長柱の座屈

長柱の座屈
断面寸法に対して非常に長い柱に圧縮荷重を加えると、
初期段階においては一様圧縮変形を生ずるが、
ある荷重に達すると急に横方向にたわむことがある。このように長柱が軸圧縮荷重を受けていて突然横
方向にたわむ現象を座屈といい、この現象を示す荷重を座屈荷重 Pcr、このときの応力を座屈応力 scr と
いう。
図−1に示すように一端を鉛直な剛性壁に固定された長柱が自
P x
O
出し、この要素について力のつり合い、力のモーメントのつり
図−1曲げと圧縮を受けるはり
x
x+dx
合いを考える。面 AB および CD に作用する軸力、せん断力およ
x
び曲げモーメントは図に示すようであるとする。また、面 AB お
dx
θ2
θ1
ds
dv
A
M F
θ1
N
B
v
を採り、柱のたわみを v とする。この柱から図−2に示すよう
に左端から距離 x にある点から長さ dx の微小要素 ABCD を取り
v
O
由端に圧縮力 P を受ける場合を考えよう。柱の長手方向に x 軸
D
M+dM
θ2
E N
F+dF
C
θ1
N
F
O
x
v
v
図−2 微小長さ要素
図−3 AB 面
F+dF
O
N
θ2 x
v
図−4 CD 面
よび面 CD のたわみ角を q1 および q2 とする。図−2および図−3、4を参照しながら、この微小要素
の力のつり合い式、力のモーメントのつり合い式を考えると以下のような式が立てられる。
v 方向の力のつり合い
N sin i1 - F cos i1 - N sin i2 + ]F + dF g cos i2 = 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(1)
x 方向の力のつり合い
N cos i1 + F sin i1 - ]F + dF g sin i2 - N cos i2 = 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(2)
E 点に関する力のモーメントのつり合い
M + N cos i1 dv + Fds - ]M + dM g - N sin i1 dx = 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(3)
変形は微小であり、q1、q2 (rad) << 1(rad)(約 57.3°
)であるから、
_
ds . dx
b
b
cos i1 . 1, cos i2 . 1
b
b
dv
` - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(4)
sin i1 . i1 . tan i1 =
dx
b
2
dv d v b
sin i2 . i2 . tan i2 =
+ 2 dxb
b
dx
dx
a
と考えることが出来る。
(A)v 方向の力のつり合い
式(1)は、式(4)の関係を用いれば次のように書き直せる。
dv
dv d 2 v
]
g
f
N
- F + F + dF - N
+ 2 dx p = 0
dx
dx
dx
--
上式を整理すると、
dF - N
d2 v
dx 2
dx = 0
両辺を dx で割れば、
dF
d2 v
-N
= 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(5)
dx
dx 2
となる。ところで、たわみ v と曲げモーメント M の関係、
d2 v
M =- EI
dx 2
を用いれば、はりに生ずるせん断力 F と曲げモーメント M の関係は次のように書き直せる。
F=
dM
d3 v
=- EI
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(6)
dx
dx 3
また、軸力 N と圧縮荷重 P の関係は、
P = N cos i1 . N _or P = N cos i2 . N i
であるから、これらの関係を式(5)に代入すれば、
- EI
d4 v
dx 4
-P
d2 v
dx 2
=0
2
ここで、 P EI = a とおけば、
d4 v
dx 4
+ a2
d2 v
dx 2
= 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(7)
となる。微小要素 ABCD は静的なつり合いの状態にあるので、式(7)を満たしているはずである。
(B)x 方向の力のつり合い
式(2)は、式(4)の関係を利用して書き直せば、次のようになる。
