中国へのリンゴ輸出のコストと税金 東北大学 情報科学研究科 教授 稲村 肇 1 輸出取引の流れ 輸出も輸入も一緒だが、海外との取引であるため、国際ルールが非常に遵守され、 国内でよくいわれるように「暗黙の了解」という世界はないので、いろいろな面で書面 を通じて約束が交わされる。 輸出あるいは貿易にとって一番メリットがある決済が信用状(Letter of Credit)で、 銀行の保証状である。契約をすると、相手側からL/Cを受け取り、それをベースに商 品を調達し、船積みをする。その時点で船会社から荷物を積んだという証明の船荷証 券(B/L)を受け取り、インボイスを付けて銀行に提出し、銀行から輸出費用を回収 するかたちをとる。そして、銀行がその書類を相手方の銀行に送って取り立てます。し たがって、極端に言えば船の場合は、荷物を積んでそれが相手に着く以前にお金が 入っている、それが輸出の特徴だといえる。 次は輸出であるので、一括調達・一括引取です。国内のように細かなロットではなく、 5000 ドル、1万ドル、3万ドルと契約すると、その契約単位で商品を調達し、輸出し、 契約単位で引き取っていくかたちになる。いわば非常にすっきりした取引が輸出だと いえる。 決済の方法がいろいろあるが、最近はよく生産者の直輸出といわれるように、生産 者がそのままお客さんに売るやり方がある。一般的には商社を通じて売っていき、言 葉が不自由な国の場合は、契約や荷物、決済もバイヤーとするが、代理店に依頼し、 その代わりその代理店に対しては口銭を支払う。 大体上記の取引はL/Cをベースにしていますので、FOBかCIF契約で、荷物を船 に積み込んだ時点、または船が向こうに着いて荷物を降ろした時点ですべての契約 が終わるのが普通である。 2. 輸出関連費用 輸出貨物は生産者、卸売業者、輸出商社、相手国輸入商社、卸売業者、小売業者 と6業者の手をわたって行き、その業者がマージンを取得していきます。そこに輸送 活動、保管活動、検疫、通関、港湾荷役、海上輸送、港湾荷役、検疫、通関、保管、 輸送といった様々な活動が加わり、その全てにおいて費用が発生します。その結果、 1個 100 円の青森リンゴが北京で 1000 円で売られることになります。それではここで、 弘前のリンゴを例にとってそれらを解説していきます。 1) 生産者の費用 生産者はコストを掛けてりんごを生産する。生産したリンゴを市場で売り、その差額 が所得となる。従って最も高い市場で売りたい。この場合は販売先は無差別であるた め輸出用に高級リンゴを調達したければ高い価格を付ければよい。ただ、海外市場 は日本の国内事情と無関係に価格形成されるため、不作などで国内市場価格が上 昇した場合は輸出競争力は無くなるし、価格が下がれば輸出競争力は増大する。 今回、例に挙げている陸奥や金星という種類の市場価格は 4000 円/10kg 前後であ るため、その価格を基準に議論を進める。 2) 国内輸送費用 リンゴの保存温度は−1℃∼+2℃、保存湿度は90%程度が望ましい。従って国 内輸送も冷蔵車による。リーファーコンテナは高価であるため貨物量が多くても産地 までドレージしてくることはほとんどない。したがって、トラック料金とすると生産者によ る輸送(委託輸送)を前提とすると、およそ以下の通りである。 100km 70 円/10kg 35,000 円/5ton 300km 150 円/10kg 75,000 円/5ton 1000km 300 円/10kg 150,000 円/5ton 3) 通関、検疫費用 (対 通関業者) 輸出通関料は法律で定められ、1回の輸出入取引に関し 5,900 円である。 これは貿易額に依存しない。通関業者は税関検査に立ち会う。こうした手数料が実費 で輸出検査料として 10,000 円程度必要となる。 4) 倉庫料、バンニング料 検査は保税倉庫で行われ、通関後ただちにコンテナに積み付けられる。バンニング 作業料は 20F コンテナで 28,000 円、 40F コンテナで 35,000 円程度である。 これは通常のオンパレットの場合であり、バラであれば更に高くなる。