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住民参加まちづくりの実態と住民意識に関する研究
− 北中城村荻道・大城地区を事例として −
池田研究室 新垣 八重子
1.
背景及び目的
1.背景及び目的
まちづくりとは、その地域の特性を活かしながら
地域を生活の場として、より快適で魅力ある暮らし
造りを行うことである。その地域の暮らしの場・生
活の場造りには,個人・団体に関わらず、住民の自主
的・主体的な活動が重要になると考えられる。
そこで本研究では、県や村による様々な啓発事業
により住民のまちづくり活動が盛んになった北中城
村荻道・大城地区における①まちづくり活動の特徴
を明らかにし、②地区住民のまちづくりに対する意
識について明らかにすることを目的とする。
そこから問題・課題となっていることを探り、今後
の荻道・大城地区におけるまちづくりのあり方を考
察する。
2.
研究方法
2.研究方法
はじめに、まちづくりの経緯を資料からまとめ、ヒ
アリング、現地調査により特徴を把握する。次に、ア
ンケート調査より地区住民の、まちづくりに対する
意識や取り組みについて明らかにし、問題・課題を
挙げ考察を行う。
3.
まちづくりの経緯
3.まちづくりの経緯
荻道・大城地区でのまちづくりは 1980 年頃から、
婦人会を中心に『子供達の通学路に緑を増やしたい』
という思いから清掃活動や花の手入れなどの活動が
行われるようになった。
1991 年に北中城村が、荻道と大城地区周辺を歴史
的環境保全地区として位置づけた。両地区では、歴
史的文化の香り高い地域づくりを目標に、様々な事
業が導入された。
「古城周辺歴史的景観整備事業」で
は、まちづくりにおいて住民参加を図るため、協議
会を設置し、住民によるワークショップも開かれた。
1999 年に村と『古城周辺地区景観協定』を締結し、
表1. ま ち づ く り 経 緯
1980
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
荻
道
景観を意識した
活動が始まる
大
城
さらに荻道では 2000 年に「集落ビジョン」
、
「くらし
の憲章」を、大城では 2001 年に「大城地域づくり構
想」を策定した。
この様な経緯により、住民によるまちづくり活動
が盛んになった両地区は、活動団体が発足し、緑化
やまちづくり活動が評価され様々な賞を受賞した。
[表1]
4.
まちづくり活動の特徴
4.まちづくり活動の特徴
両地区は、ランの導入、花壇の整備、共同井戸等
の整備が行われた。整備が行われた場所を中心に、
花・木の手入れや清掃活動が、地区の婦人グループ
や大城の 50・60 代の男性で結成した「花咲爺会」を
中心に広がっている。また、道路沿いや公園の花壇
等には、地区住民が作ったシーサーや芸術大学の学
生から提供してもらった石の彫刻を展示するといっ
た工夫もされており、住民による主体的な活動が行
われている。
荻道では毎年、野菜・園芸・手工芸・文芸等の部
門に分かれ、住民の作品を出展する総合展示会を開
いる。また、大城ではかつては飲料水や生活用水とし
て利用していた共同井戸でコンサートを開催すると
いった取り組みもなされている。
さらに大城では、村と活動団体とを結ぶキーパー
ソンとなる人が存在し、その事により活動がさらに
盛んに行われている。
5.
