ドーピングと薬物規制に関する選手向けFEIガイド(HP訂正原稿).doc ドーピングと薬物規制に関する選手向けFEIガイド 【日馬連AD委員会注釈:このガイドは、FEIのホームページに公示された英文 ガ イドを翻訳したものです。国内外を問わず、FEI競技会に参加する選手または 監督 は、このガイドを参考に、競技馬の薬物規制に遺漏なくご対応ください。なお、このガ イドに登場する専門用語は暫定的に和訳したものです。日馬連では、現在、 このガイ ドの基本となる“FEI獣医規程第10版(2006年6月1日施行)”と“FEI・ウ マのAD規程第1版(2006年6月1日施行)”の翻訳刊行作業中 ですが、それら の翻訳作業の結果、このガイドに使用された専門用語の和訳が変更となる可能性もある ことをご承知おきください。】 ■禁止物質とは何か? 競技の際には、競技馬から、医薬品や薬物が検出されてはならない。それは、「薬物 の使用による不公正な影響を受けることなく、その馬本来の能力によって競技するべき である」とのFEIの基本思想に基づくものであると同時に、薬物によって馬の競技出 場への不適性や跛行、あるいは疾病を隠して、馬のアスリートとしての 能力を損なう ような不正行為を未然に防ぐ狙いがある。 「馬の禁止物質リスト」では、禁止物質を「ドーピング用物質」、「治療用 薬 物:クラスA」、「治療用薬物:クラスB」の3つに区分している。 「ドーピング用物質」とは、馬の競技能力に影響を与える不正な目的で使用 され た禁止物質や薬物を指す。「治療用薬物:クラスAまたはB」は、本質的に獣医学的治 療に使われる禁止物質を指す。それらの「ドーピング用物質」と「治療用 薬物:ク ラスAまたはB」に区分される禁止物質は、FEIウェブサイトにある「馬の禁止物質 リスト(Equine Prohibited List)」に掲載されている。 ■どのような薬物治療が認められるのか? FEI規程に準じた特定の薬物治療は認められる。現行では、水分補給液、抗生物質 (プロカイン・ペニシリンを除く)、レバミゾールを除く抗寄生虫薬(駆虫剤)が、こ の部類に含まれる。また、数種類の胃潰瘍治療薬あるいは予防薬(例:塩酸ラニチジ ン、シメチジン、オメプラゾール)の投与も可能である。アルトレノジスト (Regumate)の使用は、発情による行動上の問題を抱える牝馬には許可されている。競 技馬では、吸引用投与剤として認められるのは生理食塩水のみであることにご注意戴き たい。 ■競技期間中あるいはそれ以前に競技馬を治療することは認められるのか? 競技馬が薬物治療を必要としており、かつ近日中に競技に出場する予定がある場合 は、その馬の専属診療獣医師またはチーム獣医師と、治療の方針について慎重に話し合 う必要がある。薬物によって馬体からの排泄時間が異なる。数種類の薬物が同時に使用 された場合は、それらの薬物の検出可能期間(体内からの排泄時間)が往々にして予測 -1/6- ドーピングと薬物規制に関する選手向けFEIガイド(HP訂正原稿).doc 不可能である。前述した許可される薬物治療の場合を除き、すべての競技馬は、競技出 場の時点で「クリーン」でなければならない。 競技馬が競技会への輸送中あるいは競技出場の直前に治療を受けた場合、もしくは投 与した物質や薬物が馬の体内に残存している疑いがある場合は、競技会場に到着後、直 ちにFEI獣医師団へ報告し、競技馬の専属診療獣医師または当該馬が所属するチーム 獣医師が必要事項を記入して署名した所定の「FEI治療許可申請用紙」を用いて、競 技出場の許可を受けなければならない。(日馬連注:この治療許可申請用紙を用いた報 告を行っても、必ずしも競技出場が認められるとは限らないと理解しておくべきであろ う。) 競技会において、競技馬が獣医師による処置や治療を受けなければならない場合、当 該馬の専属診療獣医師/チーム獣医師は、薬物治療を行う前に、FEI獣医師団から許 可を得なければならない。所定の「FEI治療許可申請用紙」への記入は完璧を期し、 その上でFEIへ送付され、それらの情報は、その後の薬物検査結果の審議の際に活用 される。 ■「特定物質の任意検査(Elective Testing)」(日馬連注:英文直訳は「選択検査」) とは何か? 特定物質の任意検査(以下、「任意検査」)とは次のようなシステムである。 競技 馬の専属診療獣医師/チーム獣医師は、競技馬の尿中に特定の禁止物質が存在 するか 否かの検査をFEI検査所に任意に要請できる。この場合、当該馬に投与した物質や薬 物を明記しなければならない。