倉庫にある時 間は殆どがバンニング作業のためであるため、倉庫料は通常無料で、支払うとしても 入出庫料である。入出庫料は 1トン当たり 500 円程度である。 5) ショートドレージ バンニングされたあと、コンテナはコンテナ埠頭に運ばれる。これがショートドレージ である。コンテナのショートドレージはもちろん扱い業者によって価格設定が異なるが、 通常1本あたり 10,000 円程度であり、これは 20F でも 40F でも同額である。 6) 船積みー港湾荷役料 コンテナヤードに置かれたコンテナは船の到着を待つ。船が到着したらただちに船 積み作業が始まる。トランステナー、ストラドルキャリアー、シャーシーなどでマーシャ リングヤードに運ばれ、ガントリークレーンまたはモーバイルクレーンで船積みされる。 これらは港湾荷役と呼ばれるが、この費用は THC (Terminal Handling Charge) と呼ば れ、海上輸送運賃と一緒に船会社に支払われる。これは我が国特有の制度であり、 全国一律で1万円程度である。 7) 海上保険 海上保険は基礎となる保険料が下記のように決まっている。 保険料(オール・リスク)=CIF 価格×1.10×0.05(基礎保険料率)×割増率 基礎保険料率に対する割増率は、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ主要国などの主要港 湾へ主要アライアンスや大手船社の船舶で輸送される場合 1.0 が適用される。 その他の国々や港湾に輸出する場合や保険会社の定める船会社以外の船で輸送 する場合は 1.5、2.0 など輸送経路の安全性によって割増率は異なってくる。紛争当事 国、例えば現在はイラクまたはアカバ湾内、シエラレオネなどの港湾に輸送する場合 は 8.0、9.0 など CIF 価格(貿易総額)の約半額の保険率が適用される場合もある。 8) 海上輸送運賃 海上輸送運賃は輸出にかかるコストの中でも非常に大きく全体費用の約15%を占 めている。輸出費用で一番大きいには中国の関税と増値税であり費用の約50%とな っている。したがって、この税金を除くと輸送費用に占める海上輸送運賃の比率は3 2%にも達する重要な項目である。 先に述べたように海上輸送運賃には THC が含まれている。海上輸送運賃はコンテ ナの種類、輸出港、中継港、輸入港によって異なるばかりではなく、貨物量(コンテナ 本数)、季節、輸出入バランスによっても異なる。更に代理店(一般には港湾運送事 業者または船会社代理店(エジェント))との力関係によっても運賃は変動する。 我々の進めているリンゴの輸出を例にとりましょう。運賃の条件は以下の通りです。 1) リンゴは温度、湿度管理が重要であるためリーファーコンテナを利用する。 2) 輸出港は秋田港、中継港は釜山港、輸入港は天津新港とする。 3) 季節、期日は 11月末および12月末 4) コンテナ本数、それぞれ1本 こうした条件の下で20F が18万円、40F が27万円というオファーであった。 ドライのコンテナであれば約半額、9万円と14万円程度のオファーとなると思われる。 更にリーファーコンテナは断熱壁を持ち、冷蔵機器部分などのデッドスペースがある ため重量的にもスペース的にも積載量は少ない。 例えば、我々の貨物のアイスボックスの容積は 480mm×410mm×245mm∼290mm となっている。従って、高さ245mm の場合(Net Weight11Kg)で472箱、高さ290mm の場合(Net Weight12.5Kg)で413箱が20F コンテナに積み込める上限値になる。こ れは共に 5.1 メトリックトン前後である。 弘前から北京に輸送するのが目的であるため、弘前から仙台あるいは京浜の港湾 に運びそこから船に乗せる方法がある。特に東京港や横浜港は中国へのサービスル ートが多く、競争も激しいため、海上輸送運賃は秋田港より遙かに安い。季節や輸出 入バランスによっては半額近いレート(9万円から14万円)も珍しくない。しかし、先に 示した陸上輸送コストなどを考え合わせるとどちらが安いとは一概に言えない。