クローズ アップ 水野社長が最も重要な取り組みの一つとしてあげた「燃料調達」 の戦略についてクローズアップする。 中部電力の燃料調達の戦略 大きく依存しており、燃料の確保に ー資源に乏しく、海外からの輸入に ている︻図1︼ 。日本は、エネルギ より急増し、今後も増加が見込まれ 世界のエネルギー消費は、新興国 を中心とした人口増加や経済発展に 整が可能になる。 必要量の変動に応じた調達数量の調 ィングに関与することで当社の燃料 につながる。また、輸送やトレーデ と同時に、経済性の高い燃料の確保 に燃料を確保することが可能となる こうしたことから、 中部電力では、 燃料調達において﹁安定性﹂ ﹁ 経済 とが求められている。 ていく。また、原油価格にとらわれ ることで、 ﹁調達先の分散﹂を図っ えて北米や東アフリカなど、新たな の開発・生産、輸送、受け入れ、発 く。 世界人口 石油ショック 【1973年、79年】 エネルギー流体革命 (石油利用の拡大) 【1950〜60年】 農耕・牧畜中心の時代 (薪炭・風力・水力) 近代石油採掘 【1859年〜】 産業革命(石炭利用拡大) 【18〜19世紀】 蒸気機関 【1769年〜】 30 世界のエネルギー消費、原油換算 ロシア カナダ 0 中国 アメリカ インド イギリス フランス ドイツ 日本 需給変動に対応した 調達 2030 (年) 1980 2000 1950 イタリア 安定性 −49 〜安定性・経済性・柔軟性のさらなる向上〜 あたっては、国際的な情勢に大きく 性﹂ 、需給変動に迅速かつ適切に対 ない欧米市場のガス価格にリンクし 電に至るまで、一連の流れに直接自 中部電力では、このように燃料調 達の安定性、経済性、柔軟性をさら 20 産状況などの情報を獲得でき、確実 影響を受ける︻図2︼ 。変化する燃 さらに、LNGの調達先に中東・ 近隣のアジア・オーストラリアに加 応できる﹁柔軟性﹂をさらに向上さ た新たな価格体系を導入することで ら関与することによる﹁燃料バリュ に向上させ、安価で安定的な電力供 調達価格の低減 「ENERGY BALANCES OF NON-OECD COUNTRIES 2012 EDITION」から作成 柔軟性 (出典)IEA「ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES 2012 EDITION」 料調達環境に的確に対応していくこ せる取り組みを進めている︻図3︼ 。 ﹁価格体系の多様化﹂を実現してい ーチェーンの強化﹂である。 給を、より確実なものにしていく。 供給源と期待される地域を組み入れ この取り組みのうちの一つが、燃料 燃料の上流権益に自ら参画し、生 産者の役割を担うことによって、生 【図3】中部電力の燃料調達の戦略 −40 経済性 輸入依存度(原子力を含む) −100 所要量の確実な調達 −58 −60 −78 −84 輸入依存度(原子力を除く) −80 100 48 1900 50 120 1750 1800 20 20 22 25 26 (出典)エネルギー白書2013から作成 −20 71 1500 40 80 35 40 1 60 140 60 60 0 0 10 エネルギー需要 40 9 10 70 160 人口 60 80 エネルギー需要は新興国を中 心とした人口の爆発的な増 加などに伴い急増している。 180 81 80 96 32 27 90 予測 200 91 83 83 (億人) (億トン) (%) 100 【図1】世界的に急増するエネルギー需要 【図2】主要国のエネルギー輸入依存度(2010年) No. ❶ 10 場・ ba - 2014 June Vol.13 Close- u p 燃料バリューチェーンの強化(LNG調達の取り組み例) ①上流権益の取得 オーストラリアのゴーゴン・プロジェクトとイクシス・プロジェクト (LNG) 、 カナダのコルドバ・プロジェクト (シェールガス) に参画している。 