末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン - 日本循環器学会

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005 − 2008 年度合同研究班報告)
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
Guidelines for management of peripheral arterial occlusive diseases(JCS 2009)
合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本血管外科学会,日本血管内治療学会,日本血栓止血学会,
日本心臓血管外科学会,日本心臓病学会,日本糖尿病学会,日本脈管学会,日本老年医学会
班長
重
松 宏 東京医科大学外科学第二講座(血管外科)
班員
池
田
康
夫 早稲田大学理工学術院先進理工学部
石
丸 新 戸田中央総合病院血管内治療センター
岩
井
武
尚 つくば血管センター
大
内
尉
義 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座
太
田 敬 愛知医科大学医学研究科外科学
門
脇 孝 東京大学大学院医学系研究科糖尿病
生命医科学科
・ 代謝内科
栗
林
幸
夫 慶應義塾大学放射線診断科
小
室
一
成 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学
古
森
公
浩 名古屋大学大学院医学系研究科血管外科
笹
嶋
唯
博 旭川医科大学第一外科
島
田
和
幸 自治医科大学循環器内科
協力員 新
本
春
夫 榊原記念病院末梢血管外科
市
来
正
隆 JR 仙台病院血管外科
井
上
芳
徳 東京医科歯科大学血管外科
協力員 北
川 剛 東京通信病院外科
佐
藤 成 東北大学先進外科学
佐
藤 紀 埼玉医科大学総合医療センター血管外科
重
松
邦
広 東京大学医学部附属病院血管外科
根
岸
七
雄 日本大学心臓血管外科
平
井
正
文 東海病院下肢静脈瘤・リンパ浮腫・
布
川
雅
雄 杏林大学心臓血管外科
古
屋
隆
俊 国保旭中央病院血管外科
保
坂
晃
弘 青梅市立病院外科
正
木
久
男 川崎医科大学心臓血管外科
松
尾 汎 松尾循環器科クリニック
宮
田
哲
郎 東京大学大学院医学系研究科血管外科
森
下
竜
一 大阪大学大学院医学系研究科臨床遺
渡
部
芳
子 東京医科大学外科学第二講座(血管外科)
血管センター
伝子治療学
岡 留 健一郎 共済会福岡総合病院外科
外部評価委員
安
藤
太
三 藤田保健衛生大学心臓血管外科
松
原
純
一 博愛会病院
種
本
和
雄 川崎医科大学胸部心臓血管外科
安
田
慶
秀 北海道中央労災病院せき損センター
永
井
良
三 東京大学大学院医学系研究科循環器内科
(構成員の所属は 2009 年 10 月現在)
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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
目 次
はじめに……………………………………………………… 1509
Ⅰ.閉塞性動脈病変の分類・症状・徴候………………… 1510
1.はじめに ……………………………………………
2.急性閉塞性疾患 ……………………………………
3.慢性閉塞性疾患 ……………………………………
Ⅱ.動脈疾患の診断〈方法論・目的・適応・意義〉……
1.身体所見 ……………………………………………
2.無侵襲診断 …………………………………………
3.画像診断 ……………………………………………
Ⅲ.動脈疾患の病態生理と血行動態………………………
1.急性肢虚血 …………………………………………
2.間歇性跛行 …………………………………………
3.重症虚血肢 …………………………………………
Ⅳ.血管形成異常……………………………………………
1.分類 …………………………………………………
2.主たる形態,解剖学的異常 ………………………
3.診断と治療・予後 …………………………………
Ⅴ.血管損傷…………………………………………………
1.血管損傷の発症機序 ………………………………
2.病態 …………………………………………………
3.治療方針 ……………………………………………
4.治療手技 ……………………………………………
Ⅵ.急性動脈閉塞(TASC Ⅱを考慮) ……………………
1.疾患概念 ……………………………………………
2.病因,頻度 …………………………………………
3.病態生理 ……………………………………………
4.臨床症状,診断,検査 ……………………………
5.治療方針 ……………………………………………
6.予 後 ………………………………………………
Ⅶ.閉塞性動脈硬化症(TASC Ⅱを考慮)………………
1.疫学 …………………………………………………
2.治療方針の選択(手術適応・血管内治療の適応)…
3.薬物療法およびその他の治療法 …………………
Ⅷ.頸動脈,椎骨動脈………………………………………
1.頸動脈狭窄症に対する頸動脈内膜摘除術の治療基準…
2.頸動脈内膜摘除術のハイリスク群 ………………
3.合併症がある場合の治療適応 ……………………
4.頸動脈ステント留置術の適応 ……………………
5.頭蓋外椎骨動脈狭窄 ………………………………
Ⅸ.腹部内臓動脈……………………………………………
1.急性腸間膜動脈閉塞症 ……………………………
2.慢性腸間膜動脈閉塞症 ……………………………
3.腹腔動脈起始部圧迫症候群 ………………………
4.腸間膜血行不全症(非閉塞性腸間膜虚血症) …
Ⅹ.腎動脈……………………………………………………
1.原 因 ………………………………………………
2.頻度 …………………………………………………
3.治療方針 ……………………………………………
4.治療手技 ……………………………………………
5.予後 …………………………………………………
Ⅺ.高安動脈炎………………………………………………
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1.疾患の概要 …………………………………………
2.病因と病態 …………………………………………
3.症候と診断 …………………………………………
4.治療と予後 …………………………………………
5.結語 …………………………………………………
Ⅻ.Behçet 病 ………………………………………………
1.疫学 …………………………………………………
2.動脈病変 ……………………………………………
3.動脈病変に対する治療 ……………………………
ⅩⅢ.Buerger 病………………………………………………
1.病因 …………………………………………………
2.疫学 …………………………………………………
3.臨床症状 ……………………………………………
4.検査所見 ……………………………………………
5.診断 …………………………………………………
6.治療 …………………………………………………
7.予後 …………………………………………………
ⅩⅣ.膠原病……………………………………………………
1.結節性多発動脈炎(PN) …………………………
2.アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA) …………
3.Wegener 肉芽腫症(WG)…………………………
4.SLE …………………………………………………
5.関節リウマチ(RA),特に悪性関節リウマチ(MRA)…
ⅩⅤ.糖尿病性足疾患…………………………………………
1.糖尿病性足疾患の分類 ……………………………
2.疫学 …………………………………………………
3.診断 …………………………………………………
4.治療 …………………………………………………
ⅩⅥ.動脈の機能性疾患 ……………………………………
1.肢端紅痛症(erythromelalgia)……………………
2.Raynaud 現象 ………………………………………
3.カウザルギー ………………………………………
ⅩⅦ.胸郭出口症候群・鎖骨下動脈盗血症候群 …………
1.胸郭出口症候群 ……………………………………
2.鎖骨下動脈盗血症候群(Subclavian steal syndrome)…
ⅩⅧ.膝窩動脈外膜嚢腫 ……………………………………
1.膝窩動脈外膜嚢腫とは ……………………………
2.診断 …………………………………………………
3.治療方針の選択 ……………………………………
4.治療手技 ……………………………………………
ⅩⅨ.膝窩動脈捕捉症候群 …………………………………
1.膝窩動脈捕捉症候群とは …………………………
2.臨床像 ………………………………………………
3.診断手順 ……………………………………………
4.治療方針の選択 ……………………………………
5.治療手技 ……………………………………………
ⅩⅩ.Blue toe syndrome ……………………………………
1.病態 …………………………………………………
2.症状と診断 …………………………………………
3.治療 …………………………………………………
ⅩⅪ.遺残坐骨動脈 …………………………………………
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末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
1.病態 ………………………………………………… 1556
2.頻度と分類 ………………………………………… 1556
3.診断 ………………………………………………… 1557
4.治療 ………………………………………………… 1557
文献…………………………………………………………… 1558
(無断転載を禁ずる)
はじめに
末梢動脈の定義は一般的に心臓および冠動脈以外の動
末梢閉塞性動脈疾患の診療にあたっては,血流障害に
脈と考えられ,ACC/AHA ガイドラインでも,腹部大動
より低下した肢機能の回復が主目的であり,個別の患者
脈や腸間膜動脈,腎動脈等が含まれている.本ガイドラ
により治療目標が異なることから,治療のエンドポイン
インでは,末梢閉塞性動脈疾患の治療について記載する
トは様々である.そのために,治療行為におけるエビデ
ことを目的としており,末梢動脈の範囲を定義にしたが
ンスレベルを明らかにすることが困難な疾患群であり,
って限定した.「閉塞性」病変の病態は,動脈硬化や血
ガイドラインの策定にあたって求められるエビデンスレ
管炎,慢性的反復外傷,解剖学的走行異常,形成異常等
ベルは乏しい結果となっている.レベルを提示しうるも
を原因として多彩であり,閉塞様式も急性か慢性かの時
のについては,他のガイドラインと同様の基準とし,ク
間軸を有している.多くの疾患が本稿に含まれるが,急
ラス分類は広く用いられている基準に準拠した.
速な高齢化社会の出現や糖尿病患者の増加に脂質代謝異
常や高血圧が相俟って,我が国で現在大多数を占めてい
エビデンスレベル
る の は 閉 塞 性 動 脈 硬 化 症(Arteriosclerosis obliterans:
レベル A
析で実証されたもの.
ASO)である.欧米諸国では末梢動脈疾患 Peripheral
arterial disease(PAD)は我が国における閉塞性動脈硬
レベル B
化症と同義に用いられているが,1970 年代頃まで,我
単一の無作為介入臨床試験または大規模
な無作為ではない臨床試験で実証された
もの.
が国では江戸時代以来いわゆるバージャー病,閉塞性血
栓血管炎(Thromboangiitis obliterans: TAO)が特発性脱
複数の無作為介入臨床試験またはメタ解
レベル C
疽と呼ばれて慢性閉塞性動脈疾患の中心を占めてきた.
専門家および / または小規模臨床試験で
意見が一致したもの.
TAO が ASO とは異なる一疾患単位であることを明らか
にするために,我が国では PAD を ASO と同義とはしな
クラス分類
いで,TAO と区別して用いてきた.しかしながら,近
クラスⅠ
手技・治療が有効,有用であるというエ
年原因は明らかではないが TAO は激減し,高齢化社会
ビデンスがあるか,あるいは意見が広く
の出現や食生活を含めた生活様式の変化を背景に動脈硬
一致している.
化性血管疾患 ASO が急増し,慢性動脈閉塞症の 95%以
クラスⅡ
手技・治療の有効性,有用性に関するエ
上を占めるに至った.このような近年の急速な疾病構造
ビデンスあるいは見解が一致していな
の変化から,現在では我が国でも PAD を ASO と同義に
い.
Ⅱ a
用いることが多くなっている.
ASO の診療ガイドラインとして,既に欧米では 14 学
1)
会 に よ る Trans Atlantic Inter-Society Consensus: TASC
可能性が高い.
Ⅱ b
が 2000 年に発表され,2007 年には欧米のみではなく,
我が国やオセアニアを含めた 16 学会による TASC Ⅱ2)が
エビデンス,見解から有用,有効である
エビデンス,見解から見て有用性,有効
性がそれ程確立されていない.
クラスⅢ
手技,治療が有効,有用ではなく時には
発表されている.したがって本ガイドラインにおいては,
有害であるとのエビデンスがあるか,あ
既に世界的に合意された診療ガイドラインとの整合性を
るいはそのような否定的見解が広く一致
保ったものとなっている.
している.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1509
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
2
Ⅰ
閉塞性動脈病変の分類・
症状・徴候
腹部内臓動脈
急激な腹痛や下痢,下血で発症し,その後腹膜炎を併
発すると腹膜刺激症状が出現する.臨床上重要となるの
は,大動脈からの分岐角が小さく,血流量の豊富な上腸
間膜動脈の急性塞栓症である 6).上腸間膜動脈血栓症は
1
発症前に慢性腸管虚血による腹痛を自覚することや他の
はじめに
動脈硬化性疾患の既往を有することが特徴である.鑑別
診断として動脈閉塞疾患以外では非閉塞性腸管虚血症や
「末梢動脈」が意味する領域に関しては様々な見解が
ある.胸部・腹部大動脈を含まないより末梢の動脈とい
う概念もあれば,腹部大動脈は末梢動脈に含むという概
上腸間膜静脈血栓症が挙げられる.
3
腎動脈
念もある.「末梢動脈(下肢,腎,腸間膜,および腹部
原因にかかわらず,腎機能の低下,腎梗塞,腎不全の
大動脈)患者の管理に関するアメリカ心臓病学会(ACC)
経過をたどる.塞栓症では側腹部痛や血尿等が急に出現
/ アメリカ心臓協会(AHA)ガイドライン」によると,
する.血栓症は狭窄性病変が急性閉塞前からあると症状
末梢動脈とは「心臓および冠動脈以外」であり,大動脈
が乏しく,対側腎の代償により腎機能への影響も少ない
(胸部,腹部)
,腹部内臓,四肢および末梢の動脈(頸動
ことがある.動脈解離は腎動脈硬化症や線維筋性異形成
3)
脈,鎖骨下動脈,腸骨動脈も含む)が含まれる .本書
では,四肢の動脈・頸動脈・内臓動脈の疾患に加え,高
安動脈炎および閉塞性動脈硬化症といった胸部・腹部大
を伴う患者での発症が多い 7).
4
頸動脈,椎骨動脈
動脈の閉塞性疾患についても取り扱った.
閉塞原因および側副路の形成状況によって症状は著し
閉塞性末梢動脈疾患を診療する際には,罹患部位や範
く異なり,無症候性から一過性脳虚血発作,脳梗塞まで
囲,時間経過,閉塞原因等を考慮し,診断および治療方
様々である 8).アテローム血栓性閉塞は高齢男性に好発
針を立てる必要がある.
するが,狭窄病変による症状が先行していることが多い.
2
急性閉塞性疾患
塞栓症の原因疾患としては心原性特に心房細動の頻度が
高いが,僧帽弁や大動脈弁疾患,急性心筋梗塞,人工弁
等でも起こりうる.また奇異性脳塞栓症として右心系か
急性動脈閉塞の原因としては,他の部位に生じた血栓
らの血栓が卵円孔開存や心房中隔欠損症等のシャント性
等が遊離し,末梢の動脈閉塞を起こす動脈塞栓症や,血
心疾患を介して塞栓源となりうることも知られてい
管内膜病変部に急速に形成される動脈血栓症,さらには
る 9).その他の原因としては動脈解離や凝固異常症も挙
急性動脈解離や外傷性動脈閉塞等がある.
げられる.
1
四肢動脈
3
慢性閉塞性疾患
1
下肢動脈
急性動脈閉塞の症状としては“5 つの P”,すなわち疼
痛(pain), 脈 拍 消 失(pulselessness), 蒼 白(pallor/
paleness),知覚鈍麻(paresthesia),運動麻痺(paralysis/
paresis)または,これに虚脱(prostration)を加えた“6P”
4)
1510
閉塞性動脈硬化症と閉塞性血栓血管炎が大部分を占
がよく知られている .原因にかかわらず肢切断に至る
め,他には膝窩動脈捕捉症候群や外膜嚢腫,遺残坐骨動
可能性があるが,側副血行路の発達していない塞栓症や
脈や動脈瘤の血栓性閉塞,線維筋性異形成症等があるが
外傷では急激な経過をたどり,血栓症では発達した側副
まれである.古くは特発性脱疽と呼ばれていた閉塞性血
血行が温存されている場合には比較的遅い経過をたど
栓血管炎は,我が国において 1970 年頃までは慢性動脈
る.下肢においては動脈拍動の有無,動・静脈のドプラ
閉塞症の 60 ∼ 70%を占めていた.しかし,近年では著
シグナルの有無とともに知覚消失や安静時疼痛の存在,
明に減少しており,現在では閉塞性動脈硬化症が 90 %
筋力低下の有無が肢虚血の可逆性を判別するのに有用な
近くを占めるようになっている 10).慢性下肢虚血の臨床
徴候となる 5).
症状の重症度分類としては Fontaine 分類が知られてい
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末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
る.Ⅰ度は無症状もしくは冷感やしびれ感,Ⅱ度は間歇
脈内腔が圧迫されるために末梢血行障害を来たす.膝関
性跛行,Ⅲ度は安静時の疼痛,Ⅳ度は潰瘍や壊死で,虚
節伸展時には認められる膝窩動脈末梢の動脈拍動が,関
血の進展過程に応じた病態の重症度を表現するものとし
節を強く屈曲すると消失することが,本症を強く疑う所
て以前から広く用いられている.
見となる 15).胎生期に退化すべき坐骨動脈が残存した先
①閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:
ASO)
天異常である遺残坐骨動脈では,閉塞性病変を生じ下肢
虚血を来たすことや,瘤を形成し下肢への塞栓源となる
ことがある.大腿動脈拍動が減弱または消失しているに
50 歳以上の高齢男性に好発するが,喫煙,糖尿病,
もかかわらず,膝窩動脈や足部動脈の拍動を触知する時
高血圧,脂質異常症等の動脈硬化の危険因子を有してい
には本疾患が疑われる 16).膠原病関連の血管病変は比較
るものが多い.腹部大動脈を含め四肢への主幹動脈,特
的小口径の動脈が侵されることが多いため,臨床的には
に腸骨,大腿動脈が侵されやすいが,糖尿病患者や透析
四肢末梢の Raynaud 現象や潰瘍,壊死が初発症状となる
患者では下腿病変を合併しやすい.ASO の外来患者の
ことが多い 17).疾患としては全身性進行性強皮症,結節
約 7 割を占める 11)間歇性跛行の診断に際しては,患者背
性多発動脈炎,全身性エリテマトーデス,関節リウマチ
景がオーバーラップする脊柱管狭窄症や腰椎疾患等によ
等が多く,これらの疾患の有無を検索する必要がある.
4)
る神経性跛行との鑑別 が重要である.潰瘍,壊死を有
Raynaud 症状が見られる症例には,膠原病の既往がなく
する場合には静脈うっ滞性潰瘍や糖尿病性潰瘍との鑑
ても数年後に膠原病との診断がなされることもあり,経
別 4)が必要だが,性状や部位,随伴症状から診断は可能
過を追う間も注意が必要である.
である.理学的所見としては,罹患肢の皮膚温の低下,
「や
せ」が認められ,皮膚の色調は虚血が進むにしたがって
2
上肢動脈
蒼白からチアノーゼを呈する.男性の場合,大動脈終末
上肢の慢性動脈閉塞症では背景疾患の存在や生活歴,
部や腸骨動脈領域の虚血により勃起不全を来たすことが
職業歴等が危険因子の評価を含め診断上重要となる.閉
ある.下肢の末梢動脈拍動は閉塞部位より末梢では消失
塞病変が上肢のみに見られ,Raynaud 症状を伴う場合は,
し,狭窄病変がある場合には中枢あるいは健側に比し減
膠原病,胸郭出口症候群,振動病,Buerger 病等が主な
弱する.拍動触知部位の近傍に狭窄病変があると thrill
原因と考えられる.胸郭出口症候群は圧迫による障害の
が触知され,さらに血管雑音も聴取される.
主体により,神経性,静脈性,動脈性の 3 型に分けられ
② Buerger 病〔閉塞性血栓血管炎,ビュルガー(氏)病,
バージャー
(氏)病,thromboangiitis obliterans:
12)
TAO〕
るが,神経性が最も多く,動脈性は少ない 18).先天的に
頸肋がある場合や過外転肢位をとることが多い職種,例
えば投球動作をとるスポーツ選手等によく見られる.振
動病は電動鋸,削岩機等の振動工具を使用する職業や,
原因については不明であるが,50 歳以下の喫煙歴の
オートバイに乗ることが多い職業の従事者に見られ,症
ある男性に好発する.病態は閉塞性の全層性血管炎であ
状発生との直接的な因果関係の証明は困難なこともある
るため,四肢の小動脈および小静脈,皮下静脈にも血栓
が,ハイリスクグループとして診断の見当をつけやす
性閉塞を生じる.四肢主幹動脈に多発性の分節的閉塞が
い 19).また上腕動脈や橈骨動脈の拍動が減弱し血圧に左
見られ,臨床症状の多くは慢性動脈閉塞に共通のもので
右差が見られる場合には,高安動脈炎や動脈硬化による
あるが,ASO よりも末梢の動脈閉塞を来たすため,指
鎖骨下動脈閉塞症,Buerger 病等を考える必要がある.
趾末端の潰瘍の発生率が高い.上肢の症状,足底の跛行,
鎖骨下動脈起始部が閉塞した場合に鎖骨下動脈盗血症候
遊走性静脈炎等も特徴的である.
群(subclavian steal syndrome)と呼ばれる病態を引き
③その他
起こすことがある.多くは左側に起こり,患側上肢の運
動に際して逆行性に椎骨動脈から上肢へ血流が流れるた
膝窩動脈捕捉症候群は若年者,特に運動選手に多く見
めに脳底動脈循環不全が生じ,運動時の脳虚血症状(頭
られ,腓腹筋内側頭に対する膝窩動脈の走行異常や膝窩
痛,眼前暗黒感,めまい)と上肢の虚血症状(運動時の
部の筋肉異常等が原因となる 13).膝伸展・足関節背屈位
脱力,しびれ,疼痛)が特徴的である 20).
での末梢動脈拍動の消失が特徴的である 14).膝窩動脈外
膜嚢腫は動脈硬化の危険因子の少ない若年から中年男性
に多く見られ,内膜と外膜の間に発生する嚢腫により動
3
大動脈
大動脈の慢性閉塞は,腎動脈分岐部以下から大動脈終
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1511
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
末部に生じることが多いアテローム硬化性変化によるも
動脈炎の頻度が高いが,近年前者の増加が著しい.大動
のと,高安動脈炎が挙げられる.高安動脈炎(大動脈炎
脈主要分枝の起始部が侵される高安動脈炎に対して,ア
症候群,高安病,脈なし病)は大動脈およびその主要分
テローム硬化性狭窄の好発部位は頸動脈分岐部,椎骨動
枝の非特異的,多発的炎症と炎症治癒後の瘢痕性収縮を
脈起始部である.一過性脳虚血発作として,病変対側の
特徴とする原因不明の疾患である.男女比は 1:9 と女
四肢麻痺,構語障害や黒内障で発症することが多い 25)が,
性に多く,20 ∼ 40 歳代に好発する.病気の初期におけ
めまいや意識消失発作のみの場合もあり注意が必要であ
る自覚症状としては炎症による全身症状(発熱,易疲労
る.診断に際してはこれらの症状の既往を注意深く問診
感,全身倦怠)のため,診断が困難な場合が多い.進行
で確認することが重要で,理学的所見として頸部で血管
期においては病変血管により特徴的な症状を呈するが,
雑音が聴取されることが多い.
様々な部位が侵されるため多彩な臨床症状を示す
21)
.す
なわちⅠ型(弓分枝閉塞型)では脳および上肢の血行不
全による視力障害や脈なし症状,上肢血圧の左右差を呈
する.Ⅱ型(胸腹部閉塞型)では異型大動脈縮窄を来た
Ⅱ
し,高血圧が主症状となる.Ⅲ型(広範囲閉塞型)では
動脈疾患の診断
〈方法論・目的・適応・意義〉
Ⅰ型とⅡ型の混合症状が出現し,Ⅳ型(動脈瘤形成型)
では動脈瘤の形成に大動脈弁閉鎖不全を伴うこともあ
る.病変部位では血管雑音を聴取するが,最も高頻度に
1
身体所見
1
脈拍の触知および血管雑音
侵されるのは鎖骨下動脈,次いで総頸動脈,腹部大動脈,
腕頭動脈,腎動脈の順である.
4
腹部内臓
最も基本的で簡便な診断法で,動脈がどの部位で触知
上腸間膜動脈や下腸間膜動脈,腹腔動脈は互いに豊富
ができて,どの部位で触知しないか,左右差はないかに
な側副血行路により連結されているが,2 本以上の動脈
より,ある程度閉塞部位の診断も可能である.
に閉塞性病変があると,空腹時には無症状であっても食
下肢の動脈の触診可能部位としては大腿動脈,膝窩動
後に腸管の相対的な虚血により腹痛が現れることがあ
脈,後脛骨動脈,足背動脈があり,その中でも足背動脈
り,これを腹部アンギーナと呼んでいる.体重減少,消
は先天的に欠損している場合や通常の位置より異なった
化機能障害(下痢,便秘)を伴うことが多く,腹部に血
走行をする場合があるため注意する必要がある.
管雑音を聴取する場合には本病態を疑う.閉塞性病変の
血管雑音は,動脈が狭窄を呈している時に聴取できる.
原因としては動脈硬化が最も頻度が高いが,その他に線
特に腹部,鼠径部でよく聴取される.
維筋性異形成,血管炎,壁外性圧迫でも起こる
22)
.腹腔
動脈起始部圧迫症候群では腹腔動脈起始部が横隔膜正中
局所所見
弓状靭帯により圧迫され,血流障害を来たすことが知ら
チアノーゼ,冷感,蒼白,下肢の萎縮,爪の変形,脱
れている 23).
毛,潰瘍,壊死等を認める.
5
腎動脈
挙上試験:患者を仰臥位とし,両下肢を挙上して 30
∼ 60 秒間足趾を屈伸させて足底部の色調を観察すると
閉塞性病変により腎血管性高血圧症を招くが,30 歳
正常肢では色調の変化はないが,虚血肢では蒼白になる.
以前の高血圧の発症あるいは 55 歳以降の重症高血圧の
中等度以上に虚血が進行している場合に見られる.
発症で,高血圧は悪性,難治性であり,レニン - アンジ
下垂試験:挙上試験に続き,椅子等に腰掛けて両下肢
オテンシン系遮断薬により腎機能が低下した場合に本病
を下垂させ,足の色調が回復するまでの時間を観察する.
態を疑う .高齢者の原因としてはアテローム性動脈硬
正常肢では 10 秒前後で元の色調に戻るが,狭窄・閉塞
化が多く,若年者の原因としては線維筋性異形成が多い.
があると 1 分以上遅れる.
3)
高安動脈炎や大動脈解離でも腎動脈に狭窄が生じる 24).
6
頸動脈,椎骨動脈
慢性閉塞の原因としてはアテローム硬化性狭窄と高安
1512
2
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
2
を利用して組織内のオキシヘモグロビン(oxy-Hb)と
無侵襲診断
デオキシヘモグロビン(deoxy-Hb)の経時的変化を測
定できるため,生体の酸素化状態を直接無侵襲,簡便か
つ連続的にモニターすることができる.定量化にはまだ
四肢血圧
1
解決すべき問題があるが,間歇性跛行の重症度評価ある
いは治療効果の判定に用いられている.トレッドミル歩
①超音波ドプラ法
行を行うとオキシヘモグロビン(oxy-Hb)が低下し,
原理:運動している物体が音を出しながら近づいてくる
反対にデオキシヘモグロビン(deoxy-Hb)が増加し歩
と次第に音が高く聞こえ,遠のくにしたがって音が低く
行終了後に再び交差するまでの時間を回復時間として評
聞こえるというドプラ効果を応用している.運動してい
価している 29).
る物体(血球)に超音波を連続的にあてると物体(血球)
の運動により超音波周波数の変化も大きくなり,それを
利用して血流速度波形を得,さらに血流音を聴取するこ
3
経 皮 的 酸 素 分 圧(transctaneous
oxygen tension: tcPO2)
とができる.主体は四肢血圧測定である.
皮膚を加温し,その充血状態における酸素分圧を経皮
評価方法として,足関節上腕血圧比(Ankle brachial
的に測定するものである.負荷方法としては駆血負荷や
pressure index: ABI)が最も用いられている.ABI は足
酸素負荷運動負荷等が用いられている.本法は特に重症
関節収縮期血圧 / 上肢収縮期血圧で,正常値は 1.0 ∼ 1.3
虚血肢の評価に有用である.安静時の tcPO2 は年齢的な
である.0.9 以下は何らかの虚血があることが示され,
因子を受け,正常値は 20 歳代の足背部で 66 ± 10mmHg,
0.4 以下は重症で,1.3 以上は慢性腎不全や糖尿病等,動
高齢者では 54 ± 9mmHg と報告されている 30).重症虚血
脈の石灰化が著明な患者に見られる.またトレッドミル
肢における潰瘍治癒の可能性や緊急性,および治療効果
歩行による ABI の回復時間の測定は,間歇性跛行の重
の判定にも有用である 30)−32).
症度評価にも有用である
26)
.
②オシロメトリック法
4
皮膚還流圧(skin perfusion
pressure: SPP)
前述した超音波ドプラによる血圧測定は少し熟練を要
足趾,足部,足関節用のカフの内側にレーザドプラを
するが,最近,オシロメトリック法により自動的に四肢
内蔵して皮膚灌流圧を測定する装置で,皮膚表面から
血圧測定が行える機器が出ている.この機器は,測定が
1mm の深さまでの皮膚血流を測定する.重症虚血肢の
容 易 で 熟 練 を 要 さ な い 利 点 が あ る. 欠 点 と し て,
評価に有用である 33)−35).
