∼ 逞しいカラス、学習できないシロチドリ ∼ 5月、公園の生き物たちはいきいきと自分を主張し、 繁殖しはじめている。毎年干潟と汽水池の間にある中ノ島 でシロチドリが繁殖し、今年も3個の卵を生んだ。 そこは草が少なく砂礫や少し大きめの小石がある場所 で、周囲の色に溶け込みやすいのでシロチドリやコチドリ などが好む場所としてこの時季公園リピーターには注目 の場所である。しかし、ここ数年この地で繁殖するシロチ ドリがすんなりと雛を育てたということが無い。2010 抱卵中のシロチドリ 年にはシロチドリの卵がカラスに食べられ、2011年はコチドリの卵がいつの間にかなくなり、 昨年もシロチドリがいろいろ多難な産卵育児を強いられていた。そんなデンジャランスな場所に 今年もまた産卵したシロチドリ。心配するギャラリーたちの監視の中のんびりと抱卵していたが 5 月 12 日、今度はアオダイショウの餌食となるという事態になり、今年も雛の誕生を見ること が出来なかった。どうして、毎年悲劇の繰り返されるこの地に凝りもせず彼らは産卵するのか? 弱肉強食の自然界、学習できない「種」はこうして滅亡への途を辿るのだという見本を見ている ような気がするとは言い過ぎだろうか。それにしても目の前で自分の卵やヒナが食べられてもな す術を持たない彼らの心中を思うと胸が痛い。 反面、カラスの賢さ逞しさには驚かされる。カラスたちは、トリたちの営巣、産卵、抱卵、孵 化の過程をじっと観察し、卵や孵化したばかりのヒナを襲う。それはまるで私たち人間が農作物 や家畜を育ててその食べごろに収穫するのととてもよく似ているではないか。また山口湾では浜 辺で見つけたアサリを堤防まで咥えてきて空中から堤防のコンクリート上に落としその衝撃で貝 殻を砕いて中の身を食べるカラスもいる。先日公園の上空で繰り広げられたカラスとトビの領空 権争いを見た。カラスの縄張りを侵犯したと思えるトビを執拗に追いかけ、上昇気流に乗って逃 げるトビと共に高空に舞い上がりやがて2つの黒点となってしまった。トビはともかく、カラス があんなに上空高く飛ぶのは珍しい、なかなか利かん気な性格かも。人間の顔を覚え苛められる と必ず仕返しをする、人間の周辺でゴミをあさったり、時には人の持っているものを掠め取った は ん ぽ りする乱暴者と思われているカラスだが「カラスに反哺の孝あり」との諺もある。カラスの子は 育ててもらった恩をわすれず、老いた親の口にエサを運び親孝行をするというそうだ。カラスは 逞しく感情豊かな生活をしているようだ。とても人間に近い生き物ではないかと興味が尽きない。
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