木造住宅における床剛性向上に関する研究(金田 浩)

木造住宅における床剛性向上に関する研究
5 年建築 金田 浩
担当教員 草苅 敏夫 教授
1.研究の目的
図-3 に示す 3 つの試験体を作成し、実験を行っ
た。
260
260
2100
260
40×40山形鋼
105
105
1050
260
2730
平鋼加工品
100 100
105
羽子板ボルト13×25
2620
105
105
125×65 105
105
40×40・山形鋼
溝型鋼
試験体No2
試験体No1
1050
φ10・ボルト2本止め
2730
105
50×3・平鋼
260
2730
2100
溝形鋼加工品
試験体No3
図-3
3.実験結果
3-1 試験体 No.1 の実験結果
変位計4と荷重との関係および破壊状況の写真
を以下に示す。変形の増大に伴って接合部に割
裂が生じ、最終的にはそれが拡大して耐力に至
った。最大耐力は、7.7kN であった。
荷重(kN)
2.実験内容
作成した床試験体に地震を想定した水平力を
油圧ジャッキを用いて加え、その荷重に対して
の変形を計測する。
(図-1 参照)計測結果は、
グラフ化などで比較しやすくする。加力形式は、
変位漸増繰り返し加力とした。
(図2 参照)
260
300
壁は、耐震要素として極めて重要であるが、
配置された壁すべてが一体となって有効に働く
ためには、壁相互をつなぐ床も重要となってく
る。このことから、床は住宅の耐震性に大きく
かかわると予想され、床剛性の研究を行い、こ
れらを考慮して床剛性を向上させることで、よ
り一層の住宅の耐震性向上が可能と考えられる。
そこで本研究では、安価で施工性が良く、高い
床合成を得られる床組を考案し、実験による確
認を行う。
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-60
-40
-20
0
20
40
60
80
100 120
変形(mm)
荷重(kN)
試験体 No.1
3-2 試験体 No.2 の実験結果
変位計4と荷重との関係および破壊状況の写真
を以下に示す。No.1 と同様に最終的には接合部
の割裂により耐力にいたった。最大耐力は
11.8kN であった。
図-1 計測方式
12
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-60
-40
-20
0
20
40
変形(mm)
図-2 加力ルール
60
80
100
120
試験体 No.2
3-3 試験体 No.3 の実験結果
変位計4と荷重との関係を次図に示す。変形が
1/25 の時に、内部破壊と思われる現象により耐
力低下が認められたが、その後の加力によって
耐力が増大し、接合部の割裂が生じたもののジ
ャッキの最大ストロークまで耐力低下が見られ
なかった。
4-1 降伏耐力、降伏変位の比較
降伏耐力は試験体 No1 は 4.8kN、No2 は
5.4kN で、差が 0.6kN とあまり大差はなかった。
しかし、降伏変位は 26.7mm と試験体 No2 の
19.3mm に比べて 7.4mm 長い。これは、鋼の
補強材を用いている量が試験体 No2 に比べて
尐ないため木特有の弾性が数値として表れたた
めである。
20
10
5
0
-5
-10
-80
-40
0
40
80
120
160
変位(mm)
試験体 No.3
4.考察
まず、図-3 の実験結果から下図のような包絡
線を導き出した。
(図-4 参照)
4-2 終局耐力、終局変位の比較
終局耐力は試験体 No1 は 6.0kN であり、
No2
は 9.2kN で差は 3.2kN と尐し大きな差が出た。
終 局 変 位 は試 験 体 No1 が 70mm、No2 が
81.1mm で No3 は 158mm 以上であった。弾性
に富んでいるはずの試験体 No1 が 70mm と一
番小さな値が出ているのは、やはり補強の尐な
さだろう。No2 では 81.1mmと、試験体 No1
とあまり変わらない数値であった。この双方の
試験体はほぞ周辺の補強が不十分であったこと
が共通事項だったのでほぞ自体の限界数値がこ
のあたりと言っても良いだろう。
4-3 完全弾塑性モデルの降伏点変位の比較
完全弾塑性モデルの降伏点変位は、試験体
No1 が 32.9mm、試験体 No2 は 34.0mm であ
った。わずか 1.1mm の差であった。
図-4 各試験体包絡線
図-4 のような包絡線から参考文献(1)に基
づき図-5 に示す方法により各特性点における
耐力および変位等を算出した。
なお、試験体 No3 の算定結果については、実
験で破壊に至らなかったため算出できなかった。
ⅢⅡ
せん断荷重
ⅠⅤ
(最大荷重
最大耐力
Pmax
0.9Pmax
Pu
(
荷重[kN]
15
0.8Pmax
Py
0.4Pmax
Ⅳ
S
0.1Pmax
γ yγ v
せん断変形角
図-5 各耐力評価方法
表-1 算定結果
γu
4-4 短期許容せん断耐力の比較
短期許容せん断耐力は試験体 No1 が 1.8kN、
No2 は 2.7kN で試験体 No2 は No1 の 1.5 倍の
値が出た。
4-5 剛性の比較
それぞれの試験体の 20mm と 60mm のときに
対する荷重によって比較を行う。
試験体 No1は変位 20mm のとき 4.1kN であり、
60mm のときは 7.63kN であった。これは 3 つ
の試験体の中で一番値が小さかった。試験体
No2 は 3 つのなかで一番剛性が高く、変位
20mm で 5.7kN、
60mm では 9.75kN であった。
実験で破壊に至らなかった試験体 No3 は、変位
20mm では 4.7kN、60mm では 8.5kN と試験
体 No2 よりも大幅に小さな値となってしまっ
た。このことから、最大荷重と剛性は全く関連
が無いということがわかる。(表-2 参照)
表-2
参考文献
(1)性能評価申込要領(木造耐力壁及びその倍率)