防振技術の基礎

2014.2.18
岡山大学振動リカレント教育
【そのⅥ】
防振技術の基礎
講
師
岡山大学 客員教授
博士(工学)
小村 英智
三菱重工業(株) 広島研究所
構造・振動研究室 主席研究員
博士(工学)
主
長井 直之
催
岡山大学産学官融合センター
協賛
岡山県工業技術センター
岡山大学産学官融合センター研究協力会
防振技術の基礎
振動絶縁,衝撃絶縁,緩衝
・防振支持の目的
振動絶縁(Vibration isolation)
防振技術の基礎
衝撃絶縁(Shock isolation)
・緩衝
二つの物体の間に緩衝ゴム(一般にはばね)を介在させて,
衝突時の衝撃力のピークを低下(shock absorption by
spring)
いろいろな振動低減方法
地震対策
目次
交通・機械振動対策
風振動対策
 1自由度系の振動絶縁
 各種弾性支持要素
免震
耐震
防振
除振
制震
制振
 多自由度系の振動絶縁
 動吸振器
 能動制振
 固体伝搬音
 衝撃絶縁
足元から地震を
伝えにくくする
損傷しないよう 変形が大きい所
に頑丈に作る でエネルギを吸収
する
機械の振動を基
礎に伝えない,基
礎の振動を機械に
伝えない
構造物特有の
周期による揺れ
を装置で抑える
 緩衝
自動車での振動発生例
ばね上振動
エギゾーストパイプの曲げ振動
ボディの曲げおよびねじり振動
1. 1自由度系の振動絶縁
エンジン懸架系のばね上振動
ボディ内外板の幕振動
1
防振技術の基礎
防振とは
機械に発生する起振力が振動源となる場合
運動方程式
・機械自体から発生する振動
機械の振動が,基礎もしくは
構造物に伝わらないようにする.
mx  cx  kx  F0 sin t
(1.1)
この式の解を
x  A cos t  B sin  t
・基礎,地盤の振動
基礎・地盤の振動が機械もしく
は構造物に伝わらないようにす
る.(こちらを特に除振という)
(1.2)
とおき,(1.1)式に代入し,左右の係数を比較すると
A
  2m  k
F0
(  2 m  k )2  c 2 2
(1.3)
B
c
F0
(  2 m  k )2  c 2 2
(1.4)
振動の伝達経路で振動を
低減することを振動絶縁
除振
(免震)
支持方法を防振支持という
を得る.
基礎に伝わる力をFTとすると,
FT  cx  kx
基礎振動(地震)
防振構造の等価モデル化
機械や構造物などの上部構造を剛体と考え,防振材料がばねと
ダンパで表現されるものとすると,この系は線形1自由度振動系
として扱うことができる.
(1.5)
で表される.この式に(1.2)式を代入して整理すると,
FT  ( kA  cB ) cos t  (  c A  kB ) sin  t
(1.6)
従って,基礎に伝達される力の振幅|FT|は
| FT |  ( kA  c B ) 2  (  c A  kB ) 2
(1.7)
であり,(1.3),(1.4)式を代入すると,次式のように得られる.
| FT | 
c 2 2 m  k 2
F0
(  2 m  k ) 2  c 2 2
(1.8)
以上より,振動の伝達率τは次式のように得られる.

振動伝達率の定義
c 2 2 m  k 2
(  2 m  k ) 2  c 2 2
基礎に伝わる力の振幅
F
 T 
機械が発する力の振幅
F0
(1.9)
上式に
k  m n2
(1.10)
c  2 m  n
(1.11)
を代入して変形すると,力の伝達率τは
τ
FT

F0
1  2 /  n 
2
1   /     2 /  
2 2
n
2
(1.12)
n
特に減衰の非常に小さい場合には
τ
FT
1

F0 1   /  n 2
(1.13)
2
防振技術の基礎
路面を走行する自動車の振動
1自由度防振特性のまとめ
減衰率にかかわらず,  / n  2で  1 となる
振動絶縁効果は、系の固有振動数が小さいほど大きく
→ ばね定数が小さいほど力の伝達率を小さくできる.
絶縁器により基礎へ
の力(伝達力)が小
さくなる振動数域
振幅A,波長λの路面を自動車が一定速度Vで走行するとき
自動車に対して路面は下式の強制変位を与える
 2Vt 
a  A sin 

