舞台創作総合実習 - 宮崎大学

舞台創作発表
(担当 教育文化学部 教授 地村俊政)
制作のプロセス
「舞台創作総合実習」は本年度で4回目の授業を迎えた。学生達には情報がよく行き渡るようにな
り、2年生頃からどんな作品を作ろうかと考え始めるようになってきた。なかには授業開始時にはス
トーリーがすでにできている学生もいた。そこで今年度も以下の授業方針を提示した。
1.早急にあらすじを固めて、台本作成にかかること。
2.台本が固まり次第、作曲に取りかかること。
3.夏休み期間は自主練習をしておき、立ち稽古には夏休み明けから入ること。
4.できれば年内に公演ができる体制で望むこと。
しかし、台本はすぐに決定をみるものと思っていたが、これが意外に難航してなかなか決まらず、
二転三転して「白雪姫」にちなんだ作品にしようということになり、音楽と美術の学生達がそれぞれ
案を提出して激しい主導権争いになった。それぞれが台本を完成させて一歩も譲らない膠着状態が続
いたが、その台本を学内のしかるべき教員複数に読んでもらってようやく決着がついた(台本事件)。
それが音楽の学生、松田百合の「鏡の秘密∼続・白雪姫開封∼」である。すさまじいまでの競争だっ
たのでしこりが残ることを一番心配したが、決着を見るとかえって協力体制が進行し始めた。これで
この授業の目的の一つである、コミュニケーション能力が格段にアップしたように思われた。
学生達の自発性に任せると、授業は出来上がった台本の不徹底な読み合わせに終始して、内容のな
い時間がそれからしばらく続いた。そして、以下の約束をして夏休みに入った。
1.台本は休み明けまでに暗記すること。
2.作曲は休み中に完成させ、キャストの連絡先に配布すること。
3.10月からの授業は立ち稽古になること。
しかし、この約束はみごとに裏切られ、学生達の頭の中は真っ白けのままで登校してき
た。また例年の悪夢が脳裏をよぎる。約束は約束だから責任は学生達にとってもらうしか
ない。秋も強力なリーダーシップを取る者も現れず、文句を言う者も現れず、時間は過ぎ
ていった。「見ざる、聞かざる、
言わざる」が「和」と取り違えた時
である。何回も雷を落したくなる
をじっと我慢して経緯を見守った
指導教員としては最も辛いときで
る。最悪の場合、公演を中止する
こともやむを得ないと真剣に考え
めた。
動きが出てきたのはようやく年
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瀬が押し迫った頃である。ようや
く音楽ができはじめてからである。
しかしすぐ冬休みに突入して学生の
大きな盛り上がりにはならなかった。
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それでも動きは少しずつ活発化し、爆発的な盛り上がりを見せたのは2月に入ってからである。そ
れまでため込んだエネルギーがいっぺんに吹き上がってきた。学生達の目の色は変わってきたし、的
確な判断と行動はようやくこの授業が大きな実りをもたらす終盤にに近づいたことを実感させる。テ
レビ局1社、新聞3社からの取材があり、大きな見出しで取り扱われ、集客に大きな影響力があった
と思われる。
本番一週間前の会場での練習の後「ようやく人に見せられる作品になってきた。これからは臆する
ことなくお客さんを集めなさい。」と学生達を励ました。
そして、本番当日。昨年の2倍、約600人の観客が訪れ、舞台は大過なく進行して観客に感動を
与えながら大好評のうちに幕は降りた。学生達は大きな達成感に包まれ、例年になく涙してカーテン
コールに応えていたようである。
以下が本年度のキャスト及びスタッフである。
<キャスト>
<スタッフ>
姫
蓑輪 優花
総監督
地村 俊政
王子
黒瀬 智代
脚本・演出
松田百合子
魔女
中村優香子
作曲
山内美紗子
王様
塚本 武弘
(DTM制作)
江田 雅哉
お妃様
森脇
舞台監督
城戸亜沙美
音の主
宮嵜 里絵
照明
大迫 美幸
朝重 美緒
音の精
坂口 加奈
大道具
池脇 伸悟
小嶋久美子
瞳
手蓑 麻美
平野 裕子
宮崎 里恵
西坂 友紀
小道具
池部 貴恵
谷口真見子
狼A
川上 喬司
狼B
池脇 伸悟
衣装
(ダンス)
坂下 輝充
メイク
城戸亜沙美
谷口真見子
