステークに集まっている。そしてステー
から逃れるとは,どういう意味でしょうか。(すべての罪
クは全世界で急速に増えている。神殿を含むシオンのすべ
を悔い改めること。俗世に染まるのを避けること。戒めを
ての祝福は民が住んでいる場所で与えられる。ブルース・
守り,聖約に忠実であること。)どうすれば,世にあって
R・マッコンキー長老は次のように宣言した。
も,世の者とならないでいることができるでしょうか。
130
「シオンのステークも地の果てにまで組織されつつある。
第35章
これに関連して,次の真理を考えてみようではないか。シ
を読む。日の栄えの律法に従って生活することの大切さを
オンのステークはシオンの一部である。シオンの一部を作
強調する。シオンが心の清い者となり,「日の栄えの王国
らずに,シオンのステークを作ることはできない。シオン
の律法の諸原則」
(教義と聖約105:5)に従うようになるま
は『心の清い者』である。わたしたちはバプテスマと従順
で,主はシオンを御自身のもとに迎えることはおできにな
によって清い心を作る。
らない。
ステークは地理的な範囲を持つ。ステークの創立は聖都
■
最終的にシオンの中心地は,どこに設けられるでしょう
の建設に似ている。地上のステークはどれも皆,その地域
か。教会が回復されてからわずか1年あまり後の1831年の夏
に住むイスラエルの行方の知れない羊たち集合場所であ
に,主は預言者ジョセフ・スミスにシオン(新エルサレム)
る。ペルー人の集合の地は,ペルーのシオンのステーク,
がミズーリ州ジャクソン郡インディペンデンスに築かれる
もしくは将来ステークとなる場所である。チリ人の集合地
ことを明らかにされた(教義と聖約57:1−3;信仰箇条1:
はチリ,ボリビア人の集合の地はボリビア,韓国人の集合
10参照)
。インディペンデンスに築かれる末日のシオンは新
の地は韓国,東西南北,全世界を通じて集合地はそのよう
エルサレムと呼ばれる(生徒用手引き131ページの「教義の
な場所である。各国に散らされたイスラエルはキリストの
概要D4」参照)。将来起きる出来事を想定して,今インデ
羊の群れに,各国に建てられるシオンのステークに呼び集
ィペンデンスに移住することについてマッコンキー長老は
められる。」(「シオンの建設」『聖徒の道』1977年9月号,
次のように警告した。
「わたしたちが承知しているように,新エルサレムの建
402)
ボイド・K・パッカー長老は同様の勧告を与えている。
「あらゆる地に危険が迫っています。ある人々は,こう言
設は,啓示によってまだ明らかにされていない,いつか未
来のことです。ジャクソン郡や関連するどの地域にも,現
うかもしれません。『もし状況がきわめて深刻になったら,
在のところ,土地を購入するとか移住するとかの要請は聖
わたしたちは,ここを去るか,あるいはかつて住んでいた
徒に対して行われていません。インディペンデンスとその
地に戻って行くでしょう。そうすれば,安全だからです。
周辺への集合に関する啓示の言葉は地上における神の預言
かの地では何の問題も起きないでしょう。』もし,あなた
者から伝えられます。それが伝えられるとき,その内容は
が一人でいるときに,あるいはあなたの夫や妻,子供たち
聖徒たち全員がそこへ集合するようにとの呼びかけにはな
といるときに,安全な状態を確保することができず,彼ら
らないでしょう。すなわち,かのシオンへの聖徒たちの帰
と仲良くやっていけないとしたら,どこにも平和や幸福を
還は,その場所へ引っ越して行くことではないのです。か
見つけることはできないでしょう。地理的に安全な場所な
つてそうであったように,ジャクソン郡への帰還は代表者
どというものは存在しないのです。」(“That All May Be
によって行われるでしょう。働きを必要とされる人々が指
,201)
Edified”
名されて集合することになるでしょう。ほかのイスラエル
は指定された場所にとどまるでしょう。主の家は秩序の家
あつ
D.霊のバビロンの罪悪が熟すとき,偉大な末日のシ
オンが設立される。
■
末日聖徒にとって避け所となるシオンと,そのステーク
について説明している聖句を,生徒用手引き131ページの
です。信仰篤い聖徒たちは預言者の命令に従って行動し,
行くことでしょう。なぜならば預言者の声は主の声だから
です。
」
(Millennial Messiah,294)
■