  
(1.19)
自動車の振幅は
k 2  c 2V /  
2
X A
機械振動の絶縁
力の伝達率
・防振支持の固有振動数を低くしすぎると,共振時の変位が大きくなる.
k  m2V /     c 2V /  
2 2
2
(1.20)
自動車の速度が下式に達したとき、路面と共振する

 k
V 
n 
(1.21)
2
2 m
【演習1】
質量m=80kgの回転機械を絶縁器を介して基礎に据え付ける。
・共振時の変位を抑えようと減衰作用を持たせると,防振効果が低減する.
(1) 機械の回転数1800rpm(30Hz)に同期した励振力F0が基礎に伝わるのを
10%以下にしたい。減衰が非常に小さく無視できるとすると、支持ばね定
数 k(N/m)をいくらにすればよいか。
(2) 機械の起動時、停止時に共振が生じる。共振時の伝達率を3とし、(1)の条
件を満たす支持ばね定数 k(N/m)と減衰係数 c(Ns/m)を求めよ。
基礎の振動が振動源となる場合
【演習2】
機械と基礎の相対変位は x-u
mx   c  x  u   k x  u 
(1.14)
(1.15)
mx  cx  kx  cu  ku
変位が u=Asinωt のとき
mx  cx  kx  Ak sin t  c cos t 
 A k 2  c  sin t    (1.16)
2
① 不釣合いによる振動の振幅
② 支持台に伝達する力の伝達率
機械の振幅は
X A
回転部分をもつ質量120kgの機械をばね定数760kN/mのばねで支
持する.
回転部分に不釣合いがあるため,3,600rpmの定格速度のとき360N
の力を生じる.
この振動系の減衰比をζ=0.18として,
③ 支持台に伝達する力
k  c 
2
2
(1.17)
k  m   c 
2 2
2
を求めよ.
機械と基礎の振幅比は
X