生産 ②米国からのLNG調達 既存LNGタンク 液化設備 (計画) 米国からのLNG導入を目指し、2012年7月に大阪ガス (株) とともに米国フリー 既存気化設備 ポート社の子会社と天然ガス液化加工契約を締結した。 また、'14年2月には同プロジェクトにおけるガス液化事業に出資参画することを 決定した。 メキシコ湾 〈米国からのLNG調達の意義〉 安定性 既存桟橋 液化 米国は新たな供給国であり、供給ソースが多様化されることでLNG供給の安定性が 向上する。 一般的なLNG売買契約に見られるLNG取引場所の制限、 いわゆる仕向地制限がな 柔軟性 く、第三者へのLNG供給などを通じて自社需給の状況に応じた調達数量の調整が容 易になり、柔軟性が向上する。 原油価格連動に偏るアジアLNG市場において、米国ガス価格連動という新しい指標 経済性 を導入することにより、欧米との価格差が生じやすい市場環境の構造変革を促すこと ができる。結果的に、調達価格の安定化や低減につながる。 米国フリーポートLNG基地 ③中部電力専用LNG船を確保 輸送 さやえんどう型球形タンク方式 ( 約 1 5 5 千㎥)により燃 費を 改善した船型(当社1、2番船 にて採用) 買主自らが輸送手段を確保する契約 (FOB契約) の拡大と、 LNG輸送のために 必要となるLNG船の確保に取り組んでいる。 現在、 オーストラリアのプロジェクト向けに自社専用LNG船3隻を確保し、 定期傭 船契約を締結している。確保にあたっては、従来型と比較して燃費や輸送効率が 大幅に改善された新型船を採用し、 輸送費の削減に取り組んでいる。 また、 1隻目および2隻目については自ら保有することで、 輸送体制の強化を図っ ている。今後は米国からの調達に向けて、 5隻程度のLNG船手配が必要となる。 拡張後のパナマ運河を通 峡可能なモス型最大船 (約 164千㎥) の採用により輸 送効率が向上した船型 (当 社3番船にて採用) ④LNG関係インフラの整備 伊勢湾内を中心としたLNG関係インフラ 受入 貯蔵 LNGタンク増設 (2012年度完工) タンク容量18万㎥ ×2基 LNG受入桟橋増強 (2010年度完工) 20万㎥超級LNG船が 接岸可能 新たに敷設するガス導管 新名古屋 (2017年度完工予定) 約5kmの燃料ガス導管 西名古屋 四日市 LNG センター 川越 四日市 発電 川越LNG基地タンク 三重•滋賀 ライン敷設 (2013年度完工) 約60kmの パイプライン 伊勢湾横断 ガスパイプライン敷設 (2013年度完工) 約13.3kmの パイプライン 知多第二 知多 知多地区 LNG基地 LNG受入桟橋増強 (2009年度完工) 20万㎥超級LNG船が 接岸可能 パイプライン (既設) LNG火力発電所 LNG基地・設備 LNG火力発電所が集中する伊勢湾内を中心 に、 安定的にLNGを供給するため、 LNG関係イン フラを整備してきた。 LNGタンク増設やLNG船の大型化に対応す るための受入桟橋増強を進めるとともに、'13年 度には、伊勢湾横断ガスパイプラインと三重・滋 賀ラインの敷設が完工した。 これにより、伊勢湾内外におけるLNG基地間 の連携体制が整い、LNG調達およびLNG供給 の安定性・経済性・柔軟性の向上を実現した。 今後、 高効率な西名古屋火力発電所7号系列 にLNGの供給を行うためのガス導管を敷設する。 石炭調達力の強化 フランス電力会社EDFの燃料調達部門であるEDF トレーディング社との提携のもと、 中電エネルギートレーディング (株) を設立し、 '08年より石 炭調達を共同で行ってきた。 '12年からは、 アジアの石炭トレーディングの中心地であるシンガポールにトレーディングの実施拠点を移転した。市場情報が集中するシンガポ ールで調達を行うことで、 石炭取引に関する情報をより迅速に入手できることから、 調達力の強化に結びついている。引き続き、 トレーディングスキ ルの向上を図るとともに、 さらなる調達力強化を目指していく。 11
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