dv
dv d 2 v
]
g
f
N+F
- F + dF
+ 2 dx p - N = 0
dx
dx
dx
2
dv
dv
d v
dv
d2 v
N+F
-F
- F 2 dx - dF
- dF 2 dx - N = 0
dx
dx
dx
dx
dx
さらに式(6)の関係を用いれば、次のように変形される。
N - EI
d 3 v dv
d 3 v dv
d3 v d2 v
d4 v
dv
d4 v
d2 v
+
EI
+
EI
dx
+
EI
dx
+
EI
dx
dx - N = 0
dx
dx 3 dx
dx 3 dx
dx 3 dx 2
dx 4
dx 4
dx 2
上式で 5 次以上の微少量を無視すれば、
N - EI
d 3 v dv
d 3 v dv
+
EI
-N=0
dx 3 dx
dx 3 dx
となり、上式は成立している(x 方向の力のつり合いが成立している)ことが分かる。
(C)E 点に関する力のモーメントのつり合い
式(3)は、式(4)の関係を用いれば、
M + Ndv + Fdx - ]M + dM g - N
dv
dx = 0
dx
--
さらに整理すれば、
N
dv
dM
dv
+F-N
=0
dx
dx
dx
となる。式(6)の関係に注意すれば、上式は自ら成立していることが分かる。
以上の検討から、柱から切り出された微小要素が静的つり合い状態にあるという条件から、
d4 v
dx 4
+ a2
d2 v
dx 2
= 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(7)
ただし、
a=
P
EI
が成立していなければならないことが分かる。この条件式(7)は、4 階の定数係数線形同次常微分方
程式であり、固有値は 0(重根)
、ia、-ia であるから、一般解は次の形である。
v ] xg = C1 sin ax + C 2 cos ax + C3 x + C 4 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(8)
条件式(7)は、柱が軸圧縮荷重を受けて横方向にたわんだ場合に、微小要素が静的つり合い条件を充
足していなければならないということから導かれたものであり、柱の両端の状態(例えば、固定端とか
自由端)とは無関係である。したがって、柱のたわみ式は、式(7)を満たし、かつ柱の両端の条件式
を満たす必要がある。
では次に、柱の両端の満たすべき条件について考えてみる。
固定端の場合
x
たわみおよびたわみ角が共にゼロであるから、
v = 0,
固定端
dv
= 0 dx
(9)
v
O
回転端の場合
x
力のモーメントがゼロであるから、
d2 v
回転端 O
dx 2
v
=-
M
d2 v
より、 2 = 0
EI
dx
たわみもゼロであるから、 v = 0 である。したがって、
v = 0,
d2 v
dx 2
= 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - (10)
自由端の場合
x
回転端の場合と同様にモーメントがゼロであるから、
P
θ
d2 v
dx 2
拡大
Psi
nθ
P
=0
端末におけるはりに生ずるせん断力 F は、外力 P と次の関係になる。
F = P sin i . Pi . P tan i = P
θ
自由端部
O
v
dv
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - (11)
dx
一方、せん断力 F とたわみ v との間に式(6)の関係があるから、
--
であるから、式(11)は次のように書き直せる。
EI
d3 v
dx
3
+P
dv
=0
dx
ここで
P
= a2
EI
と置いたから、
d3 v
dx
3
+ a2
dv
=0
dx
となる。したがって、自由端での端末条件は、
d2 v
dx
2
= 0,
d3 v
dx
3
+ a2
dv
= 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - (13)
dx
である。
以上の結果を表に整理すると、表−1に示すようになる。
表−1 端末条件
端末の形式
端末条件
dv
v = 0,
=0
固定端
dx
v = 0,
回転端
d2 v
自由端
dx
2
= 0,
d2 v
dx 2
d3 v
dx
3
=0
+ a2
dv
=0
dx
具体例
P A
B
P
x
l
両端 A、B が回転端の場合の長さ l の長柱が圧縮荷重 P を