A
1  2 / n 
2
1   /     2 /  
2 2
n
2
n

(1.18)
力の伝達率と同じ式となる
3
防振技術の基礎
【演習3】
図のように,ばね定数kのばねで防振支持された質量mの機械があ
る.この基礎が x0=A sinωt(ω≠0)で周期的に振動するとき,この機
械の振幅がAに等しくなるkの値は次のどれか.ただし,ばねの質量
は無視できるものとする.
① k= sinωt
④ k< mω2/2
② k=mω2/2
⑤ k> mω2/2
③ k=2/(ω2m)
防振ゴム
防振ゴムの定義(JIS)
振動・衝撃の伝達防止または緩衝の目的で使用される加硫ゴム製
品
広く解釈すると,ゴム製のばね(rubber spring)
加硫(Charles Goodyear,Nathniel Haywardほかが発見)
ゴムの木から採取された乳液(latex)に適当な電解液を加え,凝固さ
せると生ゴムができ,さらに硫黄を加える(加硫)と弾性が増す
防振ゴムの工業的利用
【演習4】
防振ゴムの工業利用のきっかけ
防振支持することによる振動絶縁を行った場合,下図のように減衰
をつけると防振効果が低下する.この理由を述べよ.
1930ころ?金属とゴムを十分の強度と信頼性をもって接着に成功
日本では軍事上の目的で技術導入
1935:航空機計器盤用として製造開始
1937:航空機エンジンを機体に取り付ける筒型防振ゴム量産開始
1943:海防艦のディーゼル発電機,1945:ディーゼル主機
戦後は平和産業利用
1946:トラック,バスの各部
1951:鉄道車両
1955:乗用車
防振ゴムの特徴
 3方向のばね定数:形状,寸法を適当に選ぶことで希望の値にで
きる.金属ばねは通常1方向のみ
2. 各種弾性支持要素
 減衰:金属ばねに対し1,000倍以上の内部摩擦特性を持つ.共振
応答,衝撃による自由振動早期停止などに有効
 安価:量産による大幅な低減単価
 耐高温性・耐低温性:通常上限70℃.ゴムポリマーの種類によっ
ては改善も見込めるが,接着剤にも注意が必要.低温側は-55℃
程度だが,実用上はあまり問題にならない
 耐油性:油に浸漬すると膨潤して軟化.耐油性ゴムとしてNBR,ウ
レタンゴムもある
 固有振動数は概ね10Hz前後
4
防振技術の基礎
防振ゴムの復元力特性
空気ばね要素
空気ばねの特徴
防振ゴムの動的ばね定数
・空気ばねは空気の圧縮弾性を利用したもので、自動車、鉄道
車両、半導体生産設備の微振動対策など幅広く利用
・支持した振動系の固有振動数は1-5Hzと低い振動数
・空気の流路に絞りを設けることにより,減衰付加
損失係数: 
c
k
荷重
k *  k 1  j 
上面板
ゴムベローズ
外筒
復元力特性には,
振動中心
平均荷重
中間リング
・振幅依存性
・振動数依存性
平均ひずみ
がある.
ひずみ
内筒
下面板
ベローズ型
各種材料の損失係数
ダイヤフラム
ダイヤフラム型
コイルばね要素
コイルばねの特徴
100
高分子材料による
制振鋼板(バイブレス,ダンプレー等)
損失率 η
10‐1
木材
コルク
スレート板
10‐2
コンクリート
レンガ
10‐3
鋼板にゴム,アスファルト等を塗布
・支持した振動系の固有振動数は数Hz以上
・減衰はないので、ダンパを並列使用する場合も多い
・線形性が良い、安価で構造が簡単、常用温度が広い
・耐久性が良く、劣化が少ない
Mn‐Cu系合金
フェライト系ステンレス鋼
鋳鉄
普通鋼板
10‐4
アルミニウム板
http://www.komatsubane.com/
防振ゴムの例
板ばね要素
重ね板ばねの特徴
・長さの異なる板ばねを重ねたもので,古くから鉄道車両や
トラックの懸架ばねとして使用
・板の間で摩擦が生じ、摩擦減衰特性を持つ
・荷重作用方向以外の変位に対しては剛
f
ブリジストン・ホームページより
5
防振技術の基礎
二段防振支持系の振動伝達率
3. 多自由度系の振動絶縁
二段防振簡略モデル
2重防振
一段防振支持系の振動伝達率は
τ
運動方程式
(3.1)
m1 x1  c1  x1  x 2   k1  x1  x2   F0
m2 x2  c1  x 2  x1   k1  x 2  x1   c 2  x 2  x0   k 2  x2  x0   0 (3.2)
0   x1   c1
 
m2   x2    c1
 c1   x1   k1
 
c1  c2   x 2    k1
  m1 2  jc1  k1

 jc1  k1

τ
F0
 k1   x1  

 

k1  k 2   x 2  c2 x0  k 2 x0 
解を x1  X 1e jt , x2  X 2 e jt , F0  F0 e jt , x0  X 0 e jt とすると
FT

F0
1  2 /  n 
2
1   /     2 /  
2 2
n
2
(3.8)
n
ω>>ω0,ζ=0とすると
行列式表示すると
 m1
0

二段防振の振動伝達率
 02
2
(3.9)
(3.3)
F0
 X 1  
 jc1  k1


   
 m2 2  j (c1  c2 )  k1  k 2   X 2  ( jc 2  k 2 ) X 0 
(3.4)
剛体弾性支持系
振動伝達率は
1
2
 jc1  k1  jc2  k 2 
2
 jc1  k1  m2 2  jc2  k 2  j c1  k1   j c1  k1 


(3.5)
c1 = c2 = 0のとき
 2 1 
 1 4   2 1 2  m1 m2  1 1 2   2 1 2
2
τ
ℓy
 m 
G
(3.6)
ℓx
ℓx
z
12  k1 m1 ,  22  k 2 m2
ω>>ω1, ω>> ω2とすると
4
θ
(3.7)
一段防振の場合には,振動伝達率がω2に反比例するのに対し,
二段防振ではω4に反比例する.
ℓz
   2
τ 1 2
x
ℓy
τ
y
• 剛体とみなされる物体がばねに
よって弾性支持された場合,最大6
自由度を持つ.
x,y,z方向の並進運動
x,y,z軸まわりの回転運動
• ばねの位置,弾性主軸の方向,力
の入力およびその方向などによっ
て,振動の仕方は異なる.
x
G
kx
kz
図に示すシステムで,
・重心にz方向の力が作用する場合は1自由度と
同じ
・基礎が水平に振動したり,物体にx方向の力が
作用すると,並進と回転の双方の運動が発生して
2自由度系となる.
6
防振技術の基礎
動吸振器の概要と特徴
運動方程式
mx  4 k x  x   z   0
(3.10)
回転 I y  4 k z  x  4 k x  z x  0
(3.11)
並進
2
動吸振器(dynamic vibration absorber):振動している物体(主振動系)
に,付加的な振動系(副振動系)を取り付け,相互作用させることによって,主振
動系の振動を抑える装置.建築土木分野ではTMDと呼ぶことが多い.
行列式表示すると
m
0