キリストの再臨の時にエノクのシオンと終わりの時のシ
「教義の概要D1」から読む。イザヤ33:20と54:2を参照す
オンが合体することに関して,生徒用手引き131ページの
るとよい。これらは聖典の中で,ステーク(訳注――
「教義の概要D6」に挙げられている参照聖句を読む。生徒
"stake"とは「杭」を意味する)について言及している最初
用手引き134ページの「参考資料D」には,この栄えある併合
の箇所である。象徴による意味合いから,幕のステーク
について述べたジョン・テーラー大管長の言葉が記されて
くい
(杭)は幕,すなわちシオンの大きさと力を拡大すること
いる。
ができる。シオンの新しいステーク(杭)が作られるとシ
オンは大きくなる。預言されているように,「シオンは立
まとめ
ち上がり,その美しい衣を着なければならない。」(教義と
聖約82:14)教義と聖約115:6は,神の怒りが全地に注が
あらし
れるとき,シオンのステークは嵐からの避け所になると告
げている。ワードやステークの義にかなった活動に参加す
ることによって,わたしたちは,どのように俗世的な事柄,
すなわち霊のバビロンから守られるかについて話し合う。
■
シオンは発展しているが,教会員がシオンの原則に従っ
て生活しないかぎり,完全には確立されないことを指摘す
る。モーセ7:18に注目するように言う。教義と聖約105:5
「悩めるイスラエル」
(
『賛美歌』6番)を歌ってレッスン
を終える。歌詞の意味を深く考え,思いと行いにおいてバ
ビロンを離れてシオンへ来るよう生徒に強く勧める。初期
の聖徒たちにとっては実際に故郷を離れて,山の頂のシオ
ンに集まることが重要だった。現在のわたしたちは,家庭
やシオンのステークにおいて日の栄えの王国の原則と律法
を教え,実践することによって霊のシオンに集合すること
になる。
131
第36章
主の再臨
はじめに
■
多くの生徒は救い主がいつ来られるかについて疑問を持
っているかもしれない。ジョセフ・スミス訳マタイ1:40;
聖書で最も頻繁に登場するテーマは何かを生徒に尋ね
1テサロニケ5:2−4;教義と聖約106:4−5を読む。盗人は,
る。生徒の意見を黒板に書き出した後に,生徒用手引き136
どのようにして来るかについて話し合う。盗人は来る前に
ページの「参考資料A」からスターリング・W・シル長老の
電報や電話で前もって知らせたりはしないことを指摘す
言葉を読む。
る。教義と聖約77:12−13と黙示12−13章を読む。それか
ら,生徒用手引き137ページの「参考資料C」から,ブルー
教えるためのアイデア
ス・R・マッコンキー長老の話を読む。
■
A.救い主の再臨は様々な時代に預言されてきた。
■
再臨について聖典中にしばしば述べられているのは,あ
聖典に記されている多くの出来事は救い主の最後の訪れ
に関連して起きる。生徒用手引き135ページの「教義の概要
C3からC10」には関連する聖句が挙げられている。幾つか
らゆる時代の預言者がこの偉大な出来事について預言する
の聖句を生徒に割り当てて,どのような出来事,または,
よう指示されたためであることを指摘する。
しるしについて述べられているかを発表してもらうとよ
『聖句ガイド』(「イエス・キリストの再臨」の項)を使
い。生徒が説明する出来事としるしを黒板に書き出す。
って,マラキ,イザヤ, ヨハネ,パウロ,ジョセフ・スミ
■
スがキリストの再臨について語った預言を一つ以上見つけ
な心構えをすべきかについて次のように語った。これは生
るように言う。見つけたことを生徒に発表してもらう。再
徒が再臨に対して持つべき姿勢を理解するうえで役立つ。
臨について,ほかの預言者と主御自身が語られた説明を付
け加える。
リチャード・L・エバンズ長老は再臨に対してどのよう
「ウィルフォード・ウッドラフ大管長について語られた
と伝えられている言葉を思い出します。当時の,ある兄弟
あらゆる時代の預言者が再臨について預言したのは,忠
たちは大管長のもとへ行って(彼らも皆さんと同様に悩ん
実な人々が主にお会いする用意ができるようにするためで
でいたのです),いつ最後の日が来るか,つまり,いつ主
あったことを生徒が理解できるように助ける。救い主の再
がおいでになると考えているかと尋ねました。そのとおり
臨に備えるために,わたしたちは何をしなければならない
の言葉ではありませんが,次の言葉は大管長が答えたとき
