C型肝炎 肝硬変 C型肝炎 HCV感染から肝細胞破壊まで HCV リンパ球 ①感染 肝細胞 ②免疫反応 肝細胞 破壊 C型肝炎による肝臓の細胞の障害は①ウイルスの感染と ②リンパ球による免疫反応の2つの要素によって起こります。 GOT? GPT? LDH? GOT GOT GPT LDH GPT LDH GOT GPT LDH GPT LDH 肝細胞破壊 GOT GOT、GPT、LDHなどは肝臓の細胞の中にある酵素です。 肝炎により肝細胞が破壊されると細胞内からこれらの酵素が 血液中に放出されます。 GOT,GPT,LDHが高値= 今、破壊されている肝臓の細胞が多い GOT,GPT,LDHが低値= 今、破壊されている肝臓の細胞が少ない 注:最近GOTはAST、GPTはALTと呼ばれることが多い GOT=AST GPT=ALT = 今、肝臓の細胞がどのくらい破壊され 続けているかを示す指標 GOT or GPT 400 300 悪い 200 100 50 0 正常はだいたい35~40以下 HCV C型肝炎ウイルスは肝臓の細胞に感染していきます。 感染した肝臓の細胞は次々と破壊されていきます。 肝臓の細胞は再生能力が強いので、次々と新しい細胞が 新生してきます。 しかし破壊された細胞のあとに傷(瘢痕)が残ります。 肝炎が長く持続すると、傷(瘢痕)がふえて 肝臓の細胞の配列が乱れてきます。 肝臓の細胞の破壊が再生能力を超えると傷(瘢痕)が 増加し(繊維化)肝臓の細胞は減少します。→肝硬変へ GOT,GPT,LDHが高値 =破壊されている肝細胞が多い =肝硬変への進行が速い GOT,GPT,LDHが低値 =破壊されている肝細胞が少ない =肝硬変への進行が遅い 肝硬変 肝硬変 正常な肝細胞が減少→肝臓の仕事量が減少 破壊される肝細胞が減少→GOT、GPTも低下 肝臓の仕事 1. 解毒、代謝、排泄 2. 蛋白、脂肪合成 肝臓の仕事 1. 解毒、代謝、排泄 肝臓の仕事量の低下は老廃物や 毒素を排泄する能力が低下する。 ↓ 排泄されるべき老廃物や 毒素が体内に貯留する。 指標:ビリルビン、アンモニア =肝臓が、どのくらい働けなく なっているかを示す指標 肝臓の仕事 蛋白、脂肪合成 肝臓の仕事量の低下は蛋白や脂肪の 合成能力が落ちる。 ↓ 合成されるべき蛋白質、凝固因子、脂肪が減少する。 指標: アルブミン、コリンエステラーゼ、 凝固時間、コレステロール =肝臓が、どのくらい働けなく なっているかを示す指標 肝臓の細胞破壊の指標: GOT,GPT 高い=悪い 肝臓の代謝、排泄能力の指標: ビリルビン、アンモニア 高い=悪い 肝臓の蛋白、脂肪合成能力の指標: アルブミン、コリンエステラーゼ、 コレステロール、凝固時間 低い=悪い 肝硬変 排泄されるべき老廃物や毒素が貯留 黄疸(体が黄色くなる) ←ビリルビン上昇 精神症状 ←アンモニア上昇 蛋白質、凝固因子、脂肪が減少 浮腫(むくみ) 腹水(お腹に水がたまる)←タンパク質減少 出血傾向 ←凝固因子減少 慢性C型肝炎の治療の目標 GPTの値をできる限り低い値に保つ C型慢性肝炎に対する治療 肝臓の炎症を抑える GPTの値を低くする ①体内からHCVを排除する →インターフェロン(IFN) ②炎症を抑える働きのある薬剤 (肝庇護剤)でGPTを下げる インターフェロンの効果 HCVを体内から排除する HCVは排除できなくてもGPTの値を 下げる →HCV-RNA、GPTの測定 インターフェロン治療 一般的に開始後数週間は入院して毎日注射 ↓ 副作用の程度が落ち着けば外来で週3回注射 期間 半年間(~1年間) インターフェロン療法の 効果に影響する因子 1. 2. 3. 4. 5. 血液中C型肝炎ウイルス量 C型肝炎ウイルスの遺伝子型 感染からの期間(繊維化の進展度) インターフェロン投与方法 個人差(体質) このうち1、2の影響が大きい インターフェロン療法の効果に影響する因子 1. C型肝炎ウイルス量 bDNA法で1Meq/ml以上 アンプリコア法で100Kcopies/ml以上 少ない HCV-RNA量 多い 有効多 インターフェロン療法の効果 有効少 インターフェロン療法の効果に影響する因子 2. C型肝炎ウイルスの遺伝子型 serogroup genotype 1 1a 有効 少 1b 1c 2 頻度少 頻度少 有効 多 有効 多 2a 2b 2c 3 4 5 6 3a 3b 4a 5a 6a INFの効果 頻度少 インターフェロン療法の効果に影響する因子 3. 