0   x  4 k x
 
I y    4 z k x
4 z k x   x 
 0
4 2x k z   
1909 Frahm:非減衰型あるいは外力同調型動吸振器.
バリカンへの適用例紹介.(1934 Den Hartog のMechanical Vibration)
(3.12)
1928 Ormondroyd & Den Hartog:減衰型動吸振器
解を, x  X 0 cos  t ,    0 cos  t とすると
  m 2  4 k x

 4 z k x
 X 0 
4 z k x
   0
 I y 2  4 2x k z    0 
連成と非連成
単独の固有振動数
4k
並進  x2  x
m
4 k z  2x
2
回転  
Iy
が一致するとすると,
k x / k z  y /  x   1
このように,ある条件の時のみ
双方の固有振動数が単独で決
定される(非連成という)が,一
般には連成が発生する.
(3.13)
動吸振器の概要と特徴
非減衰型:副振動系の固有振動数を外力の振動数に一致させることによって,
動吸振器のばねの復元力と外力を釣り合わせる.これによって主振動系の応答
は完全にゼロになる.調和的定常振動にしか効果がない.
減衰型:副振動系が主振動系と共振するように調整する.外力ではなく主振動
系に同調させるので,広い周波数範囲で効果があり,自由振動も抑制される.
減衰は小さすぎても大きすぎても効果がなく最適値が存在する.この最適化は
定点理論に基づくものが歴史が古い.(調整方法については後述する.)
1932 Hahnkamm:定点理論研究開始
1946 Block:定点理論完成.Den Hartogの式として認知されるが,近似解法
西原:厳密解導出.上記近似解は極めて厳密解に近く,実用上は定点理論で十
分
逆に,うまく形状を設定すると非連
成となり,防振の見通しが良くなる.
定点理論
主振動系の応答を青線とする.
任意の副振動系を付加した場合2つの共振ピークが現れ,その交点をP,Qとする.
このP,Q点は減衰をどのように変化させても変わらない.このP,Q点を定点と呼ぶ.
うまくばね定数と減衰定数を選ぶと, P点, Q点を通る2つの共振ピークを低く抑えられ,
広い範囲にわたって低振動が達成される.
4. 動吸振器
7
防振技術の基礎
最適同調
ω1=ω2とするとP点が高くなり,ω2が小さいと逆にQ点が高くなる.
適当なばね定数を選ぶと,このように定点P,Qの高さは等しくな
る.それが最適ばね定数である.
動吸振器の設計
・主振動系の絶対変位振幅許容値:a1lim
・主振動系と動吸振器系との相対振幅許容値:a12lim
・主振動系質量:m1
・主振動系ばね定数:k1
・外力振幅: F0 (相当静的最大変位ast = Pm /k1 )
a1 a1lim
a
a

, 12  12 lim
ast
ast
ast
ast
を満たすよう の範囲を決定
m2 = μm1よりm2を決定
μ-fの関係よりfを決定
2 2
a1
a st
f
a12
a st
k2 = f2μk1よりk2を決定
μ-2ζ2の関係よりζ2を決定
c 2  2 2 
最適チューニング
適当な減衰比を選ぶと,定点P,Qで共振曲線は極大となり,かなり広い範囲に
わたって低振動化が達成される.
このような副振動系を動吸振器とよび,最適なばね定数および減衰定数を選ぶ
ことをチューニングという.
最適チューニング(詳細)
m 2 k 2 により
c 2を決定
スロッシングダンパの例
エンジンのトルク変動
1気筒あたりのトルク変動
1.PQ 点の高さが等しい
2.PQ点で共振曲線が極大になる
条件1は副振動系のばね定数を調整することで容易に実現可能
条件2を満たすような減衰は存在しない.従い,PQ点それぞれで極大になる減衰を求め
ることになるが,それは以下のとおり.
 a2 
 
