グアニジン塩 - シーエムシー出版

ケミカルプロフィル
グアニジン塩
(Guanidine salts)
NH
H2N
C
融
点:190℃ 付近で一部変化,350℃ 以下不
溶
NH2・HX
pH:11.2(4 %,25℃)
!
概
!
塩酸グアニジン
要
溶解度(20℃)
:42g/100g 水,0.55g/100g メタ
ノール。アセトン,ベンゾール,エーテルに
〈一般物性〉
外
観:白色または微黄色塊状
融
点:184℃
pH:6.4(4 %,25℃)
ほとんど不溶。
製品純度:98% 以上
$
〈一般物性〉
溶解度(20℃)
:200g/100g 水,76g/100g メタ
外
観:白色結晶性粉末
ノール。アセトン,ベンゾール,エーテルに
分解点:246℃
ほとんど不溶。
pH:8.4(4 %,25℃)
製品純度:92% 以上
溶 解 度(20℃)
:15.5g/100g 水,0.1g 以 上/100
硝酸グアニジン
g メタノール。有機溶媒にほとんど不溶。
"
製品純度:96% 以上
〈一般物性〉
外
観:白色粒状
融
点:214.2℃
%
スルファミン酸グアニジン
〈一般物性〉
pH:5.7(1 %,25℃)
外
観:白色塊状
溶解度(20℃)
:12.5g/100g 水,5.5g/100g メタ
融
点:127℃
ノール。アセトン,ベンゾール,エーテルに
分解点:230∼245℃
ほとんど不溶。
pH:7.0±1.0(4 %,25℃)
製品純度:94% 以上
#
炭酸グアニジン
〈一般物性〉
外
72
リン酸グアニジン
溶解度(20℃)
:100g/100g 水,1.4g/100g メタ
ノール。有機溶媒にほとんど不溶。
製品純度:90% 以上
観:白色結晶性粉末
ファインケミカル
ケミカルプロフィル
NH
NH
H2N
C
NH2・HCl
H2N
塩酸グアニジン
C
NH
NH2・HNO3
硝酸グアニジン
C
C
NH2)
2・H2CO3
H2N
スルファミン酸グアニジン
C
NH2)
2・H3PO4
NH
NH
NH2・H2CO3
H2N
重炭酸アミノグアニジン
図1
C
リン酸グアニジン
NH
NH2・HSO3NH2
(H2N
炭酸グアニジン
NH
H2N
(H2N
NH
C
NH
NH2・HCl
塩酸アミノグアニジン
各種グアニジン塩の構造
表1
CAS
EINECS
塩酸グアニジン
95.5 1―215,2―1773 50―01―1
2000023
硝酸グアニジン
122.1 1―394,2―1773 506―93―4
2080601
炭酸グアニジン
180.2 1―310,2―1773 593―85―1
2098137
リン酸グアニジン
216.1 1―422,2―1773 1763―07―1
スルファミン酸グアニジン
156.1 1―402,2―1773 51528―20―2
重炭酸アミノグアニジン
136.1 2―2884,9―70
2582―30―1
塩酸アミノグアニジン
110.6 2―1776
16139―18―7
分子量 化審法(既)
!
重炭酸アミノグアニジン
!
〈一般物性〉
毒
性
急性毒性:
外
観:白色結晶性粉末
融
点:161∼163℃
経口,イエウサギ,LD50
500mg/kg
遊離のグアニジンは比較的不安定で,水溶液で
分解点:162℃
は加水分解してアンモニアと尿素になるので,毒
溶解性:水に難溶。有機溶媒にほとんど不溶。
性は尿素に相当するはずであるが,一般にグアニ
製品純度:98% 以上
ジンおよびその誘導体は尿素より有毒なものが多
"
塩酸アミノグアニジン
い。
〈一般物性〉
外
観:白色結晶性粉末
融
点:163℃
溶解性:水溶解性大。アルコールに溶解,エー
"
製
法
ジシアンジアミドを原料にして図 2 のように
合成される。
テルにほとんど不溶。
製品純度:98% 以上(融点 163∼166℃)
2008年6月号
Vol.37 No.6
73
Chemical Profile
ジシアンジアミド+アンモニウム塩(塩酸塩,硝酸塩)
グアニジン+二酸化炭素
塩酸グアニジン
'塩酸グアニジン
(
)硝酸グアニジン
炭酸グアニジン
'リン酸
グアニジン+(
)スルファミン酸
中和
脱水
リン酸グアニジン
スルファミン酸グアニジン
還元
硝酸グアニジン
ニトログアニジン
アミノグアニジン
塩酸アミノグアニジン
硫酸グアニジン+重曹
重炭酸アミノグアニジン
図2
!
