投球後のアイシングが肩関節に及ぼす影響

上野愛範 : 投球後のアイシングが肩関節に及ぼす影響
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研究報 告
投球後のアイシングが肩関節に及ぼす影響 *
上野愛範 1) ・ 金井 章 2) ・ 神田 直 2)
【要 旨】
スポーツ競技におけるアイシングの効果についての研究は数多く行われている. しかし,対象や運動種目,
アイシングの手技, 方法, 実施時期などが異なるため研究結果は必ずしも一致せず, 基礎的 ・ 科学的エビ
デンスは十分とはいえない. われわれはアイシングが肩関節可動域と筋力および肩の痛みなどに及ぼす影
響について検討した.
対象は高校硬式野球部の投手 7 名. 普段の投球練習と同様に 100 球の投球を行い, 肩関節内旋及び外旋
の自動運動可動域と筋力の測定を投球開始前と投球 24 時間後の 2 回行い, アイシングの有無により比較検
討した. また投球 24 時間後の自覚的な肩の状態を visual analogue scale (VAS) により評価した.
アイシングを行わない場合, 投球前と比べた投球 24 時間後の肩関節内旋及び外旋筋力は有意に増大した
(それぞれ p<0.05 と p<0.01). しかしアイシング処置を行った場合, 投球 24 時間後の筋力の増大はいずれも
認められず, 変化率でみると外旋筋力において減少が認められた (P<0.01). また自覚的な肩の調子は, ア
イシング処置を実施した後は明らかに良好であったが, 肩関節計測値との間に有意な関係を認めなかった.
われわれの成績からみる限り, アイシングは肩関節筋力に影響を及ぼすと考えられるだけに, アイシン
グによる投球肩障害の予防と肩関節筋力との関係については, 今後さらに対象を増やして検討することが
必要と考える.
キーワード : 投球肩障害, アイシング, 肩関節機能
はじめに
繰り返し動作の多いスポーツでは, 特定の関節
ならびに関連した筋肉に過度の負荷が持続的に加
わることにより, いわゆる使いすぎによる障害
が起きやすい 1). 野球選手の中でもとくに投手に
* Effects of the ice treatment on shoulder strength and
range of motion after baseball pitching
1) 社会医療法人財団新和会八千代病院 総合リハビリ
テーションセンター
(〒 446-8510 愛知県安城市住吉町 2-2-7)
Yoshinori Ueno, RPT: Department of rehabilitation,
Yachiyo Hospital
2) 豊橋創造大学 保健医療学部理学療法学科
Akira Kanai, RPT, Tadashi Kanda, MD: Department of
Physical Therapy, School of Health Sciences, Toyohashi
SOZO University
# E-mail: [email protected]
とって試合や日常の練習における投球という同一
動作の繰り返しは肘関節や肩関節障害 (投球肩障
害) の原因となる. そのため, 試合や練習後に特
定の関節に加わった負荷による症状や機能低下を
どう軽減するかは, 障害予防の面からみて重要な
課題となっている.
投球肩障害予防策の一つとして, 投球後にアフ
ターケアとして行う肩のアイシングがある. アイ
シングにより組織温度を低下させることで, 急性
炎症反応の時期に起こる化学反応の速度を遅ら
せ, さらに組織治癒の時に伴う熱, 発赤, 浮腫,
疼痛, 機能障害など減少させる 2) ことから, プ
ロ ・ アマ問わず広く行われている. 高校野球選手
に対する傷害調査では, 投球後にアイシングを必
ず行う比率は 33.8%, 時々行うは 39.9%であり,
かなり高い 3).
スポーツ競技におけるアイシングに対する効果
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愛知県理学療法学会誌 第 24 巻 第 2 号 2012 年 12 月
制すると述べている. 我々の成績でも, アイシン
グ処置群では投球 24 時間後の外旋筋力は有意に低
下していることから, アイシング処置が翌日の投
球に何らかの影響を及ぼすことは否定できないと
考える.
投球後に投手が自覚する肩の状態は, 投手間で
は肩が張る, 痛む, 軽い, 調子よいなど本人の感
じ方に基づいて表現されている. この感覚は投手
にとって肩の状態を表す重要な指標と思われる
が, 実際にこの状態を客観的に正確に捉えること
は容易ではない. またアイシングの効果を期待す
る投手の先入観が評価に何らかの影響を及ぼすこ
とも否定できない. 今回我々は VAS を用い, ア
イシング実施前と後を同じ対象で比較検討するこ
とを試みた. その結果, アイシングを行った場合
は, 肩全体の調子が改善したと回答した選手が多
く, 悪化はみられなかった. これらの結果から,
アイシングは投球により生じる自覚的な肩の疲労
回復に有効であると推測された.
肩関節内外旋筋力のアンバランスが投球肩障害
を引き起こすことが指摘されており 12, 13), 投球後
に認められる外旋筋力の変化は, 投球肩障害と何
らかの関連があることは十分推測される. ただ,
たとえアイシングが 24 時間後の自覚的な肩の張
りや痛みを改善し得ても, 長期的な投球肩障害の
予防に役立つかどうかは明らかでない. また本研
究を行った期間は野球にとってシーズンオフであ
り, シーズン中のいわゆる 「肩ができた」 時期の
測定ではないこと, アイシングの有無で両群の効
果を比較したときに初期筋力の測定値に差があっ
たこと, また対象数が少ないことから, アイシン
グによる投球肩障害の予防と肩関節筋力との関係
について十分な結論を得るためには, 今後さらに
対象数を増やして慎重に検討することが必要と考
える.
まとめ
高校野球硬式野球部の投手を対象として, 投球
後のアイシングの有無による肩関節への影響につ
いて検討した. アイシングを行った場合, 投球 24
時間後にみられる肩関節外旋筋力の増大が認めら
れなかった. また, 投球後の肩の張りや疼痛はア
イシング後に改善例が多かったことから, アイシ
ングの有無による違いが明らかであり, 投球肩障
害の予防に何らかの役割を果たしている可能性は
十分考えられる. アイシングによる投球肩障害の
予防と肩関節筋力との関係については今後さらに
対象を増やして検討が必要と思われる.
謝辞
本研究の実施にあたり, 多大なるご協力を賜っ
た大同大学大同高等学校硬式野球部監督安藤広高
先生ならびに本研究に快くご協力いただいた部員
の皆様に深く感謝いたします.
本研究の要旨は第 21 回愛知県理学療法学術大会
(2011.3.6) において発表した.
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