3
81    

 
2   
ma
m
これら両者による応答曲線の違いはわずかであり,ど
ちらを採用しても大差ない.実用上はこれらの平均とし
て以下を採用する.
a 
4気筒4サイクルエンジンの
トルク変動
∑
6気筒の場合
3
81   
8
防振技術の基礎
インバータモータのトルク変動
直流をチョッピングすることで任意の正弦波電流を作っているが,厳密な正
弦波からのずれがひずみとなってトルク脈動となる
動吸振器のバリエーション
フードダンパ(Houde damper):動吸振器のばねを取り去ったもの.
ランチェスタダンパ:粘性減衰要素の代わりに摩擦減衰要素を用
いたもの
インパクトダンパ:鋼球などの質量要素をストローク制限されたガイ
ドで保持したもの
遠心振り子式動吸振器
動吸振器の例
エンジンなどのクランクシャフトのねじり振動を抑制するために用いられる.
遠心力によるばね効果が回転数の2乗に比例することから,この振り子の固有
振動数は回転速度に比例した  R r となる.
R r の値を外力の振動数と回転速度の比に帆と等しくなるよう選べば,すべ
ての回転速度に対して
一般的なねじり動吸振器
エンジンなどのクランクシャフトのねじり振動を抑制するために用いられる.
倒立振り子式TMD(電波塔・展望塔他)
頂部TMD室
620m,625m
タワー概要
デジタル放用ア
ンテナ(ゲイン塔)
第2展望台450m
仕
様
第1展望台350m
名 称 :東京スカイツリー
高 さ
:634m
納入年月 :2012年2月
方 式 :倒立振り子式TMD
設置基数 :2基
振動体重量:40ton/基(620m)
25ton/基(625m)
ウェイト
設置目的
ウェイトフレーム
押引ばね
防舷材
強風によるゲイン塔の風揺れ
を抑制(電波塔の機能維持)
優位技術
ユニバーサルジョイント オイルダンパ
豊富な実績に基づく信頼性
コンパクト設計
倒立振り子式TMD概要
9
防振技術の基礎
動吸振器の例
動吸振器の例
周期調整用コイルばね
オイルダンパ
制震装置概要
おもり(700kg程度)をレールで支持し地震
の揺れに応じて水平にスライドさせる.
コイルばねで復元力をもたせ,オイルダンパ
で地震のエネルギを吸収する.
摩擦力が小さく,作動性が良好.
フレーム
レール
実験的検証
おもり(約700kg)
制震装置の効果を当社振動実験により実証済み.
また,某ゼネコン様にても,東北地方大西洋地震の観測波形を入力した振動
実験により効果を実証済み.
振り子式TMD(鉄塔・煙突)
TMD設置位置
(7G繋ぎ梁下部)
煙突概要
名 称 :碧南火力発電所煙突
ユニバーサルジョイント
高 さ
:200m
納入年月 :1990年4月
仕
方 式 :振り子式TMD
設置基数 :1基
振動体重量
:61ton
様
設置目的
・ 揺れにくい
・ 揺れが早くおさまる
強風による揺れを抑制
構造物の疲労耐力の向上
減衰比=4.2% [曲げ1次]
非制振
40
錘
振り子式TMD概要
減衰比=0.6% [曲げ1次]
80
5. 能動制振
ばね
オイルダンパ
40
制 振
0
10
20
30
40
50
60
70
-40
80
(gal)
(gal)
20
0
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
-20
-40
-80
自由減衰 [ 非制振 ]
自由減衰 [ 制振 ]
現地性能試験結果
制振装置
立体自動倉庫用MD
対策方向:短辺方向
開発経緯
既存立体自動倉庫は、縦長かつ自動搬
送設備毎に分離した架構であるため,
揺れ易い.
頂部に制震装置(MD)を設置することに
より,地震による揺れを抑制し,荷崩れ
防止対策を可能とする.
特
構造物特有の周期による揺れを、装置で抑える
制震装置(MD)
(マス・ダンパ)
徴
◆荷崩れし易い短辺方向の最頂部棚,
また,長辺方向にも設置可能
◆既存の棚に後施工が可能
◆地震時の揺れの加速度を約40%低減
受動的装置 TMD : Tuned Mass Damper
・ 自らの駆動装置をもたない
・ 建物の揺れにより自然に作動
能動的装置 AMD : Active Mass Damper
HMD : TMDをベースにActive化したもの
Hybrid Mass Damper
・ 自らの駆動装置をもつ
・ 自ら大きく揺れることで建物の揺れを更に低減させる
10
防振技術の基礎
受動型と能動型制振装置
アクティブダンパ設計時の注意点
● 制御を行うというのは,機械側からみればどういうことか?
受動的装置 TMD :構造物との共振を利用
・センサ情報をもとに,アクチュエータで機械に力を作用させる.
振動系に作用する力