40mmHg 以下は測定できないことが挙げられる 26).本
法は,足趾の血圧測定や動脈硬化度の判定の 1 つである
5
サーモグラフィー
脈波伝播速度も測定できるため,応用範囲が広い.
人体から出ている赤外線を受動的に検出し,体表面を
トレッドミル歩行による ABI の回復時間も容易に測
二次元温度分布として画像に表現するものである.皮膚
定 可 能 で, 間 歇 性 跛 行 の 重 症 度 評 価 に も 有 用 で あ
の温度低下が色調で表示される.両側の虚血であれば診
る
27),28)
.
断的価値は少ないが,薬物療法の効果を見る時に用いら
足趾上腕血圧比(Toe brachial pressure index: TBI):
れる.Raynaud 症候群の診断の冷水負荷試験にも用いら
腎不全や糖尿病の患者では,動脈の石灰化により足関節
れる.
血圧が正確に測定できないことが多いため,ABI を過大
評価する可能性がある.その際には,TBI(足趾血圧 /
6
指尖容積脈波
上肢収縮期血圧)が有用である.正常値は 0.7 ∼ 1.0 で
近赤外線の透過光や反射光を受光し,容積変化を測定
ある.ただ寒冷等により血管が収縮しやすいため,保温
する方法であるが,絶対値を求められず室温等に影響さ
して後に測定することが大切である.
れるため,スクリーニング検査として利用される.手指
2
近赤外線分光法(near infrared
spectroscopy: NIRS)
および足趾の虚血の診断に有用である.
近赤外線分光法は,近赤外光の持つ優れた組織透過性
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1513
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
3
1
画像診断
Digital subtraction angiography
(DSA)
血管内腔を骨等の背景に影響されず描出できる血管造
影法である.経カテーテル的造影では,CT よりも少な
動脈疾患の病態生理と
血行動態
Ⅲ
1
急性肢虚血 4),39),40)
い造影剤で鮮明な画像が得られる.ステント内の評価に
も優れる.また造影剤の流れを経時的に観察でき,血行
〈推奨事項〉
動態の評価に役立つ.ただし得られるのは血管内腔の画
クラスⅠ
像のみで,外部情報は得られない.不十分な呼吸停止や
急性動脈閉塞で救肢が可能な患者には,閉塞の解剖学
腸管運動はアーチファクトとなる.
的なレベルを決定し,早急な血管内または外科的血行再
閉塞性動脈硬化症では,主に腸骨動脈や大腿動脈の閉
建術に導く評価を行う(エビデンスレベル B).
塞や狭窄を認め,虫食い像等を呈する.糖尿病合併例で
は,下腿動脈に主な病変があることが多い 36).Buerger
動脈血流が急速または突然に減少,途絶することで上
病では主に下腿動脈に多発性の分節的閉塞や途絶,先細
下肢に虚血症状を呈する病態である.診断や治療の遅れ
り状閉塞を認める.急性動脈閉塞では,動脈の途絶と側
は,肢のみならず生命の存続も脅かすことがある.
副血行路が乏しいのが特徴である.
末梢動脈の急性閉塞の原因には塞栓症,血栓症,そし
2
MR angiography(MRA)
て大動脈解離や外傷等がある.塞栓症は心房細動,僧房
弁狭窄症,時に心内腫瘍や大動脈瘤によって生じた塞栓
DSA に比較して被曝がないという点で侵襲は少なく,
子が末梢動脈を閉塞することで発症する.微小塞栓の場
撮影範囲が広い等の利点があるが,空間分解能では
合には足指に青色斑点様の皮膚の色調変化を生じる
DSA や CT に劣る.造影剤に関しては,腎機能低下者で
(Blue toe syndrome).血栓症は,動脈硬化や血管炎によ
ガドリニウムによる合併症が注意勧告されている.また
る狭窄部や人工血管吻合部等に血栓形成が誘発されて,
ステントを挿入した場合には,MRI に対応していない
虚血症状が急速に悪化する.症状が突発的で胸背部に激
材質では内腔の評価が困難である.
3
CT
痛のある時には,急性大動脈解離による末梢への灌流の
減少も念頭に置く.
四肢,とりわけ下肢の急性動脈閉塞では突然の強い疼
被曝および DSA に比較して造影剤の量が多い等の欠
痛や脱力感で発症する.時間の経過とともに神経障害(知
点はあるが,動脈の石灰化の程度を評価できる.また壁
覚,運動障害)から水疱形成,皮膚および筋肉壊死へと
在血栓や血管外の情報も得られる.Multidetector-row
進行し,全身衰弱から死に至る病態である.重症度はそ
CT angiography(MDCTA)は,1 回の息止めで下肢全
の経過や閉塞部位と範囲,側副血行による代償,血栓形
体および腹部を含めて高速撮像が可能であるが,動脈の
成の進行速度等により影響を受ける.例えば大腿動脈の
石灰化がある場合には閉塞病変の有無の評価が容易でな
急性閉塞でも,浅大腿動脈と大腿深動脈の両方の血流が
い 37),38).
途絶した総大腿動脈の閉塞では,末梢への側副血行路が
4
超音波検査
限られるため短時間の経過で組織障害が進行する.また
発症後の凝固線溶系の状態により自然に血栓溶解するこ
超音波検査は,専門家が行えば血管造影に代わる手段
ともあれば,血栓形成が進展し少しずつ増悪することも
である.安全で何度も行うことが可能であるが,時間が
ある.急性動脈閉塞症の早期症状には「5 つの P 徴候」
かかり,また検者の技量に左右されやすく,下腿動脈の
が あ る. 疼 痛(pain), 動 脈 拍 動 消 失(pulselessness),
詳細な全体像は把握が困難である.
皮膚蒼白(pallor/paleness),知覚鈍麻(paresthesia),運
動麻痺(paralysis/paresis)である.時に強い疼痛や脱力
感が発症後一過性で,次第に和らぐために受診が遅れる
ことがあるので注意する.このような場合でも疼痛以外
1514
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
の P 徴候のチェックのための経時的な視,触診とドプラ
個人差があるが,これは安静時の ABI は同じでも歩行
検査の観察は重要である.重症度を分類し,救肢の可能
負荷に対する血行動態の代償機能に違いがあるからであ
性と危機の判別を示した臨床分類が治療に際して参考に
る.虚血肢では歩行負荷にて ABI が低下する.よって
なる.例えば知覚障害や運動障害が出現している場合,
ABI が正常∼やや低下例でも肢虚血が疑わしい場合は,
すなわち臨床分類のⅡbでは時間的余裕はないとされ,
歩行後の ABI を計測するのが有用である 3).この ABI の
早急に血行再建術(血栓溶解療法,血管内治療,外科手
低下は時間の経過とともに歩行負荷前の値に戻るが,そ
術)への治療戦略を検討する(→Ⅵ.急性動脈閉塞 表3).
の戻るまでの時間が代償機能を反映している.言い換え
2
間歇性跛行
れば,戻るまでの時間が長くかかる症例ほど間歇性跛行
が重症である26).間歇性跛行は機能的症状であるために,
その重症度評価や治療効果判定には歩行負荷 ABI 測定
〈推奨事項〉
や近赤外線分光法 42),43)等の客観的な機能的検査が必要
クラスⅠ
と考えられるが,トレッドミルを使っての最大歩行距離
間歇性跛行をを有する患者では,血行再建術の前に,
測定(主観的)で代用されているのが現状である.
症状の改善が見込まれるような有意な機能障害はない
か,跛行が改善されても同等の運動を制限するような他
3
重症虚血肢 44),45)
の疾患(例:狭心症,心不全,慢性呼吸器疾患,または
整形外科的な制限)がないかについて留意する(エビデ
重篤な血流障害により引き起こされる安静時の下肢の
ンスレベル C).
疼痛や,趾肢の喪失が切迫した状態と定義されるが,具
間歇性跛行を有する患者で安静時の ABI が正常の場
体的には ASO や Buerger 病等の慢性閉塞性動脈疾患の虚
合には,運動後に ABI を計測するのが有用である(エ
血が進行して安静時疼痛,皮膚潰瘍,壊死を呈した虚血
ビデンスレベル B).
の最終段階の病態を指す.Buerger 病では小さな足指の
傷や小手術を契機に急に潰瘍や壊死へ進行することがあ
しばらく歩くと下肢のだるさや痛み等から歩けなくな
るが,ASO では急性血栓症(急性増悪)を伴わない限り,
り,しばらく休むと再び歩けるようになる症状が間歇性
理論的には Fontaine 症状分類の前段階である間歇性跛行
跛行である.動脈閉塞,狭窄があるために歩行運動によ
症状を有している.しかし実際は,重症虚血発症前には
る筋肉酸素需要の増大に供給が追いつかないために生じ
無症候性である場合が多い.間歇性跛行症状がなかった
る
41)
,いわば「足の狭心症」である.速足や階段,坂道
というケースは,うっ血性心不全,重症肺疾患,筋骨格
の歩行では平地歩行よりも酸素需要が増大するため症状
系疾患等の併存症のために跛行症状が生じるまで運動で
が 出 や す く な る. 閉 塞 性 動 脈 硬 化 症(arteriosclerosis
きない患者か,無意識に症状が出現しないような日常生
obliterans: ASO)では約 70 ∼ 80%が間歇性跛行症状を
活を送っていたか,あるいは歩けなくなったのは加齢の
主訴とする.腸骨・大腿動脈が病変好発部位であるため
ためと思い込んでいる患者と考えられる.いずれにしろ
に腓腹部で症状が出やすい.内腸骨動脈への血流障害で
安静時でも最小限の血流が確保できない,言い換えれば
は臀部に症状が出ることがある(臀筋跛行).Buerger 病
安静時でも虚血状態を代償できないために生じる状態で
も代表的な末梢動脈疾患であるが,病変部位がさらに末
ある.
梢であるため跛行症状は下腿末梢や足底部に出やすい.
一般に ABI は 0.4 未満,足関節血圧は 50 ∼ 70mmHg
動脈硬化性危険因子(喫煙,糖尿病,高血圧,脂質異常
以下,足趾血圧は 30mmHg 以下のことが多い.この状
症等)を有して間歇性跛行症状がある場合は,まずは全
態は,多くは下肢の複合性閉塞病変によって起こる.す
身の動脈硬化症の一部分症としての ASO を疑うべきで
なわち多発性病変による広範な領域での血流障害であ
ある.ASO の存在診断は下肢動脈拍動の触知と足関節
る.例えば,浅大腿動脈領域の血管閉塞の場合は大腿深
上腕血圧比(Ankle brachial pressure index: ABI)で簡単
動脈が開存していれば虚血が重症化することはまれであ
ではあるが,間歇性跛行症状を呈する他の疾患との鑑別
るが,さらに遠位側の膝窩動脈以下が閉塞すると重症化
診断も重要である.とりわけ同じような跛行症状を呈す
しやすい.特に糖尿病患者では下腿三分枝以下の流出路
る腰部脊柱管狭窄症は頻度が高く,また ASO と合併し
病変を有していることが多く,末梢神経障害も併発して
ていることも多いために注意が必要である 3).末梢動脈
いると急速に無症候性に進行することがある.このよう
疾患の間歇性跛行患者では同じ ABI でも歩ける距離に
なマクロ的な灌流圧の低下に加えて,細動脈攣縮,微小
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1515
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
血栓,組織浮腫,血小板と白血球の活性化等による微小
循環障害や局所感染の併発は,虚血を増悪させる.
2
狭窄,閉塞
重症虚血肢の治療に際して,血管内治療または外科手
狭窄を来たす血管形成異常としては大動脈縮窄症がよ
術では,流入路病変の血行再建術が優先される.その上
く知られているが,線維筋性異形成,走行異常,分岐異
で必要に応じて流出路病変の血行再建術を考えることに
常も狭窄を生じることがある.
1 疫学,⃝
2 治療方針の
なる〔→Ⅶ.閉塞性動脈硬化症 ⃝
選択(手術適応・血管内治療) 表 6,7〕
.糖尿病症例
3
拡張
では,足部の動脈へバイパス術を施行せざるを得ないこ
先天性の動脈瘤もあるが,血栓症,塞栓症を起こさな
ともまれではない.また,重症虚血肢に対しての血行再
い限り,拡張病変のみでは血行障害を生じない.
建以外の補助療法や薬物治療を位置づけるためにも,皮
膚微小循環レベルの評価をすることは重要である 46).一
4
走行・分岐・数の異常
般に重症虚血肢ほど心臓,脳,腎臓等の重要臓器にも動
走行・分岐・数の異常は,血管造影や超音波検査,手
脈硬化が進行しているため,生命予後の面から下肢切断
術時に偶然発見されることが多く,臨床的意義は少ない.
を第一選択として余儀なくされることも多い.
臨床症状を出す走行異常としては,膝窩動脈(静脈)捕
捉症候群(popliteal artery entrapment syndrome),ナッ
Ⅳ
血管形成異常
トクラッカー症候群(nutcracker syndrome)がある.
①膝窩動脈(静脈)捕捉症候群
膝窩動脈の走行異常や腓腹筋の異常により膝窩動脈が
1
圧迫され,下肢に血行障害が生ずる症候群である.動脈
分類
ばかりではなく,静脈も圧迫されることもある(popliteal
vascular entrapment syndrome)52).膝窩動脈外膜嚢腫(嚢
血管の形成は胎生 3 週に始まるとされている.形成の
胞性外膜疾患)とともに,間歇性跛行の鑑別診断時に挙
過程において,遺伝的因子や薬物,感染症,放射線被曝
げられる疾患である.
等の外的因子が原因で様々な異常が生ずる 47).血管形成
異常の分類として 1988 年に制定された Hamburg 分類 48)
②ナットクラッカー症候群
では,異常を起こす優位血管系から動脈系の形成異常,
左側の腎静脈が上腸間膜動脈と大動脈との間で圧迫さ
静脈系の形成異常,動脈と静脈の異常短絡を主とする異
れ,血尿,腰痛等を来たす症候群である 53).左腎静脈捕
常および複合型の 4 種類に分類されたが,その後リンパ
捉症候群とも呼ばれる.
系の異常も加えられた
49)
50)
.Diehm らは,形成異常を形
態学的,解剖学的側面から,無形成・低形成,狭窄・閉
5
遺残(遺残坐骨動脈)
塞,拡張,屈曲・蛇行,遺残,動静脈瘻,異形成等に分
内腸骨動脈から膝窩動脈へと連結する坐骨動脈は,胎
類しているが,日常診療に応用しやすい分類である 51).
生期の主要な下肢への血液供給動脈である.胎生 3 か月
この中でも,末梢動脈系の閉塞性病変,血行障害を引き
ごろには外腸骨動脈,大腿動脈の発育とともに衰退する
起こす形成異常は,無形成・低形成,狭窄・閉塞,動静
が,生後も退化せずに遺残することがある.遺残坐骨動
脈瘻が主たるものである.
脈 persistent sciatic artery は,しばしば血栓症や塞栓症の
2
主たる形態,解剖学的異常
原因となり,また瘤を形成し臀部の拍動性腫瘤として触
知されることもある 54).
下肢の虚血症状の程度に応じて治療法が選択される
1
無形成・低形成
腹部大動脈等の動脈系の無形成・低形成(aplasia,
hypoplasia)はしばしば下肢に血行障害をもたらす.そ
の程度は,側副血行の発達程度にかかっている.
が,動脈瘤は手術的に治療される.
6
異形成(線維筋性異形成,
fibromuscular dysplasia:FMD)
血管壁の筋組織,線維組織の異常により血管壁が拡張,
狭窄を起こし,血管壁に凹凸が生ずる疾患である.腎動
1516
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
脈に好発し,腎血管性高血圧症の原因になるが,頸動脈
や四肢の動脈にも見られる 55).しばしば左右対称的に生
1
血管損傷の発症機序
1
急性血管損傷
ずる.狭窄による虚血症状を起こし,また血栓による塞
栓症の原因にもなる.血管造影で,特異的な数珠様陰影
が見られる.血行再建術やカテーテル治療が行われる.
7
鋭的損傷で細い動脈が断裂すると内膜下の基質が露出
動静脈瘻(複合型の形成異常)
し,血小板凝集,フィブリンによる血栓の安定化 65),血
動静脈瘻は,動脈と静脈の間に生じた非生理学的な短
管攣縮により止血される.攣縮は完全断裂で起こりやす
絡で,外傷等による後天性もある 56),57).潰瘍,壊死を
く,不完全断裂では起こりにくい 59).鈍的損傷では内膜
来たすこともある.
損傷,内膜弁状剥離,内中膜過伸展断裂,壁内出血,攣
3
縮 59)等により損傷部に血小板が凝集して血栓を形成す
診断と治療・予後
る.
血管腫や静脈拡張等体表に徴候が観察されれば,血管
2
慢性血管外傷
形成異常の診断は比較的容易である.動脈血行障害の症
周囲の血腫が線維性被膜に被われ内腔と連続した腔が
状のみでは診断できないが,多くはその原因検索中に血
形成されると,仮性動脈瘤(仮性瘤)となる 59).動静脈
管形成異常が診断される.常に,血管形成異常の存在を
穿 通 創 で は 時 に 動 静 脈 瘻(arteriovenous fistula: AVF)
念頭に診断を進めることが大切である.無徴候,無症状
を形成 59)し,受傷後遠隔期に心不全症状等で診断される.
の症例では,他疾患精査中に偶然に発見されることが珍
反復鈍的損傷では内膜肥厚,瘤様拡張,末梢塞栓を起こ
しくない.
)
58),66)
すことがある 58),59(胸郭出口症候群
,膝窩動脈捕捉
治療の適応,治療法の選択・予後は疾患の種類,程度
によって様々である
49)
.病態を詳細に把握した後に治療
法が決定されるが,血管形成異常では根治が難しく,対
症候群 58),67)).
3
医原性血管損傷
症療法のみで経過を観察せざるを得ない症例も少なくな
動脈造影や血管内治療の進歩により高齢者や小児,抗
い.しかし,最近のカテーテル治療やレーザー治療の発
血小板療法中の患者の治療機会が増え 59),64),カテーテ
達,手術手技や人工血管の改良,術中・術後の管理法の
ル,ガイドワイヤー,ステントグラフト,バルーン拡張
向上等により治療適応となる症例が増加している.
による穿孔,解離,内膜損傷,粥腫塞栓,仮性瘤,AVF
いずれにしても,血管形成異常に対する治療は,病態
等が起こる 40),64).穿刺手技による仮性瘤,AVF は,多
に応じた治療法,手技の選択が大切で,病態を正しく評
くは圧迫しにくい深部の動脈や動脈の側壁寄りに穿孔部
価する能力と経験が要求される.専門医への受診が薦め
がある.したがって手技の際は,体表に近い動脈の中央
られる.
部を穿刺し,適切な圧で圧迫して発症を予防する 64).
Ⅴ
2
血管損傷
病態
出血,血腫,血流低下,ショック等の多彩な症状を呈し,
感染や多発骨折,頭部・胸腹部・骨盤部の多発外傷を伴
2 つの世界大戦終了まで血管損傷の主な治療は出血制
うことが多い.救命を第一として,診断と治療は優先順
御と肢切断であったが,
朝鮮・ベトナム両戦争を通じて血
位を考慮しながら迅速に行う 59).多くは急性動脈閉塞症
行再建による救肢例が増加し,
血管外科が発達した
58)
−60)
.
我が国では銃創等の鋭的外傷は少ないが交通事故,労働
災害,スポーツによる鈍的外傷が多く
40),61)
,近年血管
内治療に伴う医原性損傷も増加している 40),58),59),62)−64).
日本血管外科学会アンケート報告
63)
によると血管外傷中
状(pain,pulselessness,pallor/paleness,paresthesia,
paralysis/paresis,poikilothermia(six or seven “Ps”))58)−60)
を呈するが,拍動があっても健側より減弱する時は血管
損傷を疑う.上肢では上腕動脈が多く,側副路が良好で
神経損傷がなければ予後は良い 59).下肢では浅大腿動脈
の医原性損傷は 2005 年 61.7 %(234/379),2006 年 57.7
が最も多い.膝関節脱臼では膝窩動脈閉塞が起きやすく,
%(226/392)であった.
迅速に再建しないと切断リスクが高い 40),59),62).
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1517
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
3
治療方針
2
血栓除去
損傷血管は内膜損傷や攣縮により末梢に二次血栓を生
血管損傷の報告では厳密な無作為比較試験はなく,以
じることがあり,再建前に Fogarty カテーテルで血栓除
下文献を添えた記述の多くはエビデンスレベル C であ
去を行う.バルーン圧を調節しつつ愛護的に操作し,内
る.
膜損傷に注意する.逆流が得られても血栓が除去しきれ
1
たとは限らず,繰り返し可能な限り血栓を除去する 59).
診断法
骨折,脱臼,筋挫滅の疼痛や神経損傷による麻痺と鑑
3
血行再建
別を要するが,動脈拍動の減弱・消失,出血,血腫,チ
四肢の急性動脈閉塞では,迅速な血行再建が必要であ
アノーゼ等で診断は容易である.確定診断は超音波検査,
る.骨折を合併する場合,骨折治療を先行させると術野
duplex scan,足関節上腕血圧比(Ankle brachial pressure
が安定しグラフト長を決めやすいが,虚血時間が延長す
index: ABI)測定,CT,血管造影等がある.外傷の既往
る.しかし血行再建を先行させると骨折整復時にグラフ
があり健側に比べ拍動が減弱していれば,CT・血管造
トや吻合部に負荷がかかり,新たな損傷を起こす恐れが
影等で確認する
2
59),62)
.
手術適応
体幹部血管損傷は救命のため,四肢血管損傷は救肢の
ある.前者の場合,内シャントを挿入して末梢への血流
を確保する方法があるが 59),膝窩動脈損傷では腓骨神経
麻痺や切断率が高いと言われ 40),59),62),血行再建を優先
するのが良いとの意見がある 61).
ため手術適応となることが多い.多発骨折や多臓器損傷
病変部が 2 ∼ 3cm と短いか鋭的損傷等では,病変部切
合併例は重症度に応じて治療順序を決定する.血管損傷
除・端々吻合が可能である 59).鈍的損傷では,内膜損傷
は急性循環不全を来たし 4 ∼ 6 時間が“golden period”59)
部を残すと閉塞することがしばしばあるので,病変部の
とされるので,損傷部と虚血の程度により迅速に手術適
切除,十分な血栓除去,血管移植等で対処する 58),59).
応を決定する.上肢は虚血に強く,下腿は損傷動脈が 1
開放創では感染の恐れから,可能な状況であれば自家静
本で足部循環が良好なら経過観察できることが多いが,
脈グラフトを使用する.
膝窩動脈閉塞は側副路が期待できず切断率は 33 ∼ 100%
とされ 40),59),62),迅速な再建を要する.また,手術時に
4
血管内治療
認めた静脈損傷は修復したほうが機能的予後は改善する
到達しにくい部位の出血や仮性瘤に対して塞栓術やス
との報告がある 59).カテーテル穿刺後の拍動性血腫は,
テントグラフト治療も選択肢となる.
慎重な観察下に適切な圧迫で治癒しうるが,圧迫止血が
血管損傷では,感染制御と循環動態の安定をはかりつ
不可能であった際や,筋膜下血腫による神経麻痺や仮性
瘤等を合併した場合等は,手術適応となる.
4
治療手技
つ,虚血時間と重症度に応じて血行再建後の再灌流障害
(myonephropathic metabolic syndrome: MNMS4))やコン
パートメント症候群 58),59),61),68)に注意する.乏・無尿,
高カリウム血症では透析を,筋腫脹,強い疼痛,麻痺出
)
現時には筋膜切開を行う 4),59(→Ⅵ.急性動脈閉塞を参
1
止血
照).
救急外来では,出血部の盲目的鉗子操作はなるべく回
避し,指か圧迫包帯で押さえつつ手術室へ移送して,損
傷部の中枢と末梢を露出した後に損傷部を修復するのが
Ⅵ
望ましいとの意見がある 59).四肢の出血は,中枢を駆血
急性動脈閉塞
(TASC Ⅱを考慮)
帯,末梢を Fogarty カテーテルでコントロールすること
もできる.鋭的損傷やカテーテル穿刺部出血等は,中枢
と末梢を遮断して,連続ないし結節縫合で閉鎖できるこ
とが多い
疾患概念
.血管壁の挫滅がある際は,切除して端々
吻合ないしグラフト移植を要することが多い 59).
1518
1
63),64)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
急性動脈閉塞症(acute arterial occlusive disease)とは,
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
突然四肢の血流が減少することで,迅速,的確な診断と
表 1 急性動脈閉塞症の原因(文献 72 より一部改訂)
適切な治療を行わなければ肢壊死や虚血再灌流障害
塞栓症
血栓症
頻度の高い 心原性
血管性
原因
心房細動,不整脈
閉塞性動脈硬化症
僧帽弁膜症
バージャー病
心筋梗塞後壁在血栓
大動脈解離
左室瘤
膝窩動脈瘤
心筋症
グラフト閉塞
人工弁置換術後
血管性
大動脈瘤,末梢動脈瘤
shaggy aorta syndrome
まれな原因 心原性
血管性
心臓腫瘍(左房粘液腫) 膝窩動脈外膜嚢腫
卵円孔開存
膝窩動脈捕捉症候群
血管性
外傷
動静脈瘻
医原性
その他
その他
空気,腫瘍
多血症
カテーテル検査
血小板増多症
悪性腫瘍
(myonephropathic metabolic syndrome: MNMS) を 併 発
し,腎不全,呼吸不全,循環不全等の多臓器障害により
死に至る可能性のある重篤な疾患である 68).突然の血流
減少の原因には,塞栓症または血栓症がある.多くの症
例では全身疾患が潜み,特に,心血管,脳血管疾患を併
存する頻度が高い.
2
病因,頻度
本症は閉塞機序から塞栓症と血栓症に分類される.塞
栓症の塞栓源は 90 %前後が心原性 69),70)である.最も多
いのは心房細動であるが,近年リウマチ性僧帽弁疾患が
減少し,心筋梗塞後左室壁在血栓による塞栓の頻度が増
加している.また,動脈瘤壁在血栓あるいは粥腫,動脈
硬化性変化に伴う大動脈の ulcerated plaque に生じた血
栓による塞栓症の頻度(10 %)も増加しつつある.塞
栓症発症部位は Haimovici の 320 例の検討では 69),上肢
16.0 %,大動脈 9.1 %,腸骨動脈領域 16.6 %,大腿動脈
4
臨床症状,診断,検査
1
症状
34 %,浅大腿動脈 4.5 %,膝窩動脈 14.2 %,3 分岐以下
5.6 %と報告されている.血栓症は閉塞性動脈硬化症,
Buerger 病をはじめとした血管炎等により障害された動
脈壁が脱水,心拍出量の減少等が誘因となり血栓性閉塞
急性に発症し,進行する患肢の疼痛(pain),脈拍消
を来たす.近年バイパス手術後のグラフト閉塞も増加傾
失(pulselessness), 蒼 白(pallor/paleness), 知 覚 鈍 麻
向にある 71).したがって,急性動脈閉塞症の治療は原因
(paresthesia),運動麻痺(paralysis/paresis)等,よく知
72)
疾患の把握から始まるとも言える(表 1 ).
3
病態生理
動脈が急に閉塞すると筋肉,組織は急性虚血に陥り,
られた 5P の症状がある.塞栓症は突然に発症するのに
比べ,血栓症は側副血行が存在する場合が多くやや緩慢
に発生する.
2
診断
虚血部位から無酸素代謝産物として乳酸,ピルビン酸が
症状の 5P 等から診断は比較的容易であるが,原因究
産生され,次第に細胞破壊によってカリウム,ミオグロ
明や病態を把握するには既往歴や現病歴を詳細に聴取す
ビ ン,CPK,GOT,GPT,LDH が 細 胞 外 に 流 出 す る.
ることが重要である.例えば間歇性跛行の有無,心疾患
また,腹部大動脈下端の分岐部にかかる Saddle embo-
や脳梗塞の既往,不整脈,カテーテル検査歴,外傷歴,
lism(鞍状または騎乗塞栓症)のように両下肢に及ぶ広
血行再建手術歴等,塞栓症か血栓症の鑑別診断に有用で
範囲の虚血や長時間虚血では,単なる局所障害の問題だ
ある(表 275)).
けではなく,ミオグロビンによる腎尿細管の障害,さら
理学的所見としては患側の皮膚の色,冷感,斑紋状チ
に代謝性アシドーシス,活性酸素 73),サイトカイン 74)
アノーゼ,浮腫,知覚障害,筋肉硬直,水疱形成,壊死
75)
の関与等で全身的代謝障害となり
等の状態を診る.さらに動脈の拍動が触知可能かどうか
MNMS へと進行し腎不全,呼吸不全等の重篤な多臓器
は,閉塞部位や急性動脈閉塞症の診断に重要で,さらに
障害を引き起こしやすい.臨床的には通常,虚血肢の神
救肢可能かどうかの判断にも役立つ.