日本 全体ではリーファーコンテナ貨物に関しては遙かに輸入超過であるため、輸出用のボ ックスレートは比較的軟調であると言える。 9) 輸出商社の手数料 輸出商社の本来の仕事は農林水産業、製造業などの会社と取引をし、商品を自ら 調達し、それを外国の輸入商社や卸売業、小売業などに販売する業者であり、貿易 業者である。従って、この場合は貿易利益(=販売価格―調達費用―貿易費用)を得 るのが目的であり、貿易の際は荷主そのものであり、手数料という概念は存在しな い。 この節でいう商社とは次のような業務を行う業者として定義している。すなわち、① 生産者が荷主となって自ら輸出をする場合に輸出業務を委託する場合、②バイヤー (外国輸入商社)が自ら輸出国の生産者と取引を行い、その輸出事務を委託する場 合、③あるいは生産者でもバイヤーでもない第3者が輸出を計画し、輸出商社に輸出 業務を委託する。著者らは正に③の立場で本調査を実施している。 上記の検疫、通関、ドレージなど港湾の近傍で行われる仕事は一般に港湾運送事 業を主たる業務とする海貨(海運貨物取扱業)業者が一括して引き受ける業務である。 これらを手配したり、保険をかけたり、送り状(インボイス)を発行したりする業務を輸 出商社にいたくした場合の手数料である。 委託手数料は本来、荷主と商社の話し合いで決まり相場というものは存在しないが、 当然、常識的な手数料の率は存在する。貿易額が少なければ手数料も少なくなけれ ば貿易が成立しないいし、貿易額が大きければ手数料も大きくなるのは当然である。 しかし、業務の質や量は貿易額が増加しても殆ど増えないため、貿易額によって大き なボリュームディスカウントが存在する。 例えば一つの業者にヒアリングした結果を示せば以下の通りである。 貿易額が 150 万円位までは輸出契約額(FOB または CIF)の 10%。500 万円位ですと 5%ぐらい。1,500 万円ぐらいだと 2.5%ぐらい。5,000 万円だと 1%程度と答えている。そ れを簡単に定式化すると次の式で近似できる。 A % = 1000 × X ÷ X ここでXはUSドルベース輸出入契約額である。この式によれば、貿易額X=10,000 ド ルであれば 10%、X=40,000 ドルになれば 5%、X=160,000 ドルで 2.5%、X=1,000,000 ドルで1%となり、上記のヒアリング結果とほぼ一致する。ただいくら貿易額が少額と いえども書類業務はあるわけで、貿易1回当たり最低は5万円程度。また業務が急に 増えるわけではないので月1回ぐらいの輸出で、最高でも年間 100 万円程度と考えて 良い。 ********* 注記 ********** アジアにおける THC(ターミナルハンドリングチャージ) 問題 アジア諸国においては、輸出契約の 80%以上がいわゆる FOB 契約と言われている。 コンテナ船など定期船積みの場合、船社側が貨物の積み下ろしを一括管理する Berth Terms になっているので、昔の FOB 契約では積み下ろし費用は運賃の中に 入っていました。言い換えれば、昔は、積み下ろし費用は運賃支払をするバイヤーが 負担していたことになる。ところが、10 年近く前に THC が導入され、1990年版・20 00年版 Incoterms が制定されると、従来のような契約条件は FCA(Free Carrier)と 言わないといけなくなった。アジアの零細荷主は 13 種類もある Incoterms など分か らずに、昔ながらの FOB,C&F,CIF のいずれかの Trade Terms を使っているので、 CY to CY 条件である船社の輸送条件にも拘らず、THC を支払わないと B/L を渡し てくれない船社側に根強い抵抗を示している。また、コンテナターミナル会社のタリフ よりも船社の要求する THC の方が高いことにも不信感を募らせている。この問題に 関し、「THC 課徴問題で荷主との対話継続」 では、コンテナ輸送でも不定期船輸送 などと同様に荷主が港湾荷役費用を負担すべきとの極めてユニークな理論を展開し ている。