任意検査は、一連の治療後に、投与した物質や薬物がど のくらいの期間、馬体から検出され得るかを推定する一助となる。任意 検査の結果は 非公式であり、馬管理者側の参考となるに過ぎない。このサービスを 利用するには先 ず注意書きを慎重に読み、当該馬の専属診療獣医師/チーム獣医師にFEIウェブサイ トから入手した申請書への必要事項記載を依頼する。 ■一般的薬物の検出可能期間についてどのような情報が入手できるのか? FEI指定の検査所では、スポーツ用馬の獣医学的治療に日常、一般的に使われてい る薬物や物質について、その投与物質が体内から検出されなくなるまでの期間(検出可 能期間または体内残留期間)に関するデータを収集している。検出可能期間が既に分 かっている物質、あるいは確立されつつある物質については、FEIウェブサイトの 「メディスン・ボックス」と呼ばれるリストで確認できる。 そこに公示された検出可能期間は、投薬中止時期と必ずしも同一ではないことを認識 しておくことが非常に大切である(日馬連注:競技に出場する月日から、公示された検 出可能期間を遡り、投薬を中止すればよいということではない)。検出可能 期間とは 薬物が馬の体内に残存しており、従って検査所で検出される可能性がある おおよその 期間であり、これはあくまでも選手や専属獣医師の治療指針を検討する ための参考と して提供されているに過ぎない。投薬中止時期は、当該馬の専属診療 獣医師/チーム -2/6- ドーピングと薬物規制に関する選手向けFEIガイド(HP訂正原稿).doc 獣医師が自らの判断によって決定しなければならず、一般的には、 使用する薬物の検 出可能期間に加えて、馬の体格や代謝能力の違い、競技出場への 適性、最近の健康状 態や疾病など、馬の個体差を考慮し、当該馬の専属診療獣医師が専門的判断と裁量に基 づき、検出可能期間にさらに安全日数を加算して投薬中止時期を割り出さなければなら ない。 検出可能時間が公示されているか否かは、その物質や薬物についての陽性所見の有効 性、あるいはFEI規程に準ずる薬物治療かアンチ・ドーピング違反かの判定に影響を 与えるものではない。 ■馬からはどのような検体が採取されるのか? 通常はFEI検査担当獣医委員の直接監視のもとで尿と血液が採取される。各検体は 検体Aと検体Bの2つに分けられる。場合によっては、肢巻き、皮毛、あるいは塗抹標 本なども検体として採取される場合がある。 検体はすべて慎重に採取され、ラベルをつけて梱包される。選手または選手の 代理 人は、その採取作業に立ち会って、検体採取記録用紙に署名することが求め られ る。封印して梱包された検体は、FEIの指定検査所へ送られる。 ■陽性結果が出た場合のその後の手続きは? 一般的にFEI検体全体の約2∼3%が陽性の検査結果となる。FEIは、陽性結果 の出た選手(馬管理責任者)が所属するNFへ、その旨を通知する。当該選手は、所属 のNFから通知を受け、これに対処するよう指示を受ける。 当該陽性ケースで検出された物質が「治療用薬物:クラスA」または「治療用 薬 物:クラスB」に該当する場合は、裁定委員会が設定した客観的判断基準に基づき、 FEIから馬の管理責任者へ行政的制裁措置(「ファースト・トラック手順」とも 呼 ばれる)が言い渡されることになるであろう。この判断基準に該当しないか、あるいは 「ドーピング用物質」に該当するすべての陽性所見は、通常の裁定手続き (「ファー スト・トラック」としての対象ではなく)に準じて処理される。 陽性報告を受けた選手は、B検体の分析を要求することができる。B検体の検査には 当該選手自身が立ち会うか代理人をたて、B検体の容器に何ら操作された形跡がなく識 別番号が検体採取時に作成された記録書類のものと一致するかを確認する権利がある。 B検体分析に要する経費は、その検査結果が陽性となった場合には選手が請求を受ける ことになる。 ■馬の管理責任者とは? 馬の「管理責任者」は通常、競技会期間中に当該馬に騎乗する選手、あるいは 馬車 の御者であるが、グルームや獣医師を含む他の支援要員と馬の所有者もまた付随的に 「管理責任者」と見なされる場合がある。軽乗競技では索手が付随的な「管理 -3/6- 責任 ドーピングと薬物規制に関する選手向けFEIガイド(HP訂正原稿).doc 者」である。 貸与馬の場合はFEI規程により馬の所有者が管理責任者と見なされるものの、だか らといって選手の責任を免責するものではない。従って貸与馬に騎乗する場合は、当該 馬に施された可能性のあるすべての処置と薬物治療について十分な情報を 得ておく必 要がある。 ■「絶対的責任」の原則とはなにか? FEI規程に基づき、馬体から採取した検体に禁止物質が検出された場合は、 如何 なる場合でも馬の管理責任者が絶対的な責任を負う。即ち、馬の管理責任者に よる意 図的行為であるか否かを問わず、また認識していたか否かに関わらず、あるいは管理責 任者の不注意かまたは過ちであったとしても、禁止物質を使用すれば違反 行為となる ことを意味する。従って馬の管理責任者は、どんな物質や薬物が使用禁止となっている かのみならず、不注意が招く違反行為について理解しておくことが非常に重要である。 ■厩舎警備については? 馬が休息できる環境を確保することとスチュワード業務の観点から、ほとんどの FEI競技では必要最小限度の厩舎警備が義務づけられているが、低いレベルの特定の 競技会では、FEIが必要とする警備の適用を差し控える場合がある(詳細に つい てはFEIブリテンとウェブサイトを参照)。しかし、厩舎警備のレベルに 係わら ず、選手が最終的な馬管理責任者である。即ち、競技馬が禁止物質陽性と なった場 合には、厩舎警備の不備を理由に、馬管理責任者として責任を免れることはできない。 ■具体的な制裁措置とは? 競技の時点で、競技馬の体内になんらかの禁止物質が存在していたことが判明 した 場合、当該人馬は自動的に当該競技会から失格となる。 「ドーピング用物質」が検出された場合は、FEI裁定委員会での本格的な聴聞会が 行われる前に、FEIが暫定的に当該馬とその管理責任者、あるいは当該管理責任者ま たは当該馬を出場停止処分とすることがある。 さらにアンチ・ドーピング規程違反に対する措置には幅があり、「ドーピング用物 質」についての初犯では警告処分、または2年以下の出場禁止処分、「治療用薬物:ク ラスA」についての初犯では警告処分、または1年以下の出場禁止処分が科されるが、 馬管理責任者には措置の軽減や撤回の根拠を立証する機会が与えられる。馬管理責任者 による釈明はFEI裁定委員会により検討される。15,000スイスフランまでの罰 金があたなに課せられる場合もある。 馬管理責任者には、スイスのローザンヌにあるスポーツ仲裁裁判所に上訴する 権利 がある。 -4/6- ドーピングと薬物規制に関する選手向けFEIガイド(HP訂正原稿).doc 警 告 「メディスン・ボックス」に提示した物質が必ずしも「許可された医薬品」であると勘 違いしないこと。「メディスン・ボックス」に提示した物質は、検出可能時間の情報が ある程度明らかになっているということが利点である。最も新しい関連情報を得るには FEIウェブサイトのVeterinary Section/Medication Controlにアクセスして常時、参照さ れたい。 禁止物質による飼料汚染の可能性に留意すること。この問題については飼料供給業者に よく確認するべきである。競技馬用の飼料は、禁止物質が混入していないことが証明さ れたものであるべきである。内容物が不明確な小売店での飼料、 あるいはよく知らな い小売業者からの飼料を購入することは避ける。漢方薬や飼料添加物についても同様で ある。 馬の尿中に排泄されたある種の物質や薬物が、敷料(特にワラ)をその馬が 食べる ことで再摂取される可能性を示す証拠もあることから、競技馬の馬房の 敷料が清潔で あり、他馬による汚染がないよう常に留意する必要がある。 ある馬が治療を受けた場合、その投与薬物が、隣接の馬房に収容されている競技馬に拡 散しないよう確実な措置をとること。イソクスプリン(ナビキュラー病や蹄葉炎に時折 使用される医薬品)は、このようなケースの汚染物質としてよく知られている。馬が同 じ馬房内で継続的な治療を受けた場合は、その馬房を完全に消毒するまで、ここに続け て別の競技馬を入厩させない。 自馬と貸与馬の別なく、それらの馬の診療記録を常に残すこと。専属診療獣医師/チー ム獣医師とグルームに、当該馬に行ったすべての治療内容、日付、時刻、投与物質名や 薬品名、使用量、投与経路(例:静脈注射)、獣医師名と資格を書面にしておくように 依頼する。 次の競技に向けて責任のない第三者に競技馬を「調整または預託(fix)」させてはなら ない。陽性のドーピング事例は取り消しがきかず、選手としての名声を重篤に損なうこ とになりかねない。 2006年6月 国際馬術連盟 -5/6- ドーピングと薬物規制に関する選手向けFEIガイド(HP訂正原稿).doc PAGE 6 PAGE 6 -6/6-
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