やアポトーシス
経は 4 ∼ 6 時間,筋肉は 6 ∼ 8 時間,皮膚は 8 ∼ 12 時間
で不可逆的変化を生ずると言われており,塞栓症や外傷
は 6 ∼ 8 時間が救肢の目安である.
3
検査
〈推奨事項〉
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1519
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
表 2 病歴聴取のポイント
現病歴
既往歴
4
発症は突発的か漸次的か
発症から来院までの時間
知覚障害の有無
運動麻痺の状況
間歇性跛行の有無
心筋梗塞の有無
心不全(弁膜症)の有無
不整脈の有無
出血性素因の有無
閉塞性動脈硬化症の有無
Buerger 病の有無
血管検査・手術の有無
鑑別診断
急性動脈閉塞症には,表 1 で掲げた病因となりうる疾
患が多数存在するので,その疾患の病態と急性動脈閉塞
症との鑑別が重要である.また,間歇性跛行の急激な増
悪等慢性動脈閉塞症の急性増悪は,一般的には急性虚血
とは言わない.急性虚血は下肢生命の存続を脅かす可能
性を伴った下肢灌流の突発的な減少または悪化と定義さ
れ,区別される.
5
重症度
重症度は動脈閉塞の部位,二次血栓の形成,進展の程
急性下肢虚血が疑われる患者はすべて,症状発現後速
度,時間経過により左右される.救肢の可能性があるが
やかに末梢の脈拍を Doppler で評価するべきである(エ
知覚神経障害を認める場合は,適切な処置を急ぐ.さら
4)
ビデンスレベル C) .
に運動障害,皮膚に斑紋状のチアノーゼ,水疱形成を認
クラスⅠ
める場合は救肢困難になる.最近 TASC Ⅱは重症度の分
急性動脈閉塞で救肢が可能な患者には,閉塞の解剖学
類を表 32)のように提唱している.この分類は前向き試
的なレベルを決定し,早急な血管内または外科的血行再
験が行われておらず問題も残るが,簡便で使いやすい.
3)
建術に導く評価を行う(エビデンスレベル B) .
また全身状態の把握として,SIRS(systemic inflamma-
tory response syndrome)の有無 76),患肢血カリウム値
CPK その他の血液生化学検査,プロトロンビン時間,
と全身血カリウム値の差(1.5mEq/L 以上)77),ミオグロ
部分トロンボプラスチン時間,凝固異常が疑われれば抗
ビン,CPK 高値,代謝性アシードシス,血尿(ミオグ
カルジオリピン抗体等といった凝固系検査,および心電
ロビン尿)等が見られた場合は,広範囲な筋の崩壊すな
図,胸部 X-P,血液ガス分析等を行い,全身状態を把握
わち前述の MNMS の病態を考える.
することが必要である.Doppler を用いた足背動脈,後
脛骨動脈の血流音聴取は,側副血行路の存在の有無,重
5
治療方針
症度の指標として役立つ.
画像検査では血管造影,MDCT,MRA 等が,病因,
〈推奨事項〉4)
部位の判断に有用である.例えば塞栓症では,閉塞部位
すべての急性下肢虚血患者において,即時の非経口抗
は逆 U 字型の閉塞が見られたり側副血行路の発達がな
凝固療法が適応となる(エビデンスレベル C).
かったりする.一方,血栓症では側副血行路の発達が著
しく,閉塞性動脈硬化症では開存部位に石灰化や虫食い
急性動脈閉塞症の治療は,患者の全身状態や虚血肢の
像等の動脈硬化性変化が見られる.
局所状態の程度によって,その治療優先順位や虚血肢治
表 3 急性下肢虚血の臨床的分類(SIS/ISVS 分類 4)を修正)
1520
区分
説明 / 予後
Ⅰ.Viable(下肢循環が維持され
ている状態)
Ⅱ.Threatened viability
(下肢生命が脅かされる状態)
a.Marginally
(境界型)
b.Immediately
(緊急型)
Ⅲ.Irreversible
(不可逆的な状態)
ただちに下肢生命が脅
かされることはない
所見
知覚消失
早急な治療により救肢 軽度(足趾)または
が可能
なし
ただちに血行再建する 足趾以外にも,安静
ことにより救肢が可能
時痛を伴う
組 織 大 量 喪 失 ま た は, 重度
恒久的な神経障害が避 知覚消失
けられない
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
筋力低下
なし
Doppler 信号
動脈
静脈
聞こえる
聞こえる
なし
(しばしば)
聞き取れない
軽度~中等度 聞き取れない
重度
聞き取れない
麻痺(筋硬直)
聞き取れる
聞き取れる
聞き取れない
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
療の方法が異なるので,患者の状態を把握し適切な治療
を経時的に測定し,尿量やミオグロビン尿を観察する.
を開始する.
血尿,アシドーシスの出現はミオグロビンによる腎尿細
一般に理学的所見で急性動脈閉塞症の診断が確定した
管の障害を示唆し,前述した MNMS の病態であり,炭
時点で,二次血栓予防目的のため heparin 投与を行う.
酸水素ナトリウム,利尿薬等の投与を行う.乏尿,カリ
患者の全身状態と局所の重症度を判定するために一般検
ウ ム の 高 値 等 を 認 め れ ば, 透 析 導 入 を 考 慮 す る.
査,局所所見を把握する.TASC 区分Ⅰ,Ⅱ a は比較的
MNMS の完成された状態では治療困難なことがあり,
時間的余裕があるとされ,経カテーテル直接血栓溶解療
SIRS の有無等を予知して発症を予防することが大切で
法(catheter directed thrombolysis: CDT)等の血行再建
ある.下腿筋は筋膜に囲まれ限られた範囲内に存在し,
術も可能である.区分Ⅱ b では,CDT で効果発現までに
一般的に区画内圧が 30mmHg 以上になると,毛細管の
数時間を要するため虚血時間を長引かせることから,血
透過性亢進,筋肉浮腫が出現し,神経,筋肉が不可逆的
栓塞栓除去術等の外科的血行再建の適応となる.区分Ⅲ
な壊死に陥るとされる.特に,golden time を過ぎた症
は不可逆性であり,壊死部の切断となる.
例に対する血行再建後は,数時間で再び組織が虚血に陥
側副血行発達のない塞栓症では,発症から手術までの
ることがある.これがコンパートメント症候群であり,
時間が肢の予後を左右することから,発症 6 時間以内の
特に下腿前面の前脛骨筋領域に起こしやすい.下腿筋の
いわゆる golden time 以内であれば高率に救肢可能であ
緊満が見られた場合は,筋膜に切開を置き,減圧する.
り,血栓塞栓除去術の良い適応である.24 時間を経過
塞栓症の再発予防としては,心房細動例では heparin
すると約 20 %が切断に至る.血栓症では一般に,可逆
管理下に warfarin の服用を開始するのが一般的である.
的な危機的状況でない早期であれば CDT の良い適応で
また原因検索としては,経食道超音波検査による左房内
あると考えられている.CDT は,外科的血栓除去術と
血栓の有無,心房細動例では弁膜症の有無,心筋梗塞既
の比較試験において一定の有用性が報告されてい
往例では左室内壁在血栓の検索等が挙げられる 82).血栓
る 78)−80).また,血栓症では閉塞性病変が基盤にあるた
症例で血栓除去術が不成功な場合は,次なる血行再建を
め CDT だけでは不十分な場合も少なくなく,この場合
考慮する.
は適切な時期に外科的血行再建術を追加する.
1
血栓溶解療法(CDT)
6
予 後
多孔性カテーテルを動脈血栓内に留置し,例として最
急性動脈閉塞症の死亡率は 15 ∼ 20%にのぼる.ほと
初 の 4 時 間 で urokinase 4,000 単 位 / 分 を 動 注, そ の 後
んどの研究やランダム化比較試験では死因は示されてい
2,000 単位 / 分を追加し,同時に heparin を APTT でコン
ない.主な病状としては,輸血および / または外科手術
トロールの 1.5 ∼ 2.0 倍において経静脈的に投与する方
が必要な大量出血 10 ∼ 15%,大切断が最大 25%,筋膜
法がある.欧米の大規模試験
81)
によると「外科手術先行
例より線溶療法先行症例の方が,その後の外科手術より
切開 5 ∼ 25 %,そして腎不全が最大 20 %である.機能
的転帰については現在まで研究されていない 4).
切断や死亡例を減少させた」と報告されている.
2
外科治療
外科治療は,1963 年 Fogarty によるバルーンカテーテ
Ⅶ
ルを用いた血栓塞栓除去術の成功が大きなきっかけとな
閉塞性動脈硬化症
(TASC Ⅱを考慮)
り,救肢率,死亡率は改善しつつある.しかし,重症度
区分Ⅲの不可逆性変化を起こした水疱形成,壊死の場合
は,感染に弱く敗血症の原因となるため,多くは切断を
1
疫学
要する.
3
術後管理
我が国での閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliter-
ans: ASO)の発生頻度を人口比から検討したものは見ら
Golden time 内の血栓除去成功例は手術合併症の頻度
れないが,仙台市のある地域で平均年齢 74 歳の住民 971
は低いが,区分Ⅱ以上の血栓除去例では血液ガス分析,
名 中 2 % に ASO が 発 見 さ れ た と 報 告 さ れ て い る 83).
血中 CPK,ミオグロビン,カリウム,クレアチニン等
2003 年の日本の人口は 1 億 2,760 万人で 70 歳以上の人口
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1521
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
が約 1,700 万人であることから,2 %の頻度をあてはめ
胞をはじめとする血管壁構成細胞や血管内面の組織構造
る と 34 万 人 程 度 と な る. 大 阪 で 重 症 虚 血 肢(critical
が抗血栓性を発揮しているためである.これに対し,こ
limb ischemia: CLI)を調査した報告
では,人口 10 万
84)
人あたり年間 1.3 肢が切断されている.ASO に占める
のような機能を有さない人工血管は相対的に血栓性で,
常に良好な開存が期待できる適用条件は,大血流量が得
CLI の頻度は 15 ∼ 20 %程度であり,肢切断となるもの
られる大動脈とその一次分枝再建である.大動脈 - 大腿
は 25%とされている 1)ことから,CLI は 10 万人あたり 5
動脈バイパスや浅大腿動脈閉塞に対する大腿 - 膝上膝窩
例程度,CLI の ASO に占める頻度を 15 %とすると ASO
動脈バイパスでは人工血管が使用されるが,その開存は
は 10 万人あたり 33 例,人口 1.3 億として 43 万人程度と
グラフト血流量に依存し,前者は総大腿動脈以下の浅大
なる.一方糖尿病に見られる ASO から見てみると,糖
腿,大腿深動脈病変の程度,後者は下腿 3 分枝動脈が何
尿病の 0.5 ∼ 3 %程度に糖尿病性足病変が見られるとさ
本開存しているか,すなわち run-off の良否が開存成績
れており
,我が国の糖尿病患者を 900 万人とすると,
85)
と密接に関係するとの報告がある 86).これより末梢の下
足病変のある頻度を 1.5%として 14 万人,さらに糖尿病
腿∼足部動脈へのバイパスでは自家静脈グラフトが使用
を併存する ASO は ASO の 30 ∼ 40 %であるため 35 %と
されるが,この場合でも長期開存成績は足底動脈弓へ直
すると,ASO 患者数は 40 万人程度と推測され,先に述
結すること,すなわち末梢吻合部以下の run-off が好成
べた 34 ∼ 43 万人程度とほぼ一致する.したがって,我
績と密接に関係すると報告されている 87).
が国での ASO 患者数は 40 万人前後と考えられる.これ
経皮的血管形成術(percutaneous transluminal balloon
には無症候性の ASO は含まれておらず,ASO に占める
angioplasty:PTA)/ ス テ ン ト 成 功 の 条 件 を 挙 げ る と,
無症候性のものが 20 ∼ 50%とされているため,無症候
inflow(腸骨動脈病変)再建では,浅大腿動脈と大腿深
性のものを含めると 50 ∼ 80 万人前後の患者群がいるも
動脈の両方が開存している例(run-off の良好)で好成
のと推測される.
績が期待できる.浅大腿動脈や膝窩動脈病変では,大腿
2
治療方針の選択
(手術適応・血管内治療の適応)
- 膝窩動脈バイパスの開存率は下腿 3 分枝動脈(LintonDarling の血管造影上の run-off 分類 86))中 2 本以上の開
存で好成績が期待でき,また下腿動脈バイパスでは足底
動脈弓へ連続する血行路の開存の有無が重要との報告が
ASO の診療について,American College of Cardiology
(ACC)/ American Heart Association(AHA)Practice
Guidelines 2005,および Trans-Atlantic Inter-Society Con-
ある 87).
2
虚血重症度による血行再建術の適応
sensus(TASC)Ⅱ 2006 を基に我が国のガイドラインを
血行再建の意義は,QOL の改善や健康寿命の延長効
検討した.上記ガイドラインは基本的には妥当な内容で
果等の側面から考える必要がある.
あるが,それでも治療の適応・選択では医療保険や医療
経済の国際的相違が影響する側面がある.例えば救肢の
①間歇性跛行(intermittent claudication: IC)
ための複数回に及ぶ手術は肢切断を第一選択とする欧米
血行再建としては血管内治療と外科手術がある.動脈
には受け入れられないが,現実には切断を第一に望む患
閉塞があっても無症状ならば,原則的には血行再建の適
者はいない.また医師の経験や技術レベルの相違,革新
応はない.IC では障害の程度には個人差があることか
的治療の開発等の点では,必ずしもガイドラインを妥当
ら,血行再建の適応基準は一律でなく,跛行距離の長短
としない.本章ではこのような問題を踏まえて,間歇性
よりも,患者にとって跛行が障害になっているか否かが
跛行(intermittent claudication: IC)と重症虚血肢(critical
重要な決定因子である(表 4,5).
limb ischemia: CLI)に対し,血行再建術の適応,選択
基準,手技,治療成績等を解説する.
1
血行再建術の基本原則
大伏在静脈や動脈グラフト等の自家代用血管は宿主血
管に匹敵する抗血栓性を有し,冠動脈,下腿∼足部動脈
バイパス,free flap 等では,グラフト血流量がわずか
10mL/min でも容易には血栓閉塞しない.これは内皮細
1522
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
表 4 間歇性跛行に対する血行再建の適応
(ACC/AHA Practice Guidelines3)より)
1)患者が困っていること
2)薬物治療が無効であったこと
3)他に重大な合併疾患がないこと
4)病変が形態病理学的に治療できること
5)risk / benefit ratio が低いこと
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
表 5 間歇性跛行に対する血管内治療
(ACC/AHA Practice Guidelines3)より)
クラスⅠ:
1)腸骨動脈閉塞症に対して:間歇性跛行により仕事や日
常生活が障害される場合で,血管内治療により症状が
改善する見通しがあり,かつ a)運動療法や薬物療法
では満足できる改善がなかった場合,and/or b)十分
な risk/benefit ratio が期待される(エビデンスレベル A)
2)血管内治療が薦められる腸骨動脈,大腿∼膝窩動脈病
変は TASC type A である(エビデンスレベル B)
3)造影で 50 ∼ 75%の狭窄病変は拡張術前に有意性を診
断するため圧較差を評価すべきである(エビデンスレ
ベル C)
4)救急ステント留置:手技的失敗や不十分な PTA で,圧
較差がある場合,50%以上の狭窄の遺残,血流を障害
する解離等がある場合は,救済措置としてステント留
置が適応となる(エビデンスレベル B)
5)総腸骨動脈狭窄・閉塞病変の PTA/ ステント:第一選択
の治療として有効である(エビデンスレベル B)
6)外腸骨動脈の狭窄・閉塞病変に対するステント:第一
選択治療として有効である(エビデンスレベル C)
クラスⅡ a:
1)大腿,膝窩,脛骨動脈への PTA 失敗に対するステント
および他の補助的手技:手技的失敗や不十分な PTA で,
圧較差がある場合,50%以上の狭窄の遺残,血流を障
害する解離等がある場合は,救済措置として大腿,膝窩,
脛 骨 動 脈 へ ス テ ン ト 留 置 や LASER,cutting balloon,
atherectomy,thermal device 等は有効となりうる(エビ
デンスレベル C)
クラスⅡ b:
1)大 腿 ∼ 膝 窩 動 脈 領 域 に お い て stent,LASER,cutting
balloon,atherectomy,thermal device 等 は そ の 有 効 性
が確立されていない(エビデンスレベル A)
2)膝下領域において uncovered/uncoated stents,LASER,
cutting balloon,atherectomy,thermal device 等 は そ の
有効性が確立されていない(エビデンスレベル C)
クラスⅢ:
1)血管内治療は圧較差がない場合は適応とならない(エ
ビデンスレベル C)
2)大腿,膝窩,脛骨動脈領域の一期的ステント留置は薦
められない(エビデンスレベル C)
3)血管内治療は無症状の患者における予防的治療として
は適応すべきでない(エビデンスレベル C)
機能不全に陥る率等がいずれも相対的に高率であったこ
と 90),等から若年 IC に対する血行再建術の有効性につ
いてはなお明確にされていない.
②重症虚血肢(CLI)
IC のおよそ 5%が病変進行により CLI として手術が行
われ,2%が切断になる.CLI のおよそ 50%が血行再建
術を受け,残り半数の 40%が初診から 6 か月以内に大切
断となっている.CLI の 1 年死亡率は 20 %以上であり,
下腿切断例の 2 年死亡率は 25%である.
CLI は通常,骨盤型+大腿型や大腿型+下腿型,ある
いは 3 領域閉塞型等の多発閉塞型を示し,大腿動脈閉塞
では浅大腿,大腿深動脈の両方に病変が併存する例が見
られる.救肢のためには,迅速な評価と早急な治療の開
始が求められる.一般に血行再建の適応条件は,危険因
子が手術侵襲に耐えられる範囲にあり,1 年以上の生存
が期待できることである.
1)CLI に対する血管内治療
治療ストラテジーは個々の症例ごとに検討される.一
般に CLI はハイリスクであるので,血管内治療が手術に
先行し外科的血行再建が後に行われることも多いが,バ
イパスが閉塞したために血管内治療が行われる場合もあ
る.カテーテル,ワイヤー,バルーン,ステント等の改
良により,CLI の多発病変に対しても治療成功例が増加
している 91),92).
多発病変の治療において,inflow(腸骨動脈)狭窄病
変の有意性診断では圧較差の検出が有用とされる.ただ
し outflow 病変が高度な場合には圧較差が検出されない
可能性があり,この場合は血管拡張薬の使用が有用なこ
とがある.Inflow(腸骨動脈)病変再建により改善が得
られない場合には outflow 再建が必要となるが,その適
3)
〈推奨事項〉
応は感染,潰瘍,壊疽等が存続して治癒せず,通常は足
血行再建の非適応(表 5)
関節上腕血圧比(Ankle brachial pressure index: ABI)<
クラスⅢ
)
0.8 である 93(表
6).
1)CLI への進行を防止するための予防的血行再建術は
適応として妥当でない(エビデンスレベル B).
2)若年者 IC 例(< 50 歳)に対する外科的血行再建の
有用性は不明確である(エビデンスレベル B).
すなわち大動脈 - 大腿動脈バイパスでは 50 歳以下群の
開存率が 50 歳以上群と比べて不良であり,二次的な血
行再建術の追加を必要としたこと 88),人工血管を用いた
大腿 - 膝窩動脈バイパス臨床比較試験では 65 歳以下群の
開存率が不良であったこと 89),さらに 40 歳以下の IC に
対するバイパスでは心臓死の発生率,切断率および歩行
表 6 重症虚血肢に対する血管内治療
(ACC/AHA Practice Guidelines3)より)
クラスⅠ:
1)inflow および outflow 動脈に有意病変を有する多発閉塞
重症虚血肢ではまず inflow 病変を治療する(エビデン
スレベル C)
2)多発閉塞例の inflow 病変に対する血行再建で重症虚血
症状や感染が改善しない場合には outflow 病変にも血行
再建を加える(エビデンスレベル B)
3)inflow 狭窄病変の血行力学的有意性が明らかでない場
合は,血管拡張薬投与下に圧較差を測定する(エビデ
ンスレベル C)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1523
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
2)CLI に対する外科的血行再建
病変の解剖学的所見によって決められる(表 10).
外科的末梢動脈再建における手術死亡率は 0 ∼ 6%と
1)血管内治療(表 10-A,表 11)
低率であるが
,大切断の 30 日以内の死亡率は 4 ∼
94),95)
血 管 拡 張 術, ス テ ン ト,atherectomy,laser,cutting
30 %で,切断に伴う心筋梗塞,脳卒中,感染等の合併
balloons,thermal angioplasty,fibrinolysis(thrombolysis)
症の発生率も 20 ∼ 37%と高率である 96)−99).また切断を
が含まれる.
受けた高齢者は,切断後のリハビリテーションや義足に
開存成績は腸骨動脈病変で最良で,腸骨動脈狭窄の
よる歩行の困難性から,生活の自立や QOL が著しく障
PTA 成功率は 100%に近く,閉塞動脈分節の再疎通成功
害されることを自覚する
100)
.ACC/AHA および TASC Ⅱ
率は 80 ∼ 85 %,5 年 PTA/ ステントの開存率は CLI を含
では,救肢のための外科的血行再建術の適応について,
めた平均で 72%(表 8),IC では 79%と,後者でやや良
生命予後が不良な合併疾患の存在,肢関節拘縮,広範な
好である 103).PTA 単独とステント併用の比較では,平
足壊疽,全身状態不良等の制限がなければ実施されるべ
均 5.6 年の観察で PTA 82%,PTA/ ステント 80% 104),ま
きであるとしている(表 7)
.この中では,広範囲な壊
た IC に対するメタアナリシスでは 4 年 1 次開存率で狭窄
疽に対し一期的切断を推奨しているが,これらに対して
例に対しては 65%対 77%,閉塞では 54%対 61%となっ
は末梢バイパスと free flap 併用の有用性が多数報告され
ている 105).また一側腸骨動脈病変に対する PTA と大腿 -
ており 101),102),必ずしも一期的切断が第一選択とは言え
大腿動脈交差バイパス(Femoro-femoral bypass: F-F バ
イパス)の比較では PTA 単独で 1 年 72 ∼ 92 %,7 年 66
ない.
3
閉塞型からみた血行再建術の適応
①大動脈 - 腸骨動脈病変の血行再建
びまん性病変に対する血管内治療成績は大動脈 - 両側
% 106),107),F-F バイパスで 1 年 73%,5.7 年 59% 107)とい
う報告もある.最近の報告では,ステント留置 8 年 1 次
開存 74% 108)と,材料の改良と相俟って治療成績がさら
に向上している 109).
治療成績に影響する因子として,長い狭窄や閉塞病変,
大腿動脈バイパスに比べて劣っているが(表 8,9),死
亡率や合併症の発生率,日常生活への復帰の点では有意
に優れている.したがって血管内治療と外科的血行再建
表 9 大動脈腸骨動脈閉塞病変に対する大動脈 - 両側大腿動脈
バイパス術成績 112)
術のいずれの治療法を選択するかは,患者の全身状態や
表 7 重症虚血肢に対する外科的血行再建
(ACC/AHA Practice Guidelines3)より)
クラスⅠ:
1)inflow および outflow 動脈に有意病変を有する多発閉塞
重症虚血肢ではまず inflow 病変を治療する(エビデン
スレベル B)
2)inflow および outflow 動脈に有意病変を有する多発閉塞
重症虚血肢で inflow 病変に対する血行再建後に重症虚
血症状や感染が続く例には outflow 病変の血行再建を行
うべきである(エビデンスレベル B)
3)足底体重加重域の壊疽,修復不能な関節拘縮,肢不全
麻痺,高度の安静時疼痛,敗血症,合併疾患による生
命予後不良等では一期的切断を考慮すべきである(エ
ビデンスレベル C)
クラスⅢ:
重症虚血症状がなくてかつ下肢血行が高度に障害されてい
る例(ABI < 0.4)は外科的血行再建および血管内治療の適
応がない(エビデンスレベル C)
表 8 大動脈腸骨動脈閉塞病変に対する腸骨動脈拡張術の成績
(TASC Ⅱ 4)より)
間歇性跛行例 技術的成功率
76%
(81-94)
1524
96%
(90-99)
一次開存率
1年
3年
5年
86%
82%
71%
(81-94) (72-90) (64-75)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
間歇性跛行(例数)
(肢数)
重症虚血肢(例数)
(肢数)
5年
85%(85-89)
91%(90-94)
80%(72-82)
87%(80-88)
10 年
79%(70-85)
86%(85-92)
72%(61-76)
81%(78-83)
表 10-A 大動脈 - 腸骨動脈病変の血行再建:推奨事項
(TASC Ⅱ 4)より)
TASC A 病変: 血管内治療,D 病変はバイパスが第一選択の
治療である(エビデンスレベル C)
TASC B 病変: 血管内治療,C 病変は手術治療が推奨される
が,患者のリスク,手術成績等を考慮し選択
されるべきである(エビデンスレベル C)
表 10-B Inflow(大動脈腸骨動脈)病変に対する外科的血行再建
(ACC/AHA Practice Guidelines3)より)
クラスⅠ:
1)再建が必要な大動脈 - 両側腸骨動脈病変には大動脈両側
大腿動脈バイパスが推奨される(エビデンスレベル A)
2)一側腸骨動脈病変では腸骨動脈の内膜摘除術,パッチ
形成術,大動脈腸骨動脈バイパス,腸骨大腿動脈バイ
パス等が選択されるべきで,また大動脈両側大腿動脈
バイパスが適さない両側腸骨動脈病変例では,上記と
大腿大腿動脈バイパスの併用による再建が選択される
べきである(エビデンスレベル B)
3)腋窩大腿大腿動脈バイパスは広範な大動脈腸骨動脈病
変の重症虚血肢で他の治療法が適さない場合に選択さ
れるべきである(エビデンスレベル B)
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
表 11 大動脈腸骨動脈病変の TASC 分類(TASC Ⅱ 4)より)
A 型病変
CIA の片側あるいは両側狭窄
EIA の片側あるいは両側の短
い(≦ 3cm)単独狭窄
B 型病変
腎動脈下部大動脈の短い(≦
3cm)狭窄
片側 CIA 閉塞
CFA には及んでいない EIA で
の 3 ∼ 10cm の単独あるいは
多発性狭窄
内腸骨動脈または CFA 起始
部を含まない片側 EIA 閉塞
C 型病変
両側 CIA 閉塞
CFA に は 及 ん で い な い 3 ∼
10cm の両側 EIA 狭窄
CFA に及ぶ片側 EIA 狭窄
内腸骨動脈および/または
CFA 起始部の片側 EIA 閉塞
内腸骨動脈および/または
CFA 起 始 部 あ る い は 起 始 部
でない,重度の石灰化片側
EIA 閉塞
D 型病変
腎動脈下部大動脈腸骨動脈
閉塞
治療を要する大動脈および
腸骨動脈のびまん性病変
片 側 CIA,EIA お よ び CFA を
含むびまん性多発性狭窄
CIA および EIA 両方の片側閉
塞
EIA の両側閉塞
治療を要するがステントグ
ラフト内挿術では改善が見
られない AAA 患者,あるい
は大動脈または腸骨動脈外
科手術を要する他の病変を
持つ患者の腸骨動脈狭窄
CIA;総腸骨動脈,EIA;外腸骨動脈,CFA;総大腿動脈,
AAA;腹部大動脈瘤
B).
大動脈 - 両側大腿動脈バイパスに関する 1997 年のメタ
アナリシスでは,肢数および例数 5 年 1 次開存率 87.5%
および 81.8 %,10 年 80.4 %および 72.1 %と極めて良好
であり(表 9),およその開存率は IC 5 年 85 %,10 年
80%,CLI では各々 5%程低下する.また肢数で見ると
各々 5 %程上昇する 112).手術死亡率は 3.3 %,手術合併
症は 8.3%で 112),最も多い合併症は心筋梗塞(0.8 ∼ 5.2%)
または腎不全(0 ∼ 4.6%)であった 88),113).
大動脈 - 腸骨動脈血栓内膜摘除術は,CLI の場合では,
広範病変が多いことから実施される頻度が低いが,10
年開存率 48 ∼ 77% 114)と,術者の手技の適否と症例の選
択が長期開存成績と関係している.
非解剖学的アプローチは高度の肥満,低心機能,呼吸
器合併症,porcelain aorta 等で選択され,腋窩 - 大腿動脈
バイパスや F-F バイパスが行われる.
腋窩 - 大腿動脈バイパスは高度の大動脈 - 腸骨動脈病
変を有し,かつ心臓疾患によるハイリスクや腹部手術に
対する障害がある例で選択され,ポルエステルと ePTFE
人工血管のいずれかにより腋窩 - 大腿 - 大腿動脈バイパ
スが行われる.5 年開存率は一側腋窩 - 大腿動脈バイパ
スで 19 ∼ 50 % 115),116),腋窩 - 大腿 - 大腿動脈バイパスで
)
50 ∼ 76%である 117(表
12).一側腸骨動脈病変では,大
動脈 - 腸骨動脈バイパス,腸骨 - 大腿動脈バイパス,大
腿 - 大腿動脈バイパス等いずれも良好な成績が報告され
ている.