住民意識調査
5.住民意識調査
(1)アンケート調査概要
まちづくりに対する意 表2.調査内容
調査期間
2002年12月7日∼12月11日
識や取り組みについて明
調査方法
直接配布・直接回収
らかにするため、荻道・ 調査対象者 北中城村荻道、大城地区住民
配布数
198件
大城地区住民に対し、ア 回収数(回収率)
158件(79.8%)
ンケート調査を行った。
[表2]
1999
2000
2001
2002
2003
2004
○第29回全沖縄美化コンクール優秀賞受賞(婦人会)
☆ガーデニング愛好会発足
□「くらしの憲章」「集落ビジョン」策定
○模範団体活動賞受賞(子供育成会)
・ガーデニング愛好会(改名)→仲良しグループ
○第28回全沖縄美化コンクール最優秀賞受賞(婦人会)
○第5回景観推進賞銀賞受賞(向上会)
☆花咲爺会発足 □「大城地域づくり構想」を提案、採択 ○模範団体活動賞受賞(子供育成会)
○ふるさとづくり振興奨励賞受賞 ○花の観光地づくり大賞・努力賞受賞(花咲爺会)
・第一回ムーンライトコンサート開催 ・中城間切歴史的環境ネットワーク構想・中城城跡公園計画策定
・古城周辺歴史的景観整備基本計画策定
村
の
事
業
・古城周辺歴史的景観整備実施計画
・観光地修景緑化事業
・古城周辺景観協定締結
・古城周辺歴史的景観整備事業
・中城城跡世界遺産登録
事県
業の
賞の受賞
主な活動団体発足
2005
地域づくり構想提案 ・地域農業振興総合指導事業導入
その他の主な出来事
・農山村快適環境創造活動促進事業(荻道)
(2)アンケート結果・分析
1)まちづくりに対する関心度 図2より『まちづくり』に対し「大変興味がある」
、
「興味がある」と答えた人を合わせると 8 割近くにも
なり、両地区でまちづくりに対する関心度が高いこ
とが分かる。
るまた、興味の持てる場所での活動と考えられる。
4)今後のまちづくりに対する意識
今後の活動するうえで希望することは、
「活動の範
囲を集落中心のみならず、地区全体に広げて欲しい」
が 33.0%、次いで「定期的な学習会を設けるなどし
て、さらに知識を深める場を設けて欲しい」と答え
る人が 17.8%と多く、今後の活動に対する意欲も高
いことが分かる[図7]。
[図2]『まちづくり』に対しする関心
2)まちづくりの取り組み
まちづくりの取り組みについては、個人・団体に
関わらず「活動した事がある」と答えた人は全体で
半数以上になった。さらに地区別で見ると、大城地
区でその割合は高くなっている(62.8%)
[図3]
。ま
た、まちづくりの活動を行っている人に対し、活動
の理由を聞いたところ、「住環境を綺麗にしたいた
め」と答えた人が半分を占めた[図4]。
[図3]活動の有無
[図4]参加理由
3)地区の魅力とまちづくり
「地区の一番の魅力は何ですか」に対し、屋敷林等
の歴史的な雰囲気に魅力を感じている人が多い
(3 1 . 0 %)。地区別で見ると屋敷林や生け垣が多く
残っている荻道地区ではその割合はさらに高くなっ
ている(44.3%)
[図5]。
また、
「どのような活動が『まちづくり』だと思い
ますか」という質問に対し、
「自然・文化財の保全」
が 23.1%と一番多くなっている[図6]。このことか
ら当地区でのまちづくりは、住民にとって関心のあ
[図5]地区の魅力
[図6]まちづくりのイメージ
[図7]今後の活動への要望
アンケートより地区住民のまちづくりに対する積
極性が高いことが分かる。しかし、活動が盛んな中
にも「活動はしたいが参加しにくい」
、「若い人の参
加も多くなって欲しい」
、「仕事や年齢に関係なく出
来ることがないか」等といった意見もあった。
6 . まとめ
様々な事業が導入され、活動が盛んになったこの
地区でのまちづくり活動の特徴として、①まちづく
りが住民の親しめる場所、関心のある場所、興味の
持てる場所で活動が行われていること、②まちづく
り活動の目標として地区でまちづくりの目標を定め
ていること、③村と地区とを結ぶキーパーソンが存
在がしていることが挙げられる。
また、住民の意識面として、①屋敷林や生垣や緑
が多く残されている事により、緑化に対する関心が
強い、②自然・文化財の保全に対するまちづくりの
関心が高い、③住環境を綺麗にしたいと思う人が多
い事があげられる。これらにより、住民の主体的な
活動が活発に行われていると考えられる。
以上のことにより、まちづくりでは「地区全体の
明確な目標があるか」
、「住民が関心の持てる場所で
あるか」
、「キーパーソンが存在するか」が重要だと
考えられる。
今後まちづくり活動を維持し、さらに発展させる
ためには、活動への参加のしづらさや参加する人に
若い人が少ないという問題を解決する必要がある。
専門家との関係の評価、事業終了後の追跡調査な
どが、今後の研究課題として挙げられる。
− 参考資料・文献 ー
1.古城周辺歴史的景観整備基本計画報告書 1995年 北中城村
2.古城周辺歴史的景観整備実施計画書 1998年 北中城村
3 . 古城周辺地区景観協定 1999 年 北中城村
4.農山漁村快適環境創造活動促進事業 みどりと花いっぱいやす
らぎの里荻道 2001年 沖縄県中部農業改良普及センター
5.花と緑に囲まれたふる里づくり∼行政との連携によって∼北中
城村大城区大城の地域づくり構想 北中城村大城区
6.北中城村における農村整備のあり方に関する研究∼住民合意成
過程における普及事業の事例より ∼ 桃原佐和
(琉球大学大学
院)2000 年