こうした主張に対し、アジアの荷主団体では「真摯な対話の姿勢が窺えない。 空理空論で話をはぐらかしている。もし FIO を主張するなら、そのような B/L を作っ てから来るべき。」とコメントしている。 (日本荷主協会のホームページ http://www.jsctok.or.jp/ より転載) IADA =Intra-Asia Discussion Agreement : アジア域内コンテナ協議協定。対象国・ 地域は日本、韓国、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、 タイ。同盟、盟外を問わず参加して結成された、サービス安定化のための協議協定。 FIO (Free In and Out):FIO とは、運送契約での積揚諸費用負担条件の一種。海上運 送では船会社は積地で荷主の貨物を船側で受取り、目的港の船側で受荷主に引渡 すのが原則です。貨物に対する責任限界と諸費用の負担条件もこの原則に従う。本 船備え付のクレーンを使って積み卸す作業を含む船内作業賃(Stevedorage)及び港 費を船会社が負担し、運賃に含めることを Berth terms 又は Liner terms と云う。これ に対し、FIO (Free In and Out) は貨物の種類により、積込・陸揚げに熟練した作業が 必要である場合等、荷主側の用意したステベを使用し、その費用を荷主が負担する ことです。(但し、港費は船会社持ちです。)この場合、積地のみ荷主負担 (FI) 、揚 地のみ荷主負担 (FO)という契約も可能です。なお、Berth terms の 表記は (Liner In and Liner Out) 略すと (LILO、または LIO) となる。 ( 日本荷主協会のホームページ http://www.jsctok.or.jp/ より転載) 3. 輸入関連費用(相手国側) 一般の輸出業務に関して言えば、輸出 FOB 契約であれば、輸出港のコンテナヤー ドに持ち込めばそこで輸出者の責任は終わる。輸出者は、船会社にTHCを支払B/L (船価証券)を受け取り、それを荷為替と共に取引銀行に持ち込み割り引き買い取り をしてもらえば全て手仕舞いとなる。その後は、船が沈んでも保険適用で品物が壊れ てもそれ以降の荷主の責任である。(船積み前の原因によって瑕疵が生じた場合は もちろん輸出者の責任である) ここでは輸出者が相手国に輸出後も実質的に荷主であり続け、相手国に於ける消 費者までの輸送責任を全て負っているとの前提のもとで費用の実際を解説する。もち ろんこうした費用は相手国によって大きく異なるため、ここでは中国にリンゴを輸出す ることに例を取り解説する。 1) 換単費 中国の港湾に着いたコンテナは船会社の負担によって船からコンテナヤードに降ろ される。コンテナは通関、検疫を受けるためにコンテナヤードから保税倉庫に輸送さ れる。この輸送・荷役サービスに対応する費用が換単費と呼ばれ、船舶代理店に支 払われる。換単費は1コンテナ当たり約600元(約 7,700 円)である。 2) 関税と増値税 通関に際しては関税と増値税が課される。中国のWTO加盟によって関税は著しく 低下し、特にリンゴは 10%と農産品の中でも最低税率が適用されている。しかしそれ でも両税の総額は全輸送コストの 50%を超え、輸出の非常に大きな障害となってい る。 増値税とは、日本の消費税に近い性質を持ち、(1)物品の販売 (2)加工、修理、補 修役務の提供 (3)物品の輸入を行う場合、適用される税である。基本税率は 17%で あるが、穀物、食用植物油、上水、飼料、農薬など一部物品の税率は 13%である。リ ンゴの増値税はこの少ない方の 13%である。 この税金は国内消費が前提となっているため、輸出販売する場合はいったん税金 はかかるが還付されてゼロ税率になる。しかしこの還付制度は非常に複雑であり、外 資企業泣かせの税金と言われている。 リンゴの輸出の場合は以下のようになる。 関税=CIF価格(インボイスに書かれている)×0.10 増値税=(CIF価格+関税)×0.13 これが例えば製造業になると以下のようになる。 