②大腿 - 膝窩動脈病変の血行再建(表 13,表 14)
1)血管内治療(表 14-A)
材料や手技の改善 / 向上により,大腿 - 膝窩動脈狭窄
に対する PTA の技術的成功率は 95 %以上,閉塞に対す
る再疎通率は 85%以上である(表 15).バイパス術との
びまん性病変,末梢 run-off 不良,糖尿病,腎不全(維
臨床比較試験では,中央値 4 年の観察で,生存率,開存率,
持透析),喫煙,CLI 等で低下する.また女性では外腸
救肢率に差は見られなかったが,浅大腿動脈狭窄・閉塞
骨動脈ステント
110)
,さらにホルモン療法下では腸骨動
脈ステント 111)の開存率がいずれも低下する.
で,病変が長い例ではバイパスが明らかに優っていた
(82%対 43%)118).
PTA/ ステント治療後の血栓閉塞防止のため抗血栓療
2)外科的血行再建術(表 14-B)
法として,術中は heparin,長期的には aspirin や clopi-
膝上,膝下とも自家静脈グラフトが最良の開存率を示
dogrel の生涯投与が推奨されている.
す(エビデンスレベル A).しかし膝上膝窩動脈へのバ
2)外科的血行再建(表 10-B)
イパスは,人工血管が自家静脈グラフトに近い許容でき
術式には,バイパス術と血栓内膜摘除術があり,バイ
パス術ではポリエステル人工血管か expanded polytetra-
fluoroethylene(ePTFE)が第一選択として用いられる.
大動脈腸骨動脈領域のびまん性閉塞に対しては,大動脈
- 両側大腿動脈バイパスが第一選択術式である(表 10-
表 12 非解剖学的バイパス術の 5 年開存率 115)−117)
腋窩 - 片側大腿動脈バイパス
腋窩 - 両側大腿動脈バイパス
大腿 - 大腿動脈バイパス
5 年開存率
51%(44-79)
71%(50-76)
75%(55-92)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1525
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
表 13 大腿膝窩動脈病変の TASC 分類(TASC Ⅱ 4)より)
A 型病変
単独狭窄≦ 10cm 長さ
単独狭窄≦ 5cm 長さ
表 14-A 大腿 - 膝窩動脈病変に対する血行再建:
推奨事項(TASC Ⅱ 4)より)
TASC の適応推奨は,inflow 再建と同様である:
TASC A 病変は血管内治療,D 病変は手術
(バイパス)が第一選択の治療である(エビデンスレベル C)
TASC B病変は血管内治療が望ましく,C 病変はリスクが高
くなければ手術治療が推奨されるが,患者のリスク,手術成
績等を考慮し選択されるべきである
B 型病変
多発性病変(狭窄または閉塞)
,
各≦ 5cm
膝下膝窩動脈を含まない≦
15cm の単独狭窄または閉塞
末梢バイパスの流入を改善する
ための脛骨動脈に連続性を持た
ない単独または多発性病変
重度の石灰化閉塞≦ 5cm 長さ
単独膝窩動脈狭窄
C 型病変
重度の石灰化があるかあるいは
ない,全長> 15cm の多発性狭
窄または閉塞
2 回の血管内インターベンショ
ン後に,治療を要する再発狭窄
または閉塞
D 型病変
CFA ま た は SFA( > 20cm, 膝
窩動脈を含む)の慢性完全閉塞
膝窩動脈および近位三分枝血管
の慢性完全閉塞
表 14-B Outflow(鼠径以下)の病変に対する外科的血行再建
(ACC/AHA Practice Guidelines3)より)
CFA;総大腿動脈,SFA;浅大腿動脈
る開存成績を示すことと大伏在静脈の使用節減の意味か
ら,人工血管が使用される場合が多い.しかし後者につ
いては異論もある.
③膝下膝窩動脈以遠の血行再建
クラスⅠ:
1)膝上膝窩動脈バイパスは可能ならば自家大伏在静脈を
使用すべきである(エビデンスレベル A)
2)膝下膝窩動脈バイパスは可能ならば自家大伏在静脈を
使用すべきである(エビデンスレベル A)
3)バイパスの中枢吻合部は上流に 20%以上の狭窄のない
最遠位部に設定するべきである(エビデンスレベル B)
4)末梢バイパス吻合部は足部動脈に連続する血行路を有
する脛骨動脈か腓骨動脈に設定すべきである(エビデ
ンスレベル B)
5)大腿脛骨動脈バイパスは同側大伏在静脈を用いるべき
で,それが使用できない場合には下肢および上肢静脈
を使用する(エビデンスレベル B)
6)大腿 - 膝窩 - 脛骨動脈 sequential bypass および足部動脈
への側副血行を有する isolated popliteal segment へのバ
イパスはいずれも有用な血行再建法であり,他に有効
な自家静脈によるバイパス法がない場合には考慮すべ
きである(エビデンスレベル B)
7)切断に瀕している例で,自家静脈が使用できない場合,
人工血管による大腿 - 脛骨動脈バイパスおよび動静脈瘻
増設や静脈グラフトとのコンポジットグラフト,静脈
カフ等の補助的手段を用いるべきである(エビデンス
レベル B)
クラスⅡ a:
自家静脈が使用できない場合,大腿膝下膝窩動脈バイパス
に対する人工血管の使用は有効に使用しうる(エビデンス
レベル B)
この領域では通常,CLI が対象となり,救肢が目的と
なるが,血管内治療とバイパスの臨床比較試験は行われ
大腿 - 脛骨動脈バイパスの 5 年 1 次開存率に関し,CLI
ていない.通常,自家静脈グラフトによるバイパスが第
が 50 %以上含まれる報告のメタアナリシスでは,自家
一選択の治療であるが,時には PTA の併用が有効な例
静脈グラフト 70 %に対し人工血管は 27 %であった.し
がある.
たがって膝下膝窩動脈や脛骨,足部動脈へのバイパスで
1)バイパス術
は,自家静脈の使用が望ましい.その場合,同側大伏在
人工血管を用いる膝窩動脈バイパスの 5 年開存率は,
静脈が使用できない例には他の静脈,すなわち小伏在静
膝 上 47 % に 対 し 膝 下 で は わ ず か 33 % と 後 者 で 不 良
脈,対側大伏在静脈,上肢静脈,およびこれらによる
で 119),再手術や修復手術が高率に必要となる.CLI では,
spliced 静脈グラフト等の使用により,人工血管よりも
多発閉塞のため,救肢目的により末梢へより長いバイパ
良好な開存率が得られるとの報告がある 120).
スが必要となる.通常 in situ または reversed 静脈グラフ
静脈グラフトの長さが足りない場合には膝上膝窩動脈
トによる脛骨動脈へのバイパスが行われ,病変のない足
に人工血管でバイパスを置き,さらに自家静脈を用いて
部へ連続する流出路を有する動脈が選択される.
末梢動脈へバイパスする方法がある 121).またそれらも
表 15 大腿膝窩動脈拡張術の成績(TASC Ⅱ 4)より)
PTA 単独
PTA+ ステント
1526
1 年開存率
3 年開存率
5 年開存率
狭窄
閉塞
狭窄
閉塞
狭窄
閉塞
77%(78-80) 65%(55-71) 61%(55-68) 48%(40-55) 55%(52-62) 42%(33-51)
75%(73-79) 73%(69-75) 66%(64-70) 64%(59-67)
−
−
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
不可能な場合には人工血管と補助手段,すなわち動静脈
安静時疼痛や潰瘍といった重症虚血肢には,可能な限
瘻の造設,人工血管と静脈グラフトとの composite,あ
り血行再建術を行う.加えて薬物治療を含む補助療法が
るいは静脈カフ等が開存性を改善する可能性があるが,
行われる.
確証はない.
ASO においては全身の心血管リスクを低減させるべ
末梢動脈バイパスの手術死亡率は代用血管の種類にか
く,二次予防や動脈硬化に悪影響を及ぼす基礎疾患の管
かわらず 1 ∼ 6%である 121)−124).
理も求められる.
2)血管内治療
下腿動脈の PTA は大腿∼膝窩動脈 PTA と併用され,
成績は技術成功 90%前後で,合併症は 2.4 ∼ 17%に見ら
1
運動療法
〈推奨事項〉4)
れ,70 %で救肢に成功している.成功の条件として閉
クラスⅠ
塞分節が短く,PTA を要する血管数が少ないこと等が挙
1. すべての間歇性跛行患者に対する初期治療の一環と
げられる.バイパスに先行して outflow 動脈への PTA を
して,監視下運動療法を推奨する(エビデンスレベル
行う場合,ACC/AHA ガイドラインでは,PTA の失敗は
A).
その後のバイパスの障害とならないとされている.ただ
2. 最も効果的な運動法として,トレッドミルまたはト
し,これは PTA がバイパス手術に関する知見に基づき
ラック歩行が推奨される.跛行を生じるに十分な強度
施行された場合である.PTA を行うにあたっては,失敗
で歩行し,疼痛が中等度になれば安静にすることを繰
後の救肢的バイパス術が困難とならないように,末梢吻
り返し,1 回 30 ∼ 60 分間行う.基本的に週 3 回 3 か月
合部や outflow 血管を温存する等,適応範囲に関して綿
間行う(エビデンスレベル A).
密な検討を行う.大腿・膝窩・下腿動脈閉塞はその多く
クラスⅡ a
が CLI であるとともに,糖尿病 / 維持透析例に多く見ら
1. 監視下運動療法を行うのが難しい場合に,内服薬併
れる閉塞型である.この場合には,膝下膝窩動脈を閉塞
用在宅運動療法が間歇性跛行治療の第一選択になり得
させないように留意する.維持透析例の末梢型広範病変
る(エビデンスレベル C).
(多発分節狭窄・閉塞)においては,一般に PTA の成功
率は低く,失敗は救肢不能につながることがあるため,
TASC Ⅱでは,監視下運動療法がその有効性から,初
適応は厳密に判断する.
期治療として推奨された 125)−129).効果のメカニズムと
3
しては,歩行効率,内皮機能および骨格筋での代謝順応
薬物療法およびその他の治療法
性の改善が挙げられている.
閉 塞 性 動 脈 硬 化 症(arteriosclerosis obliterans: ASO)
TASC Ⅱで推奨される運動処方 4)
の保存的治療は,我が国でも独自の治療薬開発および
運動は週 3 回を基本とし,トレッドミルを跛行症状が
様々な手法が行われている.しかしながら,その多くは
3 ∼ 5 分以内に生じる程度の速度と傾斜に設定する.歩
大規模臨床試験がなく,日本人に特有の治療指針を示す
行による痛みが中等度になれば歩行を中断する(跛行出
に足るエビデンスはない.したがって,欧米で発行され
現時で中断すると,最適なトレーニング効果は現れな
た 治 療 指 針 で あ る TASC(Trans Atlantic Inter-Society
い).痛みが治まるまで安静にし,また同様に中等度の
1)
Consensus) およびこれを改訂・簡略化し日本も作成に
痛みになるまで歩行する.この繰り返しを初回は少なく
参加した TASC Ⅱ 4)とその日本語訳「下肢閉塞性動脈硬
とも 35 分間行い,患者が慣れるに従い,回ごとに 5 分
化症の診断・治療指針」 に沿いながら,ただし薬物療
ずつを目安に 50 分間まで延長する.過度の疲労や下肢
法に関しては日本で使用可能な薬品で,日本での臨床試
痛を避けるように注意する.中等度の跛行痛を生じるこ
験の結果を踏まえながら指針を示した.推奨事項のクラ
となく 10 分間以上歩けるようになれば,トレッドミル
4)
スおよびエビデンスレベルは,
ACC/AHA ガイドライン
3)
の傾斜や速度を増加する.患者の平均歩行速度は 1.5 ∼
2.0mph(約 2.4 ∼ 3.2km/h)とされ,既に 2.0mph(3.2km/h)
に倣った.
間歇性跛行に対する治療は,薬物療法と運動療法が二
で歩行できる場合は傾斜を増加させる.さらなる目標は,
本柱である.一般に約 3 ∼ 6 か月間を目安に行い
速度を健常者の 3.0mph(4.8km/h)まで速めることであ
125),126)
,
症状の改善傾向がなく生活に大きな支障を生じている場
る.
合は血行再建術が考慮される.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1527
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
患者は(1)心血管リスクファクターの評価,
(2)ASO
投与によりトレッドミル歩行能と QOL 双方の改善が見
その他筋骨格系の制限・神経学的障害等による機能障害,
られたというエビデンスから,心不全がない場合,跛行
(3)ASO 重症度評価を行った後,監視下運動療法に参加
する.運動の強度が上がることで冠動脈疾患等の症候が
ostazol 投与不可能例では,その他の薬剤を投与する.
出現しないか注意する.効果の継続には運動の継続が必
安静時疼痛や虚血性潰瘍に対しては,我が国で使用可
要である.糖尿病性神経障害を有する患者においては,
能な治療薬はいずれも,臨床試験で有効性が示されてい
適切な履物を使用し,足部病変を生じないよう観察する.
る.しかし劇的な血流増加は望めないため,可能な限り
現在の大きな問題点は,我が国では保険で認可された
の血行再建術を基本とし,補助療法として薬物療法を併
監視下運動療法施設が非常に少ないことで,治療の第一
用する.
選択とすることは非現実的である.監視下運動療法を行
2)血行再建・血管内治療による開存率の向上
うのが難しい場合に,内服薬併用在宅運動療法が間歇性
TASC Ⅱでは,血行再建後は禁忌がない限り抗血小板
跛行治療の第一選択になり得る 130).
薬を長期にわたり継続すべきであるとされている.低用
2
薬物療法
〈推奨事項〉
量 aspirin が最も推奨されるが,投与不可能な患者には
clopidogrel が推奨されている(エビデンスレベル A).
ただし,現在我が国で clopidogrel の処方が認可されてい
クラスⅠ
るのは,虚血性脳血管障害(心原性塞栓症を除く)後の
1. 間歇性跛行患者の歩行距離改善のため,心不全がな
再発抑制および経皮的冠動脈形成術(PCI)が適応され
い場合,第一選択薬物療法として cilostazol を投与す
る急性冠症候群のみである.自家静脈グラフトは warfa-
る(エビデンスレベル A).
rin で管理されることが多いが,warfarin の有効性につい
2. 血行再建・血管内治療後の開存性向上のために,低
用量 aspirin を投与する(エビデンスレベル A).
3. 全身の血管イベント抑制のために,他の心血管疾患
てのエビデンスはない.
3)全身の血管イベント抑制
無症候性患者を含め,ASO 患者は複数のアテローム
の病歴の有無にかかわらず,低用量 aspirin を長期処
性動脈硬化症疾患のハイリスク集団である.Aspirin は,
方する(エビデンスレベル A).
心血管疾患の患者に対して明らかな二次予防効果が広く
クラスⅡ a
認められ,強く推奨されている.ASO 患者においても,
1. 間歇性跛行患者の歩行距離改善のため,cilostazol 投
最近のメタ解析では,aspirin による虚血イベント抑制効
与が不可能な患者には,他の血管拡張作用を有する抗
果は他の抗血小板薬と比較して高かった 134)−136).Clopi-
血小板薬を投与する(エビデンスレベル C).
dogrel は,CAPRIE(Clopidogrel versus Aspirin in Pa-
クラスⅢ
1. 間歇性跛行患者の治療としての vitamin E 投与は推
奨されない(エビデンスレベル C).
2. Vitamin B 群や葉酸の補充によるホモシステイン高
値の是正では,心血管イベントの予防効果は実証され
ておらず,推奨されない(エビデンスレベル B).
①薬物療法の目的
薬物療法の主な目的は,(1)症状および虚血の改善,
1528
症状改善のための第一選択薬物療法である 131)−133).Cil-
tients at Risk of Ischemic Event)trial に よ り, 症 候 性
PAD 患者群において心血管死のリスクを減少させ,そ
の効果は aspirin より優れている結果が示された 137).し
かしながら,現在我が国では ASO に対する心血管イベ
ント予防目的での投与は認可されていない.
②各種薬剤の特徴
1)cilostazol(シロスタゾール)
跛行における臨床的有用性についてエビデンスを有す
(2)血行再建術後の開存性の向上,
(3)全身の血管イベ
る唯一の医薬品で 131),血管拡張および抗血小板作用を
ント抑制,にある.我が国では,自国で開発された様々
持つホスホジエステラーゼⅢ阻害薬である.日本人にお
な治療薬がある.多くの薬剤で大規模臨床試験がないた
いても間歇性跛行の改善が報告された 133).また鼠径靱
めエビデンスが得られていないが,有効性を示す臨床試
帯 以 下 の バ イ パ ス 術 後 の グ ラ フ ト 開 存 性 に 関 し て,
験がある.
ticlopidine と同等の有効性 138),および潰瘍縮小効果が報
1)症状および虚血の改善
告された 139).心不全を有しない患者を対象とした長期
間歇性跛行の改善に対しては,血管拡張作用を有する
予 後 試 験 CASTLE study(Cilostazol: A Study in Long-
経口抗血小板薬を基本とする.Cilostazol は,3 ∼ 6 か月
term Effects)では,死亡率はプラセボ群と差がなく,
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
長期安全性が示された 140).ただし心拍数増加作用によ
が国の臨床試験で安静時疼痛および潰瘍治癒に対し有用
り,虚血性心疾患を有する患者では発作を誘発しうるた
性が示された 150).また QOL が有意に改善したと報告さ
め注意する.心不全を悪化させるか否かについては明ら
れた 151).しかし,海外では PGE1 の効果を疑問視する報
かになっていないが,現在日本では,心不全患者には禁
告もある 152).
忌とされている.
PGI2 誘導体である経口 beraprost(ベラプロスト)は,
2)aspirin(アスピリン)
間歇性跛行に関する臨床試験では肯定的な結果と 153)否
Aspirin は抗血小板作用を有し,心血管イベント抑制
定的な結果がある 154).潰瘍に対しては有効との報告が
効果が確実であるため ASO の長期治療に重要である
ある 155).
が
134)−136)
,跛行や安静時痛・潰瘍といった症状に対す
る改善効果は認められていない.メタ解析によって,鼠
6)eicosapentaenoic acid(EPA:イコサペンタ酸エチ
ル)
径部以下の動脈グラフト開存性の維持に有効であること
EPA は,ASO の症状改善に関するエビデンスはない
が示されている 141).
が,日本人の高コレステロール血症患者を対象とした臨
3)ticlopidine(チクロピジン)および clopidogrel(ク
床試験 JELIS(Japan EPA Lipid Intervention Study)にお
ロビドグレル)
いて,statin と併用した長期投与により冠動脈イベント
Ticlopidine は強力な抗血小板作用,アテローム性動脈
を抑制することが示され 156),サブ解析では脳卒中既往
硬化の進行抑制効果を有し,また血行再建術後のグラフ
者での再発抑制が認められた 157).
ト開存性において有効性を示した(エビデンスレベル
7)argatroban(アルガトロバン)
142),143)
A)
.我が国における試験では,虚血性潰瘍の改善
効果が報告されている
144)
.しかし血小板減少,骨髄抑制,
注射抗トロンビン薬アルガトロバンは,我が国におけ
る開発試験および臨床試験で虚血性潰瘍,疼痛,冷感の
肝機能障害といった合併症が問題になる.こうした副作
改善効果が示されている 158)−160).
用を解消し,同様の有用性が期待されるのが clopidogrel
8)脂質低下薬
であるが,我が国での適応認可は,虚血性脳血管障害(心
アテローム性動脈硬化症では血管内皮および代謝異常
原性塞栓症を除く)後の再発抑制目的および PCI が適応
が認められ,statin はこれらを改善する.運動能に対す
される急性冠症候群のみである.
る効果を有用視する試験がある.
4)sarpogrelate(サルポグレラート)
9)その他の医薬品
選択的 5-HT2 受容体阻害薬で,セロトニンによって
跛行治療における vitamin E 投与,ホモシステイン降
増強される抗血小板凝集,血管収縮,血管平滑筋の増殖
下療法は,効果が立証されていない.
を抑制する.使用調査成績では血圧や心拍数に影響を与
えず 145),作用時間が短いため出血性合併症が危惧される
患者にも比較的安全に使用できる.日本人の間歇性跛行
に対する臨床試験では,Walking Impairment Question-
3
重症虚血肢に対する補助療法
①血液浄化療法
naire(WIQ)を指標に,日常生活における歩行障害を
適応は,ASO で次のいずれにも該当するものとされ
改善することが示唆された 146).他にも冷感,間歇性跛行,
ている.1 クールにつき 3 か月間に限って 10 回を限度と
安静時疼痛,潰瘍の改善効果が報告されている
147),148)
.
されている.
5)prostaglandin(プロスタグランジン)
1.Fontaine 分類Ⅱ度以上の症状を呈する.
血管拡張作用,血小板凝集抑制作用を有す.重症下肢
2.薬物療法で血中総コレステロール値 220mg/dL ま
虚血の補助療法として,疼痛・潰瘍の改善を期待して投
たは,LDL コレステロール値 140mg/dL 以下に下が
与が検討される.
らない高コレステロール血症.
Prostaglandin E1(PGE1) と し て, 経 口 薬 で は li-
maprost alfadex(リマプロストアルファデクス)が,注
3.外科的治療が困難で,かつ従来の薬物療法では十
分な効果を得られない.
射薬では alprostadil alfadex(アルプロスタジルアルファ
血流改善の機序としては血中 LDL やフィブリノゲン
デクス)および脂肪乳化した PGE1 製剤である lipo PGE1
の除去による微小循環の改善の他に,ブラジキニンの産
の alprostadil alfadex( ア ル プ ロ ス タ ジ ル ) が あ る.
生,内皮機能の改善と一酸化窒素の産生増加等,多数の
PGE1 の注射投与は,経動脈・静脈投与ともに間歇性跛
要素が知られ,非高脂血症患者にも効果を認める報告が
行を改善したとのメタ解析がある
149)
.Lipo PGE1 は,我
ある 161).しかし,適切な頻度や回数に関しての明確な
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1529
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
エビデンスはない.また効果判定が統一化されておらず
う結論を出したが,方法論的な欠点があり,結果は慎重
治療に反応しない患者もあり,有効性に関するエビデン
に解釈すべきとの意見もある.効果の検証が不足してい
スは得られていない.脂質降下薬の開発が進み,厳密に
ること,費用が高いことが問題である.
適応を満たす症例も少ない.
⑦血管新生療法
②潰瘍ケア
虚血性難治性潰瘍に対する先端医療として,HGF,
歩行による酸素消費および荷重を回避するため,可能
VEGF,FGF といった遺伝子治療や自己骨髄単核球細胞
な限り安静とする.歩行の際には靴等による圧迫を避け
移植,末梢血単核球細胞移植がいくつかの施設で行われ
るよう工夫する.褥瘡を作らないよう免荷する.糖尿病
ているが,現段階では研究的医療である.HGF 遺伝子
性足病変によく見られる胼胝もまた,局所に圧挫を与え
治療と自己骨髄単核球細胞移植に関しては,我が国での
創傷の原因となるので,足を傷つけぬよう注意して手入
臨床試験で有効性が報告された 163)−165).
4 れする(→ⅩⅤ.糖尿病性足疾患 ⃝
2
)足病変に対する
4
治療も参照)
.
③感染制御
心血管リスクファクターの管理
(無症候性患者を含む)
〈推奨事項〉
虚血性潰瘍は血流が乏しいという性質から,免疫成分
クラスⅠ
および抗生物質が行き届かず,易感染性でかつその制御
1. 低用量 aspirin を投与する(エビデンスレベル A).
も困難である.同定された菌に感受性のある抗生薬を投
2. β遮断薬は PAD にとって禁忌ではない(エビデン
与することは重要であるが,ドレナージと壊死組織のデ
スレベル A).
ブリドマンが感染制御の基本となる.一般的には手術は
3. 無症候性下肢虚血を有する患者には,禁煙,減量,
感染制御後に行うのが望ましいが,血行再建術で虚血を
および高脂血症,糖尿病,高血圧の現行の国の治療ガ
改善しないと感染も改善しない場合が多い.進行性に全
イドラインに従った治療が勧められる(エビデンスレ
身状態悪化が予測される等,場合によっては患部切断も
ベル B).
考慮する.
④交感神経ブロック・切除
162)
β遮断薬は間歇性跛行を悪化させる可能性のため,こ
れまで ASO 患者には投与が控えられていた.しかし,
では,血行再建術の選択肢がな
このことはランダム化比較試験では実証されなかっ
い患者において下肢温存を改善するという結論を出し
た 166).冠動脈疾患を合併する ASO 患者には心保護作用
た.皮膚の血管収縮を抑制し血流を増加させるが,筋群
による利益も望め,高血圧治療に使用してもよい.喫煙
の血流を増加させる効果はないため,跛行の改善はない.
は疾患の重症度,切断リスクの増大,死亡率および血行
切断端や潰瘍の治癒を補助する手段として用いられる.
再建術後のグラフト閉塞に悪影響を与える 167).
Cochrane レビュー
⑤温熱療法
代表的なものとして,炭酸泉足浴がある.皮膚に付着
する炭酸ガスが増加し,中枢へ酸素不足の信号が送られ
Ⅷ
頸動脈,椎骨動脈
ることで,血管拡張が促進され血流量の増加を促す.安
全性が高く施行も容易であるが,治療効果の持続性は高
我が国でも頸動脈病変をはじめとしたアテローム硬化
くないと考えられている.
による大血管病変に起因する脳血管障害が増加してきて
人工炭酸泉製造装置によって遊離二酸化炭素濃度を
いる.
1,000ppm 以上にした約 37 ℃の温水で,患部を 10 ∼ 15
頸動脈狭窄症に対する頸動脈内膜摘除術の有効性がい
分間温浴させる.
くつかのランダム化試験で証明され 25),168)−170),虚血性
⑥高気圧酸素療法
1530
脳血管障害の予防,治療においてこれらを適切に治療す
ることが求められる.治療にあたっては,高脂血症,高
Cochrane レビュー 162)では,高気圧酸素療法が糖尿病
血圧,糖尿病,喫煙等を含むその他の危険因子の評価,
性潰瘍患者の大切断術のリスクを優位に減少させるとい
治療が同時になされることが重要である.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
頸動脈の狭窄度のあらわし方はいくつかあるが,ここ
では NASCET
25),171)−174)
で用いられた狭窄率を基準とす
虚血発作よりは脳梗塞,黒内障よりは大脳半球に関連す
る症状を有する症例で手術がより有効と考えられ
る.
た 171)−174).NASCET,ECST の報告により 50 ∼ 69 %の
NASCET で用いられた狭窄率:(1- 狭窄部の最小内腔
有症状頸動脈狭窄について,手術療法が抗血小板薬によ
径 / 内頸動脈が平行になった部位での内腔径)× 100
る治療よりも有効であるという結果が得られたが,手術
1
1
頸動脈狭窄症に対する頸動脈
内膜摘除術の治療基準
70 ~ 99%の有症状頸動脈狭窄 25),168),169)
〈推奨事項〉
と薬物療法との差は 70 %以上の狭窄を有する場合に比
べると小さく,手術の選択は個々の患者の事情に合わせ
て行う 171),176).
3
50%以下の有症状頸動脈狭窄
〈推奨事項〉
クラスⅢ
狭窄度が 50 %以下の場合は手術の適応はない 168),171)
クラスⅠ
有症状頸動脈狭窄については手術リスクが 6%以下の
患者で,最近 6 か月以内に一過性脳虚血発作,あるいは
中等度以下(Rankin Score 2 以下)の脳梗塞を伴う 70%
以上の有症状頸動脈狭窄が手術(周術期合併症,死亡が
(エビデンスレベル A).
4
有症状頸動脈閉塞
〈推奨事項〉
6%以下の外科医による)の最も良い適応である(エビ
クラスⅢ
デンスレベル A).
有症状頸動脈閉塞に対して頭蓋外 / 頭蓋内バイパス手
)
術は常には勧められない 177(エビデンスレベル
A).
一過性脳虚血発作,あるいは中等度以下の脳梗塞を起
こした頸動脈狭窄症の症例を対象とし,欧米で行われた
3 つの大きなランダム化試験で,70%以上の有症状頸動
脈狭窄に対しては頸動脈内膜摘除術により脳血管障害の
5
無症候性頸動脈狭窄に対する治療
適応 170)
〈推奨事項〉
危険が軽減されることが示された.
クラスⅠ
なお,有症候性頸動脈狭窄症の自然経過についての検
手術リスクが 3%以下で少なくとも 5 年以上の生存が
討から,症状発症から 1 年以内が最も脳梗塞の発症頻度
見込まれる患者においては,60 %以上の無症候性頸動
が高く,その後次第に低くなり 3 年以上たつと年間 5%
脈狭窄が頸動脈内膜摘除術の適応と考えられる(エビデ
以下となることから,症状発現後ある程度以上時間がた
ンスレベル A).