能動的装置 AMD : 最適な制御則による効果
的な補助質量の駆動
受動的装置が不得手とする以下のケースに対応
・ 地震などのランダム外力
・ 構造物の固有振動数変化
能動型制振装置の構成
固定面を用いる場合
補助質量を用いる場合
支持構造物を用いる場合
慣性力
減衰力
復元力
機械要素では
質量
ダンパ
ばね
制御では
振動情報と位相により決定される
機械に力(機械の状態量に比例する力)を作用させるという点では
機械要素と同じ
すなわち機械を制御するということは,質量,ダンパ,ばねの機械要
素が追加されたのと同じである.
● その効果は?
機械要素と同じということは,もともとの機械の動特性(固有振動数,
減衰比など)を変えうるということである.
たとえば,
機械の振動変位に比例した力を作用させるとばねが付加されたのと同じ
機械の速度に比例した力を作用させるとダンパが付加されたのと同じ
比例係数を変えることでその効果の程度は調整可
●制御力の特性として注意すべきこと
制振設計が簡単
静剛性の改善も可能
応用面が限定される
補助質量を含む制振設
計が必要
減衰のみ改善可能
応用面が広い
K,M:制振対象の質量とばね定数
A:アクチュエータ Co:コントローラ
M:補助質量
S:支持構造物
支持構造物の動特性を
含む制振設計が必要
静剛性の改善も可能
応用面が限定される
P:振動検出器
一番注意すべきは、制御回路(センサ、駆動回路、アクチュエータ)の
位相特性である.
制御力は振動数によりその性質が変わってくる(望まなくとも).位相
特性を変えないような制御特性は実現できない.
機械系の力には一般的に振動数特性はない.
制御力の作用
フィードバック制御
構造物の振動を検知し,最適な制御則に
より制御入力に反映
u
+
-
A(s)
F
+-
+
+
x
1/M
1/s
x
c
1/s
k
x
F(s)
Mx  cx  kx  cc x  kc x
Mx  c  cc x  k  kc x  0
11
防振技術の基礎
根配置と安定性
Hybrid動吸振器の例
建物概要
仕
様
名 称 :上海環球金融中心(中国)
高 さ
:492m
設置目的
納入年月 :2008年7月
風揺れを低減し,居住性を向上
方 式 :3段振り子式
地震の後揺れを低減
設置基数 :2基
振動体重量:150t/基(392m)
(HMD総重量は約250t/基)
優位技術
動的不安定
豊富な納入実績
低騒音,省エネルギ
現地での周期調整が容易
静的不安定
Hybrid動吸振器の例
6. 固体伝搬音
Hybrid動吸振器の例
個体伝搬音とは
船舶,自動車などの構造物の騒音では,エンジンや発電機などか
ら振動が周辺構造系内を伝搬拡散し,受音室の壁や床の表面か
ら音響エネルギとして放射される音
1次個体音
エンジン,ポンプなどの機械振動およ
び人の足音などの衝撃による振動が,
床,壁の構造部材や配管を伝播して,
ある室の周壁が振動し放射する音
2次個体音
音源室内の騒音によって音源室の周
壁が励振され,この振動が一時個体
音と同じ様式で伝播し,ある室の周壁
が振動して放射される音
12
防振技術の基礎
個体伝搬音対策の種類
個体伝搬音の伝搬経路対策
一般的な対策法として以下の6種があげられる.
(1)発生源の励振力の低減
(2)構造物への伝達力の低減(防振)
(3)振動エネルギの吸収(制振)
(4)伝搬経路での個体音の遮断(反射,制振)
(5)反射面の振動および放射効率の低減
(6)固体と固体の衝突の回避
(7)発生騒音の大きな音源室の吸音処理
固体音伝搬経路と対策手段
対策部位
固体音の低減には,起振力の低減が最も望ましいが,機器の改
良は,機器本来の性能に影響するため困難な場合が多い.
対策の手法
①起振源
起振力低減・個体音接触回避
②機器本体構造
構造変更・パネル部制振
③機器支持台
構造変更・機器の防振支持
④周辺構造
構造変更(形状)・制振処理
⑤発音部(振動→音響)
パネルの防振支持・制振処理
⑥加振部(音響→振動)
構造変更(剛性・質量)・遮音
⑦音源室,受音室
壁面吸音処理
波動および無限自由度弾性体効果
個体音対策法のエネルギ形態からの分類
今までは,防振支持弾性体を質量のない有限自由度の扱い.
実際には無限自由度の弾性体(特に高周波数域で重要)
伝達エネルギ低減法
エネル
ギ形態
振動
音響
対策手法
反射
遮断
防振
制振
構造要素の変更
防振要素の挿入
構造要素に減衰要素を付加
○
○
遮音
吸音
発音源を封鎖
受音側壁に吸音材貼付
○
個体音の伝搬経路
対策部位
吸収
防振ゴム中に生じる振動変位分布
  Ae  jkx  Be jkx e jt
F0 e jt
(6.1)
境界条件
○
○
 0 @ x

