専門科目 の 物理化学 - 大阪大学理学部化学科

大 阪大学大 学 院理学研 究科博 士 前期課程
高分子科学専 攻
平成 19年 度入学試 験 問題
専門科 目
① 物理化学
② 有機化学
(13:00 ∼
15:00)
(表紙 を含 めて 7ペ ー ジ)
注意 事項
(1)す べ ての解答用紙 の右 上の欄外 に受験番号 のみを記入す る こと。
(2)2科 日とも解答す る こと。
(3)問題 ごとに別 々の解答用紙 を用 いる こと。
① 物 理化学
(50″ 点)
1 . 実 在気体 の状態を記述す るために提案 された v a n d e r w a a l状態方程式は
sの
,1モ
ルの気体に対 して式 ( 1 ) で 与えられ る。
/―
b)=沢 『
争
(P十 亨 )(ン
(1)
ただ し, P , 4 お
よび 『はそれ ぞれ気 体 の圧 力 , 体 積 , お よび 絶 対 温度 , 沢 は 気 体 定
数 , そ して α と うは気 体 の種類 に依存す る定 数 で あ る . ま た , こ の 式 か ら計 算 され る
P ―/ 等 温 曲線 は , 図 1 に 示す よ うに, 高 温 で は 単調減少 関数 で あ るが , 低 温 で は極 大
と極小 を 1 つ ず つ もつ 曲線 とな り, 中 間 の あ る特別 な温 度 名 で , 傾 き がゼ ロ に な る点
を 1 つ もつ 曲線 とな る . この v a n d e r W a a l s状態方程式
の
に 関す る以 下 の 問 ( 1 ) ∼ ( 9 )
に答 え よ.
(1)こ の 式 中 の 物理変数 P,比
お よび
『を ,物 質 量 に比 例す る示量性 変数
と,物 質 量 に 依 存 しな い 示 強性 変
数 に 分類 せ よ.
(2)物 質 量 が ″ (モル )の 気体 の場合 に
は ,こ の 式 は どの よ うに 書 き直 さ
れ るか を示せ .
(3)こ の 式 は ,ど の よ うな状態 の ときに,
理想 気 体 の 状 態 方 程 式 に近 づ くか
を述 べ よ.
( 4 ) 式 中 の うは , 実 在 気体 と理 想 気体 の
どの よ うな違 い を反 映 した 定数 か
を述 べ よ.
晩
路
ァ
図 1
(5)定 数 αの 単位 を ,kg,m,s,molを
適 当に組 み合 わせ て 表 せ .
(6)温 度 rを 発 以 上 の あ る一 定 値 に保 っ て ,こ の 1モ ル の 実在気 体 の 体積 を る か
ら る まで 準静 的 に膨 張 させ た ときに ,気 体 が 外界 に対 して 行 う仕 事量 ″ を求
め よ。
1中 の 温 度 孔 にお け る曲線 で ,傾 き がゼ ロに な る′
点 (4,Pc)に 対応 す る状
態 は ,何 と呼 ばれ て い るか を答 え よ。また ,こ れ よ り低 温 で ,こ の 気体 を図 1
(7)図
中 の る か ら る まで圧縮 す る と, どの よ うな変 化 が 起 こ る と予 想 され るか を答
え よ.
(8)前
問 の傾 き が ゼ ロ にな る点 (4,Pc)は ,変 曲点 に もな っ て い る 。 式(1)から,
これ らの 条件 を用 い て ,こ の 点 で の 体積 る お よび 温 度 孔 に 関す る連 立 方程 式
を導 け .
(9)前 間 の 連 立 方程式 か ら,4お
よび 孔 を α,あ,お よび 沢 を用 い て 表 せ ,
2,以 下 の 文章 中 の 空 欄
1
匡 14ヨ
∼
い
い
に ふ さわ し 語 句 あ る は記 号 を
記せ .
方式 の解 と して与 え
電子 の 定常 状態 を記述 す る波動 関数 7 / 1 ,ま以 下 の S c h r 6 d i n g e r 程
られ る .
