会計学基礎 6月22日 税金と配当 アウトライン 企業活動と税金 剰余金の配当 配当制限と債権者保護 企業活動と税金 企業の所得にかかる税金 企業がその所得に応じて課せられる税金は以下 の三種類であり、税引前当期純利益から控除さ れる 法人税(国税):所得の23.9%(2015~) 住民税(地方税):法人税額の17.3~20.7%+均 等割り 事業税(地方税):課税所得の6.0%、または外 形標準課税 利益と所得 税額を算出する基準となる課税所得は、損益計 算書上の純利益と一致しない 所得=益金ー損金 利益=収益ー費用 益金・損金のそれぞれに収益・費用と相違する 項目があるために不一致が生じる 例:受取配当金(益金不算入)、有税での貸倒損失の 計上(有税償却:損金不算入) 税効果会計 前スライドの理由により、損益計算書上の利益 と課税所得に基づく実際の税額との間に期間の ずれが発生する(一時差異) 例:損益計算書上、2015年度に貸倒損失(費用)を計 上した経営不振先への貸付金が、2016年度に貸付 先が破産したことによって、貸倒損失として損金算入 が認められた場合 期間のずれではなく、永久に取り扱いが異なる 項目もある(永久差異) 例:受取配当金 税効果会計 税効果会計は、一時差異について会計上の利 益に対応する税額を税費用として損益計算書上 認識し、実際の税額との差額を資産または負債 として繰り延べる会計処理 課税所得が税引前純利益より大きい場合 (借)繰延税金資産 (貸)法人税等調整額 税金を「前払い」したと考える 確定決算主義 法人税法の「建前」は、課税所得の計算は損益 計算書上確定した利益に必要な修正を加えたも のを課税所得とする この「建前」が逆に機能し、税法の規定を財務会 計に準用する実務が支配的であり、期間損益の 計算というほんらいの目的から逸脱する結果と なっている 例:減価償却の耐用年数 連結納税制度 親会社と国内の全ての100%子会社の損益を通 算して課税所得を計算する制度 連結決算(後日取り扱う)の場合は合算する範囲がも っと広い グループ内で利益と損失を相殺できるので、課 税所得の合計が小さくなり、節税が期待できる 剰余金の配当 配当の決定 配当の金額は、通常株主総会において決定され る ただし、一定の条件(テキストp190)を満たして いる場合は取締役会の決議で配当を決めること ができる 配当の回数について従来は年2回までとされて いたが、会社法により回数制限が撤廃された 配当の支払 安定配当政策 配当性向政策 業績にかかわらず、一定額の配当を支払う 業績に連動した配当を支払う 配当性向=配当額/当期純利益 我が国では安定配当政策が支配的 次頁のスライドは法人企業統計による我が国企 業の純利益/配当/内部留保の推移 (単位 億円) 区 分 当 期 純 利 益 役 員 賞 与 配 当 金 内 部 留 保 平成16年度… 168,210 12,313 85,849 70,048 17……… 231,569 15,225 125,286 91,058 18……… 281,650 0 162,174 119,475 19……… 253,728 - 140,390 113,338 20……… 73,909 - 122,098 △ 48,189 21……… 92,239 - 122,851 △ 30,611 22……… 186,864 - 103,574 83,290 23……… 191,389 - 119,005 72,384 24……… 238,343 - 139,574 98,769 25……… 375,880 - 144,002 231,878 配当制限と債権者保護 株主と債権者の利害対立 配当の支払は、株主と債権者の利害が衝突す る局面 債権者の立場からは、配当の支払は債権の回 収可能性を低める行為である しかも、配当を決定するのは株主またはその代 理である取締役会である したがって、配当の決定を野放図にしたばあい、 株主が債権者の権利を犠牲にして多額の配当 を受け取ってしまう(可能性がある) 株主と債権者の利害対立 そのため、会社法では配当支払に制約を課すこ とによって債権者の権利の保護を図っている そのあらわれが配当時の準備金の積立てと分 配可能額の規定 配当制限 株式会社は、資本準備金と利益準備金の合計 額が資本金の1/4に達するまで、配当総額の 1/10を資本準備金または利益準備金として積 立てなければならない 純資産額が300万円を下回る会社は配当不可 さらに、複雑怪奇な計算(pp.193~197)によって 算出された上限の金額を超えて配当を行うこと はできない 次回への準備 次回はテキスト10章「財務諸表の作成と公開」
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