m  ES
 F0 e jt @ x  0
x
m
E , ,S
境界条件を整理すると
Ae
 m
 jk
2

 Be jk  0
 

 jkES A   m 2  jkES B  F0
(6.2)
行列にまとめると

e  jk

2
 m  jkES
  A  0 

   
m  jkES   B   F0 
e jk
2
(6.3)
①起振源
②機器本体構造
④周辺構造
e jk
0
③機器支持台
A
m  jkES
F e jk
 0
D
D
 F0
2
⑤発音部(振動→音響)
e  jk
⑥加振部(音響→振動)
⑦音源室,受音室
0
m  jkES
B
D
 F0
2
ここで

(6.4)



 F0 e  jk
D
(6.5)

D  m  2  jkES e  jk  m 2  jkES e jk
(6.6)
13
防振技術の基礎
防振ゴムにおける弾性波の反射と干渉
振動伝達率は

1
x x  

F0 e jt
cos k    k sin k
ES

k
 

C
, C
E

m
m

mG   S
振動数が低い場合,すなわちkℓ≪1のとき振動伝達率は
 
1

2
1   k 
 k 2 
1

1  
 n



2
m  2  2 m 2  m 2  2


 2
S C 2
SE
K
n
振動伝達率の式から,高周波数域においてsinkℓ=0の場合(*),
すなわち
fr 
n
2
E

,
n  1,2 ,3
の振動数で伝達率が増大し,有限自由度のばねと考えること
ができない.
8. 衝撃絶縁
このように,高振動数域で伝達率が増大し,振動遮断効果が
低下する現象を波動効果という.
(*):k=ω/cであり,高周波域ではkが大きくなるため,sinkℓ=0
の時にτは極大となる.
防振ゴムの実態を考慮した防振特性
m/ms=20
m/ms=100
1自由度振動系に短時間の矩形パルス力が作用する場合を考える.
運動方程式は
mx  cx  kx  F0
Δtは微小であるため,作用中cxとkxを除いて考える.
F
x  0
mx  F0
m
初期条件として,t=0において,x  0, x  0
として,この方程式を解く.定式を2回積分し, 0 Δt
t=Δtとおくと,Δt後の解が得られる.
F
2
F
x  0 t 
x  0 t
2m
m
Fo
m/ms=10
衝撃パルス波に対する振動応答
ms=0
ω/ωn
ms=0
ω/ωn
ms=0
ω/ωn
ms :防振ゴムの質量
m :防振対象質量
x(t )
これからわかるように,変位は速度に比
べて二次の微小項となっており,変位は
無視してもよい.
14
防振技術の基礎
衝撃パルス波に対する変位応答波形
衝撃作用後のΔt時間後は自由振動となり,その時の応答は