感染からの期間(繊維化の進展度) 短い 感染からの期間 長い 軽い 繊維化の程度 強い 有効多 インターフェロン療法の効果 有効少 インターフェロン療法の効果に影響する因子 4. インターフェロン投与方法 多い 長い 投与量 少ない 投与期間 短い 有効多 インターフェロン療法の効果 有効少 多い 副作用 少ない インターフェロンの副作用 投与量が多ければ多いほど、投与期間が長ければ長 いほど高くなる傾向にある 発熱:ほとんど必発 全身倦怠、食欲不振、関節痛、筋肉痛、吐き気、脱毛、 神経障害(頭痛、眩暈、しびれ感、振戦) インドメタシンなどの解熱鎮痛薬を前投与する事により 軽減可能 精神症状(IFNβの方が比較的少ない)、 甲状腺炎、自己免疫疾患、心筋症、 心不全、腎不全、眼症状、糖尿病、 間質性肺炎(小柴胡湯との併用) インターフェロン治療の新展開 ①リバビリン併用 ②コンセンサスインターフェロン ③ペグインターフェロン リバビリン(レベトール) インターフェロンとの併用で、インターフェロンの効果を 増強する(単独ではC型慢性肝炎に対して効果はない) 1b型、高ウイルス量 1b型、低ウイルス量 2a型+2b型 TOTAL HCV-RNA陰性化率 6~8%→20%(予想) 50%→65% (予想) 50%→75% (予想) 29%→45% (予想) リバビリン(レベトール) 重要な副作用 ・ 溶血性貧血(ほぼ全員) →程度の強いものでは減量や休薬が必要 ・ 奇形児ができる可能性が有り、子供が欲しい人は 飲んではいけない。 ・ 精子にも奇形の悪影響がある →投与後6ヶ月以上は避妊が必要 ・ インターフェロンの副作用も増強 リバビリン(レベトール) ・ 適応はインターフェロンアルファ-2b (遺伝子組換え:イントロンA)との併用のみ (他の種類のインターフェロンとの併用は認められていない) 投与期間は半年間に限定 ・ PEG-IFNα-2b+Ribavirin vs IFNα-2b+Ribavirin 臨床治験開始中 コンセンサス・インターフェロン (アドバフェロン) ・ 各サブタイプのIFN-αのアミノ酸配列の 共通部分を合成した遺伝子組み換え製剤 ・ 高ウイルス量の1b型において16.7%の ウイルス除去効果 ・ 副作用が軽いので他のインターフェロン よりも多量の投与が可能 (一回1200万~1800万単位) ・ 皮下注射(利便性が高い) ペグインターフェロン(PEG-IFN) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 従来のIFNより長時間作用(週に1回の注射でよい) 副作用が少ない 効果はIFNα-2bと同等? 欧米ではリバビリンとの併用が標準的治療に 週一回一年間投与で臨床試験中 日本での発売は数年先? PEG-IFNα-2b+Ribavirin vs IFNα-2b+Ribavirin 臨床治験開始中 インターフェロン治療期間、回数制限の撤廃 (2002/2/12) 今まで 一生の間にIFN治療は、最長半年間を最大2回まで →数少ないチャンスを有効にするため、準備を整え、 耐えられるところまで治療する。 インターフェロン治療期間、回数制限の撤廃 (2002/2/12) これから IFN治療は、期間の制限なし、回数の制限もなし →機会があればIFN治療を開始してみる 様々な理由で継続が難しくなったら中止(中断) 別の機会に再挑戦(再開) さらに新しいIFN治療が出てくれば再挑戦(再開) 慢性C型肝炎の一般的な治療法 日常生活の注意点 ①過労を避ける(過度に安静にする必要 はない) ②食後の安静(1時間程度) ③バランスのよい食事 ④規則正しい生活 自覚症状や黄疸が出現したら入院が必要 肝庇護薬 肝臓水解物:proheparum(プロヘパール) 