麦および大豆圃場における難防除雑草の発生と対策の事例紹介

[雑草と作物の制御]vol.7
2011 p 9~10
麦および大豆圃場における難防除雑草の発生と対策の事例紹介
(元)茨城県農業総合センター
1
麦類・大豆の作付面積
狩野幹夫
葉処理ではハーモニー75DF 水和剤,エコパート
茨城県の主な産地は県西部で,平成21年の麦
フロアブル,アクチノール乳剤などが使用されて
類 の 栽 培 面 積 は , 小 麦 が 4,860ha , 六 条 大 麦
いる。 なお,ハーモニー75DF 水和剤では効果の
2,360ha,二条大麦 1,280ha で,そのうち約 70%が
劣るスズメノテッポウが県西地域の一部で問題と
転換畑である。一方,大豆は 4,730ha 作付され,
なっている。
タチナガハと納豆小粒が各 50%程度作付されてい
2)大豆圃場
る。主な産地は県西部,県南部,県央部で,約 75%
大豆圃場ではアメリカセンダングサ,シロザ,
が転換畑である。主な作付体系は,水稲-麦-大
オオオナモミ,イチビなどが多い。雑草防除は,
豆のブロックローテーション及び麦-大豆(ソ
土壌処理がエコトップ乳剤,トレファノサイド乳
バ),麦単作の固定連作である。
剤,ロロックス, 茎葉処理ではバサグラン液剤,
タッチダウン iQ,ポルトフロアブル,ナブ乳剤な
2
麦・大豆圃場で問題となっている雑草と防除
どが使用されている。また,除草体系は慣行栽培
について-麦・大豆の主産地である県西部地域
が土壌処理剤+中耕・培土又は土壌処理剤+茎葉
の状況について-
処理,狭畦密植栽培では土壌処理剤+茎葉処理で
(1)転換畑圃場における麦類・大豆の主な雑草
と使用されている除草剤
1)麦圃場
ある。
一方,アサガオ類ではマルバルコウ,マルバア
メリカアサガオが大豆作付面積の 20~30%程度
麦圃場の雑草スズメノテッポウ,スズメノカタ
発生している。防除は,圃場内では手取り作業で
ビラ,ヤエムグラ,カラスムギ,ネズミムギ,ス
対応しているが,毎年手取り作業にかかる労力が
ギナなどが現場から問い合わせが多い草種であ
増加する傾向がみられる。また,本田侵入前の畦
る。また,ソバは原則として麦跡には作付けしな
畔に発生した段階で防除している生産者もいる。
いことになっているが,ソバの発生も問題となっ
3)大豆畦間処理の取組事例
ている。やむを得ず栽培した場合は茎葉処理剤を
つくば市におけるブロックローテーションの大
使用しているものの防除が不十分で,事後対策と
豆圃場においてアメリカセンダングサ,シロザ,
して色彩選別機(色選)で対応している。
タデ,イチビが一面に発生し,さらにマルバルコ
雑草防除は,播種前処理ではタッチダウン iQ,
ウも多くみられたことから,先進農家が畦間処理
ラウンドアップマックスロード(播種後使用して
に使用する散布機を開発し(雑草と作物の制御
いる場合もあり),播種後処理としてトレファノ
vol.5 2009),畦間処理に取り組んだ。除草剤はバ
サイド乳剤,クリアターン乳剤,ロロックス,茎
スタ液剤を使用したため,大豆への薬害がみられ
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2011 p 9~10
たものの,マルバルコウやホシアサガオの発生を
まだ試行的な取組である。
抑制した事例がある。しかし,他の主産地では大
ⅱ
豆の畦間処理は未だみられない。
地の有効利用からみると問題があるが,麦の機械
2年程度休耕し,
ロータリー耕による防除(農
装備しかない場合は緊急避難的な対応策になる)。
(2)大規模麦作経営体が取り組んでいるカラス
ムギ,ネズミムギの防除対策
1)カラスムギ,ネズミムギの発生が拡大した要
ⅲ
不耕起又は浅耕で雑草種子の埋没深を一定に
することで,雑草の発生時期が揃い,土壌処理剤,
茎葉処理剤による防除効果が期待できる。
因
ⅳ
カラスムギ,ネズミムギの繁茂した所を雑草
① 当該草種に効果的な除草剤がないこと,②
の結実前に麦とともに青刈りする。
土壌処理剤の散布が減少したこと,③ 手取り除草
②
麦・大豆体系
が不十分なこと,④ 耕起等で雑草の出芽が長期化
ⅰ
大豆に替えてソバを導入し,ソバの播種前ま
し,一斉防除が困難なこと,⑤ 大雨等で用排水路
でに雑草防除を行う。
や畦畔からのオバーフローにともない雑草種子が
ⅱ
圃場内へ侵入したことなどがあげられる。
系によるブロックローテーション。(麦+大豆-
,2)カラスムギ,ネズミムギに対する防除の現況
飼料稲-麦+大豆又はネギ-飼料稲-麦+大豆-
カラスムギ等の除草は,規模拡大に伴い耕起・
新たに飼料稲を導入した麦+大豆-飼料稲体
ネギ)。
播種作業の優先と経費節減から主に茎葉処理が行
われている。出穂期以降の除草は,微~少発生で
おわりに
は手取り除草で対応しているが,多~甚発生にな
現地の状況や有益な助言を頂いた県西農林事務
ると手取りは困難で,麦とともに部分青刈りする
所坂東地域農業改良普及センターの山中茂美氏,
か,収穫を放棄する事例がみられる。
県西農林事務所経営普及部門の張替光樹氏,俵
一方,大豆圃場では狭畦密植栽培の普及と作付
面積が拡大する中,特に降雨による麦の収穫作業
と大豆の播種作業が遅れた場合には,雑草防除が
不十分なまま大豆が播種されるため雑草が残りや
すい。また,中耕・培土が省略されることから生
育中期以降に発生する雑草の防除が困難になって
いる。
3)カラスムギ,ネズミムギの発生を抑制した事
例
①
麦単作
ⅰ
新規夏作物(大豆)との輪作による雑草防除
には麦+大豆-大豆-麦-麦の輪作体系,大豆導
入2ヶ年程度で効果がある。この技術を導入した
地域では新規に大豆を導入する経営体が少なく,
貞治氏に感謝の意を表します。