x  e 0t C cos 1   2 0t  D sin 1   2 0t

 Ae 0t sin 1   2 0t  
0 


方形波
k
c
c

,  
m
ccr 2 mk
となり,後は初期条件によって,係数C,Dを決定することになる.
衝撃応答とは,一般にΔt 後の応答のことを言い, Δt 後から
t=0とする.初期条件は先に示したように,
F
x0   0, x 0  v0  0 t
m
として与える.


バースト
正弦波
三角波
等力積を持つパルス入力変位応答
後者の式を用い,1回微分すると速度が得られる.
x  A  0 e 0t sin 1   2 0t  
正弦
半波

 A 1   2 0 e  0t cos 1   2 0t  

次に初期条件として,
x0   0, x 0   v0  
を与えると
F0
t
m
x0   sin    0
 0
となり,さらに
x 0   A0 sin    A 1   2 0 cos   
A 1   2 0 
A
F0 t
F0 t
m
1   2 0 m
F0 t
1   0 m
2
衝撃と緩衝
F0 t
m
として係数が得られる.この係数を先の変位に代入すると,以下の
衝撃応答が得られる.
x
各衝撃波形の面積が同じ(力積が同じ)になるよう,衝撃力ピークを調整
e 0t sin 1   2 0t
物体の運動速度の急激な変化 → 衝撃力 (衝撃作用)
衝撃力の作用 → 物体の速度が急変
衝撃力の作用時間が,問題とする
振動系の固有振動数と比べて十分
小さい場合が対象
t
mv  I   Pdt
0
Δv:速度変化
m : 物体の質量
P :衝撃力
Δt :衝撃力の作用時間
衝突物体と壁の間にばね定数kの
ばねを入れると,物体の速度がv0
から0になるまでには,m~kの固有
振動周期の1/4の時間がかかるの
で,衝撃力は緩和される.
固体壁への衝突による衝撃と緩衝
15
防振技術の基礎
振動加速度は
x1  v01 sin 1t
ばねのたわみ
x
x0
n
x2 
sin n t


v02 
 sin 2t  2 sin 1t 
1  22 12 
1

最大加速度は
作用力
x1max  v01
v02
x2 max 
1  22 12
P   mx  kx  mv0n sin nt
・作用する力はm~k系の固有振動数に比例する.
・ばね定数kを小さくするほど衝撃力は小さくなる.
衝撃作用をやわらげることを緩衝,そのための装置を
緩衝装置という.
m2に生じる加速度を,緩衝材のない場合の最大加速度の比で表し
たものを衝撃伝達率と定義する.
x2 max
1
s 

x2 max k1  | 1  2 1 |
衝撃伝達率
緩衝装置の代表的な例
衝突の際に発生する衝撃作用を緩和
• 鉄道車両の連結器の緩衝装置
• エレベータの緩衝器
• 飛行機の脚の降着装置(オレオ緩衝装置)
• 物品輸送時の緩衝材による梱包
衝撃力が作用する物体からの衝撃力伝達を緩和
• 大砲の駐退機
• 鍛造機械の弾性支持
衝撃伝達率のまとめ
衝撃伝達率の解析
電気部品m2が緩衝材k2で梱包箱m1に梱包された場合を考える.
梱包箱が突然速度v0で動いた場合,m2の運動はm1には影響しな
いとすると,運動方程式
m1 x1  k1  x1  x0   0
○緩衝による衝撃伝達率低減効果を得るには,緩衝支持対象の固
有振動数を衝撃を受ける本体の固有振動数の半分以下にする必
要がある.
○その他の特性は,定常振動時の振動伝達率特性に準ずる.
m2 x2  k 2  x2  x1   0
12  k1 m1 , 22  k 2 m2
初期条件t=0で,x0  0 として解くと,

 1
x1  v0  t  sin 1t 

 v1
v0
v0
x2  v0t 
sin 2t 
sin 1t
2 1  22 12
1 1  12 22




16
防振技術の基礎
午前中はこれで終わりです.
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