かについて話し合う。
の雰囲気を表していると思います。『わたしは,それが明
■
みすがた
日来るかも知れないと考えながら生活しています。けれど
B.救い主は全世界への再臨前に何度か御姿を現される。
も,
さくらんぼの木を植えるのをやめようとは思いません。
』
世界地図を見せる。救い主は,どこに訪れられるかを生
このことを自分たちの本の1ページに加えたらよいと思い
徒に尋ねる。救い主は再臨に先立って,全世界を何度か訪
ます。そして,明日最後の日が来るかも知れないという気
れられることを生徒が理解できるように助ける。生徒用手
持ちで生活しながらも,さくらんぼの木を植えるのをやめ
■
引き135ページの「教義の概要B」を参照する。ダニエル
ようとはしない,という態度で生きるのです。
」
(Conference
7:9−10,13−14;教義と聖約45章を読む。これらの聖句
Report,1950年4月,105−106)
に記されている4度の異なる訪れを黒板に書き出す。生徒
■
用手引き136−137ページの「参考資料B」も読むとよい。ア
義人にとってそれは喜びの日であり(黙示19:6−7参照),
ダム・オンダイ・アーマンとミズーリ州インディペンデン
邪悪な者にとってそれは悲しみと滅亡の日である(教義と
ス(新エルサレム)の位置については『聖句ガイド』の
聖約45:49−50;29:15参照)
。
「地図11」を参照する。
■
救い主の再臨は,なぜ大変な恐ろしい日なのかを尋ねる。
生徒に再臨の目的を説明してもらう。
1. 地球を邪悪から清めること。
C.主は最後の現れについてかなり詳細に語っておら
れる。
■
2. 平和をもたらし,地上に神の王国を確立すること。
3. 義に対して報いを与えること。
再臨に関する聖句のほとんどは救い主の栄光あふれる最
後の訪れに関するものであることを指摘する。再臨につい
まとめ
て語られるときにどう思うか生徒に尋ねる。生徒は再臨が
どのようなものだと信じているだろうか。生徒の意見を黒
教義と聖約38:30を読んで,話し合う。特に「備えてい
板に書き出す。ここでは,まだ結論を導き出さない。この
れば恐れることはない」という部分に注目する。この言葉
活動は再臨に関する自分たちの理解を生徒が評価するのを
は命令であると同時に約束でもあることを指摘する。
助けることを目的としている。
133
第37章
福千年と地球の栄光化
を治める。
」
はじめに
■
以下の引用文を読む。これは,だれが,いつ語ったもの
かを考えるように言う。
B.福千年の日のために,地球は更新される。
■
「わたしたちの知恵や英知は増しただろうか。進み出て,
国家の行く末を変え,世の幸福を進展させることのできる
■
生徒とともに信仰箇条第10条を復習する。
福千年の間,死すべき人の寿命は,どれくらいでしょう
か(イザヤ65:20参照)
。どのようなことが寿命を伸ばすの
人物がどこかにいるだろうか。あるいは,臣民の普遍的な
でしょうか。
幸福を,すなわち彼らの一般的な福利を進展させることの
■
できる王国や国がどこかにあるだろうか。ほかの国々より
もらう。これらの聖句には,どのような栄えある約束が記
もより多くの資源がある我が合衆国は,中央から地方まで,
されているでしょうか。(義にかなうすべてのイスラエル
政党の抗争や政治上の策謀,派閥の利権で裂かれている。
は,主を個人的に知る。
)
ろうばい
生徒にエレミヤ31:31−34と教義と聖約84:98を読んで
わたしたちの弁護士は,狼狽し,州議会議員は驚き,上院
議員は困惑し,商人は仕事に行き詰まり,貿易業者は落胆
C.福千年は平和の時である。
し,職工は失業し,農夫は苦悩し……。
■
……世界そのものが,悲惨や悲哀,『諸国民の悩み』と
義にかなった支配者の下で義にかなった社会にいながら,
邪悪な生活を選ぶような人がいるでしょうか。邪悪な人々
いう様相を呈している。すべてが,すべてが,人は自分自
が支配するとしたら,どのようなことが起きるでしょうか。
身を治めることも,律することも,守ることも,自らの善
邪悪な人々の影響力が政府だけでなく,経済,芸術,娯楽,
も,世界の善を促すこともできないと,雷のような声で語
ファッション,教育,科学にまで及ぼされるとしたら,ど
っている。
」
(ジョセフ・スミス,Teachings of the Prophet
のようなことになるでしょうか。このような状況は,救い
