2 0 1 2 / 0 5 / 0 8東 京 大 学 医 学 部 附 属 病 院 耳 鼻 咽 喉 科 抄 読 会 山 内 彰 人 Vocal Fold Paralysis: TreatmentofUnilateralVocal Fold Paralysis RubinAD ,SataloffRT.OtolaryngologyC/ i n i c a lNorthAmerica2007 , 4 0 :1117-1131 一側性声帯麻薄 ( U n i l a t e r a lVocalF o l dP a r a l y s i s :UVFP)の治療目的は誤憾の制御と音声改善である。 UVFPは明らかに反田神経を切断、切除した場合でなければ自然回復の可能性を考慮して、 9ヶ月から 1年は不可 逆的な手術治療を避けるべきとされている。その聞の初期治療として、経過観察、音声治療、一時的声帯内注入術 InjectionLaryngoplasty: 一般的に、声帯内注入術は主に萎縮に対して質量を補うための治療で、位置異常の矯正には効果は限定的とされ る。しかし、特に CaHA 、脂肪注入術においては固定位置の内転効果も報告されてきている。 声帯内注入術材料の内、アテロコラーゲン(局麻)、自家脂肪(全麻)は本邦で頻用されており、 CaHA( 全麻)、ヒア ル口ン酸(局麻)も一部の施設で使われている。 アテロコラーゲンは、低侵襲である半面、効果は限定的でしばしば反復治療を必要とする。自家脂肪は、比較的持 続力があり若干の内転効果もあるとされているが、全身麻酔を必要とする。自家脂肪には主として腹部皮下脂肪か ら採取する方法 (Umenoら)と、頬部脂肪体から採取する方法 (Tamuraら)がある。 が選択される。 UVFPの発症後に音声治療 ( V T )を行うことにより 64-68% の症例で満足する音声を獲得し得たという報告がある CaHAは長期的効果が最も望める注入材であるが、材料が高価で扱いに難がある。 一方で (H巴U巴 「 ら , 1998)、VTのみでは初期治療として不十分で、術後早期に一時的声帯内注入術を行うべきであ K a t h e r i n巴ら, 2 011)。 るとの立場がある ( VoiceTherapy(VT): 基本的に UVFPの全症例に対して適応がある。 VTI ま熟練した言語聴覚士 (SpeechT h e r a p i s t :ST)と連携して 行う。 VTの目的として、1.音声改善、 2 .患者の治療への協力、動機、理解を高める、 3 .不要な手術を回避する、 4 . 最適な術後音声を獲得し易くする、などが挙げられている。 VTは発症後できるだけ早期に開始し、 p l a t e a uに達しても十分な音声改善が得られなければ手術を検討すべき、 町田,.p 師同量国v e同可俗∞ p i c叫 即 0 1 1 e f t v o c副 c o r dp a r a 刷s .A .N e e d l ei n jeCt胞団'"出陣t ,耐お問t o f1 f le v o 信1 p r o : l e s so ft 厄 w剖∞'"時出 i o ni m m e 曲,"初出 r f i 越同e c t 町 P ' . 出;ds i d e .B .l e f t とされている。術後も新たな音声への最適化のため、やはり p l a t e a uに達するまで VTを続けるべきとされる。 従来から行われてきた声帯の過内転を誘導する手法(硬起性発声、 p ushinge x e r c i s eなど)は、近年過緊張発声 MedializationLaryngoplasty: を助長するという指摘から推奨されなくなっており、代わりに過緊張による代償の解消(頚部筋群のリラクゼーショ ン)、呼吸トレーニング(胸複筋の筋力増強、呼吸の意識化、呼吸コントロールの強化、腹式呼吸、有酸素運動)、喉 頭内筋の筋力や瞬発力強化、適切な p i t c hの指導、発声 e x e r c i s eなどを軽負荷で頻固に行う手法が推奨されて 甲状軟骨形成術 I型は質量の補正には適しており、位置の矯正にも若干効果があるとされる。充填剤として主には シリコンブロック、ゴアテックスが使われる。 いる。 VTI こ際しては、発声の仕組み、声帯麻薄の病態、声の衛生に関する l e c t u r e、音声治療の理屈などを含める と、より効果的とされている。 SurgicalTreatment: 声帯麻簿では、固定した位置と二次的な萎縮 による問題の 2つが生じるため、それらの程 度に応じた治療法を選択する必要がある。 主な治療法として、声帯内注入術 ( i n j e c t i o n ArytenoidAdduction: l a r y n g o p l a s t y )、喉頭枠組み手術 ( I a r y n g e a lframeworks u r g e r y )がある。 披裂軟骨内転術は位置の矯正に最も優れ、広範な高部声門間隙を有する症例、 l e v 巴l 差のある症例に対しては第 一選択となるが、質量の補正はできない。いくつか手法が提唱されており、 I s s h i k iらによる原法、 Maragos法 、 後者の代表例は甲状軟骨形成術 I型 ( t h y r o p l a s t ytype1 )、披裂軟骨肉転術 ( a r y t e n o i da d d u c t i o n )で、個別 に、ないしば組み合わせて行われる。 