〃 γ =ど γ
(1)
ここで,力 は 1 演
算子,ど は電子 のエネル ギーである.こ の電子 1個 が電荷
挽 ( Z は原子番号, 夕 は電気素量) を 持つ原子核 の周 りに存在す る場合、原 子核 を原
点 とす る極座標 ( ら , ψ ) を 用 い ると, ダ は
=―
力
弗
キ
び
岩
ぢ
))十
面
争
話
ナ
丁
百
(/2津
)十
(Sin
θ
│
(2)
言
務1-z号
[津
で表 され る。 ここで , ん は Planck定 数 ,初 cは 電子 の 質 量 ,そ して 殉 は真 空 の誘 電 率
を表す 。式 (2)の右 辺 の 初 め の 部分 は電子 の 2 に
関係 す る項 ,最 後 の 項 は原 子
核 に よる
3
に
関係 す る項 で あ る。
式( 2 ) を式( 1 ) に代入 して方 程 式 を解 くと, 波 動 関数 ″ ミ
求 め られ る。得 られ た 波動 関
数 は , 3 つ の 量子数 , ″, 7 , 初 で 特徴 づ け られ る. こ の うち , ″ は 波動 関数 の原 子核
か らの 広 が りの 程度 を表す 量子 数 で ,
と呼 ばれ て い る 。 ま た , ア は 波 動 関数
の 形状 を特 徴 づ け る量子 数 で ,
と呼 ばれ る.こ の 量子 数 ′の 値 が 0の とき
テ ンシ ャル に 関係 す る項 が , 式 ( 2 ) に
加 わ り, 方 程 式 を解 くのが 困難 とな る 。この 多電
子系 で 1 電 子 の み に着 目 し, そ れ 以外 の 電子 の位 置 を平均化す る と, 着 目す る電子 の
方式
波動 関数 は , 見 か け上 原 子核 の 電荷 が 減少 した とき の 1 電 子 系 の S c h r 6 d i n g e r 程
の 解 で 近 似 され る . 原 子 核 の 有 効 電 荷 の 減 少 は , 着 目 して い な い 電 子 に よ る
11
効
果 に よる。 この 効果 は ,着 目して い る電子 の 量子 数 ′が 大 き い ほ ど有効
に働 くの で ,量 子数 ″が 同 じ場合 , 12 軌
道 の エ ネ ル ギ ーど が 最 も低 くな る .
また ,多 電子 原 子 中 の 電子 が ,量 子数 ″,′,初 で 特徴 づ け られ る軌 道 に 充填 され て い
く順 序 は , 13 原
理 に従 うが ,上 記 の軌 道 エ ネ ル ギ ー の 特徴 を反 映 して い る 。
さ らには ,元 素 の周期性 も,上 記 の軌 道 エ ネ ル ギ ー の 特徴 に よ っ て 説 明 され る。 た と
えば ,Naや
Kは い ずれ も量子数
14
が
れ て い る の で ,1価 の 陽 イ オ ン にな りやす い。
3
最 大 の軌 道 に 1つ だ け電子 が 充填 さ
3 . 温 度 と圧 力 が 一 定 の理想 溶液 中 で , 化 合物 A と B か ら化合物 C が 生 成す る次 の
化学反応 を考 え る :
A t t B≦
再全 c
こ こで , て は 平衡 定数 で あ る . こ の化 学反応 の 平衡 に 関す る以 下 の 問 ( 1 ) ∼
(5)
に答 え よ.
よび C の モル 分率 を , そ れ ぞれ χA ,
労B , お よび 花 とす る. こ の とき, 平 衡 定数 【 を これ らのモル 分率 で 表 せ .
( 2 ) 溶 液 中 に存在す る化合物 A , B , お よび C の ( モル で 表 した ) 物 質 量 を , そ れ
( 1 ) 溶 液 中 で 平衡状態 にあ る化合物 A , B , お
ぞれ 乃A , ″B , お よび ″c と す る. い ま上 記 の化 学反応 が 進行 して , そ れ ぞれ の
物質 量 がΔ″A , △″B , お よびΔ″c だ け変 化 した とす る 。 この とき , 3 つ の 変化 量
の 間 には どの よ うな関係 が 成 立 す るか を記 せ .