つと手術の有用性は低下する.
2
50 ~ 69%の有症状頸動脈狭窄
〈推奨事項〉
ACAS の報告によると,60%以上の頸動脈狭窄病変を
有する患者においては,5 年間で病変と同側の脳卒中の
発症率は手術群 5.1%,内科的治療のみでは 11%と優位
クラスⅠ
な差を認めた.しかしながら,その差は有症状高度狭窄
手術リスクが 3%以下で少なくとも 5 年以上の生存が
における差と比べると大きくはない.
見込まれる患者においては最近 6 か月以内に一過性脳虚
血発作,あるいは中等度以下の脳梗塞を伴う 50 ∼ 69%
2
の有症状頸動脈狭窄に対しても年齢,性別,並存疾患,
頸動脈内膜摘除術の
ハイリスク群
最初の症状の重症度によっては手術の適応となる(エビ
デンスレベル A).
頸動脈内膜摘除術のハイリスク群としては,病変が第
クラスⅡ a
2 頸椎より高位まで存在する場合,頸動脈内膜摘除術後
手術適応の場合は症状出現後,2 週間以内の手術が有
の再狭窄,頸部廓清手術の後,頸部放射線療法のあと,
175)
効である (エビデンスレベル B).
重篤な心不全,呼吸不全,心筋梗塞を起こして 6 か月以
内の患者,冠動脈バイパスとの同時手術等が知られてい
具体的には 75 歳以上,男性,高度な狭窄,一過性脳
る.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1531
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
3
合併症がある場合の治療適応
抗血栓薬,脂質低下薬,その他の危険因子の治療薬等
の内科的治療にもかかわらず症状が治まらない有症状頭
蓋外椎骨動脈狭窄に対して血管内治療が適応となりうる
重症の腎,肝,呼吸,心不全,コントロール不良な糖
(エビデンスレベル C).
尿病,高血圧,5 年以上の生存が期待できない悪性腫瘍
等が併存する場合,脳塞栓を起こす心原性等の他の原因
椎骨動脈狭窄に対する治療適応は頸動脈狭窄症ほど厳
が認められる場合,頸動脈分岐部と同等以上の末梢病変
密には検討されてないが,頭蓋内血流改善,椎骨動脈か
が存在する場合は内科的治療が選択される.
らの塞栓予防を目的として治療が行われる.
4
頸動脈ステント留置術の適応
頭蓋外椎骨動脈狭窄を認め,内科的治療にもかかわら
ず椎骨脳底動脈領域の一過性脳虚血発作や脳梗塞を繰り
返す症例に対して,治療の適応があると考えられる 181).
〈推奨事項〉
クラスⅡ b
70 %以上の有症状頸動脈狭窄で狭窄が手術で到達す
るには難しい場合,手術リスクを大きく増大させる健康
Ⅸ
腹部内臓動脈
状態が存在する場合,あるいは放射線治療後の頸動脈狭
窄,頸動脈内膜摘除術後再狭窄等の特殊な条件下では頸
動脈ステント留置術は手術に対して成績は劣らず適応が
1
急性腸間膜動脈閉塞症
検討される(エビデンスレベル B).
クラスⅡ a
主な原因は塞栓症や動脈血栓症,動脈硬化による慢性
頸動脈ステント留置術は周術期合併症率,死亡率が 4
狭窄病変,易血栓形成状態や急性動脈解離等である.原
∼ 6%の術者によりなされるべきである(エビデンスレ
因にかかわらず,理学所見が発現する前に,まず激しい
ベル B).
腹痛を訴える.腹部膨満,硬直,筋性防御や全身症状は
数日後に発現する.これは,腹膜の炎症が遅れて起こる
これまで頸動脈内膜摘除術と頸動脈ステント留置術の
比較試験で,頸動脈ステント留置術の有効性を示す結果
は得られなかったが 178),179),最近,米国でハイリスク患
者(80 歳以上,反対側頸動脈閉塞,心不全,6 週間以内
ためである.
1
診断
〈推奨事項〉3)
の開心術,虚血性心疾患,高度呼吸器疾患,病変が第 2
クラスⅠ
頸椎より高位,再手術,放射線照射後,頸部廓清術後,
1. 腹部の理学所見がなくても,心血管疾患の既往のあ
対側反回神経麻痺等を有する患者)において,distal
protection device を用いた頸動脈ステント留置術が頸動
る患者の急性腹痛では急性腸管虚血の可能性がある
(エビデンスレベル B).
脈内膜摘除術よりも,心筋梗塞を主として周術期合併症
2. 内臓血管周囲や中枢血管の血管内治療を行った症
が少ないことが報告された 180).有症状高度狭窄に対す
例,心房細動等の不整脈や心筋梗塞直後の症例での急
る distal protection device を用いた頸動脈ステント留置
性腹痛では,急性腸管虚血の可能性がある(エビデン
術が認可され,我が国でもハイリスク有症状高度狭窄に
スレベル C).
限り頸動脈ステント留置術が認可された.適応拡大のた
クラスⅢ
めには,さらなる頸動脈ステント留置術と頸動脈内膜摘
1. 慢性腸管虚血とは異なり,急性腸管虚血では腹部超
除術の比較,長期成績についてのエビデンスが必要であ
音波検査は診断に有用性が低い(エビデンスレベル
る.
C).
5
頭蓋外椎骨動脈狭窄
高齢の男性に多く,多くの患者は心血管疾患の既往が
ある.腹痛はほとんどで認め,一般には臍周囲の激しい
〈推奨事項〉
クラスⅡ b
1532
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
痛みである.初めは腹膜刺激所見がないため,「理学所
見のない腹痛」と言われている.
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
検査所見では,病状の進行とともに様々な異常を示す
療後にも開腹術を必要とする可能性は残る(エビデンス
が,急性腸管虚血に特異的な検査結果やレントゲン所見
レベル C).
はない.超音波検査は,腸間膜動脈の描出と詳細な評価
に高い技術を要するため,あまり有用ではない.腸管虚
早期に診断が確定した場合 urokinase 動注の血栓溶解
血を示す CT 所見としては,腸管血管の動脈硬化所見,
療法等の内科的治療が効果的であるとの報告もあ
動脈内血栓,小腸拡張,腸管壁肥厚,腹水貯留,等であ
る 183)−185)が,腸間膜動脈の急性閉塞に対して薬物療法
る.他に腸管虚血を示唆する所見としては,腸管気腫,
は無効なことも多く,主に外科的治療が行われる.急性
門脈ガス像があり,どちらも発症後期での所見である.
腸管虚血患者は症状発現時点である程度の腸管虚血があ
疑い症例では造影 CT が有用なことが多い.
り,血管内治療による血流再開に成功しても,開腹によ
超急性発症で,動脈閉塞の可能性が非常に高く腸管梗
る腸管の状態の確認が必要なことがある.
塞が疑われる場合には,迅速な腸管血流再開を可能とす
る外科的治療の適応がある.急性発症患者で,血管造影
2
慢性腸間膜動脈閉塞症
が迅速に行える場合は,血管造影は確定診断が可能であ
り,また引き続き血管内治療を行える点でも有用である.
腹腔動脈や腸間膜動脈に動脈硬化性病変をよく認める
ただ血管造影は急性腸管虚血の最も有用な検査である
が,慢性腸管虚血による臨床症状が出現することはまれ
が,緊急時に行うには時間を要するため議論のあるとこ
である.これは腹部内臓動脈である腹腔動脈,上下腸間
ろである.
膜動脈はそれぞれに交通を持ち,狭窄・閉塞病変があっ
発症が緩やかであり,非閉塞性腸管虚血症(nonocclu-
てもこのネットワークにより血流が維持されることによ
sive mesenteric ischemia: NOMI)が疑われる場合には初
る.慢性腸管虚血はやや女性に多く 40 ∼ 60 歳に好発し,
めに血管造影を行う適応があり,時間を要する検査では
典型的症状は,食事により誘発される腹痛,体重減少,
あるが得られる情報によるメリットの方が大きい.
便通異常である.多くは心血管系疾患の既往を持ち冠動
2
外科治療
〈推奨事項〉
クラスⅠ
脈,下肢末梢血管の手術歴のある患者が多い.
1
診断
〈推奨事項〉
急性腸管虚血の外科治療には血行再建,壊死腸管切除,
クラスⅠ
必要なら血行再建術後 24 ∼ 48 時間後での second look
1. 原因不明の腹痛,体重減少患者で特に心血管系疾患
operation を行う(エビデンスレベル B).
を有する患者では,慢性腸管虚血の可能性がある(エ
ビデンスレベル B).
外科治療としては,開腹術,血栓除去やバイパス術に
2. 診断のためにただちに行う検査として,超音波,
よる血行再建術,血行再建後の腸管虚血の評価,壊死腸
CT angiography(CTA),MRA 検査は有用である(エ
管の切除,等が含まれる.腸管の虚血は明らかに壊死が
疑われる場合や明らかに軽度の場合もあるが,判断が困
ビデンスレベル B).
3. 確 定 診 断 に は 血 管 造 影 で の 側 面 像 ま た は 3D-CT
難な場合もある.
angiography が有用で,腸間膜動脈の狭窄または閉塞
腸管虚血の評価は,いかなる術中検査よりも経験のあ
と,側副血行を認める(エビデンスレベル B).
る外科医による判断が正確であるとも言われる 182).温
存可能な腸管と切除が必要な腸管切除を見定めるために
診断に有用な特異的な血液検査所見はない.病変は大
は,予定手術として,初回手術後 24 ∼ 48 時間後に sec-
動脈からの起始部に形成されることが多く,超音波検査
ond look operation を行うことも有用である.
による描出も可能であり,熟練者により行われれば,70
3
血管内治療
%以上の狭窄または閉塞病変の正診率は高いと言われ
る.CTA や MRA も腸管虚血の診断目的に行われること
〈推奨事項〉
が多いが,より末梢領域の描出が困難であり慎重に評価
クラスⅡ b
する.血管造影では確実な確定診断が得られやすく,そ
経皮的治療(血栓溶解療法,バルーン拡張術,ステン
の側面像により腸間膜動脈の起始部の描出も可能であ
ト留置術)は適応患者を選択的に行えば適切である.治
る.正面像により Arc of Riolan が発達している所見は,
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1533
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
中枢腸間膜動脈の狭窄や閉塞を示唆している.選択的腸
により臓器虚血症状を認めない場合が多い.したがって
間膜動脈の撮影は,カテーテルが動脈起始部を越えてし
腹腔動脈の圧迫による血行障害と腹腔動脈起始部圧迫症
まうため病変を見逃す可能性がある.
候群は同義ではない.
2
血管内治療
〈推奨事項〉
1
診断
典型的症状は体位により変化する食後の腹痛である
が,実際には 37 %に過ぎない.嘔気,嘔吐,下痢が 65
クラスⅠ
慢性腸間膜動脈閉塞性疾患には血管内治療の適応があ
%に認められ,体重減少は 61%の患者に認められる.
る(エビデンスレベル B).
画像診断では側面,斜位での血管造影で腹腔動脈が圧
迫され,特に深呼吸時に狭窄が高度となれば有用な所見
慢性腸間虚血に対する血管内治療は多くは狭窄病変に
である.しかしながら腹腔動脈の狭窄自体は特異的な所
対するものであり,閉塞病変での報告はごくわずかであ
見ではないため注意が必要である.
る.術後の再狭窄はバイパス術に比べ高率であると言わ
れているが,再度血管内治療により修復可能な症例が多
く 186),狭窄病変に対しては第一選択として選択可能と
なってきている
3
187)−192)
.
外科治療
〈推奨事項〉
2
治療
腹部症状の原因として他疾患の関与が否定され,血管
造影で明らかな狭窄所見を認める症例では手術治療も選
択肢として考慮すべきである.通常は腹腔動脈根部の露
出と正中弓状靭帯の切開が第一選択であるが,十分な血
流改善が得られない場合にはバイパス術も考慮する.腹
クラスⅠ
腔鏡下での正中弓状靭帯の切開も可能である.しかしな
慢性腸管虚血には手術治療の適応がある(エビデンス
がら手術治療にもかかわらず症状が消失しない症例が少
レベル B).
なからず存在し,このことが,本疾患が基本的に除外診
クラスⅡ b
断であり侵襲的治療に慎重にならざるを得ない所以であ
大動脈や腎動脈の動脈硬化性疾患の治療歴がある場
る.
合,無症状の腸間膜動脈閉塞性病変に対して血行再建術
を考慮してもよい(エビデンスレベル B).
4
クラスⅢ
腸間膜血行不全症
(非閉塞性腸間膜虚血症)
大動脈や腎動脈の動脈硬化性疾患の治療歴がない無症
状例においては,血行再建術の適応ではない(エビデン
スレベル B).
非閉塞性腸管虚血症(NOMI: nonocclusive mesenteric
ischemia)は器質的な血管閉塞は存在せず,主幹動脈が
開存しているにもかかわらず,腸管の虚血を来たし腸管
外科的治療としては血栓内膜摘除術やバイパス術があ
壊死にも至る予後不良な疾患である.心不全,ショック,
るが,主にバイパス術が好んで行われている 193)−201).
脱水,維持透析,周術期の低拍出量症候群等が誘引とな
画像上,腸間膜動脈の閉塞性病変が認められる無症状例
る場合が多く,低灌流状態が一定期間持続すると末梢辺
では,大動脈や腎動脈の動脈硬化性疾患の治療歴がある
縁動脈の交感神経が反応して血管攣縮を引き起こし腸管
場合には血行再建術を考慮してもよいが,そうでない症
虚血が引き起こされる 202)−204).
例は血行再建術の適応とはならない.
3
腹腔動脈起始部圧迫症候群
1
診断
〈推奨事項〉
クラスⅠ
腹腔動脈が横隔膜正中弓状靭帯によって圧迫されるこ
とで血流障害が生じ,腹痛等の内臓虚血症状を引き起こ
ク患者での腹痛時に疑われる(エビデンスレベル B).
す疾患群である.軽度のものを含めれば解剖学的な腹腔
2. 基礎疾患の治療にもかかわらず速やかに改善が見ら
動脈の圧迫変形は全人口の 40 %に存在するとも言われ
れない NOMI 疑い症例では,血管造影の適応がある
ているが,実際は上腸間膜動脈からの側副血行路の発達
1534
1. 非閉塞性腸管虚血は,心拍出量減少や心原性ショッ
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
(エビデンスレベル B).
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
NOMI は循環不全での腹痛時に疑われ,意識状態が悪
多く,主に腎動脈遠位 2/3 と分枝に好発する.その他の
く診断が遅れることもある.特異的な理学所見や検査所
原因に高安動脈炎,腎動脈瘤,塞栓症,Williams 症候群,
見はない.基礎疾患の治療にもかかわらず速やかに改善
神経線維腫症,腎動脈解離,動静脈奇形,外傷等がある.
が見られない NOMI 疑い症例は,血管造影の適応があ
る.血管造影で特徴的な血管のスパズムが描出でき,血
2
頻度
管拡張剤を直接動脈内投与することも可能であ
る 205)−207).
2
心臓カテーテル検査を受けた患者において,我が国で
は 7 % 210), 欧 米 で は 30 % に RAS が 見 ら れ た と い う 報
治療
告 211)がある.また,欧米では 65 歳以上で 6.8 %に RAS
が見られるという推計がある 212).
〈推奨事項〉
クラスⅠ
1. ショック状態離脱の治療が最優先である(エビデン
3
治療方針
スレベル C).
2. 治療抵抗性の NOMI では開腹術と壊死腸管の切除の
適応である(エビデンスレベル B).
治療の柱は,薬物による降圧療法と血行再建術,およ
び動脈硬化リスクの軽減である.FMD に対する経皮的
クラスⅡ a
血行再建術の治療成績は良好であるが,動脈硬化性
経カテーテル的血管拡張薬の使用は全身的治療が無効
RAS では,腎実質病変や糖尿病,脂質異常,高血圧,
な場合,またはコカインやエルゴットによる腸管虚血の
全身の動脈硬化が病態に関係しており,狭窄の解除が腎
患者に対して適応である(エビデンスレベル B).
機能保護,高血圧および予後の改善につながらない場合
がある.
初期治療としては原因となっている循環不全状態を改
これまでの内科療法と経皮的血行再建術を比較した無
善することが重要である.血管造影により確定診断を得
作為化試験 213)−215)は,バルーン拡張術単独とステント
た後は留置カテーテルから血管拡張薬を投与し腸間膜動
留置術が混在し,症例数,観察期間も十分とは言えず,
脈血流の改善を図る.発症早期の手術適応は低く,その
いずれの優位性も確立はされていない 216).動脈硬化性
理由として(1)血管閉塞がないため直接修復できない,
RAS に対する血行再建術は,技術的成功率や再狭窄率
(2)早期の腸切除で縫合不全が多い,(3)麻酔や手術に
が優れていることから 217),ステント留置術が標準とな
よる循環不全を助長し増悪させることがある 40),等が挙
っているが,内科療法と比較して,どのような患者で,
げられる.しかしながら腹膜刺激症状や発症後 12 時間
どちらが適しているかは明らかになっていない.これを
以上経過した症例では腸管壊死の可能性が高く,実際に
明らかにするために内科療法単独とステント治療+内科
広範囲腸管切除となることも多いため,内科的治療にも
療法を比較する CORAL Study218)が進行中である.
かかわらず腹部症状が持続する時は,すみやかに開腹術
2005 年に「末梢動脈疾患患者の管理に関する ACC/
や腸管切除を考慮する
208),209)
.
AHA ガイドライン」3)が報告され,この中で「腎動脈」
についての指針が述べられている.ガイドラインに影響
Ⅹ
腎動脈
する日本人を対象としたエビデンスはなく,ここでは,
このガイドラインにおける「腎動脈狭窄の治療」につい
ての解説に留まらざるを得ない.
1
1
原 因
薬物療法
〈推奨事項〉
クラスⅠ
腎動脈狭窄(renal artery stenosis: RAS)の約 90 %は
動脈硬化が原因である.単独の RAS 患者も見られるが,
1. アンジオテンシン変換酵素阻害薬は片側性 RAS に
伴う高血圧治療に有効である(エビデンスレベル A).
多くは全身の動脈硬化を合併し,主に腎動脈入口部,お
2. アンジオテンシン受容体拮抗薬は片側性 RAS に伴
よび近位側 1/3 に見られ,両側性が 20 ∼ 30%である.次
う高血圧治療に有効である(エビデンスレベル B).
いで線維筋性異形成(fibromuscular dysplesia: FMD)が
3. カルシウム拮抗薬は片側性 RAS に伴う高血圧治療
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1535
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
スレベル B).
に有効である(エビデンスレベル A).
4. β遮断薬は RAS に伴う高血圧治療に有効である(エ
治療抵抗性高血圧とは,利尿薬を含む 3 種類の降圧薬
ビデンスレベル A).
を十分量使用しても目標の降圧を得られないものを言
レニン - アンジオテンシン系抑制薬により,両側性
う.
RAS 患者での腎機能の急速な悪化,体液量低下例での
高血圧治療に関し,無作為化試験において,全体とし
過剰な降圧や腎機能低下例での高カリウム血症,腎障害
て経皮的血行再建術と内科療法の優劣は明らかではない
の進行が見られる場合があり,注意が必要である
219)
.
が,両側性 RAS 患者では経皮的血行再建術の降圧効果
動脈硬化患者ではあわせて禁煙,糖尿病や脂質異常の管
が有意に大きかったという報告 213),経皮的血行再建術
理,抗血小板薬投与等が行われる.
で拡張期血圧の下降が有意に大きく,降圧薬減量の面で
2
血行動態的に有意な腎動脈狭窄患
者に対する血行再建術の適応
①無症候性狭窄
優れていたという報告 214)がある.また経皮的血行再建
術では高血圧治癒が見られ(∼ 18%)216),内科療法より
も有効である対象は存在すると考えられる.
③腎機能保護
〈推奨事項〉
〈推奨事項〉
クラスⅡ b
クラスⅡ a
1. RAS に対する経皮的血行再建術は,血行動態的に有
1. RAS に対する経皮的血行再建術は,両側の RAS ま
意な RAS を有する無症候性の両側腎,または機能を
たは機能している単腎の RAS を伴う進行性慢性腎疾
営む可能性のある単腎(腎の長径が 7cm 超)の治療
患患者に対し妥当な治療法である(エビデンスレベル
として考慮してもよい(エビデンスレベル C).
B).
2. 機能を営む可能性のある腎(腎の長径が 7cm 超)に
クラスⅡ b
おいて,無症候性の血行動態的に有意な片側 RAS に
1. RAS に対する経皮的血行再建術は,片側性 RAS を
対する経皮的血行再建術の有用性は十分に確立されて
伴う慢性腎不全患者に対し考慮してもよい治療法であ
おらず,現在では臨床的に証明されていない(エビデ
る(エビデンスレベル C).
ンスレベル C).
経皮的血行再建術は,症状のある動脈硬化性 RAS 患
血行動態的に有意な RAS とは以下の場合を言う 3).
(1) 直径で 50%以上 70%までの狭窄で,圧格差が収縮
が,無作為化試験においては,内科療法と比較して全体
期で 20mmHg 以上,または平均で 10mmHg 以上(5-Fr
として腎機能への影響に差は認められていない.前向き
以下のカテーテルまたは圧測定ワイヤーによる).
試験では,腎機能改善例の割合が 8 ∼ 51 %,悪化は∼
(2) 直径で 70%以上の狭窄.
31%と報告により様々である 216).
(3) 血管内超音波で直径 70%以上の狭窄.
血行再建結果が不良である因子として,蛋白尿> 1g/
RAS が存在しても腎血管性高血圧や虚血性腎症を発
日,腎萎縮(長径 7cm 未満),高度腎実質疾患,高度の
症するのは一部であり,多くの無症候性 RAS が存在す
びまん性腎内小動脈病変 3),血清クレアチニン値 3.0 ∼
るが,これらの患者に対する血行再建術が利益をもたら
4.0mg/dL 以上,腎機能障害が進行性でないこと 222),223),
すかは明らかになっていない.
血行再建時のアテローム塞栓症の発生が挙げられてい
②高血圧
〈推奨事項〉
1536
者の腎機能安定化,改善に有効とする報告 220),221)もある
る.血行再建後の腎機能の安定化と改善に関連する因子
としては,両側性 RAS,単腎の RAS,進行性腎機能低
下が挙げられている 224).
クラスⅡ a
超音波による腎内葉間動脈 resistance index 値について
RAS に対する経皮的血行再建術は,血行動態的に有
は,0.8 以上では経皮的血行再建術で血圧と腎機能につ
意な RAS を有し,増悪する高血圧,治療抵抗性高血圧,
いて好結果は期待できないという報告 225)と,0.8 以上で
悪性高血圧,原因不明の片側萎縮腎を伴う高血圧,薬剤
も改善が期待できるという相反する報告 226)があり,評
不耐性高血圧患者に対し妥当な治療法である(エビデン
価は定まっていない.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
進行性ではない腎機能障害患者で,偶然に両側の有意
な RAS または機能している単腎の RAS が発見された場
合,特に難治性の重症高血圧や降圧による腎機能悪化が
見られなければ,血行再建の適応は慎重に判断する.
④うっ血性心不全と不安定狭心症
2
RAS に対する外科手術
〈推奨事項〉
クラスⅠ
外科的血行再建術は以下の患者に適応がある.
1. インターベンションの臨床適応基準(カテーテル治
療と同じ)に合致する FMD による RAS 病変の患者,
〈推奨事項〉
クラスⅠ
特に区域動脈に及ぶ複雑病変,動脈瘤を有する場合(エ
1. RAS に対する経皮的血行再建術は,血行動態的に有
ビデンスレベル B).
意な RAS を有し,繰り返す原因不明のうっ血性心不
2. インターベンションの臨床適応基準に合致する動脈
全患者,または突然発症した原因不明の肺水腫患者に
硬化性 RAS 病変の患者,特に複数の小口径腎動脈の
対して適応がある(エビデンスレベル B).
RAS,あるいは早期に枝分かれする一次分枝に及ぶ
クラスⅡ a
RAS(エビデンスレベル B).
1. RAS に対する経皮的血行再建術は,血行動態的に有
3. 動脈硬化性 RAS 患者で傍腎動脈血行再建術(大動
意な RAS を有する不安定狭心症患者に妥当な治療法
脈瘤,または重症大動脈腸骨動脈閉塞症の手術)が行
である(エビデンスレベル B).
われる場合(エビデンスレベル C).
有意な RAS を有する患者では,うっ血性心不全,肺
カテーテルインターベンションと外科手術は治療効果
水腫,不安定狭心症の発生に RAS による末梢血管収縮,
において同等と考えられるが,両者が適応の場合は,一
アンジオテンシンⅡの心筋への作用,循環血液量増加の
般的に侵襲の少ない前者を選択する.
メカニズムが関与していると考えられる.ただし,一般
的に心不全等の発症は腎以外の因子が関与している場合
5
予後
のほうが多く,この推奨事項は腎外因子の検索を行った
上で適応される 3).
4
経皮的血行再建術と内科療法を受けた患者の間で生命
予後の差は明らかでない.ステント留置術を受けた動脈
治療手技
硬化性 RAS 患者 1,058 名において,全体で 4 年生存率は
74 ± 3 %,腎機能低下(血清クレアチニン値 2.0mg/dL
1
RAS に対するカテーテルインター
ベンション
以上)患者では 49 ± 5 %,両側性 RAS の腎機能低下患
者では 36 ± 11%であったという報告 227)がある.一般に
腎機能低下例および他の心血管疾患合併例で,血行再建
後の生命予後と臨床経過が劣るとされている.
〈推奨事項〉
クラスⅠ
1. 腎動脈ステント留置術は,インターベンションの臨
床適応基準に合致する入口部の動脈硬化性 RAS に対
し適応がある(エビデンスレベル B).
Ⅺ
高安動脈炎
2. バルーン血管形成術(必要時はステント留置術を行
う)は,FMD 病変の治療に勧められる(エビデンス
レベル B).
1
疾患の概要
入口部病変が大部分である動脈硬化性 RAS では,ス
高安動脈炎とは,大動脈およびその主要分枝,冠状動
テント留置術は,技術的成功率と再狭窄率においてバル
脈,肺動脈に生ずる非特異性炎症による諸症状を総括し
ーン血管形成術単独より優れており(98% vs. 77%,17
たものであり,独立疾患である.若年女性に多く見られ
% vs. 26%,p < 0.001) ,ステント留置術が標準である.
る.地域的にはアジア,南米に多いといった特徴を持っ
217)
ているため,これまで我が国がこの疾患研究の中心とな
ってきた.最近では新規の患者数は減少傾向にある.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1537
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
本疾患の記述は 1856 年の英国外科医 Savory による 22
歳女性剖検例報告が最も古いものとされるが 228),1908
③遺伝的要因
年金沢大学眼科教授の高安右人により「奇異ナル網膜中
高 安 動 脈 炎 の 遺 伝 的 素 因 と し て HLA-B52,HLA-
心血管ノ変化ノ一例」として乳頭周囲の花環状動静脈吻
B39.2 と の 関 連 が 報 告 さ れ て い る 238). さ ら に 近 年,
合を呈する 21 歳女性の報告がなされたことにちなんで,
HLA-B 遺伝子の近傍にある MICA 遺伝子との関連が示
高安動脈炎と呼ばれ,国際的にはこの呼び名で広まって
唆され,MICA-1.2 との強い相関があるとの報告がなさ
いる229).1948 年に清水,佐野がこの病変を詳細に分析し,
れた 239).高安動脈炎の HLA 関連の疾患感受性遺伝子は
「脈が触れない,特異な眼症状,頸動脈洞反射亢進」症
MICA 遺伝子の近傍にあることが示唆されている.高安
例を独立疾患として脈なし病として報告した 230).1961
動脈炎においては MICA がキラー細胞の標的になってい
年には稲田により異型大動脈縮窄症が脈なし病と同じ後
る可能性を支持している報告である.
天性の血管炎であるとの考えが出された
231),232)
.そして
1963 年に上田が様々な症状を呈するこの血管炎を高安
2
動脈硬化との対比
動脈炎としてまとめた 233),234).1973 年以降厚生労働省
本来高安動脈炎は動脈硬化症とその病態が異なってい
の特定疾患対策研究事業に取り上げられ今も研究が続い
るが,頸動脈の内膜肥厚の測定の結果,動脈硬化の危険
ている.
因子に差がない群で比較しても,高安動脈炎患者に動脈
我が国では現在 5,000 人余の患者が登録されているが,
硬化症の促進が見られたことが報告されている.動脈壁
3 年ごとの新規登録症例は 200 ∼ 400 例で減少傾向にあ
の炎症により動脈硬化が促進される可能性が示唆されて
る.男女比は 1:9 で,初発年齢は 20 歳にピークがある.
