ナノろ過膜による揮発性有機化合物の除去

2009 年度
バイオニクス学部
卒業論文概要
論文題目
ナノろ過膜による揮発性有機化合物の除去
氏名
指導教員
金子
琴絵
浦瀬
太郎
キーワード:ナノろ過・逆浸透膜、揮発性有機化合物(VOC)、GC/MS
【背景】
1960 年代の酢酸セルロース膜の発明から始まった逆浸透法は、海水から淡
水を得る技術として、次第に適用範囲を拡大してきている。さらに 1970 年代
のポリアミド系複合膜発明、その後の 1990 年代後半に行われたポリアミド系
複合膜の改良により、低圧で汚染物質を分離するナノろ過法が実用化された。
しかし、これらの膜は、もともと脱塩を目的として開発されたものであって、
微量の有害化学物質を除去する技術としての有用性は、明らかでない。本研究
では、下水処理水の高度処理でターゲットとなる臭気の低減がナノろ過法で可
能であるかどうか、揮発性有機化合物を対象に除去実験を行った。
【実験方法】
日東電工製の NTR729-HF、LES90、LF10 の 3 種類の膜を用いて、45 種類の揮
発性有機化合物(VOC)を添加した下水処理水のナノろ過・逆浸透実験を行った。
各化合物の阻止性能を GC/MS で測定し、さらに電気伝導度、色度(E390)、難分
解性有機物の指標(E254)の阻止率も測定した。
【結果】
微量有害物質の物質ごとのナノろ過・逆浸透での阻止性能は、分子量の大き
い溶質ほど阻止率が高くなることが期待される。しかし、臭気物質程度の分子
量の範囲では、分子量と阻止率の間に明確な関係はなかった。
NTR729-HF,LES90,LF
100
10 の 3 種類の膜とも、
90
色度(E390)や難分解性 阻
止 80
有機物の指標となる吸 率
70
光 度 (E254) が す べ て
% 60
90%以上阻止され、色度
50
よりも揮発性有機化合
40
物(45 種類の平均値)
E254
E390
電気伝導度
VOC
が除去され難いことが
NTR729-HF
LES90
図1.3種類の膜の阻止率
わかった。
(
)
LF10