Joseph Smith,249−250)
これは預言者ジョセフ・スミスが1842年に論説として記
したものからの引用であることを説明する。ジョセフ・ス
ミスの時代と現在の世界の情勢が酷似していることを考え
ると,人の手による政府について,どのような結論を導き
出すことができるでしょうか。ジョセフ・スミスは,どの
ような結論に達したでしょうか。
■ 最近の新聞を見せて,福千年の新聞には掲載されること
のない記事を見つける。福千年で発行される新聞には,ど
のような見出しが中心となると思われるかについて話し合
う。
主が来られるときに邪悪な人々を滅ぼされる理由の幾分か
教えるためのアイデア
A.救い主が力と栄光とをもって来られるとき,福千
年が始まる。
■
神は6,000年にわたって,義にかなって自らを治める機会
を人々に与えてこられた。歴史を通じてほとんどの人は,
この試みに失敗してきた。以下の聖句によれば,救い主は再
臨されると,どのような責任を引き受けられるでしょうか。
イザヤ2:1−4。
「律法はシオンから出〔る。
〕
」
イザヤ9:6−7。「まつりごとはその肩にあり,……そ
のまつりごとと平和とは,増し加わって限りなく,……公
平と正義とをもってこれを立て〔る。
〕
」
信仰箇条1:10。
「キリストが自ら地上を統治される〔。
〕
」
教義と聖約29:11。キリストは「地上で人々とともに
義のうちに住む。
」
教義と聖約133:25。「主が,……すべての肉なるもの
を説明しているでしょうか(モーサヤ29:17−23;アルマ
46:9参照)
。
■
義人が支配するときにどのようなことが起きるかについ
て話し合う。イザヤは,どのようなことが起きると言って
いるでしょうか(イザヤ26:9参照)
。
以下の聖句は福千年の間,どのような悪が存在しなくな
ると言っているでしょうか。
イザヤ2:4と教義と聖約101:26。戦争と敵意。
モーセ7:18とイザヤ65:21−23。貧困。
教義と聖約101:32−34とイザヤ11:9。無知。
イザヤ11:9。犯罪。
■ 福千年の間,サタンは縛られることを指摘する。サタン
は自分がこの世の王子であり支配者であると,しばしば主
張してきた。だれがサタンに支配する力を与えたのでしょ
うか。(主はサタンに人類を誘惑することを許されたが,
サタンに支配する力を与えるのは人の悪事のためである。)
もし人類が悪事を行わないとしたら,サタンは人類を支配
することができない。生徒用手引き140ページの「参考資料
C」から,ジョージ・Q・キャノン副管長の言葉について話
し合う。福千年の間サタンは,どのようにして縛られるの
でしょうか。
D.福千年の間,救い主は御自身で地球を統治される。
■
生徒用手引き139ページの「教義の概要D」を使って聖典
研究会を組織する。各項から聖句を一つか二つ選んで,関
連する脚注,または『聖句ガイド』を参照することを生徒
に奨励する。
135
第37章
福千年の間の一致が失われることによって,最終的にどの
E.福千年後のある時に,地球は最終的に栄光化される。
■
聖文の歴史上,福千年に近い状態が存在した時期があっ
たでしょうか。(救い主が訪れた後の義にかなったニーフ
ようなことが起きるでしょうか(教義と聖約88:111−
115;29:22参照)。地球は最終的にどうなるでしょうか
(教義と聖約88:17−20;130:8−11;77:1参照)
。
ァイ人とレーマン人の間で存在した。)それは,どれくら
い続いたでしょうか。
(200年近く。
)何がこの状態を終わら
まとめ
せたのでしょうか。ニーファイ人とレーマン人の間で義が
低下するにつれて,サタンは次第に解き放たれていったこ
とについて話し合う(4ニーファイ1:24−42参照)
。福千年
の平和も同じようにして崩れていくのでしょうか。すなわ
ち,わたしたちの義の状態は低下していくのでしょうか。
136
福千年は聖徒たちが救い主とともに暮らす期間である。
救い主は,わたしたちが天の御父とともに日の栄えで生活
する準備をさせるために,1,000年の間,わたしたちを指導
してくださる。
参考文献一覧
スペンサー・W・キンボール『赦しの奇跡』1975年,2002
年
ジョセフ・フィールディング・スミス『救いの教義』全3
巻,ブルース・R・マッコンキー編,1979年
ジェームズ・E・タルメージ『キリスト・イエス』1976年,
1997年
137