話題提供:低用量と統計学的有意差 • 試験責任者への支援資料 • 2009-08-24 • 前川先生勉強会 1 ラットを用いた28日間反復投与毒性試験の 低用量群に統計学的有意差が検出される割合 1. 目的: 無影響量(NOEL)および影響量(EL) の把握である. 2. 試験任者の願望: 低用量 = NOEL 3. もし低用量群で統計学的有意差が認められ たら: ①背景値との比較 ②用量依存性の有無 ③病理検査を含めた関連項目との 整合性の検討 ④対照群の信頼性を吟味 2 調査した試験の概要 1. ラットを用いた109の28日間反復投与毒性試験 /化審法ガイドライン 2. 調査項目: ①行動機能観察 (FOB)②尿検査 ③血液学的検査④血液生化学的検査⑤器官 重量とその体重比/投与28日後の定量値 3. 群構成: ①対照群を含めて4および5群(37試 験)②1群内動物数は,5匹程度③用量の公比 は,3が最も多い④被験物質の投与は,全て胃 ゾンデによる強制経口投与 3 使用された統計解析ツール 1. Bartlettの等分散検定 2. 分散分析(等分散OK = 平均値の検定) Dunnettの多重比較検定,Schefféの多重比 較検定,Duncanの多重範囲検定 3. Kruskal-Wallisの検定(非等分散 = 順位の 検定 = 平均値の検定ではナイ) Dunnett型ノンパラメトリック検定,Scheffé型 ノンパラメトリック検定,Steelの多重比較検 定など 4 有意差(P<0.05)検出数およびその 割合(その1,試験別からの結果) 試験番号 有意差検出数および(%) 項目数 低用量 中用量 高用量 最高用量 1 120 0 (0.0) 2 (1.7) 4 (3.3) 10 (11) 2 104 6 (5.7) 5 (4.8) 4 (3.8) - 108 130 2 (1.5) 4 (3.0) 16 (12) 31 (23) 109 116 1 (0.8) 1 (0.8) 2 (1.7) 9 (7.7) 試験数 109 109 109 109 37 合 計 12167 205 414 1318 731/4074 平均値 111 1.6% 3.4% 10% 17% 最大値 162 8.4% 17% 36% 55% 最小値 54 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 最頻値 - 0.0% - - - 5 有意差(P<0.05)検出数およびその 割合(その2, 測定項目からの結果) 測定項目 有意差検出数および(%) 項目 数 低用量 中用量 高用量 最高用量 FOB 68 1 (1.4) 3 (4.4) 8 (11) 1/10 (10) 尿検査 392 13 (3.3) 30 (7.6) 81 (20) 40/96 (40) 血液学検査 3586 56 (1.5) 106 (2.9) 318 (8.8) 176/1198 (14) 生化学検査 4285 79 (1.8) 163 (3.8) 455 (10) 267/1426 (18) 器官重量 1928 22 (1.1) 44 (2.2) 188 (14) 103/672 (15) 器官重量/BW比 1908 34 (1.7) 68 (3.5) 268 (14) 144/672 (17) 合計 12167 205(1.6) 414 (3.4) 1318(10) 731/4074 (17) 6 まとめ 1. 定期検査・解剖が投与開始後26, 52, 78および104 週で設定されている長期の慢性毒性試験など大 規模試験は,極めて多くの測定値が得られる.こ のため低用量群には,偶発的な統計学的有意差 が検出されやすい. 2. 低用量群に統計学的有意差が認められた場合の 無毒性量 (NOAEL)は,毒性学的有意差の有無を 検討し設定したい. 3. 以上の調査結果から,全調査項目中,低用量群に 統計学的有意差が1–2% (<5%)程度認められても NOAELを判断できる. 7
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