高圧配電線(非接地)の1線地絡 および高低圧混触時の計算

高圧配電線(非接地)の1線地絡
および高低圧混触時の計算
高圧配電線(一般に非接地)で1線地絡(高低圧混触も同し)
が起きると、線路電圧、故障点抵抗と線路の対地静電容
量(および接地変圧器(EVT、GPT)の等価接地抵抗)によっ
て地絡電流が流れる。高低圧混触のときは、接地点での
対地電圧は150V以下にすることが電気設備技術基準によ
り定められている。
事故の検出には高圧側に零相変流器ZCTと接地変圧器
(EVT、GPT)を設置し、地絡過電流継電器OCGRと地絡
過電圧継電器OVGRおよびその組合せによって行うのが
一般的である。
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1
OCGRへ
1線地絡
電源側
E& ca
図a
c
正相分および
逆相分の線路、
変圧器のイン
ピーダンスは
無視し、静電
容量のみ考慮
する
故障点Fの各相電圧
a
E& ab
E& bc
E& c
ZCT
E& a
b
E& b
S
C
EVT
r
C
I&a = 0
C
rg
OVGRへ
鳳ーテブナンの定理
図aで故障点F でスイッチSを閉じれば故障時の回路になるが、この状態は
鳳ーテブナンの定理によって、次ページの図bと図cの重ね合わせによるも
のと同じである。図bでは故障点に電流は流れないから、図cによって故障
時の電流が求められる。
EVTの部分
右図から、制限抵抗 r を
一次側に換算すると、各
相当りRになるとすれば
巻数比をnとして
n2r
R=
となる。
3
I&01
V&01
V01 = nV02 , I 01 = I 02 / n
V&02
V&02 I&
R
&
02
V01 R
I&01
R
I&01 V&01
V&02
I 02 = 3V02 / r
r
∴ R = V01 / I 01 = n 2V02 / I 02
= n2 r / 3
→2次側各相にr / 3 ずつ配分
されているのと同じで
ある。
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2
等電位のため
電流は流れない。
OCGRへ
a
E& ca
図b
c
E& ab
E& bc
E& c
ZCT
b
E& a
E& a
E& b
S
C
EVT
(GPT)
r
図c
a
rg
E& ab = 0
c
E& bc = 0
I&r + I&c
b
I&r + I&c
ZCT に現れる電流
は、健全相の充電
電流2I& がキャンセ
c
ルされて3I&r となる。
ZCT
I&r
I&r
EVT
(GPT)
R
R
R
nI&r
nI&r r
I&c
I&c
I&c
I& r
事故電流と
同じ電流が
流れる
I&a = 3I&r + 3I&c
3I&r + 2I&c
短絡
I&a = 0
C
OVGRへ
OCGRへ
E& ca = 0
C
I&c
I&c
C
C
OVGRへ
E& a
I&c
S
C
I&a
rg
nI&r
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3
図c から1線地絡事故時の等価回路は
下図で表せる。
I&a = 3(I&r + I&c )
3I&r
図d
3I&c
R n2 r
=
≡ Rn
3 9
I&a =
I&a
3C
E& a
rg
= E& a
1 + j 3Rn ωC
Rn + rg + j 3Rn rg ωC
rg
高低圧混触を考える場合は、変圧器の低圧側の接地
(R
150
として求める。
rg
1 + (3RnωC )
2
+ rg ) + (3Rn rg ωC )
2
n
2
≤
150
rg
簡略計算法
対地電圧の制限値150 [V ]から
E& a
から、E& a − I&a rg = I&a (1 / Rn + j 3ωC )
1
rg +
1 / Rn + j 3ωC
E& a − I&a rg = E a − I a r、すなわち、E& aとI&a rg が同相と見な
I&a =
変圧器の低圧側の接地抵抗を、
右欄参照
低圧側
これから両辺を2乗してrgの2次式として解く。
高低圧混触を考える場合は、
I a rg ≤ 150として求める。
高圧側
150V
1 線地絡の場合と全く同じに扱える。
以下
&
1
3
E
j
R
C
ω
+
n
a
I&a =
= E& a
1
Rn + rg + j 3Rn rg ωC
rg +
1 / Rn + j3ωC
E& a (1 + j3RnωC )
= E& a
Rn + rg + j3Rn rg ωC
1
rg +
1 / Rn + j 3ωC
1 / Rn + j 3ωC
1 + rg / Rn + j 3ωCrg
高低圧
混触
抵抗を、制限電圧 ≤ 150V から I a ≤
E& a
= E& a
高低圧混触時の対地電圧
接地抵抗、地絡電流
⎞
⎛ 1
せるとき、I&a=(E a − I a r )⎜⎜
+ j 3ωC ⎟⎟
⎠
⎝ Rn
からI a とrg を求める。
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4
別解 対称座標法の応用として求める方法
0
1
2
線路および変圧器の正 相、逆相のZを無視し
I&1
逆相
∼ E& a
C2
Z& 2