肝臓抽出物:adelavin(アデラビン9号) SH化合物:glutathion(タチオン) tiopranin(チオラ) MMSC(キャベジン) グリチルリチン製剤:SNMC(強力ネオミノファーゲンC) grycyron(グリチロン) 胆汁酸立体異性体:UDCA(ウルソ) 肝合成能促進薬:malotilate(カンテック) ポルフィリン体:protoporphirin(プロルモン) 漢方製剤:小柴胡湯 本邦でのHCV感染血友病患者数 2000年5月31日 血友病A 血友病B 合計 HCV感染率 HIV(+) 605 182 787 98.4% HIV(ー) 1426 254 1680 61.4% 合計 2031 436 2467 69.7% 血液凝固異常症全国調査 HCV 遺伝子型の頻度 日本 非血友病 1a 0.5~1% 1b 65~70% 2a 20~25% 2b 10% 3 0.3% Mix 1% 血友病 18~40% 16~25% 10~30% 3~10% 16~30% 3~16% 米国 非血友病 45% 29% 14% 5% 3% 血友病患者は、輸入血液製剤からの感染が多いため 遺伝子型の分布は米国に類似している。 血友病におけるHCV感染の特徴 ・ 複数のサブタイプの重複感染が多い。 ・ 日本人では珍しいサブタイプの感染もある。 →米国の分布に近い ・ 感染後約20年経過 兵庫医科大学病院での血友病死亡例と死亡原因 (1987年~2000年) HIV(+) HCV(+) 脳出血 1例 HIV(-) HCV(+) 肝硬変・肝癌 各1例 HIV(+) HCV(+) 肝硬変 4例 HIV(+) HCV(+) AIDS 6例 HCV-HIV重複感染の特徴1 ・ HIV感染によりC型肝炎は悪影響を受ける HCV-RNA量(C型肝炎ウイルス量)増加 肝硬変への進行が早い ・ ただし、GOT、GPT等は低い傾向 ・ HIV非感染よりもインターフェロンの効果が低下 ・ HCV感染によりHIV感染症の進行は加速 HCV-HIV重複感染の特徴2 ・ HIV治療による免疫機能回復 1. HCV量は不変?増加? 2. 肝炎は改善・悪化いずれもあり ・ HIV治療による薬剤性肝障害・ミトコンドリア毒性(NRTI) ・ HIV治療による脂肪分布異常 →脂肪肝 ・ リバビリンと逆転写酵素阻害剤の併用で乳酸アシドーシスの副作 用が出やすい可能性あり ・ AZTにより貧血傾向のある場合はリバビリンが使いにくい C型肝炎の治療 HIV重複感染の場合 C型肝炎の治療 HIV重複感染の場合 ・どちらを先に(HCV? HIV?) ・未治療の場合、通常はHAART を先行 (ただし肝障害が強い場合はC型肝炎治療を先行) ・HAARTが落ち着いていれば、IFN + リバビリン追加 ・同じ時に両方( HCV治療とHIV治療)始めない 1-2ヶ月は薬剤による副作用の有無を見てから C型肝炎の治療 HIV重複感染の場合 ・抗HIV薬の肝毒性のためC型肝炎治療を先行 させなければならない場合もある ・CD4 細胞数 >200 cells/mLの場合、治療目標は HCVの除去 ・CD4 細胞数 <200 cells/mLの場合、治療目標は 肝不全への進行防止 - ALT、 HCV RNAを減少させる - 肝硬変への進行を遅らせる - 肝癌の危険性を下げる - 死亡の危険性を下げる IFN治療の影響 HIV重複感染の場合 ・ 血液の細胞を作る力が抑えられる →白血球が減少→リンパ球が減少 →CD4陽性細胞が減少 ・ 抗ウイルス効果 →HIV-RNA量減少 IFN治療の影響 HIV重複感染の場合 ・ 貧血が強くなる ・ 薬物相互作用 AZT・d4T・ddCの効果を減弱 ddIの効果を増強 C型肝炎の治療 HIV重複感染血友病の場合 ・ ・ ・ ・ 感染からの経過が長い。 すでに肝硬変・肝癌へ移行する人が増えている。 必要な人にはすでにHIV治療が開始されている。 IFN治療期間、回数制限の撤廃(2002/2/12) できれば早期にそのとき最も効果的と思われる 治療法により治療を開始すべきである。
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