いるが 240),治療薬(副腎皮質ステロイド薬)の影響も
2
病因と病態
1
血管障害の機序
高安動脈炎の病因は依然として不明のままである.し
考えられる.
3
病理学的特徴
①マクロ所見
罹患部位によって解剖学的に次の 4 型に分けられる.
かし,感染等のストレスがきっかけとなり,自己免疫的
(1)大動脈弓部と弓部分枝動脈が侵されるもの,(2)胸
な炎症機序で T 細胞を中心とした血管組織の破壊が生じ
部腹部大動脈が侵されるもの,(3)大動脈全体が侵され
ると推定されており,さらに背景として遺伝素因の存在
るもの,(4)肺動脈が侵されるもの.狭窄性病変が主体
も示されている.
であるが,15 ∼ 30 %に拡張性病変や大動脈弁不全が見
①免疫学的要因
られる 241).病変の中心は肺動脈幹を含む主幹部動脈で
あ り, 閉 塞 性 増 殖 性 幹 動 脈 炎 と も 言 わ れ て い る 242).
高安動脈炎の血管障害には従来,細胞性免疫の関与が
1997 年には沼野らにより,血管造影を基にした新しい
指摘されてきた.炎症の進展に伴い,γδT 細胞を主と
)
分類法が提唱された 243(表
16).
した T 細胞が主体となった組織破壊のメカニズムで動脈
壁が障害されることが推定されている 235)−237).
②感染の要因
免疫学的異常を来たす最初の引き金として,何らかの
ウイルス感染等のストレスが原因となっていることが推
測される.主として血管壁中膜の平滑筋細胞に,ストレ
スで誘導されやすいと言われる MICA 抗原が発現してく
る.この MICA がγδT 細胞を誘導することで病態形成が
始まる可能性がある.かつては結核罹患との関連が指摘
された時もあったが,現在では否定的である.
表 16 高安動脈炎血管造影分類
タイプⅠ :大動脈弓分枝血管の病変を有するもの
タイプⅡa :上行大動脈,大動脈弓ならびにその分枝血管に
病変を有するもの
タイプⅡb :上行大動脈,大動脈弓ならびにその分枝血管,
胸部下行大動脈に病変を有するもの
タイプⅢ :胸部下行大動脈,腹部大動脈,腎動脈に病変を
有するもの
タイプⅣ :腹部大動脈かつ / または腎動脈病変を有するも
の
タイプⅤ :上行大動脈,大動脈弓ならびにその分枝血管,
胸部下行大動脈に加え,腹部大動脈かつ / また
は腎動脈病変を有するもの
さらに冠動脈に病変を持つもの(C)ならびに肺動脈病変を有
.
するもの(P)
1538
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
血圧が問題となる.頭痛,心悸亢進を訴える.異型縮窄
②組織学的所見
症ではわずかの運動でも 200mmHg を超える高血圧が見
栄養血管を持つ弾性動脈に生ずる激しい炎症性変化
られる.高血圧が長期間続くと心不全につながる.
と,それに続く増殖性変化が主体である.炎症は中膜外
Ⅲ型:Ⅰ型とⅡ型の合併した複雑な病態である.
膜境界部分あるいは中膜外層に初発する.炎症期には肉
Ⅳ型:動脈瘤型
芽腫性炎,びまん性増殖炎を呈し,いよいよ巨細胞が出
動脈硬化性動脈瘤と比較して胸部大動脈とその分枝に
現する.治癒期には内膜は二次的な肥厚病変により血管
発生することが多い.破裂するまで症状がないことが多
内腔の狭窄や閉塞が生じる,また石灰化も出現する.中
い点は動脈硬化性の場合と同様である.上行大動脈の拡
膜は弾性線維の断裂,変性,消失と動脈壁全層の瘢痕線
張により,大動脈の弁輪が拡大して大動脈弁閉鎖不全と
維化を,外膜は著明な増殖肥厚,線維化を示す.中膜や
なり心不全で発症することが多い.動脈炎の波及による
外膜の破壊が高度な例は,動脈瘤や大動脈弁閉鎖不全の
弁自体の変形による大動脈弁不全もある.
発生につながる.その他栄養血管周囲に著明な細胞浸潤
が見られることがある.外科手術は動脈の線維瘢痕化の
時期に行われることが多いので,得られた標本で中膜に
炎症細胞浸潤が見られることはまれである.
3
3
診断
①診断の指針
病気の初期においては,症状が非特異的であるために
症候と診断
診断が困難な場合が多い.進行期においては閉塞される
血管により多彩な臨床症状を示す.確定診断は病理組織
1
所見によるが,標本を得ることが困難なため,血管撮影
初期症状
像が診断に最も役立つ.厚生労働省の難治性血管炎に関
初期の自覚症状は全身の炎症に伴う不定愁訴で,発熱,
する調査研究班,アメリカリウマチ学会 248)等より診断
食欲不振,全身倦怠感,体重減少,関節痛,胸膜痛,易
基準が示されている(表 17).
疲労感等である.血管病変が完成し病変の部位によって
多彩な症状を呈してくるのは進行期になってからであ
る 244)−246).
2
②検査成績
1)血液検査
臓器虚血症状:進行期の症状
本症に特異的な血液検査所見はない.非特異的炎症所
見である赤沈亢進,白血球増多,軽度の貧血,ガンマグ
臨床的には以下の 4 型に分けることが多い 247).この他,
ロブリン上昇,CRP 上昇,ASLO 上昇,フィブリノーゲ
肺動脈病変は約 15 %に
,冠動脈病変が 8 %に認めら
ン上昇等で高安動脈炎の活動性を評価する.この他リウ
れる.
マチ因子陽性,抗核抗体陽性となる場合もある.HLA-
Ⅰ型:大動脈弓部分枝の閉塞型(頭部上肢の虚血症状)
B52 陽性例では陰性例に比較して病変の程度が強いと言
頭部虚血では,視力障害,めまい,頭痛,失神発作と
われている.
いった脳虚血症状が出現する.血行障害が著しい症例は
2)画像診断所見
顔面の萎縮(bird face)や,鼻中隔穿孔が見られる.頸
単純写真で,若い女性に大動脈の石灰化が見られた場
動脈洞反射冗進例では顔を上に向けた時に視力低下,失
合は本性の疑いが濃厚である.確定診断となるのは血管
神発作が生じる.炎症性変化で被刺激状態にある頸動脈
造影で,DSA や CT アンギオで大動脈の内腔不整・壁厚
洞神経に頸動脈内圧の低下,脳の低酸素状態が加わって
増大,大動脈およびその主要分枝の閉塞性病変,動脈の
生じるものと推定される.この状態の患者は常に頭を垂
拡張性病変が見られる 249).多発病変が多いために,大
れてうなだれた姿勢をとっているのが特徴である.
動脈分枝すべての病変の有無を確認することが重要であ
上肢の虚血では,上肢動脈の閉塞のため,脈の欠損,
る 250)−252).
血圧左右差が出現する.上肢のシビレ,脱力感,冷感が
病変のある頸動脈病変は高度の内膜肥厚が認めら
生じる症例もある.高血圧を合併する場合,上肢血圧が
れ 253)−255),超音波検査で「マカロニサイン」と呼ばれる.
体血圧を反映しないことに留意する.
上行大動脈の拡張による大動脈弁不全は心エコー検査で
Ⅱ型:異型大動脈縮窄症,腎動脈狭窄型(高血圧の症状)
確認できる.近年 FDG-PET を用いて大動脈の炎症を画
大動脈の狭窄病変においては,下肢の虚皿症状より高
像化する試みもなされている 256)−258).
244)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1539
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
表 17 高安動脈炎の診断基準
1 疾患概念と特徴
大動脈とその主要分枝および肺動脈,冠動脈に狭窄,閉塞または拡張病変を来たす原因不明の非特異性炎症性疾患.狭窄ないし
閉塞を来たした動脈の支配臓器に特有の虚血障害,あるいは逆に拡張病変による動脈瘤がその臨床病態の中心をなす.病変の生
じた血管領域により臨床症状が異なるため多彩な臨床症状を呈する.若い女性に好発する.
2 症状
(1)頭部虚血症状:めまい,頭痛,失神発作,片麻痺等
(2)上肢虚血症状:脈拍欠損,上肢易疲労感,指のしびれ感,冷感,上肢痛
(3)心症状:息切れ,動悸,胸部圧迫感,狭心症状,不整脈
(4)呼吸器症状:呼吸困難,血痰
(5)高血圧
(6)眼症状:一過性または持続性の視力障害,失明
(7)下肢症状:間欠跛行,脱力,下肢易疲労感
(8)疼痛:頸部痛,背部痛,腰痛
(9)全身症状:発熱,全身倦怠感,易疲労感,リンパ節腫脹(頸部)
(10)皮膚症状:結節性紅斑
(11)消化器合併症:非特異的炎症性腸炎
3 診断上重要な身体所見
(1)上肢の脈拍ならびに血圧異常(橈骨動脈の脈拍減弱,消失,著明な血圧左右差)
(2)下肢の脈拍ならびに血圧異常(大動脈の拍動亢進あるいは減弱,血圧低下,上下肢血圧差)
(3)頸部,背部,腹部での血管雑音
(4)心雑音(大動脈弁閉鎖不全症が主)
(5)若年者の高血圧
(6)眼底変化(低血圧眼底,高血圧眼底,視力低下)
(7)顔面萎縮,鼻中隔穿孔(特に重症例)
(8)炎症所見:微熱,頸部痛,全身倦怠感
4 診断上参考となる検査所見
(1)炎症反応:赤沈亢進,CRP 促進,白血球増加,γグロブリン増加
(2)貧血
(3)免疫異常:免疫グロブリン増加(IgG,IgA)
,補体増加(C3,C4)
(4)凝固線溶系:凝固亢進(線溶異常)
,血小板活性化亢進
(5)HLA:HLA-B52,B39
5 画像診断による特徴
(1)大動脈石灰化像:胸部単純写真,CT
(2)胸部大動脈壁肥厚:胸部単純写真,CT,MRA
(3)動脈閉塞,狭窄病変:DSA,CT,MRA
弓部大動脈分枝:限局性狭窄からびまん性狭窄まで
下行大動脈:びまん性狭窄(異型大動脈縮窄)
腹部大動脈:びまん性狭窄(異型大動脈縮窄)しばしば下行大動脈,上腹部大動脈狭窄は連続
腹部大動脈分枝:起始部狭窄
(4)拡張病変:DSA,超音波検査,CT,MRA
上行大動脈:びまん性拡張,大動脈弁閉鎖不全の合併
腕頭動脈:びまん性拡張から限局拡張まで
下行大動脈:粗大な凹凸を示すびまん性拡張,拡張の中に狭窄を伴う念珠状拡張から限局性拡張まで
(5)肺動脈病変:肺シンチ,DSA,CT,MRA
(6)冠動脈病変:冠動脈造影
(7)多発病変:DSA
6 診断
(1)確定診断は画像診断(DSA,CT,MRA)によって行う.
(2)若年者で血管造影によって大動脈とその第一次分枝に閉塞性あるいは拡張性病変を多発性に認めた場合は,炎症反応が陰性
でも高安動脈炎(大動脈炎症候群)を第一に疑う.
(3)これに炎症反応が陽性ならば,高安動脈炎(大動脈炎症候群)と診断する.
(4)上記の自覚症状,検査所見を有し,下記の鑑別疾患を否定できるもの.
7 鑑別疾患
①動脈硬化症 ②炎症性腹部大動脈瘤 ③血管型ベーチェット病 ④梅毒性中膜炎 ⑤巨細胞性動脈炎 ⑥先天性血管異常
⑦細菌性動脈瘤
1540
3)眼底所見
または花環状となる.末期には乳頭や虹彩に新生血管が
慢性に進行する脳血圧低下により,毛細血管が拡張す
見られ,毛様体の機能低下,低眼圧,白内障等が生じ視
る.さらに進行すると毛細血管瘤が耳側周辺部眼底から
力は低下する.低血圧による網膜中心動脈の閉塞や網膜
始まり眼底全体に見られるようになる.高度の虚血では
剥離で失明する.この一連の脳虚血の指標である眼底変
動静脈吻合が形成され,視神経乳頭を取り巻いて馬蹄形
化をまとめたのが宇山の分類である.Ⅰ度は血管の拡張,
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
Ⅱ度は小動脈瘤形成,Ⅲ度は動静脈吻合の形成,Ⅳ度は
不全と脳梗塞が患者予後の規定因子となっており,その
進行した複合病変である.
発症予防および発症後の管理が重要となる.虚血性心疾
患と脳梗塞の予防には aspirin が投与される.その他,
③鑑別診断
aspirin と同様に高安動脈炎に対する明確なエビデンスは
鑑別疾患としては,今では減った梅毒,結核といった
ないが,抗血小板薬として塩酸 ticlopidine,cilostazol や,
特異性炎症による血管炎に加えて,非特異性炎症で大動
抗凝固薬として warfarin が投与されることもある.
脈炎を生じる疾患である巨細胞性血管炎を念頭に置く必
大動脈弁不全に対しては他の原因の場合と同様な内科
要がある.巨細胞性血管炎は高齢者に多く,側頭動脈を
的治療がなされる.高血圧症は異型大動脈縮窄症や腎動
侵すために側頭動脈炎とも呼ばれ,リウマチ性多発性筋
脈狭窄が原因となっている場合が 3/4 を占め,外科治療
痛症を高率に合併する.その他炎症性大動脈炎として
が適応となることが多い 248).障害血管のコンプライア
Behçet 病も鑑別する.
ンス低下や圧受容体の機能障害が原因と考えられる場合
4
治療と予後
1
内科的治療
は降圧薬投与で治療する.
③難治例に対する治療
我が国では症例の 48.7%がステロイド抵抗性である.
これらの症例や,ステロイド治療で合併症が発生する症
早期に副腎皮質ステロイド治療を行うことで,臓器障
例では,核酸代謝阻害薬の cyclophosphamide(シクロフ
害を生じる前に疾患をコントロールすることも可能にな
ォスファミド)245),葉酸代謝拮抗薬で活性化されたリン
った 248).しかし,中にはステロイド治療に抵抗性があ
パ球の抑制作用がある methotrexate(メトトレキサー
る症例も認められる.
ト)261),核酸合成を阻害する azathioprine(アザチオプリ
ン)262),カルシニューリン阻害薬でT細胞の活性化を阻
①副腎ステロイド治療
害する cyclosporin(シクロスポリン),活性化リンパ球
活動性の血管炎の存在を示唆する発熱,全身倦怠感と
を抑制する mycophenolate mofetil(ミコフェノール酸モ
いった自覚症状,赤沈亢進や CRP 上昇といった炎症所
フェチル),抗 TNF- α抗体インフリキシマブや可溶性
見が見られた場合はステロイド治療を検討する.Pre-
TNF 受容体エタネルセプトによる TNF- α阻害療法,抗
donisolone 20 ∼ 30mg/ 日が一般的投与量であり,年齢,
CD20 モノクローナル抗体の rituximab(リツキシマブ)
重症度,検査値により増減する
259)
.我が国でのステロ
イド治療による改善率は 51.3 %である
259)
.ステロイド
の継続期間は症状や検査所見の改善が 2 週間以上観察さ
等が検討される 263).
2
外科的治療・手術適応
れる時点までとされ,その後 predonisolone 10mg/ 日ま
内科的治療が原則であるが,狭窄や拡張性病変等の動
で は,5mg/2 週 間 の 割 合 で 減 量 し,10mg/ 日 以 下 で は
脈病変が完成した場合には,臓器血流障害の改善や動脈
2.5mg/2 週間の割合で減量する.ただし,臨床症状およ
瘤の破裂予防を目的とした外科的治療が必要になる.外
び検査所見の十分な観察が必要であり,特に,10mg/ 日
科治療は炎症の非活動期に行うことが望ましいが,症状
以下の減量は再燃を防ぐ意味からも慎重に行う必要があ
により手術を急ぐ場合はステロイド治療で炎症の鎮静化
る
.我が国でのステロイド離脱率は 37.4%であった.
259)
を行いつつ手術をせざるを得ない場合がある.高安動脈
HLA-52 陽性患者では陰性者と比較して炎症所見が強
炎患者の生命予後は比較的良好であり,術後 30 年以上
く,より多くのステロイド初期投与および,より長い維
生存することもまれではないため,超長期の状態も考慮
持量到達期間が必要となる.また,HLA-B52 陽性患者
して手術術式を決定する必要がある 264).特に人工血管
はステロイド抵抗性を示すとの報告があり
260)
,ステロ
移植後長期になると吻合部動脈瘤を合併する頻度が高く
イド治療前に HLA タイピングを行うことが望ましいと
なることが考えられ,定期的な検査が望ましい 265).
されている.
閉塞性病変に対しては,一般に内膜摘除術の成績は
②臓器不全に対する治療
不良とされ,バイパス術が標準術式となる.分枝血管
閉塞に対しては人工血管ではなく,動脈グラフトある
高安動脈炎で臓器灌流動脈の閉塞性病変が完成する
いは静脈グラフトを用いることで遠隔期の吻合部動脈
と,動脈血流不全による臓器障害が問題となる.特に心
瘤の発生が減ったとの報告もある 266).分枝病変は完全
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1541
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
閉塞,長い病変,壁が硬い病変が多いため,血管内治療
再建は宇山の分類でⅡ度からⅢ度の始まりが最も良い適
は動脈硬化病変に比較して初期成績,遠隔期成績ともに
応と考える.血行再建は上行大動脈,下行大動脈または
不良とする報告が多く,第一選択の治療手段とはならな
鎖骨下動脈から頸動脈へバイパスを行うことが多いが,
い 267).
腸骨動脈や大腿動脈から逆行性バイパスを行った報告も
以下心・動脈の罹患部位による病態別分類ごとに外科
ある.
治療を解説する 268).
①心・肺動脈病変による病態
③胸腹部大動脈およびその主要分枝の閉塞を主病
変としている病態
大動脈弁閉鎖不全症は,放置すると心不全につながる
異型大動脈狭窄症は上腹部大動脈に病変を有する場合
ため最近では積極的に手術が行われている.逆流が 3/4
が多く,腹腔動脈,上腸間膜動脈,左右腎動脈に閉塞性
以上の場合に弁置換術の適応となる.通常機械弁を用い
病変を合併する場合がある.ことに腎動脈狭窄の合併が
るが,高齢者や妊娠を希望する若い女性等の場合は生体
手術成績や長期予後に影響を与える.高血圧病変を放置
弁を用いる.大動脈基部拡大で閉鎖不全が生じている場
すると心不全や脳出血の原因となり,降圧薬での治療が
合は,Bentall 手術が一般的である.高安動脈炎では大
期待できない場合は狭窄部の血行再建術を行う.この他
動脈弁の変性が見られる症例が多く,自己弁温存術式は
大動脈間バイパス,非解剖学的バイパス等が行われ,腹
施行しない方が良い.成績向上のためには炎症のコント
部アンギーナ等の症状を伴う場合は,上腸間膜動脈や脾
ロールが大切であり,炎症がコントロールされていない
動脈等へのバイパスを考慮する.腎動脈バイパスは,大
場合は,遠隔期の弁周囲の縫合不全が生じる危険が高く
動脈腎動脈バイパスを静脈グラフトあるいは内腸骨動脈
なる.長年炎症がコントロールできない場合は,基部拡
を動脈グラフトとして用いて行うことが多い.その他に
大がなくとも Bentall 手術を考慮する.
肝動脈腎動脈吻合バイパスや脾動脈腎動脈吻合等も行わ
冠動脈起始部狭窄を生じる場合があり,臨床症状を伴
れる.
う場合は高安動脈炎固有の問題点に注意しながら冠血行
再建を考慮する.弓部分枝動脈に閉塞や狭窄がある場合
は,内胸動脈はグラフトとして適していない.大伏在静
脳血行障害と高血圧の合併するタイプである.低圧に
脈や橈骨動脈を用いる場合は,大動脈壁の石灰化や内膜
曝されていた脳血管が血行再建により急激に高圧に曝さ
肥厚といった病変部位を回避する等,中枢吻合部位の選
れることにより,脳出血等の重篤な合併症を引き起こす
択に配慮する.冠動脈病変は入口部に認めることが多く,
ことがある.また高血圧の治療を先行すると,脳血行障
冠動脈起始部の内膜摘除やパッチ形成術が有効な症例も
害が増悪する危険が残る.脳血行再建は大動脈病変とは
ある.
独立して評価することが多い.脳血行障害が高度の時は
肺動脈狭窄性病変により肺高血圧症を呈する場合の手
高血圧治療との同時手術を行う等,脳が直接高圧系に曝
術は,心膜を用いた狭窄部の形成術あるいは人工血管置
されないように対処する.一般に脳血行障害が軽度の時
換術が一般的である.
は,まず高血圧を治療し,脳の血行は経過を観察する.
②大動脈弓部分枝閉塞を主病変とする病態
大動脈弓の閉塞病変の程度と臨床症状が必ずしも相関
脳血行障害が出現するならば二次的に血行再建を行う.
⑤拡張性病変,動脈瘤を主とする病態
しないために,血管撮影像のみでは手術適応の決定は難
高安動脈炎に対する手術の約 1/5 を占める.形態は嚢
しい.めまい失神発作のみの症例は,社会生活に著しく
状や紡錘型の真性瘤であることが多いが,まれに解離が
障害を来たす場合をのぞいては経過観察とするが,視力
ある.紡錘型の動脈瘤は動脈瘤壁の石灰化を伴っている
障害が出現している場合は保存的治療ではその回復が望
ことがあり,必ずしも破裂しやすいとは言えないが,嚢
めないために,早期に血行再建術を行うことが多い.高
状瘤の場合は破裂の危険が高いとされ,手術を考慮する.
度虚血の場合両側の頸動脈再建を行うと,急激な血管内
手術適応を明らかにしたデータはないが,動脈硬化性瘤
圧の上昇が脳内出血等の重篤な合併症を引き起こす可能
に準じて外科治療を行うことが多い.多発性動脈瘤や閉
性がある.このため頸動脈再建を片側のみにとどめる,
塞性病変を合併する場合も見られ,手術治療戦略に工夫
末梢吻合部を外頸動脈に作成するといった工夫を行う
を要することが多い.
他,術後頭蓋内圧を下げる補助手段も考慮する.脳血行
1542
④Ⅰ型とⅡ型が合併し複雑な病状を呈する病態
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
5
膜,外膜が反応性に肥厚することが,動脈病変の発症機
結語
序と考えられている.血管壁の脆弱化により,動脈が局
所的に拡張すると真性動脈瘤が,また動脈壁が一部破綻
高安動脈炎は厚生労働省の特定疾患対策研究事業にも
すると仮性動脈瘤や動脈解離が生じる 280).一方,Be-
取り上げられ,我が国が中心となって研究が進められて
hçet 病 患 者 で は, 血 管 の 炎 症 に 伴 っ て 血 液 中 の von
きた疾患である.疾患の特性や治療の方向は明らかにな
Willebrand factor や plasminogen activator inhibitor の濃度
ったが,病因が不明のままであり今後の研究を待たねば
が上昇することが知られており,前者が血小板凝集を促
ならない.高安動脈炎症例は罹患年齢が若く再燃を繰り
進し,後者が線溶活性を低下させることが,血栓性素因
返すことがあるが,本疾患の生命予後は以前考えられて
の要因の 1 つになっていると推測されている 281).また
いたよりも比較的良好である.長期にわたってきめ細か
抗カルジオリピン抗体やプロテイン S に対する自己抗体
く患者を追跡することが望ましい.
が誘導され,血栓傾向の原因となっている可能性がある
とする報告もある 282)−284).前述の内膜肥厚にこのよう
Ⅻ
な血栓性素因が加わり,動脈閉塞性病変が形成されると
Behçet 病
考えられている.動脈瘤と動脈閉塞の両者を合併する症
例も多い.動脈病変合併患者の予後は,5 年生存率 83%,
15 年生存率 66 %と,動脈病変非合併患者に比べ不良で
1
ある 278).
疫学
動脈病変は全身のあらゆる動脈に発症しうるが,動脈
瘤は胸部・腹部大動脈に多く見られ,動脈閉塞は上下肢
Behçet(ベーチェット)病は,口腔粘膜のアフタ性潰
の動脈,腸間膜動脈,冠動脈等中小動脈に発症すること
瘍,外陰部潰瘍,眼症状,皮膚症状を主症状とする慢性
が多い.動脈瘤は破裂予防のため外科的治療が必要にな
再発性の炎症性疾患である.障害は全身の多臓器にわた
ることが多い.動脈閉塞は,閉塞した動脈の支配領域に
り,関節症状,心血管症状,消化管症状,呼吸器症状,
虚血症状を引き起こすが,保存的治療で経過観察可能な
神経症状等,多彩な病態を呈する.本症は主に日本や韓
場合が多い.
国を中心とした東アジア,およびトルコやサウジアラビ
ア等の中近東に多く見られる.我が国では北海道,東北
3
動脈病変に対する治療
地方に多く,現在約 18,000 人の報告がある.20 ∼ 40 歳
で発症することが多く,30 代前半にピークを示す.男
Behçet 病の動脈閉塞性病変に対する治療法は,症例が
女比はほぼ 1:1 である.病理学的所見としては,全身
少ないため大規模な比較試験が困難であり,未だ確立し
269)
.病
たものはない.保存的治療としては,ステロイド投与が
因については不明な点が多いが,細菌・ウイルス感染や
有効であるとの報告がある 285).また,Behçet 病患者で
他の環境因子によって,自己免疫が活性化されることが
は血液中の活性化血小板が健常者に比べ多いため,抗血
誘因の 1 つになっていると考えられている 270),271).
小板薬の有効性が示唆されている 286).前述の通り,深
Behçet 病の動脈病変の出現率は 2.2 ∼ 18%と報告され
部静脈血栓症等の静脈病変を合併している症例では,抗
の動静脈,毛細血管を侵す血管炎が主体である
ており,圧倒的に男性に多い.性差が見られる原因は不
凝固療法が併用される.動脈瘤病変に対するステントグ
明であるが,ホルモンあるいは遺伝的な要因が考えられ
ラフトを用いた治療の報告も散見されるが,その長期的
ている.深部静脈血栓症や皮下の血栓性静脈炎等の静脈
な成績については不明である 287).動脈閉塞に対するイ
病変を同時に合併する症例も多い 272)−277).Behçet 病の
ンターベンション治療については,ほとんど報告されて
発症から平均して 5 ∼ 9 年程度で現れる 272),276),278),279).
いないのが現状である.
2
動脈病変
重度の虚血症状が出現することはまれであるが,その
場合は外科的な血行再建術が必要になる.しかし動脈病
変を合併する患者の場合,既に広範囲にわたって動脈壁
動脈病変は,動脈閉塞と動脈瘤に分類される.組織学
が脆弱化していることが多く,術後半年から 2 年程度の
的には,好中球,リンパ球,形質細胞を中心とした炎症
比較的早期に吻合部仮性動脈瘤が形成されることがしば
性細胞が血管壁に浸潤し,その結果中膜が破壊され,内
しばある 288).吻合部動脈瘤の予防には,ステロイドや
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1543
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
免疫抑制薬の投与が有効である可能性が示唆されてい
る 278),279).また,宿主動脈の内膜肥厚や前述の血栓傾向
3
臨床症状
に伴い,グラフト閉塞も比較的高頻度に見られる.術後
合併症が致命的となることもあるため,手術適応につい
厚生省特定疾患難治性血管炎調査研究班による
ては慎重な判断が必要である.
Buerger 病の診断基準に見られる臨床症状の多くは慢性
動脈閉塞症に共通のものであるが,上肢の罹患,足底の
ⅩⅢ
跛行,虚血性紅潮,遊走性静脈炎等は本疾患の診断に役
Buerger 病
立つ症状と考えてよい.上肢罹患の有無は閉塞性動脈硬
化症との鑑別に重要な所見であるが,膠原病,胸郭出口
症候群との鑑別を要する.足底の跛行(instep claudica-
1
tion)は,下腿動脈に閉塞の主座がある本疾患で見られ
病因
るが,透析患者や膠原病患者でも見られることがあり特
異的な症状ではない.虚血性紅潮は Buerger’s color と呼
本疾患の病因については今なお不明である.タバコに
ばれ,これは肢端静脈系の血液鬱滞 stagnation を意味し,
対 する アレ ル ギ ー,慢 性 の反 復 外 傷, 抗 リ ン 脂 質抗
本疾患の静脈系への関与を意味するものである.本疾患
体
289)
290)
291)
等の血液凝
が “ 血栓性動脈炎(thromboarteritis)” でなく “ 血栓性血
固系の異常,血管の攣縮,ホルモン異常等が指摘されて
管炎(thromboangiitis)” と呼ばれる所以である.潰瘍・
きた.また本疾患には明らかな地域性があること,社会
壊死病変は上肢,下肢ともに約 50%の患者に見られる.