受ける場合について考えてみよう。
式(7)の一般解
v
図−5 両端が回転端の長柱の圧縮
v ] xg = C1 sin ax + C 2 cos ax + C3 x + C 4 - - -
(8)
が、x=0 および x=l で、表−1に示す回転端の条件を満足するように定数 C1、C2、C3、C4 を定めれば良い。
したがって、
d2 v
dx 2
=- a 2 C1 sin ax - a 2 C 2 cos ax - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(9)
であるから、x=0 のとき v = 0,
d2 v
dx 2
= 0 より
C 2 + C 4 = 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(10)
- a 2 C 2 = 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(11)
x=l のとき v = 0,
d2 v
dx 2
= 0 より
--
C1 sin al + C 2 cos al + C3 l + C 4 = 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(12)
- a 2 C1 sin al - a 2 C 2 cos al = 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(13)
式(10)から(13)を行列を用いて表わせば、
J
0
1
0 1N JC1N J0N
K
OK O K O
K
0
- a2
0 0OK C 2O K 0O
K
OK O = K O
cos al
l 1OK C3O K 0O
K sin al
K- a 2 sin al - a 2 cos al 0 0OK C O K 0O
L
P L 4P L P
定数 C1、C2、C3、C4 が同時に 0 とならない解が存在するためには、係数行列式が 0、すなわち
0
1
0 1
2
0
-a
0 0
=0
sin al
cos al
l 1
- a 2 sin al - a 2 cos al 0 0
でなければならない。上式から次式が得られる。
a 4 l sin al = 0
a 4 l ! 0 であるから、
sin al = 0
となる。したがって、 a =
EI F 0, l > 0 であるから al F 0 であることを考慮すれば、
^n = 0, 1, 2, 3, gh
al = nr
であれば良い。
a=
P
P
EI
であるから、上式に代入し辺々 2 乗すれば、
P 2
l = n2 r2
EI
となるから、荷重 P を求めると
P = EI
n2 r2
l2
^n = 1, 2, 3, gh
となる。ただし、n=0 のときは P=0 となるからこれを除いた。上式から得られる最小の荷重は n = 1の
ときであり、このときの荷重をオイラーの座屈荷重 Pcr と呼んでいる。
Pcr = EI
r2
l2
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(14)
柱の軸に垂直な断面積を A とすれば、オイラーの座屈応力 scr は次のようになる。
v cr =
Pcr
I r2
Ar 2 r2
r2
r2
=E
=
E
=
E
=
E
2
A
A l2
A l2
m 2 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(15)
l
d n
r
ただし、
r;断面2次半径( I = Ar 2 )
--
l
l:細長比( m = r )
また、定数 C1、C2、C3、C4 を求めると、 C 2 = C3 = C 4 = 0 となり、圧縮荷重がオイラーの座屈荷重と等
しいとき、
a=
1
r2
r
EI 2 =
EI
l
l
Pcr
=
EI
となるから、たわみ v(x) は、
v ] xg = C1 sin
r
x
l
となる。
様々な端末条件を持つ長柱のたわみは、式(8)の定数 C1、C2、C3、C4 を表−1の条件で決定する
ことであるが、それらの場合の最小座屈荷重 Pcr はオーラーの座屈荷重の式の形に表わすことが出来る。
Pcr = k
r2 EI
l2
=
r2 EI
2
le
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(16)
ただし、
l:長柱長さ
E:縦弾性係数