関谷 和則
音響
井口 愛
室賀さと子
宮嵜 里絵
城戸亜沙美
広瀬 よう
中村優香子
Black 姫
山内美紗子
指揮
森の精A
小嶋久美子
ピアノ演奏 坂元 美穂
森の精B
江田 雅哉
会計
大迫 美幸
広報
塚本 武弘
書記
宮嵜 里恵
団内連絡
西坂 友希
本倉 敬之
下元佐知子
<エキストラ>
小人達
合 唱
朝日 亮介
坂田 茉奈美
広津 卓郎
中邨 美南
岩切 良子
安部 由美子
黒木 夏葉
中邨 朱里
三門 佳太
畑田 麻由美
勝江 幸代
佐田 真実
早崎 千枝
藤村 千秋
井上 奏子
斉藤 裕美
山下 留奈
目
福丸 香織
明代
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佐野 由季
瀬戸口 依子
中島 麻衣
森 智未
米岡 優里
米本 彩乃
フルート演奏
勝江 幸代
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活動の成果と今後の課題
<活動の成果>
1.地域への貢献
今回は清武町文化会館が場所の提供だけにとどまらず、地域への広報、マスコミへの情報提供等で
も大きな役割を担っていただき心より感謝している。報道関係の取材や広報が多かったのは学生の広
報活動との連携のたまものと理解している。それが観客の倍増につながったのである。地域の人々に
感動を与え、地域の文化に貢献できたのであれば望外の喜びである。アンケートの中に「劇団四季」
よりも感動したというが2、3あったが、ほめすぎとはいえ学生達の苦労に対する何よりの励ましで
ある。
2.学生達の人間的成長
例年個性の強い音楽と美術専攻の学生達だけあって例年自己主張が激しく、協働作業にあからさま
な反発を示す者もある。今年度の受講生は特に個性的な学年である。それが“台本事件”を境に人間
としてのコミュニケーションのあり方について多くを学んだように思われる。社会人としての自覚が
芽生えたと言っても良い。そしてそれが連帯感を生み、地域社会との交流によりさらに加速されたよ
うである。
3.宮崎大学の関心
今回は例年になく多くの宮崎大学の先生方のご臨席をいただいて感想やアドバイスを賜り、心より
感謝申し上げたい。特に住吉昭信学長には学長として初めての臨席の栄誉を賜ったばかりでなく、励
ましのお言葉までいただき恐縮の至りである。
4.マスコミの関心
今回は多くの新聞社やテレビ局に広報をいただき心よりお礼を申し上げたい。特に「宮崎ケーブル
テレビ」には2名の学生が生出演させていただいたし、「宮崎日日新聞」「読売新聞」「毎日新聞」
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には取材記事の掲載をしていただいた。願わくば本番に対するの忌憚のない評価記事が掲載されるこ
とを望みたい。
5.観客の評価
今回もアンケート調査を実施し、244名の回答があった。総体的には94.1%が良かったと評
価している。金銭的に最も苦しかった舞台装置に関しては89.5%の人が良かったと答えているの
で、学生達の工夫と頑張りに大きな拍手を送るべきだろう。さらにもう一つの不安材料であるキャス
トの演技に関しても94.2%の人たちが良かったと答えており、初めて舞台に立った学生がほとん
どだったので、これも大きな成果だったといえよう。(詳しくはⅢ資料 を参照)
<今後の課題>
地域貢献で最も大事なことは、長期的な展望と継続だと考える。文部科学省の「地域貢献特別支援
事業」の一つとしてこの2年間やってこられたのは有り難かったが、来年度からは経済的な支援が無
くなってしまうのだから事態は深刻である。潤沢な費用はかえって学生たちの創意工夫を堕落させる
が、一定の制作費は毎年必要である。せっかく築きあ上げられてきた地域との連携を何とか維持した
いというのが担当者の率直な熱望である。
宮崎大学と清武町文化会館を基地とした新しい文化の創造と発信が「舞台創作総合実習」の大きな
ねらいであり、今後「コンソーシアム宮崎」の発足を機に近隣大学との連携も深めて大きな「和」を
作り、豊かな地域造りと創造的な学生の育成に貢献できたらと考えている。
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