高圧配電線(非接地)の1線地絡 および高低圧混触時の計算 高圧配電線(一般に非接地)で1線地絡(高低圧混触も同し) が起きると、線路電圧、故障点抵抗と線路の対地静電容 量(および接地変圧器(EVT、GPT)の等価接地抵抗)によっ て地絡電流が流れる。高低圧混触のときは、接地点での 対地電圧は150V以下にすることが電気設備技術基準によ り定められている。 事故の検出には高圧側に零相変流器ZCTと接地変圧器 (EVT、GPT)を設置し、地絡過電流継電器OCGRと地絡 過電圧継電器OVGRおよびその組合せによって行うのが 一般的である。 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 1 OCGRへ 1線地絡 電源側 E& ca 図a c 正相分および 逆相分の線路、 変圧器のイン ピーダンスは 無視し、静電 容量のみ考慮 する 故障点Fの各相電圧 a E& ab E& bc E& c ZCT E& a b E& b S C EVT r C I&a = 0 C rg OVGRへ 鳳ーテブナンの定理 図aで故障点F でスイッチSを閉じれば故障時の回路になるが、この状態は 鳳ーテブナンの定理によって、次ページの図bと図cの重ね合わせによるも のと同じである。図bでは故障点に電流は流れないから、図cによって故障 時の電流が求められる。 EVTの部分 右図から、制限抵抗 r を 一次側に換算すると、各 相当りRになるとすれば 巻数比をnとして n2r R= となる。 3 I&01 V&01 V01 = nV02 , I 01 = I 02 / n V&02 V&02 I& R & 02 V01 R I&01 R I&01 V&01 V&02 I 02 = 3V02 / r r ∴ R = V01 / I 01 = n 2V02 / I 02 = n2 r / 3 →2次側各相にr / 3 ずつ配分 されているのと同じで ある。 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 2 等電位のため 電流は流れない。 OCGRへ a E& ca 図b c E& ab E& bc E& c ZCT b E& a E& a E& b S C EVT (GPT) r 図c a rg E& ab = 0 c E& bc = 0 I&r + I&c b I&r + I&c ZCT に現れる電流 は、健全相の充電 電流2I& がキャンセ c ルされて3I&r となる。 ZCT I&r I&r EVT (GPT) R R R nI&r nI&r r I&c I&c I&c I& r 事故電流と 同じ電流が 流れる I&a = 3I&r + 3I&c 3I&r + 2I&c 短絡 I&a = 0 C OVGRへ OCGRへ E& ca = 0 C I&c I&c C C OVGRへ E& a I&c S C I&a rg nI&r Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 3 図c から1線地絡事故時の等価回路は 下図で表せる。 I&a = 3(I&r + I&c ) 3I&r 図d 3I&c R n2 r = ≡ Rn 3 9 I&a = I&a 3C E& a rg = E& a 1 + j 3Rn ωC Rn + rg + j 3Rn rg ωC rg 高低圧混触を考える場合は、変圧器の低圧側の接地 (R 150 として求める。 rg 1 + (3RnωC ) 2 + rg ) + (3Rn rg ωC ) 2 n 2 ≤ 150 rg 簡略計算法 対地電圧の制限値150 [V ]から E& a から、E& a − I&a rg = I&a (1 / Rn + j 3ωC ) 1 rg + 1 / Rn + j 3ωC E& a − I&a rg = E a − I a r、すなわち、E& aとI&a rg が同相と見な I&a = 変圧器の低圧側の接地抵抗を、 右欄参照 低圧側 これから両辺を2乗してrgの2次式として解く。 高低圧混触を考える場合は、 I a rg ≤ 150として求める。 高圧側 150V 1 線地絡の場合と全く同じに扱える。 以下 & 1 3 E j R C ω + n a I&a = = E& a 1 Rn + rg + j 3Rn rg ωC rg + 1 / Rn + j3ωC E& a (1 + j3RnωC ) = E& a Rn + rg + j3Rn rg ωC 1 rg + 1 / Rn + j 3ωC 1 / Rn + j 3ωC 1 + rg / Rn + j 3ωCrg 高低圧 混触 抵抗を、制限電圧 ≤ 150V から I a ≤ E& a = E& a 高低圧混触時の対地電圧 接地抵抗、地絡電流 ⎞ ⎛ 1 せるとき、I&a=(E a − I a r )⎜⎜ + j 3ωC ⎟⎟ ⎠ ⎝ Rn からI a とrg を求める。 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 4 別解 対称座標法の応用として求める方法 0 1 2 線路および変圧器の正 相、逆相のZを無視し I&1 逆相 ∼ E& a C2 Z& 2 た場合、静電容量分は 変圧器の Z T = 0 で短 (右上図e) 絡されるので、Z& = Z& = 0 となる。 