I:断面の図心を通る軸に関する断面2次モーメントの最小値
k:端末条件係数
le:相当長さ(有効長さ)
le =
l
k
各端末条件に対する端末条件係数 k、相当長さ le は、表−2に示すようになる。
端末条件
両端回転端
一端固定端、他端自由端
一端固定端、他端回転端
両端固定端
表−2
端末条件係数
相当長さ(有効長さ)
k
le
1
0.25
2.04 . 2
l
2l
0.699l . 0.7l
4
l/2
また、座屈応力 scr は、次式で与えられる。
Pcr
I r2 E
Ar 2 r2 E
r2 E
r2 E
=k
=
k
=
k
=
k
2
A
A l2
A l2
m2
l
d n
r
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(17)
2
2
r E
r E
=
=
2
me
m
e
o
k
v cr =
ただし、
A:軸に垂直な断面積
r:断面2次半径( I = Ar 2 )
--
l
l:細長比( m = r )
m
le:相当細長比( m e =
k
=
le
r )
式(16)、
(17)から分かるように、座屈荷重、座屈応力は長柱の長さ l が短くなるに従い増大する。
ここでの説明で導かれた座屈荷重、座屈応力は、弾性変形を仮定している。したがって、圧縮の比例限
度以下の座屈荷重、座屈応力を与える le に対しては有効である。オイラーの座屈荷重が有効性を失う
短い柱に対しては、幾つかの実験式が与えられている。
問題
一端固定端、他端自由端の条件のもとで長さ l=2.5m、断面が 80mm # 100mm の矩形断面を持つ鋼材
の座屈荷重 Pcr を求めよ。ただし、縦弾性係数 E は 206GPa、安全率を 3 として求めよ。
解答
式(16)に表−2で与えられる相当長さ le を代入すれば求められる。断面2次モーメント I の値は、
幅 b が 100mm、高さ h が 80mm と考えた方が、幅 b が 80mm、高さ h が 100mm と考えるよりも小さい。
したがって、
bh3 ^100 # 10- 3 mh # ^80 # 10- 3 mh
I=
=
= 4.27 # 10- 6 m 4
12
12
3
表−2から、
le = 2l = 2 # 2.5m = 5m
したがって、式(16)を用いれば、
Pcr =
r2 EI
2
le
r2 # 206 # 109
=
N
m
2
# 4.27 # 10- 6 m 4
]5mg2
. 3.473 # 105 N = 347.3kN
安全率を 3 とすることから、座屈荷重 Pcr は上で求めた荷重の 1/3 となり、
Pcr = 116kN
となる。
問題
縦横寸法が120mm # 90mm の矩形断面を持つ長さ l が 3.0m の木製の柱がある。両端固定の場合、こ
の柱の座屈荷重を求めよ。ただし、縦弾性係数 E を 7.8GPa とする。
解答
最小の断面2次モーメント I は、幅 b が 120mm、厚さ h が 90mm の場合である。したがって、
bh3 ^120 # 10- 3 mh # ^90 # 10- 3 mh
I=
=
= 7.290 # 10- 6 m 4
12
12
3
座屈荷重 Pcr は式(16)に表−2から得られる相当長さ le=l/2 を代入すると、
--
Pcr =
r2 EI
2
le
# 7.290 # 10- 6 m 4
m2
= 2.5262 # 105 N . 253kN
2
a3.0m 2 k
r2 # 7.9 # 109 N
=
となる。
--
長柱の座屈
エネルギー法による座屈荷重の推定
柱が圧縮変形しただけで平衡状態にある場合と圧縮変形を受けるとともに曲げ変形を受けて平衡状態
にある場合について考える。例えば、図−1に示すように全長 l に亙って一様
x
x
P
な断面形状を持つ柱が、一端を固定、他端自由の支持状態の場合について考え
てみる。軸に垂直な断面積を A、断面2次モーメントを I、縦弾性係数を E、曲
v
げモーメントを M、撓みを v とし、座標系は図に示すように採るものとする(原
点は固定壁と中立軸の交点に取る)
。圧縮荷重および曲げ変形により生ずる x 軸
方向のひずみ e1、e2 は、次式で与えられる。
f1 =-
f2 =
1 My
d2 v
=- 2 y
E I
dx
柱が圧縮変形のみを受けている場合のひずみエネルギー U1 は、次のようになる。
y
O
P
,
EA
E
E
E
#V vfdV = 2 #V f2 dV = 2 #V f12 dV = 2