実際の税額は原材料を調達するために支払われた増値税である当期仕入れ税額 (仕入れ金額×増値税税率)を、製品を販売するときに支払わなければならない増値 税である当期販売税額(販売金額×増値税税率)から引いたものとなる。 注1) ゼロ税率と免税 増値税の輸出還付はゼロ税率とも呼ばれている。それは企業が生産した製品を輸 出販売するとき、販売税額がゼロになるからである。ただ、国内で原料を仕入れる段 階で支払った増値税を販売税額から控除できない分については、いったん企業負担 の形になるが、その部分は還付される。(ただしこの輸出販売のゼロ税率と免税対象 品目の免税とは違う。免税は製品を販売するときの販売税額が免除されることを意 味する。したがって、仕入れ段階で支払った増値税は還付されない。) 注2)小規模納税者 小規模納税者(生産・サービスの場合年商 100 万元、卸小売りは年商 180 万元以下) は売上高に税率(4∼6%)を掛けた額になる。ただし仕入れ税額の控除は受けられな い。 3) 輸入許可証取得費用 リンゴの輸出に当たっては、事前に中国政府の輸入許可を得る必要がある。貿易 権を有する企業であれば輸入許可申請が出来る。輸入許可は新しい物資の許可の ためには1ヶ月程度かかるが、2回目以降は2週間以内で許可が得られる。また、輸 入許可は毎回でなくともあるシーズン(例えば 2004 年 11 月から 2005 年の 3 月まで に2回、それぞれ2トン∼5トン輸入する、という形でも許可は得られる)輸出許可証取 得費用は手数料を含め1件あたり 800 元である。 4) 保税区使用料 通関、検疫のためにコンテナは保税地域の倉庫に運び込まれデバンニングが行わ れる。このため保税区の管理者に対して保税区使用料を支払う必要がある。保税区 使用料は 2005 年 1 月現在、1コンテナ当たり約1200元である。この料金はしばしば 改定されている。 5) 通関、検疫費 リンゴの検疫は品質検査、食品検査と呼ばれ、それぞれ品質検査費、食品検査費 がインボイス価格の 0.12%徴収される。また、それらの手続きの費用として通関代理 費が輸入1件あたり400元、検疫代理費が1件当たり100元必要とされる。 6) 冷蔵倉庫使用料、入出庫料 ドライカーゴでは必要ないが冷蔵貨物は保税区内の冷蔵施設で通関・検疫がなさ れる。したがって冷蔵倉庫の使用料が必要となる。天津港の保税区内の冷蔵倉庫の 使用料は公定料金があるわけではないので交渉能力によって料金が決まる。しかし、 平均的なレートは 1日1トン当たり100元前後である。短期間少量の利用に関して はミニマム 1,000 元のレートが適用される。 中国本土への冷蔵品の輸出に関してはこの冷蔵庫使用料が大きな問題となる。そ れはボリュームディスカウントが殆ど効かないことであり、また蔵置時間が通関、検疫 に要する時間によって決定してくるからである。 実際、我々の1回目の輸出に関しては通関・検疫に 10 日を要した。第2回目は船が 非常に遅れたため、特別に急ぐようにお願いしたところ、3日程度で終了した。3回目 は何もしなかったら7日程度を要した。 これがもし 100 トン程度の輸出としたら1日 10,000 元であり、10 日かかるのと3日で 終了するのでは 70,000 元、90 万円ぐらいの差額が生じることとなる。1,000 トンとすれ ば 900 万円と膨大な追加費用となってくる。 信頼できる情報によれば、リンゴの通関は上海では1日(24 時間)、香港においては 電子通関、無検疫であるため、0日、すなわち冷蔵倉庫に入れる必要がない。 なお、倉庫からの商品の出し入れには1貨物当たり200元を要する。 7)天津ー北京間輸送料 北京の卸売業に販売するとした場合は天津―北京間の冷蔵トラック運賃がかかり ます。 10トン車1台当たり 2,000 元程度ですが 5Kg のアイスボックスを使った場合、貨物重 量で2メトリックトン程度しか輸送できないため注意が必要です。10トン輸送する場合 は 10 トン車が5台となります。 