特集:生産プロセスにおけるエレクトロヒートシステム(塗装・乾燥・殺菌・洗浄など) 軟包装資材工場への熱風ヒートポンプ導入事例 深 澤 篤 志 (ふかさわ あつし)日本電技株式会社 産業ソリューション統括部 産業エネルギーソリューション課 課長 要約 軟包装資材製造等のコンバーティング業界では印刷・ラミネートの乾燥に熱風を使用している。 従来方式は蒸気ヒーターやバーナーで熱風を作っており、大量の化石燃料を消費している。業界の省エネ・ 経費削減の要望に対し、ヒートポンプを用いた乾燥システムを開発し、須田産業株式会社での実証試験 をおこない、システムの安全性・経済性・環境性について検証した。また CO2 国内クレジット制度の助 成金を活用し導入費用を軽減するとともにシステムの CO2 削減効果が認められた。 1. はじめに 1. 1 開発経緯 プラスチックフィルム等に印刷や多機能素材をラミ ネートするコンバーティング業界では、加工時に使用 するインキ・接着剤・塗材を乾燥させるため、大量の 化石燃料を消費する。さらに、大気環境保護のため大 気汚染防止法改正(2010 年 4 月猶予期限終了)によ る VOC 処理装置の導入が進められたが、これにより 化石燃料の消費がさらに増加した。VOC 処理装置の 導入は企業側に経済負担を伴う一面があり、「環境対 策=出費」のイメージを持つ企業も多い。 このような背景の中、コンバーティング業界の乾燥 工程へのヒートポンプ導入の検討を開始し、メーカー の(株)前川製作所と共同で工場実験・実ユーザーで の実証試験をおこない販売を開始した。実ユーザーで の実証試験先である、須田産業株式会社での導入事例 写真 1 須田産業(株)建物外観 No. 185 2012 を紹介する。 須田産業株式会社は、静岡県浜松市で 1960 年に創 業し、食品等の軟包装資材印刷・ラミネート・製袋ま で一貫して製造するいわゆるコンバーターである。主 力商品は食品包装材であり、景気の変動に左右されに くく安定した生産をおこなっている。 2. 工事概要 2. 1 建物概要 建物名称:須田産業株式会社竜洋工場 建物用途:軟包装資材の加工工場 所在地:静岡県磐田市高木 工期:平成 23 年 8 月∼平成 23 年 9 月 設計:日本電技株式会社 本社 施工:日本電技株式会社 浜松支店 2. 2 設備概要 (既存対象生産設備) ドライラミネーター × 1 台 乾燥給気量:240 Nm3/min 平均乾燥温度:70℃ (既存熱源設備) 蒸気ボイラ(A 重油焚き)1.5 ton/h × 3 台 (増設熱源設備) 水熱源熱風出力ヒートポンプ × 1 台 加熱出力:119 kW (熱風吹出温度:80℃、熱源水出口温度:35℃ 給気温度:17℃) (増設廃熱回収設備) ガス−水プレートフィン熱交換器:86 kW 特 集 37
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