P2
P2
P2 l
=
dV
=
Al
=
#
2EA
2EA2 V
2EA2
1
U1 =
2
図−1
P
#V d- EA n dV
2
y 座標は中立軸(図心を通る軸)から測っているから図心の y 座標 y はゼロである。それ故、
# ydA = yA = 0
A
となることに注意すれば、圧縮変形および曲げ変形を同時に受けている柱のひずみエネルギー U2 は、
次式で与えられる。
U2 =
1
2
E
# vfdV = 2 # f
V
2
dV =
V
E
2
# _f + f i
2
1
V
2
dV
R
2
P
d2 v
ES
P2
2P d 2 v
f
p
y
dV
=
dV
+
#V EA
#V EA 2 ydV +
S#
2 S V E 2 A2
dx 2
dx
T
2
2
2
2
E P Al
P ld v
E l d v
f 2 p ; # y 2 dA E dx
=
+
ydA
dx
+
;
E
#
#
#
2
2
2
0
A
0
A
2 E A
A
2
dx
dx
E
=
2
P2 l
EI
=
+
2EA
2
#
0
l
f
2
2
p dx
2
d2 v
dx
V
W
#V f 2 y p dV WW
dx
X
d2 v
したがって、柱が圧縮荷重 P を受け圧縮変形と曲げ変形を同時にした場合と、圧縮変形のみをした場
合のひずみエネルギーの差 dU は、
P2 l
EI
dU = U 2 - U 1 =
+
2EA
2
#
0
l
f
dx
2
p dx 2
d2 v
P2 l
EI
=
2EA
2
#
0
l
f
dx
2
p dx - - - - - - - - - - -(1)
2
d2 v
で与えられる。
柱が圧縮変形をのみを受け、さらに曲げ変形を受けると、外力のポテンシャルエネルギーは減少する
(柱の上端に重りを載せたことを想像すれば、圧縮変形により柱の上端は下方へ移動し、さらに曲げ変
形により下方に移動する。したがって重りのポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)は減少する)。
この減少量がどの程度になるかについて考えてみる。図−2(c) において、曲がった柱の軸線の微小長
さを ds とし、その x 軸方向の長さを dx、横方向の長さを dv とすれば、
--
]dsg2 = ]dvg2 + ]dxg2
x
x
x
P
であるから、
P
dv
1+d n
dx
2
v
O
v
O
ds = dx
である。小さなたわみの場
ds dx
dv
l2
l1
l
x
v
O
合、たわみ角は非常に小さ
い、すなわち、
v
(a) 初期状態
(b) 圧縮変形のみ
(c) 圧縮変形と曲げ変形
図−2 柱の変形過程を分解して考える
ds = dx >1 +
dv
% 1
dx
であるから、上式は次のよ
うに展開される。
(1)
1 dv d n H
2 dx
2
柱の全長について考えれば、
# ds = # dx + 2 # d dx n
l
0
1
l
0
l
2
dv
dx
0
したがって、
1
l1 = l2 +
2
#
l
0
dv
d n dx - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(2)
dx
2
柱が圧縮変形から圧縮変形と曲げ変形をした状態に移行すれば、外力 P の作用位置が l1 から l2 に下が
るから、このことによる外力のポテンシャルエネルギーの変化 dV は、式(2)を用いれば、
P
dV = P _l2 - l1i =2
#
0
l
dv
d n dx - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(3)
dx
2
となる。
柱が荷重 P の作用のもとで単純圧縮変形の状態からさらに曲げ変形もした状態に移行したときのひ
ずみエネルギーの変化 dU とその時生ずる外力のポテンシャルエネルギーの変化 dV は、物体と外力を
一つの系と考えるときエネルギーは保存されるから、
dU + dV = 0
である。式(1)と式(3)を用いて上式を書き直せば、
() f ] x + hg = f ] xg +
1
1
f l ] xg h +
f m ] xg h 2 + g
1!
2!
であるから、x=0 とすれば
f ]hg = f ]0g +
1
1
f l ]0g h +
f m ]0g h2 + g - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(A)
1!
2!