や血清セロトニン
,Protein S 欠乏
の低階層に患者が好発することから,劣悪な環境に起因
する真菌,細菌,リケッチア,ウイルス等の関与が強く
4
検査所見
疑われてきた.いずれもこの疾患の全体像を一元的に説
明しうるものではない.近年,血管炎を起こす刺激要因
動脈拍動の触知,四肢血圧の測定は重要で,病変の存
として,抗好中球細胞質抗体(ANCA)292),抗内皮細胞
在や虚血の重症度を明らかにできる.本疾患に特異的な
293)
抗体(AECA) といった自己抗体の関与の他,内皮細
血液生化学的検査所見はない.
胞上の細胞接着因子や T cell の関与する免疫応答による
血管造影所見は重要で,
(1)下肢では膝関節より末梢,
血管炎ではないかという指摘もなされるようになってき
上肢では肘関節より末梢に必ず病変がある,(2)その中
.さらに最近では,歯周病菌(Treponema den-
枢側の動脈壁に不整はなく平滑である.(3)動脈閉塞様
)
ticola)の関与 296(エビデンスレベル
C)も指摘されて
式は途絶(abrupt occlusion)型,先細り(tapering)型
きているが,何が誘因となっているかは未だわかってい
が多く,コルクの栓抜き状(cork screw),樹根状(tree
た
294),295)
ない.
2
root),橋状(bridge)となった側副血行路の発達が特徴
疫学
的である.蛇腹様所見(accordion-like appearance)は,
298),299)
本症に特有な所見である(図 1)
.
血管造影所見上鑑別を要するのは膠原病で,(1)病変
1970 年代から我が国における初発患者数減少の傾向
の大半が末梢動脈に限局しているが,まれに外腸骨,大
,現在の患者数はおよそ 10,000 ∼ 12,000 人
腿動脈に見る,(2)病変は先細り型,途絶型がほとんど
は著しく
297)
程度と推定される.30 ∼ 40 歳代の患者が 70 %を占め,
で,特異な狭窄(narrowing,fine thread 等)や壁不整が
性別は男性が圧倒的に多く,ほぼすべてが喫煙者である.
見られる,
(3)側副血行路の発達が一般には不良である,
本疾患はアジア,中近東,地中海地域といった亜熱帯,
(4)骨変化を伴う hyperemia 等が特徴と言える.造影所
温帯地方に多く明らかな地域性があること,社会の低階
見だけから両者を鑑別することは実際には難しい 300).
層に患者が好発していることから,我が国における本疾
患の減少は生活環境改善による衛生環境向上と関わりが
5
診断
あるのかもしれない.
塩野谷の臨床診断基準 301)は明解で実用的である.
(1)50 歳未満の若年発症
(2)喫煙者
1544
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
血行再建術は虚血徴候の改善をもたらすが(エビデンス
図 1 Buerger 病の動脈閉塞様式
Abrupt
Occlusion
レベル C),適応となる患者は少ない.下腿や足部動脈
Irregurality
Tree root
Collaterals
への再建術は高度な手術手技を要するが,禁煙と薬物療
法により厳格な患者管理を行えば比較的良好な開存率が
得られる(エビデンスレベル C)305).グラフト閉塞して
Bridging
Collaterals
Localized
Stenosis
も大切断に至ることは少ないが 303),間歇性跛行例にま
Dilatation
で適応を拡大する必要はない.血行再建術の適応のない
患者には交感神経切除術が考慮されるが,足関節血圧が
Moth-eaten
Stenosis
60mmHg 未満では効果は少ない.筋血流量増加は見ら
Coakscrew
Collaterals
Early venous
filling
れないため間歇性跛行には適応とならない 306).最近で
は内視鏡的交感神経焼灼術が普及している.
PGE1(alprostadil) や PGE1 誘 導 体(limaprost) や
Buerger 病の動脈閉塞様式は途絶(abrupt occlusion)型,先細り
(tapering)型が多く,蛇腹様所見(accordion-like appearance)
は本症に特有な所見である.側副血行路はコルクの栓抜き状
,橋状(bridge)に発達する.
(cork screw),樹根状(tree root)
PGI2 誘導体(iloprost)といった血管作動性薬の非経口
投与は重症虚血肢の虚血性疼痛改善,潰瘍治癒に役立つ
が,その有効性は少数の患者に限られる 3),307).
最近のトピックとして血管新生療法が挙げられる.血
(3)下腿動脈閉塞
(4)上肢動脈閉塞,または遊走性静脈炎の存在または
管内皮特異的増殖因子(VEGF)308)や肝細胞増殖因子
(HGF)163)等の遺伝子治療や,自己骨髄細胞移植 165),末
梢血幹細胞移植 309)等による血管新生療法があるが,臨
既往
(5)喫煙以外の閉塞性動脈硬化症の危険因子がない
床症状の改善は認められるものの(エビデンスレベル
この 5 項目はいずれも “and” が条件であり “or” でない
C),血管新生の証明はなされておらず今後の研究結果
ことに注意すべきである.この 5 項目を満たし,さらに
が待たれる.
鑑別すべき疾患が否定された時にはじめて本疾患の診断
が確定する.しかしながら,50 歳未満の若年発症,喫煙,
7
予後
下腿動脈閉塞があっても,上肢動脈閉塞や遊走性静脈炎
のないこともあり,上記 5 項目をすべて満たすものは約
30%程度である.
6
症状の再発再燃により四肢切断を繰り返す患者は 20
%程度である(エビデンスレベル C).しかし,60 歳を
超えれば潰瘍・壊死の発生による肢切断例はまれであ
治療
る 303).また,生命予後は良好で,一般の日本人の生命
予後と差はない(エビデンスレベル B)302),303).生命予後
が著しく低いという欧米の報告 310)もあるが,我が国の
〈推奨事項〉
クラスⅠ
診断基準にあてはまらない症例が多く含まれているため
禁煙指導は本疾患治療の根幹をなす(エビデンスレベ
参考とはならない.
ル A).
血行再建術の適応のない患者には交感神経切除術が考
慮される(エビデンスレベル A).
クラスⅡ b
ⅩⅣ
膠原病
血管作動性薬の非経口投与は重症虚血肢の虚血性疼痛
改善,潰瘍治癒に役立つ(エビデンスレベル A).
膠原病関連の血管病変は比較的小径の動脈に罹患する
クラスⅢ
ことが多く,臨床の場では四肢末梢の潰瘍や壊死の形で
交感神経切除術は足関節血圧が 60mmHg 未満では効
直面することも多い(図 2).罹患範囲が小さい場合は
果は少ない(エビデンスレベル C).
その時顕在化した虚血部位は小さくなるが,全身性の血
管炎の初期症状の場合もあり,適切な治療を行わないと
病変の進展や虚血徴候の増悪は喫煙の継続よるた
め
295),296),302)−304)
,禁煙指導は本疾患治療の根幹をなす.
生命予後の不良な疾患も含まれるので早期診断・早期治
療が重要である.また,治療法も内科的なアプローチと
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1545
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
図 2 原因不明の血管炎:右環指末節の壊死
指動脈末梢に限局した動脈閉塞が見られる
1.
2.
なることが多く,その分野の専門医への紹介のタイミン
グも重要である.
血管炎には,血管炎そのものを基盤とする様々な臨床
病態の疾患群(原発性血管炎)と,SLE や悪性関節リウ
マチ等の膠原病をはじめ他疾患に血管炎を伴う病態(続
表 18 虚血や出血による局所の臓器症状
Ⅰ.小血管の障害による症状
皮膚 :網状皮斑,皮下結節,紫斑,皮膚潰瘍,肢端壊死
末梢神経 :多発性単神経炎
筋肉 :筋痛
関節 :関節痛
腎臓 :壊死性(半月体形成性)糸球体腎炎
消化管 :消化管潰瘍,消化管出血
心臓 :心筋炎,不整脈
肺 :肺胞出血
漿膜 :心膜炎,胸膜炎
眼 :網膜出血,強膜炎
Ⅱ.大型~中型の血管の障害による症状
総頚動脈 :めまい,頭痛,失神発作
顎動脈 :咬筋跛行
眼動脈 :失明
鎖骨下動脈:上肢の痺れ,冷感,易疲労性,上肢血圧左右差,
脈なし
腎動脈 :高血圧,腎機能障害
腸間膜動脈 :虚血性腸炎
冠動脈 :狭心症,心筋梗塞
肺動脈 :咳,血痰,呼吸困難,肺梗塞
(文献 312 より一部改変)
発性血管炎)が含まれる.
イズによりアプローチが異なり,大型∼中型では血管造
原発性血管炎症候群は Jennette311)らに提唱される Cha-
影が有力であり,小型血管炎では免疫複合体の有無で大
pel Hill 分類に従い,罹患血管サイズに基づき 10 疾患の
別し,さらには ANCA のタイプに注意する.生検可能
血管炎が,大型血管の血管炎(巨細胞性動脈炎,高安動
な臓器が罹患した場合は病理学的診断を行う(図 3).
脈炎)と中型血管の血管炎(結節性多発動脈炎:PN,
PN,MPA,AGA,WG,悪性関節リウマチ,抗リン
川崎病),小型血管の血管炎 Wegener(ウェゲナー)肉
脂質抗体症候群については,厚生省難治性血管炎分科会
芽腫症:WG,アレルギー性肉芽腫性血管炎:AGA,顕
(1998)からの診断基準を含んだ診療マニュアルが出さ
微 鏡 的 多 発 血 管 炎:MPA,Henoch-Schölein 紫 斑 病;
れている 17).
HSP と他 2 疾患,都合 6 疾患)に分類される.中でも
WG と MPA,AGA は抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil
cytoplasmic antibody: ANCA)の陽性所見と対応抗原が
cytoplasmic(cANCA) 型 プ ロ テ イ ナ ー ゼ 3(PR3) か
perinuclear(pANCA)型ミエロペルオキシダーゼ(MPO)
かにより分類される.
血管炎の症状は,炎症による全身症状と臓器の虚血や
出血による局所症状に大別される 312).罹患血管サイズ
と罹患臓器による症状を(表 18)に示す.小型血管の
図 3 血管炎症候群の診断のアプローチ
血管炎の症候,炎症所見:あり
感染症・膠原病・悪性腫瘍などを除外
罹患血管のサイズ
大型
中型
小型∼毛細血管
障害では,触知可能な紫斑(palpable purpura)が特徴
的であり,難治性皮膚潰瘍,多発性単神経炎,肺胞出血
血管造影
や腎の小血管障害による血尿,蛋白尿,円柱尿を呈する.
大型∼中型の血管の障害に関しては,動脈硬化の危険因
MPOANCA
子のない心筋梗塞では血管炎を疑う.腎では小葉内動脈
以上の動脈が該当し,急速に進行する高血圧と腎機能障
害を呈する.腸間膜動脈の血管炎が関与し,急性腹症や
下血を生じる場合もある.
診断に際しては,一見脈絡のない多彩な症状を呈する
発熱患者では,血管炎が疑われる 312),313).罹患血管のサ
1546
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
免疫複合体
−
生検
+
PR3IGA
ANCA IC
クリオグ
ロブリン
組織生検
高安 側頭 川崎病 PAN NPA AGA WG HSP クリオグロ
動脈炎 動脈炎
ブリン血症
(文献 312 より一部改変)
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
1
結節性多発動脈炎(PN)
より細小な血管が罹患し pANCA 陽性の顕微鏡的多発
筋梗塞,脳梗塞等.ANCA のうち抗 MPO 抗体が認めら
れる.
2
経過・治療・予後
血管炎(MPA)が分離独立した.病因はウイルス感染
ステロイド薬によく反応し,予後は比較的良好である
も示唆されているが詳細は不明である.
が,再燃を来たしやすい.難治例や急速進行例ではステ
1
症状・検査所見
ロイドパルス療法や免疫抑制療法,血漿交換も考慮する.
多発性単神経炎は治療抵抗性の場合もあり,免疫グロブ
組織学的にⅠ∼Ⅳ期(変性期,急性炎症期,肉芽期,
リン多量静注療法も報告されている.心筋梗塞や心タン
瘢痕期)の病期に分けられる.Ⅱ期からⅢ期に中動脈の
ポナーデ,脳出血,脳梗塞,消化管出血で死亡すること
線維性の腫脹,内膜浮腫,細胞浸潤から内外弾性板の断
もある.
裂,内腔の狭小化あるいは瘤形成が見られる.四肢の数
珠状の皮下結節は浅在動脈の小動脈瘤である.動脈病変
3
Wegener 肉芽腫症(WG)
により四肢では皮膚潰瘍や壊死を生じ,冠動脈炎や心筋
梗塞,脳梗塞や脳出血,腹部臓器では消化管,膵,肝,
上気道(副鼻腔等)と下気道(肺)の壊死性肉芽腫,
胆嚢等の臓器梗塞による吐下血や急性腹症を生じる.多
腎の壊死性半月体形成性腎炎,全身性の壊死性肉芽腫性
発性単神経炎は最も高頻度に見られる臓器症状である.
血管炎を見る原因不明の疾患である.ANCA のうち抗
腎動脈や腹部動脈の血管造影は診断に有用で,小動脈
PR3 抗体が認められる.
瘤(2 ∼ 12mm),血管壁の不整や内腔の狭窄・閉塞が見
られる.
2
経過・治療・予後
1
症状
上気道の症状として,壊疽性鼻汁(膿性鼻汁),副鼻
腔炎,中耳炎,眼症状等がある.肉芽腫が鼻腔等を破壊
発症 3 か月以内の治療により予後が左右されることが
し鼻中隔穿孔や鞍鼻が見られる.副鼻腔からの病変の伸
多く,生検による血管炎病期の把握を行う.急性期に治
展や脳内・髄膜の肉芽腫病変により中枢神経症状も見ら
療管理が奏功すればⅡ期からⅢ期での死亡を抑えられ,
れる.肺症状として膿性・血性痰,結節性陰影,空洞形
その後の経過は比較的良好である.死亡例の多くは発症
成等がある.腎症状として壊死性血管炎から糸球体係蹄
6 か月以内で,1 年目以降の死亡例は著減する.ステロ
の破綻を来たし,半月体形成性腎炎となり,血尿・蛋白
イド薬と免疫抑制薬の併用による 5 年生存率は 80%との
尿,高血圧,腎機能低下を来たす.壊死性血管炎による
報告もある.主要な死因は呼吸不全,心不全,腎不全,
紫斑・皮膚潰瘍,多発性単神経炎,関節炎,脳梗塞等も
消化管出血,臓器梗塞による合併症である.
見られる.症状は上気道に始まり,肺,腎へと進行する.
肉芽期・瘢痕期では動脈閉塞症状に対する治療が主体
となり,血栓溶解療法や抗凝固療法,さらには血管拡張
薬や抗血小板薬投与が行われる.
2
アレルギー性肉芽腫性血管炎
(AGA)
2
経過・治療・予後
免疫抑制薬とステロイド薬の併用療法を行い,重症例
ではステロイドパルス療法や血漿交換療法を考慮する.
上気道,肺に二次感染症を起こしやすいので細菌感染症
対策を十分に行う.早期に診断治療を行った例では寛解
に至る例もあるが,早期の治療中止は再発の頻度が高く
別名 Churg-Strauss 症候群.アレルギー性疾患特に気
長期間の観察が必要である.死因は敗血症や肺感染症が
管支喘息を先行症状として数年間有し,好酸球の増多と
多い.最近早期に治療開始する例が増えるに従い予後は
気管支喘息発作とともに血管炎症状を呈する.壊死性血
著しく改善してきている.近年難治例に対し抗 TNF 療
管炎と肉芽腫を認めるが肉芽腫は必ずしも血管炎と関連
しない.臨床症状は血管炎・肉芽腫による.
1
法(infliximab; イ ン フ リ キ シ マ ブ ) や 抗 CD20 抗 体
(rituximab;リツキシマブ)等の治療報告がある.
症状
気管支喘息,紫斑,多発性単神経炎,消化管出血,心
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1547
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
4
SLE
いる.血管炎により多臓器にわたる関節外症状を呈する.
MRA の血管炎は全身性動脈炎型(Bevans 型)と四肢末
梢皮膚等に限局した末梢動脈炎型(bywaters 型)に大別
全身性エリテマトーデスは免疫機構の異常を基盤とす
される.HLA-DR4 との強い相関が言われ,免疫異常も
る代表的な全身性自己免疫疾患であり,ほぼすべての臓
MRA でより強い.抗内皮細胞抗体は悪性関節リウマチ
器が障害され臨床像が極めて多彩な全身性炎症性疾患で
において陽性率 68 ∼ 80 %で血管炎のない RA で 20 %で
ある 314).
あり,この抗体と血管炎の関連を示唆する.
心血管関連の症状としては,四肢の血管炎に起因する
爪周囲や指尖の梗塞,網状青色皮斑(livedo reticularis),
1
症状
Raynaud 現象が見られる.脳出血や脳梗塞は,SLE 自体
RA としての罹患期間が長く関節症状の進んだ stage
の精神神経症状との鑑別が重要な場合がある.消化器症
Ⅲ,Ⅳの例が多い.全身性動脈炎型では全身症状に加え
状としては,腸間膜動脈血栓症から虚血性腸炎を来たし
皮下結節,紫斑,筋痛,筋力低下,胸膜炎,心膜炎,多
穿孔に至る場合がある.僧帽弁や大動脈弁に疣贅を形成
発性神経炎,消化管出血,上強膜炎等の症状が急速に出
する Libman-Sacks 型心内膜炎や心筋梗塞,肺血栓塞栓
現する.末梢動脈炎型では皮膚の梗塞,潰瘍,指趾の壊
症は抗リン脂質抗体陽性例に多く見られる.
死等を主症状とする.
【付】抗 リ ン 脂 質 抗 体 症 候 群(Antiphospholipid Syn-
drome:APS)
2
治療・予後
抗リウマチ薬を中心とした RA の治療を継続する.
APS は SLE 患者に最も多く見られ,自己免疫疾患に
MRA の治療は臨床病態により異なるが,ステロイド薬,
伴う二次性のものと明らかな誘因を持たない原発性抗リ
免疫抑制薬,抗凝固薬さらには血漿交換療法も組み合わ
ン脂質抗体症候群がある.動・静脈血栓症,血小板減少
せて行われる.生命予後は全身性動脈炎型では不良であ
症,習慣性流産,若年発症の心筋梗塞・脳梗塞に一定の
る.
頻度で見られる.抗カルジオリピン抗体,ループスアン
チコアグラントが陽性で,対応抗原としてβ 2 グリコプ
ロテインⅠが見られる.
1
ⅩⅤ
糖尿病性足疾患
症状
身体のあらゆる部位の動静脈に血栓が生じるが,多く
は下肢を中心とした静脈血栓症で再発が多い.極めて急
1
糖尿病性足疾患の分類
激な経過をとり致死率の高い劇症型抗リン脂質抗体症候
群(catastrophic APS)が注目されている.その特徴は,
糖尿病患者における足壊死は一般的には他の糖尿病合
腎障害を含む 3 つ以上の多臓器障害があり,高血圧の頻
併症(腎症,神経障害,網膜症)より発症年齢は遅いが,
度が高く中枢神経症状が主症状で,複数の大小血管の閉
70 歳 以 上 の 患 者 で は 概 ね 患 者 の 3 % に 認 め ら れ て い
塞が見られることである.
る 315).糖尿病患者に見られる潰瘍,壊死等の足疾患は
2
治療
神経障害性,虚血性,および両者の混在する神経虚血性
の 3 つに大別される.最も多いものは神経障害性であり,
動・静脈血栓症の急性期には通常の血栓症の治療に準
末 梢 閉 塞 性 動 脈 疾 患(peripheral arterial disease: PAD)
じて血栓溶解療法,抗凝固療法を行い,慢性期には血栓
を合併する虚血性のものと神経虚血性のものがほぼ同数
再発防止のためワーファリンによる経口抗凝固療法と少
である 4).典型例では,神経障害によるものでは,足部
量のアスピリンの投与を行う.
は温かく,潰瘍は感染を伴っており,足部の固有筋の萎
5
関節リウマチ(RA)
,特に
悪性関節リウマチ(MRA)
縮による変形(hammertoe,claw foot 等)を見ることが
多い.これに対し,虚血によるものは足趾の先端や踵に
見られ,感染を伴わない場合にはミイラ化した病変であ
り,足部は冷たい(図 4).しかしながら,神経障害に
血管炎症状の強い一群が悪性関節リウマチと呼ばれて
1548
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
よる autosympathectomy により,見かけ上足部が温かい
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
図 4 神経障害性および虚血性足病変の比較
れた場合には,その改善を図るのが望ましい.
4
治療
1
基礎疾患に対する治療
基礎疾患である糖尿病に対する治療に関しては,日本
糖尿病学会が示した「糖尿病治療ガイド」に準ずる 318).
左:糖尿病における神経障害性足部潰瘍.足趾の変形と中足骨
頭にあたる部位の潰瘍が見られる.感染を伴い足部は温かい.
右:虚血による壊死.足部は冷たく,足趾のミイラ化を認める.
2
足病変に対する治療
糖尿病患者は毎日足部を観察し,傷や白癬,感染がな
いことを確認する.網膜症のために視力が低下している
こともあり,潰瘍においては後に述べる検査により血流
場合には,家族等の介助者がこれを行うことが望ましい.
障害の有無を診断する.
もし足部に異常が発見された場合には,自己治療や
2
home surgery を行わず,専門病院を受診するのがよい.
疫学
知覚が低下している足の熱傷を避けるため,カイロ,電
気毛布,こたつ等温熱機器の温度には十分注意を払い,
糖尿病患者においては PAD のリスクは 3 ∼ 4 倍となり,
入浴の際は手で温度を調べるのがよい.神経障害のある
HbA1 cの 1%の増加ごとに PAD のリスクは 26%増加す
患者はきつい靴を選ぶ傾向にあるので,靴のサイズは介
るとのデータがある 4).平均発症年齢は約 10 歳若年に変
助者に確認してもらうとよい.また,靴を履く際にはひ
4)
移し,肢切断に陥る可能性も増加する .
っくり返して,中に異物がないことを確認するようにす
一般の PAD は腸骨動脈から大腿動脈に好発するが,
る 319).
糖尿病患者の PAD は下腿の動脈を侵す頻度が高い(dia-
betic atherosclerosis).しかしながら,さらに末梢の足部
①薬物療法
の動脈は閉塞を免れていることが多い 316).動脈には石
Prostanoid は潰瘍の縮小にある程度の効果が見られる
灰化が見られることが多く,これはしばしば合併する腎
という研究があったが,この薬剤の明確な有効性を示唆
症による末期腎不全患者では特に著しいことが多い.
するデータはない.他の薬剤で有効性が明らかになった
3
診断
ものはない 4).
②血管内治療(interventional radiology: IVR)
足背動脈および後脛骨動脈の拍動を良好に触知し,ま
2000 年に発表された TASC1)では IVR が第一選択とさ
たドプラ聴診器でこれらの動脈に 3 相性の動脈音を聴取
れるのは腸骨動脈の 3cm 以下の狭窄に限られ,完全閉
する場合は,上流の PAD の可能性は低い.定量的に頻
塞例,長い狭窄については判断できないとされていたが,
用されるのは足関節上腕血圧比(Ankle brachial pressure
2007 年の TASC Ⅱ4)では 10cm 以下の狭窄性病変や,片
index: ABI) で あ り, 正 常 値 は 1.00 ∼ 1.30 と さ れ 317),
側総腸骨動脈の閉塞例に対しても IVR が望ましいとさ
虚血による安静時疼痛患者では一般に足関節血圧は 30
れるようになった.また,糖尿病患者に多い末梢病変に
∼ 50mmHg で あ る が, 組 織 欠 損 の あ る 患 者 で は
ついても,大腿動脈領域での IVR の適応は 3cm 以下の
70mmHg 未 満 の 足 関 節 血 圧 で は 治 癒 困 難 な こ と が 多
狭窄病変から 15cm 以下の狭窄にまで広げられている.
い 4). 下 腿 動 脈 石 灰 化 が あ る 場 合 に は 足 趾 血 圧(toe
ただ,自家静脈を用いた膝下大腿膝窩動脈バイパス術の
pressure)の測定が望ましい.足部に潰瘍が存在する場合,
5 年推定開存率が 70%ほどであるのに対し,大腿動脈狭
これが虚血によるものであるかどうかを判定するために
窄例の経皮的血管形成術(percutaneous transluminal an-
は経皮酸素分圧(tcPO2)や皮膚灌流圧(SPP)の測定
gioplasty: PTA)の開存率は 55%,閉塞例の開存率は 42
が有用とされる.tcPO2 が 30%以下,SPP が 30mmHg 以
%程度と大きく劣っている.間歇性跛行患者について言
下では組織治癒は困難と考えられている.また虚血がこ
えば,subintimal angioplasty による良好な成績の報告も
のレベルほどでない患者についても,血流低下が診断さ
見られる 320).膝窩動脈以下の IVR についてのデータは
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1549
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
ほとんどない 4).
③血行再建術
外科的な血行再建術は,現在のところ最も確実な
ⅩⅥ
動脈の機能性疾患
PAD の治療法である.バイパスへの流入血管は,その
上流に 20 %以上の狭窄がない限りどこでもよい.もし
動脈の機能性疾患とは,四肢主幹動脈から指趾末梢動
上流に狭窄や閉塞がある場合には,通常流入血管の治療
脈に器質的な閉塞性病変を認めないが,血管攣縮や拡張
を先行させる.糖尿病患者の場合にはほとんどが膝下の
のために四肢の末端で様々な臨床症状を生じる疾患であ
動脈にまでバイパスする必要があり,脛骨腓骨動脈以下
る.
へのバイパスを要することも多い.バイパス材料として
その原因は不明であることが多いが,基本的には血管
は自家静脈,特に大伏在静脈が最適であり,人工血管は
運動神経系の異常による血管攣縮と血管拡張による.攣
5 年開存率 30%と,極めて成績不良である.自家静脈が
縮では皮膚蒼白・チアノーゼ・冷感,拡張では発赤・灼
得られる限り,末梢吻合部は足部動脈に連続する病変の
熱感・浮腫・疼痛等が臨床症状として挙げられる.代表
少ない部位を選択するのがよい.自家静脈は in situ で用
的な疾患として血管攣縮に分類される Raynaud 症候群
4)
いても反転して用いても成績は同じとされる .術後抗
と,灼熱感・皮膚温上昇を伴うことから血管拡張に分類
血小板薬を使用することが開存性の向上につなが
される肢端紅痛症,カウザルギーが挙げられる.はっき
る 4),142).
りとした病因が定まっていない上に,後 2 者については
症例数も多くないことから,エビデンスに基づいた治療
④切断
方針はない現状である.
虚血性で血行再建が不可能な症例,大部分の足部が既
に壊死に陥っている症例,感染により生命が危険にさら
されている症例等では,切断術が行われる(一次切断術).
1
肢端紅痛症
(erythromelalgia)
血行再建を先行した場合,肉芽化が進まず結果的に創治
癒が不良であった部分に対し二次切断が行われる.虚血
肢端紅痛症は,うっ血を伴った発赤した四肢と灼熱感
肢の切断は,外傷による切断以上に断端の愛護的な取り
を特徴とし,未治療の場合疼痛を来たす肢端紫藍症(皮
扱いが必要である.
膚温低下を伴う紫藍色を持続的に呈し,多汗症,凍瘡,
網状皮斑をしばしば伴う)を呈したり壊死を来たしたり
⑤再生医療
することもある疾患である.
自己単核球移植,VEGF,FGF や HGF 遺伝子の導入
重症化した状態においても足背動脈,後脛骨動脈,橈
等が試みられているが,現時点では研究的医療である.
骨動脈,尺骨動脈等の主幹動脈の開存は保たれ,末梢動
⑥集学的創傷管理
脈拍動は良好に触知する.真性多血症症例に認められる
との報告がなされており,血小板数との関係が報告され
潰瘍,壊死等の組織欠損を伴う症例は,血行再建のみ
てきた 322).それとともに 1970 年代から経口の抗凝固薬
で治療は終了しない.小切断を行っても,一次的に創を
や heparin ではなく aspirin が治療に有効であることは報
閉鎖すると高率に感染が起こる.感染は局所の炎症によ
告されており,それに伴い活性化された血小板のプロス
り残存している動脈を閉塞させ,最初のバイパスが開存
タグランジン代謝により上記症状を呈すると報告されて
していても壊死範囲が拡大し大切断に至ることが多
いる 323).活性化した血小板により血小板由来増殖因子
い 319).このため切断端は開放にとどめ,創傷処置を行
(PDGF)が産生されたり,血小板の凝集が惹起されると,
う必要がある.Vacuum-assisted closure は最近広く取り
内膜肥厚や指趾動脈等の細動脈の血栓閉塞が引き起こさ
入れられるようになった治療法であり,有効性が確立し
れ,肢端紫藍症に至ったり,指趾壊死を来たしたりする
てきている
321)
.さらに植皮,遊離皮弁移植等の方策を
こともある.肢端紅痛症に対する治療は,血小板増多症
活用し組織治癒に努め,このような創傷処置に精通した
に 併 発 す る こ と か ら 行 わ れ て き た 低 容 量 aspirin 内 服
チームと協力して治療を行うのが望ましい.