7) 輸入商社の手数料 輸出商社も本来の仕事は外国の農林水産業、製造業などの会社や外国の輸出商 社と取引をし、商品を自ら調達し、それを国内の卸売業、小売業などに販売する業者 であり、貿易業者である。従って、この場合は貿易利益(=販売価格―調達費用―貿 易費用)を得るのが目的であり、貿易の際は荷主そのものであり、手数料という概念 は存在しない。 この節でいう商社とは輸出で説明したと同様に ①卸売業または小売業が荷主とな って自ら輸入する場合に輸入業務を委託する場合、②外国輸出商社が自ら輸出国の 卸売または小売りと取引を行い、その輸入事務を委託する場合、③あるいは生産者 でもバイヤーでもない第3者が輸入を計画し、輸入商社に輸入業務を委託する。 輸入の場合、委託手数料は本来、荷主と商社の話し合いで決まり相場というものは 存在しないが、当然、常識的な手数料の率は存在する 例えば一つの業者にヒアリングした結果を示せば以下の通りである。 貿易額が 200 万円位までは輸出契約額(FOB または CIF)の 10%。800 万円位ですと 5%ぐらい。2,000 万円ぐらいだと 2.5%ぐらい。5,000 万円だと 1%程度と答えている。こ れは先の輸出商社より2割ほど高いが、外国への依頼であるため常識的数値と思わ れる。それを簡単に定式化すると次の式で近似できる。 A% = 1200 × X ÷ X ここでXはUSドルベース輸出入契約額である。この式によれば、貿易額X=10,000 ド ルであれば 12%、X=40,000 ドルになれば 6%、X=160,000 ドルで 3%、X=1,000,000 ド ルで 1.2%となり、上記のヒアリング結果とほぼ一致する。ただいくら貿易額が少額とい えども書類業務はあるわけで、貿易1回当たり最低は 6 万円程度。また業務が急に増 えるわけではないので月1回ぐらいの輸出で、最高でも年間 120 万円程度と考えて良 い。 4. 国内貿易権 1) 貿易権の概要 在中国の輸入商社を仲介者として、中国国内の卸売業者、あるいは大手小売業者 に直接販売する場合は在中の輸入商社にとっては単なる外国貿易である。しかし、 宅配のように販売の相手が多数である場合、宅配でなくとも販売先が多い場合は貿 易業務とは見なされず、卸売または小売業務と見なされる。したがって、そうした業務 を行い場合は「国内貿易権」すなわち、商業(卸売業、小売業)の許可をえた企業以 外では行えない。これがいわゆる国内貿易権問題である。 貿易権とは総合的な貿易行為を行う権利である。つい最近まで、中国では貿易(輸 出入)を行う権利を一部の企業にしか与えていなかった。それはほとんどが中国企業 であり、外資企業には限定的な貿易権しか与えなかった。例えば、保税区に設立され た外資の貿易会社は保税区に限定された輸出入しか認められなかったし、生産型企 業は自社使用の原材料・部品の輸入および自社製品の輸出しか認められなかった。 ただし、2001年12月11日に中国が WTO に加盟した際、加盟3年以内に貿易権を 完全開放すると公約している。現在はその実施段階にある。外資企業に関する開放 のスケジュールは、以下の通り。 1.1年以内に外資マイナー出資の会社に対して開放。 2.2年以内に外資メジャー出資の会社に対して開放。 3. 3年以内に独資企業に対して開放。 2004 年 11 月時点では、2.の外資メジャー出資の会社に対して開放がなされている。 整理してみると、2004 年 11 月時点では以下のような外資企業が貿易権をもっている ことになる。 1. 生産型企業̶自社使用の原材料・部品の輸入および自社製品の輸出という限定 的な貿易権をもっている。ただし、前年度に 1,000 万米ドル以上の自社製品を輸 出している企業の場合は他社製品の輸出も可能。 2. 傘型会社̶傘下企業の生産に使用する原材料・部品の輸入および傘下企業の 製品と他社製品の輸出という限定的な貿易権をもっている。 3. 貿易会社̶完全なる貿易権をもっている。ただし、現時点で合弁の貿易会社のみ 設立可能。 4. 商業(小売・卸売)企業̶完全なる貿易権をもっている。ただ、現時点で合弁の商 業企業のみ設立可能。また、小売については、設立地域の制限を受ける。