F e n e s t r a t i o n法などが提唱されている。 AAは 1週間強の入院を要 L、mmoげmajorc o m p l i c a t i o nを合わせると、:3.1-33%で合併症を認める (13・18%の報告が多い)。特に気道狭窄の r i s kが有名で、ぱらつきは多いが気道狭窄によりか 11%で気管切闘 を要したと報告されている ( 2-4.%が多い ) 0N i t oらは d r a i nの有無が気道狭窄に関連が強いと報告している。 OtherOptions: 最近、神経再吻合 ( r e i n n e r v a t i o n )、遺伝子治療 (genetherapy)が模索されている。 Reinnervation: 主な目的は、脱神経による筋萎縮の防止と、声帯の緊 張の維持である。頚神経ワナ、横隔神経、交感神経、 舌下神経、神経筋弁を用いた方法が提唱されている。 Evidence: 1巴v e l N)、TP1とAA Hirano(2012)によると、声帯麻薄の治療に関する論文はいずれもエビデンスベレルが低く ( +TP1を比較した 3本の論文において、両者に有意差は認めなかったという。 Crumpyらは頚神経ワナと反囲神経の吻合による手 術成績の報告を、 Tuckerらは頚神経ワナの分枝に前 頚筋の一部を付けた神経筋弁を麻痔した喉頭内筋 以下に、脂肪注入術 ( F I )、甲状軟骨形成術 I型(丁目)、披裂軟骨内転術 (AA)、神経再吻合 ( R I )に関する代表的 (LCA、TA)に移植し、喉頭枠組み手術単独例より、喉 頭枠組み+神経筋弁移植術例の方が術後の音声が な報告を示す。 良好であったと報告している。 F/u 治療法, N,注入量 MPT MFR Kimuraら(2008) 22mos Collagen,121,0.9ml 8.0→ 12.9 525→ 279 Um巴noら(2008) 3yrs F I,64,2.7ml 4.7→ 11 .9 365→ 187 TP1,AA,TP1+AA,62 3.8→ 8.9 450→ 224 AA,5 . 9 3 . 1→ 8 736 → 244 AA+TP1,10 4.1→ 11.0 575→ 194 AA+Reinnervation,6 →1 3.6 5.6 640→ 169 843→ 170 i くodamaら(2011) 1yr Katadaら(2011) unknown AA+TP1,14 4 2.4→ 13. Umezakiら(2011) 3mos TP1,207 4.5→ 13.2 Mo比ensenら(2009) 3mos FI/TP1,45/14, ー 8 . 1→ 12.6 366 → 236 AA+TP1,26 8.1→ 14.8 400 → 219 922→ 153 Tokashikiら(2012) 1yr AA+TP1,39 →1 9 . 1 2.8 Tuanら(2012) 1yr F I,25,0.5-2.0ml .2 5.9→ 11 F ig u l e2 .A田 町 長 岡 山c l ep 剖i t l ei f 却 ,I Y h i c hr 晶c h 吋tI1e w i n d O ' / l ¥ v 馳o u l l e n s i o ni nl i l es a町 ep a t i e凶器!日自即日 1 .C a r t i l a g ei s0 0 1 ¥ , . 1d r i l l e d0 凶 Hogikyanらは、ネコを用いた実験で、健側の TAと反 回神経を切断した側の TAを神経 g r a f tで i n t 巴r p o s i t i o nし、約半数で麻痩側にも神経経路が形成され、内転運動 が回復した例も中にはいたと報告している。 本邦では、近年、 Kumai、Yumotoらが神経筋弁手術を報告している。 GeneTherapy: 神経の生存と再生を促進する成長因子がいくつか同定されており、それらをコードする遺伝子を宿主に導入するこ とで、障害された反田神経の変性を妨ぎ、再生を促す効果が期待されている。 S h i o t a n iらは、反田神経を切断した rat(n=48)を甲状披裂筋 I こIGF ・1の遺伝子を n o n v i r a lvectorにより導 入した結果、神経の再生が増強し筋萎縮が軽減したと報告している。 b-FGF)の声帯内注入療法、自家脂肪注入術に成長因子 (b-FGF-Tamuraら 、 Houngshinら その他、成長因子 ( Complication: 声帯内脂肪注入術 l ま4日程度の入院を必要とし、 3%過剰注入、 1%1こ肉芽形成、喉頭浮腫を認めると報告されて いる (Sanderson, 2009.Tamura, 2011)。 TP1は通常 1週間弱の入院を要し、 minor/majorc o m p l i c a t i o nを合わせると、 3.7-18%で合併症を認め、 0・10%で気管切開を要した。 2008.HGF-Umenoら 、 2008)を併用する手法が試行されている。
© Copyright 2024 ExpyDoc