1 C1 Z&1 短絡 1線地絡時の対称分電流 は、 E& a &I = I& = I& = 、また、I&a = 3I&0 0 1 2 & & & Z +Z +Z 正相 短絡 対称座標法による故障 計算によれば、a相の I&2 & &I = I& = I& = I a 0 1 2 3 2 & & &I = I& = I& = E a = I a となり、零相回路で 0 1 2 3 Z& 0 計算できる。零相イン ピーダンスZ& は、系統 0 内部電圧源を短絡し、 故障点で3線一括したと 零相 Z& 0 C0 R 3rg I&0 図e きの系統内部インピー ダンスの3倍であり、図c から図f で表せる。そして、図 f のインピーダ 1 ンスを 倍すれば I&a が流れる図d になる。 3 ⎛ ⎞ 1 1 ⎟⎟ = 3rg + Z& 0 = 3⎜⎜ rg + 1 / Rn + j 3ωC ⎠ 1 / (3Rn ) + jωC ⎝ E& a E& a 3E& I&a = 3I&0 = a = 、この = 1 Z& 0 Z& 0 / 3 rg + 1 / Rn + j 3ωC 分母は、Z& / 3で、故障点 3 線一括時のZ に等しい。 I&r I&c n2 r R= ≡ 3Rn 3 C0=C & &I = I a 0 3 ∼ E& a 3rg 図f 0 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 5 高圧配電線が複数回線ある場合の事故線検出法 3回線の例 ZCT3 ZCT2 I&c 3 例題(電験Ⅱ種平成20年抜粋) 配電線 主変圧器 高低圧 混蝕 I&c 2 ZCT1 I&R I&c1 I&z 1 3C1 OVG Rn I&a 3C2 3C3 rg ZCT の見る零相電流は健全 回線で はI& , I& のように母線側に向か って c3 いるが、故障回線では I& = I& + I& + I& となり、 R c2 Ig 25 Ω 各線の送端に設置した 零相変流器 z1 Rg Vg E& a EVT 2次 (GPT) c2 GPT 単相変圧器 c3 虚数部分が逆向きにな るので、区分 可能であり、さらに、地絡過電圧OVG と組み合わせて電力検 出型の継電装置 を作ることによっても 明確に区分できる。 問題 図に示す6600[V], 50[Hz]の3相3線式配電線で、6.6[kV] /110[V]単相変圧器内部で高低圧混触が起き、1線がB種接 地(抵抗Rg)を通じて地絡した場合について次の問に答えよ。 ただし、配電線亘長は10[km]、1線当りの対地静電容量 は0.01[μF / km]、接地形計器用変圧器(GPT)二次側開放 三角結線端子間の抵抗は25[Ω]、GPTの変成比は6600[V] /110[V]とし、逆相分およびその他の定数は無視するもの とする。 (1) GPTの1次側換算等価中性点抵抗値Rnを求めよ。 (2)高低圧混触時の高圧系統の等価回路を図示せよ。 (3)Vgを150[V]以内にするためのRgの最大許容値および その際の電流値Igを求めよ。ただし、事故点の常時相 電圧とVg は同相と見なしてよい。 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 6 略解 (1) I&01 V&01 R I&01 (3) V&02 V&01 V&02 I& 02 I&01 R& V& V R 題意により E& a − I&g Rg = E a − I g Rg = E a − 150 r および図Bから、 図A V01 = nV02 , I 01 = I 02 / n →2次側各相に ⎞ ⎛ 1 I&g = (E a − 150) × ⎜⎜ + jω 3C ⎟⎟ ⎠ ⎝ Rn I 02 = 3V02 / r r / 3 ずつ配分さ E a = 6600 / 3 ≈ 3810.5, 02 01 ∴ R = V01 / I 01 = n 2V02 / I 02 れているのと同 じである。 = n2 r / 3 ω 3C = 314.169 × 3 × 10 −7 = 0.0942507 × 10 −3 R = n r / 3, 2 Rn = R / 3 = n 2 r / 9 = 60 2 × 25 / 9 = 10000[Ω] I&g = I&R + I&C I&R 図B I&C R n2 r = ≡ Rn 3 9 ω = 2π × 50 = 314.169, C = 0.01× 10 × 10 −6 = 1 × 10 −7 n = 6600 / 110 = 60, r = 25 (2) Rn = 1.0 × 10 4 , I&g 3C Ea −150 150[V] E& a ⎛ 1 ⎞ I&g = (3810.5 − 150) × ⎜ 4 + j 0.0942507 × 10 −3 ⎟ ⎝ 10 ⎠ = 3660.5 × (0.1 + j 0.0942507) × 10 −3 = (366.1 + j345.0) × 10 −3 I& = 503 × 10 −3 [ A] g Rg = 150 / 0503 = 298[Ω] Rg Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 7
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