た場合、静電容量分は 変圧器の Z T = 0 で短
(右上図e)
絡されるので、Z& = Z& = 0 となる。
1
C1
Z&1
短絡
1線地絡時の対称分電流 は、
E& a
&I = I& = I& =
、また、I&a = 3I&0
0
1
2
&
&
&
Z +Z +Z
正相
短絡
対称座標法による故障 計算によれば、a相の
I&2
&
&I = I& = I& = I a
0
1
2
3
2
&
&
&I = I& = I& = E a = I a となり、零相回路で
0
1
2
3
Z& 0
計算できる。零相イン ピーダンスZ& は、系統
0
内部電圧源を短絡し、 故障点で3線一括したと
零相
Z& 0
C0
R
3rg
I&0
図e
きの系統内部インピー ダンスの3倍であり、図c
から図f で表せる。そして、図 f のインピーダ
1
ンスを 倍すれば I&a が流れる図d になる。
3
⎛
⎞
1
1
⎟⎟ = 3rg +
Z& 0 = 3⎜⎜ rg +
1 / Rn + j 3ωC ⎠
1 / (3Rn ) + jωC
⎝
E& a
E& a
3E&
I&a = 3I&0 = a =
、この
=
1
Z& 0
Z& 0 / 3
rg +
1 / Rn + j 3ωC
分母は、Z& / 3で、故障点 3 線一括時のZ に等しい。
I&r
I&c
n2 r
R=
≡ 3Rn
3
C0=C
&
&I = I a
0
3
∼ E& a
3rg
図f
0
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高圧配電線が複数回線ある場合の事故線検出法
3回線の例
ZCT3
ZCT2
I&c 3
例題(電験Ⅱ種平成20年抜粋)
配電線
主変圧器
高低圧
混蝕
I&c 2
ZCT1
I&R
I&c1
I&z 1
3C1
OVG
Rn
I&a
3C2
3C3
rg
ZCT の見る零相電流は健全 回線で
はI& , I& のように母線側に向か って
c3
いるが、故障回線では
I& = I& + I& + I& となり、
R
c2
Ig
25 Ω
各線の送端に設置した 零相変流器
z1
Rg
Vg
E& a
EVT 2次
(GPT)
c2
GPT
単相変圧器
c3
虚数部分が逆向きにな るので、区分
可能であり、さらに、地絡過電圧OVG
と組み合わせて電力検 出型の継電装置
を作ることによっても 明確に区分できる。
問題
図に示す6600[V], 50[Hz]の3相3線式配電線で、6.6[kV]
/110[V]単相変圧器内部で高低圧混触が起き、1線がB種接
地(抵抗Rg)を通じて地絡した場合について次の問に答えよ。
ただし、配電線亘長は10[km]、1線当りの対地静電容量
は0.01[μF / km]、接地形計器用変圧器(GPT)二次側開放
三角結線端子間の抵抗は25[Ω]、GPTの変成比は6600[V]
/110[V]とし、逆相分およびその他の定数は無視するもの
とする。
(1) GPTの1次側換算等価中性点抵抗値Rnを求めよ。
(2)高低圧混触時の高圧系統の等価回路を図示せよ。
(3)Vgを150[V]以内にするためのRgの最大許容値および
その際の電流値Igを求めよ。ただし、事故点の常時相
電圧とVg は同相と見なしてよい。
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略解
(1)
I&01
V&01 R
I&01
(3)
V&02
V&01
V&02 I&
02
I&01
R&
V&
V
R
題意により
E& a − I&g Rg = E a − I g Rg = E a − 150
r
および図Bから、
図A
V01 = nV02 , I 01 = I 02 / n
→2次側各相に
⎞
⎛ 1
I&g = (E a − 150) × ⎜⎜
+ jω 3C ⎟⎟
⎠
⎝ Rn
I 02 = 3V02 / r
r / 3 ずつ配分さ
E a = 6600 / 3 ≈ 3810.5,
02
01
∴ R = V01 / I 01 = n 2V02 / I 02 れているのと同
じである。
= n2 r / 3
ω 3C = 314.169 × 3 × 10 −7 = 0.0942507 × 10 −3
R = n r / 3,
2
Rn = R / 3 = n 2 r / 9 = 60 2 × 25 / 9 = 10000[Ω]
I&g = I&R + I&C
I&R
図B
I&C
R n2 r
=
≡ Rn
3 9
ω = 2π × 50 = 314.169,
C = 0.01× 10 × 10 −6 = 1 × 10 −7
n = 6600 / 110 = 60, r = 25
(2)
Rn = 1.0 × 10 4 ,
I&g
3C
Ea −150
150[V]
E& a
⎛ 1
⎞
I&g = (3810.5 − 150) × ⎜ 4 + j 0.0942507 × 10 −3 ⎟
⎝ 10
⎠
= 3660.5 × (0.1 + j 0.0942507) × 10 −3
= (366.1 + j345.0) × 10 −3
I& = 503 × 10 −3 [ A]
g
Rg = 150 / 0503 = 298[Ω]
Rg
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