(200 4年12月11日以降、地域制限を廃止する予定) 5. 調達センター、外資調達センターは2003年12月に施行された「外商投資輸出 商品購買センターの設立に関する管理弁法」に基づき、設立が可能となっている。 最低資本金は 3,000 万人民元、許可される業務範囲は (1) 国内貨物の輸出および輸出に関連する倉庫保管、情報提供、技術サービス。 (2) 再輸出が前提となる委託加工原材料の輸入 (3) 商品の購買、輸出のために必要なサンプルの輸入。 このように、外資調達センターは原則的には輸出権のみが認められている。 6. 物流企業̶2002年6月に公布された「外商投資物流企業試点設立業務展開の 関連問題に関する通知」に基づき、外資物流会社は、自社が物流を請け負った 貨物に限定して貿易権を与えている。現時点で日本の大手商社数社がこの認可 を取得している。 2) 国内流通(内販)権と商業分野の開放について 貿易権と比べ、国内流通(内販)権はもっと厳しく制限されている。WTO に加盟した 際、貿易権については徐々に開放する公約をしたが、国内流通権については完全な る開放の公約をしていなかった。(現時点では、新弁法に基づき、2004年12月11 日より完全開放すると規定している。)商業企業(小売・卸売企業)を設立しない限り、 他社製品の内販を行いことはできない。整理してみると、2004 年 11 月現在、以下の ような外資企業が国内流通権をもっている。 1. 生産型企業̶自社製品(中国で製造したもの)に限定し、中国国内で販売すること が許可されている。他社の製品を取り扱うことはできない。ただし、WTO に加盟し た際、外資生産型企業のアフターサービスが認められており、これに必要な部品 などの購入・販売は可能となっている。 2. 保税区内の貿易会社̶原則的に保税区内の貿易会社も中国国内での販売はで きないが、運用面において変則的な国内販売を行っているのが現状である。その 変則的な運用方法というのは、保税区によって、交易市場に仲介を委託し国内販 売を行うケースもあれば、貿易会社が直接国内販売を行うケースもある。ただし、 いずれのケースでも、売買契約は貿易会社自身が客先と締結し、決済も貿易会 社が人民元で行う。 3. 傘型会社̶傘下の企業が製造したものの販売は可能 4. 卸売・小売会社̶つい最近まで、非常に厳しい制限(出資資格制限、最低資本金 制限、地域制限、店鋪数制限など)があったが、新弁法の施行により完全開放に 向け動きだしている。 ただし、注意しなければならないのは中国では貿易権と国内流通権は全くの別も のであり、たとえ貿易権を取得したとしても必ずしも国内販売が行えるものではない。 例えば、ある企業は貿易権があっても国内流通権がないため、輸入したものを販売 することができない。ある企業は国内流通権があっても、貿易権利がないため、直接 海外から製品を輸入販売することができない。販売会社を設立しないかぎり、輸出 入・販売を行うことはできない。 3) 中国の主な税金制度 性格 税種類 国税・地方税・共通税 流通課税 増値税 共通税(中央政府 75%・地方政府 25%: 徴収は国家税務局) 営業税 原則地方税、ただし鉄道・銀行・保険会社 などの本店が一括納税する分は国税 所得課税 消費税 国税 関税 国税 企業所得税 中央企業・地方銀行・非銀行金融機関は 国税、それ以外は地方税 資源課税 外商投資企業および 中国側出資者が中央企業ならば国税、 外国企業所得税 それ以外は地方税 個人所得税 地方税 資源税 共通税 土地使用税 地方税 財産行為課税 都市不動産税 地方税 車両船舶使用鑑札税 地方税 車両取得税 国税 印紙税 地方税 屠殺税 地方税 契税 地方税 特定目的課税 土地増値税 地方税 固定資産投資方向調節税地方税 都市維持建設税 原則地方税、ただし鉄道・銀行・保険会社 などの本店が一括納税する分は国税 農業課税 農業特産税 地方税 徴収管理 租税徴収管理法 共通
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