( 3 ) 前 間 の化 学反応 の進行 に ともな う溶液 系 の G i b b s 自 由エ ネ ル ギ ー 変化 △C は ,
それ ぞれ の 化 合物 の溶 液 中 で の 化 学 ポテ ンシ ャル をみ , ん , お よびた と記 す
と
△C = ″ A △力A t t B △
″c
μ″B t tc △
μ
で 表 され る . い ま , 系 が 化 学平衡 の 状態 にあ る とき , △ C は どの よ うな条件 を
満 た さな けれ ばな らな い か を答 え よ. ま た 前 間 の 物質量 の 変化 の 関係 を用 い て ,
化 学 ポテ ンシ ャル に 関す る化 学平衡 条件 式 を記 せ ,
( 4 ) 化 学 ポテ ンシ ャル み , れ , お よびた をモル 分 率 を用 い て表 せ . た だ し, 純 物 質
°
°
の標 準化 学 ポテ ンシ ャル をみ °
, ん , お よびた , 気 体 定数 を 沢, そ して 絶 対 温
度 を 『とす る .
(5)間
(3)と
( 4 ) の 結果 よ り, 平 衡 定 数 【 を標 準化学 ポテ ンシ ャル を用 い て 表
こ
t せ「 .
4
② 有 機化学 (5 0 ″点)
1 . 次 の 空 欄 A か ら H に あてはまるもつ とも適 当な化合物を立体構造 がわかるよ う
に構 造 式 を書 け。
(1)
HN03
A
(2)
AICi3
CH3COCi
Ci一く
こ三〉
B
(3)
OH
2
H
C
H ︲
+
C tC
2 H
(4)
C
KOH(alCCh。り
(5)
H20
⑤
E
一
△
(6)
い
F
H2NOH一
、
(7)
1)OS04
G
2)H202
(8)
十
CH3
(C6H5)3P‐
H
0
5
2.化
Fα
れS,Cれ
`rttS-2,4,6-oct筑
合物 A(け
占ene)を 加 熱 した と こ ろ反応 が 進行 し、化合
物 Bが 得 られ た 。質 量 分析 の 結果 、反応 の 前後 で 分子 量 は 変化 しなか っ たが 、lHENMR
ス ペ ク トル には大 きな変 化 が 見 られ た。 A、 Bの lH口
NMRス ペ ク トル を図 1お よび 図
2に 示 した 。 この 反応 につ い て 、以 下 の 問 (1)∼
(3)に 答 え よ。
△
B
A
PPM
図 1 化 合物 A の l H _ N M R ス ペ ク トル
6
5
4
PPM
図 2 化
合 物 Bの
lH口
NMRス
ペ ク トル
( 1 ) 化合物 Bの 構 造 をそ の立 体構 造 がわか る よ うに 明瞭 に書 き、そ の立 体構 造 を と
る理 由を簡 潔 に記 せ 。
(2)
この よ うな反応 は 一 般 的 に何 と呼 ばれ るか。
( 3 ) l H ―N M R が 図 1 か ら図 2 へ 変化 した理 由を 、化学 シ フ ト、面積 強度 とい う用 語
を用 い て 説 明 せ よ。
6
3 . 次 の問 ( 1 ) ∼
( 3 ) に 答 え よ。
( 1 ) 下 図 ( A ) ∼ ( D ) は 求核 置換反応 の ポテ ンシ ャル エ ネ ル ギ ー 変化 を示 した も
の で あ る。下記 の 反応 ( あ) ( い ) が それ ぞれ どのポテ ンシ ャル エ ネ ル ギ ー 変化
図 に該 当す るか を示 し、 エ ネ ル ギ ー 曲線 上 にアル フ ァベ ッ トで示 した それ ぞれ
の 点 にお け る化学種 の構 造 を書 け。
(A)
(B)
(C)
(D)
b
d
1口
( あ) 1 口 b r O m O 口
酢酸中で加 熱す る。
phenメ
prOpaneを
を トン中 s o d i u m e t h a n e t h i o反応
( い) 1 ‐l o d o b u t a n eアセ
l a t eさせ
と る。
t e n e をエ タ ノ ー ル 中 で加 熱 した 場 合 と、 エ タ ノ ー ル 中 s o d i u m
( 2 ) 1 ‐ c h i o r O _b2u‐
etho対
d e と 反応 させ た 場合 の 生 成物 をそれ ぞれ 書 き、それ らが 得 られ る理 由を
簡潔 に記 せ 。
2-methylpropaneの
(3)1口 chlorOadamantaneと2-chloro‐
求核 置換反応 に対 す る反応性
の 違 い を説 明 せ よ。
Ci
H3Cホ
H3C
1-chloroadamantane
CH3
2-chloro-2-methylpropane
7