となる。ここでは、 f ] xg =
f ]hg =
1 + h2 = 1 +
1 + x 2 であるとすれば、式(A)は、
1 2
h +g
2
dv とおけば、求めた式が得られる。
となる。 h =
dx
--
EI
#f
l
0
d2 v
dx 2
2
p dx - P
#
0
l
dv
d n dx = 0
dx
2
となる。上式を部分積分すると、次式が得られる。
R
V
R
V
x=l
x=l
l dv d 3 v
l
S dv d 2 v
W
d2 v W
S dv
EI S
- #
dx W - P Sv
- v
dx = 0
S dx x = 0 #0 dx 2 WW
0 dx dx 3
S dx dx 2 x = 0
W
T
X
T
X
上式の左辺第 1 項の積分をさらに部分積分すれば、次のように変形される。
R
V
R
V
x=l
x=l
x=l
l
l
S dv d 2 v
d3 v
d4 v W
d2 v W
S dv
EI S
-v 3
+ # v 4 dx W - P Sv
- v
dx = 0
S dx x = 0 #0 dx 2 WW
0
S dx dx 2 x = 0
W
dx x = 0
dx
T
X
T
X
上式をさらに整理すれば、
dv d 2 v
EI
dx dx 2
x=l
dv
- v fEI 3 + P p
dx
dx
x=0
d3 v
x=l
+
x=0
#
0
l
v *EI
d4 v
dx 4
+P
d2 v
dx 2
4 dx = 0 - - - - - -(4)
となる。左辺の第 1 項および第 2 項は、
いずれも柱の端末条件で決まる値を持つ。端末が固定端の場合、
回転端の場合、自由端の場合の端末条件について考えてみる。
固定端の場合
x
たわみおよびたわみ角が共にゼロであるから、
v = 0,
固定端
dv
= 0 - - - - -- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(5)
dx
v
O
回転端の場合
x
力のモーメントがゼロであるから、
d2 v
dx 2
回転端 O
v
=-
M
d2 v
より、 2 = 0
EI
dx
たわみもゼロであるから、 v = 0 である。したがって、
v = 0,
d2 v
dx 2
= 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(6)
自由端の場合
x
回転端の場合と同様にモーメントがゼロであるから、
P
θ
d2 v
dx 2
拡大
Psi
nθ
P
θ
端末におけるはりに生ずるせん断力 F は、外力 P と次の関係になる。
F = P sin i . Pi . P tan i = P
dv
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(7)
dx
一方、
自由端部
O
=0
v
F=
dM
d3 v
=- EI
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(8)
dx
dx 3
であるから、式(7)と(8)から、
--
EI
d3 v
dx
3
+P
dv
=0
dx
ここで
P
= a2
EI
とおけば、
d3 v
dx
3
+ a2
dv
=0
dx
となる。したがって、自由端での端末条件は、
d2 v
dx
2
d3 v
= 0,
dx
3
+ a2
dv
= 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(9)
dx
である。
以上の結果を表に整理すると、表−1に示すようになる。
端末の形式
固定端
回転端
自由端
表−1 端末条件
端末条件
dv
v = 0,
=0
dx
v = 0,
d2 v
dx
2
d2 v
dx 2
= 0,
=0
d3 v
dx
3
+ a2
dv
=0
dx
以上の考察から、式(4)の左辺の第1、2項は、表−1に示す端末条件により、いずれの端末の形
式であっても共にゼロになる。したがって、次式が得られる。
#
l
0
v * EI
d4 v
dx 4
+P
d2 v
dx 2
4 dx = 0
上式が常に成り立つためには、
v=0
or
EI
d4 v
dx 4
+P
d2 v
dx 2
=0
である。しかし、v=0 の条件は、単純圧縮変形であるからこれを除けば、
EI
が成立する。
d4 v
dx 4
+P
d2 v
dx 2
=0
P
= a 2 とおけば、次のようになる。
EI
d4 v
dx 4
+ a2
d2 v
dx 2
= 0 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(10)
--