(100mg/day)に代表される抗血小板療法が有効である
とされており 324),無効な場合には交感神経節切除やブ
ロック等を考慮する.肢端紫藍症に至ってしまった場合
1550
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
には,有効な治療法は少ないが,まず内科的な内服治療
たは反射性交感神経性萎縮症(Reflex Sympathetic Dys-
として aspirin に血管拡張作用のある抗血小板薬も加え
trophy Syndrome)等とも呼ばれ,その原因は未だ究明
る.無効な場合には外科的な治療法として交感神経節切
されていない.このため定まった治療法も確立されてい
除を考慮するが,その効果に定まった評価はない.
ない.何らかの外傷により末梢神経損傷を生じた後に生
2
Raynaud 現象
じるとされるが,外傷は受傷した本人もはっきりした記
憶ないような些細なことも多い.最も広く受け入れられ
ている病態生理の仮説は,損傷を受けた神経部位に新た
寒冷時に発作として指趾に蒼白,続いてチアノーゼの
な人工的とも言えるシナプスが現れ,その部で神経信号
色調変化を認め,元に復する一連の症状を指す.寒冷に
が short cut されるというものである 326).その他いくつ
さらされることの多い上肢に認められることが多い.皮
もの報告があるが,その基本は神経損傷であることは一
膚の蒼白は動脈攣縮に,チアノーゼは反応性充血による
般的に受け入れられている.
ものと考えられる.
Drucker らはカウザルギーを臨床状態で 3 段階(第 1 期:
Raynaud 現象の病態の本質である細動脈の攣縮の発症
acute,第 2 期:dystrophic,第 3 期:atrophic)に分類し
機序は未だ明らかにされていない.当初,Raynaud によ
ている 327).急性期である第 1 期は患趾の温かさ,灼熱感,
り報告された血管運動中枢による異常興奮とした説と
浮腫,多汗症等がその臨床症状の特徴である.この時期
Lewis らによる血管の寒冷刺激に対する感受性の亢進と
は交感神経節ブロックが有用であるが,症状は可逆的で
した説が報告されてきた.近年ではこれらにかわり,
あることもあり自然寛解することもある.第 2 期の臨床
Raynaud 現象に対する血小板のα 2 受容体の関与が示唆
症状としては,冷感,チアノーゼ,持続痛や骨粗鬆症等
されてきたが
325)
,単一の原因で Raynaud 現象の発症機
が挙げられる.第 2 期までは交感神経節ブロックが有用
序は説明することは未だ困難である.
であると報告されているが,急性期と異なり自然寛解す
Raynaud 現象を呈する場合,動脈に器質的病変を認め
ることはまれである.第 3 期には疼痛が受傷範囲を越え
ない Raynaud 病と器質的病変を来たす背景疾患を有する
て持続し,皮膚萎縮,骨の脱灰,関節硬直等が臨床的な
Raynaud 症候群との鑑別診断が必要となる.Raynaud 症
特徴となる.神経節ブロックが有効であった症例には,
候群には膠原病に合併する血管炎や,胸郭出口症候群等
外科的な交感神経節切除を考慮することもあるが,基本
が背景疾患として挙げられる.膠原病を背景疾患とする
的には第 2 期までの症例が交感神経節切除の良い対象で
場合には,原疾患が活動性の場合には原疾患に対する治
あり,内科的な治療に反応しない症例に限られる.
療を行いつつ抗血小板薬,プロスタグランジン製剤投与
に加えて,内科的治療が無効な場合には交感神経節切除
を考慮する.膠原病の中で活動性の SLE を合併してい
る症例には,原病である SLE に対する治療としてアフ
ⅩⅦ
ェレーシスを行うことが保険適用とされており,有効性
胸郭出口症候群・
鎖骨下動脈盗血症候群
を見る症例もある.Raynaud 病は器質的閉塞性病変を認
めないため,指趾に潰瘍・壊死を来たすことは少ない.
治療については寒冷刺激を避け,禁煙をすることにより
1
胸郭出口症候群
1
解剖と病因
軽快することが多い.抗血小板薬,プロスタグランジン
製剤投与を中心とする薬物療法を行うことも多いが,改
善を見ることは少ない.ただし一旦壊死に陥ってしまっ
た場合には,内科的な治療では疼痛コントロールも困難
上肢の神経(腕神経叢)・動静脈(鎖骨下動静脈)は,
であることが多く,交感神経節ブロックないし交感神経
頸部および胸郭から上肢へと,骨・筋肉・靭帯等によっ
節切除を行うことになるが長期にわたる効果にはエビデ
て形成される間隙を走行し,(1)斜角筋間三角,(2)肋
ンスはない.
骨鎖骨間隙,(3)小胸筋背側の 3 か所で圧迫を受けやす
3
カウザルギー
いが,特に,(1)や(2)等内側部での障害が多いとされ
ている 328).胸郭出口症候群は,もともと頸肋,第一肋
骨形成不全,前および中斜角筋走行異常等の解剖学的変
外傷後疼痛症候群(Post-traumatic Pain Syndrome)ま
異のある例(これだけでは大部分が無症状)が,交通事
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1551
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
故,労災,スポーツ等の外傷をきっかけに発症すること
が多いと言われている 329).
2
2
症状
胸郭出口症候群は,圧迫による障害の主体により,神
経性,静脈性,動脈性の 3 型に分けられ,共通の症状は,
1
鎖骨下動脈盗血症候群
(Subclavian steal syndrome)
病態
上肢の痛みである.神経性は全体の 97 %を占め,手の
鎖骨下動脈(多くは左側)の椎骨動脈分岐より近位部
しびれ・脱力,後頭部・頸部・肩・腋窩・前胸部の痛み
に高度狭窄または閉塞があって,患側上肢の運動に際し
を伴う.静脈性の頻度は 2%とされ,肋骨鎖骨間隙部で
て,逆行性に椎骨動脈から上肢へ血流が流れるために脳
の鎖骨下静脈の狭窄または閉塞によるうっ血のため,患
底動脈循環不全症状が生ずる場合を鎖骨下動脈盗血症候
側上肢の腫脹やチアノーゼが生じる.動脈性胸郭出口症
群という.最近では,内胸動脈を用いた左冠状動脈バイ
候群は,さらに少なく,多くは頸肋か第 1 肋骨の形成異
パス術後に,鎖骨下動脈への steal 現象が生じて心筋虚
常を伴っており,上肢の虚血症状(冷感,しびれ,Ray-
血を来たす冠状動脈−鎖骨下動脈盗血症候群の報告も見
naud 現象,労作時痛,手指の壊疽)を呈する 328).
られる(図 5)334).鎖骨下動脈閉塞の原因は,ほとんど
3
診断
鎖骨上の前斜角筋部の圧痛がほとんどの例で陽性で,
動脈硬化である 335).
2
症状
上肢を 90 外転外旋することにより,上肢の痛みが増強
上肢運動時の脳虚血症状(頭痛,眼前暗黒感,めまい)
するか,橈骨動脈拍動の減弱が見られることもある.単
と上肢虚血症状(運動時の痛み,しびれ,脱力)が特徴
純 X 線検査で,頸肋の存在や第 1 肋骨の形成異常,鎖骨
的である.冠状動脈からの steal の場合は胸痛が生ずる.
や肋骨の仮骨形成がないかを確認する.静脈性胸郭出口
症候群では,さらに静脈造影によって鎖骨下静脈の閉塞
3
治療
を認めたり,上肢の外転外旋位で鎖骨下静脈の狭窄を証
軽度の上肢虚血症状のみであれば,抗血小板薬投与等
明したりすることができる.動脈性胸郭出口症候群の動
の保存的治療を開始するが,脳虚血症状を認めて,血管
脈造影では,斜角筋間三角部の狭窄・閉塞や狭窄後拡張
造影上 steal 現象が証明される場合や,上肢の虚血が強
の所見が見られる.頸椎疾患等を除外するために,整形
い場合等に,患側上肢の血行再建術が考慮される.外科
外科医との連携が重要である.
的には,鎖骨下部切開による腋窩・腋窩動脈バイパス
4
治療
神経性が主体の場合には,消炎鎮痛薬や筋緊張緩和薬
か 336),鎖骨上部切開による鎖骨下・鎖骨下動脈バイパ
ス等の非解剖学的バイパス術が行われることが多い.最
近では,鎖骨下動脈近位部の限局性狭窄または閉塞に対
の内服と,頸部運動療法,姿勢の矯正,呼吸訓練等を試
みる.保存的治療で改善が見られない場合,周囲からの
圧迫に強く関与している第 1 肋骨切除と前および中斜角
図 5 冠状動脈−鎖骨下動脈盗血症候群の血行動態
(文献 334 より引用)
筋切除が行われることが多い.静脈性胸郭出口症候群で
は,急性期には経カテーテル的血栓溶解療法または外科
的血栓摘除と第 1 肋骨切除を行い,静脈に狭窄部が残存
椎骨動脈
した場合に,バルーン血管形成術やパッチ血管形成術を
併施することを推奨する報告があるが 330),331),腫脹が軽
度であれば,抗凝固療法等の保存的療法のみが選択され
ることもある 332).動脈性胸郭出口症候群では,しばし
ば頸肋が見られるので,前方鎖骨上経路でこれを切除し,
同時に斜角筋切除を行って病変部動脈を切除してグラフ
ト置換術を行うことが多い.末梢に塞栓症を合併する場
合には,可能な限り塞栓除去を行う 332),333).
1552
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
鎖骨下動脈起始部の
狭窄または閉塞
内胸動脈バイパス
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
するバルーン拡張術やステント留置術の報告が増えてい
る
図 6 膝窩動脈外膜嚢腫
335)−337)
.この疾患の血管内治療にあたっては,椎骨
動脈から上肢へ血流が流れており,脳循環への塞栓症の
リスクは少ないとされているが,脳梗塞発生例の報告も
ある 338)ので注意が必要である.
ⅩⅧ
1
膝窩動脈外膜嚢腫
右:血管造影では左膝窩動脈に有意な狭窄像はなく,造影剤が
薄くなるだけの所見であった.
左:造影 CT では,膝窩動脈に嚢腫性病変が認められた.
膝窩動脈外膜嚢腫とは
り 344),膝窩動脈捕捉症候群との鑑別も可能である 343).
外膜嚢腫は動脈外膜の粘液変性により外膜と中膜間に
コロイド様物質が貯留して動脈内腔の狭窄もしくは閉塞
3
治療方針の選択
を来たし,下肢の虚血症状を呈する病態であり,膝窩動
脈に好発する比較的まれな疾患である.
狭窄性病変の場合,穿刺吸引,嚢腫切除,開放術等が,
間歇性跛行を主訴とする以外に特徴的症状はないが,
症状の消長を認めることが唯一の特徴である
339),340)
.本
閉塞性病変の場合には自家静脈でのバイパス術が適応と
なる.
症例は 1954 年に Ejrup らが外腸骨動脈に発生した症例を
治療は主に嚢胞壁切除,動脈切除+自家静脈移植,嚢
報告して以来,1998 年に Lerien らが 321 例を集計してい
胞壁切開等の外科的治療が行われている 339),345)−347).CT
る.我が国では 1960 年に石川・三島らが報告してお
ガ イ ド 下 穿 刺 348), 経 皮 的 血 管 形 成 術(percutaneous
り 341),1997 年 に 前 田 ら に よ り 53 例 が 集 計 さ れ て い
transluminal angioplasty: PTA)349)等の低侵襲的治療も行
る 342).
われるようになってきているが,原則として狭窄例には
2
嚢胞壁切除を,閉塞例には動脈切除+自家静脈置換術を
診断
推奨する報告が多い 345)−347).過去の報告例からは,全
体として予後およびグラフト開存率は良好であ
間歇性跛行を主訴として受診した若年者の場合に本症
を念頭に置く.間歇性跛行を呈する膝窩動脈病変には,
他に閉塞性動脈硬化症,
Buerger 病,膝窩動脈捕捉症候群,
る 339),347).
4
治療手技
1
エコーや CT ガイド下での穿刺吸引術
膝窩動脈瘤閉塞,塞栓症による膝窩動脈閉塞等が挙げら
れる.身体所見として,膝関節の屈曲により病変部の血
管圧排が増強し下肢末梢動脈の拍動消失を見る“石川の
サイン”が知られている 341).血管造影では砂時計様狭窄,
エコーや CT ガイド下での穿刺吸引の報告が散見され
三日月様の緩やかな狭窄を呈し,動脈硬化性病変を認め
るが,中期成績は不良である 348),350),351).
ないとされているが,狭窄が軽度の場合には明らかな狭
窄を示さず造影剤が薄くなるだけの所見となる(図 6:
右).また膝関節の過屈曲位において膝窩動脈が M 字に
2
経皮的血管形成術(percutaneous
transluminal angioplasty: PTA)
屈曲するのも特徴とされている.CT では膝窩動脈また
外膜嚢腫内腔への粘液産生により早期に再狭窄を来た
はその近傍に嚢腫性病変が認められ極めて有用性が高く
し,満足すべき結果が得られていない 349).また完全閉
(図 6:左),完全閉塞し血栓形成を伴う症例では血管カ
塞症例に対して血栓が新鮮な場合には,血栓溶解療法の
ラードプラ法にて低エコー像が多房性であり同部に血流
後に PTA を施行した報告が散見されるが,早期に再狭
を認めないことにより鑑別できる
343)
.以上の血管造影,
窄,閉塞を来たしている 352).
CT,エコーが標準的な診断方法とされている.MRI で
は嚢腫内容の性状把握が可能であるという利点があ
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1553
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
聴取しつつ,足関節の他動的背屈および能動的底屈を行
嚢腫開放術
3
うと,ドプラ音が減弱するか消失する.
動脈が血栓性に閉塞していない場合に適応となる.
エコーでは,腹臥位にて膝窩動脈を走査するが,同動
以前は術前診断が確定しないことが多く,下記の動脈
脈の偏位や,膝窩静脈との間に存在する筋腹の有無を評
切除+自家静脈置換術が施行される傾向にあったが,最
価する.足関節の他動的背屈および能動的底屈で膝窩動
近では本症と確定診断され,内腔が血栓性に閉塞してい
脈が圧迫されジェットとして認められる.Duplex 超音
なければ,嚢腫壁を切開し開放する術式も用いられるよ
波検査では,同様の負荷により狭窄となった部位で,流
うになっている
353)
.CT や MRI,エコーにより嚢腫の範
速波形の収縮期最大流速が有意に上昇するか,逆に有意
囲,単房性か多房性を正確に評価し,嚢腫壁を全周性に
に低下する 359)−361).膝窩動脈拡張や動脈瘤を認めた場
切開し完全に開放することにより再発を回避できるとの
合は,壁在血栓の有無と狭窄度を算出する.
報告がいくつかある
346),354),355)
造影 CT では,膝窩動脈の内側への偏位と,動静脈の
.
間に腓腹筋内側頭または異常筋腹を認める.進行すると
動脈切除+自家静脈置換術
4
動脈拡張や動脈瘤,限局性閉塞が認められ,その近位側
完全閉塞症例で適応となる.閉塞した動脈を切除し,自
家静脈で置換する.遠隔成績は良好である
339),345),347),356)
.
に異常筋腹を認める.筋腹の起始部を確認することによ
り病型を決定する 362),363).
血管造影では,安静時では膝窩動脈の内側への偏位を
ⅩⅨ
膝窩動脈捕捉症候群
認め,足関節の他動的背屈および能動的底屈にて血管が
圧迫される.限局性閉塞や狭窄後拡張を認めれば本症を
疑う.特にⅠ型,Ⅲ型の限局性閉塞例では,閉塞の中枢側
と末梢側の膝窩動脈の中心軸にずれが認められる.長期
1
膝窩動脈捕捉症候群とは
間に及ぶと閉塞範囲が広範になることもある 67),360),364).
膝窩動脈領域の疾患として,膠原病,塞栓症,膝窩動
脈瘤,外膜嚢腫を鑑別する.
膝窩動脈は膝窩部で腓腹筋間を通過するが,時に腓腹
筋の付着異常や異常筋,線維束により変異し,これらに
4
治療方針の選択
より膝窩動脈が捕捉あるいは圧迫される.膝窩動脈捕捉
症候群は,膝窩部の解剖学的異常による捕捉の繰り返し
症状を有し膝窩動脈捕捉症候群と診断した場合には,
によって膝窩動脈の内皮障害を生じ,最終的に閉塞,下
Ⅰ - Ⅴ型(図 7)では積極的に手術を勧めるとの意見が
肢の虚血性障害を引き起こす疾患である
2
357)
.
臨床像
多い 364)−368).本症は若年者に多く,長期的には狭窄後
拡張からの塞栓症や限局性閉塞による下肢虚血症状を来
たすこと,無症状の時期であれば基本的には筋腹や線維
束を切除するのみで良好な結果が得られること等の理由
若年男性に発症した間歇性跛行の場合には本症を疑
による.
う.30 歳以下の腓腹部痛または足部痛を主訴とする間
膝窩動脈が開存しており狭窄や狭窄後拡張を来たして
歇性跛行の 40%が本症に起因する.男女比は 2:1 であり,
いなければ,動脈捕捉の原因となっている腓腹筋内側頭
発症は突然である.症状としては,間歇性跛行 70 %,
あるいは異常筋腹,線維束を切除する.狭窄後拡張や動
感覚異常 15 %,安静時痛または潰瘍が 10 %前後であ
脈瘤形成を来たしている場合は,原則として病変部を切
る
.身体所見として,足関節部の脈拍欠如を 60 %,
358)
除し,端々吻合とするか自家静脈置換術とする.狭窄や
低下を 10 %に認める一方,15 %前後では正常に触知す
閉塞例では自家静脈による置換術を施行するが,閉塞が
るが,他動的背屈,能動的底屈により消失する.2/3 の
広範囲の場合にはバイパス術が必要となることもある.
症例が,両側性とされている.
狭窄や限局的閉塞に対して経皮経管的血管拡張術を施
3
診断手順
行する症例が散見されるが,本症の病因は血管外からの
筋腹や線維束による捕捉にあるため,極めて早期に再閉
塞を来たすことが多い.
ドプラ法により,足背動脈か後脛骨動脈でドプラ音を
1554
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
図 7 膝窩動脈捕捉症候群の分類
ⅩⅩ
Ⅰ型
Ⅱ型
1
Blue toe syndrome
病態
Blue toe syndrome とは,古典的には足部の脈が触れ
るにもかかわらず足趾に突然冷感,疼痛,チアノーゼが
Ⅲ型
Ⅳ型
Ⅰ型:膝窩動脈は腓腹筋内側頭のさらに内側を走行し同筋より
深部を通過する.
Ⅱ型:Ⅰ型と同様の走行異常であるが,腓腹筋内側頭がやや中
央寄りに付着するため,膝窩動脈の走行はⅠ型より中央寄り
となる.
Ⅲ型:膝窩動脈の走行はⅡ型と同様であるが,腓腹筋内側頭か
ら分離した副腓腹筋(いわゆる腓腹筋第 3 頭)により圧迫さ
れる.
Ⅳ型:膝窩動脈は通常よりやや内側を走行し,膝窩筋または異
常線維束により圧迫される.
Ⅴ型:Ⅰ - Ⅳ型に膝窩静脈圧迫を伴う.
生じる病態を指す.最近では,慢性動脈閉塞症に同様の
足趾の変化が生じるものも含められている.その本態は
足趾に生じた微小塞栓症で,原因は動脈壁の不安定な粥
腫や動脈瘤の壁在血栓が破綻し,コレステリン結晶が播
種状に末梢動脈へ飛散することである(shower embo-
lism).明らかな誘因なく発症することもあるが,医原
性も少なくなく,カテーテル操作,心臓血管手術,抗凝
固薬,線維素溶解薬等が誘因となる.他に鈍的外傷等で
も生じる369)−373).症状は軽症から皮膚潰瘍・壊死まで様々
で,組織学的に皮膚や筋組織にコレステリン結晶を認め
5
治療手技
ながら,臨床症状を欠く場合も多い 374).本症では腎臓,
腸管,膵臓等の内臓にも微小塞栓症を併発することがあ
り,コレステリン塞栓症と総称される.また,大動脈壁
1
異常筋腹や線維束の切除
無症状であるが動脈捕捉の所見が認められ,動脈自体
に変化を来たしていない場合に適応となる.術中は総腓
骨神経麻痺を来たさないように,開創器や鈎による不用
に見られるびまん性の毛羽立ち状の粥腫は塞栓源となり
やすく,所見を認めるものは shaggy aorta 症候群とも称
される 375).
2
症状と診断
意な圧迫を避ける.
2
動脈瘤切除,自家静脈置換術
足趾および足部に突然,疼痛や冷感を伴う播種状・多
発性のチアノーゼ斑,皮膚の網状斑(リベド)等を認め,
狭窄後拡張や動脈瘤形成を来たしている症例で適応と
足背動脈と後脛骨動脈の拍動が触知可能であれば,本症
なる.異常筋腹や線維束による圧迫を解除し,瘤状変化
を疑う.微熱,倦怠感,体重減少,消化器症状等を伴う
を来たした動脈を切除する.再建経路は原則として従来
場合は,臓器塞栓症を併発している可能性を考える(自
の動脈の走行と同様とし,自家静脈で置換する.
覚症状を欠くことも多い).多くは急性発症の経過およ
3
バイパス術
び動脈拍動の触知によって慢性動脈閉塞症に基づく重症
虚血肢と鑑別されるが,中には慢性動脈閉塞症を基礎疾
閉塞が膝窩動脈全長近くに及ぶ広範な場合に,バイパ
患として有するものもある.
ス術を選択する.このような病変は,血管内治療や血栓
血液生化学検査では特異的な所見はないが,白血球増
内膜摘除術後の再発例等で見られる.自家静脈を用い,
多,赤血球沈降反応亢進等が認められ,一過性補体低下
閉塞部分の中枢側から末梢側までをバイパスする.
や好酸球増多を伴うこともある.他臓器にも塞栓症を生
じていれば,肝・腎機能障害,アミラーゼ上昇等の所見
を認める.塞栓源同定のためには,胸部大動脈から末梢
主幹動脈の造影 CT や超音波画像診断を行い,同時に他
臓器塞栓症の有無も検索する.カテーテルによる画像診
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1555
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005−2008 年度合同研究班報告)
断は,それ自体が塞栓再発の原因となりうるため,極力
ある.ヘパリン,ワルファリン等の抗凝固薬,および線
回避するのが望ましい.確定診断は,皮膚や筋組織の生
維素溶解薬は,フィブリンや血小板による粥腫破綻部位
検で血管内コレステリン結晶を確認することでなされ
の動脈内膜の修復を阻害し,またコレステリン結晶や粥
る.
腫の遊離を促進する恐れがあると考えられているため,
他の鑑別診断として,左房内血栓による塞栓は,通常
使用は回避する(レベル B)373),383),384).
は細小動脈でなく主幹末梢動脈を閉塞することが多い.
真性多血症や本態性血小板増多症は,細小動脈の閉塞を
来たし本症と類似の症状を生じることがある.膠原病等
の血管炎や Raynaud 症候群との鑑別も要する.
3
ⅩⅪ
遺残坐骨動脈
治療
本症の治療法は確立していない.治療は塞栓症を生じ
1
病態
た局所に対するものと,塞栓源に対するものとに分けら
れる.
胎生期における下肢動脈の発達過程において,本来退
虚血となった足趾に対する薬物療法としては,プロス
化すべき坐骨動脈が,何らかの原因で異常を生じて残存
タグランディン製剤 376),抗血小板薬,ステロイドが有
し た も の を, 遺 残 坐 骨 動 脈(persistent sciatic artery:
効とされている.LDL アフェレーシスが有効であった
PSA)と呼んでいる.下肢動脈は体長 6mm の胎生初期
377),378)
.足趾の症状は,軽症では数日で
には,臍帯動脈の背側 root から軸動脈(axial artery)が
軽快することもあるが,凍瘡様変化や皮膚潰瘍・壊死に
発生し,体長 8.5mm になると軸動脈は下肢の背側を走
至ることもある.潰瘍・壊死が難治の際には,交感神経
行して plantar plexus を形成するとともに,臍帯動脈の
との報告もある
節切除術も考慮される.多臓器塞栓症の予後は不良であ
腹側 root は退化し消失する.この時期に軸動脈起始部の
る.
中枢側で外腸骨動脈が発生し,体長 12mm になると下腹
塞栓源が明らかな場合に限り,手術による再発予防が
壁動脈と大腿動脈になり,大腿動脈は伏在神経の内側を
考慮される.手術には,塞栓源となる動脈病変を切除し
走行して外側枝と内側枝を分枝し,体長 14mm になると,
人工血管置換術を行う方法,塞栓源の末梢側を結紮しバ
この外側枝は軸動脈と結合する.この結合部の末梢で軸
イパス術を行う方法,血栓内膜摘除術等がある.ただし,
動脈は分岐して ramus perforans cruris を生じる.このよ
特に腎動脈より中枢側の大動脈が病巣である場合には,
うにして軸動脈は 3 つの部分に分けられ,中枢側は坐骨
手術合併症として新たな臓器塞栓症の発生が危惧さ
動脈,中央部は deep popliteal artery,末梢側は interos-
れ
379)
,加えて手術侵襲も大きい.また腎動脈下の病変
seal artery になる.その後,軸動脈は退化して細くなる
に対する手術であっても,下肢塞栓症の可能性があるだ
が大腿動脈は発達して太くなり,体長 22mm になると,
けでなく,大動脈遮断中に塞栓子が逆行性に腎動脈等へ
軸動脈と大腿動脈との交通は途切れて下腿への血流は大
飛散することもある.術中の塞栓症を防ぐ工夫としては,
腿動脈のみになり,坐骨動脈は退化して一部は下臀動脈
動脈結紮を病変部の末梢側から先に行うのがよいとの意
(inferior gluteal artery)として残存する 385).このような
見もある.また動脈吻合の終了前には,十分に血液を
発生・発達の過程で異常を生じると坐骨動脈が遺残す
flash して塞栓子を除去する.近年ではステントによる
る 386).
血管形成術やステントグラフト内挿術の報告も認められ
るが(レベル B)380),381),やはり手技自体に塞栓症再発の
2
頻度と分類
リスクを伴う.したがって手術は,保存的治療による制
御が困難で重症塞栓症を反復する症例等に対して考慮さ
PSA はまれで 0.025 ∼ 0.05%程度とされ,両側に見ら
れる手段である.
れることも少なくない 387).PSA は内腸骨動脈から内陰
予防として,塞栓源となる粥腫の安定化を目的とした
スタチン製剤の有用性が考えられている
1556
382)
部動脈を分枝した後,梨状筋の下で大坐骨孔を通って大
.またカテ
臀筋の下に至り,大内転筋の後面を走行して膝窩動脈と
ーテル手技や動脈を操作する手術を行う際は,事前に動
なるが,その遺残状態は症例により異なる.Bower ら 16)
脈壁の性状を確認し,愛護的な操作を行うことが大切で
は,PSA が膝窩動脈と連続していて下腿への主な血行
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
路となっている時は完全型とし,PSA が膝窩動脈と連
続しないで細い分枝として遺残し,浅大腿動脈が膝窩動
4
治療
脈と連続しているものを不全型としており,臨床的に簡
便な分類として用いられている.
3
診断
完全型では PSA が拡張蛇行して瘤形成することが多
く,臀部や大腿部に見られ,下肢への塞栓源となったり,
血栓性閉塞を来たしたり,破裂することも少なくない.
座位をとる時に反復する PSA への鈍的外傷が原因の 1 つ
多くの場合は無症状であるが,大腿動脈拍動が減弱ま
と考えられている.瘤の存在部位や拡張範囲により術式
たは消失しているにもかかわらず,膝窩動脈や足部動脈
は異なるが,PSA を再建した場合には術後遠隔期に形
拍動を触知する時には PSA が疑われる.動脈瘤を形成
成される瘤発生に注意が必要である.PSA を切除・空
して臀部の拍動性腫瘤を形成したり坐骨神経痛の原因に
置した場合には,下肢への血行を確保するために大腿膝
なったり,PSA の閉塞性病変のために下肢虚血を来た
窩動脈バイパスを必要とする.術中の坐骨神経損傷に注
して発見されることが多い.血管撮影により内腸骨動脈
意が必要である.
から膝窩動脈へ連続して走行する異常な血管像を見た場
PSA の閉塞性病変の場合には,病変の部位や範囲,側
合 に PSA が 疑 わ れ る が, 近 年 は CTA や MRA に よ り
副路の発達様式により選択術式は異なるが,一般には大
PSA が走行する骨盤内での位置関係が明らかになるた
腿膝窩動脈バイパスを行うことが多い.
め 388),診断は容易である.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
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