生
産
られる。
国内では,はじめ日本カーバイド工業がカーバ
火薬用,医薬用,繊維処理加工用酸化防止剤,
イド工業の総合企業化をめざし生産を行っていた
石けん樹脂安定剤その他各種合成原料用に用いら
が,その後三和ケミカルに製造委譲されている。
れる。製品別の需要は次のとおり。
国内メーカーはこの 2 社である。
!
塩酸グアニジン
海外においてもメーカーは少なく,ドイツのエ
需要量 350 トン,用途はスルファダイアジン,
ボニック(旧・SKW)のほか,ハンガリーが生
スルファメラジン,スルファメサジンなどのサル
産しているのみである。
ファ剤の合成原料として 2―アミノピリミジン,2
エボニックは,シアナミドからの一貫生産で,
その他誘導体全般にわたり生産されている。
―アミノ―6―メチルピリミジン,2―アミノ―4,
6―ジ
メチルピリミジンなどに誘導される。
また葉酸の合成原料である 2,
4,
5―トリアミノ―
"
需
6―ハイドロキシピリミジンは,シアノ酢酸エステ
要
グアニジン塩の需要は全体で数千トン程度とみ
ルと反応させ合成される。最近ポリエステル用の
帯電防止剤に使用されるようになっている。
表2
メーカー・生産量(2006 年)
"
(単位:トン)
メーカー
工
場
生産量
三和ケミカル
平
塚
日本カーバイド
魚
津
$
%7,
000
&
合
計
7,
000
(シーエムシー出版推定)
74
炭酸グアニジン
需要用は 100 トン程度,用途はアミノ樹脂の
pH 調整剤,酸化防止剤,樹脂安定剤,グアニジ
ン石けんなどに用いられている。
#
リン酸グアニジン
需要量は 100 トン程度,木材,繊維,紙などの
ファインケミカル
ケミカルプロフィル
表3
各種グアニジン塩の価格
(単位:円/kg)
価
塩酸グアニジン
硝酸グアニジン
格
荷
姿
5000∼5500 10kg カートン
650∼700
20kg 入り紙袋
炭酸グアニジン
2100∼2200 20kg 入りポリ袋
リン酸グアニジン
1400∼1500 20kg 入り紙袋
スルファミン酸グアニジン
600∼650
20kg 入りポリ袋
重炭酸アミノグアニジン
3800∼4000 10kg 入り 5 ガロン缶
塩酸アミノグアニジン
5000∼5500 50kg 入りファイバードラム
(シーエムシー出版推定)
難燃剤として用いられる。スルファミン酸塩,リ
る。
ン酸塩とも防炎効果が大きく,吸湿性が少なく,
硝酸塩,ピクリン酸塩,塩素酸塩,過酸素酸塩
特にリン酸塩では鉄の腐食を防止する特性を有し
などは爆薬,炸薬の混合成分に用いられる。また
ているため一部が防錆剤に用いられる。
起爆剤としてはテトラゼン,ニトロアミノグアニ
リン酸塩は価格が高いこともあり,もっぱらス
ルファミン酸塩が用いられる。
グアニジン塩類は防炎加工助剤との相溶性が優
れ,セルロース関係では柔軟性および熱安定性の
ジン鉛,テトラゾール類が優れた性能をもってい
る。その他爆破薬,ロケット噴射薬としても応用
される。
#
重炭酸アミノグアニジン,塩酸アミノグアニ
優れた防炎剤であり,かつ吸湿性が少ない。単独
ジン
またはスルファミン酸グアニジンと併用して用い
両品目の需要量は,重炭酸アミノグアニジン
られる。
1000∼1300 トン,塩酸アミノグアニジン数十ト
!
ン程度とみられる。用途は医薬,染料,写真薬,
スルファミン酸グアニジン
リン酸グアニジンに比し価格が安く,需要量は
火薬などの合成原料。
数千トン,用途はリン酸グアニジンと同様セルロ
医薬品用途が主で,富山化学のパンフラン,パ
ース関係の防炎剤として,特に唐紙用に用いられ
ナゾンの合成原料中間体,アドレナリンと反応さ
る。
せた止血剤など。
"
硝酸グアニジン
需要量は 150 トン程度で,硝酸グアニジンの誘
導体には優れた爆薬が多い。ニトログアニジン用
原料に向けられるが,これは光,熱の発生量が少
!
価
格
各 種 グ ア ニ ジ ン 塩 の 価 格・荷 姿 を 表 3 に 示
す。
ないため,発射薬として主に重火器類に用いられ
2008年6月号
Vol.37 No.6
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